◆関西電力 闇歴史◆番外編 002◆

大規模発電は高リスク–実例とともに

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【大規模発電はリスクが多い】
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 大規模な原発や火力発電は、トラブルで停止すると、供給力が大幅に低下し、需給ひっ迫ブッラクアウト(大規模停電)をまねくリスクが大きい。大規模発電への依存は、災害により安定供給が脅かされること、燃料費高騰の影響を受けやすいこと、などのリスクもある。需給ひっ迫への対応は、再生可能エネルギーの拡大と、需要の削減、エネルギー効率化=省エネが重要。

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【大規模発電のリスク、実例】
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(1) 2022年3月22日の「電力需給ひっ迫警報」……3月16日の福島県沖の地震により、東北、東京エリアの火力発電所6基(計約330万kW)が停止。まったく別のトラブルによる磯子石炭火力発電所の停止(3/17に新1号機、3/20に新2号機が停止。各60万kW)。そこに寒波の到来が重なったことが原因。→東電管内で初めて「電力需給ひっ迫警報」。ただし、停電には至らず。

(2) 2022年6月26日の「電力需給ひっ迫注意報」……2022年5月、警報(予備率3%をきる)のほかに注意報発令(予備率5%をきる)の仕組みが導入された(「警報」の前に「注意報」を出すことになった)。そして、6月26日初めて「電力需給ひっ迫注意報」を発令。3月に発生した福島沖地震によって(上記(1)のこと)大きな被害を受けた複数の火力発電所の再稼働、修理が年内には終了しないという状況で、各地で記録上最速の「梅雨明け」となり、連日、猛暑日が発生したことが原因。ただし、停電には至らず。

【注意】初めて「電力需給ひっ迫注意報」を発令…「史上初めて」ではない。「5月に制度ができて以来初めて」という意味。前月にできた制度に基づいて発令したということ。

(3) 2021年1月の電力市場価格の異常高騰……大手電力の燃料制約(LNG・石油燃料在庫の減少により燃料を節約するために発電量を低下)。関電の原発は、高浜3、4のトラブル、大飯3、4のトラブルや定期検査で、12~1月にはすべて停止していた(美浜は再稼働前)。

(4) 2018年9月6日北海道でのブラックアウト……北海道胆振(いぶり)地方東部地震は厚真(あつま)町で最大震度7を記録。北海道で最大の石炭火力発電所である苫東(とまとう)厚真火力発電所が、震源に近いことから機器の一部が壊れ、発電を停止(1、2、4号機。計165万kW)。それが原因で、発電所の停止から、全道295万戸の停電に至った。

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【「新しい」原発の虚構】
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 政府がかかげる夢のような核融合炉、高温ガス炉、高速炉、小型モジュール炉など「新しい原発」は、極論であり、まったく論外。これらはさておいて、すでにヨーロッパで建設中とされる改良型軽水炉でも、目の前の需給ひっ迫には間に合わない。原発の建設には、20年とか長期間が必要。

 その上、建設費は、これまでの原発が多くて5000億円とされる中、ヨーロッパでは1兆円とか2兆円といわれる。電力システム改革(◆087◆)によって、総括原価方式(◆036◆)という「打ち出の小槌」のような錬金術が使えなくなった今、投資が回収できる見通しがない。原発と石炭火力にしがみつくばかりで、小売自由化による競争激化に四苦八苦している大手電力には、そんな大規模投資の余力も資金力もない。

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【再エネ中心の電力システムへ】
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 さらに言えば、わが国では電力需要は一貫して減少しているし、人口も減少していくので、危機をあおり立てるのは、政府と大手電力、原子力ムラのヒステリックな宣伝だけ。自然災害を除けば、需給ひっ迫そのものの現実性は、小さくなるばかり。

 仮に電力需給が厳しくなったとしても、これからは、供給側ではなくて、需要側の調整が重要となる。衰退産業の原発を建設している間に、再生可能エネルギーのコスト低下はすすみ、再エネ中心の電力システムが求められるようになる。広域的な電力融通、蓄電池などの技術開発、揚水式発電所の活用など、新しい方向はいっそう明らかになるだろう。

 関電の老朽原発再稼動によって「西日本壊滅」といった過酷事故が起こらない限りは、という条件付きですが(2023年1月4日)。