◆関西電力 闇歴史◆056◆

┌─────────────────────────────────
◆使用済み巨大蒸気発生器(1基約300トン)、どうやって処理するのか?
 福井県内には既に計33基も積み上がっているが、
 国内に処理可能な施設はない!
 【付 蒸気発生器の図解、これまでの取り替え例】
 【これまでの蒸気発生器伝熱細管破断・破裂事故】

└─────────────────────────────────

 蒸気発生器は、加圧水型の原子炉で温めた1次冷却水の熱を2次系の水に伝えて蒸気を生む熱交換器。原子炉容器1基について3~4基の蒸気発生器がある。1基は長さ約20メートル、直径約4~5メートルと巨大な円筒形の金属で、重さは約300トンになる。日本では、三菱重工神戸造船所などが製作し、輸出もしてきた。
 ただ、高温、高圧の水が流れるので、破損の危険が大きく、安全のために取り替えられることもあり、加圧水型原発のアキレス腱といわれる。原子炉で暖められた水(160 気圧 320℃)を蒸気発生器の中にある直径約 2cm の細管を通してその周りの水を沸騰させる。1基3000本ほどの細管の中を高圧高温水が流れるので、細管は多くの傷が付き、 1991 年美浜原発 2号機でとうとう細管がギロチン破断して多くの放射能が環境に放出されてしまった。このときは緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した。(◆002◆)。それ以来、関電にとって想定外だった蒸気発生器の取り替えが始まった。蒸気発生器は、原子炉からの一次冷却水に汚染されているので、放射能が高く危険。
(蒸気発生器細管のトラブル→◆021◆

▼1:原子炉容器、2:蒸気発生器、3:循環ポンプ、4:加圧器(◆019◆

 関電の原発が集中している福井県では、廃炉になる原発も増え、使用済みの巨大な蒸気発生器が原発敷地内に既に33本も積み上がっている。1990年代、大飯3、4号機と高浜3、4号機を除く7基で、細管損傷などのトラブルが多かった蒸気発生器を改良型に相次いで交換した。これらの放射性廃棄物をどうやって処理するのか、国内に処理可能な施設はないだけに、今後の課題は大きい。これまでの規制では、原発の放射性廃棄物は国内ですべて処分するという原則であったが、政府は、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和することを検討している。国内に専用の処理施設がなく、発電所の敷地内で保管したままだと作業スペースが圧迫され、廃炉の妨げになると経産省は説明する。アメリカ合衆国やスウェーデンでは放射性廃棄物を国外から受け入れ、除染や溶融をしたうえで、金属素材などとして再利用するビジネスが確立しているという。
(朝日新聞 2019/9/19 →こちら

 放射性廃棄物の処理ができないままの原発推進は、まさに「後は野となれ山となれ」の典型。蒸気発生器のほかにも、1996年以降は、原子炉容器の上ぶたも応力腐食割れの予防策などのため全11基で取り換え、蒸気発生器と同じ保管庫に入れている。
金にまかせて海外に運び出すか
日本に経済力のある間はそれも可能かも
他の不都合な条件での交換取引を迫られるかも)、
そのまま積み上げて次の世代に先送りするか
となるだろう。二酸化炭素を出さないと言いながら、猛毒放射能を増やし続ける原発には、未来はない。近い将来の地球のためには、脱原発、脱炭素以外の道はない。

┌─────────────
巨大蒸気発生器、処分は 県内に計33基 国内に処理可能施設なし /福井
└─────────────
毎日新聞 2021/12/18 →こちら
▼放射性廃棄物となった蒸気発生器の数

┌─────────────
わが国における蒸気発生器取り替えの例
└─────────────

こちらのページから、pdfファイルATOMICA_02-02-03-10[422 KB]をダウンロードできる
原子力百科事典 ATOMICA(国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構)

┌─────────────
蒸気発生器の取り替え…以下のSG形式の内容は分かりません。
└─────────────
 ↓ 運転開始、SG取り替え (SG形式)
・美浜3号機…1976/12、1996/ 8~97/ 4(51→54F)、
・高浜1号機…1974/11、1995/12~96/ 8(51→54F)、2011/ 1~定期点検中
・高浜2号機…1975/11、1994/ 1~94/ 8(51→52F)、2011/11~定期点検中
・高浜3号機…1985/ 1、取り替えなし(51F →細管損傷多発)
・高浜4号機…1985/ 6、取り替えなし(51F →細管損傷多発)

【参考】
わが国のPWR発電所の蒸気発生器(新設時)の仕様
軽水炉蒸気発生器伝熱細管の損傷
こちら

【参考】
 三菱重工は、高浜原発3、4号機の蒸気発生器6基(各3基)の生産、取り替えを受注(2023/4/26発表)。神戸造船所において順次製造し、現地での取替工事を実施する予定。工事は2026年6月~27年2月の予定。3、4号機では、蒸気発生器の伝熱管の損傷が相次いで見つかっていた。
 蒸気発生器は、全高が約21m、胴部の外径が最大で約5mあり、重量は約340トン。加圧水型原発(PWR)を構成する機器の中でも特に高い安全性と信頼性が求められ、大型構造物であるにもかかわらず0.01mm単位での加工精度が必要とされる。
 2023/4/24に県や高浜町が蒸気発生器の交換を了承したことを受けて、関電は規制委に、高浜3、4号機の40年超え運転延長を申請した。

┌─────────────
これまでの蒸気発生器伝熱細管破断・破裂事故
└─────────────
(a) 1975. 2.26 ポイントビーチ 1 号炉(アメリカ合州国)
(b) 1976. 9.15 サリー2 号炉(アメリカ合州国)
(c) 1979. 6.25 ドール 2 号炉(ベルギー)
(d) 1979.10.2 プレーリーアイランド 1 号炉(アメリカ合州国)
(e) 1982. 1.25 ギネ(アメリカ合州国)
(f) 1984 .5.16 フォートカルホーン(アメリカ合州国)
(g) 1987. 6.15 ノースアンナ 1 号炉(アメリカ合州国)
(h) 1989. 3. 7 マクガイア 1 号炉(アメリカ合州国)
(i) 1991. 2. 9 美浜 2 号炉(日本)
(j) 1993. 3.14 パロベルデ 2 号炉(アメリカ合州国)
(k) 2000. 2.15 インディアンポイント 2 号炉(アメリカ合州国)
【出典】(以下、両方とも同じです)
2022年12月16日(金)老朽原発40年廃炉訴訟
原告 準備書面(97)(中性子照射脆化:専門家意見書に基づく反論・主張の補充)
こちら
20221202意見書(中性子照射脆化に関する意見書)甲E第67号証
こちら

◆055◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆057◆