◆関西電力 闇歴史◆063◆

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◆黒部川の出し平[だしだいら]ダムと宇奈月ダムの連携排砂で
 富山湾にヨコエビが異常繁殖、漁業に被害か(2002年提訴)
 関電は、補償金は出しても因果関係は認めず
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 黒部川には、現在、5つの発電機能を有する利水ダム(黒部川本川に黒部ダム、仙人谷[せんにんだに]ダム、小屋平[こやだいら]ダム、出し平[だしだいら]ダムの4ダム、黒薙[くろなぎ]川支流に北又[きたまた]ダム)と1つの洪水調節機能を有する多目的ダム(宇奈月[うなづき]ダム)が整備されている。(黒部ダムには黒部川第四発電所があるので、黒四ダムともいう)

 黒部川は全国でも有数の流出土砂の多い河川であることから、これらダム群の最下流部に位置する関西電力の出し平ダム、国土交通省の宇奈月ダムでは、ダムに堆積する土砂を下流に排出できるよう、それぞれに排砂設備が設けられている。

 国と関西電力は、ダムの寿命を延ばすため、より自然に近い排砂の方法を模索するとして、前例のない排砂という実験を繰り返している。排砂は梅雨時期などの大雨に合わせて、毎年繰り返される。この仕組みのダムがあるのは、全国でも黒部川だけ。流される土砂は1回平均40万立方メートル。10トントラックで6万3千台分にも及ぶ土砂は、潮の流れで富山湾入善[にゅうぜん]沖へと流されていく。

 しかし、その排砂によって、富山湾では何が起こっているか。

【参考】石川県能登地方で謎の地殻変動による群発地震が続き、2024年元日にはM7.6の巨大地震(2024年能登半島地震)が起こった。これらの地震の原因として、専門家は、地下から上昇してきた水が地殻を膨張させた可能性を指摘している。地下でいったい何が起こっているのか。京大と金沢大のGPS観測では、地殻変動が始まって以降、震源周辺の地下10~15キロの地殻が膨らんでいることが分かっている。その水の供給源の一つとして、本来流れるべき地下水の排出口が大量の土砂で塞がれたことを指摘する意見もある。眼に見えない地下水の出口を塞げば、その水圧で地盤は浮き上がるというわけだ。黒部川の上流にあるダムにたまった土砂を排出する排砂が、地下水の出口を塞いだのではないか、と主張している。
(FB「Takashi Marui」さん → こちらより)

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◆黒部川ダム排砂問題
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第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
不可解な事実 ~黒部川ダム排砂問題~
(制作:富山テレビ
こちら

◆なぜ網にかかる魚が骨と皮に…? 黒部川ダム排砂問題の不可解な事実
富山テレビ(2022年4月10日)が伝える。多くの写真を掲載しているので、必見。
#1→こちら
#2→こちら

 以下、その中から、引用してまとめる。

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◆漁 民
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 2000年代後半、黒部川河口海域の漁師たちは網にかかったヒラメ、カレイなどの魚が骨と皮だけになる被害を受け、危機感を深めた。“海の掃除屋”と呼ばれる「ヨコエビ」の異常繁殖による被害ではないか。ヨコエビという小さな(体長1センチ足らず)甲殻類が異常に増えたことで、刺し網漁の獲物であるヒラメ、カレイなどが食い荒らされると主張。それを見たダイバーは「魚の表面に全部虫がついている感じ。こんなにたくさんは見たことがない」と、海の中で目にした光景の異様さを口にした。

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◆関西電力
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 排砂は、1991年12月に初めて非公開で行われ、1994年に本格実施。当時、ダムの宿命的な問題、排砂を解消する画期的な方法として注目を集めた。想定では流れ出るのは砂だけのはずだったが、土砂に混じった有機物が変質していて、ダム完成から6年でヘドロに変わった。関西電力北陸支社の当時の支社長は「みなさんのご理解が得られることが前提にならなければならない。すべてそういう形で進めていく必要がある」と述べていた。

 排砂のルールを公表すると同時に、関西電力は漁業団体に対して補償金を支払った。富山県漁業協同組合連合会に対して、初回排砂分として8億円、5回終了時に解決金の意味合いで約30億円、加えて毎年7000万円を支払う約束を交わした。県漁連がこれまでに受け取った補償金は約50億円(当時)。黒部川内水面漁業協同組合に対しても、アユやイワナなどの放流魚の補償として約4億円の補償金が支払われた。

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◆裁 判
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 漁民らは不漁の原因は、出し平ダムの排砂と主張したが、関西電力は一切取り合わなかった。2002年12月、現場の漁師とわかめ組合は、富山地裁に裁判を起こした。「今の状態では、富山湾が危ない。危機感と関電に対して怒り心頭に達した」と提訴会見で語った。6年に及ぶ審理の末、地裁は排砂の影響で生育が鈍ったわかめにヨコエビが付いたと排砂との因果関係を一部認めた。しかし、ヒラメなどの漁獲量に対する影響は認めなかった。

 2011年4月、名古屋高裁で行われた控訴審で、漁師と関西電力の当事者間に和解が成立して裁判は終局した。2017年には黒部川ダム排砂評価委員会が「16年間の連携排砂により、排砂に関する一定の手法が確立されてきたと考えられる」として、現在運用している最新の手法やこれまでの検討の経緯、技術の蓄積を「黒部川 出し平ダム 宇奈月ダム 連携排砂のガイドライン(案)」として取りまとめた。
こちら

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◆評価委員会
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 国と関西電力は排砂の影響について、判断のすべてを第三者機関である「黒部川ダム排砂評価委員会」にゆだねている。委員は河川工学や海底地質学、生物学など11人の有識者が参加したが、報告はヨコエビなどの海底生物に主だった特徴は見られないというものだった。

 ダムの土砂を毎年大量に流すことが海洋に及ぼす影響について、評価委員会のメンバーは口を閉ざす。テレビでは、その中で一人の学者がインタビューに応じているが、内容のあることは言っていない。

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