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◆原告第27準備書面
第1 高浜原発広域避難訓練の概要

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第1 高浜原発広域避難訓練の概要

 1 2016(平成28)年8月27日、内閣府、3府県(福井県、京都府、滋賀県)及び関西広域連合による合同原子力防災訓練が実施された。なお、当該訓練の主要な内容が住民の広域避難訓練であったことから、本準備書面においては「高浜原発広域避難訓練」ないしは「本件訓練」との呼称を用いる。内閣府広報資料等による本件訓練の概要は以下のとおりである。

  1. 実施日:2016(平成28)年8月27日(土)
  2. 訓練対象施設:関西電力株式会社高浜発電所
  3. 参加機関:
    政府機関:内閣府、海上保安庁、防衛省、原子力規制庁等
    地方公共団体:福井県、京都府、滋賀県、関西広域連合、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、南丹市、京丹波町、伊根町、滋賀県高島市、福井県敦賀市、美浜町、越前市、鯖江市、越前町、京都府八幡市、兵庫県、兵庫県宝塚市、三田市、徳島県等
    原子力事業者:関西電力株式会社等
    関係機関:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構等
  4. 実施場所:福井県庁、京都府庁、滋賀県庁、福井県高浜原子力防災センター、関西広域連合広域防災局(兵庫県庁)、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹波町、伊根町、滋賀県高浜市、兵庫県宝塚市、三田市、丹波市等
  5. 訓練参加者(京都府広報発表より):防災業務従事者(政府機関、地方公共団体職員等)約2030人、住民約7000人(避難訓練約1200人、屋内退避訓練等約5800人)

 2 訓練の主な内容

(1)事故想定

2016(平成28)年8月27日、関西電力株式会社高浜発電所3号機が定格熱出力一定運転中、若狭湾沖における地震発生により外部電源が喪失し、原子炉が自動停止するとともに、全交流電源が喪失。その後原子炉冷却材が漏えいし、かつ非常用炉心冷却装置による注水不能により、全面緊急事態となる。さらに事態が進展し、放射性物質が放出され、その影響が発電所周辺地域に及ぶ。
(なお、4号機は地震発生により原子炉が自動停止した後、発生した直流電源系統の不具合を復旧し低温停止に移行し、安定となる。)

(2)主な訓練内容

  1. 災害対策本部の設置・運営等の初動対応訓練
  2. 施設敷地緊急事態及び全面緊急事態を受けた実動訓練(府県内外避難の実施)
  3. 避難退城時検査実施訓練及び安定ヨウ素剤配布訓練
  4. 避難先施設における受入訓練 等

(3)訓練のポイント

「高浜地域の緊急時対応」に基づく避難計画について、実効性の検証を行うとともに、訓練結果から教訓事項を抽出し、緊急時対応等の改善を図る。

福井県の住民が、京都府内に設置する避難退城時検査場所(綾部市)経由し、避難先である兵庫県(宝塚市、三田市)に避難する広域避難訓練の実施。
道路の寸断等の複合災害を想定した実働部隊等による住民避難等の実施。

 3 本件訓練のスケジュール

午前6時 地震発生(想定)
午前8時 訓練開始、施設敷地緊急事態(PAZ(5キロ圏内)要支援者避難要請)
午前8時10分 現地事故対策連絡会議(PAZ要支援者の避難実施方針の確認)
午前8時55分  全面緊急事態
午前9時  緊急事態宣言、PAZ住民避難・UPZ(30キロ圏内)屋内退避指示
午前9時10分  合同対策協議会(1)(PAZ住民の避難実施方針の確認)
~24時間経過後と想定~
午前9時35分  合同対策協議会(2)(OIL2(20ミリシーベルト毎時)超過対象区域の一時移転の実施方針の決定)
午前10時  OIL2超過対象区域住民の一時移転指示
午後2時  合同対策協議会(3)(住民の避難状況のとりまとめ)
午後3時  訓練終了、講評及び会見

 4 具体的な住民避難計画の内容(一部を抜粋)

(1)舞鶴市成生地区(PAZ圏に準じた避難を行う地域)住民(参加予定10名)
午前9時の緊急事態宣言とともに一時集合場所である成生漁村センターに集合し、船舶によって舞鶴西港に避難する。

(2)舞鶴市大山地区(PAZ圏内)在宅避難行動要支援者(参加予定5名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、大山公民館にいる在宅避難行動要支援者を福祉車両を用いて放射線防護対策施設である大浦会館まで搬送する。

(3)舞鶴市大浦地区(UPZ圏内)住民(参加予定150名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である大浦小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受ける。

(4)宮津市上宮津地区(UPZ圏内)住民(参加予定110名、ただし広域避難は40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である旧上宮津小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受けた後、そのうち一部の住民がさらにバスで八幡市民体育館へ広域避難する。

(5)福井県高浜町青郷・高浜地区(PAZ圏内)住民(参加予定80名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、自家用車及びバスで丹波の森公苑(兵庫県丹波市)へ避難し、その後バスで宝塚市役所へ広域避難を行う。

(6)福井県高浜町和田地区(UPZ圏内)住民(参加予定45名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)、保健福祉センターにて屋内退避を行い(地震による建物倒壊を想定)、翌日(想定)午前10時より保健福祉センターでヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑を経て、三田市消防本部(兵庫県三田市)まで広域避難を行う。

(7)福井県おおい町本郷・佐分利地区(UPZ圏内)住民(参加予定40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時よりふるさと交流センター等でヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑まで避難する。

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◆原告第27準備書面
高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点
目次

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点―

第27準備書面[359 KB]
第27準備書面 別紙[3 MB]

2016年(平成28年)11月25日

目次

第1 高浜原発広域避難訓練の概要
2 訓練の主な内容
3 本件訓練のスケジュール
4 具体的な住民避難計画の内容

第2 高浜原発広域避難訓練の実態
1 舞鶴市成生地区の船舶による避難訓練の実態
2 あやべ球場における訓練の実態
3 丹波自然運動公園における訓練の実態
4 ヨウ素剤配布訓練の実態
5 屋内退避訓練の実態

第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点
1 「住民」のための訓練ではなかった
2 事故後24時間の部分を想定のみですませ実地訓練を行わなかった
3 地震発生との複合災害であることの想定があまりに不十分
4 船舶避難の問題点
5 防災業務従事者の放射線被ばく防止対策の問題点
6 自治体間の差異や連携の困難性
7 実際の避難状況を想定しているとはいい難い訓練であった

第4 原発再稼働は許されない
1 高浜原発広域避難訓練が明らかにしたこと
2 住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠
3 再稼働せず、ただちに廃炉に向かうことが住民の安全を守る唯一の道

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◆原告第26準備書面
―熊本地震及び鳥取中部地震等を踏まえて―

原告第26準備書面
―熊本地震及び鳥取中部地震等を踏まえて―

原告第26準備書面[219 KB]

2016年(平成28年)11月25日

1 活断層の長さを事前に予測することはできない

熊本地震では,既に主張したように,連続して震度7,気象庁マグニチュード(Mj)それぞれ6.5と7.3の地震が発生し,大きな被害をもたらした。

この地震に関し,京都大理学研究科の林愛明教授らは,阿蘇山の地下にあるマグマだまりが断層破壊の進行を妨げた可能性の高いとの報告を本年10月21日,米科学誌サイエンスに発表した。それによれば,阿蘇山から南西約40キロにわたって地表がずれていることが確認され,布田川断層がカルデラ内まで延長していることが判明したほか,カルデラ西縁から北東方向に幅40~50メートル,長さ約9キロにわたって地表が落ち込んでいることも分かった。また,カルデラ外では横方向に断層がずれていたのに対し、内部では上下方向にずれていた。カルデラの地下6キロにあるマグマによって断層破壊が妨げられ、地表の割れ方が変化したと考えられるとのことである(甲288[136 KB] 本年10月21日京都新聞)。

このことは,マグマだまりがなかったとすればより長い区間で断層が破壊され,より大きな規模の地震が発生していたことを示している。想定されていた活断層の長さ19キロメートルに対し,現実に動いた活断層の長さが約27キロメートルであったことは既に述べたが(原告第23準備書面4頁),マグマだまりがなければより長い区間で活断層が動いていたということは,マグマだまりという偶然の要素がなければ,活断層の長さを読み違えた程度はより大きかったということになる。

2 「想定外」はいつでも容易に起こり得る

本年9月28日,停止中の北陸電力志賀原発2号機(石川県)の原子炉建屋に6.6トンの雨水が流れ込み、非常用照明の電源が漏電する事故が9月に発生した。1時間あたり最大26ミリという雨によって道路にあふれた雨水が配管に流れ込み,雨水は配管を通って原子炉建屋の1階に流入。非常用照明の電源設備などが漏電し,地下1階に所在する、地震などで外部電源が失われた際に使われる最重要の蓄電池の真上の場所にまで水が来ていた。雨水が蓄電池にまで及んでいれば安全上重要な機能を失うおそれが大きく,事故の際に重大な事態となる可能性がある。田中俊一委員長は同事故について,「これほどの雨が流入するのは想定外だった。安全上重要な機能を失う恐れもあった」としている(甲289[95 KB] 本年10月20日朝日新聞)。

述べるまでもなく,雨は日常的な現象である。その雨ですらこのように「想定外」の事態が生ずるのであるから,いわんや非日常的な現象である大地震の際に一体どのような事態が生ずるのか,適切に想定することは到底不可能である。そして,大地震という極限状態において1つでも想定外の事態が発生すれば,もはや取り返しはつかない。極めて重大な過酷事故に直ちに直結するおそれが非常に高いのである。このように,起こり得る「想定外」を想定した場合,原子力発電所を許容する余地はない。

ちなみに京都では,本年に入り,10月末日までに限っても,1時間当たり最大26ミリ以上の雨を観測した日数が2日あり,1日の降水量として26ミリを超えた日数は21日もあった。安全上重要な機能を失うおそれを来しかねないような現象は決して珍しいものではないのである。しかも,それを遥かに上回る降水量もしばしば観測されており,雨による「想定外」の危険性はなおさら大きい。そのように珍しくない雨量においてすら「想定外」が発生するということは,原発の安全対策が,通常起こり得る自然現象さえも考慮の外に置いているということである。非日常的な大地震という現象が適切に考慮されていないこと,即ち「想定外」がいくつも起こり得ることは容易に理解できる。

さらに,大地震の際にはもちろんのこと,大雨の際にも,大飯原発へと至る幹線道路ががけ崩れ等によって寸断されてしまう可能性が高く,それによっても過酷事故へと至るおそれが十分に認められる。

3 活動期に入ったわが国では震度7・M7クラスはどこでも起き得る

4月の熊本地震に次いで発生したのが,本年10月21日の鳥取中部地震であり,マグニチュード6.6,震度6弱,最大1494ガルを観測した(甲290[311 KB] 本年10月22日付毎日新聞)。同地震について政府の地震調査委員会は,「これまで知られていなかった長さ約10キロの断層がずれ動いて起きた」との見解を示し,委員長の平田直・東京大地震研究所教授は「地表に活断層が現れていなくても、被害を及ぼす地震が起こる可能性は全国どこでもある」と述べ,地震国日本における極めて当然の警鐘を改めて鳴らしている(甲291[55 KB] 本年10月23日付毎日新聞)。断層の存在が確認されていない地域であっても,震度6~7の地震,大飯原発のクリフエッジ1260ガルをも上回るような地震動が発生することが証明されたのである。

震度6弱程度である同地震でも大飯原発のクリフエッジ1260ガルを超える強さの揺れが発生しているところ,熊本地震によって既にバラツキの大きさが実証されていることは原告第23準備書面10頁以下で述べたところであるが,熊本地震のように震度7に至らない程度の地震によってもクリフエッジを超える可能性のあることまでもが示されたという事実は重大である。

また,鳥取中部地震について川崎一朗・京都大名誉教授(地震学)は,「阪神淡路大震災の後、活断層の知識は飛躍的に増えた。だが、あまり活動的ではないと考えられていた山陰でこれだけ地震が起きている理由に地震学は答えを持っていない。改めて、震度7レベルの地震はどこでも起きる可能性があるという警鐘と受け止めるべきだ。」と述べ,遠田晋次・東北大教授(地震地質学)も「地震がよく起きる地域が日本海側の内陸に帯状に広がっており、こうした地域では、今回の規模の地震は起きやすい。今後、M7クラスの地震も否定できない。」と述べている(いずれも甲292[150 KB] 本年10月22日朝日新聞)。

改めて明らかとなったのは,わが国では震度7レベルやM7クラスの地震はどこででも起こる可能性があり,その際には大飯原発のクリフエッジを超えるような揺れが生ずる可能性が十分にあるということである。

しかも,今年に入っても熊本地震,鳥取地震と大地震が連続して発生しているように,阪神大震災後,わが国の地震が活動期に入っていることは疑いない。このような状況の中で原子力発電所を存置せしむることは重大な危険の発生を等閑視することと同義である。地震と原子力発電所とは決して相容れない。そのことが改めて明らかになっている。

以 上

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◆第12回口頭弁論 意見陳述要旨

意見陳述 2016年9月14日
氏名 栢下 壽

私は、栢下壽と申します。

1940年4月6日生まれの76歳で、南丹市美山町内久保に住んでおります。美山町は住民の居住地域の大半が、大飯原発からは32.2キロ、高浜原発から30キロ圏内に含まれ一部20キロ圏内の地域もあります。私自身は、30キロ圏内に居住していますが、南丹市が定めた避難計画では、仮に原発事故が起きた場合、私のような高齢者は避難することはできません。

私は今回の意見陳述に当り、特に次のことを指摘し被告や裁判官の皆さんにご理解を頂きたく思います。

 避難計画は実効性が全く無い。

南丹市は、平成24年3月、「南丹市原子力災害住民避難計画」を作成しました。さらに、南丹市防災会議は、平成26年2月、「南丹市原子力災害住民避難計画」を発表しました。同計画は、平成24年南丹市避難計画の作成から2年が経過しているにも係わらず、全く地域の実情を踏まえた現実的な避難計画となっていません。

 地域の実情を把握していない。

防災会議の避難計画では、住民輸送の手段として「災害対策本部が輸送バスを準備する。」と定めています。しかし、美山町は、集落によれば高齢化率60%を超える地域もあり、避難行動要支援者、特別養護老人ホーム、病院の入院患者等もたくさんいます。美山町に住む約4000人もの住民をバスで緊急避難させることなどできません。住民は、自分で避難するしかないのです。

私自身は、妻と二人暮らしです。私や妻は車を運転することができますが、冬期間と夜の運転は危険なので、仮に、原発事故が冬期間や夜におきた場合は、避難することができません。

私の周りには、車を運転することはできない一人暮らしの高齢者が多数おられます。私自身は75年以上この地域に住んでいます。近所の方のことは、家族のように思っています。仮に、原発事故が起きた場合に、私や妻の車だけで、近所の方々をつれて避難することなど到底出来ません。かといって、近所の方をおいて自分たちだけが避難するなどしたくありません。

南丹市の避難計画では、府道19号や国道162号等を避難ルートとしていますが、災害によりこれらの道路が通行不能になった場合、積雪期間は、避難することが出来なくなってします。仮に、道路を通ることが出来たとしても、住民や車両が限られた道路に殺到して交通渋滞のため、美山町の住民が避難出来ない事態も想定されます。

また、美山町は、名前のとおり自然環境に恵まれ本年3月には町全域が「京都丹波高原国定公園」の指定を受け、「森の京都」の中核として自然の景観を生かした町づくりに取り組んでいます。国指定の「重要建造物群」の「かやぶきの里」をメインに、昨年の観光客数は、78万人を超える多くの人達が訪れました。このように多くの観光客の避難対応はどのようにするのでしょうか。避難計画は、この点について全く触れていません。
住民を対象とした避難訓練は実施されていません。

 SPEEDIの活用について

原子力発電所の安全対策にSPEEDI(大気中放射性物質の拡散計準)の活用についても問題があります。

福島第一発電所事故では円形に想定した、放射能拡散想定は何等役に立たず爆発時期の風向きにより80キロ~100キロまで放射能被害が拡散しました。

SPEEDI(大気中放射性物質の拡散計算)と言う資料が有りながら公表、活用しなかったため避難に混乱を起こし、被害を拡大させ対応を遅れさせました。

南丹市原子力災害住民避難計画は、「SPEEDIネットワークシステムを活用する」と定めていますが、仮に、原発事故が起きた際に、SPEEDIが適切に活用される保証などどこにもありません。京都府や南丹市は住民に対するSPEEDIの公表や説明すらしていません。

 安定ヨウ素剤配布について

南丹市原子力災害住民避難計画は、「安定ヨウ素剤の予防服用の指示があった場合は、医師、薬剤師の処方の上で、避難住民等の服用対象者に安定ヨウ素剤の配布を行う。」と定めています。

しかし、南丹市美山町は、340平方キロの面積の谷間に60集落が点在しており少子高齢化の過疎地域です。9月4日に行われた防災訓練で、南丹市のヨウ素材担当に現在の保管場所をたずねましたが、どこに保管されているか把握していませんでした。この様な現状で、これだけの広い地域に緊急で配布することは不可能です。

 最後に

私自身は、内久保環境・史跡保存会会長を務めており、保存会では、京都府指定希少野生生物、絶滅寸前種の「ベニバナヤマシャクヤク」の増殖、保護に取り組んできました。美山町には希少生物の宝庫京都大学芦生研究林もあり、京都府指定希少野生生物25種の半数近くが生息する、西日本でも有数の自然環境に恵まれた地域である美山町を私は、誇りに思っています。仮に原発事故が起きれば、世界に誇るべき美山町の自然が失われてしまいます。

原子力発電の電気は決して、クリーンエネルギーでも安価なエネルギーでも有りません。裁判所には、住民の立場、事故対策を考えず、自社の利益のため、再稼動ばかりを追及している電力会社を強く批判していただきたいと思います。世界に誇れる自然が残る美山町を守るため原子力発電の運転を差し止めて頂くようお願い致します。

以上

◆第12回口頭弁論 原告提出の書証

甲第278~284号証 (原告第23準備書面関連)
甲第285~287号証 (原告第25準備書面関連)

 

証拠説明書 甲第278~284号証[131 KB] (原告第23準備書面関連)
2016年9月8日

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証拠説明書 甲第285~287号証[77 KB] (原告第25準備書面関連)
2016年9月8日

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◆原告第25準備書面
第2 結論

原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について- 目次

2016年(平成28年)9月8日

第2 結論

このように、平成26年南丹市避難計画は、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていないのである。

以上

◆原告第25準備書面
第2 平成26年南丹市避難計画の問題点について

原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について- 目次

2016年(平成28年)9月8日

第2 平成26年南丹市避難計画の問題点について

1 基本方針について

平成26年南丹市避難計画は、避難に当たっての基本方針を次のように定めている(甲286号証[7 MB]3頁)。

「2,避難に当たっての基本的方針

(1)緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)内の全住民を重複なく、それぞれいずれかの施設に収容できるように避難所を指定する。

(2)いずれの住民も、高浜発電所及び大飯発電所から遠ざかる方向に移動するように配慮する。

(3)住民に対する避難先での行政サービスの提供を考慮し、南丹市内の公共施設への避難を基本とする。

(4)屋内退避及び避難等の防護活動の実施にあたっては、原子力発電所における事故等の状況に応じ、SPEEDIネットワークシステムや放射線環境モニタリングの結果により、実情に即して、柔軟に対応する。」

しかし、これらの基本方針については、下記のとおり問題がある。

 

2 避難所まで避難すること不可能である

平成26年南丹市避難計画は、「IV 避難誘導及び住民の輸送 1,緊急避難場所・避難先等」をさだめ、住民輸送の手段として「災害対策本部が輸送バスを準備する。」としている(甲286号証[7 MB]21頁から22頁)。

しかし、美山町は、集落によれば高齢化率60%を超える地域もあり、避難行動要支援者、特別養護老人ホーム、病院の入院患者等、避難が困難な者が多数いるのであり、4372人もの住民をバスで緊急避難させること等現実には不可能である。加えて、美山町は、昨年78万人を超える観光客が訪れているが、観光客の避難対応については、具体的対策が記載されていない。

このように平成26年南丹市避難計画は、美山町の地域特性を全く無視した内容となっている。

 

3 SPEEDIネットワークシステムについて

平成26年南丹市避難計画は、「SPEEDIネットワークシステムや放射線環境モニタリングの結果により、実情に即して、柔軟に対応する。」ことを基本計画としている。

しかし、これまで、原告が繰り返し主張してきたとおり、SPEEDI自体、電源が無くなった場合、放出された放射線の種類・量を把握できず、放射性物質の拡散状況などの適切なデータ解析ができないものである。さらに、そもそもSPEEDIはあくまでもシュミレーションにすぎないのであるから、SPEEDIがあるからといって物質の拡散状況が確実に把握できるというわけではない。そして、そもそも国や事業者が迅速・的確な情報を伝達すること自体、何ら担保のないものである。したがって、住民が迅速的確な情報を得られる確実性が全くないことは明らかである。

 

4 道路の問題について

平成26年南丹市避難計画は、「3、輸送計画及び輸送経路(2)輸送経路」を府道19号園部屋平線道路としている(甲286号証[7 MB]24頁)。

さらに同計画は、

「※ ただし、府道19号園部平屋線が何らかの事象によって通行不可能な場合は、他のルートを選定する。

《補完ルート》
▽国道162号を利用し、京都市右京区京北町から南丹市日吉町へ
▽府道綾部宮島線から国道27号、国道9号経由で南丹市園部町へ」

として、補完ルートについても定めている。

しかし、府道19号線が、何らかの事象によって通行不可能な場合に国道162号及び国道27号、国道9号が通行可能であることは全く担保されていない。これらの道路に避難住民が殺到した場合避難出来ない事態が十分に想定される。

2016年8月29日午後4時25分頃、京都市北区中川川登国道162号でマイクロバスが電柱に衝突し、電柱が倒壊したことにより、倒れた電柱が道路をふさぎ、約5時間にわたって通行止めとなった(甲287号証[62 KB])。

このように、国道162号は、電柱の倒壊によって通行止めとなってしまう道路であり、補完ルートとしての役割を果たすことなど出来ない。

◆原告第25準備書面
第1 南丹市原子力災害住民避難計画の作成

原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について- 目次

2016年(平成28年)9月8日

原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では南丹市における避難計画の問題点について追加の主張を行う。

第1 南丹市原子力災害住民避難計画の作成

南丹市は、平成24年3月、南丹市原子力災害住民避難計画(以下「平成24年南丹市避難計画」という。)を作成した(甲285号証[6 MB])。同計画は、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていない。

さらに、南丹市防災会議は、平成26年2月、南丹市原子力災害住民避難計画(以下「平成26年南丹市避難計画」という)を発表した(甲286号証[7 MB])。同計画は、平成24年南丹市避難計画の作成から2年が経過しているにも係わらず、全く地域の実情を踏まえた現実的な避難計画となっていない。

このことこそが、現実的な避難計画を作成することが不可能であることを示しているのである。

◆原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について-
目次

原告第25準備書面
-南丹市避難計画の問題点について-

原告第25準備書面[174 KB]

2016年(平成28年)9月8日

目次

第1 南丹市原子力災害住民避難計画の作成

第2 平成26年南丹市避難計画の問題点について

1 基本方針について
2 避難所まで避難すること不可能である
3 SPEEDIネットワークシステムについて
4 道路の問題について

第2 結論

◆原告第24準備書面
第5 原告第13準備書面(自然再生エネルギーの拡大)との関係

原告第24準備書面
-被告関西電力が反論していない原告の主張について- 目次

2016年(平成28年)9月12日

第5 原告第13準備書面(自然再生エネルギーの拡大)との関係

自然再生エネルギーの拡大は、原発ゼロを可能にするためにも、地球環境保全のためにも、持続可能な地域経済発展のためにも極めて重要であり、日本各地でも世界各国でも取り組みが前進しつつある。

原告は、日本各地や諸外国でのこうした取り組み、電力自由化問題等について、今後さらに主張を補充する予定である。

被告関電は原告の主張に対して一切反論していない。

以上