◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(3) ]松下照幸 議員、再稼働反対の発言

松下照幸 議員(無所属)の発言

美浜原発3号機再稼働の請願に関する賛成討論

 ただ今から、私が紹介議員となりました請願第6号、10号、11号について、一括して、賛成の立場から討論を行います。<技術的問題><組織的問題><倫理的問題>の3つの観点から問題点を指摘します。

<技術的問題>

1,「老朽化」という問題について

 40年を超える3号機の老朽化問題についてですが、原発という巨大設備は、日本原子力学会編「原子力がひらく世紀」1999年版によれば、1000万点に及ぶ部品から成り立ちます。設備ごとの老朽化対策は難しく、「老朽化した配管の強度計算をどのようにするのか」と関電社員に聞いたことがあります。「新品材料を使い、配管肉厚を半分にして、強度を計算する」という回答です。「それは、そういう実験をしたと言うことに過ぎず、老朽化を加味した計算にはならない」と言いますと、引き下がってしまいました。この一事だけをとっても、老朽化を加味した対策がいかに困難かを理解できます。実機レベルでの老朽化検証は、まず不可能と言えるでしょう。

 関電の美浜3号機に関する住民説明会で、設備の老朽化をどう判断するかの質問を行いました。特に、経年劣化を考慮した動的解析がどのようになされているかを具体的に知りたかったからです。発電所長の回答は要領を得ないものでありましたので、エネルギー政策課を通して、再度、文面で説明を要請しました。未だに何の連絡もありません。不誠実です。行政側も、町民の安全に関して、老朽化をどのように解決しようとしているかの情報は必要なはずです。回答を出せないというのであれば、町民の安全を優先すれば、原発の運転をする資格はありません。

 老朽化に限らず、幾度にも渡り、個別課題に対して、関電事業本部に質問状を渡し、文面での回答を求め続けてきました。一度も回答を得られたことはありません。ずいぶん前になりますが、印象に残っておりますのは、使用済み燃料の高燃焼度に関する実験で、フランスのカブリ炉が興味深い実験結果を出していましたので、関電に高い燃焼度の使用済み燃料目視検査の実態を知りたいと申し入れました。電話での回答は「企業秘密と核物質防護の観点で、受けられない」とのことでした。「この件は町民の安全に深く関わることなので、そういうことであれば、正規に情報開示を求めることになる」と言いますと、後日職員が来られて、分厚い資料を頂きました。中身を見ると低燃焼度の燃料調査に関する資料です。「誰がこんな資料を要求した!」と怒ったことを記憶しています。

 カブリ炉の実験は、高燃焼度の燃料を選び、そこに反応度を入れて結果を見るものですが、高燃焼度の燃料の中で、目視検査により傷があった燃料棒が、大きな破損をしています。我々町民にとって、燃料棒の破損は安全上、極めて重要な案件なのです。

 関西電力の技術者や広報担当者は、美浜2号機事故が起こる前、蒸気発生器細管には粘りがあるので「ポキッと折れることはない」と言い張り、当時の原子力安全委員会の方も同様に言っていましたが、ギロチン破断をしてしまいました。その時に燃料棒が破損していたら、地域が一斉に避難しなければならない事態になったでしょう。それほど重要な情報が、オープンにされないのです。

 大飯3号機ひび割れに対する関電対応は、特別ではなく、過去にも同様のことが、美浜原発でも行われていました。その結果として、美浜2号機、美浜3号機事故が起き、3号機事故では11人の死傷者を出すことになりました。当時の若い下請け社員が「もう、会社をやめたい」と語っていたと伝え聞いています。原発で働く人にとっても、原発の安全はとても大きな問題なのであります。運転開始初期の頃、美浜1号機では燃料棒の大折損事故が起き、事の重大さ故に、全てが隠されました。田原総一郎氏がそれを暴き、ようやく多くの人が事故の存在を知ることになりました。国と電力会社が結託した隠蔽行為だと思われますが、今でも事故の詳細を知ることが出来ません。住民の安全や作業員の安全にとって重要な情報は、全てオープンにしなければなりません。これをしないところに、事故が入り込んできます。

 原発は巨大設備であるが故に、個々の設備を検証することは不可能で、ほとんどがコンピュータによる解析結果です。実証試験ができません。これでは事故が起きるのは必然です。

2,耐震安全性

 原発ごとに決められる基準地震動は、過去の地震観測記録から得られた解析データに基づいて経験式を作ります。経験式は、「平均値」としての地震規模を算出します。しかし、平均値から外れた「バラツキ」をどう考慮するかが、安全上重要な問題となります。私たちが以前から指摘してきたことです。12月4日の大阪地裁判決は、「原子力規制委員会は、平均値から上振れするリスクを前提とした、地震規模を設定するかどうかを検討せず、実際に上乗せもしていなかった」と指摘しています。原子力規制委員会自らが定めた「審査ガイド」があります。「経験式は平均値としての地震規模を算出するもので、平均値から外れたバラツキも考慮される必要がある」と定めています。ゆえに、大阪地裁判決は、審査において「看過しがたい過誤、欠落があり、違法である」と断じたのです。分かりやすい論点です。既往地震データの中で、平均的な地震動だけをみて、平均から離れた、突出した高い数値の地震データを無視し、その突出した地震動に対応していなければ、原発は破壊されることになります。

 判決が指摘した「バラツキ」への対策欠如は、「規制委員会が知らなかった」のではありません。「バラツキ」に対応しようとすると、対策のための時間とコストがかかるために意図的に対応しなかった、或いは、他の理由を付けて「バラツキ」を考慮する必要がないと主張したのです。この論理の目指すところは、住民の安全よりも、「電力会社への便宜」であります。それ以外にまっとうな理由はないと言えます。

 福島原発事故を経験して、二度とこのような事故を起こさないと反省し、「新規制基準」を創りました。再び、原子力規制委員会は電力会社の「虜(とりこ)」に成り下がってしまったのでしょうか。そう思わざるを得ません。自分たちが作った「審査ガイド」に「経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するバラツキも考慮されている必要がある」と書いています。

 新規制基準は「世界一厳しい基準」とよく言われます。町長も語っていますし、原発輸出に力を入れて失敗した安倍元首相が、常に語っていた言葉でした。ほとんど大きな地震が起きないところに、世界の原発は建てられています。大きな地震が常に発生する日本、断層が集中する地域に原発を建ててきた日本。世界より厳しい耐震基準を作らなければならないことは自明です。しかし、前原子力規制委員長の田中氏が、「新規制基準をクリアしたとしても安全であるとは言えない」と語っています。「世界一の規制基準」と語る人たちは、再稼働を推進するための呪文を唱えているに過ぎません。まやかしです。原発を稼働させて、地域経済へお金を回すことを優先させる言葉であると、私たち住民は感じています。その耐震基準において、規制委員会自らが作った「審査ガイド」を無視して、原発の再稼働を規制委員会が容認したのですから、今回の大阪地裁判決は、住民サイドに立つ「まっとうな判断」と言えるでしょう。

 私が紹介議員となった3件の請願書において、その中の1件が、審査の過程で蒸気発生器伝熱管の耐震評価で、不正の疑いがあり、規制委員会はそれを容認するという「ずさん審査」を指摘しています。地震応答解析において、地震の揺れが収まる程度を示す「減衰定数」の設定で、不正に審査を通していることも指摘しています。基準地震動の過小評価、熊本地震のような「繰り返しの揺れ」に対応できているのか等も指摘しています。原子炉容器の劣化を調べるために、炉内に「監視試験片」を入れ、中性子の影響を調べますが、この「原データ」を確認もせず、規制委員会は関電の評価結果を鵜呑みにして認可していたことも指摘しています。この「原データ」は、金属のもろさを示す重要なものですが、関電はこの「原データ」の公開を頑(かたく)なに拒んでいると指摘しています。名古屋地裁での裁判の中で、規制委員会が関電の「生データ」をもらっていない旨を証言しているのです。

 これでは、福島原発事故を防げなかった「原子力安全・保安院」と、どう違うのか。聞くところによれば、「ホアンインアホ」という言葉が、都会の子供たちの中で「言葉遊び」として流行ったようです。どちらから読んでも同じです。的を射た言葉として、手をたたいて感心したことを思い出します。

 耐震安全について、設備の経年劣化を考慮すれば、さらに危険性が増します。阪神淡路大震災を経験し、地震計が全国に沢山設置され、様々な地震を身近に観測できるようになりました。その結果、建設時は小さく設定された原発の基準地震動は、3号機でも大きく引き上げられました。過小評価されてきたからです。今までの「基準地震動」は何だったのでしょう。大きな地震が当地を襲わなかったことに、胸をなで下ろさざるを得ません。

 美浜原発3号機は、敦賀半島北西岸を走るC断層が斜めに傾斜して入り込んだ震源断層面の真上に立っています。地震に関するメカニズムがわからなかった時代に、建設されました。そのC断層が動いたときにどれほどの地震エネルギーが発生するのか。原発直下に存在する震源断層がずれ動き、それに伴って原発の建つ地盤も上下左右に動くのですから、今でも、正確に予測できません。その上に、設備の劣化という条件が加わりますから、3号機の耐震安全性は大いに疑問があると言わざるを得ません。

 「大飯3号機配管のひび割れの進行速度を計算し、13ヶ月後に損傷配管の必要肉厚を確保すれば、ひび割れ配管を取り替えずに運転できる」とする技術の「維持基準」ですが、「傷の進行速度評価式の信頼性は低い」ということですから、技術の維持基準制度そのものが問われるべきです。新検査制度は、「傷の進行速度評価式の信頼性が低い」ことを承知で、経済性優先のひび割れ放置運転を可能にする制度ですから、「フリーアクセス」で安全をカバーできると考えるのは、余りに拙劣な考え方です。「傷を発見したら、運転を止めて、取り替えてから、運転再開すること」、これが最低限の町民への約束でなければなりません。

 美浜2号機事故では、1万本近くある蒸気発生器細管のたった1本が破断し、炉内が大きく揺れ動きました。一部沸騰が始まったとも言われています。大変危険な状態に陥ったと言えるでしょう。大飯3号機ひび割れは「炉心近く」の外側の直径が11cmを超える中口径配管で発生しています。このクラスの配管が地震等の外的要因で一気に破断したら、或いは、ひび割れを放置したままの運転で一気に破断したら、一次冷却水が噴き出し、原子炉内の圧力が150気圧から急激に下がって、圧力容器内は一気に「空だき」状態になるでしょう。

 傷を計算して必要肉厚を確保し、運転再開をしたとしても、そこに大きな地震動が来ればどうなるか。「信頼性の低い評価式」であれば、過小評価された配管は破断し、大きな事故に至るであろうことは誰にでも想像できることです。「破断する前に小さな漏れがある。小さな漏れを発見したら、すぐに点検し、取り替えるので、大事には至らない」と、いつも説明されてきました。LBBの原則と呼ばれています。技術の維持基準はこれを否定することになります。新検査制度は、地震の危険が少ないアメリカの後追いのような政策で、より危険な方向を規制庁が選択したと言えるでしょう。

3,使用済み燃料保管

 大飯3・4号機再稼働時の関西電力と西川前福井県知事との約束で、2018年中に、使用済み燃料を保管するための中間貯蔵施設の候補地を公表することになっていました。ところが、関電は県外候補地を決めることができず、「2020年まで延期する」と言わざるを得ませんでした。その期限は今月末に迫っています。現時点で県外候補地を示せないと言うことは、核のゴミとなる使用済み燃料の「中間貯蔵」を引き受ける県外の自治体はどこにもないと言うことでしょう。青森県むつ市の保管施設に、関電原発の使用済み燃料を無理矢理入れ込もうと画策していることが報道されました。むつ市長が拒否していますが、むつ市民においても迷惑な話です。使用済み燃料保管に関し、関電の無策が生み出した結果と言えます。「トイレなきマンション」と呼ばれる原発の最大の弱点を隠し続けた結果であるとも言えます。

 3号機の再稼働が始まると、ホットな使用済み燃料が生み出されます。危険な使用済み燃料をこれ以上生み出し続けることは認められません。ましてや、よく冷えた使用済み燃料の中間貯蔵施設候補地さえ明確に示せないままの再稼働は、認めるわけにはいきません。自分から言い出した知事との公約を守れない以上、再稼働の議論を始めるわけには行かないでしょう。まず再稼働の計画を撤回するのが筋であると言えます。3件の請願書は、この点を共通して指摘しております。

4,コロナ禍での避難訓練

 関電は、来年1月の美浜3号機再稼働を目指しているようですが、コロナ禍にあって重大事故が発生すれば、避難先自治体が美浜町民を受け入れることができるのでしょうか。そういう交渉を立地自治体と避難先自治体間でしているのでしょうか。対応していないと言うことであれば、町民の安全な避難誘導に責任を持てないと言うことになります。おおい町への避難ケースですが、おおい町の人口より多い美浜町の人口を受け入れられるのでしょうか。受け入れ施設がない、或いは、大きな体育館等にぎゅうぎゅう詰めにされるのでしょうか。コロナ禍ではあり得ないことです。

 世界は新型コロナ感染拡大を受けて、再びロックダウンを実行しています。日本でも第三波が都市部を中心に襲っています。医療崩壊が危惧されています。電気は余っている状況下で、なぜ、再稼働を急ぐのでしょう。ワクチン開発が報道されていますが、普及するにはまだ数ヶ月は必要でしょう。住民の安全など頭の中にない行為であると言わざるを得ません。

 以上が技術的問題に関する私の指摘であります。

<組織的問題>

1,関電の組織的体質について

 大飯3号機の炉心近くの配管部に傷が発見され、傷の進行速度の評価を巡って、原子力規制委員会と関電とのやりとりがオープンにされています。規則では12ヶ月間運転をするためには「13ヶ月後」まで健全であることを評価しなければならないところ、関電は「12ヶ月後」までの評価でひび割れ放置運転可能との報告を提出しました。数回の会合が関電と規制委員会の間でもたれていますが、規制委員会から指摘されるたびに、関電報告の数値が変更されています。変更状況を確認しますと、傷の進行速度に関する関電の予測値が10倍も引き上げられるケースがあります。関電の予測に不信を持つ規制委員会は、傷の進行予測を、技術基準の維持規格に沿って、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」)に「関電説明資料」の計算条件を用いた検証を依頼しました。原子力機構の維持規格に基づく評価では、関電が主張する「必要最小肉厚」を満たせないことが指摘されています。「許容亀裂深さ4.1㎜」を超えているのです。規制委員会の指摘を受けて、関電は大きな衝撃を受けたと推測されます。

 関電は、超音波検査による傷の長さの指示値は、配管外側の長さであって、内側の長さはもっと短いと主張し、長さ方向の亀裂進展速度を小さく見積もって「深さ方向の亀裂進展を少なく評価する」独自の手法を用いて、規制庁に説明しました。規制庁は、関電独自の手法は「既知の手法ではない」こと、「維持規格に基づくモデル化に反する」こと、「検査の範疇の枠内で議論すべき」と、厳しく突き放しています。定められた「維持規格」に沿ったやり方で評価しなかった関電に対し、事実上の「門前払い」だと言えます。関電は持参した資料の説明さえさせてもらえず、「検査の枠内で回答する」と答えて、引き下がらざるを得ませんでした。以上が10月19日までの規制委員会と関電との会合の要旨です。

 ではなぜ、この不合理な行動を関電はとったのでしょうか。大飯3号機の配管ひび割れを発見したにもかかわらず、「このまま次回定検まで運転しても、亀裂の進行は問題なし」と結論づけて、「ひび割れ放置運転」をしたかったからです。そうすることが、大きな利益を生み出すからです。

 電力自由化により、今年11月末には、関電の小規模電力消費者が380万件も離脱しています。1件当たり、月1万円と想定すると、年間4500億円強もの減収です。正確な予測ではありませんが、これに近い数字ではないかと思われます。電力自由化の元では、厳しい競争が行われます。苦しい経営を強いられる中で、なんとかして収益を確保しようとした行為であると言えます。住民の安全を無視した悪意ある行為であります。アメリカの例に倣って規制庁が導入した新検査制度。傷を評価して、必要条件を満たすと電力会社が判断すれば、傷を放置したままで運転を継続できるようになりました。電力会社や原発のコスト削減に寄与する政策です。安全を優先するなら、あり得ない政策変更です。「傷を発見したら、止めて点検し、取り替えてから再稼働する」、「小さな漏れを発見したら、すぐに止めて点検するから、大事に至らない」と言い続け、住民を説得してきました。福島原発事故を経験しながら、何で、新検査制度を導入しなければならないのか。バックエンドを含めた、設備コストの高い原発の経営を支えるための政策ではありませんか。

 「傷の進行速度を評価する計算式の信頼性は低い」とされます。美浜3号機の議会視察時に、私の質問に答えて「値は小さく出る」と発電所長は答えました。そうであればなおのこと、「傷の進行予測」など正確にはできないことを規制庁に伝えるべきです。規制庁も「評価式の信頼性が低い」ことを知っていて、「維持基準」を導入しているのですから、「同じ穴のムジナ」とも言える関係なのでしょう。今回の大阪地裁の判決は、原発の安全性に背を向ける原子力規制委員会・規制庁の本質を言い当てたことになります。

 昨年12月と今年6月、そして8月の三度にわたる会社法違反や業務上横領容疑の告発状が、ようやく10月初めに、大阪地検特捜部によって受理され、関電幹部の汚職の刑事責任が問われることになりました。大阪地裁の判決に加えて、関電のガバナンス、コンプライアンス欠如が問われることになります。もはや、何を言っても信用されない「安全規制」、「安全運転」に成り下がりました。原発、そして関電や規制庁への世論の信用はなくなり、再稼働など議論できる状況ではありません。請願3件は、そのことを厳しく糾弾しています。

<倫理的問題>

1,核のゴミ保管について

 使用済み燃料は再処理で取出されたプルトニウムがMOX燃料として高速増殖炉で燃やされなければ、そのまま核のゴミとなります。六ヶ所再処理工場はアクティブ試験中の度重なるトラブルで止まったまま、2014年から適合性審査に入り、今年7月にようやく合格したものの、工事竣工にはまだ1年以上かかります。また、原子力委員会の方針転換で、英仏保管の日本の余剰プルトニウムが減らない限り操業できない状況です。高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決定し、解体作業を進めています。軽水炉で燃やす「プルサーマルがある」と言いますが、軽水炉で燃やせるプルトニウムはごくわずかな量です。日本は核兵器を持たないと世界に公約しており、余剰プルトニウムを持てないことになっています。発電所でのプルトニウム消費量が、再処理を制約することになります。

 核燃料サイクルは事実上破綻し、「使用済燃料」は「核のゴミ」そのものです。その保管期間は、10万年と言われています。

 現代人の共通の祖先とされるホモサピエンスが、アフリカのサハラ砂漠を越え、世界各地に移動を始めたのが、今から8~7万年前。フィリピンから日本にたどり着いたとされるのが4~3万年前だと言われてきました。最近のゲノム解析ではさらに遡るようですが、途方もない時間です。私たちが今使う原発の電気は、10万年先の人たちにまで、その保管・管理を強要することになります。倫理的にとても認められないことであります。

 関電は、「2018年までに核のゴミ保管先を明確にする」と西川前福井県知事に約束しました。一度は反故にされ、今年中に「候補地」が示されることになっています。もし、議会が再稼働推進請願を認めてから「候補地を示せませんでした」と関電が言うことになれば、美浜町議会の決断が町民から強く批判されることになります。福井県知事も、県議会関連の方たちも、保管先が決まらない状況下で、「まだ再稼働を議論できる段階ではない」と語っています。そのとおりであると私も思います。さらに付け加えるなら、どこも引き受け手のない危険な使用済み燃料をこれ以上生み出すべきではなく、この点だけからでも、再稼働は認められません。再稼働はまだ議論できる段階ではないのだと言えます。

2、若狭湾原発の事故時の被害は甚大

 若狭湾の原発は、大きな事故を起こせば、その被害は福島原発の比ではないと推測できます。関西市民の水瓶である琵琶湖が汚染されるだけでなく、偏西風に乗って、放射性プルームは、日本列島中央部の山脈により拡散され、数百km先まで、広範囲に原子力被害を及ぼします。日本海側の半島の先端部に建つ福井県の原発群は、一度大きな事故を起こせば、汚染水をため置くスペースはなく、汚染水は処理されることなく、直接に日本海に放出されるでしょう。大変な被害を日本列島沿岸部に及ぼすことになります。中国や韓国、ロシア、北朝鮮から、莫大な賠償を要求されるでしょう。日本国内では「なぁなぁ」で済まされても、国際関係はシビアで、訴訟社会です。そうなれば日本の沈没です。美浜町の経済どころではありません。

 町長は、私の一般質問に、「国外の損害賠償は仮定の話で、お答えできない」と話しましたが、間違いなく損害賠償の請求を受けることになるでしょう。再稼働の判断は、そのような責任を意識して、判断することが求められます。

<事故の責任体制>

 事故の責任は一体誰がとるのか。11人の死傷者を出した美浜3号機事故。実質的責任を誰も問われておりません。福島原発事故でさえ、現時点で誰も責任を問われておりません。原発の分野では、責任が問われないように「仕組み」を作ってあるからです。これほどの事態を引き起こした東電でさえ、政治的判断の下、のうのうと生き残っています。破綻させた上で、新たな会社が電力供給を担うことが、この国の基本的システムであるはずですが、政治は東電を保護し、責任を負わせませんでした。

 歴史的に繰り返される東北地方太平洋沿岸の歴史地震。15mを超える津波が記録されており、東電内部でも対策を検討していました。浜岡原発裁判でも、大きな津波を巡って論争がなされました。福島原発事故は、まさに人為的事故でありました。事故の組織的責任、個人責任のあり方が明確にされない限り、事故は繰り返されます。再稼働の前に、しっかりした責任体制を作り上げるべきです。

 15mを超える津波が原発を襲うとどうなるか。東京電力、立地自治体と議会も十分に理解していたことであります。知っていながら、「不都合な真実」を語らなかったために、事故に至りました。防潮堤を建設することだけでなく、ディーゼル発電機の水密化処理だけでも議会で議論されていたら、事故の経緯は変わっていたでしょう。浜岡裁判で語られた批判的な声に耳を傾けなかったことが、福島原発事故を引き起こしたともいえるでしょう。

 40年を超える3号機の再稼働は全国初となります。再稼働は地域経済優先ではなく、安全が第一であるべきです。先に述べた関電・原子力規制委員会・規制庁の姿勢では、とても安全であるとは言えないでしょう。本日の美浜町議会において、批判的な意見に耳を傾け、請願に対する真摯な判断がなされることを、私は切に願っています。

 最後に、一言だけ付け加えます。美浜原発3基が動き始めて40数年。長期にわたって沢山の電源三法交付金をもらい続けてきました。その結果、美浜町経済は発展したでしょうか。今なお、美浜町の「地域振興」が叫ばれています。美浜町の私たちのお金の使い方が、問われているのです。道路やハコ物への投資が中心になり、維持コストが増加しました。その方向は今なお継続中です。

 美浜町はどういう町を目指すべきなのか。議会が町政の方向をしっかりチェックできる力量を身につけなければならないと、私は思っています。また、批判的な研究者の意見、賛否両論を聞くことが、判断の正確性に繋がりますので、今後に期待したいと思います。

 まだまだ語り尽くせないことが多々ありますが、以上を持って、3号機再稼働反対請願6号、10号、11号に賛成する私の討論を終えることにいたします。ご静聴、ありがとうございました。

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