◆関西電力 闇歴史◆012◆

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◆使用済み核燃料の県外搬出、中間貯蔵候補地で
 関電が何回もくりかえす空約束(1997~2023年)の果て
 原発サイトの乾式貯蔵施設へ(2024年)
 【付 使用済み核燃料の中間貯蔵施設~西川前知事から杉本知事へ】
 【付 関電の使用済み核燃料搬出計画(2023年10月)】
 【付 むつ市の「使用済燃料中間貯蔵施設」】
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◆関西電力という企業の体質
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 関電は最近では、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を、2000年までに、その後2018年中に福井県外で探すと明言していたが、これらの約束を反古にした。2018年には、中間貯蔵候補地提示期限を2020年内と再約束して、大飯原発3、4号機再稼働への西川前福井県知事の同意をとり付けた。しかし、関電は、この約束もまた反故にして、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続したのみならず、2021年2月、期限を2023年末へとさらに先送りして、老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機再稼働への杉本福井県知事の同意を取り付け、6月23日、美浜3号機を再稼働させた。なお、期限の先送りは、むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性を拠り所にしたものと考えられるが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発した。

 使用済み核燃料の中間貯蔵施設を巡るこの間の関電による約束不履行は、今回初めてというわけではない。昔から繰り返されてきた。中間貯蔵施設を県外につくるという関電の約束は、これまで何回も反故にされてきた。

 以下の一連の流れをみると、関電は、何の成算も無く「空約束」をし、平気でそれを反古にする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業であることが裏付けられている。

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◆関西電力の中間貯蔵施設をめぐる動き(降順)
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(16)関電は福井県内に使用済み核燃料の中間貯蔵施設「乾式貯蔵施設」の建設へ
 2024年2月8日、関電は、大飯・高浜・美浜の3原発のすべての敷地内に使用済み核燃料の中間貯蔵施設「乾式貯蔵施設」をつくることの了解願いを福井県に提出した。
 高浜、大飯原発は2か所に設置し、3原発を合わせた保管容量は1530体(700トン)。高浜で最大32基の乾式キャスク(使用済み核燃料768体)、大飯で最大23基(同552体)、美浜で最大10基(同210体)の予定となっている。
 県の了解が得られれば、もっとも規模の大きい高浜原発の1か所目から原子力規制委員会に申請。2025年以降に着工し、27年ごろから順次運用を開始する計画。2030年ごろに県外で操業開始をめざす中間貯蔵施設への円滑な搬出が目的で「より安全性の高い方式で保管できる」としている。
 杉本知事は9日の記者会見で「具体的な提案がやっと出てきた」と発言。

【付 使用済み核燃料の中間貯蔵施設~西川前知事から杉本知事へ】
山崎 たかとし さんFB(2024年2月10日)→こちら より転載。

〇 2013年7月16日 青森県むつ市に建設中の使用済核燃料中間貯蔵施設をめぐるスキャンダルを『朝日新聞』が1面トップで報じた。貯蔵施設の用地買収資金を西松建設が2億円を肩代わりし、地権者との交渉を警備会社会長が行っていたという疑惑だ。
翌17日の続報は、貯蔵施設を誘致したむつ市長(2023年にむつ市長から青森県知事となった宮下宗一郎氏の父。07年に死去)を支援するため、西松建設が1億円を融資していたことを報じ、「浮かび上がるのは、歓迎されざる使用済み核燃料関連施設の立地のために、裏ガネを使って地権者や政治家を黙らせる東京電力のテクニックの数々である」と結んでいる。
〇 2015年 西川知事の後援者の福井商工会議所の川田達男会頭の発言「中間貯蔵を貯蔵ビジネスと意識転換しないと、進まない」。(中日新聞12月24日)
〇 2015年 西川知事「電力消費地にリスクを分担してほしい」。県内立地に改めて否定的な見方を。
施設の経済効果についても「中間貯蔵は管理、監視が中心の仕事。雇用効果があるわけではない」(読売新聞7月2日)
〇 2017年 高浜町町長が敷地内で乾式貯蔵を検討(2004年に美浜町も誘致を表明)。それらを西川知事は決して許さなかった。
〇 2018年12月10日 週刊ダイヤモンドより(編集部、堀内亮)
福井県の西川一誠知事は「原発の“ごみ”までは地元は受け入れない」というスタンスで、中間貯蔵施設は県外で整備するよう求めていた。これは歴代知事の方針を踏襲している。
関電は、13年から関電エリアで中間貯蔵施設の立地候補地になってもらおうと、説明会を各地で延べ7000回以上行ってきた。しかし、中間貯蔵施設はいわば “ 迷惑施設 ”。受け入れを表明する自治体は現れなかった。
対立候補(杉本現知事)は地元で受け入れ容認姿勢
今になって新たな選択肢が浮上した。2019年4月に行われる福井県知事選で有力候補者の杉本達治氏は、県内に中間貯蔵施設を整備するのを容認する姿勢を見せているという。中間貯蔵施設を整備することで、新たな仕事や雇用が生まれ、福井県にお金が落ちるからだ。
通常の選挙ならば、地元企業は現職を支援するのがセオリーであり、「年内に県外の候補地を示すことは西川氏を応援することにつながる」と電力業界関係者。しかし、杉本氏が当選すれば、県内に中間貯蔵施設を整備する選択肢が生まれる。
〇 2019年 杉本副知事が当選。

(15)2024年1月1日になっても、関電は、杉本知事との約束を守らず、老朽原発、美浜3、高浜1、2の運転を継続。知事は10月に稼働受け入れを表明していて、関電との茶番劇が継続。

(14)2023年末の約束期限がもうすぐそこ。2023年12月22日、「高浜原発3号機の再稼働に抗議する!」高浜緊急行動参加者一同より、関電への申入書。
 関電の繰り返す約束違反は、許されるものではありません、関電は、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と約束しながら、それを全て反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と約束し、「期限が守られなければ老朽原発を停止する」としていますが、12月下旬の現在でも候補地を見出すことはできていません。関電は、苦肉の策として、使用済み燃料の一部を、MOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出す計画を示し、「県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としています。しかし、搬出量は、関電の原発で保管する使用済み核燃料のわずか5%程度に過ぎず、詭弁です。さらに、関電は中国電力と共同で、8月、唐突に、中間貯蔵地建設のための調査を上関町に申し入れました。原発建設に反対し、美しい、希少な生態系を守る闘いを進める住民の心情を逆なでするものです。
 現在科学技術の手におえない原発を、無理矢理稼働させようとするから、人々を欺かなければならなくなり、金品にまつわる不祥事や約束違反が発生するのです。
 一方、中間貯蔵に関する対応について、福井県から説明を求められた関電は、10月10日、青森県の再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込んだ工程表を示し、搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討するとしています。関電が示した工程表は、再処理工場の稼働を前提に策定していますが、稼働の見通しはなく、「絵に描いた餅」です。したがって、一旦、乾式貯蔵を始めれば、永久貯蔵への道を開くことになりかねません。それでも、福井県知事はわずか3日後の13日、これを容認しました。「原発の運転継続ありき」の出来レースです。

(13)2023年10月…杉本達治知事は、西村康稔経産相、関西電力の森望社長と県内で相次いで面談し、原発にたまる使用済み核燃料について、関電が示した「県外への搬出計画」の受け入れを表明。知事の同意によって、稼働から40年を超える老朽原発3基の稼働が継続される。関電の森社長は「私自ら先頭に立ち、確実に県外に燃料を搬出していく」と述べた。年内約束の候補地は示されないまま。

【付 関電の使用済み核燃料搬出計画(2023年10月)】
 関電が発表した「使用済核燃料搬出ロードマップ」。これに対しては、「具体性がなく計画通りに進むか不透明」「乾式貯蔵は中間貯蔵施設と同義で、最終処分地になりかねない」「県民に対する説明が不十分で、これで承認はあり得ない」などの疑念が大きい。
27~29年度には福井県内の高浜原発から約200トンをフランスに搬出。搬出する量の積み増しを検討。フランスへ搬出した分は、いずれ、日本に戻ってくる。そのとき、県外に戻すのか。
青森県の再処理工場は2024年度上期に完成させ、2026年度に燃料搬出を開始。ただし、再処理工場の完成は25年以上遅れていて、実現は不透明。(→◆003◆◆082◆
2030年頃に県外で中間貯蔵施設の操業を開始することとし、県外候補地選定を進める。ただし、年限は示されていない。
原発敷地内に乾式貯蔵施設を新たに設けて、一時保管する。「乾式貯蔵施設は(中間貯蔵施設への)搬出を円滑に進めるための施設」としている。しかし、年限が示されていなくて、福井県議会内でも「福井県での永久貯蔵に道を開くのではないか」との懸念の声が上がっている。
原則として貯蔵容量を増やさない。しかし、再処理工場、中間貯蔵施設の完成が遅れれば、貯蔵容量は増えるのではないか。
▼関西電力が示した福井県外への使用済み核燃料搬出ロードマップ(毎日新聞より)

(12)2023年8月…中国電力は関西電力と共同で山口県上関町(かみのせきちょう)に中間貯蔵施設をつくるための調査をすることを提案。関電の電気をつくったことも使ったこともない上関に、関電の使用済み核燃料を押しつけて良いのか。しかも、上関では、長年、原発建設反対の運動が続いている。

(11)2023年6月…森望社長が使用済み核燃料の一部をフランスに搬出する計画を杉本知事に説明。関電は、高浜原発の使用済MOX燃料10トンに普通の使用済燃料190トンを混ぜて行う再処理の実証試験をフランスで行い、合計200トンの使用済燃料をフランスに搬出することをもって「約束は果たされた」とした。福井県知事は判断を保留。詭弁、出まかせ、居直り、ごまかし、その場しのぎ、傲慢、厚顔無恥、嘘つき。(→◆099◆

(10)2022年7月…6月の株主総会で社長に就任した関電の森望新社長(2022年~)は、7月8日、就任あいさつのため、福井県庁に杉本達治知事を訪ね、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補地について、「期限の2023年末までに確定できるよう不退転の覚悟で取り組む」「2023年末までに計画地点を確定できない場合、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機、高浜原発1、2号機は計画地点確定まで運転しないとする方針を引き継ぐ」とし、「既に私自身、国や電気事業連合会の関係者と面談するなど取り組みに着手している」と報告した。これに対し、杉本知事は「あと1年しかない。先頭に立った上で1日も早く計画地点確定を報告してほしい」と釘を刺した。

(9)2021年2月、森本孝社長(2020年3月~)は杉本知事に、候補地提示について「2023年末を最終期限」とし、「もしできなければ美浜3号、高浜1、2号の運転を停止する」と約束し、再び先送り。運転開始40年を超える美浜3号、高浜2.3号の再稼働への同意を求めた。新たな期限が示された結果、老朽原発の美浜3号機、高浜1、2号機が再稼働へ。

(8)2020年12月…電気事業連合会(電事連)が、むつ市の中間貯蔵施設を全国の電力会社で共同使用する検討を始めたと発表。宮下宗一郎 むつ市長は「むつ市は核のごみ捨て場ではない」と反発。関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、県外の候補地を示せなかった。

【付 むつ市の「使用済燃料中間貯蔵施設」】
「使用済燃料中間貯蔵施設」とは、原発で使い終わった核燃料を再び燃料として使用できるように再処理するまでの間、保管しておく施設。核燃料サイクルを前提にした仮置き場とされているが、前提が崩壊している現在、最終的な核のゴミ置き場になる可能性が指摘されている。国内で唯一建設済みの中間貯蔵施設は青森県むつ市にあり(→こちら)、東京電力と日本原子力発電(日本原電)が共同開発。事業主体は、リサイクル燃料貯蔵株式会社(RFS、→こちら)。RSFが県、市に報告したところによれば(2023/9/30)操業開始は「2023年度下期から24年度上期を念頭に準備」。

(7)2020年10月…候補地提示が運転開始40年を超える原発再稼働への同意の前提になると杉本達治知事(2019年~)が表明。県庁を訪れた関電の森本孝社長(2020~22年)にも「県外立地はすでに2年遅れてずっと待たされている。期限は2か月あまりしかない」と苦言を呈した。

(6)2018年12月…関電が候補地を示せず、2020年末に期限を先送り。新たな期限が示された結果、県はこの年に大飯原発3、4号機の再稼働を容認→再稼働(なお、大飯原発3、4号機は2012~13年に当時の民主党政権の下で稼働されたが、その後は定期点検で停止。2013年に新規制基準が施行)。しかし、この期限も反故にされた。

(5)2018年1月…青森県むつ市の中間貯蔵施設が候補地に浮上。むつ市の中間貯蔵施設に関電が出資するという報道であったが、宮下宗一郎むつ市長(2014~23年。その後、青森県知事)は不快感を示し、むつ市の中間貯蔵施設の事業者、東電、日本原電から、関電が出資することはないという確認をとった。

(4)2017年11月…大飯原発3.4号機の再稼働への西川知事の同意を得るために、関電(岩根茂樹社長、2016~2020年)は「2018年中に具体的な計画地点を示す」と明言。

(3)2015年11月…高浜原発3、4号機の再稼働を認めてもらうため、関電(八木誠社長、2010~16年)は2020年までに中間貯蔵施設をつくり、使用済燃料を福井県外に持ち出すことを西川一誠知事(2003~19年)に約束。具体的には、2020年頃に計画地点を確定し、2030年頃に2千トンU規模で操業開始するとし、記者会見で「福井県外の当社管内が基本」「(他の電力会社との)共同建設も含め、あらゆる可能性を検討する。」と述べた。

(2)1998年7月…関電(秋山喜久社長)が栗田知事に「中間貯蔵施設を県外に建設したい。その候補地を2000年までに選定する」と表明。関電側は燃料貯蔵プールのリラッキング、つまり燃料と燃料の隙間を狭くして、燃料プールの容量を増やすことを認めてもらうことが目的であった。

(1)1997年4月…もんじゅのナトリウム漏洩事故(1995年12月)、20万を超える県民の署名などをきっかけに、福井県の栗田幸雄知事(1987~2003年)は、使用済燃料の中間貯蔵施設を県外で建設するよう関電(秋山喜久社長、1991~99年)に要請。

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