◆3/15の第10回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1268 2016年4月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

琵琶湖が放射能汚染されたら

―大飯原発差止訴訟第10回口頭弁論で原告陳述―

  • 京都府などの住民3,068人が関西電力と国を相手に大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料を求めている訴訟の第10回口頭弁論が、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。法廷は柵内の弁護団、原告50人余り、満席の傍聴者(80人、外れた人は弁護士会館での模擬法廷傍聴)、関電や国の代理人など160人ほどがぎっしり席を埋めつくしました。

原告の林森一さん意見陳述

  • 最初に原告の林(はやし)森一(もりかず)さんが意見陳述に立ち、福井県若狭湾岸に大飯原発など13基の原発が存在し、事故で琵琶湖が放射能汚染されたら近畿1,450万人が水を飲めないことになるなど取り返しのつかない被害が発生すると、自らの暮らしの基盤から大飯原発の稼働停止を訴えました(以下陳述要旨)。
  • 生家が左京区久多にあり、北区の自宅から週1,2回程度通うが、こちらで老人クラブ役員や町会長などを務め、重要な生活の一部。大飯原発30キロ圏に入る。周辺は芦生原生林や八丁平湿原など貴重な自然遺産にもめぐまれ「京都丹波高原国定公園」と新たな指定が国に答申された。この区域も原発から30キロ、50キロ圏内になる。左京区役所や警察、消防署、地域団体あげての避難訓練が実施されたが不安を増大するばかりだ。車での避難は、車、運転手、道路・交通状況、地震、積雪などを想定すると安全避難は不可能。12歳のとき死者3,769人、負傷者2万2,203人、全かい家屋3,684戸の被害を出す、マグニチュード7.1の福井大地震があった。大飯原発は熊川断層の上にあり、このような地震の危険が常にある。近畿の水がめの琵琶湖が放射能で汚染されれば1,450万人の水源が断たれる。京都市は舞鶴市からの避難の受け入れ計画をいうが、私たち京都市民の避難先、避難施設、安定ヨウ素剤の用意、食糧・水の確保など考えれば胸が苦しくなるばかりだ。東京電力は津波による全電源停止を知らなかったと責任逃れをしている。関西電力も高浜原発の水漏れ、自動停止といった事態の原因を究明し住民に情報公開をしていない。核兵器の被害を受けた上に福島原発事故、日本国民は核兵器も原発もなくしてほしいと願っている。使用済み核燃料も対策もないまま、再稼働など絶対あってはならない。原発差し止めを訴える。

福井地裁の再稼働容認 「決定」 を批判-森田弁護士

  • つづいて原告第18準備書面の要旨を森田基彦弁護士が陳述しました(以下論旨)。
  • 昨年4月14日、福井地裁が出した高浜原発3,4号機の運転差し止め仮処分決定に関西電力が異議を申し立てた審理(異議審)で、福井地裁は12月24日、仮処分決定を取り消し、再稼働を容認する決定を出した。これは、司法審査の枠組みを従来の行政追随型に後退させただけでなく、行政審査をより劣化させる規範。高浜3号機が今年1月29日、4号機が2月26日にそれそれ再稼働。4号機の汚染水漏れ、6万ベクレルの放射能漏れも発生、再稼働直後2月29日には緊急停止のトラブル。地質・地質構造についての地盤の議論も継続中。この異議審決定は、立証責任を資料や知見のそなわっている関電側に負わせ、原子力規制委員会に不合理な点がないことを示すよう求めた判断を、原告住民に立証責任を転換させるもの、規制委員会の安全性の判断に不合理があるか否かで判断すべきとしてきた司法審査の対象についても、絶対的安全性を要求するのではなく、危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理されているかどうか、とゆるめている。福島原発事故の原因が解明されないままにつくられた新規制基準を過度に信頼して社会通念とする誤りを犯している。そもそも規制委員会の判断を司法審査の対象とするのが誤り。判断基準は、①人格権侵害の具体的危険、②福島第一原発事故の行政審査の限界は明白で行政審査とは異なるのが新審査であるべき。③「想定外」の「過酷事故」が起こり得ることが明白な今日、深層防護のすべての段階で「危険がないこと」を被告(関電)が主張・立証しなければならない。

次回は

  • 次回、第11回口頭弁論は、5月16日(月)午後2時から、101号法廷で。