◆関西電力 闇歴史◆098◆

┌─────────────────────────────────
◆原発最優先で再エネは後回しの関電!
 関電エリアで初めての再エネ出力制御(2023/6/4)
 【付 需給バランス制約による出力制御】
 【付 関電の供給力能力は約3000万kW】

└─────────────────────────────────
┌─────────────
「安い規制料金」で
 関西は関電一強
└─────────────
・関電はこれから大幅黒字経営を展望している。今夏に高浜1、2号機の再稼働を予定するなど、廃炉を決めたものを除く原発7基の全稼働を見込み、LNG価格も昨年秋から下落に転じている。規制料金の値上げをしなかったことで、低圧契約では顧客を増やしている。新電力から関電に移る数が増加している。(→ こちら

・「安い規制料金」に苦々しい思いでいるのは関西の新電力。自由料金が規制料金より高い逆転現象が続いており、新規契約を中止し、撤退を余儀なくされる新電力が続出している。新電力と連携して電気料金の削減を提案する日本電気保安協会(大阪市)の平井一二三(ひふみ)社長は「関西は “関電一強” で消費者が選べなくなっている。これで自由化といえるのか。原発の電気を市場にもっと供給するなど、競争を働かせる取り組みが必要だ」という。
(産経新聞、2023/5/30)

・公正取引委員会が2024/1/17に示した報告書「電力分野における実態調査報告書~卸分野について~」(→◆102◆)では、燃料費の上昇や電力需要の急増で市場価格が暴騰した場合、大手電力の規制料金が新電力の「自由料金」より安くなっていることから、規制料金が市場にあたえる影響を分析するよう、経産省に求めた。

┌─────────────
 原発はフル稼働で、再エネ電気はストップ !!!(> <)!!!
 関電は大儲けで、再エネ新電力は苦境に
└─────────────
・関西電力は、「ベースロード電源」とされる原発をフル運転しつつ(原発は元々、出力調整ができない)、2023/6/4には、関西電力送配電が太陽光や風力などの再生可能エネルギーの受け入れを一時的に止める「出力制御」を実施した。

【付 需給バランス制約による出力制御】
・電気の発電量がエリアの需要量を上回る場合には、
①火力発電の出力の抑制、
②揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、
③地域間連系線を活用した他エリアへの送電
を行う。
・次に、太陽光発電、風力発電の出力制御を行う。
・水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力を短時間で小刻みに調整することが技術的に難しく、一度出力を低下させるとすぐに元に戻すことができないため、最後に抑制することとされている。

・3日から休日で工場の稼働が少なく電力需要が少ない上、好天の予想で太陽光発電が伸びるとみられることによる。関西電力送配電は3日正午~午後4時、最大60万kWを他のエリアに送電した。太陽光と風力の関西の電力系統への接続済み設備量は、2023年4月末で718万kWになる。

・4日午前9時~午後1時30分に実施した出力制御は、太陽光(500kW以上)と風力の計42万~52万kW。再エネの出力制御は、関西で初めて。

・原発稼働は利益が大きい。その有無は電力会社の経営に直結する。関電の2023年3月期の実績によると、原発が1基動くことによる経常増益は大飯原発で月120億円、美浜原発と高浜原発で月85億円に上るという。

【付 関電の供給力能力は約3000万kW】
・原発…美浜3号、高浜3、4号、大飯3、4号の5基で、約500万KW稼働中。
 さらに高浜1、2号が稼働すれば、原発7基となり、650万kWになる。
・火力発電所…姫路1、2、赤穂、御坊、舞鶴、南港、堺港で約1300万KW(停止、点検中あり)
・他社融通電力…電源開発の橘湾火力140万、神鋼火力270KW、約410万kW(ロスがあり受電は多少減少する)
・再エネ発電…太陽光19万、風力6万、水力340.8万、バイオマス0.3万KWなど、約383万KW。今回の出力制御で、この関電の再エネ(太陽光、風力)25万kWについて出力制御が行われたかどうかは、不明。
・受け入れ自然エネ…400万KW
・関電の2023年のピーク時の需要は、2600万KWと推定されるが、供給能力は老朽原発再稼働が進めば、3000万kW以上となる。
・原発の割合が高まっていくので、今後、さらに再エネの出力制御の可能性がある。

┌─────────────
 出力制御とその課題
└─────────────

・出力制御は、大手電力の地域間送電網の整備など再エネを生かす対策が進んでいないことによる。

・また、出力制御をオンライン化することによって、制御量を減らすことができる。オンライン制御なら、使用量に応じたきめ細かい対応が可能となる。しかし、オフラインでは、前日に決まった制御量を、発電業者が当日に発電所に行って人力で対応する–大雑把(>_<)
大手電力のエリアごとのオンライン化は(2022年8月末現在、太陽光)、
・九州電力…8割を超える
・北海道電力…約7割
・中部電力…4割弱
・東京電力…システムを開発中。オンライン化率すら示せていない。
・関西電力…システムを開発中で、オンライン化率すら示せていない。オンライン制御は、10月から実施予定。関電の6/4の出力制御は、オフラインで実施。

実は、6/3にも、当日になって供給過多の可能性がでてきたが、オフライン体制であるため当日の出力制御はできず、電力広域的運営推進機関による指示を得て、午後0~4時に、最大60万kW分の電力を、北陸電力送配電と東京電力パワーグリッドの両エリアに送電し、関電エリアの需給バランスを保った(広域機関の指示による「下げ代不足融通」、国内初の要請)。

出力制御などの順番は、「優先給電ルール」として決まっていて、自然変動電源(太陽光、風力)の出力制御を行ってもなお供給過多になる場合に、その後に広域機関の指示が行われることになっているが、6/3は、オンライン化の遅れのために、本来の順序を飛ばしてしまった。再エネの拡大についていけていない関電!
(朝日新聞2023/5/10、電氣新聞2023/6/6)

┌─────────────
 九州電力の出力制御は
 2018年度から

└─────────────
・日本で最も再生可能エネルギーの普及が進む九州電力は2023年度、出力制御という形で、電力需要がない時間に作り過ぎて送電網で受け入れられない電力が最大で 7億4000万kWh に達する見込みを発表。仮に、これだけの電気を石油火力で発電すると、約200億円かかる。

・再生可能エネルギーの出力制御は、需要と供給のバランスを取りながら電力を供給することに貢献しているわけで、変動可能な電力供給として意義があり、電力網の安定化に寄与していると言える。しかし、太陽光など再生可能エネルギーが、出力変動が不可能な原発を補完する位置づけになっていて良いのか、という疑問が大きい。

・また、発電能力を一方的に制約するわけで、より経済性の高い電気(原発より安価な電気)を無駄にしていることになり、経済合理性を欠く。発電業者は、発電量が制約されることで収益が減少する可能性がある。

▼山崎久隆さん(たんぽぽ舎)の講演資料から

◆097◆←←関西電力 闇歴史→→◆099◆