◆原告第69準備書面 第2
被告関西電力準備書面(23)への反論

原告第69準備書面
-被告関西電力準備書面(22)(23)に対する反論-

2020年2月26日

目 次

第2 被告関西電力準備書面(23)への反論

1 被告関西電力の主張の概要
2 2018年の大阪北部地震について
3 被告関西電力の地下構造モデルに関する原告らの主張について


第2 被告関西電力準備書面(23)への反論


1 被告関西電力の主張の概要

 被告関西電力は,準備書面(23)において,①原告らが第60準備書面において大阪北部地震を踏まえた主張を行ったことについて,独自の手法に基づくものにすぎないなどと反論し,②地下構造モデルに関する原告らの主張については従前の主張を繰り返し,具体的な反論は行っていない。

 そこで,これらの点について必要な範囲で改めて述べる

2 2018年の大阪北部地震について

(1) 被告関西電力の主張

 この点に関する被告関西電力の主張は,

㋐ 基準地震動は,地震本部によるレシピを参照し,過去の地震ないしは地震動の単なる「平均像」ではなく,平均像を導いた過去のデータがばらつきを有していることを踏まえて不確かさを適切に考慮し,充分保守的な断層モデルで適切に策定されている,

㋑ 大阪府北部地震は,想定しているFO-B~FO-A~熊川断層の震源域で発生した地震ではないから,経験的グリーン関数法に基づいた検討を行っているわけではなく,原告らは単に独自の手法に基づいて算定した結果をもとにして基準地震動は過小評価であると主張しているに過ぎず理由がない,

ということに絞られる。

(2) ㋐について

 この点の被告関西電力の主張の誤りは既に述べてきた。

 同被告の主張のとおりであれば,スケーリング則に合うM7.8の地震では基準地震動以下の地震動しか生じないはずである。この点,大阪北部地震(M6.1)もスケーリング則に合った地震であるから,これをスケーリング則によってM7.8にスケールアップしたとしてもやはりスケーリング則に合う地震であり,このようにしてスケーリング則に合う大阪北部地震(M7.8にスケールアップしたもの)と同様の地震が発生したとしても,基準地震動以下の地震動しか発生しないことになる。しかし,実際にはそうではない。原告第60準備書面で述べたとおり,基準地震動を超える地震動が生起されるのである。その理由は,スケーリング則そのものの性質や被告関西電力が減衰量(h)を過大に設定していること,震源特性・サイト特性によるものである(原告第67準備書面同70準備書面で詳述)。

 基準地震動が保守的ではなく,被告関西電力の主張が誤りであることはやはり明らかである。

(3) ㋑について

 被告関西電力は,原告らが経験的グリーン関数法に基づいていないと主張しているが,原告らは経験的グリーン関数法を用い,大阪府北部地震M6.1をスケーリング則に基づいてM7.8大阪府北部地震にスケールアップしているのであるから,前提からして誤っている。何ら「独自の手法に基づいて算定した」ものではない。その上で原告らは,このM7.8大阪府北部地震と同じ震動特性の地震がFO-B~FO-A~熊川断層で発生したとして大飯サイトの地震動を計算したのである。

 こうして計算した地震動が,被告関西電力の策定したレシピに従う「平均像」に保守性を持たせた基準地震動を超えるというのが原告第60準備書面の結論である。M7.8大阪府北部地震は,スケーリング則の「平均像」から何某かの「ずれ」を当然含んでいる(もちろん,「ずれ」を含むことは実際に発生した・発生するすべての地震に当てはまる。)が,この「ずれ」はスケーリング則のばらつきの範囲に収まっている(=大阪北部地震はスケーリング則に合っている。)。現に他の場所で起こった,そのようにスケーリング則に合う実際の地震が,大飯サイト近傍で発生したらどうなるかということを論証したのである。

 スケーリング則は,それぞれ異なる震源特性とグリーン関数(ある点に瞬間的に力を加えた場合の別な点の応答を関数で示したもの。経路の伝播特性とサイト特性の重畳。)を持った過去の地震をもとにした平均像である。スケーリング則にばらつきがあるのは,それら震源特性とグリーン関数に平均値からのずれが存するためである。このような過去の地震のスケーリング則に保守性を持たせた基準地震動が,他の場所で実際に起こったM7.8の地震の震源特性とグリーン関数の平均値からの「ずれ」を吸収できないのである。

 この関係は次式のように示される。被告関西電力が持たせたと主張している「保守性」では,実際の地震において生ずる平均像からのずれを吸収できない。「保守性」が不十分だからに他ならない。

[基準地震動]=[平均像]+[保守性]<[平均像]+[ずれ]=[実地震]

3 被告関西電力の地下構造モデルに関する原告らの主張について

(1) 被告関西電力の主張

 被告関西電力は,この点に関する原告第60準備書面における原告らの主張に対し,具体的に反論していない。ただ従前の主張を繰り返すのみである。

 従前の主張と重複するが,改めて,

㋐ 微動のアレイ観測による観測結果の逆解析から直接導かれるインバージョンモデルから,厚さ80mにおよぶS波速度0.5km/sの第1層をカットしてP波速度4.6km/s,S波速度2.2km/sの第2層を解放基盤としたことについて,「被告は,ボーリング調査やPS検層によって地盤の状態を直接把握して,本件発電所敷地の浅部にS波速度約2.2km/sの堅硬な岩盤が広がっていることを確認し」た,

㋑ 敷地地盤の地震波減衰係数を標高-180mまで3%,それ以深を0.5%としたことを,引用文献と敷地での実験結果から合理的である,

とする点について述べる。

(2) ㋐について

 被告関西電力は,これまでは,大飯原発敷地浅部の速度について,PS検層,試掘坑における弾性波探査,反射法地震探査の屈折法解析結果の3つを示して主張していた。これらはいずれも原位置で直接測定されたものである。

 ところが,今回論拠として挙げたのはこのうちPS検層のみであり,新たに別途,ボーリング調査を論拠に挙げている。しかし,当該「ボーリング調査」の内実について具体的な主張・立証がなく,ただ結論を述べるのみであるから,これを認める余地はない。

 仮に岩質やRQDの値(被告準備書面(22)にあるもの)を指しているのであるとすると,既にこの点については述べている。むしろ,被告関西電力が行った調査の元データを通覧することにより,岩質が均質ではないことやP波速度が小さいこと,地下深部に低速度層が存在すること,RQDの値が「普通」以下に分類されることなどが明らかとなっているのである(原告第67準備書面甲510)。

 上記のとおり,被告関西電力が今回その主張の論拠として挙げなかったものとして試掘坑における弾性波探査があるが,その結果であるとして被告関西電力は,「P波速度4.3km/s,S波速度2.2km/sと評価した」としている。しかし,この点も既に指摘したところであるが,被告関西電力の元資料に記載されている速度の算術平均値は,全体でS波は(2.141±0.335)km/s,3号炉側では(2.017±0.369)km/sとなっている。2.2km/sとの記載はない。また,P波速度については被告関西電力自ら4.3km/sという結果を示しながら,これらを無視して解放基盤(標高0m)の速度を4.6km/sとしているのである。

 試掘坑内の平均速度法による弾性波試験結果について,被告関西電力は,「P波速度は3.0km/s~5.2km/sで平均値4.3km/s,変動係数7.0%である」と規制委員会には報告している(丙178・添付書類六地盤構造に関する図面,6-3-128頁)。4.6km/sではない。3.0km/s~5.2km/sという大きな速度変化について,敷地に存在する断層破砕帯とそれに付随するシームの分布に依存して場所的に変化していることについては既に甲422で詳述したが,被告関西電力はこの点に関して何らの分析も行っておらず,検討不十分である。

 被告関西電力は,同被告が柔らかい表層部分を割愛したことを批判してきた原告らの主張に対し,同準備書面では,「最終的な地下構造モデル策定の際に柔らかい表層部分(層厚80m)を取り除くことを前提として,原子炉建屋直下では解放基盤表面の上に存在しない表層部分(各観測地点には存在する)を含んだインバージョン解析を実施した」と論調を変えつつもなお正当化しようとしている。

 改めて指摘するまでもないであろうが,原告らは,原子炉建屋の基盤表面にS波速度0.5km/sの柔らかい表層が存在していると主張しているのではない。

 既に述べたとおり,インバージョン解析で,解放基盤相当の第2層が標高-36.5mの深部に求まるという齟齬は,第2層の速度を実測値ではなく,それより大きい速度,すなわちP波速度を4.6km/s,S波速度を2.2km/sとしたために生じたものである。インバージョン解析では,計算機は与えられた拘束条件(速度値)の下で,観測された位相速度を説明するための最適解(層厚)を出す。拘束条件のS波速度は,第1層0.5km/s,第2層2.2km/s,第3層2.3km/sと第2層以下は0.1km/s刻みで増加させている。第2層以下は0.1km/sの増分であるのに,第1層から第2層へは1.7km/sもジャンプさせている。観測された位相速度は周期約0.65秒以下で1.4~2.0km/と2.0km/s以下であり,この小さい速度を説明するためには大きい速度の2.2km/s第2層を深くせざるを得ないのである。このように,軟らかい表層部分(第1層)を取り除くことを前提として第2層を2.2km/sとしたのは,建設時の設置許可申請における解放基盤の速度値2.2km/sを踏襲したためである。これこそが上記齟齬の原因である。

 本来は,柔らかい表層から解放基盤とする岩盤までの速度の増分を1.7km/sとジャンプさせるのではなく,細かく設定して原子炉建屋の立地する標高0m付近の速度値を求めなければならない。このことについては,既に甲422甲481及び本準備書面第1・3・(4)で詳述した。

(3) ㋑について

 この点についての被告関西電力の主張は,被告準備書面(22)・第3・4と同じであり,既に反論済みである。すなわち,原告らは,甲422で,例えば新潟平野の土質地盤の知見を大飯岩盤に流用していること,散乱減衰の理論を展開しながら散乱減衰の基本である周波数依存性について考慮していないことなどを指摘しているのである。しかし,被告関西電力はこれらに全く反論できていない。

 また,本来,土質地盤では岩盤よりも減衰が大きいのであるが,被告関西電力のモデルではなぜか逆に,大飯岩盤の減衰が,実測された大阪平野の土質地盤の減衰より1.5倍も大きくなっており,逆転しているのである(甲481)。被告関西電力はこのことについても反論できていない。

以 上