裁判資料」カテゴリーアーカイブ

◆原告第28準備書面
第3 避難訓練

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

第3 避難訓練

平成27年11月28日、京都府と宮津市と伊根町の主催により避難訓練が行われた。宮津市からの参加は須津地区からだけで、総勢約316名の住民が参加した。

行われた避難訓練の内容は次のとおりである。

当日、参加者は、集合場所である吉津小学校に徒歩で移動した。避難を前提とした、服装などの詳しい説明はなかった。会場の体育館に、集合してからも、全く緊迫感も無いまま、時間が過ぎ、集合時刻から30分程度経過した後に、参加者のチェックが始まった。

参加者のチェック後、日赤の薬剤師が安定ヨウ素剤についての説明を行い、問診票に記入し、安定ヨウ素剤の代わりに飴が配布された。実際には、このような、説明を聞いたり、問診票に記入したり、しているような余裕などない。

飴の配布後、避難中継所候補地とされている与謝野町の「野田川わーくばる」へ、2台のバスで移動した。宮津市の人口は2万人弱であり、仮に60人乗りのバスだとしても、宮津市民全員が避難するためには、のべ300台以上のバスが必要である。これだけの数のバスを緊急時に用意できるはずなどない。

ページトップ

◆原告第28準備書面
第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について

 1 基本方針について

平成25年宮津市防災計画は、「1基本事項(1)本計画の位置づけ」において、「関西電力株式会社高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)における原子力災害にかかる住民の等の避難について必要な事項を定める。」と定められている。

宮津市は、大飯原発から約40キロの位置にあるため、高浜原発だけでなく、大飯原発についても当然に、避難計画を定めなければならないところ、宮津市防災計画は、大飯原発について避難計画を定めていない。これは、大飯原発の危険性を無視するものであり、避難計画として不十分である。

この問題点は、平成28年宮津市防災計画においても全く改善されていない(甲300号証[3 MB]1頁)。

 2 迅速的確な情報伝達の非確実性

平成25年宮津市避難計画においては、高浜原発の緊急事態における避難などの指示については、原子力規制委員会、国及び府からの避難指示が迅速になされ、宮津市が正確に情報を受け取ることができることを前提として作成されている(甲78号証2頁)。

しかし、福島原発事故では停電により情報発信そのものが十分できなくなったり、処理能力を超えてメール等の送受信ができなくなったことにより、迅速的確な情報伝達は行われなかったりしたことを考慮すると、上記前提自体が覆される可能性が高い。

平成28年宮津市避難計画においては、全面緊急事態(甲300号証4頁参照)等に陥った場合の緊急連絡体制について、原子力規制委員会及び国からの情報をもとに、必要な体勢をとるものとされており、迅速的確な情報伝達について全く改善がなされていない(甲300号証[3 MB]6から9頁)。

 3 避難手段について

平成28年宮津市避難計画は、「避難手段」(甲300号証[3 MB]17貢)について次のとおり定めている。

「2 避難手段(1)基本的対応

  1. 避難のための移動手段は、自家用車又はバス等で避難する。
  2. 避難車両が増えると、交通渋滞、交通事故、駐車場不足等により、円滑な避難に支障を来たすおそれがあるため、自家用車で避難する場合は、避難者は京都府・本市の指示に従い、極力地域で乗り合わせるよう努める。
  3. 避難の経路及び時期が重複する場合の交通渋滞抑制策等について、関係府県相互に協議を行うとともに、内閣府、警察庁、道路管理者等の関係機関とも調整し、避難手段その他避難方法の整合を図るよう努める。」

しかし、これまで原告が主張してきたとおり、自家用車による避難は、交通渋滞などにより、迅速な避難が行えないことが容易に予想できる。さらに、北部地域は豪雪地帯であり、年に何度か大雪に襲われ、自家用車及びバスでの移動が不可能となる。

また、平成28年宮津市避難計画は、バスによる避難について小学校を避難場所とし、小学校までの移動手段について「集合場所への移動は、原則、徒歩とし、集合場所が遠距離となる住民等は、自治会避難対策本部等地域住民と協力し、自家用車の乗り合せに努める。」と定めている。

しかし、宮津市北部地区の高齢化率は高く、車の運転が出来ないだけでなく、足腰が弱っており、本当にゆっくりと杖や歩行車を使って移動することしかできない高齢者も多数存在する。平成28年宮津市避難計画は、このような高齢者の立場にたった内容となっていない。

このように平成28年宮津市避難計画は、宮津市の地域特性を全く無視した内容となっている。

 4 避難先

平成28年宮津市避難計画では、避難先の市及び避難対象地区、受入人数などを定め、西方面の避難先とされている福知山市、京丹後市、与謝野町は、受入確保人数として2万0300人とされている。

しかし、2万人もの人数の具体的避難先については、具体的には全く記載されておらず、平成25年見やすし避難計画の問題点が全く解決されていない。

ページトップ

◆原告第28準備書面
第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について― 目次

原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では宮津市における避難計画の問題点について追加の主張及び平成27年11月28日に京都府・宮津市・伊根町の主催で行なわれた避難訓練の問題点についての主張を行う。

第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

宮津市防災会議は、平成25年2月、宮津市原子力災害住民避難計画(以下「平成25年宮津市避難計画」という。)を作成した(甲78号証)。原告第6準備書面において主張したとおり、同計画は、迅速的確な情報伝達、避難手段の確保といった点において、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていない。

さらに、宮津市防災会議は、平成28年1月、宮津市原子力災害避難計画の全部改定を行った(甲300号証[3 MB])(以下平成28年宮津市避難計画」という。)。同避難計画は、平成25年宮津市避難計画の作成から約3年が経過しているにもかかわらず、平成25年宮津市避難計画の問題点が全く改善されていない。

このことこそが、現実的な避難計画を作成することが不可能であることを示しているのである。

ページトップ

◆原告第28準備書面
宮津市避難計画の問題点について
目次

原告第28準備書面
―宮津市避難計画の問題点について―

第28準備書面[194 KB]

2016年(平成28年)11月25日

目次

第1 宮津市原子力災害住民避難計画の作成

第2 平成28年宮津市避難計画の問題点について
1 基本方針について
2 迅速的確な情報伝達の非確実性
3 避難手段について
4 避難先

第3 避難訓練

第4 結論

◆原告第27準備書面
第4 原発再稼働は許されない

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第4 原発再稼働は許されない

 1 高浜原発広域避難訓練が明らかにしたこと

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難の困難さを明らかにした。原発周辺の各自治体は、国の指示を受けて原子力防災計画や住民避難計画を策定しているが、これらはあくまで机上の計画にとどまっている。本件訓練は、それらの計画のごく一部を実施しようとしたに過ぎず、行政や防災業務従事者の業務手順の一部を確認したにとどまるものと言うほかない。それにもかかわらず、上述したように、様々な問題が噴出したのである。

とりわけ、市内全域が高浜原発のPAZ圏内、UPZ圏内に入り8万3000人が居住する舞鶴市、同じく市内全域が高浜原発のUPZ圏内に入り1万9000人が居住する宮津市などにおいては、これだけ多数の住民を、自治体を超えて広域避難させなければならないことになる。原発事故からすべての住民を安全に避難させることがいかに困難なことであるかが明らかになったと言わなければならない。

 2 住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠

  1. 現在、国は原発再稼働政策を推し進め、関西電力は、大飯原発3、4号機に加え、高浜原発1号機から4号機、美浜原発3号機の各原発の再稼働を計画している。しかしながら、上述したとおり、本件訓練の状況からしても、現状の避難計画を前提にして、原発事故からすべての住民を安全に避難させることは極めて困難というほかない。現在、新規制基準に基づく適合性審査が進められているが、その審査基準の中に、住民の避難計画は含まれていない。新規制基準が、東京電力福島第一原発事故を受けて策定されたものであるとするならば、住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠の基準とならなければならないことは論を待たない。国は、避難計画の策定を含めない新規制基準をただちに改めるべきである。
  2. 住民が安全に避難できる避難計画が策定されないかぎり、原発の再稼働は許されない。しかし、その一方で、現在稼働していない原発であっても、大量の使用済み核燃料が保管されている。地震や津波等の災害によって事故が発生すれば、これら使用済み核燃料から大量の放射性物質が外部に流出することも十分に考え得る事態である。そうであれば、再稼働を行う、行わないにかかわらず、原発を廃炉にし、使用済み核燃料の最終処分が終了しないかぎり(なお、使用済み核燃料の最終処分については、その目処すらいまだにたっていないのが現実である)、住民の避難計画は必要不可欠である。国と関西電力をはじめとする電力会社は、自治体任せにすることなく、住民を安全に避難させることのできる避難計画を責任を持って策定し、実施しなければならない。

 3 再稼働せず、ただちに廃炉に向かうことが住民の安全を守る唯一の道

本件訓練は、原発事故からの避難や広域避難がいかに困難であるかを明らかにした。そして、原発の再稼働によって、地震や津波といった災害時に起こり得る原発事故の被害はより拡大することになる。

東京電力福島第一原発の爆発事故によって、原発の安全神話はもろくも崩れ去った。原発でも過酷事故は起こり得る、という現実を前にしたとき、原発事故からすべての住民を安全に避難させることはおよそ不可能というほかなく、原発の再稼働は許されない。そして、上述したとおり、再稼働がなされなくとも、原発には大量の使用済み核燃料が保管されており、この使用済み核燃料が過酷事故を引き起こすことも十分に想定し得る事態なのである。

住民の安全を守る唯一の道は、ただちに廃炉に向かい、今ある使用済み核燃料の最終処分をすすめていくことである。過酷事故発生時の被害を拡大し、さらには、危険な使用済み核燃料をさらに増やすことになる原発再稼働は決して許されない。このことが、本件訓練が示す最大の教訓である。

以 上

ページトップ

◆原告第27準備書面
第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点

 1 「住民」のための訓練ではなかった

上述したとおり、本件訓練は、防災業務従事者約2030名、住民約7000名が参加した訓練である旨広報がなされている。しかし、その実態は、住民約7000名のうちの大半を占める約5800名が参加したとされる屋内退避訓練は、どれだけの住民が参加したのか、実際に屋内退避訓練を行ったのか否か、確認されているのか全く不明であるというほかない。

また、住民約1200名が参加したとされる避難訓練も、本来の住民人口からすればごくわずかにすぎない。市のほぼ全域がPAZ圏内もしくはUPZ圏内に入る舞鶴市で言えば、人口約8万3000名に対して避難訓練参加者は190名にすぎず、わずか0.2%程度の参加率である。しかも、本件訓練の参加者の選定は対象地域の自治会任せにされており、実際に参加したのは、町内会長や区長など、比較的行政施策に協力的な住民が中心であった。

屋内退避訓練にせよ避難訓練にせよ、実際に起こりうる住民避難を想定したものとは言えなかったことは明らかである。

 2 事故後24時間の部分を想定のみですませ実地訓練を行わなかった

  (1)事故後初動の訓練がなされなかった

緊急時モニタリングとそれに基づく避難計画の策定、スクリーニング場所の設置など、本来、事故後短時間の間に行われなければならないことが行われていない。とりわけ、政府は原発事故の際にSPEEDIを用いないこととしており、避難する方面の決定など避難計画の策定にあたっては、緊急時モニタリングの徹底が不可欠である。それにもかかわらず、緊急時モニタリングの結果を踏まえた避難計画の策定、避難実施の準備というもっとも重要な部分を行わなかった点については訓練としては明らかに手落ちであると言うほかない。

加えて、後述するとおり、地震や津波との複合災害が想定される中で、原子力災害のみならず、実際には、地震や津波による被災、避難の混乱の中で行われることとなる。

  (2)屋内退避訓練の問題点

上述したとおり、屋内退避訓練について、舞鶴市では、午前9時の段階で舞鶴市防災情報第1報、午前10時(24時間経過後を想定)の段階で舞鶴市防災情報第2報を発表したが、その実態は、屋内退避訓練対象地域の消防団あてメールに通知を送信し、当該地域の消防団員が地域を見回って呼びかけるというだけであった。

屋内退避訓練のみの参加者(住民参加者約7000名中約5800名とされる)については、実際にどれだけの住民が参加したのか、屋内退避訓練が実際に行われたのか否か、全く不明な状況である。

また、屋内退避を経ての避難訓練参加者(約1000名)についても、本来であれば24時間行われるはずの屋内退避を1時間行ったのみで避難に移行しており、実際の屋内退避を想定した訓練とはおよそいい難い訓練であった。

 3 地震発生との複合災害であることの想定があまりに不十分

本件訓練は、若狭湾沖を震源とする地震発生による高浜原発3号機の外部電源喪失が想定された訓練であった。すなわち地震との複合災害である。しかしながら、地震による建物の倒壊や半倒壊、それに伴う住民の公共施設への避難を想定した訓練を実施したのは、福井県高浜町の一地区(和田地区)のみであった。さらには、若狭湾沖を震源とする地震が発生した場合、津波の発生、津波警報や注意報の発令に伴う避難勧告、避難指示などが当然に想定されなければならない。
とりわけ、津波からの避難を想定した場合には、自宅内や平地にある公共施設ではなく、屋外であっても高台への避難が最優先されることとなる。

地震により自宅が倒壊ないしは半倒壊した住民の屋内退避は可能なのか。同じ地区内で自宅が倒壊した住民とそうでない住民が混在する場合の屋内退避はどうなるのか。津波からの避難を行いつつ屋内退避を行うことが可能なのか。本件訓練は、地震発生との複合災害を想定しているのであれば、当然に想定されなければならないことが想定されていないものと言わざるを得ない。

本件訓練は震度6の地震が発生したことが想定されている。高速道路などは震度5を超える地震が発生した場合、原則として通行止めとされることとなる。本件訓練においても当然のように高速道路が利用されたが、高速道路が当然に24時間で復旧するとの想定はあまりに楽観的と言わざるを得ない。また、一般道路についても同様に、地震による通行止めなども想定されなければならない。

 4 船舶避難の問題点

上述したとおり、舞鶴市成生地区(高浜原発から8キロメートル)の船舶による避難については、舞鶴市避難計画では海上保安庁の船舶による避難が計画されている。しかしながら、本件訓練では、関西電力が小浜市の観光船をチャーターして迎えに行く訓練が計画され、さらには、本件訓練当日は、天候状況により観光船が出せず、避難訓練を実施することができなかった。本件訓練に沿ったような、観光船による船舶避難を行うというのであれば、1年間の半分の日は船舶による避難が実施できないという現実に直面することとなった。

また、船舶による避難が可能な天候状況であったとしても、小浜市から舞鶴市まで、事故を起こし、大量の放射性物質が放出されているはずの大飯原発や高浜原発の外海を通って避難者を迎えに行くこととなる。このような、従業員を極めて危険な状態にさらすような業務を、民間の観光船運航会社が了解するのか、船舶に乗務する従業員に対して業務を命じることができるのか、問題点は極めて大きい。

 5 防災業務従事者の放射線被ばく防止対策の問題点

  1. あやべ球場で行われたスクリーニング及び除染の訓練においては、避難車両の除染作業にあたった自衛隊員については防護服を着用していたが、スクリーニングや避難住民の除染作業にあたった自治体職員や消防士らは防護服を着用していなかった。丹波自然運動公園で行われた訓練では、スクリーニングや避難車両、避難住民の除染作業にあたった自衛隊員や自治体職員の多くは防護服着用を着用していたが、それでもすべての防災業務従事者が防護服を着用していたわけではなかった。このことは、各自治体に設置された避難場所での安定ヨウ素剤配布の訓練でも同様であった。また、本件訓練においては、福祉施設等からの要支援者の搬送の訓練なども行われたが、かかる訓練には消防士や福祉施設の職員があたっている。さらには、上述したとおり、舞鶴市の屋内退避訓練では、午前9時及び(想定では24時間後の)午前10時に、UPZ圏内の地域の消防団員らが地域をまわって屋内退避の呼びかけを行っている。このような、もっとも放射線被ばくの可能性のある者について、本件訓練においては、防護服などの装備を着用しないまま業務に当たることとなった。
  2. 労働安全衛生法及び同法施行令に基づき、電離放射線障害防止規則(昭和47年9月30日労働省令第41号)が定められ、同規則第7条ないし第7条の3において、緊急作業時等における労働者の被ばく限度量を定めるとともに、同規則第8条において、事業者に線量の測定を義務づけている。本件訓練においては、防災業務に従事した自治体職員や消防士、消防団員、福祉施設の職員の多くが放射線被ばく防止対策のないままに防災業務に従事することとなった。それら防災業務従事者に対して、実際の原発事故において、線量計測や放射線被ばく防止対策はきちんととられるのか、また、防護服や線量計などの装備を各自治体において十分に用意することが可能なのかどうか、本件訓練はその部分の大半を捨象したかたちで行われた。防災業務従事者の労働安全衛生の側面から見ても、問題点は極めて大きいものと言わなければならない。

 6 自治体間の差異や連携の困難性

本件訓練では、あやべ球場では福井県がスクリーニング及び除染作業を実施し、丹波自然運動公園では京都府がスクリーニング及び除染作業を実施した。上述したとおり、あやべ球場と丹波自然運動公園とでは、用いられた除染設備や除染用具に大いに違いがあった。また、上述したとおり、防災業務従事者に対する放射線被ばく防止対策が求められており、今後、防護服等の装備を充実させていくことは不可欠である。財政規模、予算規模はそれぞれの自治体ごとに全く異なり、そして、原発事故時の防災業務従事者数も自治体ごとに異なる中、すべての住民、すべての防災業務従事者の安全を確保することが困難であることが本件訓練を通じて明らかとなった。

また、原発事故時には、自治体を超えた広域避難が行われることとなるが、地震等の災害における混乱の中、自治体間で連携を取って避難場所を確保することの困難さも明らかとなった。本件訓練においても、本来、避難先として予定されていた場所が利用できず、避難先を変更せざるを得なかったという事態が生じている。

 7 実際の避難状況を想定しているとはいい難い訓練であった

丹波自然運動公園における避難車両の除染作業訓練においては除染後の汚染水が処理されず土壌に垂れ流されている状況であった。また、避難住民の除染作業訓練においても、シャワーは男女別とはされておらず、衣服の着脱に要するスペースや着替えた衣服の処理など、実際のスクリーニング及び除染作業が想定された訓練とはなっていなかったのが実態であった。

また、安定ヨウ素剤の配布についても、舞鶴市の大浦小学校では、避難者1名について受付に20秒、配布に1分20秒ほどの時間を要している。大浦小学校での訓練の参加予定者は150名に過ぎなかったが、舞鶴市避難計画によれば、大浦小学校を避難時終結場所とする市民は1500名以上にのぼる。地震や原発事故の混乱の中、これだけの人数に対して、整然と、かつ、漏れなく安定ヨウ素剤の配布が現実に可能なのか、その困難さが明らかとなった。

ページトップ

◆原告第27準備書面
第2 高浜原発広域避難訓練の実態

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第2 高浜原発広域避難訓練の実態

 1 舞鶴市成生地区の船舶による避難訓練の実態

舞鶴市成生地区とは、大浦半島の東側に位置する地域で、高浜原発からは8キロメートルの距離にあるが、舞鶴市原子力災害住民避難計画(以下「舞鶴市避難計画」という。)においては、半島の道路が行き止まりとなるなど、避難経路を考慮し、PAZに準じた避難(防護措置)を行う地域とされている。

舞鶴市避難計画においては、成生地区の避難方法として、バス乗車場所である成生漁村センター前に集合し、バスによって避難時集結場所まで移動するとされているが、「複合災害の対応も含め、状況に応じて、船舶、航空機、鉄道等の多様な避難手段の活用も考慮し、実働組織等(自衛隊、海上保安庁、警察等)へ応援要請する。」とされており、本件訓練においては船舶による避難訓練が予定されていた。

上述のとおり、船舶による避難を実施する場合、実働組織である海上保安庁への応援要請が舞鶴市避難計画では予定されている。しかしながら、そもそも成生漁港は小規模の漁港であって、海上保安庁が保有する船舶では港内での旋回や接岸が困難であり、仮に海上保安庁の船舶を用いるにしても渡しが必要な状況である。本件訓練においては、関西電力がチャーターした小浜港の観光船(いわゆる蘇洞門まわりに用いられている船舶)を用いることとされていた。内海めぐりの観光船であるため、外海の揺れに弱く、本件訓練当日は波が高かった(2.5メートル程度)ことから、午前7時の段階で中止が伝えられた。なお、当初から1メートルを超える波が発生している際には船舶による船舶の出動は中止することとなっていたとのことであった。

そして、本件訓練当日の若狭湾の気象状況からすると、当日の最高風速を超える日数が昨年1年間で182日間あったことが判明し、まさに年間半数近い日において船舶による避難ができない可能性が指摘されている。

 2 あやべ球場における訓練の実態

あやべ球場では福井県(高浜町、おおい町)から避難してきた住民のスクリーニングポイントとしての訓練が行われた。高浜町、おおい町からの避難車両と避難住民のスクリーニングと除染が実施された。福井県が中心となって、県外での広域避難訓練として行われた。

高浜町、おおい町からの避難車両は、車両用ゲート型モニタを通過後、放射線測定器でワイパー部の測定検査が実施された。この測定検査には九州電力や四国電力など各電力会社の社員があたっていたが、いずれも防護服等は着用していなかった。

車両の除染には、車両除染用の大型テント(株式会社千代田テクノル製)が利用された。圧縮空気を用いて短時間で設営でき、後述する丹波自然運動公園において問題となった除染後の汚染水も地面に垂れ流すことなく専用の容器に回収できるというものであった。しかしながら、かかる大型テントは、本件訓練のためにデモンストレーション用として貸し出されたものであり、本件訓練時点では、いまだ商品として販売されていない状態であった。除染作業は陸上自衛隊第3特殊武器防護隊(伊丹駐屯地)の自衛隊員5名が担当した。いずれも防護服を着用しての作業であった。

あやべ球場では、住民のスクリーニングも行われたが、スクリーニングや除染を担当する職員は防護服を着用しているとの想定のみで、実際には着用しておらず、スクリーニングを待つ住民は、屋外テント内に並べたイスに密集して座った状態で待機させられた。訓練の想定としては、24時間の屋内退避を行ったあとの広域避難であり、当該24時間での被ばく量や放射性物質の付着状況は避難住民ごとに異なることが想定されるが、避難住民間での被ばくの拡大が懸念される訓練状況であった。また、避難住民の除染のための専用シャワーテントが設置されていたが、訓練で利用されることはなく展示されていただけであった。

 3 丹波自然運動公園における訓練の実態

丹波自然運動公園では、京都府内(舞鶴市、宮津市、綾部市、福知山市、京丹波町)から避難してきた住民のスクリーニングポイントとしての訓練が行われた。京都府が中心となって避難車両と避難住民のスクリーニングと除染が実施された。

丹波自然運動公園でも、避難車両は車両用ゲート型モニタによるスクリーニングが行われ、避難車両の除染作業が行われた。しかしながら、あやべ球場のような車両除染用の大型テントが用いられないばかりか、除染場所にはビニールシートなども敷かれておらず、除染により発生した汚染水はそのまま地面に垂れ流されている状態であった。

避難住民のスクリーニング及び除染については、熱中症を考慮したとのことであるが、会場を体育館から宿泊棟に変更したとのことで、実際に行われる動線の確認の訓練とはならなかった。丹波自然運動公園のスクリーニング会場では、あやべ球場にはなかったゲート型の体表面汚染モニタがあり、住民の除染作業にあたる職員は大半が防護服を着用していた。しかし、その一方で、除染用のシャワーについては、専用のものは用意されず、自衛隊が用いている簡易なシャワーテントが設置されているだけであった。特段の仕切りもなく中が丸見えの状態で、およそ脱衣をしてシャワーを浴びるような施設とは言えない状況であった。

 4 ヨウ素剤配布訓練の実態

本件訓練においては、UPZ圏内の避難訓練参加者に対してヨウ素剤配布の訓練が行われた。

そのうち、舞鶴市の大浦小学校(舞鶴市大浦地区、参加予定150名)では、事前に配布されていた問診票つきの避難カードを受付に提出し、乾パンの配布を受けた後、舞鶴市職員(本件訓練では4名)による簡易問診を経て安定ヨウ素剤に模したあめ玉が配布された。簡易問診の内容は「うがい薬などヨード過敏があるか否か」、「造影剤でアレルギーを起こしたことがあるか否か」、「配布を希望するか否か」の3つの質問がなされた。これらの質問に対して「わからない」という返答であった場合にも配布することとされていた。おおよその1人あたりの所要時間は、受付に約20秒、(模擬)ヨウ素剤の配布に約1分20秒であった。なお、大浦小学校での訓練において防護服を着用していたのは舞鶴市の消防士数名だけであり、その他の職員や消防士、消防団などは防護服を着用していなかった。

 5 屋内退避訓練の実態

本件訓練においては、UPZ圏内住民約5800名が屋内退避訓練を行ったとされている。

しかしながら、舞鶴市で行われた屋内退避訓練を見てみると、舞鶴市は午前9時の時点で舞鶴市防災情報第1報を発表しているが、実際には、屋内退避の対象となるB~Fゾーン(舞鶴市避難計画5頁、UPZ圏内)の地域に該当する消防団あてのメールでもって、「高浜原子力発電所で事故が発生」「次の通り指示します」「自宅のドアを閉め、換気扇を止めて外気を遮断し、屋内に退避して下さい。また避難の準備をお願いします。」との通知がなされ、当該地域の消防団員が地域の見回りにあたったにすぎない。

さらには、午前10時(想定としては24時間経過後)の時点で、舞鶴市防災情報第2報を発表し、継続して屋内退避の対象となるC~Fゾーンの地域に該当する消防団あてのメールでもって、「引き続き自宅のドアを閉め、換気扇を止めて外気を遮断し、屋内に退避して下さい。また避難の準備をお願いします。」との通知がなされ、当該地域の消防団員が地域の見回りにあたったにすぎない。

すなわち、住民約5800名が参加したとされる屋内退避訓練は、実際に住民が屋内退避を行ったか否か、実際に屋内退避訓練を行った住民がどれだけいたのか、全く確認はされないまま訓練を「実施」したとされているのが実態である。

ページトップ

◆原告第27準備書面
第1 高浜原発広域避難訓練の概要

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点― 目次

第1 高浜原発広域避難訓練の概要

 1 2016(平成28)年8月27日、内閣府、3府県(福井県、京都府、滋賀県)及び関西広域連合による合同原子力防災訓練が実施された。なお、当該訓練の主要な内容が住民の広域避難訓練であったことから、本準備書面においては「高浜原発広域避難訓練」ないしは「本件訓練」との呼称を用いる。内閣府広報資料等による本件訓練の概要は以下のとおりである。

  1. 実施日:2016(平成28)年8月27日(土)
  2. 訓練対象施設:関西電力株式会社高浜発電所
  3. 参加機関:
    政府機関:内閣府、海上保安庁、防衛省、原子力規制庁等
    地方公共団体:福井県、京都府、滋賀県、関西広域連合、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、南丹市、京丹波町、伊根町、滋賀県高島市、福井県敦賀市、美浜町、越前市、鯖江市、越前町、京都府八幡市、兵庫県、兵庫県宝塚市、三田市、徳島県等
    原子力事業者:関西電力株式会社等
    関係機関:国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構等
  4. 実施場所:福井県庁、京都府庁、滋賀県庁、福井県高浜原子力防災センター、関西広域連合広域防災局(兵庫県庁)、福井県高浜町、小浜市、おおい町、若狭町、京都府福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹波町、伊根町、滋賀県高浜市、兵庫県宝塚市、三田市、丹波市等
  5. 訓練参加者(京都府広報発表より):防災業務従事者(政府機関、地方公共団体職員等)約2030人、住民約7000人(避難訓練約1200人、屋内退避訓練等約5800人)

 2 訓練の主な内容

(1)事故想定

2016(平成28)年8月27日、関西電力株式会社高浜発電所3号機が定格熱出力一定運転中、若狭湾沖における地震発生により外部電源が喪失し、原子炉が自動停止するとともに、全交流電源が喪失。その後原子炉冷却材が漏えいし、かつ非常用炉心冷却装置による注水不能により、全面緊急事態となる。さらに事態が進展し、放射性物質が放出され、その影響が発電所周辺地域に及ぶ。
(なお、4号機は地震発生により原子炉が自動停止した後、発生した直流電源系統の不具合を復旧し低温停止に移行し、安定となる。)

(2)主な訓練内容

  1. 災害対策本部の設置・運営等の初動対応訓練
  2. 施設敷地緊急事態及び全面緊急事態を受けた実動訓練(府県内外避難の実施)
  3. 避難退城時検査実施訓練及び安定ヨウ素剤配布訓練
  4. 避難先施設における受入訓練 等

(3)訓練のポイント

「高浜地域の緊急時対応」に基づく避難計画について、実効性の検証を行うとともに、訓練結果から教訓事項を抽出し、緊急時対応等の改善を図る。

福井県の住民が、京都府内に設置する避難退城時検査場所(綾部市)経由し、避難先である兵庫県(宝塚市、三田市)に避難する広域避難訓練の実施。
道路の寸断等の複合災害を想定した実働部隊等による住民避難等の実施。

 3 本件訓練のスケジュール

午前6時 地震発生(想定)
午前8時 訓練開始、施設敷地緊急事態(PAZ(5キロ圏内)要支援者避難要請)
午前8時10分 現地事故対策連絡会議(PAZ要支援者の避難実施方針の確認)
午前8時55分  全面緊急事態
午前9時  緊急事態宣言、PAZ住民避難・UPZ(30キロ圏内)屋内退避指示
午前9時10分  合同対策協議会(1)(PAZ住民の避難実施方針の確認)
~24時間経過後と想定~
午前9時35分  合同対策協議会(2)(OIL2(20ミリシーベルト毎時)超過対象区域の一時移転の実施方針の決定)
午前10時  OIL2超過対象区域住民の一時移転指示
午後2時  合同対策協議会(3)(住民の避難状況のとりまとめ)
午後3時  訓練終了、講評及び会見

 4 具体的な住民避難計画の内容(一部を抜粋)

(1)舞鶴市成生地区(PAZ圏に準じた避難を行う地域)住民(参加予定10名)
午前9時の緊急事態宣言とともに一時集合場所である成生漁村センターに集合し、船舶によって舞鶴西港に避難する。

(2)舞鶴市大山地区(PAZ圏内)在宅避難行動要支援者(参加予定5名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、大山公民館にいる在宅避難行動要支援者を福祉車両を用いて放射線防護対策施設である大浦会館まで搬送する。

(3)舞鶴市大浦地区(UPZ圏内)住民(参加予定150名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である大浦小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受ける。

(4)宮津市上宮津地区(UPZ圏内)住民(参加予定110名、ただし広域避難は40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時より地域の避難時集結場所である旧上宮津小学校でヨウ素剤の配布を行い、バスで避難。丹波自然運動公園(京都府京丹波町)でスクリーニング検査と除染を受けた後、そのうち一部の住民がさらにバスで八幡市民体育館へ広域避難する。

(5)福井県高浜町青郷・高浜地区(PAZ圏内)住民(参加予定80名)
午前9時の緊急事態宣言とともに、自家用車及びバスで丹波の森公苑(兵庫県丹波市)へ避難し、その後バスで宝塚市役所へ広域避難を行う。

(6)福井県高浜町和田地区(UPZ圏内)住民(参加予定45名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)、保健福祉センターにて屋内退避を行い(地震による建物倒壊を想定)、翌日(想定)午前10時より保健福祉センターでヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑を経て、三田市消防本部(兵庫県三田市)まで広域避難を行う。

(7)福井県おおい町本郷・佐分利地区(UPZ圏内)住民(参加予定40名)
午前9時の緊急事態宣言から24時間(想定)の屋内退避を経て、翌日(想定)午前10時よりふるさと交流センター等でヨウ素剤の配布を行い、バス及び自家用車で避難。あやべ球場(京都府綾部市)でスクリーニング検査と除染を受けた後、バス及び自家用車で丹波の森公苑まで避難する。

ページトップ

◆原告第27準備書面
高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点
目次

原告第27準備書面
―高浜原発広域避難訓練から明らかになった問題点―

第27準備書面[359 KB]
第27準備書面 別紙[3 MB]

2016年(平成28年)11月25日

目次

第1 高浜原発広域避難訓練の概要
2 訓練の主な内容
3 本件訓練のスケジュール
4 具体的な住民避難計画の内容

第2 高浜原発広域避難訓練の実態
1 舞鶴市成生地区の船舶による避難訓練の実態
2 あやべ球場における訓練の実態
3 丹波自然運動公園における訓練の実態
4 ヨウ素剤配布訓練の実態
5 屋内退避訓練の実態

第3 高浜原発広域避難訓練を通じて明らかになった問題点
1 「住民」のための訓練ではなかった
2 事故後24時間の部分を想定のみですませ実地訓練を行わなかった
3 地震発生との複合災害であることの想定があまりに不十分
4 船舶避難の問題点
5 防災業務従事者の放射線被ばく防止対策の問題点
6 自治体間の差異や連携の困難性
7 実際の避難状況を想定しているとはいい難い訓練であった

第4 原発再稼働は許されない
1 高浜原発広域避難訓練が明らかにしたこと
2 住民が安全に避難できる避難計画の策定が不可欠
3 再稼働せず、ただちに廃炉に向かうことが住民の安全を守る唯一の道

ページトップ

◆原告第26準備書面
―熊本地震及び鳥取中部地震等を踏まえて―

原告第26準備書面
―熊本地震及び鳥取中部地震等を踏まえて―

原告第26準備書面[219 KB]

2016年(平成28年)11月25日

1 活断層の長さを事前に予測することはできない

熊本地震では,既に主張したように,連続して震度7,気象庁マグニチュード(Mj)それぞれ6.5と7.3の地震が発生し,大きな被害をもたらした。

この地震に関し,京都大理学研究科の林愛明教授らは,阿蘇山の地下にあるマグマだまりが断層破壊の進行を妨げた可能性の高いとの報告を本年10月21日,米科学誌サイエンスに発表した。それによれば,阿蘇山から南西約40キロにわたって地表がずれていることが確認され,布田川断層がカルデラ内まで延長していることが判明したほか,カルデラ西縁から北東方向に幅40~50メートル,長さ約9キロにわたって地表が落ち込んでいることも分かった。また,カルデラ外では横方向に断層がずれていたのに対し、内部では上下方向にずれていた。カルデラの地下6キロにあるマグマによって断層破壊が妨げられ、地表の割れ方が変化したと考えられるとのことである(甲288[136 KB] 本年10月21日京都新聞)。

このことは,マグマだまりがなかったとすればより長い区間で断層が破壊され,より大きな規模の地震が発生していたことを示している。想定されていた活断層の長さ19キロメートルに対し,現実に動いた活断層の長さが約27キロメートルであったことは既に述べたが(原告第23準備書面4頁),マグマだまりがなければより長い区間で活断層が動いていたということは,マグマだまりという偶然の要素がなければ,活断層の長さを読み違えた程度はより大きかったということになる。

2 「想定外」はいつでも容易に起こり得る

本年9月28日,停止中の北陸電力志賀原発2号機(石川県)の原子炉建屋に6.6トンの雨水が流れ込み、非常用照明の電源が漏電する事故が9月に発生した。1時間あたり最大26ミリという雨によって道路にあふれた雨水が配管に流れ込み,雨水は配管を通って原子炉建屋の1階に流入。非常用照明の電源設備などが漏電し,地下1階に所在する、地震などで外部電源が失われた際に使われる最重要の蓄電池の真上の場所にまで水が来ていた。雨水が蓄電池にまで及んでいれば安全上重要な機能を失うおそれが大きく,事故の際に重大な事態となる可能性がある。田中俊一委員長は同事故について,「これほどの雨が流入するのは想定外だった。安全上重要な機能を失う恐れもあった」としている(甲289[95 KB] 本年10月20日朝日新聞)。

述べるまでもなく,雨は日常的な現象である。その雨ですらこのように「想定外」の事態が生ずるのであるから,いわんや非日常的な現象である大地震の際に一体どのような事態が生ずるのか,適切に想定することは到底不可能である。そして,大地震という極限状態において1つでも想定外の事態が発生すれば,もはや取り返しはつかない。極めて重大な過酷事故に直ちに直結するおそれが非常に高いのである。このように,起こり得る「想定外」を想定した場合,原子力発電所を許容する余地はない。

ちなみに京都では,本年に入り,10月末日までに限っても,1時間当たり最大26ミリ以上の雨を観測した日数が2日あり,1日の降水量として26ミリを超えた日数は21日もあった。安全上重要な機能を失うおそれを来しかねないような現象は決して珍しいものではないのである。しかも,それを遥かに上回る降水量もしばしば観測されており,雨による「想定外」の危険性はなおさら大きい。そのように珍しくない雨量においてすら「想定外」が発生するということは,原発の安全対策が,通常起こり得る自然現象さえも考慮の外に置いているということである。非日常的な大地震という現象が適切に考慮されていないこと,即ち「想定外」がいくつも起こり得ることは容易に理解できる。

さらに,大地震の際にはもちろんのこと,大雨の際にも,大飯原発へと至る幹線道路ががけ崩れ等によって寸断されてしまう可能性が高く,それによっても過酷事故へと至るおそれが十分に認められる。

3 活動期に入ったわが国では震度7・M7クラスはどこでも起き得る

4月の熊本地震に次いで発生したのが,本年10月21日の鳥取中部地震であり,マグニチュード6.6,震度6弱,最大1494ガルを観測した(甲290[311 KB] 本年10月22日付毎日新聞)。同地震について政府の地震調査委員会は,「これまで知られていなかった長さ約10キロの断層がずれ動いて起きた」との見解を示し,委員長の平田直・東京大地震研究所教授は「地表に活断層が現れていなくても、被害を及ぼす地震が起こる可能性は全国どこでもある」と述べ,地震国日本における極めて当然の警鐘を改めて鳴らしている(甲291[55 KB] 本年10月23日付毎日新聞)。断層の存在が確認されていない地域であっても,震度6~7の地震,大飯原発のクリフエッジ1260ガルをも上回るような地震動が発生することが証明されたのである。

震度6弱程度である同地震でも大飯原発のクリフエッジ1260ガルを超える強さの揺れが発生しているところ,熊本地震によって既にバラツキの大きさが実証されていることは原告第23準備書面10頁以下で述べたところであるが,熊本地震のように震度7に至らない程度の地震によってもクリフエッジを超える可能性のあることまでもが示されたという事実は重大である。

また,鳥取中部地震について川崎一朗・京都大名誉教授(地震学)は,「阪神淡路大震災の後、活断層の知識は飛躍的に増えた。だが、あまり活動的ではないと考えられていた山陰でこれだけ地震が起きている理由に地震学は答えを持っていない。改めて、震度7レベルの地震はどこでも起きる可能性があるという警鐘と受け止めるべきだ。」と述べ,遠田晋次・東北大教授(地震地質学)も「地震がよく起きる地域が日本海側の内陸に帯状に広がっており、こうした地域では、今回の規模の地震は起きやすい。今後、M7クラスの地震も否定できない。」と述べている(いずれも甲292[150 KB] 本年10月22日朝日新聞)。

改めて明らかとなったのは,わが国では震度7レベルやM7クラスの地震はどこででも起こる可能性があり,その際には大飯原発のクリフエッジを超えるような揺れが生ずる可能性が十分にあるということである。

しかも,今年に入っても熊本地震,鳥取地震と大地震が連続して発生しているように,阪神大震災後,わが国の地震が活動期に入っていることは疑いない。このような状況の中で原子力発電所を存置せしむることは重大な危険の発生を等閑視することと同義である。地震と原子力発電所とは決して相容れない。そのことが改めて明らかになっている。

以 上

ページトップ