◆原告第41準備書面
-避難困難性の敷衍(京都市左京区について)-

原告第41準備書面
-避難困難性の敷衍(京都市左京区について)-

原告第41準備書面

2017年(平成29年)10月27日

目次

第1. 原告松本美津男の障害について

第2. 原告松本の避難困難性について
1.避難所にたどり着くことの困難性
2.避難所自体の問題性
3.原告松本は、避難行動要支援者の事前登録制度を利用できない。
4.原告松本は、すぐに福祉避難所を利用できない
5.避難場所が存在しても心理的に避難することは困難である。


原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では京都市左京区に在住する原告松本美津男の避難困難性に関する個別事情について述べる。

 

第1. 原告松本美津男の障害について

原告松本美津男(以下「原告松本」という。)は、現在、京都市左京区に在住している。原告松本は、1歳半の夏に、ポリオウイルスによる両下肢機能障害になり、現在、主にマイカーで外出し、歩行は短距離なら両松葉杖で、長距離や少し重い荷物を持ち運ばなければならない時は手動車いすを併用して生活を送っている。

ポリオウイルスによる小児麻痺障害者は、40~50歳代になると新たに筋力の低下や筋肉の痩せ、筋肉・関節の痛み等が出現するポリオ後症候群となることがあるが、原告松本も、腕の力が弱り、右肩が慢性的に痛むため毎日痛み止めの薬を朝晩塗ってやり過ごしている状態である。

下記に述べるとおり、両松葉杖及び車いすで生活を送っている原告松本にとって、原発事故が起きた際に避難することは不可能である。

 

第2. 原告松本の避難困難性について

 

 1.避難所にたどり着くことの困難性

2016年秋頃、原告松本は、浄楽学区(原告松本が居住する左京区内にある)の自主防災会が主催する、防災訓練(主に地震を想定した)に手動車いすで参加した。

しかし、指定避難所までの坂が急であったため、原告松本は、他の参加者に車いすを押してもらい、指定避難所にたどり着くことができた。仮に、原発事故が起きた際に、車いすを押してくれる者がいなければ、原告松本は避難所までたどり着くことが出来ないのである。
 2.避難所自体の問題性

指定避難所の体育館の入り口は、スロープがなく臨時に木の板を渡して、その上を車いすで移動せざるを得ず、原告松本のように、車いすでの参加者にとっては、著しく出入りしにくい状態であった。

加えて、防災訓練に参加した参加者だけで、指定避難所内は、ほぼ満員状態であり、実際に住民全員が避難して来たらとても入りきれないのは明らかであった。原告松本が、仮に避難所にたどり着いたとしても、避難所が避難住民で、溢れかえるのは明らかであり、車いすで移動できるスペースは存在せず、松葉杖歩行も相当困難である。結局、車いすで生活を送っている原告松本が、避難生活をするのは不可能である。
 3.原告松本は、避難行動要支援者の事前登録制度を利用できない。

国の制度として避難行動要支援者について事前登録制度があるが、具体的な対象者の範囲は自治体任せであり、京都市の場合、原告松本が単身なら登録対象者になるが、原告松本には、同居の配偶者がいるため登録対象とはならず、制度を利用することができない。
 4.原告松本は、すぐに福祉避難所を利用できない

原告松本は、福祉避難所に指定された施設の方が、避難し易いと感じ、仮に、避難指示が出た場合に、直接福祉避難所へ避難して良いか区役所に確認した。しかし、「福祉避難所がすぐに準備できるわけではないので先に地域で指定された避難所に行ってもらいたい」と解答された。このように、原告松本は、仮に、原発事故が起きても利用しやすい福祉避難所をすぐに利用することが出来ないのである。
 5.避難場所が存在しても心理的に避難することは困難である。

仮に原発事故が起きた場合、避難したいと思っても迅速に行動できない、あるいは介助者なしには動けない肢体障害者は、単独では避難所まで行くことができない。また、視覚障害者、そして避難の呼びかけが聞こえない聴覚障害者などは、逃げ遅れる場合があり得る。

加えて、障害者は心理的に、避難所に行くことができない。例えば、避難所の仮設トイレが車いすなどでは利用できない。知的障害や発達障害児者が慣れないところへ行けば大きな声を出したり、動き回ったりして他の避難者に迷惑がかかると感じた場合、障害者や家族は、危険性を知っていても避難所に行かなかったり、一度避難所に行っても自宅へ戻ったりするケースが多数起こりうる。

これまで、準備書面において、避難困難性について述べてきたとおり、各自治体の避難計画自体は不十分で現実性のないものであるが、仮に、どれだけ、計画を変更し、避難所を設定しても、弱い立場にある障害者は、心理的に避難することが出来ないのである。弱い立場の障害者が避難困難となる原発を稼働させること自体が問題であり、直ちに廃炉にするべきである。

以上

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