◆原告第67準備書面
第2 地盤は堅硬ではないこと

原告第67準備書面
-被告関西電力関西電力準備書面(22)に対する反論等-

2019年11月22日

目次

第2 地盤は堅硬ではないこと

1 基本的な誤り
2 「軟質化し軟らかい」CM級が広く分布しており堅硬な岩盤が大きな高低差なくほぼ水平に広がっているとはいえないこと
3 RQDの値が低く「普通」水準にも遠く及ばないこと
4 最大コア長の平均値が小さく堅硬な岩盤とはいえないこと
5 P波速度が場所によって大きく異なっており堅硬でないことを示すこと
6 岩級区分・RQD・最大コア長・地震波伝播速度の各検討結果に整合性があること
7 平成28年2月の事業者ヒアリングにおける被告関西電力の説明
8 まとめ

 


第2 地盤は堅硬ではないこと


 1 基本的な誤り

  (1)被告関西電力の主張

被告関西電力は,大飯原発敷地の岩盤が堅硬であることの根拠として,まず,地質調査の結果RQDは高くないものの細粒石英閃緑岩及び輝緑岩そのものは堅硬で節理が密着していること(10頁以下),岩盤を構成する主要な岩石の種類が硬岩であること(13頁以下)を挙げている。

しかし,次のとおり,岩石が堅硬であることは岩盤が堅硬であることを意味しない。

  (2)岩石が堅硬であることは岩盤が堅硬であることを意味しないこと

「同一種類の硬岩の岩盤であっても,風化や変質を受け,あるいは亀裂,節理及び破砕帯等が存在する場合には,その堅硬度合いには若干の違いが生じ得る」(16頁)と自認せざるを得ないように,岩盤の強度は,不連続面[1]によって決まる。とりわけ硬岩の場合,軟岩に比べて不連続面の与える影響が大きい。

これらの点について,日本材料学会編「岩の力学」(甲506号証)は次のとおり述べる。

「岩盤は大小様々の不連続面(地質学的分離面)を含んだ複雑な構造体である。岩盤の力学挙動は,構成母岩材の材料特性と不連続面の配置状態およびそれら不連続面の力学特性が混ざり合って発揮された結果として具現し,岩石が示すそれとは本質的に異なる。」(445頁)

「鋼構造物のように工場で生産される均質な鋼製品を構造材料とするようなものについては,試験片から構造材料の特性を特定すれば構造物全体の力学挙動は精度よく予測・評価することができる。しかしながら,自然界で形成された岩盤についてはその内部における不連続面の位置,方向,大きさ,連結性,およびそれらの力学特性といったような,岩盤の構造を特徴づけている事柄は完全に特定することはできない。それがために,岩盤については鋼構造物に対するように,構成材料(岩石)の特性を知って目的とする構造物全体の力学挙動を予測するといった力学の図式は単純にあてはまらない。」(445頁)

「一般的に言えることは,軟岩においては,岩質と不連続面の力学的性質の差が少なく,岩質を中心とした評価が可能なのに対し,硬岩では岩質よりも不連続面の影響が大きいため,現地における不連続面の評価が重要となる。」(529頁)

このように,「岩盤の力学挙動は…岩石が示すそれとは本質的に異なる」「岩盤については…(岩石)の特性を知って目的とする構造物全体の力学挙動を予測するといった力学の図式は単純にあてはまらない」(445頁)のである。

[1] 節理,断層,破砕帯〔断層に沿って岩石が破壊された帯状の部分〕,シーム〔破砕帯に付随する岩盤の割れ目〕等

  (3)小括

よって,岩石の種類を根拠に岩盤が堅硬であると述べる被告関西電力の主張が誤りであることは明らかである。

被告関西電力は「ボーリングコア及び試掘坑内から採取した資料について,その他物理試験,超音波速度測定及び力学試験も実施して,岩盤が堅硬であることを確認している」と主張するが(18頁),それらの試験は採取した試料即ち岩石についてのものでしかなく,岩盤そのものの堅硬さを試すものではないから,やはり岩盤が堅硬であることの論拠とはなり得ない。

 2 「軟質化し軟らかい」CM級が広く分布しており堅硬な岩盤が大きな高低差なくほぼ水平に広がっているとはいえないこと

  (1)被告関西電力の主張する地質調査結果

被告関西電力は,大飯原発敷地の岩盤が堅硬であることの根拠として,次に,その岩盤は大部分が電研式岩盤分類におけるCH級であるかのように見せかけた上で(丙28・14頁同196・11頁),岩質が堅硬であること,そうした堅硬な岩盤が著しい高低差なくほぼ水平に広がっていること,を挙げる(16頁以下)。《図省略》

そこで,この点について述べる。

  (2)ボーリング柱状図(被告関西電力の主張する地質調査結果の原データ)

被告関西電力が大飯発電所建設前に実施したボーリングの柱状図が丙178・6-3-588頁以下に掲載されている。例としてNo.1157孔の柱状図の一部を次頁に引用する(同608頁)。《図省略》

  (3)実際にはCM級が約37%を占めていること

   ア No.1157孔
このうち「岩級区分」[2]を読み取り図化すると,例えば先に示した柱状図と同じNo.1157孔について以下のとおりとなる。《図省略》

オレンジ色で表されるCM級が深部まで分布しており,標高0m以深では厚さにして全体の27.9%がCM級となっている。また、断面図(前掲〔5頁〕。丙28・14頁同196・11頁)に記載されていない標高-200m以深では約-266~-282mに厚さ16mに及ぶCM級の層が存在している。

[2] 電研式岩盤分類について丙307・101頁。
CH級:造岩鉱物および粒子は石英を除けば風化作用を受けてはいるが岩質は比較的堅硬である。一般に褐鉄鉱などに汚染せられ,節理あるいは亀裂の間の粘着力はわずかに減少しており,ハンマーの強打によって割れ目に沿って岩塊が剥脱し,剥脱面には粘土質物質の薄層が残留することがある。ハンマーによって打診すれば少し濁った音を出す。
CM級:造岩鉱物および粒子は石英を除けば風化作用を受けて多少軟質化しており,岩質も多少軟らかくなっている。節理あるいは亀裂の間の粘着力は多少減少しておりハンマーの普通程度の打撃によって,割れ目に沿って岩塊が剥脱し,剥脱面には粘土質物質の層が残留することがある。ハンマーによって打診すれば多少濁った音を出す。

   イ 敷地全体
同様にすべてのボーリング柱状図について「岩級区分」を読み取り図化すると,次のとおりとなる。《図省略》

オレンジ色で表されるCM級が深部まで,かつ相当程度の割合で存在していることが見て取れる。

そこで各岩級の層の厚さが占める割合を算出すると,次頁の表のとおりとなる《表省略》。標高0~-150mの範囲では全体の約37%(累計約55m)がCM級以下の岩級となっており,堅硬さの劣るCM級以下の岩盤が全体の1/3以上を占めているのである。
さらに,ボーリング孔の位置による岩級分布の違いが顕著となっている。すなわち、まず3、4号炉の北西側に位置するNo.1153~1156孔4本を平均するとCM級以下が31.3%となり,次に炉心直下のNo.1157、1158孔を平均すると33.1%に増加し,さらに南東側のNo.1159~1162孔では47.7%とさらに増加しているのであり、北西側から南東側にCM級以下が増加し、岩盤が弱くなっていることが読み取れる。特に南端のNo.1159孔は半分以上の53%がCM級以下である。

この標高-150mまでの岩級分布による北西側から南東側への岩盤の劣化傾向は、後述のシームの分布密度やP波速度の場所による変化の傾向と一致しており,深部でも南東側で地震波速度が低下していることを示している。

  (4)まとめ

前述のとおり被告関西電力は,大飯原発敷地の岩盤の大部分はCH級であると見せかけるように下図を引用している(丙28・14頁同196・11頁)。《図省略》

しかし実際には全体の1/3以上が電研式岩盤分類において「多少軟質化しており,岩質も多少軟らかくなっている」(丙307・101頁)CM級であり,孔によっては半分以上を占めていることが明らかとなった。上図は事実に反する。そして上記のとおり,これは被告関西電力の作成したデータ(丙178・6-3-588頁以下)を分析した結果である。

よって,堅硬な岩盤が大きな高低差なくほぼ水平に広がっているとの被告関西電力の主張は事実に反している。被告関西電力が引用している上図も岩級を正確に表現したものではなく,恣意的に作成されたものである。

被告関西電力が原子力規制委員会に提示した岩級区分に関する情報が事実に反する以上,同委員会が被告関西電力の言い分を是認しているとしても(準備書面22・22頁),そのことが何らの意味を持たないことは明らかである。

 3 RQDの値が低く「普通」水準にも遠く及ばないこと

(1)岩盤の堅硬さについて定量的評価を可能とするRQDの値

1項で述べた通り,岩石の種類は岩盤が堅硬であることの論拠とならないのであるが,では,どのような指標により判断されるか。それがRQD[3]の値であり,これによって岩石の砕けやすさと岩盤の不連続面の頻度に関する情報を得ることができる(甲507)。CM級などの岩級は定性的な分類であるため試験者の技量・経験など主観による個人差が含まれる面も否定できないが,RQDによれば個人差を排し定量的評価が可能となり,岩盤の堅硬さを示す客観的指標となる。

この点,被告関西電力は「R.Q.D.は高くないが」(準備書面22・12頁)と,RQD(Rock Quality Designation)の値が低いことを自認しつつ,それを等閑視するが,岩盤の物性に関する定量的・客観的指標を無視するものであって不当である。

[3] Rock Quality Designation

  (2)RQDの意義

RQDは,準備書面22脚注9のとおり,ボ-リング1m区間毎の10cm以上のコア[4]長の総和を%で表す。式で表せば以下のとおり(甲507)。

RQD=Σ(10cm以上のコア長)%

これにより不連続面の多寡を定量的に客観的指標として表すことができるため,岩盤の質を主観を排して判定することができ,50%~70%が「普通」,75%以上が「良好」,90%以上が「非常に良好」とされる(★甲506・541頁)。

上記のとおり被告関西電力は「R.Q.D.は高くないが」(準備書面22・12頁)と述べながら,ではその高くないとするRQDの値がどの程度なのかを一切示していない。RQDの値が小さいということは岩盤に亀裂が多くそれだけ脆弱であるということであり,地震伝播速度も小さくなる[5]

そこで,被告関西電力が意図的に明らかにしないRQDの分布について検討する。

[4] 地盤の状況を調査するためのボーリング調査によって得られる円柱状の土壌や岩石片
[5] 被告関西電力も「RQDが小さい深度及び孔径が大きい深度,つまり割れ目が多く,地質的に脆弱な深度においてVpと密度の低下が確認された」と述べ,断層破砕帯が存在しRQDが小さい層が低速度層であることを認めている。

  (3)大飯原発敷地のRQDの値は「普通」の水準にも遥かに及ばないこと

   ア 大飯原発敷地のボーリング柱状図のRQD
以下は4号炉直下のNo.1157孔のRQD等の値である。《図省略》

RQDの大部分は「普通」にも充たない50%以下であり,岩盤が脆弱であることが示される。

特にCM級の層のRQDは小さくなっており,両者の相関性は高い。

   イ ボーリング柱状図のRQDの深度毎の比較
提示されている10本すべてのボーリング柱状図のRQDは次図のとおりである。《図省略》

これを元に標高0m以下の層のRQDの平均値をまとめると次頁の表のとおりとなる。《表省略》

すべてのRQDの平均値は(28.7±25.1)%であり,全体としてみても不連続面の多い「普通」以下の岩盤ということになる。

また,RQDは深さ方向に数~数十mの幅で増減しており,かつボーリング孔の位置によってRQDの小さい層の深さが異なっている。これは、断層破砕帯がシームを伴って高角度で沈み込み、それぞれのボーリング孔とは異なる深さで斜交していることを反映したものと考えられる。

さらに,炉心の北西側(孔番No.1153~1156)、炉心位置(孔番No.1157~1158)、南東側(孔番No.1159~1162)の平均値(標高0~-150m)を見ると,RQDの平均値は、北西側の33.6%から、炉心直下の27.8%、南東側の22.6%へと系統的に著しく減少している。これは、北西側から南東側へ岩盤の不連続性が増していること、すなわち亀裂の頻度が増していることを表している。

  (4)RQDから示されるP波速度の場所による変化

上記のとおり,RQDの値が小さいということは不連続面が多いということであり,それだけ地震波速度が遅くなるということである。

次頁の図は,3,4号炉建屋を含む240m×130mの直下における,各ボーリング孔の深さ25mごとの平均値を内挿して得たコンター図である《図省略》。RQDの彩色表示のスケールは同じで、RQD大(速度大に相当)が緑、黄から赤にかけてRQD小(速度小に相当)となる。また、ボーリング孔の位置が茶色の点で示されている。

ボーリングが10地点でしか行われていないものの,それぞれの図の上部(北西側)でRQDが大きく=速度が大きく,下部(南東側)で小さい=速度が小さいという傾向は、概ね共通する。

 4 最大コア長の平均値が小さく堅硬な岩盤とはいえないこと

次に最大コア長[6]の分布について検討する。

最大コア長もRQDなどと同じくボーリングコア観察において検討される要素の一つであり,コアの形状(長さ)のイメージは次図のとおりである《図省略》。

各ボーリング孔における最大コア長の平均値は次頁の表のとおりである《表省略》。

標高0~-150m区間ではボーリング孔によって最大コア長の平均値が12.5~18.8cmに分布しており、全体の平均値は16.0cmである。最大コア長の平均値がこれであるから,採取されるコアはさらに短く,平均コア長はより短い。

電研式岩盤分類によれば,CM級の岩盤の「コアは10cm前後」とされており(次頁の表《表省略》),上記のとおり,被告関西電力が示している図(丙28・14頁同196・11頁)とは異なって大飯原発敷地にCM級が広く分布しているとの分析結果と整合している。

さらに,炉心の北西側(孔番No.1153~1156)、炉心位置(孔番No.1157~1158)、南東側(孔番No.1159~1162)の平均値(標高0~-150m)を見ると,最大コア長は、北西側の18.0cmから、炉心直下の16.2cm、南東側の13.9cmへと系統的に大きく減少している。これは、北西側から南東側へ岩盤の不均質性が増していること、すなわち亀裂の頻度が増していることを表している。

岩級区分分布やRQDの値などと同じく、最大コア長の分布という観点から検討しても、深部まで南東側で岩盤が劣化して地震波速度が低下していることが示されている。

[6] 1m区間ごとに採取されたコアの最大の長さをセンチメートル単位で記したもの

 5 P波速度が場所によって大きく異なっており堅硬でないことを示すこと

  (1)地盤の堅硬さと地震波伝播速度との関係

地盤が堅固であれば地震波伝播速度は大きく,堅固でなければ同速度は小さい。

そうすると,被告関西電力の主張するように堅硬な岩盤が著しい高低差なくほぼ水平に広がっているのであれば,大飯原発の敷地において,地震波の伝播速度にほとんど違いは生じないはずである。

  (2)東に向かうほどP波速度が低下していること

しかし現実には,P波速度は西(図の左上)から東に顕著に低下しており,4号炉の炉心下では4.3~4.5km/sであるが,3号炉の炉心下では3.8~4.0km/sと,大きな違いがある(原告第56準備書面5頁,12~13頁,甲422・付図42の下の図)《図省略》。この結果は,岩盤が均質ではないこと,特に3号炉炉心下の岩盤が相当堅硬でないことを示してもいる。

3号炉・4号炉地下の破砕帯及びシームの分布図は,前頁の上の図(甲422・付図42の上の図)のとおりである《図省略》。

  (3)P波速度からも岩盤が堅硬でないことが明らかであること

両図を合わせ見れば,西方向から東方向へのP波速度の低下と破砕帯及びシームの分布との関係性は明らかであり,特に東側において破砕帯等が多く存在し堅硬な岩盤でないことを示している。

被告関西電力も「試掘坑内の平均速度法による弾性波試験結果は,第3.5.114図に示すようにP波速度は3.0km/s~5.2km/sで平均値4.3km/s,変動係数7.0%である」(丙178・添付書類六 地盤構造に関する図面,6-3-128頁)とP波速度に大きなバラツキがあることを認めており,このことは,岩盤が均質でないことを裏付けているといえる。

 6 岩級区分・RQD・最大コア長・地震波伝播速度の各検討結果に整合性があること

上記の各検討結果のいずれも,大飯原発敷地の北西側から南東側にかけて岩盤の脆弱化(亀裂の増加)・地震波速度の低下があることを示しており,整合的である。

 7 平成28年2月の事業者ヒアリングにおける被告関西電力の説明

上記のとおり被告関西電力は,平成28年2月の事業者ヒアリングでは「試掘坑内の平均速度法による弾性波試験結果は、第5.110図に示すようにP波速度は3.0km/s~5.2km/sで平均値4.3km/s、変動係数7.0%である」(丙178・添付書類六 地盤構造に関する図面,6-3-128頁)と説明していた。

然るに,①まずP波速度に3.0km/s~5.2km/sと倍近い開きがあるのにこれを無視し,②次に「平均値4.3km/s」と説明しているにもかかわらず基準地震動評価用の地盤モデルでは何の留保もなく表層のP波速度を4.6km/sとしている。岩盤が堅硬であるほどP波速度は大きくなるのであるから,被告関西電力は,自身の説明を超えて地盤がより堅硬であると根拠なく修正しているのである。

 8 まとめ

大飯原発敷地の岩盤が堅硬であるとの被告関西電力主張の論拠は,上記のとおり,地質調査の結果判明した岩石が堅硬であること(10頁以下),岩盤を構成する主要な岩石の種類が硬岩であること(13頁以下),CM級以上の岩盤が大きな高低差なくほぼ水平に広がっていること(16頁以下)の3点である。

しかし,前二者の「岩石」が堅硬であることは「岩盤」が堅硬であることの論拠となり得ないことから,実質的には後者のみが論拠ということになる。然るに,その点について被告関西電力が行ったボーリングコア等の原データを分析すれば,CM級以上の岩盤が大きな高低差なくほぼ水平に広がっているという事実は認められない。それどころか「普通」にも遥かに及ばない脆弱とすらいえる岩盤であることは明らかである。

よって,大飯原発敷地の岩盤が堅硬であるとの被告関西電力の主張は論拠がなく,失当である。