裁判資料」カテゴリーアーカイブ

◆第13回口頭弁論 原告提出の書証

甲288~292号証 (第26準備書面関連)
甲293~300号証 (第27・28準備書面関連)


証拠説明書 甲第288~292号証[87 KB] (第26準備書面関連)
2016年11月25日

ページトップ

証拠説明書 甲第293~300号証[130 KB] (第27・28準備書面関連)

  • 甲第293~298号証[11 MB]
    甲第293号証 高浜地域における3府県および関西広域連合との合同原子力防災訓練の実施について(内閣府政策統括官 原子力防災担当)
    甲第294号証 平成28年度高浜地域における内閣府・3府県および関西広域合同原子力防災訓練について(京都府原子力防災課)
    甲第295号証 平成28年度原子力防災訓練の概要(福井県)
    甲第296号証 平成28年度高浜地域における内閣府・3府県および関西広域合同原子力防災訓練(京都府)
    甲第297号証 大規模防災訓練の実施結果について(京都府)
    甲第298号証(1-7) 各新聞社8月27日、8月31日付記事(ホームページより)
  • 甲第299号証[7 MB]
    舞鶴市原子力災害住民避難訓練(舞鶴市)
  • 甲第300号証[3 MB]
    舞鶴市原子力災害住民避難訓練(宮津市)

ページトップ

◆第13回口頭弁論 意見陳述要旨

※ 第13回口頭弁論意見陳述はお二人でした。

池田豊さん  吉田真理子さん

大飯原子力発電所運転差止等請求事件 意見陳述
2016年11月28日
池田豊

大飯原発、隣接する高浜原発をめぐる原子力防災訓練について、住民避難に関連した初動の重要性と問題点、並びにその第一線で直接避難の判断と住民の誘導をしなければならない地方自治体と自治体職員の問題について、福島の原発立地自治体での調査も踏まえて話します。

■福島第一原発事故における立地自治体の初動について

福島第一原発の立地自治体である大熊町や、隣接し第二原発の立地自治体である富岡町では、14時46分の地震直後に災害対策本部を設置し、被害状況の調査と確認、大津波警報に基づく町民への避難の呼びかけと誘導、そして津波被害で行方不明となった住民の捜索などの業務に、町職員自身も被災しながら従事しました。数時間後には地震と津波から避難した住民の避難所運営、安否の確認、水や食料の確保と配布などの業務を続けました。

自治体がこれらの業務に全勢力をつぎ込んでいる間に、まったく同時並行で第一原発は15:42全交流電源喪失(原災法第10条通報)そして16:45非常用炉心冷却装置注水不能(原災法第15条通報)そしてメルトダウンへと暴走しました。

役場に東電からFAXは入るが詳細がわからない中で、大熊町の担当者はSBO(全電源喪失)になってもこれまでの原子力防災訓練では落ち着くとなっていたので、大丈夫だろうと思ったそうです。

また富岡町では。10条通報、15条通報の情報を確認することができず夕方遅くになってようやく情報が入り始めました。職員の中では「第10条がどういうことで、それが15条になると何なのか、どんな大事な意味を持つのかの認識がなかった。それよりも津波で行方不明者が出ている。探さなくては!という、目の前に広がった災害の対応に追われていた。」と記録しています。

ようやく19:05政府は原子力緊急事態宣言を出しました。20:50には福島県独自に第一原発1号機の半径2㎞の住民に避難指示。21:23には第一から半径3km以内に避難、10km以内は屋内退避の指示が出ましたが、大熊町、富岡町ともに情報は届きませんでした。

翌朝5:44に政府が第一原発から半径10㎞圏内の避難指示をだし、それによってようやく事態の深刻さが伝わり、全住民あげての避難が始まりました。その直前まで、津波による行方不明者の捜索などについて検討していたと証言しています。

大熊町に国より派遣された70台のバスに担当職員を全て配置することもできず、何台のバスに、何人の職員を添乗させ避難先での対応をするのか、何人が残ってその後の避難誘導するのか、残った住民の確認は誰がするのか、自治体として全住民避難の確認はどのように誰がするのかなど、自治体職員には一刻の猶予もなく瞬時の判断が求められました。100人足らずで1万人以上の住民を安全に避難させることは非常に困難です。

町に派遣されている東電職員からも正確な情報は入らず、警察ルートの情報や自衛隊ルートの情報の適切な共有もできない状態だったと証言しています。

■今回の広域避難訓練について

福島第一原発事故における大熊町や富岡町からも事故直後の初動対応がいかに重要で困難かがわかります。通常の自然災害や事故災害時の対応とは根本的に異なる困難さがあります。

今回の広域避難訓練は、全面緊急事態を想定したにもかかわらず、重要な事故直後の初動訓練は実質的に省略されたものとなっています。

9:00緊急事態宣言、9:10合同対策協議会でPAZ住民の避難実施方針が確認された後、なんとOIL2超が確認されてから24時間後へと一気に時を越えての訓練となっています。

このことは事故直後の実態と体制確立を実質的に無視したもので、訓練そのものの実効性を疑わざるをえません。

一つには、住民避難の司令塔となるオフサイトセンターに設置された合同対策協議会からUPZ自治体への情報伝達訓練はされたものの、初動時に最も重要な自治体内での情報伝達や各集落、住民、関係機関への情報伝達訓練がほとんどされていないこと。

第二に、各自治体の職員に対して、主な担当部署への配置は決められていたが、大規模な住民避難に対応できる体制の確認がされていないこと。

第三に、最も重要な緊急時モニタリング体制の確立と実測、報告、住民周知が不明確で、訓練内容の詳細が明らかにされていないこと。原子力災害対策指針では緊急時モニタリングの結果を緊急時モニタリングセンターで判断した後、必要な評価を実施して、OILによる防護措置の判断等のために活用するとなっていますが、今回はそのこと自体が省かれています。そのことは大変重要で、国は、まず緊急時モニタリングの体制確立をし、結果を正確に、分かりやすく、迅速に公表、地方自治体は、必要に応じて結果を独自に公表するとなっています。住民避難にとっては必要不可欠の内容です。

またモニタリング要員や自治体職員等の放射線防護対策や、派遣される自治体職員の緊急時モニタリングに関する技術研修、情報の伝達ルートの確認などは、必要最低限の重要な初動訓練であるはずです。また住民への情報提供のシステムなしの屋内退避訓練とはなんなのかも疑問と言えます。

以上の点だけをみても、今回の訓練が避難させる側、住民に情報提供し避難指示をする側の初動の訓練が省略されて、住民だけに的をしぼった避難訓練と言えます。

しかし、いかに住民の放射線被ばくを極力少なくし、より安全に避難させるかは、初動の避難させる側の訓練にかかっていると言っても過言ではありません。

福島における事故時の立地自治体の状況からもわかるように、初動時の対応が住民避難のカギをにぎり、その後の自治体再建にさいしても決定的に大きな影響を及ぼすことは明らかです。

ページトップ


意見陳述

2016年11月28日
吉田真理子

私は吉田真理子と申します。1955年5月24日生まれの61歳で、宮津市須津に住んでいます。夫と2人暮らしですが、同じ敷地内の別の棟に夫の両親が住んでいます。

宮津市は高浜原発から30キロ圏にあり、過酷事故時には全市避難となります。大飯原発からは42キロ圏になります。

本日は、宮津市が今年3月に改定した避難計画と私が昨年参加した避難訓練についてお話しをさせていただきます。

【避難計画の問題点】

北部地域は、年に何度か大雪に襲われ、雪が30cm~1m程、積もることもあります。世屋地区などの山間ではもっと積もります。道は、ブルドーザーで除雪してもらい、家の前は、自力で雪かきをしなければ車では出られなくなります。その時に原発事故があれば動きはとれませんし、その雪が汚染されれば高濃度の放射性の雪に囲まれて被曝してしまいます。

改定された避難計画では、避難手段は、「自家用車又はバス等」とされています。さらにバスによる避難については、小学校を1次集合場所としています。小学校までの移動手段については、「原則、徒歩」と定めています。

北部地区の高齢化率は高く、車の運転をしないだけでなく、足腰が弱っていて本当にゆっくりゆっくりと杖や歩行車を使って移動することしかできない高齢者もおられます。高齢者にとっては、小学校の近くに住んでいても徒歩で小学校まで移動することが大変なのです。仮に、バスに乗ることができても、原発事故は地震などの自然災害とともに起こるケースが多く、道路の寸断や大渋滞で、避難は困難を極めると思われます。

私は児童発達支援センターで障害のある子供の放課後預かりのパートに行っていますが、自閉症の子どもさんは下校時に普段と違う道を通るだけでもパニックになったりします。

言葉を理解することができない子供も、歩行ができない子供もいます。原子力災害時の避難など本当に困難だろうと想像されます。宮津市の避難計画では、この点についても、記載がありません。

宮津市避難計画では、「自治会との連携」という項目を設け、市が自治会に協力を要請すると定められています。原発事故が起きた場合には、実際に、自治会役員や市の職員がローラー作戦でまだ家に残っている人を、被曝しながら見て回らねばなりません。私の夫は自治会の役員をしていますから、近所の人を見て回らねばならず、家族で勝手に逃げることはできないと思われます。私自身は、一刻も早く逃げるにしても高齢の主人の両親を連れて逃げる場所などありません。

【避難訓練に参加して】

私は昨年の11月28日に初めて原子力災害避難訓練に参加しました。京都府・宮津市・伊根町が主催でした。宮津市からの参加住民は須津地区からだけで、総勢316名でした。

私は、避難訓練に87歳になる主人の父を誘いましたが、父は「わしらはここに居るからほっといてくれ」と言って参加しませんでした。「そもそも避難しなくてはならんような原発を動かすのが間違いだ。」と言って怒っていました。

当日、まず集合場所の吉津小学校に徒歩で行きました。避難を前提とした服装などの詳しい説明もなく、参加者は普段通りの服装でした。まずこれで被曝してしまいます。

会場の体育館に集合してからも、アナウンスもなく全く緊迫感もなくて、時間がだらだらと過ぎ、集合時刻から30分くらいたった後で、参加者のチェックが始まりました。

チェックの後、日赤の薬剤師さんがヨウ素剤についての説明をされ、問診票に記入し安定ヨウ素剤の代わりに飴をもらいました。実際には緊急時にこんなに暢気に話を聴いて、問診票を書いて受け取っている場合ではありません。

私は市民グループで市にヨウ素剤の事前配布を要求していますが、国も府も5キロ圏以外は事前配布していませんし、「必要ならば支援する」と言いますが、必要も認めてくれません。副作用が心配だというならなおさら、事前に丁寧な説明会をして相談を受け、事前配布しておくべきです。

飴を配られた後は、避難中継所候補地である与謝野町の「野田川わーくばる」へ、バスで移動しました。「実際には自家用車になりますが今日はバスで行きます」ということで2台来ていました。1台には子供たち、あと1台には我々大人が乗りました。宮津市の人口は2万人弱ですから、単純に60人乗りのバスに乗っても、のべ300台以上必要です。これだけの数のバスを緊急時に用意することなどできません。また300台のバスを駐車する場所もありません。

国も電力会社もこんな計画や訓練で、「大丈夫です、合理的です」などと言って原発を再稼働するなど許されません。

【裁判所に臨むもの】

宮津市は、日本三景天橋立を擁し、年間260万人の観光客が訪れる観光地です。

海には水産資源が豊富で漁業や水産業がさかんです。農業も地元の産物がたくさんあり自然豊かな恵まれたところです。多くの高齢者は、動ける間は庭で野菜や果物を育てて、子や孫にやるのを楽しみに暮らしています。

この自然を放射能で汚染されれば、賠償などできるものではありません。いくらお金を出されても謝罪していただいてもこの素晴らしい暮らしは返ってはきません。先日も先祖代々の土地を奪われ、いまだ戻れない福島県浪江町の方の話を聴きましたが、全く同じになることは明らかです。

裁判所におかれましては、宮津市民のたからものである豊かな自然、住民の命と当たり前の暮らしを守るため、原子力発電の運転を差し止めて頂くようお願い致します。

以上

ページトップ

◆原告第28準備書面
第4 結論

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

第4 結論

このように、平成28年宮津市避難計画は、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていないのである。平成27年に実施された避難訓練からも、仮に原発事故が起きた場合、実際には、宮津市民全てが避難することが出来ないことが明らかになったのである。

以上

◆原告第28準備書面
第3 避難訓練

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

第3 避難訓練

平成27年11月28日、京都府と宮津市と伊根町の主催により避難訓練が行われた。宮津市からの参加は須津地区からだけで、総勢約316名の住民が参加した。

行われた避難訓練の内容は次のとおりである。

当日、参加者は、集合場所である吉津小学校に徒歩で移動した。避難を前提とした、服装などの詳しい説明はなかった。会場の体育館に、集合してからも、全く緊迫感も無いまま、時間が過ぎ、集合時刻から30分程度経過した後に、参加者のチェックが始まった。

参加者のチェック後、日赤の薬剤師が安定ヨウ素剤についての説明を行い、問診票に記入し、安定ヨウ素剤の代わりに飴が配布された。実際には、このような、説明を聞いたり、問診票に記入したり、しているような余裕などない。

飴の配布後、避難中継所候補地とされている与謝野町の「野田川わーくばる」へ、2台のバスで移動した。宮津市の人口は2万人弱であり、仮に60人乗りのバスだとしても、宮津市民全員が避難するためには、のべ300台以上のバスが必要である。これだけの数のバスを緊急時に用意できるはずなどない。

ページトップ

◆原告第28準備書面
第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について

 1 基本方針について

平成25年宮津市防災計画は、「1基本事項(1)本計画の位置づけ」において、「関西電力株式会社高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)における原子力災害にかかる住民の等の避難について必要な事項を定める。」と定められている。

宮津市は、大飯原発から約40キロの位置にあるため、高浜原発だけでなく、大飯原発についても当然に、避難計画を定めなければならないところ、宮津市防災計画は、大飯原発について避難計画を定めていない。これは、大飯原発の危険性を無視するものであり、避難計画として不十分である。

この問題点は、平成28年宮津市防災計画においても全く改善されていない(甲300号証[3 MB]1頁)。

 2 迅速的確な情報伝達の非確実性

平成25年宮津市避難計画においては、高浜原発の緊急事態における避難などの指示については、原子力規制委員会、国及び府からの避難指示が迅速になされ、宮津市が正確に情報を受け取ることができることを前提として作成されている(甲78号証2頁)。

しかし、福島原発事故では停電により情報発信そのものが十分できなくなったり、処理能力を超えてメール等の送受信ができなくなったことにより、迅速的確な情報伝達は行われなかったりしたことを考慮すると、上記前提自体が覆される可能性が高い。

平成28年宮津市避難計画においては、全面緊急事態(甲300号証4頁参照)等に陥った場合の緊急連絡体制について、原子力規制委員会及び国からの情報をもとに、必要な体勢をとるものとされており、迅速的確な情報伝達について全く改善がなされていない(甲300号証[3 MB]6から9頁)。

 3 避難手段について

平成28年宮津市避難計画は、「避難手段」(甲300号証[3 MB]17貢)について次のとおり定めている。

「2 避難手段(1)基本的対応

  1. 避難のための移動手段は、自家用車又はバス等で避難する。
  2. 避難車両が増えると、交通渋滞、交通事故、駐車場不足等により、円滑な避難に支障を来たすおそれがあるため、自家用車で避難する場合は、避難者は京都府・本市の指示に従い、極力地域で乗り合わせるよう努める。
  3. 避難の経路及び時期が重複する場合の交通渋滞抑制策等について、関係府県相互に協議を行うとともに、内閣府、警察庁、道路管理者等の関係機関とも調整し、避難手段その他避難方法の整合を図るよう努める。」

しかし、これまで原告が主張してきたとおり、自家用車による避難は、交通渋滞などにより、迅速な避難が行えないことが容易に予想できる。さらに、北部地域は豪雪地帯であり、年に何度か大雪に襲われ、自家用車及びバスでの移動が不可能となる。

また、平成28年宮津市避難計画は、バスによる避難について小学校を避難場所とし、小学校までの移動手段について「集合場所への移動は、原則、徒歩とし、集合場所が遠距離となる住民等は、自治会避難対策本部等地域住民と協力し、自家用車の乗り合せに努める。」と定めている。

しかし、宮津市北部地区の高齢化率は高く、車の運転が出来ないだけでなく、足腰が弱っており、本当にゆっくりと杖や歩行車を使って移動することしかできない高齢者も多数存在する。平成28年宮津市避難計画は、このような高齢者の立場にたった内容となっていない。

このように平成28年宮津市避難計画は、宮津市の地域特性を全く無視した内容となっている。

 4 避難先

平成28年宮津市避難計画では、避難先の市及び避難対象地区、受入人数などを定め、西方面の避難先とされている福知山市、京丹後市、与謝野町は、受入確保人数として2万0300人とされている。

しかし、2万人もの人数の具体的避難先については、具体的には全く記載されておらず、平成25年見やすし避難計画の問題点が全く解決されていない。

ページトップ

◆原告第28準備書面
第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では宮津市における避難計画の問題点について追加の主張及び平成27年11月28日に京都府・宮津市・伊根町の主催で行なわれた避難訓練の問題点についての主張を行う。

第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

宮津市防災会議は、平成25年2月、宮津市原子力災害住民避難計画(以下「平成25年宮津市避難計画」という。)を作成した(甲78号証)。原告第6準備書面において主張したとおり、同計画は、迅速的確な情報伝達、避難手段の確保といった点において、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていない。

さらに、宮津市防災会議は、平成28年1月、宮津市原子力災害避難計画の全部改定を行った(甲300号証[3 MB])(以下平成28年宮津市避難計画」という。)。同避難計画は、平成25年宮津市避難計画の作成から約3年が経過しているにもかかわらず、平成25年宮津市避難計画の問題点が全く改善されていない。

このことこそが、現実的な避難計画を作成することが不可能であることを示しているのである。

ページトップ

◆原告第28準備書面
宮津市避難計画の問題点について
目次

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について―

第28準備書面[194 KB]

2016年(平成28年)11月25日

目次

第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について
1 基本方針について
2 迅速的確な情報伝達の非確実性
3 避難手段について
4 避難先

第3 避難訓練

第4 結論

◆原告第27準備書面
第4 原発再稼働は許されない

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第4 原発再稼働は許されない

 1 高浜原発広域避難訓練が明らかにしたこと

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難の困難さを明らかにした。原発周辺の各自治体は、国の指示を受けて原子力防災計画や住民避難計画を策定しているが、これらはあくまで机上の計画にとどまっている。本件訓練は、それらの計画のごく一部を実施しようとしたに過ぎず、行政や防災業務従事者の業務手順の一部を確認したにとどまるものと言うほかない。それにもかかわらず、上述したように、様々な問題が噴出したのである。

とりわけ、市内全域が高浜原発のPAZ圏内、UPZ圏内に入り8万3000人が居住する舞鶴市、同じく市内全域が高浜原発のUPZ圏内に入り1万9000人が居住する宮津市などにおいては、これだけ多数の住民を、自治体を超えて広域避難させなければならないことになる。原発事故からすべての住民を安全に避難させることがいかに困難なことであるかが明らかになったと言わなければならない。

 2 住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠

  1. 現在、国は原発再稼働政策を推し進め、関西電力は、大飯原発3、4号機に加え、高浜原発1号機から4号機、美浜原発3号機の各原発の再稼働を計画している。しかしながら、上述したとおり、本件訓練の状況からしても、現状の避難計画を前提にして、原発事故からすべての住民を安全に避難させることは極めて困難というほかない。現在、新規制基準に基づく適合性審査が進められているが、その審査基準の中に、住民の避難計画は含まれていない。新規制基準が、東京電力福島第一原発事故を受けて策定されたものであるとするならば、住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠の基準とならなければならないことは論を待たない。国は、避難計画の策定を含めない新規制基準をただちに改めるべきである。
  2. 住民が安全に避難できる避難計画が策定されないかぎり、原発の再稼働は許されない。しかし、その一方で、現在稼働していない原発であっても、大量の使用済み核燃料が保管されている。地震や津波等の災害によって事故が発生すれば、これら使用済み核燃料から大量の放射性物質が外部に流出することも十分に考え得る事態である。そうであれば、再稼働を行う、行わないにかかわらず、原発を廃炉にし、使用済み核燃料の最終処分が終了しないかぎり(なお、使用済み核燃料の最終処分については、その目処すらいまだにたっていないのが現実である)、住民の避難計画は必要不可欠である。国と関西電力をはじめとする電力会社は、自治体任せにすることなく、住民を安全に避難させることのできる避難計画を責任を持って策定し、実施しなければならない。

 3 再稼働せず、ただちに廃炉に向かうことが住民の安全を守る唯一の道

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難がいかに困難であるかを明らかにした。そして、原発の再稼働によって、地震や津波といった災害時に起こり得る原発事故の被害はより拡大することになる。

東京電力福島第一原発の爆発事故によって、原発の安全神話はもろくも崩れ去った。原発でも過酷事故は起こり得る、という現実を前にしたとき、原発事故からすべての住民を安全に避難させることはおよそ不可能というほかなく、原発の再稼働は許されない。そして、上述したとおり、再稼働がなされなくとも、原発には大量の使用済み核燃料が保管されており、この使用済み核燃料が過酷事故を引き起こすことも十分に想定し得る事態なのである。

住民の安全を守る唯一の道は、ただちに廃炉に向かい、今ある使用済み核燃料の最終処分をすすめていくことである。過酷事故発生時の被害を拡大し、さらには、危険な使用済み核燃料をさらに増やすことになる原発再稼働は決して許されない。このことが、本件訓練が示す最大の教訓である。

以 上

ページトップ

◆原告第27準備書面
第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点

 1 「住民」のための訓練ではなかった

上述したとおり、本件訓練は、防災業務従事者約2030名、住民約7000名が参加した訓練である旨広報がなされている。しかし、その実態は、住民約7000名のうちの大半を占める約5800名が参加したとされる屋内退避訓練は、どれだけの住民が参加したのか、実際に屋内退避訓練を行ったのか否か、確認されているのか全く不明であるというほかない。

また、住民約1200名が参加したとされる避難訓練も、本来の住民人口からすればごくわずかにすぎない。市のほぼ全域がPAZ圏内もしくはUPZ圏内に入る舞鶴市で言えば、人口約8万3000名に対して避難訓練参加者は190名にすぎず、わずか0.2%程度の参加率である。しかも、本件訓練の参加者の選定は対象地域の自治会任せにされており、実際に参加したのは、町内会長や区長など、比較的行政施策に協力的な住民が中心であった。

屋内退避訓練にせよ避難訓練にせよ、実際に起こりうる住民避難を想定したものとは言えなかったことは明らかである。

 2 事故後24時間の部分を想定のみですませ実地訓練を行わなかった

  (1)事故後初動の訓練がなされなかった

緊急時モニタリングとそれに基づく避難計画の策定、スクリーニング場所の設置など、本来、事故後短時間の間に行われなければならないことが行われていない。とりわけ、政府は原発事故の際にSPEEDIを用いないこととしており、避難する方面の決定など避難計画の策定にあたっては、緊急時モニタリングの徹底が不可欠である。それにもかかわらず、緊急時モニタリングの結果を踏まえた避難計画の策定、避難実施の準備というもっとも重要な部分を行わなかった点については訓練としては明らかに手落ちであると言うほかない。

加えて、後述するとおり、地震や津波との複合災害が想定される中で、原子力災害のみならず、実際には、地震や津波による被災、避難の混乱の中で行われることとなる。

  (2)屋内退避訓練の問題点

上述したとおり、屋内退避訓練について、舞鶴市では、午前9時の段階で舞鶴市防災情報第1報、午前10時(24時間経過後を想定)の段階で舞鶴市防災情報第2報を発表したが、その実態は、屋内退避訓練対象地域の消防団あてメールに通知を送信し、当該地域の消防団員が地域を見回って呼びかけるというだけであった。

屋内退避訓練のみの参加者(住民参加者約7000名中約5800名とされる)については、実際にどれだけの住民が参加したのか、屋内退避訓練が実際に行われたのか否か、全く不明な状況である。

また、屋内退避を経ての避難訓練参加者(約1000名)についても、本来であれば24時間行われるはずの屋内退避を1時間行ったのみで避難に移行しており、実際の屋内退避を想定した訓練とはおよそいい難い訓練であった。

 3 地震発生との複合災害であることの想定があまりに不十分

本件訓練は、若狭湾沖を震源とする地震発生による高浜原発3号機の外部電源喪失が想定された訓練であった。すなわち地震との複合災害である。しかしながら、地震による建物の倒壊や半倒壊、それに伴う住民の公共施設への避難を想定した訓練を実施したのは、福井県高浜町の一地区(和田地区)のみであった。さらには、若狭湾沖を震源とする地震が発生した場合、津波の発生、津波警報や注意報の発令に伴う避難勧告、避難指示などが当然に想定されなければならない。
とりわけ、津波からの避難を想定した場合には、自宅内や平地にある公共施設ではなく、屋外であっても高台への避難が最優先されることとなる。

地震により自宅が倒壊ないしは半倒壊した住民の屋内退避は可能なのか。同じ地区内で自宅が倒壊した住民とそうでない住民が混在する場合の屋内退避はどうなるのか。津波からの避難を行いつつ屋内退避を行うことが可能なのか。本件訓練は、地震発生との複合災害を想定しているのであれば、当然に想定されなければならないことが想定されていないものと言わざるを得ない。

本件訓練は震度6の地震が発生したことが想定されている。高速道路などは震度5を超える地震が発生した場合、原則として通行止めとされることとなる。本件訓練においても当然のように高速道路が利用されたが、高速道路が当然に24時間で復旧するとの想定はあまりに楽観的と言わざるを得ない。また、一般道路についても同様に、地震による通行止めなども想定されなければならない。

 4 船舶避難の問題点

上述したとおり、舞鶴市成生地区(高浜原発から8キロメートル)の船舶による避難については、舞鶴市避難計画では海上保安庁の船舶による避難が計画されている。しかしながら、本件訓練では、関西電力が小浜市の観光船をチャーターして迎えに行く訓練が計画され、さらには、本件訓練当日は、天候状況により観光船が出せず、避難訓練を実施することができなかった。本件訓練に沿ったような、観光船による船舶避難を行うというのであれば、1年間の半分の日は船舶による避難が実施できないという現実に直面することとなった。

また、船舶による避難が可能な天候状況であったとしても、小浜市から舞鶴市まで、事故を起こし、大量の放射性物質が放出されているはずの大飯原発や高浜原発の外海を通って避難者を迎えに行くこととなる。このような、従業員を極めて危険な状態にさらすような業務を、民間の観光船運航会社が了解するのか、船舶に乗務する従業員に対して業務を命じることができるのか、問題点は極めて大きい。

 5 防災業務従事者の放射線被ばく防止対策の問題点

  1. あやべ球場で行われたスクリーニング及び除染の訓練においては、避難車両の除染作業にあたった自衛隊員については防護服を着用していたが、スクリーニングや避難住民の除染作業にあたった自治体職員や消防士らは防護服を着用していなかった。丹波自然運動公園で行われた訓練では、スクリーニングや避難車両、避難住民の除染作業にあたった自衛隊員や自治体職員の多くは防護服着用を着用していたが、それでもすべての防災業務従事者が防護服を着用していたわけではなかった。このことは、各自治体に設置された避難場所での安定ヨウ素剤配布の訓練でも同様であった。また、本件訓練においては、福祉施設等からの要支援者の搬送の訓練なども行われたが、かかる訓練には消防士や福祉施設の職員があたっている。さらには、上述したとおり、舞鶴市の屋内退避訓練では、午前9時及び(想定では24時間後の)午前10時に、UPZ圏内の地域の消防団員らが地域をまわって屋内退避の呼びかけを行っている。このような、もっとも放射線被ばくの可能性のある者について、本件訓練においては、防護服などの装備を着用しないまま業務に当たることとなった。
  2. 労働安全衛生法及び同法施行令に基づき、電離放射線障害防止規則(昭和47年9月30日労働省令第41号)が定められ、同規則第7条ないし第7条の3において、緊急作業時等における労働者の被ばく限度量を定めるとともに、同規則第8条において、事業者に線量の測定を義務づけている。本件訓練においては、防災業務に従事した自治体職員や消防士、消防団員、福祉施設の職員の多くが放射線被ばく防止対策のないままに防災業務に従事することとなった。それら防災業務従事者に対して、実際の原発事故において、線量計測や放射線被ばく防止対策はきちんととられるのか、また、防護服や線量計などの装備を各自治体において十分に用意することが可能なのかどうか、本件訓練はその部分の大半を捨象したかたちで行われた。防災業務従事者の労働安全衛生の側面から見ても、問題点は極めて大きいものと言わなければならない。

 6 自治体間の差異や連携の困難性

本件訓練では、あやべ球場では福井県がスクリーニング及び除染作業を実施し、丹波自然運動公園では京都府がスクリーニング及び除染作業を実施した。上述したとおり、あやべ球場と丹波自然運動公園とでは、用いられた除染設備や除染用具に大いに違いがあった。また、上述したとおり、防災業務従事者に対する放射線被ばく防止対策が求められており、今後、防護服等の装備を充実させていくことは不可欠である。財政規模、予算規模はそれぞれの自治体ごとに全く異なり、そして、原発事故時の防災業務従事者数も自治体ごとに異なる中、すべての住民、すべての防災業務従事者の安全を確保することが困難であることが本件訓練を通じて明らかとなった。

また、原発事故時には、自治体を超えた広域避難が行われることとなるが、地震等の災害における混乱の中、自治体間で連携を取って避難場所を確保することの困難さも明らかとなった。本件訓練においても、本来、避難先として予定されていた場所が利用できず、避難先を変更せざるを得なかったという事態が生じている。

 7 実際の避難状況を想定しているとはいい難い訓練であった

丹波自然運動公園における避難車両の除染作業訓練においては除染後の汚染水が処理されず土壌に垂れ流されている状況であった。また、避難住民の除染作業訓練においても、シャワーは男女別とはされておらず、衣服の着脱に要するスペースや着替えた衣服の処理など、実際のスクリーニング及び除染作業が想定された訓練とはなっていなかったのが実態であった。

また、安定ヨウ素剤の配布についても、舞鶴市の大浦小学校では、避難者1名について受付に20秒、配布に1分20秒ほどの時間を要している。大浦小学校での訓練の参加予定者は150名に過ぎなかったが、舞鶴市避難計画によれば、大浦小学校を避難時終結場所とする市民は1500名以上にのぼる。地震や原発事故の混乱の中、これだけの人数に対して、整然と、かつ、漏れなく安定ヨウ素剤の配布が現実に可能なのか、その困難さが明らかとなった。

ページトップ

◆原告第27準備書面
第2 高浜原発広域避難訓練の実態

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第2 高浜原発広域避難訓練の実態

 1 舞鶴市成生地区の船舶による避難訓練の実態

舞鶴市成生地区とは、大浦半島の東側に位置する地域で、高浜原発からは8キロメートルの距離にあるが、舞鶴市原子力災害住民避難計画(以下「舞鶴市避難計画」という。)においては、半島の道路が行き止まりとなるなど、避難経路を考慮し、PAZに準じた避難(防護措置)を行う地域とされている。

舞鶴市避難計画においては、成生地区の避難方法として、バス乗車場所である成生漁村センター前に集合し、バスによって避難時集結場所まで移動するとされているが、「複合災害の対応も含め、状況に応じて、船舶、航空機、鉄道等の多様な避難手段の活用も考慮し、実働組織等(自衛隊、海上保安庁、警察等)へ応援要請する。」とされており、本件訓練においては船舶による避難訓練が予定されていた。

上述のとおり、船舶による避難を実施する場合、実働組織である海上保安庁への応援要請が舞鶴市避難計画では予定されている。しかしながら、そもそも成生漁港は小規模の漁港であって、海上保安庁が保有する船舶では港内での旋回や接岸が困難であり、仮に海上保安庁の船舶を用いるにしても渡しが必要な状況である。本件訓練においては、関西電力がチャーターした小浜港の観光船(いわゆる蘇洞門まわりに用いられている船舶)を用いることとされていた。内海めぐりの観光船であるため、外海の揺れに弱く、本件訓練当日は波が高かった(2.5メートル程度)ことから、午前7時の段階で中止が伝えられた。なお、当初から1メートルを超える波が発生している際には船舶による船舶の出動は中止することとなっていたとのことであった。

そして、本件訓練当日の若狭湾の気象状況からすると、当日の最高風速を超える日数が昨年1年間で182日間あったことが判明し、まさに年間半数近い日において船舶による避難ができない可能性が指摘されている。

 2 あやべ球場における訓練の実態

あやべ球場では福井県(高浜町、おおい町)から避難してきた住民のスクリーニングポイントとしての訓練が行われた。高浜町、おおい町からの避難車両と避難住民のスクリーニングと除染が実施された。福井県が中心となって、県外での広域避難訓練として行われた。

高浜町、おおい町からの避難車両は、車両用ゲート型モニタを通過後、放射線測定器でワイパー部の測定検査が実施された。この測定検査には九州電力や四国電力など各電力会社の社員があたっていたが、いずれも防護服等は着用していなかった。

車両の除染には、車両除染用の大型テント(株式会社千代田テクノル製)が利用された。圧縮空気を用いて短時間で設営でき、後述する丹波自然運動公園において問題となった除染後の汚染水も地面に垂れ流すことなく専用の容器に回収できるというものであった。しかしながら、かかる大型テントは、本件訓練のためにデモンストレーション用として貸し出されたものであり、本件訓練時点では、いまだ商品として販売されていない状態であった。除染作業は陸上自衛隊第3特殊武器防護隊(伊丹駐屯地)の自衛隊員5名が担当した。いずれも防護服を着用しての作業であった。

あやべ球場では、住民のスクリーニングも行われたが、スクリーニングや除染を担当する職員は防護服を着用しているとの想定のみで、実際には着用しておらず、スクリーニングを待つ住民は、屋外テント内に並べたイスに密集して座った状態で待機させられた。訓練の想定としては、24時間の屋内退避を行ったあとの広域避難であり、当該24時間での被ばく量や放射性物質の付着状況は避難住民ごとに異なることが想定されるが、避難住民間での被ばくの拡大が懸念される訓練状況であった。また、避難住民の除染のための専用シャワーテントが設置されていたが、訓練で利用されることはなく展示されていただけであった。

 3 丹波自然運動公園における訓練の実態

丹波自然運動公園では、京都府内(舞鶴市、宮津市、綾部市、福知山市、京丹波町)から避難してきた住民のスクリーニングポイントとしての訓練が行われた。京都府が中心となって避難車両と避難住民のスクリーニングと除染が実施された。

丹波自然運動公園でも、避難車両は車両用ゲート型モニタによるスクリーニングが行われ、避難車両の除染作業が行われた。しかしながら、あやべ球場のような車両除染用の大型テントが用いられないばかりか、除染場所にはビニールシートなども敷かれておらず、除染により発生した汚染水はそのまま地面に垂れ流されている状態であった。

避難住民のスクリーニング及び除染については、熱中症を考慮したとのことであるが、会場を体育館から宿泊棟に変更したとのことで、実際に行われる動線の確認の訓練とはならなかった。丹波自然運動公園のスクリーニング会場では、あやべ球場にはなかったゲート型の体表面汚染モニタがあり、住民の除染作業にあたる職員は大半が防護服を着用していた。しかし、その一方で、除染用のシャワーについては、専用のものは用意されず、自衛隊が用いている簡易なシャワーテントが設置されているだけであった。特段の仕切りもなく中が丸見えの状態で、およそ脱衣をしてシャワーを浴びるような施設とは言えない状況であった。

 4 ヨウ素剤配布訓練の実態

本件訓練においては、UPZ圏内の避難訓練参加者に対してヨウ素剤配布の訓練が行われた。

そのうち、舞鶴市の大浦小学校(舞鶴市大浦地区、参加予定150名)では、事前に配布されていた問診票つきの避難カードを受付に提出し、乾パンの配布を受けた後、舞鶴市職員(本件訓練では4名)による簡易問診を経て安定ヨウ素剤に模したあめ玉が配布された。簡易問診の内容は「うがい薬などヨード過敏があるか否か」、「造影剤でアレルギーを起こしたことがあるか否か」、「配布を希望するか否か」の3つの質問がなされた。これらの質問に対して「わからない」という返答であった場合にも配布することとされていた。おおよその1人あたりの所要時間は、受付に約20秒、(模擬)ヨウ素剤の配布に約1分20秒であった。なお、大浦小学校での訓練において防護服を着用していたのは舞鶴市の消防士数名だけであり、その他の職員や消防士、消防団などは防護服を着用していなかった。

 5 屋内退避訓練の実態

本件訓練においては、UPZ圏内住民約5800名が屋内退避訓練を行ったとされている。

しかしながら、舞鶴市で行われた屋内退避訓練を見てみると、舞鶴市は午前9時の時点で舞鶴市防災情報第1報を発表しているが、実際には、屋内退避の対象となるB~Fゾーン(舞鶴市避難計画5頁、UPZ圏内)の地域に該当する消防団あてのメールでもって、「高浜原子力発電所で事故が発生」「次の通り指示します」「自宅のドアを閉め、換気扇を止めて外気を遮断し、屋内に退避して下さい。また避難の準備をお願いします。」との通知がなされ、当該地域の消防団員が地域の見回りにあたったにすぎない。

さらには、午前10時(想定としては24時間経過後)の時点で、舞鶴市防災情報第2報を発表し、継続して屋内退避の対象となるC~Fゾーンの地域に該当する消防団あてのメールでもって、「引き続き自宅のドアを閉め、換気扇を止めて外気を遮断し、屋内に退避して下さい。また避難の準備をお願いします。」との通知がなされ、当該地域の消防団員が地域の見回りにあたったにすぎない。

すなわち、住民約5800名が参加したとされる屋内退避訓練は、実際に住民が屋内退避を行ったか否か、実際に屋内退避訓練を行った住民がどれだけいたのか、全く確認はされないまま訓練を「実施」したとされているのが実態である。

ページトップ