◆関西電力 闇歴史◆096◆

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◆関電の全原発で、火災防護対象ケーブルの対策がなされず!(2023/3/29)
 認可された設計工事計画(設工認)に従わずに運転継続!
 数年かかる見通しの工事を怠って、規制委も関電も事態を軽視!
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◆火災防護対策の設工認違反

 福井新聞の報道「40年超運転の高浜原発1、2号機 再稼働時期が遅れる見通し 火災防護対策の指摘受け追加工事」(2023/4/25)によって、火災防護対策の設工認違反が、高浜原発1、2号機のみならず、既に再稼働している美浜原発3号機ほか、関電の全原発にも及ぶことが明らかになった。
(→こちら

 規制庁が2022年4~6月に美浜3号機を対象に行った原子力規制検査で、非常時に原子炉を冷却する補助給水ポンプ関連の火災防護対策に不備がみつかり、検査指摘事項に当たると判断。その後、高浜1、2号機でも、非常時に原子炉を安全に停止させる機器のケーブルを収納する電線管の火災防護対策が不十分だと検査官が現場確認したとのこと。以上は、2023/3/29の規制委会合で報告された。

 2023/3/29 規制委員会資料(→こちら)によれば、
 
┌─(規制委資料より)───
 令和3年度第3四半期に関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)美浜3号機に対し、3年に1回行う火災防護の原子力規制検査(チーム検査)を実施した。検査の結果、認可を受けた設計及び工事の計画(以下「設工認」という。)に従った工事が行われず、火災防護対象ケーブルのA系とB系の系統分離1がされていないことを検査指摘事項とした(令和4年7月22日委員会報告2、重要度3:緑、深刻度4:SLIV(通知なし)。
 原子力検査官からの検査指摘事項に対し、関西電力は、是正処置として火災影響範囲(ZOI: Zone of Influence)内の火災防護対象ケーブルを収容している電線管に耐火シート等を設置する対策を行うとしていることを確認した。
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 これは明らかに「設工認」違反であり、火災防護対象ケーブルの対策がなされていないにもかかわらず、再稼働を認めていたことになる。2021/10/23、美浜3号機は特重施設が設置期限に間に合わず停止。その後、2022/8/30に再稼働している。

 とくに、美浜3号機は、火災影響範囲内の対象ケーブルの対策すらしていないことが問題。他のプラントは火災影響範囲外。しかし、対策はすることになっている。

 いずれの原発でも、「設工認」では火災防護対象ケーブルは火災影響範囲内か範囲外かを問わず、「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護にかかる審査基準」(「火災防護審査基準」)に基づく「1時間耐火壁+感知自動消火設備等による火災防護対策」を行うことになっている。しかし、現実はどうか。以下のように指摘されている。
 
┌─(規制委資料より)───
関西電力美浜3号機、高浜1~4号機及び大飯3,4号機並びに九州電力川内1,2号機及び玄海3,4号機において、火災影響範囲外の電線管には「1時間耐火壁+感知自動消火設備等の火災防護対策」がなされておらず、設工認に従った系統分離対策が施工されていない。


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 上記「系統分離などがなされていなくて対策が必要なケーブルの長さ」の一覧を見ると、関電はすべての原発に及んでいて、長大になっている。しかし、関電など事業者の対応方針は、対策の実施完了までには相当の期間を要することから、実施完了までの間、本来の対策(「実用発電用原子炉及びその附属施設の火災防護に係る審査基準」)と同等水準の系統分離対策として、対象の電線管の周囲に可燃物を配置しない等の運用を組み合わせた処置を実施することで良いとしている。審査基準に適合していなくても、それと同等なら問題ないというわけだが、可燃物を放置してしまうようなミスは、2022/12/9 の高浜1、2号機の海水電解装置建屋火災事故でも起きていた(点検で使用したウエスなどが入ったビニール袋に着火したと推定→◆058◆)。そのようなことがあっても延焼しないために物理的に隔離する必要があってこその「設工認」なので、原子炉を停止して工事を行うよう求めるべきではないか。

◆設工認通りの対策を行うと、数年かかる

 3/29の規制委では、関電が最終的に設工認通りの対策を行う場合、時間がかかるので、その間、部分的な対策と可燃物を配置しない等の運用を組み合わせた対策とするとしていることについて、杉山委員が最終的とはどのくらいのスケール感なのかと質問している。それに対して、規制庁は次のように答えている(→こちら、p.30)。
 
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「○髙須原子力規制部検査グループ安全規制管理官(専門検査担当)
原子力規制庁、髙須でございます。
明に何年というのは具体的にはまだ聞いていませんけれども、数年は掛かるかなとは言っています。」
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 これでは、対策工事に数年もかかり再稼働が遅れてしまうので、意図的に工事をしなかったと言わざるをえない。いかにも原発稼働で金儲けしか頭にない関電の考えそうなこと。

◆ずさんな関電、重く受け止めない規制委

老朽原発40年廃炉訴訟市民の会(→こちら)の柴山恭子さんの指摘は的確。
 
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 岸田政権の原発回帰政策で前提とされている「厳格な」原子力規制とは、工事計画認可違反にすぐに気づけず再稼働を許し、違反に気づいても、かつ、事業者がずさんな管理運営を繰り返していても、原発を運転し続けてよいとするレベルのものでしかないことを多くの方に知っていただきたいと思います。

 また、関西電力は、4/25の福井新聞の報道を受けて即座に「当社が発表したものではない、高浜1、2号機は計画どおり再稼働できるよう取り組んでいる」などと発表しましたが、3/31に提出した工事計画変更認可申請に対し、認可はなされていません。

 4/13の審査会合で審査した記録がありましたが、火災防護基準と同等の水準と言えるかどうか説明ができていないと指摘されていました。部分的な防護対策と可燃物持ち込み防止でとりあえずの対策にしたいようですが、可燃物持ち込みについて、関電が保安規定の変更もしないとしていることについて、杉山委員から「保安規定に書かれないというのはちょっと考えられないです」「そもそも、このお話は既許可の設工認の通りになっていないということがスタートですからね。もうちょっと問題を重く受け止めていただきたいと思います。」との指摘もありました。

 いや、ですから、規制委が重く受け止めて、美浜3号機をはじめ対象全原発を停止させるべきではないですか。

 工事計画認可通りに火災防護対策工事をしていなければ合格にはならず、稼働できないはずなのに、後から未施工がわかった場合は原発を止めなくてもいいという、これが世界最高水準の厳しい原子力規制なのでしょうか。
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 なお、4/21に開催された福井県原子力安全専門委員会の資料に、本件についても出ている。
(→こちら、[4]、[5])

 また、関電の5/2のプレスリリース(→こちら)では、設工認の申請をして、以下のようになっている。
 
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当社は、3月31日に高浜発電所1、2号機電線管の火災防護(系統分離)対策に係る設計及び工事計画変更認可申請書を原子力規制委員会に提出しました。
現在、申請内容の審査中であることから、再稼動時期が高浜発電所1号機は2023年6月3日から、高浜発電所2号機は2023年7月15日からそれぞれ遅れる見通しとなりました。
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 高浜原発における追加工事は「1号機が5月中旬、2号機が6月中旬の完了」と報道されている。しかし、関電がどの程度の工事をするつもりかは不明。関電と規制委のなれ合いで、ほどほどの代替工事ですませる可能性も大きい。追加工事が完了した後、規制庁が使用前検査を実施、問題がないことを確認してから、再稼働の工程に入ることになるわけだが、遅れはどれくらいになるか、5/3 現在では不明。

◆美浜の会の要望書

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●美浜の会は、5月9日 規制委員会へ要望書 (→こちら)

関西電力、及び九州電力のすべての原発が火災防護の基準違反
基準違反と分かっていながら、安易な「是正措置」を認めることは許されない

要 望 事 項
1.安易な「是正措置」の実施を認めた 3月29日の「対応方針」を撤回すること。
関電が3月31日に提出した「火災防護対象ケーブルの系統分離対策に係る設計及び工事計画(変更)認可申請」を認可しないこと。
2.少なくとも、火災防護審査基準(2.3.1(2))の系統分離対策を実施するまで、高浜 1・2 号の再稼働を認めないこと。
3.関電と九電のすべての原発を停止させ、火災防護審査基準(2.3.1(2))の系統分離対策を実施させること。
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