◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(2) ]河本猛 議員、再稼働反対の発言

河本 猛 議員(日本共産党)の発言

請願第5号 老朽原発の再稼働に関する請願書

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第5号 老朽原発の再稼働に関する請願書」に対し、賛成する立場から討論を行います。

 請願第5号から14号までは、美浜3号機を運転しないように求めるものであったり、再稼働についての拙速判断を避け、熟議を求めるもの、配管の総点検を求めるものであるので、一括して賛成討論します。

 美浜3号機の原子炉容器については、中性子照射脆化に加え、精錬技術が未熟だった70年代の鉄に含まれる銅の含有率によって、原子炉容器が脆くなるという指摘について、福井県原子力安全専門委員会の審査を見極める必要があると考えます。

 原子炉容器の監視試験片の「元のデータ」原データについては、請願者が裁判の中で、原子力規制委員会が原子炉容器の監視試験片の原データも見ずに認可を行っていたことを明らかにしたものです。

 科学者や学識経験者であれば、信頼できるデータの比較によって原子炉容器の安全性を評価していくので、原データの問題については、福井県原子力安全専門委員会に要請しています。

 また、原子力防災計画、住民避難については、新型コロナウイルス感染症の拡大により、感染症対策が大きな課題となっています。バスや避難所の定員を大幅に減らす必要があるため、これまでの2倍以上の車両や施設を準備する必要があります。議会でも、内閣府の原子力防災担当から「まだ決定版と言えるようなものは出来ておりません」という説明を受けており、感染症対策が盛り込まれた「緊急時対応」が未完のまま、原発の再稼働を容認することは許せません。

 原発の問題は、美浜町だけの問題ではありません。県内外の広範囲の人々が、私たちの故郷を守り、子どもや孫の代まで、この地で暮らし続けられるよう求めていることに真摯に向き合うべきです。

 また、「老朽原発美浜3号機の稼働再開について、拙速判断を避け、熟議を求める」件について、原特委員会の審査において、委員の中から一人も継続審査を求める提案がなかったことを残念に思います。継続審査の提案があれば、その賛否について議論し、本会議で報告されますので、本会議の採決においても継続審査についての項目が追加されるはずなんですが、原発を推進する議員に対して、審議のプロセス(過程)が大切であるという良心に訴えかける期間を持てずに、美浜3号機の再稼働か否かの採決に至ってしまったことを悔いるばかりです。

 また、これらの請願の中には、現在北海道に住む県内出身者が個人で提出されたものや、市民団体と一緒に全国各地の245名の議員が賛同して共同提出されたものがあります。

 原発の危険性を訴える側は、日常生活を壊され、避難を余儀なくされる広範囲の自治体住民です。

 原発の再稼働を決めたプロセス(過程)というのは、責任を追及する側にとって重要な争点になります。国や規制委員会は、美浜3号機の再稼働については、美浜町、福井県、関西電力が安全協定の中で判断することであって、国や規制委員会が美浜3号機の再稼働について、安全を担保するような発言はしないと言っているので、美浜3号機の再稼働については、再稼働を決断した「地元同意」というのが一番の争点になります。

 その「地元同意」を判断するプロセス(過程)の中で、議会が安全規制部門の審査結果を待たずに、原発を再稼働させる「地元同意」をした、規制基準の審査の信頼性が揺らいでいる中で、科学的観点を無視して地元経済を理由に「地元同意」をしたとなれば、それは美浜町議会の責任です。

 私は原発に反対の立場ですが、町民に対する責任を重く感じます。

 おそらく福井県知事は、立地と準立地、関電の経済圏ではない市町自治体の県民のことを考えていると思います。

 関電や原子力の受益者でない県民の命と安全をどう保障していくかという観点から「再稼働についても国や安全規制部門の責任を明確にし、国は、福井県民に再稼働の責任を押し付けるな!」ということを考え、県民に「地元同意」の責任が及ばないよう国が責任ある態度を示すように、国に対してボールを投げ返しているんだと思います。

 私は、町民と原子力の受益者以外の広範な人々をどう保護するのかという観点を、政治家は持たなければならないと思っています。

 議員245名の背景には、この議員を支える有権者がいます。数千、数百の得票を得て当選されていることを考えれば、平均で1000の有権者がいたとして24万5000人、美浜町と同じぐらいの平均500の有権者がいたと想定しても12万2500人の有権者が背景に見えます。

 245名の自治体議員が名前を連ねる請願1枚だけでも、美浜町の人口の12倍以上になるわけで、その重さを議会にも受け止めていただきたいと思います。

 原子力を取り巻く環境は、最近でも川崎重工が原子力事業を売却し、水素エネルギー事業に注力することを決めるなど、原子力は市場での競争力を失っています。

 半世紀前、化石燃料から原子力への転換が進みましたが、世界市場は原子力から持続可能な再生可能エネルギー、水素エネルギーの活用に転換しています。半世紀ともに歩んできた原子力がいつまでも最先端と思い込んでいるようでは、美浜町の過疎化、産業の衰退は止められません。

 原子力に頼ったままだと新たなイノベーション、新市場や新資源の獲得、新制度の導入などが遅れてしまいます。美浜3号機の再稼働をやめ、原発に頼らないまちづくりが必要です。

 また、美浜3号機のように被害が広範囲にわたり、多くの生活権を侵害する恐れのある問題で、専門家の見解が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で、一方の見解を安易に採用することがあってはならないと考えます。

 専門家による委員会を持っていない議会においては、福井県原子力安全専門委員会の審査結果を見極める必要があることから、請願第5号から14号までを一括して賛成し、慎重に議論を重ねていくべきだ!と申し上げ、賛成討論を終わります。

請願第3号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第3号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について」に対し、審査を付託された原特委員会で継続審査の提案がなかったので、本会議採決においても継続審査についての項目がありませんので、反対する立場から討論を行います。

 請願書の中には、「美浜発電所をはじめとする原子力発電所が稼働せず、停止したままの状態となっており、美浜発電所に関わる美浜町の企業や町民にも大きな影響をもたらしています。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、美浜町の経済も著しく停滞している状況にあります。」と、原発利益共同体と停滞している町の経済状況のためには、美浜3号機の再稼働が必須事項であるかのように書かれています。

 しかし、美浜原発は9年以上も停止し、11月には関電のすべての原発が停止しましたが、原発がなくても電力需給に影響が出ることはありませんでした。電力消費地にとって、リスクが大きい原発でつくる電気は不要になっているのが現実です。

 停滞している町の経済状況は、むしろ原発に固執した偏った産業構造にあります。停滞している町の経済状況を考えるなら、原発の再稼働ではなく、原発に固執した偏った産業構造からいち早く脱却し、原発に頼らないまちをつくるべきであります。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大を考え、密閉した空間で作業し、感染症に脆弱な構造を持つ原子力発電所は停止するべきです。

 美浜発電所が大阪万博へ初めて原子力の灯りを送ってから半世紀が経過していますが、原発は世界的にも終焉を迎える産業です。

 世界の再生可能エネルギー発電量は原発を上回り、世界のエネルギー市場で持続可能な再生可能エネルギーの優位性が高くなっています。持続可能な再生可能エネルギーに比べ、原発の発電コスト、使用済み核燃料などの処理・処分に必要なバックエンドコスト、社会的リスクは高く、世界のエネルギー市場で競争力を完全に失っているのが現実です。

 高経年化対策で資産価値が上がった老朽原発の再稼働で、半世紀にわたり原発と共生してきた自治体を含む原発利益共同体に恩恵があっても、美浜町経済の更なる発展などありません。

 この半世紀、原発は、事故や不祥事を起こすたびに、地元に対して一定の恩恵を与えてきましたが、いまだにそのような恩恵に与れる(あずかれる)ような幻想を抱いて、金品受領問題や労災死亡事故、美浜3号機の死傷事故を忘れ去っているように感じます。

 原子力規制委員会の使用前検査や福井県原子力安全専門委員会の審査結果はまだ出ていません。

 この請願を採択するということは、国や規制委員会、福井県や原子力安全専門委員会の判断よりも早く、美浜町議会が「事実上の地元同意」をしたことになります。

 原発は科学的・学術的な議論を見極めるのではなく、原子力産業の恩恵に与る美浜町の人々ために、政治的な数の力で再稼働が進められていると言っても過言ではありません。

 国は「地元同意」がなければ原発の再稼働は出来ないと言っており、老朽原発美浜3号機を再稼働させるプロセス(過程)は、美浜町議会の「再稼働を求める請願」の採択から始まります。

 原発は国策でありますが、美浜3号機の再稼働については、美浜町、福井県、関西電力の安全協定に基づいて進められます。

 原発の再稼働に対しての責任は、地元にあります。原発は国策であるという理由で、国民に責任を転嫁する者は原発を推進する資格はありません。

 安全協定に基づいて考えても、美浜町議会は、美浜町、福井県、関西電力よりも早く、「事実上の地元同意」をしたことになり、美浜3号機の再稼働については、そのプロセス(過程)の始まりである美浜町議会に責任があることを明確に述べておきたいと思います。

 福井県は、県議会が再稼働に関わる審査ができるような判断材料が揃わない状態で県議会に判断を求めるようなことはしないでしょう。

 美浜町議会では、再稼働に関わる審査ができるような科学的・学術的な判断材料が出ていない中で、美浜町内や福井県内にとどまらない関西圏や中京圏などの広範囲の住民に影響を及ぼす原発の再稼働を非科学的に認めるようなことは許されないと考えることから、この請願に反対する理由とし、討論を終わります。

請願第4号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第4号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について」に対し、反対する立場から討論を行います。

 福井県原子力平和利用協議会美浜支部は、議会の中に半数以上の会員を有し、議会に対して大きな影響力を持つ組織です。この協議会の県会長には、山口治太郎・前町長が就任され、美浜町内での影響力を強く感じます。

 請願書の中では、「美浜の地で住民サイドに立った原子力の平和利用を推進する活動を行ってきました。」と言いますが、核兵器禁止条約に背を向けた議会議員の多くが、安全保障の名のもとにアメリカの「核の傘」にしがみつき核兵器を容認しています。

 原子力の平和利用を推進する活動を行ってきた組織であれば、町民の代表者である議員が核兵器を明確に否定する立場で、原子力の平和利用を唱えていると思っていたのですが、結局は、日米安保の「核の傘」の中で核兵器を容認した原子力推進です。私は、平和利用と称しながら核兵器を明確に否定することもできず、原子力を推進している活動には、疑念を抱いています。

 また請願書の中で、「国は、国は、」と、地元が国策を受け入れてきているようなことが書かれていますが、国策である原発を受け入れてから半世紀、国策である原発と巨大電力企業につき従ってきた地元にとって、今や原発の再稼働は、国策の受け入れではなく、地元の要求から始まり、再稼働されていく仕組みになっています。

 国は、「原発依存度を可能な限り低減させる方針の下」、原発のリプレースには慎重な姿勢を示しています。しかし、現状において、原発の再稼働やリプレースが地元政策になっている以上、責任は国民ではなく、それを推進する美浜町民にあると考えます。

 原子力政策は国策であるという理由で、美浜町の責任を国の責任に転嫁することは許されません。

 まずは、原子力を推進する地元の責任、原子力を推進する自らの責任を自覚するべきです。

 国は、2030年のエネルギーミックスにおける原子力発電のエネルギー構成比率20~22%の達成が困難であることを述べています。これから次々と40年を迎える老朽原発を再稼働し、原発の稼働率を80%~90%にしなければ、原子力発電のエネルギー構成比率20~22%の達成はできません。

 国が掲げる2030年のエネルギーミックスの実現は既に破綻しています。破綻している目標を無理やり達成するために、原則40年の運転期間を最長20年延長できる例外規定を当たり前のように認め、稼働率も引き上げる。こんな危険な計画が美浜から開始されることを経産省の説明を聞いて議会もわかっているはずです。

 私はこんな危険なことはとても容認できません。

 原発は、国策として機能できないほどの国民的な反対があり、また再生可能エネルギーの優位性による普及促進から、原発で生み出す電気が必要なくなっています。

 82.6万kW(キロワット)級の電気出力を誇る美浜原発3号機が9年以上も停止し、電源一極集中のリスクが高い原発の巨大なエネルギーは、不安定なエネルギー供給であることが証明されました。

 国から「ベースロード電源」として位置づけられながら、その役割を果たさなくても、電力供給が不安定になることはありませんでした。

 他人に責任を押し付け、原発が抱える難題・大きなリスクを顧みない(かえりみない)、原発の再稼働は許せません。

 また、原発は、安価な電気を人口の多い関西圏の広範囲の人々のために届けることが目的でした。それが今では、美浜町の基幹産業として町の経済や雇用の安定確保のために再稼働が求められるようになっています。

 ですが、高レベル放射性廃棄物、使用済み核燃料の処理など、膨大なバックエンドコストの問題が社会常識化する中で、安価な電気を届けるという原発の役割は終わりました。

 人類の英知は、リスクが大きい原子力に頼ることなく、持続可能な再生可能エネルギー(自然と向き合いエネルギーを確保していくこと)、自然と共存共栄を図っていく道に進んでいます。老朽原発美浜3号機の再稼働など必要性はありません。

 いつまでもコンクリートの巨大施設と共存共栄できるという幻想から抜け出し、美浜町の豊かな自然と共存共栄を図っていく、基幹産業の転換こそ、今必要な時です。

発委第4号 美浜発電所3号機の40年超運転にかかる意見書の提出について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「発委第4号 美浜発電所3号機の40年超運転にかかる意見書の提出について」に対し、反対する立場から討論を行います。

 この意見書は、原特委員会から提出され、異議も反対もなく、全会一致で提出されたものであることが、本会議前の全員協議会で明らかになりました。

 意見書の中には、「美浜町議会は、原子力発電の将来にわたる必要性を認めつつ、再稼働の同意にあたり、次の7項目について、政府としての着実な取組みをここに求める」という記載があるので、この意見書の提出を認めるということは、原子力発電の将来にわたる必要性を認め、再稼働に同意することになりますので、私はこの意見書提出を認めることはできません。

 また、項目の中には、エネルギー政策の今後の展望について、「エネルギー基本計画の見直しに当たっては、新増設、リプレースを含む将来を見据えた原子力政策の方針を示すこと」と書かれています。まさにこの点は、国も認めていない地元要望であり、今や原発というものが、国策の受け 入れではなく、地元から進められる地元政策であることを証明するものです。

 また、国と事業者による原子力発電所の一層の安全管理について、原子力防災対策について、立地地域の振興について、地域共生について、原子力発電に関する理解活動の促進についてなどの課題があるのであれば、美浜3号機の再稼働など容認するべきではないと申し上げ、反対討論を終わります。

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[2020/12 /15 美浜町議会資料(1) ]原子力発電所特別委員会報告(再稼働派議員の発言など)
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