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◆大飯原発再稼働を許すな!

【2017年2月24日,京都キンカンで配付。】

22日、規制委が新規制基準適合の「審査書案」を了承

再稼働ありきの出来レース・国民だましの審査

・原子力規制委員会(規制委)は、2月22日の定例会合で、関西電大飯原発3,4号機が新規制基準を満たしているとする「審査書案]を了承した。事実上の再稼働検査合格である。これで、規制委は、関電が審査を申請した全ての原発を合格としたことになる。なお、大飯原発3,4号機の再稼働審査は大幅に遅れた。その理由の一つは、老朽原発高浜1、2号機、美浜3号機の審査を優先させたためである。老朽原発は、運転開始から40年になる前に規制委の正式認可を受けなければならないので、規制委は、老朽原発審査を優先したのである。この一事からも、どんな手段を用いても申請された全原発の再稼働を進めようとする規制委の姿勢が見て取れる。

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大飯原発3,4号機の「審査書案」の概要

基準値振動は最大加速度856ガル
耐震重要施設付近の断層は将来活動する可能性はない
重要施設がある敷地の高さは9.7 m で津波は流入しない
炉心損傷防止対策や格納容器破損防止対策として複数のケースを審査した結果、関電の対策は何れも有効と判断
水素爆発による原子炉建屋の破損を防ぐため水素排出設備を整備
敷地外への放射性物質の拡散を抑えるため、放水銃などを設置
緊急時対策所を中央制御室とは離れた別の建屋に設置
航空機衝突テロなどに備え、休日にも発電所内に対応要員を確保
3、4号機は新規制基準に適合
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大飯原発3,4号機の「審査書案」の問題点

「基準値振動を最大加速度856ガル」としているが、地震学者(元日本地震学会会長、元地震予知連絡会会長、前原子力規制委員長代理)の島崎邦彦氏は「基準地震動が過小評価されている可能性がある」という。島崎氏によれば、再計算した推定では、「不確かさ」も加味(かみ)すれば1500ガル超になり、福島事故後の安全評価(ストレステスト)で「炉心冷却が出来なくなる下限値」として関電が示した1260ガルをも大きく上回る。(なお、基準地震動のようなあいまいさを含む数値を、856ガルなど、3桁の精度で議論することも、科学的でない。)

「耐震重要施設付近の断層は将来活動する可能性はない」としているが、大地震が発生する時期や規模を予知することの困難さは、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本・大分大震災が教えている。若狭にも、分かっているものだけでも多数の断層があり、これらの断層が動いて大地震が発生する可能性もあるが、過去の大地震の多くが、深層にあって「未知の断層」と呼ばれる断層に起因している。大地震は、何時、何処で起こるか分からない。それでも、電力会社や規制委は地震の可能性や大きさを過小評価して、原発運転を強行しようとしている。本来、地震の多発する国に原発があってはならない。

「重要施設がある敷地の高さは9.7 m で津波は流入しない」としているが、地震の規模の予測が困難であるように、津波の大きさを簡単に想定できないことも、東日本大震災が教えている。若狭でも、1586年に発生した天正地震で、「町全体が山と思われるほどの大きな津波に覆(おお)われ、家屋も男女もさらってしまい、塩水で覆われた土地以外には何も残らず、全員が海中で溺れた」とする記録があり、海岸から500 m の水田で津波跡を発見したという報告もある。

「炉心損傷防止対策や格納容器破損防止対策として複数のケースを審査した結果、関電の対策は何れも有効と判断、

「水素爆発による原子炉建屋の破損を防ぐため水素排出設備を整備」、

「敷地外への放射性物質の拡散を抑えるため、放水銃などを設置」としているが、福島事故で、どのように、どの規模の水素発生したかも確証されていない段階で、水素除去対策ができる筈がない(触媒で水素を除去するなどは机上の空論である)。また、空中に放出された放射性物質は、放水銃で撃ち落とし、海に流れでた放射性物質は、これを吸着する蚊帳のようなシルトフェンスで食い止めるとしてるが、このような子供だましの仕掛けで、放射性物質の拡散が防げるのなら、福島の汚染を今すぐくい止めてほしい。

「緊急時対策所を中央制御室とは離れた別の建屋に設置」としているが、本来、免震重要棟の建設が望まれ、当初はその建設を予定していたが、免震重要棟は止めて、免震性が小さく、経費のかからない耐震構造のものとしている。

「航空機衝突テロなどに備え、休日にも発電所内に対応要員を確保」としているが、航空機衝突テロを軍備も持たない対応要員で防げる筈がない。

この他、以下のような重要な問題もある。

①地震、津波、火山噴火、テロによる重大事故は想定しても、人為ミスや施設老朽化に起因する重大事故についても触れていない。なお、チェルノブイリ事故、スリーマイル島事故など、ほとんどの原発事故は、自然災害ではなく、人災や老朽化に起因する不具合によって発生している。

②重大事故時の住民避難の問題には全く触れていない。

・なお、福島原発事故では事故炉から30~50 km の距離にある飯舘村も全村避難を強いられた。また、約 200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が飛来した。このことは、若狭の原発で重大事故が起こった場合、原発のある若狭だけでなく、約150万人が暮らす滋賀県や約250万人が暮らす京都府の全域が永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示している。琵琶湖が汚染されれば、関西 1,450 万人の飲料水がなくなる。重大事故時の避難の困難さだけでなく、一旦避難したら、帰ることが出来ない故郷ができることは、福島やチュエルノブイリが教える所である。数百万人の原発被害難民が生まれる。避難者の自殺が事故後4年経った1昨年より急増している現実も直視しなければならない。

関電は、大飯原発3,4号機のプルサーマル化も企(たくら)んでいる

・昨年2月、関電の八木社長(当時)は、MOX燃料使用のプルサーマル発電に関して、具体的な計画は未定であるが、「大飯原発も」と強調している。一方、規制委は、「厳しい新規制基準の下ではMOX燃料かどうかは議論にはならない」としている。しかし、プルサーマル炉は、ウラン燃料炉に比べて格段に危険である(詳細は別途述べる)。とくに、既存原発のプルサーマル化は、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉でプルトニウムを燃すので、技術的な課題が多い。

再稼働反対の民意を踏み躙(にじ)る規制委

・規制委は、原発の「審査書」の案や正式決定を発表するたびに、「あくまでも新規制基準に適合か否かを判断しただけで、安全性を保証したわけでもなく、再稼働を許可したものでもない」と述べている。しかし、この新規制基準適合判断が、原発の安全性と大きく関わり、実質的に、国による再稼働許可となることは明らかである。本来、国の機関は、国民の民意を実行し、国民の安全と安心に奉仕すべきものであって、私企業や財界の経済的利益への貢献が任務ではない。

・今、国民の大多数が原発再稼働に反対していて、脱原発。反原発が民意である。例えば、一昨年、伊方町で行われた住民アンケートでは、原発再稼働反対が53%で賛成の約2倍であった。昨年の鹿児島県、新潟県の知事選では、脱原発を掲げる候補が圧勝した。昨年末には、高浜原発の「地元中の地元」音海地区の自治会が、老朽原発運転反対を決議した。今月の朝日新聞の世論調査でも、原発再稼働反対が57%で賛成のほぼ2倍であった。また、周知のように、この民意の後押しの中で、大津地裁は、昨年3月、高浜原発の運転を差し止めたのだと考えられる。なお、国際的にも、ドイツ、イタリアに続いて、リトアニアが脱原発に向かい、昨年11月にはベトナムが原発建設計画を白紙撤回し、今年1月には台湾が脱原発法を成立させた。米国でさえ、原発の発電コストの高さが際立つようになったため、原発からの撤退が相次いでいる。

・規制委は、このような民意や国際的潮流に逆らって、原発再稼働に加担しようとしている。許してはならない。

「新規制基準」および適合性審査は、安心、安全を保証するものではない

・規制委は、これまでに5原発10基を、安全とは縁遠い「新規制基準」で審査し適合とした。また、今回、大飯原発3,4号機の審査書案を出した。

・審査では、福島原発事故の原因調査も進んでいないにもかかわらず、福島事故に学んだと偽り、原発やその周辺の簡単な改善は要求しても、電力会社に大きな負担となる変更は要求していない。したがって、原発の危険性は取り除かれていない。そのことは、次のように、再稼働を行った全ての電力会社が再稼働の前後に重大事故に繋がりかねない深刻なトラブルを起こしたこと(トラブル率100%)からも明らかである。すなわち、1昨年8月に再稼働した川内原発1号機は、再稼働10日後に早速、復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機は、再稼働準備中の昨年2月20日,1次冷却系脱塩塔周辺で水漏れを起こし、2月29日には、発電機と送電設備を接続した途端に警報が吹鳴し、原子炉が緊急停止し、伊方原発3号機は、再稼働準備中の7月17日、1次冷却水系ポンプで水漏れを起こした。

・電力会社にとって、原発再稼働は命運をかけた作業であったはずである。それにも拘らず、一度ならず四度も起こったトラブルは、原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉などが進んでいることを示すとともに、傲慢で、安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた九電、関電、四電が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証している。

規制委審査は科学とは縁遠く無責任;国民を愚弄(ぐろう)する規制委審査

・規制委の田中俊一委員長は、1昨年11月の定例会合後の会見で「福島のような事故を二度と繰り返さないために新規制基準を作り、原発の適合性を厳密に見てきた」と、さも住民の安全を考えて審査したかのような発言をしながら、再稼働については「地元がどう判断するか規制委が関知することではない、地元の安心と審査は別の問題」と責任回避している。また、老朽高浜原発1,2号機の再稼働審査にあたっては、「あくまで科学的に安全上問題ないかを判断するのが我々の使命だ」と述べる一方「お金さえかければ、技術的な点は克服できる」と、未解明課題が山積する現代科学技術の水準を理解できず、人間としての謙虚さに欠け、思い上がった発言をしている。全てのことが「お金で解決できる」のなら、福島事故からの復興をいち早く成し遂(と)げて頂きたい。

・ここで、科学とは、実際に起こった事実を冷静に受け入れ、丁寧に調査し、検証・考察して、その上に多くの議論を重ねて、結論を導くものである。ところが、規制委の審査はこの過程を無視しており、したがって、科学とは縁遠いものである原発に関して、実際に起こった最も重大な事実は福島原発事故である。福島事故に関して、事故炉内部の詳細は今でも分からず、事故の原因究明が終わったとするには程遠い状態にある。「科学」を標榜するのなら、福島事故の原因を徹底的に解明して、その結果を参照して、原発の安全性を議論・考察するのが当然であり、大津地裁での運転差止め仮処分決定でもそのことを指摘しているが、規制委はこの指摘を無視している。

・上記のように、「原子力ムラ」の一員と言っても過言でない規制委は、福島事故を招いたことを反省するどころか、国民を愚弄し、何が何でも原発再稼働に突っ走ろうという態度を露骨(ろこつ)にしている。その規制委の委員長が、今回の大飯原発審査では、地震学者・前規制委員長代理の島崎邦彦氏による「基準地震動が過小評価されている可能性がある」という警告を「根拠がない」と一蹴(いっしゅう)している。規制委に、真理探究を旨(むね)とする研究者の姿勢は全くない。

・なお、川内原発、高浜原発、伊方原発の再稼働に関して、再稼働した全ての原発でトラブルが起こった事実は、再稼働にお墨付きを与えた新規制基準が極めていい加減な基準であり、規制委の審査が無責任極まりないことを物語っている。

再稼働すれば、行き場のない使用済み核燃料が蓄積:貯蔵プールは満杯に近い

・原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成する。したがって、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなる。そのため、使用済み核燃料がたまる。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや青森県六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっている。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。

・福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンであるが、その7割近くが3,550トンの使用済み燃料で埋まっている。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなる。なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかである。

・一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されているが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もない。

・数万年を超える長期の保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければならない。

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原発全廃の大きなうねりを!

◆次の原発重大事故は、明日にも起こりかねません。重大事故が起こる前に、原発を全廃しましょう! 使用済み核燃料や放射性廃棄物の安全保管の在り方を早急に検討しましょう!

◆原発全廃こそが「原子力防災」です。不可能な避難の計画に費やす時間と経費を原発のない社会創りに使いましょう!

◆今、大阪高裁で、高浜原発再稼働差止め仮処分決定(大津地裁)抗告審の決定が出されようとしています。本来、司法は社会通念=民意を反映しなければならない所です。あらゆる知恵を絞った行動によって、司法に脱原発、反原発の民意を示しましょう!

◆民意を踏み躙る関電を徹底糾弾しましょう!

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若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆2/13 第14回口頭弁論の報告

京都地裁 大飯原発差止訴訟 第14回 口頭弁論は
2/13(月)14:00より開催されました。
以下,その報告です。

(1) 開廷前のデモ…いつも通り,市民に脱原発裁判を訴えるためのデモ。12:15スタート。前回よりも多い58人。ごく少し時雨れがありましたが,この季節としては恵まれました。賑やかなデモができました。
アピールとコール→こちら

(2) 傍聴席…88席の傍聴席に対して,120人ほどの希望があり,抽選になりました。関電社員と思われる人もいました。

(3) 法廷での内容

・原告の陳述は,福島県から避難してきている宇野朗子さん。→こちら
・証拠説明書,書証 →こちら
・原告側の第29準備書面 →こちら。再生可能エネルギーの可能性と原発の不経済性…第1 自然再生可能エネルギー利用で脱原発は可能であり、危険な原発は子孫に残すべきでない。第2 原子力発電のコスト・非経済性について。第3 原子力発電の不経済性が産業の健全な発展すら阻害すること。第4 傍観者ではなくプレーヤーとして。
・原告側の第30準備書面 →こちら。木津川市避難計画の問題点について
・原告側の第31準備書面 →こちら。被告関電の地震・津波の想定の問題点(概論)

(4) 報告集会

・弁護士会館地下ホール満席。「模擬法廷を充実させて欲しい」などの意見,質問が出て,応答が行われました。
・カンパ…多額。ありがとうございましたm(_ _)m
・竹本団長の本『日本の原発と地震・津波・火山』,7冊頒布。
・ 缶バッジやクリアファイルのご協力…感謝。

(5) 第五次追加提訴

・184名の原告が加わり,原告総数は,3270名になりました。
・引き続き,2017年中をめどに,第六次原告募集を行っています。
・提訴以来の原告の増加→こちら。

(6) 次回,大飯原発差止訴訟,第15回口頭弁論の予定。

★5/9(火)★…14:00~,京都地裁101号法廷。
傍聴席抽選のリストバンド配付は,13:20~13:35。
模擬法廷,報告集会は弁護士会館。

◆柏崎刈羽原発免震重要棟の耐震性不足

【2017年2月17日,京都キンカンで配付。】

原発、またも杜撰(ずさん)、虚偽(きょぎ)
東電、柏崎刈羽原発免震重要棟の耐震性不足を 3年以上隠蔽(いんぺい)のまま規制委審査
震度7で免震重要棟が崩壊する危険性

◆東京電力(東電)柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)は、2013年9月に新規制基準への適合性を申請し、原子力規制委員会(規制委)での審査が進められている原発である。

◆この規制委審査は終盤に入っていて、2月14日は、焦点として残っている緊急時の対応拠点の議論が行われた。審査申請から3年間以上も経過したこの日の会合で、東電は初めて、原発事故の対応拠点である免震重要棟が新規制基準で求められる性能を大幅に欠くことを明らかにした。東電は、3年前に、免震構造の建物の耐震性について、強さや周期が異なる7パターンの地震の揺れを仮定して試算し、2つの免震重要棟は、7パターン全ての揺れに耐えられず、想定される地震の揺れ(基準地震動)の半分の揺れでも、横揺れが許容限度を超え、建屋が隣の壁にぶつかる可能性があるという結果を得ていた。しかし、東電はこのことを公表せず、規制委には「震度7に耐えられる」などと説明してきた。3年前に、このように重要な試算結果が得られていたのに、これまで、このことを隠蔽していたのである。東電は、土木部門が行った試算が、設備の設計を担当する部門に伝わっていなかったためとしているが、最重要課題である免震重要棟の耐震性を軽んじる姿勢は、都合の悪いことは隠しても再稼働を進めようとする原子力ムラの体質であり、許されない。なお、柏崎刈羽原発は2007年の中越沖地震で大きな被害を受けたため、東電は2009年に免震重要棟を設置した。この免震重要棟では、建物の下に設置した免震装置で地震による揺れを吸収して、震度7級の揺れを1/3~1/4に低減し、建物の損傷を防ぎ、原発事故時の対応拠点とすることを想定していた。また、この建物は、建築基準法の1.5倍の地震動にも耐えられるとしていた。2013年に新規制基準が導入されて地震の想定が厳しくなっても、「長周期の一部の揺れを除き、震度7でも耐えられる」と説明してきた。また、免震重要棟は、7パターン中5パターンの揺れには耐えられないとしたうえで、こうした地震の際はこの建物を使用しないという対応策を示していた。

◆今回の東電の説明を受けて、原発推進の原子力規制庁でさえ、柏崎刈羽原発では地震にともなう液状化による防潮堤への影響をめぐっても、連携がとれていなかったと指摘して「今日のようなことが起きているのをそのまま見過ごすわけにはいかない」と述べ、東京電力に、今後の審査会合で詳しい経緯と対応方針を説明するよう求めた。また、再稼働推進の中心人物・田中規制委員長までもが、新審査基準の欺瞞性、自らの審査のいい加減さを棚上げにして、「社内的な情報連絡が大事なところで抜けているのは、かなりの重症だ」と不快感を示した。

◆一方、新潟県の米山隆一知事は、「東電の説明が疑わしくなり、対話しようという話が根底から覆ってしまう。反省してきちんと説明してほしい」と述べ、原因や対策に関する説明を求めるとした。また、再稼働の「条件付き容認」を掲げて昨年11月に初当選した柏崎市の桜井雅浩市長も、「非常に遺憾だ。東電の体質はいまだ改善途上だと見せつけられた。再稼働を認める条件を厳しいものにせざるを得ない」と強調した。東電が目指す同原発6、7号機の再稼働に向けた地元同意に影響することは必至である。

◆柏崎刈羽6、7号機は福島第1と同じ型式の「沸騰水型」であり、「沸騰水型」の再稼働審査の先頭を走り、昨年夏にも安全審査に合格する見通しだったが、防潮堤の地盤が地震で液状化する懸念が出るなどして遅れている。立地する新潟県の米山隆一知事はかねて「福島事故などの徹底的な検証がされない限り、再稼働の議論はできない」と表明している。

柏崎刈羽原発は、中越沖を震源とする地震で、
火災を起こすなど、重大事態に直面した

◆2007年7月16日の10時13分、新潟県中越沖を震源とするマグニチュード6.8(震度6)の地震が発生した。震源近くの原子力発電所の施設に火災の発生などの甚大な被害をもたらし、原発の地震に対する安全性への問題提起となった。参考までに、以下にこの火災事故の経過と原因の概要を示す。

◆経過

◆震源地から約16 kmの柏崎刈羽原子力発電所で稼働していた同発電所の発電機のうち、2号機、3号機、4号機および7号機は、地震により自動停止した(1号機、5号機および6号機は定期検査のため停止中)。10時15分、パトロール中の2号機補機捜査員が、3号機タービン建屋外部の変圧器からの発煙を発見し、3号機当直長に連絡、当直長の指示により、社員2名と現場作業員2名で初期消火活動を開始した。10時15分頃、3号当直長が119番通報を開始するがなかなか繋がらず、発電所緊急対策室のホットライン(消防署への通報・緊急連絡線)は、地震により対策室入口扉が開かず、活用できなかった。10時27分、ようやく消防署に繋がった時「地震による出動要請が多く、到着が遅れるので、消防隊到着まで自衛消防隊で対応して欲しい。」との回答があった。防火衣も着用せずに消火に当たった4名は、水による冷却の目的で消火栓から放水したが、屋外に敷設されている用水から消火設備の間の配管破断により放水量が少なく、消火が思うように進まなかった。10時30分頃、火災を起こした変圧器の油が燃え始めたため、危険を感じた4名は安全な場所に退避し、消防署の到着を待った。11時32分、消防署による放水が始まり12時10分頃に鎮火した。

◆この地震により、6号機で、微量の放射能を含んだ水が外部に漏えいした(1年間に自然界から受2月ける放射線量2.4ミリシーベルトの1億分の1程度)(新潟県調査では人工放射性物質は、周辺においては検出せず:7月18日、新潟県発表)。7号機においても主排気筒より放射性物質を検出(1年間に自然界から受ける放射線量2.4ミリシーベルトの1千万分の1程度)(7月20日以降、検出なし)。

◆原因

1.設計時の想定加速度を超える地震動
マグニチュード6.8の地震の震源地に近かったため、想定加速度(設計加速度)を超えた地震動であった。3号機タービン近くの建屋上部での観測値は、東西方向2,058ガルで設計値834ガルを大きく超えていた。そのため、3号機の変圧器付近の不等沈下によって、火災が発生した。
2.火災の消火に時間を要した原因
・消火用の配管が、地盤の不等沈下で破断し消火作業ができず、必要なときに機能しなかった。
・自衛消防隊に化学消防車が配備されていなかった。
・原発と消防機関を繋ぐ発電所緊急対策室のホットラインが機能しなかった。
・地震と火災への対応は別々のマニュアルとなっており、大規模地震による火災発生を想定した対応策(マニュアルや訓練など)が不十分であった。

原発は、現代科学技術で制御できない
高放射線下での作業の困難さ、機器の放射線損傷

◆東電や政府が、メルトダウンした原子炉の内部調査の本命としていたサソリ型の自走式ロボットは、格納容器内の既存レール(7.2 m)を2 m進んだところで走行用ベルトが動かなくなり、力尽きた。レールを走行して、圧力容器直下まで達して、溶け落ちた燃料(デブリ)の撮影を目指していた。

◆この作業は、当初から想定外の難題に直面し、作業実施は1年半も遅れていた。先ず、ロボットの投入口となる貫通部手前のコンクリートブロックが、事故時の高温蒸気などの影響で、床にくっ付いていたため、その撤去が難航した。これを撤去したところ、貫通部の放射線量が予想外に高いことが判明した(1~2時間で死に至るレベル)。

◆ロボット投入時には人が近寄らなければならないため、遠隔操作での除染を試みたが、これに手間取った。

◆やっと鉄と鉛の遮蔽体を据え付けて、毎時6ミリシーベルトまで漕ぎ着けて、ロボット作業を行った。(なお、相当量の被曝をしながらの作業であると推則される。)

◆上記のような作業は、放射線が無ければ、簡単なものであり、高放射線下作業の困難さを示す。

◆高放射線下では、装置やその材料の放射線による損傷も深刻である。例えば、ゴムやプラスチックでできた材料は、放射線で分解される。半導体は損傷して機能しなくなる。ガラスは、放射線を受けて着色したり、ひび割れする。

◆このような高放射線下の作業を、簡単に行えるほど現代科学技術は進歩していない。

老朽原発では、材料の腐食、脆化(ぜいか:もろくなること)、疲労が進んでいる

◆中国電力島根原発2号機は、1989年2月に稼働し、28年を経た原発である。長期にわたって高放射線に曝されてきたという点では、老朽原発に属する。原発の材料である鉄鋼は、中性子などの放射線曝露で脆化することはよく知られている。今回の圧力容器内のひびは、材料の脆化に起因する可能性が高く、深刻である。なお、脆化は老朽化とともに、急激となる。島根原発では、最近、空調ダクトの腐蝕も見つかっている(昨年12月)。

◆このような材料の脆化、腐蝕、疲労は原子炉の各部で進行していると考えられる。一昨年稼働した川内原発1号機の復水器細管の破損や昨年再稼働した伊方原発3号機の水漏れ事故も材料の老朽化に起因している。

この事故からも、40年越えの高浜1,2号機や美浜3号機の運転を延長してはならないことは明らかである。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆2/21と2/23に自治体申入れ

「高浜原発再稼働に反対する全国自治体議員の会」の高浜原発から 30 km 圏内の自治体への一斉申入れ行動を応援しましょう。

◆関西電力は、高浜原発3、4号機の運転を差し止めた大津地裁の仮処分を、大阪高裁抗告審でくつがえすことを期待して、3、4号機再稼働の準備を進めています。2月中に彼らに都合の良い高裁決定が出れば、3月中にも再稼働を強行する構えです。許してはなりません。

◆この状況の中で、全国の自治体議員と市民団体の有志は、2月9日、大阪で会合し、標記の申入れ行動を2月21日と23日に以下のスケジュールで行うことを決定しました。是非、ご参加・応援をお願いします。とくに、23日の滋賀県と京都府への申入れへのご支援をお願いします。

・2月21日(火)(3班で分担して申入れをします。)
希望者は、熊川宿に宿泊し、翌日、アメーバデモを行います。
(1)第1班(大阪発:新大阪駅、「阪急高速バス乗り場」付近、午前9時出発。)
運転者:村上(090-8531-0574)
午後1時綾部市、2時半宮津市、4時伊根町
(2)第2班(山科発:JR山科駅付近、午前8時30分出発。)
運転者:木原(090-1965-7102)
午後1時舞鶴市、2時半高浜町、4時おおい町
(3)第3班(堅田発:JR湖西線堅田駅前、午前9時30分出発。)
運転者:稲村(080-5713-8629)
午後1時高島市、2時半若狭町、4時小浜町

・2月23日(木)
午前8時40分滋賀県庁正面玄関に集合、9時より申入れ。
午前10時40分京都府庁府議会議場ロビーに集合、11時より申入れ。
午後2時南丹市、3時30分京丹波町に申入れ。
ご参加可能な方は、木原(090-1965-7102)までご連絡ください。

◆陳述書について…くわしい説明,お願い

[1] 陳述書について

  • 原発再稼働の動きが急速に進む中,京都地裁における私たちの大飯原発差止訴訟は,審理を促進させていく必要があります。これまでの口頭弁論で,原告側の主張がほぼ終了しました。今後は,これまでの主張を立証する専門家などの証人をたてていくこと,そして,私たち原告の生の声を裁判所に届ける段階になってきました。
  • 私たち原告の生の声を裁判所に届けるのが,「陳述書」です。裁判所,裁判官に直接語りかけ,訴えかけるチャンスです。すべての原告の皆さまが,陳述書を書いていただき,弁護団に集中していただきますよう,お願いします。
  • すべてに原告の皆さまに,2015/12/4,ご案内とお願いの手紙を発送しています。ただ,陳述書の作成は任意です。

[2] 陳述書作成にあたって

  • 陳述書の構成
  1. 第1 原告の情報
    必ず必要……作成日,氏名,生年月日,現住所。
    以下は任意…大飯原子力発電所までのおおよその距離(分かる場合),同居者の続柄と各人年齢,就労先の所在地。
  2. 第2 大飯原発事故の場合の避難に伴う不安
  3. 第3 大飯原発事故の場合に想定される損害
  4. 第4 本訴訟に参加するに際しての思い(関西電力・国に対する思い等)
  • 全体について
  1. 郵送した陳述書に書き込む場合には,枠内から文字がはみ出さないようにしてください。
  2. 必ず作成日の日付(「この陳述書の提出年月日」)をご記入下さい。
  3. 必ず氏名欄にご自身の署名押印をしていただくようお願いいたします。
  4. 必ず現在の居所の所在地(現住所)をご記入下さい。
  5. 第1については,「大飯原子力発電所からのおおよその距離」以下の項目は分からない場合や、書きたくない場合は記入しなくて結構です。
  6. 一般論ではなく自分自身の話を書いてください。
  7. 郵送しました弁護団作成の陳述書用紙とは別用紙で作成する場合には,必ず陳述書書式の第1から第4までの各事項にそって,文字の大きさは12ポイントとし,A4用紙裏表で作成いただき両面印刷した上で,お送り下さい。
  8. 下記第2以降に挙げた項目は,陳述書を作成いただく際にご参考にしていただく視点です。すべてについて書いていただく必要はありません。
  • 「第2大飯原発事故の場合の避難に伴う不安」の記入事項 (例示)
  1. 自分自身の年齢(高齢・年少),健康状態に起因する避難への不安
  2. 持病・負傷による通院,投薬の断絶に起因する避難への不安
  3. 避難の過程で子,孫,親,親族等とバラバラになってしまう事に対する不安
  4. 避難路の確保(例えば山間や一本道),避難手段に関する不安
  5. 自分や家族が要職にある、公務員である,町内の役員等で避難できない不安
  6. ・避難後の留守宅についての不安
  • 「第3大飯原発事故の場合に想定される損害」の記入事項 (例示)
  1. 生活環境の断絶,喪失(住環境,近所付き合い,居住地域での活動一般等)
  2. 失職,転校等の断絶・喪失,転職先・転校先に関する不安
  3. 持ち家の喪失,その他重要な財産の喪失
  4. 人生設計全般に対する影響
  5. 食材の選別
  6. 健康影響への不安
  • 「第4本訴訟に参加するに際しての思い(関西電力・国に対する思い等)
  1. 関西電力・国に対する思いや,訴訟にかける気持ちなど
  2. ご自由にお書き下さい。

[3] 陳述書についてQ&A

  • こちら をご覧ください。
  • 郵送でお送りしたQ&Aに,いくつか追加しています。

◆第14回口頭弁論 原告提出の書証

甲第301~338号証(第29準備書面関係)
甲第339号証(第30準備書面関係)
甲第340号証(第31準備書面関係)

※このサイトでは下記書証データ(PDFファイル)は保存していませんので、原告団の事務局の方にお問い合わせください。

証拠説明書 甲第301~338号証[279 KB](第29準備書面関係)
2017年(平成29年)2月10日

  • 甲第301号証
    『拡大する世界の再生可能エネルギー ―脱原発時代の到来―』(和田武、木村啓二)
  • 甲第302号証
    研究開発関連情報 太陽光発電(ホームページ:より)(沖縄電力)
  • 甲第303号証
    プレスリリース 南相馬変電所の大容量蓄電池システムの営業運転開始について(ホームページより)(東北電力)
  • 甲第304号証
    豊前蓄電池変電所の運用開始について(九州電力株式会社)
  • 甲第305号証
    3月定例社長記者会見概要(東北電力)
  • 甲第306号証
    メガワット級大規模畜発電システム(住友電気工業株式会社)
  • 甲第307号証
    プレスリリース 南早来変電所大型蓄電システムの実証試験開始について(ホームページより)(住友電気工業株式会社)
  • 甲第308号証
    太陽光発電の発電コストが石炭火力発電以下に。ソーラーが「お得」な時代へ(ニューズウィーク日本版)
  • 甲第309号証
    原発は高かった~実績でみた原発のコスト~(ホームページより)(立命館大学教授大島堅一(ヤフーニュース))
  • 甲第310号証
    電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間とりまとめ(案)
    (総合資源エネルギー調査会基本政策分科会・電力システム改革貫徹のための政策小委員会)
  • 甲第311号証
    安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第312号証
    仏企業の欠陥原発部品と隠ぺい、世界に波紋(ホームページより)(ウォールストリートジャーナル日本版)
  • 甲第313
    フランスの原子力発電 最大手襲う難問(ホーム菫 ページより)(日経ビジネスオンライン)
  • 甲第314号証
    シーメンス社長、原発事業撤退を表明 独誌報道(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第315号証
    独シーメンス、原子力から撤退も 仏アレバと合弁解消(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第316号証
    米GE イメルトCEO 原発“見切り”発言の衝撃度(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第317号証
    東芝、止まらぬ損失 WH買収で「10年の重荷」(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第318号証
    東芝資産査定甘く・・・買収会社の価値低下損失拡大(ホームページより)(毎日新聞)
  • 甲第319号証
    三菱重工への損賠請求7070億円に減額 米電力会社など(ホ一ムページより)(日本経済新聞)
  • 甲第320号証
    仏アレバ増資 多難な前途 日本勢出資も中国勢撤退で受注不安(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第321号証
    三菱重工、アレバ新会社に5%出資 日本原熱も5%(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第322号証
    プレスインフォメーション 三菱重工業とフランス電力会社原子力発電事業での協調に向けた覚書(MOU)を締結(ホームページより)(三菱重工業株式会社)
  • 甲第323号証
    英原発新設に暗雲・・・安全対策費が膨張/採用予定炉に欠陥(ホームページより)(毎日新聞)
  • 甲第324号証トルコへ原発輸出、三菱重に影落とす巨額賠償問題(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第325号証
    英原発に1兆円支援政府、日立受注案件に(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第326号証
    ベトナム、原発計画中止 日本のインフラ輸出に逆風(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第327号証
    台湾原発ゼロ法案成立 アジア初25年までに停止(ホームページより)(西日本新聞)
  • 甲第328号証
    台湾、第4原発の建設を凍結 住民投票実施へ(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第329号証
    本日の一部報道について(伊藤忠商事株式会社)
  • 甲第330号証
    トヨタ一時操業停止原発輸出の三菱重工「状況見守る」日本企業に警戒広がる(ホームページより)(産経ニュース)
  • 甲第331号証
    日本からインドへ原発輸出可能に、両国が原子力協定に署名(ホームページより)(ロイター)
  • 甲第332号証
    日本とインドが原子力協定締結、原発輸出促進に期待も賠償懸念でメーカーは二の足 ベトナムでは受注案件の中止も(ホームページより)(産経ニュース)
  • 甲第333号証
    東芝再建、時間との闘い 米原発で損失最大7000億円(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第334号証
    日立、700億円の営業菫外損失見通し 米国の原発事業で(ホームページより)(朝日新聞デジタル)
  • 甲第335号証
    原発事業、連携も検討=不採算で継続困難―日立社長(ホームページより)(時事ドットコム)
  • 甲第336号証
    日立社長「原子力再編論議、炉含め考える時期くる」(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第337号証
    日立・東芝・三菱重工、原発燃料事業を統合 来春で調整 原子炉再編に波及も(ホームページより)(日本経済新聞)
  • 甲第338号証
    東芝粉飾の原点 内部告発が暴いた闇(抜粋)(日経BP社)

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証拠説明書 甲第339号証[78 KB](第30準備書面関係)
2017年(平成29年)2月9日

  • 甲第339号証
    木津川市防災計画(木津川市防災会議)


証拠説明書 甲340号証[82 KB](第31準備書面関係)
2017年(平成29年)2月10日

  • 甲第340号証
    意見書 (京都大学名誉教授 竹本修三)

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◆第14回口頭弁論 意見陳述要旨

第14回口頭弁論 意見陳述要旨
意見陳述2017 年2 月13 日

氏名 宇野朗子

宇野朗子と申します。

福島市で被災し避難、山口県、福岡県を経て、現在は京都府木津川市におります。

2011年3月11日、私と、当時4歳の娘は、福島市内の友人の家の庭で地震にあいました。私はとっさに娘を自転車から降ろしふたりで、暴れ馬のような大地にしがみつきました。ゴォーッという地鳴り、周囲の全てのものが強く揺すぶられて、聞いたことのない音を発していました。すぐ後ろに停まっていたワゴン車がバウンドして前に進み、石塀がガランゴロンと崩れました。「大丈夫だよ!ママはここにいるよ!」と繰り返し叫びながら、私の意識は浜通りの原発へ飛んでいました。「ああ、間に合わなかったのかもしれない」という想いがこみ上げていました。その頃、私は、福島第一原発3号機でのプルサーマル運転に反対しており、すべての原発を安全に廃炉にしていこうというイベントを準備している最中だったからです。

本震が終わるとすぐに友人宅に逃げ込みました。急いでテレビをつけると、日本列島の海岸線が点滅して津波警報が出ていました。予測高さは3メートルくらいでしたが、みるみるうちに、5メートル、7メートルと高くなっていきました。そして、本当に、津波がおしよせ、家も人も車も押し流されていく映像が流れました。「これは本当に大きな地震だったのだ」と思いました。でもテレビでは、原発について、「自動停止した。今のところ問題はない」という情報以外は、何も得られませんでした。

すぐにパソコンを借りてネットにつなぎ、情報を求めました。ほどなくして、信頼する友人から、「福島原発、全電源喪失」の報せを受けました。前年の夏の、外部電源全喪失事故の記憶が蘇りました。あの時、冷却水の水位が2メートル下がったところで電源が復旧し、メルトダウンを免れていました。「今回も、どうか復旧しますように、電源車が間に合うように」と祈りながら、私は危機を知らせるため、友人たちに電話を掛け続けました。

夜になっても、電源復旧の報せはありませんでした。

原発からの風向・風速は? 放射性物質が拡散したら、どのくらいの時間でここに到達する? これらの情報を知りたいと思いましたが、分かりませんでした。

夜になり、原子力緊急事態宣言発令、その後、3キロ圏内に避難指示が出されました。私たちも避難したほうがよいだろうか?情報がない中で、判断に迷いました。

夜の11時頃、政府災害対策本部の情報を目にし、メルトダウンの危険性が高いと判断、避難を決めました。友人が、オムツや衣類、食料、水等を車に積みこみ、眠り始めていた子どもたちを起こして車に乗せました。私は、避難するというメールを無差別に送信しました。「何事もなければ、帰ってくればいい、今は一刻も早く子どもたちを遠くへ」、そう話して、真夜中に出発しました。雪のちらつく、静かな夜でした。

南へ向かう国道は、地震で陥没しており不通、東北自動車道も通行止めで、私たちは西の山を越えることにしました。山は吹雪でした。真っ白な視界の中を、私たちは一睡もせず必死に車を走らせました。

翌朝、会津の知人宅で休憩をとり、埼玉で被災していた夫がレンタカーで合流、私たちはそこから家族3人で避難を続けました。新潟に向かう途中で、一号機の爆発を知りました。はりつめていた糸が切れるように、私は声をあげて泣きました。

新潟空港でレンタカーを乗り捨て、キャンセルのでた飛行機に飛び乗り伊丹空港へ。大阪からは新幹線で12日の深夜に広島に到着し、13日午後、山口県宇部市にある夫の実家に到着しました。

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私たちは、このように緊急避難しました。それは、数々の幸運が重なったからこそできた避難でした。各地では渋滞が起きていました。また、避難したくてもガソリンが手に入らず、できないという人もたくさんいました。病気をかかえた人たちが避難の途中で何人も亡くなりました。また、浜通りから避難してきた方々を助けるために、避難したくてもできない、という友人もありました。

何より、避難するべきかもしれない事態が進行していることを知らないままの大勢の被災者がいました。

原発事故による住民避難は、情報の入手、避難の判断、避難の実行、すべての面で、とてつもなく困難なことです。

私が現在住んでいる木津川市をはじめ、多くの自治体の原子力防災計画は、国、府、電力会社から収集した情報を得ることを前提としています。しかし、福島原発事故では、実際には、十分な情報は届きませんでした。停電の中で、原子力緊急事態も、3キロ圏内避難指示も、殆どの住民が知らないまま夜をすごしました。さらに情報の隠蔽がありました。福島県は、放射性物質の拡散予測を、県民に知らせることはありませんでした。

3月15日、福島市内では、毎時24マイクロシーベルトを超える空間線量が観測されました。ヨウ素剤も配布されなかったため、人々は本当に無防備に初期被ばくをしてしまいました。政府や県、東京電力の発表する情報や指示に従ったことで、多くの人が無用な被ばくを強いられたのです。これは許されてはならないことです。このような裏切りを私は想像もしませんでした。悪夢のような現実の展開に、心底恐怖し、憤り、苦しみました。

この悲劇がどのように起きたのか、今後、どのような体制をとるべきなのか、十分な検証と対策が必要です。

そして今日、もうひとつどうしてもお伝えしたいことは、緊急避難は、「長い長い被災のほんの始まりにすぎない」のだということです。

緊急避難した人たちも、職場や学校の再開とともに帰らざるを得ませんでした。夫も、1ヵ月後には職場に帰り、それから私たちは、長い二重生活が続きました。この6年間で家族併せて10回以上の転居をし、夫は職場を2回変え、昨年ようやく家族3人の暮らしを再開することができましたが、人とのつながり、仕事、将来の夢、家族の平和な日常を奪われ、その傷は癒えていません。家族分離、コミュニティの崩壊、病気、死、多くの喪失を経験し、その苦しみは今も続いています。

危険な放射能汚染がありながら、避難指示は解除され、区域外避難者の住宅提供も打ち切りとなります。私はまた、このような被災者を切り捨てるような政府の施策に、深く傷つき、憤っています。

私たち家族は緊急避難をしましたが、しかし、個人の努力では、原発事故から本当に逃れることはできないのだと、この6年でひしひしと感じています。

原発が一度事故を起こせば、何百年もの間、土や海や山の木々は汚染されます。

人々の人権は奪われ、被ばくを受け入れることを強要され、生きる尊厳を傷つけられます。

こんな悲惨な事故は福島で終わりにしなければなりません。

私は、福島原発事故の悲惨を知るひとりとして、未来世代に責任を感じる大人として、大飯原発をはじめ、すべての原発は絶対に稼働させてはならないと、強く訴えます。

以上

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◆原告第31準備書面
―被告関電の地震・津波の想定の問題点(概論)―

原告第31準備書面
―被告関電の地震・津波の想定の問題点(概論)―

2017年(平成29年)2月10日

原告第31準備書面[187 KB]

原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では木津川市における避難計画の問題点についての主張を行う。

 1 想定地震の地震モーメントの不整合

被告関電は、想定地震であるFO-A、FO-B、熊川断層が連動して動いた場合の地震モーメント(Mo)について、被告関電準備書面(2)[12 MB]ではMo=1.79×10*20(N・m)と主張し(14ページにある図表5)、被告関電「大飯原発の基準地震動について」(丙28号証[10 MB])ではMo=5.03×10*19(N・m)と主張している(42ページの「FO-A、FO-B、熊川断層の断層パラメータ(基本ケース)」)。

被告関電準備書面(2)[12 MB]では、津波の高さの算定に広く用いられている武村の式を用いて地震モーメントが求められている。これに対して被告関電「大飯原発の基準地震動について」は基準地震動について論じたものであり、地震モーメントを求めるのに入倉―三宅の式が用いられている。なお、武村の式には、断層長さ(L)からMoを求める経験式((1)式)と断層面積(S)からMoを求める経験式((2)式)があるが、準備書面(2)[12 MB]では武村の(1)式を採用している。武村の(2)式を採用すれば、Moはもっと大きくなる。

同じ想定地震の地震モーメントを求めるのに、津波高の算定では武村の式、基準地震動の予測には大倉一三宅の式が使用されている。このこと自体が矛盾であり、算出された地震モーメントには、3倍以上の開きがある。矛盾する検討結果を平然と公にしている被告関電は、原子力規制委員会や地震調査推進本部・地震調査委員会の指針・指導には形式的に対応するだけで、その内容について、真に安全性の面から科学的な検討をしていないことを示している。

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 2 津波高さと遡上高さについて

被告関電準備書面(2)[12 MB]の12ページに、「ウ 敷地周辺の海域活断層については、阿部(1989)に示される津波を発生させる地震の規模と津波の伝播距離により津波高さを概算する簡易予測式を用いて発電所敷地に到達する推定津波高さを検討した」と書かれている。阿部の簡易予測式とは、Log Ht=Mw-logΔ-5.35、Log Hr=0.5Mw-3.10である。ここで、Htは津波の伝播距離Δ(km)付近での区間平均高、Hrは伝播距離Δに関係なく求められる震源域での津波高のことである。
上記準備書面(2)[12 MB]の14ページ、図表5のNo.9「FO-A~FO-B~熊川断層」の「推定津波高さHt or Hr」欄には4.17mと記載されている。この数値がHtであるか、Hrであるかを検証するために、簡易予測式に14ページの図表5に示されているMw=7.43、Δ=3.5kmの数値を入れると、Ht=34.35m、Hr=4.14mと求められた。つまり、図表5「推定津波高さHt or Hr」欄)に示されている「FO-A~FO-B~熊川断層」の4.17mという数値は、Htではなく、Hrであることが判明した。

阿部論文には、伝播距離Δが地震断層の長さ(L)より近いところでは簡易予測式を使ってHtを求めるのは無理であると書かれている。これが最初から分かっていたのに、想定地震(断層長さL=64km)による大飯原発(敷地から断層までの距離Δ=3.5km)の想定津波高さの算定に阿部の簡易予測式を用いたのは、被告関電の大きな欺瞞である。

多くの国民が知りたいのは、震源域における津波の高さ(Hr)ではなく、伝播距離Δ(3.5km)を経て大飯原発に到達する津波の高さ(Ht)であり、それは、阿部の簡易予測式から求めることはできない。大飯原発周辺の海底地形などのローカルな影響を綿密に検討する必要がある。それに加えて、敷地内の地形や建物の配置によって遡上高も場所ごとに大きく変化することも考慮しなければならない。被告関電は、このような津波が大飯原発の敷地内まで3km以上を伝播したとき、どのくらいの高さの津波遡上高が原発を襲うかという詳細な予測について、データ資料を添えて明らかにすべきである。

2011年東北地方太平洋沖地震の際に、震源域では最大5.5m強の海底隆起があり、福島第一原発から1.5km離れた沖合の波高計で津波第1波が約4m、第2波が7m強と観測されたものが、福島第一原発の敷地では遡上高が15.5mの津波となっている。つまり1.5km沖合の津波高さの2倍以上の遡上高さが原発敷地内で認められたのである。

阿部の簡易予測式に拠らずに、震源域での津波高さを以下のとおり導くことができる。武村の経験式のうち、(1)式を用いて得られたMoを使って求めた想定地震の水平変位は5.28m、(2)式を使って求めた値は7.15mとなる。この水平変位に、「日本海における大規模地震に関する調査検討会」の報告書に書かれているすべり角(35°)を採用し、Sin35°(=0.5736)を乗じて断層面の平均的上下変位を導くことができる。この値が3.0~4.1mとなる。さらに、上記報告書では、「防災上の観点から、各地で見積もられる津波高に1.5mを加えたものを『最大クラス』の津波とする」とされている。これを採用すると、想定地震の「最大クラス」の津波高さ(Hr)は4.5~5.6mとなる。

以上のことから、大飯原発の沖合3.5kmで想定される4.5~5.6mの津波高さ(Hr)が敷地近傍まで伝播したときの津波高さ(Ht)が知りたいところであり、遡上高さ10mを超える津波として大飯原発を襲う可能性を否定できないと解される。

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 3 地域特性について

被告関電は、地震動の想定に地域特性の把握が重要であるとして、「地震動に影響を与える特性である、(1)震源特性、(2)伝播特性、(3)地盤の増幅特性(サイト特性)が重要な考慮要素となる。」「特定の地点における地震動を想定するには地域性の考慮が不可欠」である(被告関電準備書面(3)[17 MB]17~18頁)と主張している。

そして、大飯原発の基準地震動も地域特性を考慮して策定したとして「最新の地震動評価手法(「震源特性」と地下構造による地震波の「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」を、地域性を踏まえて詳細に考慮する地震動評価手法)を用いて、検討用地震の地震動評価を行なっている(「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価)。さらに「震源を特定せずに策定する地震動」も評価した上で、本件発電所の基準地震動Ss-1~Ss-19を策定している。したがって、本件発電所敷地に基準地震動を越える地震動が到来することはまず考えられないところである。」(同上[17 MB]159頁)と主張している。

これに対して原告らは、基準地震動を超える地震の発生する危険性があると批判している。過去に各地の原発で基準地震動を越える地震が繰り返し起きており、それは基準地震動が「平均像」に基づいて策定されているからだと指摘している。被告関電は、基準地震動が「平均像」に基づいて策定されていることを認めながら、大飯原発の地域特性が十分に把握できており、その地域特性に照らせば、基準地震動を越える地震発生の可能性を否定できると主張している。

このように地域特性は、被告関電の地震動に関する主張の柱に位置付けられている。

ところが、被告関電は、地域特性のうち、(1)震源特性と(2)伝播特性については、具体的な主張立証をしていない。(3)地盤の増幅特性(サイト特性))については、「大飯発電所の基準地震動について(平成27年1月)」(丙28[13 MB])を提出し、これに基づく主張がなされているが、基準地震動が小さくなる方向で地盤データが曲げて整理され、隠蔽され、あるいは地盤のモデル化がなされている。

次回期日には、地域特性に関するこれら被告関電の主張・立証に対して、全面的批判を行なう予定である。

以上

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◆原告第30準備書面
第3 避難は一時的なものに限らない
第4 結論

原告第30準備書面
―木津川市避難計画の問題点について―  目次

第3 避難は一時的なものに限らない

これまで原告は、舞鶴市の避難計画の問題点(第17準備書面)、綾部市の避難計画の問題点(第22準備書面)、南丹市の避難計画の問題点(第25準備書面)、宮津市の避難計画の問題点(第28準備書面)について述べてきた。

木津川市の避難計画及びこれらの避難計画に共通する点は、生涯にわたって、これまで住んできた地域を離れる意味での「避難」については、一切記載されていない点である。

福島第一原発の事故からも明らかなとおり、原発事故が一度起きれば、地理的に極めて広範囲の人間の生命、生活、生業、産業に全人格的な被害をもたらし、数十年、数百年にわたって損害を及ぼし続けることになり、これまで、長年居住してきた地域から、別の地域に生活基盤を移さざるを得なくなるのである。

全ての避難計画について、この点について、全く具体的な記載がないことこそが、原発に関する避難計画など作成することが不可能であることを示している。

第4 結論

以上のとおり、木津川市防災計画は、避難計画としては、全く対策となっていないのである

以上

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◆原告第30準備書面
第3 木津川市地域防災計画の問題点について

原告第30準備書面
―木津川市避難計画の問題点について―  目次

第3 木津川市地域防災計画の問題点について

 1 基本方針について

木津川市防災計画は、「第3編第40章原子力災害発生時における対応第1節原子力防災に関する基本方針」において、「福井県の原子力事業所で、放射性物質が事業所外に大量に放出するような過酷事故が発生した場合、風向き等によっては、市においても退避又は避難が必要となる事態の発生が予測される。」とし、「放射性物質の放出による退避及び避難が必要とされる場合、市としては放射性物質による汚染状況に応じ、(1)屋内退避、(2)コンクリート屋内退避、(3)遠隔地避難の措置を実施する。なお、「屋内退避」や「コンクリート屋内退避」は遠隔地避難又は自宅復帰への一時的措置と位置づける。」と定められている。

しかし、放射性物質の放出状況によっては、屋内退避ではなく、宮津市外に避難する必要があるが、(3)遠隔地避難については、具体的な措置は、一切定められておらず、避難計画として不十分である。このように、具体的な措置を定められないことこそが、避難計画自体を定めることができないことを示している。

 2 迅速的確な情報伝達の非確実性

木津川市防災計画「第2節市における原子力災害応急対策第1緊急時の情報収集」では、「市は、原子力災害発生時(緊急時)において、府が国、福井県及び原子力事業者等の防災関係機関から収集した情報、又は府が独自に収集した情報について連絡を受け、緊急事態に関する状況の把握に努める。」と定め、国、府及び原子力事業者から、木津川市に正確に情報が伝えられることを前提として作成されている(甲339号証)。

しかし、原告宇野の体験からも明らかなとおり、福島原発事故では停電により情報発信そのものが十分できなくなったり、処理能力を超えてメール等の送受信ができなくなったことにより、迅速的確な情報伝達は行われなかったりしたことを考慮すると、上記前提自体が覆される可能性が高い。

木津川市避難計画は、この点を全く踏まえておらず、問題がある。

 3 具体性のない計画

  (1)退避措置について

木津川市避難計画は、「第3退避措置3退避指示」(甲339号証)について次のとおり定めている。

「3退避の指示
市は、放射能汚染が拡大し、市域への影響のおそれがある場合、原子力災害の危険性に配慮し、全住民に対し退避及び避難の措置を指示するものとする。」

と定めている。

しかし、どのような場合に、「市域への影響のおそれ」があるのか具体的な基準は定められておらず、また、どのようにして「全住民に対し退避及び避難措置を指示する」のか全く具体的な内容は記載されていない。

  (2)飲料水について

木津川市避難計画は、「第4飲料水、飲食物の摂取制限」について次のとおり定めている。

「市は、放射能汚染が拡大し、飲食物による住民の健康被害発生が予測される場合、飲料水、飲食物の摂取制限措置を実施し、府と連携し、安全な飲食物の供給を確保する。」

しかし、具体的に「飲食物による住民の健康被害発生が予測される場合」の基準は示されておらず、「府と連携し、安全な飲食物の供給を確保する」具体的な手段も示されていない。

原告第6準備書面において、大野ダム、和知ダム、由良川ダムは、大飯原発から35km~40km圏内に位置し、これらのダムや由良川水系が放射性物質によって汚染されれば、京都府北部全体において、飲料水の確保が極めて困難になる旨主張したとおり、現実には、飲料水の確保が極めて困難とため、具体的な手段が示さないのではなく、示せないのである。

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