裁 判」カテゴリーアーカイブ

◆原発関係裁判(3)…最新の状況とこれからの運動

(2025/8/28 現在)

┌──【目 次】───────
[1]最新の状況(2025年8月~)
 ◆2025/8/27、川内原発、控訴棄却
[2]原子力政策の推移と市民の運動
 ◆3.11以後の原子力政策
 ◆2022年からの転換
 ◆「乾式貯蔵の高浜」
 ◆「新増設の美浜」
 ◆原発のない社会を実現するために
└─────────────

【参考リンク「原発関係裁判(1)…3.11以前からの概況」→こちら
参考リンク「原発関係裁判(2)…2025年(7月末現在)の状況 」→こちら
 

┌─────────────────────────────────
[1]最新の状況(2025年8月~)
└─────────────────────────────────

◆2025/8/27、川内原発、控訴棄却

  • 概 略
    ・川内原発設置変更許可処分取消訴訟(行政訴訟)、福岡地裁。
    ・九州電力の川内原発(1、2号機)。薩摩川内市。
    ・2019/6/17、福岡地裁で原告敗訴→福岡高裁で控訴審。
    ・2025/8/27、福岡高裁で控訴棄却。
    ・原告は、巨大噴火(破局噴火)による広範囲の火砕流など、火山問題のみを争点とした。しかし判決は、新規制基準の「火山ガイド」やそれによる審査の合理性を認めて、原告の控訴を退けた。

┌─────────────────────────────────
[2]原子力政策の推移と市民の運動
└─────────────────────────────────

◆3.11以後の原子力政策

  • 原発依存度は可能な限り低減
    ・東京電力福島第一原子力発電所事故(2011.3.11~)の反省に立ち、原発依存度は可能な限り低減させていく。
    ・再生可能エネルギーの拡大をめざす。

◆2022年からの転換

  • 原子力「依存度低減」から「最大限活用」へ
    ・岸田文雄内閣は、2022年「GXグリーン・トランスフォーメーション実行会議」の初会合を開催。脱炭素に名を借りて原発政策の転換を始める。
    ・2023年、「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、原子力推進政策へ転換。2023年にGX脱炭素電源法が成立、2025年に全面施行された。老朽原発の40年超え運転が常態化している。
    ・脱炭素に名を借りた原発推進の実態化のため、第7次エネルギー基本計画を閣議決定し、原子力の最大限活用を明記している。
    ・政府は様々に原発支援政策を展開している。その一つが「長期脱炭素電源オークション」。これは脱炭素に名を借りた原発優遇制度で、名前だけでは再エネを普及させる制度にみえるが、実態は原発支援のための制度となっている。
    ・また、原発建設の費用高騰を懸念する電力会社を支援するために、建設費や運転維持費が上昇した場合、その費用の多くを電気料金で負担させようとしている。原発をもたない新電力の契約者にも、原発建設の費用を負担させようという、理不尽な制度といえる。
  • 関西電力は「乾式貯蔵の高浜」と「新増設の美浜」で原発依存
    ・関電は、政府の原子力政策のお先棒を担ぎ、原発推進の先陣をきっている。

┌─────────────
・GX参考年表→関西電力 闇歴史 ◆126◆
GX参考サイト→自然エネルギー財団「GXの原発新増設は現実的なのか?
└─────────────

◆「乾式貯蔵の高浜」

  • 高浜原発では乾式貯蔵
    ・関電では、使用済み核燃料がプールで満杯になり、原発を止めざるを得ない状況が迫る。それを避けるために、使用済み核燃料をプールから出して、乾式貯蔵施設に移行する準備をすすめてきた。2025年、規制委も高浜原発での設置を許可。乾式貯蔵は、原発の運転を続けるための方策であり、中間貯蔵施設や再処理施設が実現不可能に陥っているための窮余の策に過ぎない。
    ・乾式貯蔵はプールで貯蔵するより安全だという意見もあるが、それは正しくない。プールで長期に保管されてきた使用済み核燃料の一部が乾式貯蔵施設に移された後には、発熱量も放射線量も桁違いに高い新しい使用済み核燃料が入ることになり、危険性はかえって高まる。そして、原発運転が継続される。
    ・関西電力は、高浜原発の乾式貯蔵施設の2025年内着工を見送り、2026年着工、完成を2028年ごろと変更。

◆「新増設の美浜」

  • 美浜原発では新増設
    ・関電は2025年、美浜原発の新増設(リプレース)に向け、中断していた地質調査などを再開する方針を表明している。
    ・また、「老朽美浜原発3号機運転禁止仮処分」抗告審第4回審尋期日(2025/7/11、名古屋高裁金沢支部)において、「原発を作り運転する企業の自由」「抗告人(=申立人)は被害者ではない(被害者になってから文句を言え)」などと発言した。東電福島第一原発事故を体験してからの主張とは思われない。

◆原発のない社会を実現するために

  • 原発訴訟の現状
    ・政府の原子力政策の転換という状況の中、2022年の泊原発廃炉訴訟の勝訴以降は、原告敗訴が続いている。
    ・裁判所は自ら司法の役割を放棄し、行政に追随しているようにみえる。東電福島第一原発事故の事故は、裁判所が自らの役割を果たさなかった結果ではないか。裁判所は、今また、次の原発事故の発生に加担するのか、責任が問われる局面にある。
  • 原子力政策、矛盾の深まり
    ・東電福島第一原発事故の収束、廃炉の行方はまったく見通しがない。2011年以来の「原子力緊急事態宣言」は、今も継続されている。汚染水放出、除染土の全国拡散、クリアランス金属(廃炉に伴う一定基準以下の金属)の再利用などは、放射線汚染を全国に広める危険性がある。
    ・六ヶ所再処理工場は完成せず、核燃料サイクル、再処理計画は頓挫し、展望がなくなっている。原発から出てくる使用済み核燃料の処理は、最終処分場はおろか、中間貯蔵施設にも目処が立たず、原発敷地内の乾式貯蔵で当面の破綻を回避している。目先の危機を回避することだけに精一杯の綱渡り状況となっている。
    ・2024年の能登半島地震をみれば、原発に対する地震のリスクはより深刻になり、避難計画の破綻は明確となった。
    ・一方、原発なしでも、電気は足りている。2013年9月から2015年8月まで2年近く、日本は原発ゼロであった。
  • 原発のない社会を実現するには
    ・裁判闘争では、法廷での理詰めの告発とともに、多数の市民が裁判に注目していることを示す運動と世論が求められる。運動と世論で裁判所と裁判官を包囲していこう。
    ・しかし、裁判闘争にとどまらない運動と世論も決定的に重要になっている。原子力政策の行き詰まりを訴え、再生可能な自然エネルギーに依拠し、省エネに徹した社会を訴えていこう。あらゆる選挙で原発に反対する勢力を大きくしていこう。
    ・「老朽原発うごかすな!実行委員会」(ニュースやチラシなど→こちら)から報告されているように、原発立地地域では、原発への不信や拒否の声は表面には出にくいものの、実際にはたくさんある。とりわけ老朽原発や原発新増設へ不安の声は大きい。電気の大消費地である大都市では、遠隔の過疎地に危険な原発を押しつけている現状をかえりみるときがきている。立地地域も消費地域も手を携えて、巨大な人権侵害をもたらす原発と決別していきたい。

(以 上)

◆原発関係裁判(2)…2025年(7月末現在)の状況

(2025/8/26 現在)

┌──【目 次】────
2025年(7月末まで)の原発関係裁判の判決…7件とも敗訴
判決や決定が近い原発関係裁判…6件
結審が近い原発関係裁判…5件
原発賠償訴訟の判決…2022年以来、国の責任を認めない判決ばかり連続17件
└─────────────

【参考リンク「原発関係裁判(1)…3.11以前からの概況」こちら
【参考リンク「原発関係裁判(3)…最新の状況とこれからの運動」→こちら

◆2025年(7月末まで)の原発関係裁判の判決…7件とも敗訴

  • 鹿児島地裁…原発なくそう!九州川内訴訟。
    ・2012/05/30提訴。2025/02/21に敗訴×→福岡高裁。
    原発なくそう!九州川内訴訟
  • 福岡高裁…グリーンコープ託送料金認可取消訴訟、控訴審。
    ・2020/10/15福岡地裁提訴、2023/03/22敗訴×→福岡高裁、2025/02/26に敗訴×→最高裁。
    グリーンコープ、託送料金を問う
  • 最高裁…福島原発刑事訴訟(東電刑事裁判)。東電旧経営陣3人の刑事責任、上告審。
    ・2016/2/29東京地裁に提訴、2020/09/19敗訴×→東京高裁、2023/01/18に敗訴×→最高裁、2025/03/05に敗訴×
    福島原発刑事訴訟支援団
  • 広島地裁…伊方原発運転差止広島裁判。
    ・2016/03/11提訴、2025/03/05に敗訴×→広島高裁。
    伊方原発広島裁判原告団・応援団
  • 名古屋地裁…老朽原発40年廃炉訴訟。
    ・高浜1、2号機は2016/04/14提訴、美浜3号機は2016/12/09提訴→2025/03/14に敗訴×→名古屋高裁。
    老朽原発40年廃炉訴訟 市民の会
  • 松山地裁…伊方原発運転差止訴訟。
    ・2011/12/08提訴、2025/03/18に敗訴×→高松高裁。
    伊方原発をとめる会
  • 東京地裁…東電株主代表訴訟。東電旧経営陣5人に損害賠償請求、控訴審。
    ・2011/11/14東京地裁に提訴→2022/7/13、4人に13兆3210億円の賠償判決→東京高裁、2025/06/06に敗訴×→最高裁。
    東電株主代表訴訟

◆判決や決定が近い原発関係裁判…6件

◆結審が近い原発関係裁判…5件

  • 京都地裁…大飯原発差止訴訟。
    ・2012/11/29提訴、2025/09/25で結審。判決は2025年度中か。
    ・京都脱原発原告団。
  • 富山地裁…志賀原発株主差止訴訟。
    ・2019/06/18提訴、2025/10/01で結審。
    ・金沢地裁「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団の株主訴訟。なお志賀原発は北陸電力。
    志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団ホームページ
  • 大阪高裁…大飯原発3・4号機行政訴訟、控訴審。
    ・2012/06/12大阪地裁に提訴、2020/12/04勝訴→大阪高裁。
    ・2025/11/13の第11回口頭弁論で結審か。
    ・おおい原発止めよう裁判の会(美浜の会)。
  • 大阪地裁…原発賠償 関西訴訟。
    ・2025/09/11第56回期日、2025/12/24第57回期日で結審。
    ・東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream。
    原発賠償関西訴訟 KANSAIサポーターズ
  • 福島地裁…生業訴訟 第二陣
    ・2025/8/26に結審。→ただし期日が延期、日程は未定(2025/8/16追記)。
    生業訴訟原告団・弁護団

◆原発賠償訴訟の判決…2022年以来、国の責任を認めない判決ばかり連続17件

  • 2022/6/17最高裁が東電福島第一原発事故について国に責任がないという不当判決を出して以来、地裁、高裁で、追随する判決が例外なく連続している。
    ・詳細は → 京都脱原発原告団 > 市民運動の紹介 > 「京都原発裁判支援ネット」より
    ・2025年(7月末まで)の判決は、以下の2件。
  • 東京地裁…福島被ばく訴訟(井戸川裁判)。
    2025/07/30に東電の責任は認めるが、国の責任は認めない×判決。
    井戸川裁判(福島被ばく訴訟)を支える会
  • 横浜地裁…福島原発かながわ訴訟(第2陣)。
    2025/07/31に国の責任を認めない×判決。最高裁判決後、連続17件目。
    福島原発かながわ訴訟を支援する会

(以 上)

◆原発関係裁判(1)…3.11以前からの概況

(2025/12月末 現在)

┌──【目 次】────
[1]2011.3.11 東電福島第一原発事故以前の状況
 ◆原告側勝訴は2勝のみ、33敗
 ◆2011.3.11 以前のおもな脱原発訴訟と経過
[2]2011.3.11 東電福島第一原発事故以降~現在(2025年9月末)までの
  原発運転差止訴訟の判決や決定は、9勝 54敗!

 ◆本訴は4勝18敗、仮処分は5勝36敗
 ◆その詳細
[3]2011.3.11 東電福島第一原発事故以降の詳細
 ◆原発運転差止、事故賠償請求で多くの訴訟
 ◆原発を包囲して運転差止を求める訴訟
 ◆伊方原発をめぐる最近の訴訟
 ◆全国でさまざまな類型の訴訟
 ◆東電株主代表訴訟。東電旧経営陣5人に損害賠償請求
 ◆原発運転差止、3.11以降は、本訴で4件、仮処分で5件の勝訴
[4]原発運転差止、本訴で4件の勝訴、その内容
 ◆本訴の最初の勝利判決
 ◆本訴の2番目の勝利判決
 ◆本訴の3番目の勝利判決
 ◆本訴の4番目の勝利判決
[5]原発運転差止、仮処分で5件の勝訴、その内容
 ◆仮処分の最初の勝利決定
 ◆仮処分の2番目と3番目の勝利決定
 ◆仮処分の4番目の勝利決定
 ◆仮処分の5番目の勝利決定
[6]2023年以後の原発運転差止訴訟は、原告が19件連続敗訴!
 ◆原発運転差止訴訟も原発賠償訴訟も
└─────────────

【参考リンク「原発関係裁判(2)…2025年(7月末現在)の状況 」→こちら
【参考リンク「原発関係裁判(3)…最新の状況とこれからの運動」→こちら
 
【参 考…本訴と仮処分】
本訴(本訴訟)とは…通常の裁判手続きのこと。判決がでるまでに長期にわたることもある。通常、地裁から高裁へ控訴、高裁から最高裁へ上告という三審制で、上級審の判決により、権利の内容が確定する。判決が確定するまでは、判決の効力は発生しない。原発運転差止の本訴の場合、差止の判決が出ても、電力会社が上級審に訴えれば、運転は継続される。
仮処分とは…暫定的な権利や地位を定めるだけの手続きのこと。審尋は短期間で終わることが多い。仮処分の裁判で決定(本訴の判決)があっても、権利内容は確定せず、後に本訴で異なる判断が出ることもある。最初の決定の後に保全異議審や即時抗告審などに移ると、前の決定が覆されることもある。原発運転差止の仮処分の場合、差止の決定が出ると、すぐに効力が発生するので、電力会社は、運転を止めなければならない。差止の決定が覆されると、運転を再開できる。

┌─────────────────────────────────
[1]2011.3.11 東電福島第一原発事故以前の状況
└─────────────────────────────────

◆原告側勝訴は2勝のみ、33敗

  • もんじゅ控訴審…初の設置許可無効判決
    ・2003年、名古屋高裁金沢支部が、原子炉の安全審査に違法な点があるとして設置許可は無効と判決。原子力安全委員会の安全審査について「誠に無責任であり、ほとんど審査の放棄といっても過言ではない」とした。
    ・2005年最高裁で敗訴。
    ・2025/7/2、全国初の原発運転差止判決となった志賀2号炉訴訟の記録が廃棄されていたことが、金沢地裁への取材で判明。
  • 志賀2号炉訴訟…初の運転差し止め命令(井戸謙一裁判長)
    ・志賀原発2号炉運転差止請求事件(金沢地裁、井戸謙一裁判長)。
    ・2006年、耐震性の疑問により、運転中の2号機に対し運転差し止めを命令。
    ・国は、裁判で負けてからあわてて、新しい耐震指針を作成。判決から半年後に「原子力発電所の耐震設計審査指針」が改定された。
    ・裁判は、2009年高裁、2010年最高裁で敗訴。
  • 脱原発訴訟はほとんどが敗訴
    ・裁判官は「良心に従い、憲法と法律にのみ拘束される」ことが原則なのに…
    ・憲法第76条第3項…「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」

▼『原発訴訟』海渡雄一 著、岩波新書、2012年

▼『法服の王国 小説裁判官(上 下)』黒木亮 著、産経新聞出版、2016年

◆2011.3.11 以前のおもな脱原発訴訟と経過

  • 1973/ 8…愛媛県の伊方原発1号機、設置許可取り消しを求めて提訴。
    住民が初めておこした脱原発訴訟。
  • 1974/ 9…原子力船「むつ」が原子力航行試験中に放射線漏れ事故。
  • 1978/ 4伊方1号機訴訟で松山地裁が住民側敗訴の判決。
    脱原発訴訟で初の司法判断。
  • 1979/ 3…アメリカ・スリーマイル島原発事故。
  • 1984/12伊方1号機訴訟で高松高裁が控訴棄却、住民側敗訴の判決。
  • 1986/ 4…旧ソ連・チェルノブイリ原発事故。
    海外の過酷事故も“対岸の火事”で、住民側敗訴の流れが継続。
  • 1992/ 9…福井・もんじゅ訴訟で最高裁が差し戻し判決。(原告適格を認める)
  • 1992/10伊方1号機訴訟で最高裁が上告棄却。原発訴訟の審理方法と判断枠組みについて初判断。
    最高裁の初判断…裁判所が原発の安全性を直接判断することを否定して、安全審査の調査審議及び判断の不合理性のみを判断する、そしてその判断方法は、現在の科学技術水準に照らして安全審査の調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤欠落があるか、であるとした。
  • 1995/ 1…阪神淡路大震災。
  • 1995/12…もんじゅでナトリウム漏れ事故。
  • 1999/ 7…福井・敦賀原発で一次冷却水漏れ事故。
  • 1999/ 9…茨城県東海村のJCOで臨界事故→刑事裁判、住民健康被害訴訟。
  • 2003/ 1…もんじゅ訴訟(差し戻し控訴審)で住民側が逆転勝訴。
    初の設置許可無効判決。
  • 2004/11…東海第二原発訴訟、最高裁での住民側敗訴が確定。
    1973/10の提訴から31年1か月の審理、最長記録。
  • 2005/ 5…もんじゅ訴訟(差し戻し上告審)で住民側の逆転敗訴が確定。
  • 2006/ 3…石川・志賀原発2号機訴訟の1審で住民側が勝訴。
    初の運転差し止め命令。
  • 2011/ 3…東日本大震災が発生。東電福島第一原発で過酷事故。
    裁判は2勝のまま、東電福島第一原発事故が(>_<)

┌─────────────────────────────────
[2]2011.3.11 東電福島第一原発事故以降~現在(2025年9月末)までの
  原発運転差止訴訟の判決や決定は、9勝 54敗!
└─────────────────────────────────

◆本訴は4勝18敗、仮処分は5勝36敗

  • 本訴の判決は、合計で22件。
     ・そのうち原告が勝訴したのは、4件、敗訴は18件。
  • 仮処分の決定は、合計で41件。
     ・そのうち原告が勝訴したのは、5件、敗訴は36件。

◆その詳細

  • その内訳は次の通り。なお、上関原発をめぐる訴訟は含まず。
  • (1) 福島事故以降、2023年末までの判決や決定の件数は、以下による。
    原発差止訴訟の現状と展望」神戸秀彦。法と政治 75巻1号(2024年5月)によると
    ・本訴の判決は、合計で13件。そのうち原告が勝訴したのは、4件。
    ・仮処分の決定は、合計で37件。そのうち原告が勝訴したのは、4件。
  • ただし、本項では、原告が勝訴した仮処分は、4件とはせず、5件としている。勝利件数を4件→5件としたのは、大津地裁の保全異議審決定を控訴審の判断と同列に扱い、勝利決定としたことによる。保全異議審決定は仮処分決定とは別の判断なので、勝利件数が一つ増えたことになる。原発運転差止裁判に積極的に参加、関与されている井戸謙一弁護士の指摘に従う。
  • (2) 2024年~2025年9月末までの判決や決定の件数を加える。
    ・本訴の判決は、合計で9件。すべて原告が敗訴。
    ・仮処分の決定は、合計で4件。すべて原告が敗訴。
  • (3) なお、2025年12月末まででは、後述を参照のこと。仮処分2件、本訴1件の敗訴がある。

┌─────────────────────────────────
[3]2011.3.11 東電福島第一原発事故以降の詳細
└─────────────────────────────────

◆原発運転差止、事故賠償請求で多くの訴訟

  • 原発などの建設反対、運転差止
    ・全国で約40数件。→ 脱原発弁護団全国連絡会
    ・老朽原発40年廃炉訴訟。
    ・宗教者核燃裁判(六ヶ所再処理工場運転差止)。
  • 東電福島第一原発事故の避難者による集団的な賠償請求
    ・全国で約30 数件。→ 福島第一原発事故賠償訴訟一覧 (Kato Rin)
    ・国や東電の責任を追及。賠償の請求。避難の権利、被ばくをしない権利を求める。

◆原発を包囲して運転差止を求める訴訟

  • 関西電力包囲訴訟…関電はすべての裁判所の本訴、仮処分で勝訴しないと、原発を動かせない。
    ・関電の原発…福井県の大飯3、4号機、高浜1、2、3、4号機、美浜3号機の7基。
    ・福井地裁→名古屋高裁金沢支部
    ・名古屋地裁→名古屋高裁
    ・大津地裁→大阪高裁
    ・京都地裁→大阪高裁
    ・大阪地裁→大阪高裁
  • 四国電力包囲訴訟…四電はすべての裁判所の本訴、仮処分で勝訴しないと、原発を動かせない。
    ・四電の原発…愛媛県の伊方3号機のみ。
    ・松山地裁→高松高裁
    ・広島地裁→広島高裁
    ・山口地裁岩国支部→広島高裁
    ・大分地裁→福岡高裁
  • 包囲はしたけれど
    ・関電の原発も四電の原発も、仮処分で一時的に止めたことはあるが、本訴で実際に止めたことはない。
    ・地裁で勝訴した本訴の中で、高裁でも勝訴した運転差止訴訟は、まだない。

◆伊方原発をめぐる最近の訴訟

  • 4件の本訴の地裁判決のうち、3件で原告敗訴(>_<)
    ・大分県民による伊方原発差止訴訟、伊方原発を止める大分裁判の会
     大分地裁、判決は2024/3/7 、原告敗訴● →福岡高裁で控訴審
    ・伊方原発運転差止広島裁判、伊方原発広島裁判原告団・応援団
     広島地裁、判決は2025/3/5 、原告敗訴● →広島高裁で控訴審
     (仮処分では2017/12/13に広島高裁で勝訴~2018/9/25)
    ・伊方原発運転差止訴訟、伊方原発をとめる会
     松山地裁、判決は2025/3/18 、原告敗訴● →高松高裁で控訴審
    ・伊方原発3号機運転差止山口裁判、伊方原発を止める山口裁判の会
     山口地裁岩国支部、判決は2026/2/26
     (仮処分では2020/1/17に広島高裁で勝訴~2021/3/18)

◆全国でさまざまな類型の訴訟

  • 被ばくをしない権利、被ばくに対する賠償請求
    ・原発被ばく労災 損害賠償裁判(あらかぶさん裁判)。
    ・南相馬・避難20ミリシーベルト基準撤回訴訟。
    ・子ども脱被ばく裁判。
    ・福島被ばく訴訟(井戸川裁判)。
    ・NNR 国賠訴訟(No Nukes Rights、脱被ばく権)。
    ・311子ども甲状腺がん裁判。
  • 東京電力に対して
    ・東電株主代表訴訟…詳細は次項にて。
    ・福島原発刑事訴訟(東電刑事裁判)。
    ・福島農地放射性物質汚染 原状回復訴訟。
  • 関西電力に対して
    ・関電会社訴訟(株主提訴との併合)。
    ・関電株主代表訴訟(金品還流)。
    ・関電株主代表訴訟(土砂処分等高値発注)。
    ・関電カルテル株主代表訴訟。
  • その他
    ・原発メーカー訴訟。
    グリーンコープ託送料金認可取消訴訟。託送料金とは…『はとぽっぽ通信』「電気料金と原発稼働
    ・ALPS処理汚染水差止訴訟。

◆東電株主代表訴訟
 東電旧経営陣5人に損害賠償請求

  • 2011/11/14、東京地裁に提訴
    ・株主48名が旧経営陣5名に対し、22兆円の損害賠償を請求。
    ・2022/07/13勝訴判決。
    ・4人に13兆3210億円の賠償判決。史上最高。
  • 2025/06/06、控訴審、東京高裁
    ・一審判決を取消(株主の請求を棄却)。
    ・「津波は予見できなかった」として、責任を否定。
  • 上告審、最高裁
    ・審理継続中。
  • 被告となった旧経営陣
    ・勝俣恒久(元会長)、清水正孝(元社長)、武藤栄(元副社長)、武黒一郎(元副社長)。
    ・小森明生(元常務)。

◆原発運転差止、3.11以降は、本訴で4件、仮処分で5件の勝訴

  • 本訴で4件の勝訴
    ・関西電力の大飯原発(2014年、福井地裁、樋口英明裁判長)
    ・関西電力の大飯原発(2020年、大阪地裁)
    ・日本原電の東海第二原発(2021年、水戸地裁)
    ・北海道電力の泊原発(2022年、札幌地裁)
  • 仮処分で5件の勝訴
    ・関西電力の高浜3、4号機(2016年、福井地裁)
    ・関西電力の高浜3、4号機(2016年、大津地裁)
    ・関西電力の高浜3、4号機(2016年、大津地裁の保全異議審)
    ・四国電力の伊方3号機(2017年、広島高裁)
    ・四国電力の伊方3号機(2020年、広島高裁)

┌─────────────────────────────────
[4]原発運転差止、本訴で4件の勝訴、その内容
└─────────────────────────────────

◆本訴の最初の勝利判決

  • 概 略
    ・関電の大飯原発(3、4号機)差止訴訟。
    ・福井地裁。2012/11/30提訴、2014/5/21判決。樋口英明裁判長。
    ・福井から原発を止める裁判の会。
    ・判決のポイント【大飯原発は地震に耐えられない、基準地震動が低すぎ】。
    ・2018年、名古屋高裁金沢支部の控訴審で敗訴。

▼『私が原発を止めた理由』樋口英明(元福井地裁裁判長)著、旬報社、2021年。
原発は地震に耐えられない。

▼『ガルで見る 日本の最大地震動』伊方原発広島裁判事務局、2020年。

  • 樋口判決ハイライト
    (1) 人格権…我が国の法制下においてこれを超える価値は他にない。
    (2) 250キロメートル圏内…人格権が侵害される具体的な危険がある。
    (3) 原発の安全性…安全性、信頼性は極めて高度なものであることが必要。
    (4) 原発の稼働…憲法上は人格権の中核部分よりも劣位。
    (5) 司法の役割…具体的危険性が万がーでもあるのかを判断の対象とすべき。
    (6) 地震動への対策…想定を超える地震は大飯原発に到来する危険がある。
    (7) 電気代…人の生存権と電気代の問題を並べて論ずることは許されない。
    (8) 国富とは…豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していること。
    (9) 環境問題…環境問題を原発の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違い。

◆本訴の2番目の勝利判決

  • 概 略
    ・関電の大飯原発(3、4号機)差止行政訴訟。
    ・大阪地裁。2012/6/12提訴、2020/12/4判決。森鍵一裁判長。
    ・おおい原発止めよう裁判の会(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会=美浜の会 気付)。
    ・判決のポイント【ばらつきが考慮されていないので、基準地震動が低すぎ】。
    ・大阪高裁の控訴審へ。
  • 判決の意義
    ・福島第一原発事故をふまえた新規制基準に基づく原発設置許可を、初めて取り消した。
    ・耐震設計の目安となる基準地震動の設定で、重要な要素になる地震規模は、過去の地震データを基にした平均値よりかけ離れる「ばらつき」の可能性があるが、関電は「ばらつき」を考慮せず、規制委も何ら検討せずに許可を出した。過去の地震から導かれた経験式には「ばらつき」があるので、地震規模を推定するときには、 検討が必要 → 他の原発にもあてはまる指摘。
    ・こうした看過し難い過誤、欠落があるので、違法。
    ・ただし、規制委は2022/6/8、基準地震動等審査ガイドの「ばらつき条項」を削除すること等を決定した。

▼「ばらつき」とは
 基準地震動の設定に用いられる「入倉・三宅(いりくら・みやけ)式」は、断層面積と地震規模の関係を示す。
 大飯原発に近いFoB(エフオービー)- FoA(エフオーエイ)- 熊川(くまがわ)断層の面積は 951平方キロとされ、その面積を「入倉・三宅式」に当てはめると、地震規模、加速度は856ガルとなる。これが、大飯原発の基準地震動となっている。
 しかし、データを基にした平均値の式には、平均値からかけ離れた「ばらつき」があり、規制基準ではこの「ばらつき」も考慮しなければならないとしている。
 この「ばらつき」が10%だとすると、951平方キロの地震規模、加速度は最大で2.41倍の1150ガルに跳ね上がる。したがって、856ガルは過小となる。こうした「ばらつき」を検討をしていないのは、「看過し難い過誤、欠落」。

◆本訴の3番目の勝利判決

  • 概 略
    ・東海第二原発(日本原電)差止訴訟。
    ・水戸地裁。2012/7/31提訴、2021/3/18判決。前田英子裁判長。
    ・東海第二原発差止訴訟団。
    ・判決のポイント【避難計画の不備(深層防護第五層)】。
    ・東京高裁の控訴審へ。
  • 判決の意義
    ・避難計画の不備という問題を正面から取り上げ、原発の運転差止めを命じた事例は初めて。
    ・ただし、新規制基準が避難計画を含まないことそのものが不合理だとはしなかった。
    ・深層防護の第五層の防護レベル(重大事故時における避難等の被害緩和策)は、原子炉施設の安全にとって不可欠であるのに、そこが欠けているのは、人格権を侵害する具体的危険がある。
    ・国際原子力機関(IAEA)の国際基準を重視し、原発の運転差止めを認めた判決として評価に値する。

▼国際原子力機関(IAEA)の「深層防護」基準
 安全対策を耐震性など5段階に分け、ある段階で機能しなくても、次で被害を防ぐ考え方。水戸地裁の判決はその考え方に沿って、第1~4段階の安全性は認めたが、第4段階が破られて大量の放射性物質が漏れた際の第5段階である避難計画が、14自治体のうち9自治体で策定できていないと指摘した。原発から30キロ圏内の自治体には避難計画の策定が義務付けられているが、東海第二ではこの範囲に約94万人が暮らしている。

◆本訴の4番目の勝利判決

  • 概 略
    ・泊原発廃炉訴訟(北海道電力、1~3号機=停止中)。
    ・札幌地裁。2011/11/11提訴、2022/5/31判決。谷口哲也裁判長。
    ・泊原発の廃炉をめざす会。
    ・判決のポイント【津波防護施設ができてない】。
    ・札幌高裁の控訴審へ。
  • 判決の意義
    ・津波に対する安全性の基準を満たしていないことを理由として、原発の運転差止めを命じた。
    ・現在設置されている防潮堤について地盤の液状化等のおそれがないことの説明がなされておらず、津波に対する安全性を欠いていると指摘。

┌─────────────────────────────────
[5]原発運転差止、仮処分で5件の勝訴、その内容└─────────────────────────────────

┌─────────────
【仮処分命令の勝利数の訂正について】
・本稿の初掲載時(2025/8/25)には、仮処分命令の勝利数について、4件7勝としていましたが、現在は、井戸謙一弁護士のご指摘に従い、5件の勝利としました(2025/9/27 改訂)。
・勝利件数が4件→5件になったのは、大津地裁の保全異議審決定を控訴審の判断と同列に扱い、勝利決定としたことによります。保全異議審決定は仮処分決定とは別の判断なので、勝利件数が一つ増えました。
・したがって、大津地裁では、仮処分決定(2016/3/9)と保全異議審決定(2016/7/12)の2件が、勝利決定となります。
・また、これまでは「執行停止申立を認めず」という判断を、勝利数にしていましたが、これはカウントから外しました。
└─────────────

◆仮処分の最初の勝利決定

  • 福井地裁、樋口英明裁判長
    ・高浜3、4(関西電力)。2015/4/14。
    ・同上、関電による執行停止申立を認めず、2015/5/18。
    ・その後、福井地裁、保全異議審で決定を取消、2015/12/24。
    ・なお、本訴は、「本訴の最初の勝利判決」2014/5/21であったが、
     名古屋高裁金沢支部で敗訴。

◆仮処分の2番目と3番目の勝利決定

  • 大津地裁、稼働中の原発運転差止
    ・高浜3、4(関西電力)。2016/3/9。
  • 大津地裁、上記の保全異議審で、関電による異議を認めない決定
    ・高浜3、4(関西電力)。2016/7/12。
    ・保全異議審の決定は仮処分決定とは別の判断なので、控訴審の判断と同列に扱う。
    ・その後、大阪高裁、保全抗告審で決定を取消、2017/3/28。
    ・なお、本訴は、大津地裁の美浜、大飯、高浜原発差止訴訟。2025/12/25判決。

◆仮処分の4番目の勝利決定

  • 広島高裁、伊方の運転差止
    ・伊方3(四国電力)。
    ・広島地裁では原告敗訴であったが、
     広島高裁の即時抗告審で2018/9/30までの運転差止。2017/12/13。
    ・同上、広島高裁は四電による執行停止申立を認めず。2018/3/22。
    ・その後、広島高裁、保全異議審で決定を取消、2018/9/25。
    ・なお、本訴は広島地裁の伊方原発運転差止広島裁判。2025/3/5 原告敗訴の判決→広島高裁で控訴審。

◆仮処分の5番目の勝利決定

  • 広島高裁、伊方運転差止の2例目
    ・伊方3(四国電力)。広島高裁、2020。
    ・山口地裁岩国支部では原告敗訴であったが、
     広島高裁の即時抗告審において、本訴の判決がでるまで運転差止。2020/1/17。
    ・その後、広島高裁、保全異議審で決定を取消、2021/3/18。
    ・なお、本訴は、山口地裁岩国支部の伊方原発3号機運転差止山口裁判。2026/02/26判決。

┌─────────────────────────────────
[6]2023年以後の原発運転差止訴訟は、
  2025年末までで原告が 19件連続敗訴!

└─────────────────────────────────

◆原発運転差止訴訟も原発賠償訴訟も

  • 2023年以後は、原発運転差止訴訟のすべての本訴、仮処分で、原告が19件連続敗訴となっている。2022年7月、岸田文雄首相は、GX実行会議の初会合を開催し、2023年2月には「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、原発の新増設など原発の最大限活用を明記した。2025年2月にはエネルギー基本計画を改悪した。こうした流れが司法、原発運転差止訴訟にも及んでいる。(→ GX参考年表
  • 東京電力福島第一原発事故にかかる原発賠償訴訟において、2022/6/17の最高裁不当判決後、地裁、高裁での国の責任否定は、17判決連続という異常事態となっている(→こちら)ように、国家権力=立法行政司法三権による “原発無責任体制” ができあがっている。

▼2023年~2025年末までの原発運転差止訴訟の結果

(2023年以後の原発運転差止訴訟は、2025年末までで原告が 19件連続敗訴!)
(最後の勝訴判決は、2022年5月、泊原発運転差止の本訴。)
(以 上)