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◆高浜原発再稼働を許すな!

【2017年4月22日,京都キンカンで配布。】

高浜原発再稼働を許すな!

◆去る3月28日、大阪高裁は、高浜原発3.4号機の運転停止仮処分の抗告審で、関電の主張のみを追認し、高浜原発運転差止め決定をくつがえしました。圧倒的多数の脱原発、反原発の民意を踏み躙る決定です。関電の主張では、原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と言う“新規制基準”を「安全基準」とし、原発に「絶対的安全性を求めるべきではない」とし、また、「原発は安全であるから、“新規制基準”に避難計画は不要」としています。「新安全神話」を作ろうとするものです。関電や原発産業の利益のために、人の命と尊厳をないがしろにするものです。

◆今、ほとんどの世論調査で、脱原発、反原発の声は原発推進の声の2倍を超えています。国際的にも、イタリア、ドイツに続いて、リトアニア、ベトナム、台湾が脱原発を決意し、アメリカも原発縮小に向かっています。それは、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の大惨事を経験して、原発は、科学技術的に人類の手に負えるものでなく、経済的にも成り立たないことを悟ったからです。

原発は、現代科学技術で制御できない

◆高浜原発再稼働の風雲が急を告げる今、原発は現代科学技術で制御できず、人類の手に負える装置でないことを再確認するために、人類の手に負える装置でないと考える理由を再度整理してみました。

1. 核反応エネルギーは化学反応エネルギーの100万倍

◆人類の生存している環境は化学反応で維持され、化学反応はeV(エレクトロンボルト)という単位のエネルギーのやりとりによって生じる。例えば、石油を燃すと最高で数1000℃を得ることが出来るが、これがeVの世界である。生体内化学反応の多くは0.1 eV 以下の世界、すなわち100℃までの世界で、たとえば、たまごのタンパク質は70℃前後で固まる。

◆一方、核反応ではMeV(M(ミリオン)=100万)という単位のエネルギーがやりとりされる。例えば、プルトニウムは約4 MeVのエネルギーを持つアルファ線を出すが、原理的には、これによって100万℃に近い温度が得られる。これがMeVの世界である。

◆このことは、核反応1反応によって100万に近い化学反応が生じることを意味し、核反応は化学反応によって簡単に制御できないことを意味する。したがって、原子炉は大量な水で冷やし続けなければならず、水がなくなると、あっという間に核燃料や原子炉構成材料が溶融する。体内で放射線が出る内部被曝では、1000万に近い生体内結合が切断されることになる(実際には、核反応エネルギーの一部しか結合切断に使われないので、もっと少ない)。

◆核反応エネルギーを閉じ込めて置くことは極めて困難で、一つ間違えば、大惨事になる。重大事故時には、膨大なエネルギー(核反応熱 崩壊熱)によって核燃料や被覆材などの原子炉材料の熱溶融、水素ガスの発生・爆発あるいは水蒸気爆発を引き起こし、大惨事(メルトダウン、メルトスルー)に達しかねない。化学反応エネルギーでは、このような事態にはならない。

2. 原発事故の特徴;瞬時に進行し、時間的にも、空間的にも通常事故とは桁違いに深刻な被害

◆1で述べたように、核反応は膨大なエネルギーを出すので、原発で冷却水が途絶えると、瞬時に(火災などとは比較にならない速度で)重大事故に至る。そのように瞬時に進行する事故への対応は至難で、進み始めた事故を止めることは極めて困難。いわゆる「人為ミス」は避けえない。

◆放射性物質による被害は長期におよぶ。火事は長くても数日で消火できるが、放射性物質は、半減期に従って消滅する[放射線を出して他の物質(核種)に変わる]まで放射線とそれによる熱を発生し続ける。代表的な放射性物質の半減期は、プルトニウム239で2万4千年、ネプツニウム237で214万年、セシウム137で30.7年、ストロンチウム90で28.8年、ヨウ素131で 8.02 日。放射性物質は、1半減期で1/2に、半減期の10倍で約1/1000、13.3倍で約1/10000、20倍で約1/100万に減少する。例えば、プルトニウム239を1/10000に減少させるには約32万年かかる。半減期の短い物質は早く崩壊するから、物質の量が同じであれば、時間当たりにすれば多くの放射線を出す。

◆放射性物質による被害は長期におよぶから、原発事故では長期の避難を強いられ、住民は故郷を奪われ、家族のきずなを断たれ、発癌の不安にさいなまれる。通常の災害では、5年も経てば、復興の目途はある程度立つが、原発事故は、生活再建の希望も奪い去る。福島事故では、4年経った1昨年から、絶望のために自ら命を絶たれる避難者が急増していると報道されている。

◆放射性物質は長期にわたって放射線を出し続けるから、高放射線のために事故炉の廃炉は困難を極める。また、放射線による熱発生のため、冷却水が途絶えると、核燃料が再溶融し、再臨界に達する可能性もあり、長期間冷却水を供給し続けなければならない。

◆重大事故によって放出された放射性物質は、事故炉近辺を汚染させるだけでなく、風によって運ばれた後、雨によって降下するから、汚染地域は極めて広範囲に広がる。福島事故でも、約50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、約200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が降下した。チェルノブイリ事故では、日本でも放射性物質が検出されている。海に流出した放射性物質は海流に乗って広範囲の海域を汚染する。福島の放射性物質はアメリカ西海岸にも到達しようとしている。

3. 原発は、長期保管を要する使用済核燃料、放射性廃棄物を残す

◆原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成する。したがって、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると新燃料と交換せざるを得なくなり、そのため、使用済み核燃料がたまる。現在、日本には使用済み核燃料が17,000 トン以上たまり、原発の燃料プールや六ケ所村の再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっている。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になる。使用済み核燃料を消滅させる方法はない。

◆ところで、国の計画では、全国の使用済み核燃料は再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていた。しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていない。危険極まりないこの工場の運転は不可能と言われている。

◆福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンであるが、その7割近くがすでに埋まっている。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなる。なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかである。

◆一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されているが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もない。

◆数万年を超える長期の保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければならない。

4. 原子燃料は無尽蔵で、燃料枯渇が原発廃止の理由にならないから厄介

◆地球表面の土壌・岩石中のウラン、トリウムの平均濃度は1 ppm ( 1 t に 1 g)であり、富鉱では、0.3~0.7% (1 t に 3~7 kg)である。このように、核燃料物質は大量に存在する。ただし、ウラン[238U(約99.3%)、 235U(約0.7%)]を使用するには、膨大な費用を要する同位体濃縮(235U濃度を高めること)が必要である。

◆一方、原発を運転すれば、プルトニウムが生成する。プルトニウムは、放射性物質として、化学物質として、極めて危険な元素であるが、被曝、被毒(避けられない)を覚悟すれば、使用済み核燃料から容易に分離抽出でき、核燃料を安上がりに製造できる。したがって、政府、財界、電力は、さらに運転が難しく厄介なプルサーマル炉を求め、プルトニウムを作り、取り出す高速増殖炉と再処理工場が必要と考えている(化学、化学工学は、高速増殖炉、再処理工場を操業できるほど発達していない!)。

◆このように、核燃料は無限と言って良いほど存在する。したがって、燃料枯渇が原発廃止の理由にならない。

◆エネルギーは麻薬のようなものであるから、それを欲する限り、麻薬の製造装置である原発から脱却できないだけでなく、上限なしに原発を増設することになるから、厄介である。

この意味で、
原発製造企業=麻薬生産者、
電力会社=麻薬の売人、
原発賛成の人=麻薬患者である。

書評

『なぜ、「原発で若狭の振興」は失敗したのか』
(著者:山崎 隆敏)を読んで

橋田 秀美(若狭の原発を考える会)

◆若狭を隈無く歩いてアメーバデモやチラシ配布をしながら、「原発のない若狭をめざしましょう」と訴えてきた私は、この本の題名に非常に惹かれて一気に読んだ。

◆「国策である原発を受け入れたのは苦渋の選択だった」と若狭の首長たちは口をそろえて言う。故に「原発マネーで生活が良くなるだろうし、そうであって当たり前。」そう期待していた。それがどうだろう、若者はいなくなり、箱物ばかりが建設されるが観光客はどんどん減っていき維持費に窮している。自立できる産業は衰退の一途。なぜこのような事になったのか、著者はいろんな観点から読み解いている。若狭の各自治体の財政を数字で表し、決して原発マネーで財政が潤うわけではないことを見える化して示しているのは説得力がある。

◆「15基もの原発を造らせた福井県は愚かなのか?そうではない」と、原発立地住民の抵抗の歴史も紹介しているが、高浜の漁村の区長さんの言葉が胸にしみる。「今のままで十分暮らしていける。平和な村を壊してくれたら困る。土地を売って金をもらっても一時的なもの・・・結局は生活基盤を失くすだけ。こういった投機的な火遊びを取り除くために、今こそ立ち上がって反対しよう。」この論理が明快ですごく倫理的であるとの指摘はまったく同感だ。経済や科学ばかりが主張されるが、そこに人の命や生活がある以上、倫理的な面からの考察が絶対必要だと思う。

◆そして、「私たちは、どんな社会、どんな国をめざすのか未来を語らなければならない。」と提言している。これは、反原発運動のみならず、私たちが生きていく社会生活において常に基本として問われる姿勢ではないだろうか。

◆原発全廃をめざす者にとって、これからの運動へのヒントが盛りだくさんに示されている。若狭を愛してやまない筆者の熱い思いも感じられる渾身の1冊である。

集会・デモの呼びかけ

◆大阪高裁の不当決定を受けて、高浜原発再稼働の風雲が急を告げています。その状況の中で、4月2日、緊急に「高浜原発再稼動阻止行動についての相談会」が原子力発電に反対する福井県民会議の呼びかけで開かれ(於;京都)、下記の緊急行動を、「高浜原発うごかすな!」実行委員会の主催で行うことが決定されました。

なお、5月のリレーデモ、福井集会の詳細は変更されることがあります。今後の情報にご注意ください。

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4月27日(木)大阪行動

[1]「4.27高浜原発うごかすな!関電包囲全国集会」

◆日時;4月27日(木)16時30分より18時まで
◆場所;大阪関電本店前(大阪市北区中之島)
◆関電への申入れも行います。

[2] 御堂筋デモ

◆集会終了後、「うつぼ公園(大阪市西区)」に徒歩で移動し、18時30分にデモに出発、20時前に終了予定。
当日は週日ですから、集会に間に合わない方も多数あると考えられます。デモへの途中参加、大歓迎です。

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5月7日(日)高浜行動

[1] 高浜原発ゲート前抗議行動

◆日時;5月7日(日)12時、高浜原発先の展望台に集合。
◆高浜原発ゲート前にデモで移動の後、12時30分より抗議行動(関電への申入れ)。
◆後、高浜町文化会館へ移動。
当日9時頃、京都駅、大津駅、神戸駅、福井駅などからバス配車の予定。乗車ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。東京からも別途バスが出ます(6日発)。

[2]「5.7高浜原発うごかすな!現地集会」

◆日時;5月7日(日)14時より15時30分まで
◆場所;高浜町文化会館

[3] 高浜町内デモ

◆集会終了後、15時50分に高浜町文化会館より高浜町内デモに出発、16時50分頃、JR若狭高浜駅前で終了予定。
◆その後、高浜駅2階で意見交換会(お時間のある方は、ご出席ください)。
7日は、65人分の宿泊を予約しています。
翌日(8日)のリレーデモへの参加などのために、宿泊ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。

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5月8日(月)~12日(金)
高浜~おおい~小浜~若狭~美浜~敦賀~越前~福井
リレーデモ

◆5月 8日(月)9時高浜町申し入れ 9時20分デモ出発 13時おおい町申し入れ 16時小浜市申し入れ 17時終了
◆5月 9日(火)9時小浜市役所からデモ出発 11時若狭町申し入れ 14時美浜町申し入れ 16時原子力規制委員会(敦賀)申入れ 17時終了
◆5月10日(水)9時敦賀市申し入れ 9時20分デモ出発 11時南越前町申し入れ 16時越前市申し入れ 17時終了
◆5月11日(木)9時越前市役所からデモ出発 11時池田町申し入れ 16時鯖江市申し入れ 17時終了
◆5月12日(金)9時鯖江市役所からデモ出発 11時越前町申し入れ 15時福井市入れ 16時福井県申し入れ
下記「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」に合流

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5月12日(金)福井行動

[1]「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」

◆日時;5月12日(金)18時より19時まで
◆場所;福井市中央公園

[2] 福井市内デモ

◆集会終了後、7時に福井市中央公園より県庁包囲デモに出発、20時前に西武デパート前で終了予定。

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◆バス乗車や宿泊の申込みは「高浜原発うごかすな!」実行委員会・橋田(090-5676-7068)まで

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大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2017年4月22日発行

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆原発事故!すわっ!避難なんてごめんです!京都府北部集会

◆4月16日は宮津市「みやづ歴史の館」で「原発事故!すわっ!避難 なんて ごめんです!」京都府北部集会を開きました。大飯原発差止訴訟の出口治男弁護団長による『最近の原発裁判,京都地裁の脱原発訴訟について』の報告後,昨年11月に京都地裁で陳述されたお二人にお話ししていただきました。

◆『自然豊かな宮津の暮らしを守りたい』吉田真理子さん(原発なしで暮らしたい宮津の会),『原発事故から逃げられる?』池田豊さん(自治体問題研究所 事務局長)からそれぞれ熱い思いがあふれました。

◆宮津市では,天橋立を世界遺産にしたいという運動をしています。世界遺産とすぐ近くの原発とは共存できません。

主 催:京都脱原発原告団
共 催:原発なしで暮らしたい宮津の会,京都自治体問題研究所,京都自治労連,宮津市職員組合
受付配付PDF資料:→こちら[929 KB](ただし,池田さんのパワポ縮刷り部は省略。吉田さんは元々パワポ縮刷りなし)。

◆避難解除で帰還強要するな!◆高浜原発を再稼働するな!

【2017年4月14日,京都キンカンで配布。】

政府、3月31日、4月1日に福島4町村の避難解除
“日程ありき”で、避難者の高放射線地域への帰還を強いる政府
避難者の尊厳をないがしろにするものです

◆政府は、避難に関して、1年間の空間放射線量が20ミリシーベルト(mSv/y)以下になった地域の避難指示を解除し、避難者に帰還を強要しています。この線量は、一般市民の線量限度1 mSv/yの20倍であり、チェルノブイリの移住義務基準5 mSv/yに比べても極めて高いと言えます。

◆政府は、3月31日に福島県飯舘村、川俣町、浪江町に出していた避難指示の一部を解除、4月1日には富岡町でも解除しました(「居住制限区域」あるいは「避難指示解除準備区域」であった。右図参照)。これは、政府が掲げた「2017年3月末までに」という目標に沿うもので、“日程ありき”、“まず解除ありき”の決定です。避難指示が解除された地域では生活基盤の整備や、医療、介護などの生活関連サービスも復旧したとするには程遠い状態にあります。生活用水への不安もあります。したがって、帰還の意志のある住民は少数にとどまり、ほとんどが高齢者です。例えば、昨年の住民意向調査では、浪江、富岡両町で5割以上が「戻らないと決めている」と答え、30代以下で7割近くが帰還を断念しています。実際、全町避難の自治体として、2015年9月に初めて避難指示が解除された楢葉町では、今年3月時点の帰還率が11%(約740人)で、その中50歳以上は8割超を占めています。

帰還困難区域…放射線量が非常に高いレベルにあることから、バリケードなど物理的な防護措置を実施し、避難を求めている区域。
居住制限区域…将来的に住民が帰還し、コミュニティを再建することを目指して、除染を計画的に実施するとともに、早期の復旧が不可欠な基盤施設の復旧を目指す区域。
避難指示解除準備区域…復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民が帰還できるための環境整備を目指す区域。

◆このような状況でも、強引に帰還を進める政府は、帰還に応じない人への支援の打ち切りの恫喝も行っています。「居住制限区域」、「避難指示解除準備区域」での東電の慰謝料支払いは、避難指示解除後1年までとなっていましたが、解除の時期にかかわらず、一律2018年3月に打ち切ることに変更されました。政府は「帰還は強制でなく、帰りたい人に帰るという選択肢を用意するだけ」といいますが、金銭面から帰還を強要しているのです。

◆一方、福島県を始め多くの自治体が、政府の意を受けて、自主避難者支援の打ち切りを決定しています。政府と福島県は、原発事故によって福島から逃れた自主避難者への住宅の無償提供を、3月末で打ち切りました。自主避難者は、現在の住宅から立ち退きを求められたり、新たに多額の家賃の発生に見舞われるなど、言い知れぬ不安にさいなまれ、悲鳴を上げています。避難者は、原発事故が無ければ普通に生活していた人達であることを忘れてはなりません。

◆自主避難者は、避難指示区域でない区域から子供の被爆を避けるためなどの理由で避難した人々で、福島県内外の自主避難者は約1万500世帯、約2万7000人に上ります自主避難者の多くの今後の住居が未定のままです。東電からの定期的な賠償を受けられない自主避難者にとって、住宅の無償提供は唯一の支援策・命綱であり、とくに母子避難者にとって、打切りは経済的な困窮に繋がり、子供の未来を断ち切る事態にもつながります。

◆なお、避難継続を希望する世帯を対象に、9道府県が財政負担などを伴う独自策で支援することを表明しています。しかし、他の多くの自治体は、公営住宅を希望する自主避難者の入居要件緩和を求めた国の通知にならった支援内容にとどまっています。自主避難者の住宅支援は避難先の選択で格差が生まれることになります。

◆以上の避難指示解除、自主避難者支援打ち切りの何れも、東電や政府の賠償負担や生活支援支出の軽減のためであり、責任回避のためです。人々の安全や生活の安寧を優先する考えはいささかもありません。

原発事故での被曝を避けるための避難生活は、断じて「自己責任」ではありません。避難者の生活を保障する責任があるのは原発を推進してきた政府であり、東電です。避難者の切り捨てを許してはなりません。

◆4月4日、原発事故被害者の救済を先導すべき立場にある、今村復興相が記者会見で、自主避難者の帰還について、「どうするかは本人の責任」とし、国の責任にを問う質問に「裁判でも何でもやればいい」と激高しました。避難者への配慮や現状(とくに、除染が一部地域の表層土壌のみにとどまり、高線量であるという現状)への理解に欠け、一方的に帰還に追い立てる政府の方針を露呈した発言です。立場の弱い避難者を切り捨て、賠償や支援の打切りを企む政府の姿勢が表れています。福島事故は終息したとして、オリンピックなどを利用して、経済的利益だけを得ようとする安倍政権の本音が漏れたのです。今村復興相は「故郷を捨てるのは簡単だが、戻って頑張っていくんだとういう気持ちを持っていただきたい」とも発言しており、避難者の苦悩に寄り添う気持ちは全くありません。

◆避難した人たちが前橋地裁に訴えた損害賠償請求訴訟では、先月、国と東電の過失を鋭く指摘した判決が出ています。最低でも、政府と東電には、住民が安心できる生活を取り戻すまで寄り添う責任があります。

関電は、5月中の高浜原発再稼働を企んでいます
断固阻止の大行動に起ちましょう!

◆去る3月28日、大阪高裁は、高浜原発3.4号機の運転停止仮処分の抗告審で、政府と関電の主張のみを追認し、圧倒的多数の脱原発、反原発の民意を踏み躙る決定を出しました。原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と言う“新規制基準”を「安全基準」とし、この「安全基準」に適合しているとして、高浜原発3.4号機の運転差止め仮処分を取り消したのです。また、原発に「絶対的安全性」を求めるべきではないとしています。人の命と尊厳をないがしろにするものです。さらに、住民が“新規制基準”に不備があるとするのであれば、それを住民側が立証すべきだとして、「立証能力が無ければ泣き寝入りしろ」と言わんばかりの、裁判制度を根底から揺るがす要求をしています。

◆一方、原発重大事故時の住民避難について、「“新規制基準”では、多重防護の考え方に基づいて第1層から4層までの安全確保対策が講じられていて、炉心の著しい損傷を防止できる確実性は高度になっている」とし、「第5層(避難計画など)は、重大事故は起こりえない原発で、放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態をあえて想定して、講じられる対策である」としています。その上で、第5層の対策は、電力会社だけでなく、国、地方公共団体が主体となって適切に実施されるべきものであるから、“新規制基準”が避難計画などの原子力災害対策を規制対象にしていないのは妥当であるとしました。大阪高裁は、新規制基準の下では、原発は事故を起こすはずがないという視点(すなわち、「新安全神話」)に立ち、不可能に近い被曝なしでの避難、長期の避難生活の悲惨さについて議論することを避けました。避難の問題を議論したら、原発の運転をできないことは、福島やチェルノブイリの大惨事によって実証されているからです。福島事故から6年、チェルノブイリ事故から31年経った今でも避難者の大半が故郷を失い、家族のきずなを引き裂かれ、心労と悲観、病苦から多数の方が自殺され、癌に侵され、発癌の不安にさいなまれていることを、大阪高裁は全く無視しています。このような決定に、断固とした抗議と反撃をしなければなりません。

◆この全く不当な大阪高裁の決定を受けて、関電は、多くの手続きを端折って高浜原発4号機再稼働の準備を進め、5月中の再稼動を企んでいると報道されています。許してはなりません。4号機が3号機に先行して再稼働されると考える理由は、3号機は、昨年12月から4月中旬までの予定で定期検査に入っており、定期検査終了まで燃料装填作業に入れないためです。4号機は、次の定期点検時期を迎えておらず、燃料装填ができる手前の段階にあります。

◆なお、私たちの再稼働反対の声が反映されなかったとき、高浜原発4号機は次のような流れで再稼働されると考えられます。この流れの中では、福井県や高浜町にはお伺いを立てても、滋賀県、京都府、高浜原発周辺の市町村の要望は全く無視されます。

関電が大型クレーン倒壊事故(1月20日)を受けた安全点検結果を高浜町および福井県に報告。
すでに、4月7日に報告している。藤田福井県知事は「改善が実施されたと受け止めたい」として、この報告を評価した。

関電が再稼働について福井県に説明。
西川福井県知事は、改めて県議会などでの地元同意手続きを取る必要はないとの考えを示している。

原子炉へ核燃料を装填。157体の装填に5日程度を要する。

原子炉格納容器の気密性、冷却水配管や弁からの漏洩などの検査。冷却水の温度と圧力を通常運転に近い状態まで上昇させ、問題が無ければ再稼働。極めて重要であっても点検が困難な圧力容器の脆化(ぜいか)、冷却細管の減肉などの詳細な検査は実施しない。

◆上記の状況の中で、4月2日、緊急に「高浜原発再稼動阻止行動についての相談会」が原子力発電に反対する福井県民会議の呼びかけで開かれ(於;京都)、下記の緊急行動を、「高浜原発うごかすな!」実行委員会の主催で行うことが決定されました。

◆なお、5月のリレーデモ、福井集会の詳細は変更されることがあります。今後の情報にご注意ください。

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4月27日(木)大阪行動

[1]「4.27高浜原発うごかすな!関電包囲全国集会」

◆日時;4月27日(木)16時30分より18時まで
◆場所;大阪関電本店前(大阪市北区中之島)
◆関電への申入れも行います。

[2] 御堂筋デモ

◆集会終了後、「うつぼ公園(大阪市西区)」に徒歩で移動し、18時30分にデモに出発、20時前に終了予定。
当日は週日ですから、集会に間に合わない方も多数あると考えられます。デモへの途中参加、大歓迎です。

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5月7日(日)高浜行動

[1] 高浜原発ゲート前抗議行動

◆日時;5月7日(日)12時、高浜原発先の展望台に集合。
◆高浜原発ゲート前にデモで移動の後、12時30分より抗議行動(関電への申入れ)。
◆後、高浜町文化会館へ移動。
当日9時頃、京都、滋賀などからバス配車の予定。乗車ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。東京からも別途バスが出ます(6日発)。

[2]「5.7高浜原発うごかすな!現地集会」

◆日時;5月7日(日)14時より15時30分まで
◆場所;高浜町文化会館

[3] 高浜町内デモ

◆集会終了後、16時に高浜町文化会館より高浜町内デモに出発、16時40分頃、JR若狭高浜駅前で終了予定。
◆その後、高浜駅2階で交流会(お時間のある方は、ご出席ください)。
7日は、65人分の宿泊を予約しています。
翌日(8日)のリレーデモへの参加などのために、宿泊ご希望の方は早めにお申し込みください(4月25日一次締め切り、4月末日締切)。

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5月8日(月)~12日(金)
高浜~おおい~小浜~若狭~美浜~敦賀~越前~福井
リレーデモ

◆5月 8日(月)09:00高浜町申し入れ 09:30デモ出発 11:30おおい町申し入れ 13:00おおい町出発 16:00小浜市申し入れ 17:00終了 小浜市宿泊
◆5月 9日(火)09:00小浜市役所出発 13:00若狭町申し入れ 16:00美浜町申し入れ 16:30終了 美浜町宿泊
◆5月10日(水)09:00美浜町出発 13:00敦賀市 申し入れ 13:30敦賀市内街宣とチラシ配布 16:30終了 敦賀市宿泊
◆5月11日(木)09:00敦賀市役所出発 11:00南越前町申し入れ 16:00越前市申し入れ 16:30終了 越前市宿泊
◆5月12日(金)09:00越前市出発 11:00越前町申し入れ 13:00鯖江市申し入れ 16:00福井市申し入れ 16:30福井県申し入れ。
下記「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」に合流

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5月12日(金)福井行動

[1]「5.12高浜原発うごかすな!福井集会」

◆日時;5月12日(金)17時より18時30分まで
◆場所;福井市中央公園

[2] 福井市内デモ

◆集会終了後、16時30分に福井市中央公園より県庁包囲デモに出発、20時前に福井市中央公園で終了予定。

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◆バス乗車や宿泊の申込みは「高浜原発うごかすな!」実行委員会・橋田(090-5676-7068)まで

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大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2017年4月14日発行

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆第33準備書面関係 原告提出の書証

証拠説明書 甲第341~342号証[93 KB](第33準備書面関係)
2017年4月10日

◆原告第33準備書面
行政文書紛失にかかる国に対する求釈明

原告第33準備書面[364 KB]

2017年(平成29年)4月10日

被告国に対する求釈明

原告らは、次回(5月9日)の口頭弁論において、活断層や活断層から発生する地震動を事前に想定できないことについて証拠とともに弁論する予定であるが、この点について、想定外の巨大な地震動が発生し、原発が大きく損壊し、いくつかの原子炉については、いまだにその修理が終わったという報告すらなされていない典型事例として「2007年中越沖地震」がある。

この地震の震源域については、地震前の2003(平成15)年6月、東京電力株式会社が旧原子力安全保安院の指示により作成し、原子力安全・保安院に提出した、柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の評価に関する報告書(いわゆる「15年報告」)が存在する。

「15年報告」については、東京電力株式会社が2007年中越沖地震の後の平成19年12月21目付で作成し、原子力安全・保安院に提出したと思われる「平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の再評価に関する調査結果について」で、その存在と旧原子力安全・保安院への提出が明記されている。引用すると同文書には以下のように書いてある。

(2)平成14年7月の原子力安全・保安院による海域活断層再評価指示から中越沖地震発生(H19.7.16)まで

(1) 平成14年7月、原子力安全・保安院から、当時行われていた北海道電力株式会社泊地点における安全評価において、褶曲を考慮したことを踏まえ、電力各社においても、海域活断層再評価を実施するよう口頭にて指示があり、当社は、自社の記録の再解析、地質調査所、石油公団から開示を受けた記録に基づく再解析等を実施し、F―B断層については、褶曲構造を考慮すると、20キロメートル(従来の認識は、最大8キロメートルの断層)の長さを有する活断層の可能性があるとの再評価を行った。

しかし、F―B断層が活断層であると仮定し、発電所敷地への地震動の影響について、当時の地震動を評価する標準的な方法である「大崎スペクトル」を用いた評価を行った結果、すべての周期帯において、重要な設備の設計に用いる基準地震動S2を、余裕を持って下回るものであったことから、安全上の影響はないと判断した。

当社は、以上の調査結果について、平成15年6月、原子力安全・保安院に書類で報告(以下、この報告を「15年報告」という)したが、新潟県、柏崎市、刈羽村、および地域の皆さまへの説明、さらにはプレスへの公表は行わなかった。

ところが、この「15年報告」について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、原子力規制委員会に情報公開請求したところ「取得しておらず、保有していないため。」との理由で不開示決定が出た(平成28年12月26目付原規規発第1612262号[1 MB])。

そこで、解体前の原子力安全・保安院が所属していた資源エネルギー庁に同様の情報公開請求を求めたところ「保有していないため」との理由で不開示決定が出た(平成29年2月14日 20170116公開資第1号[2 MB])。

実際に発生し、原発が大きな損害を被った地震の直前の時期に、震源海域周辺の「活断層」について、発電事業者が行った検討結果の報告文書は、原発において将来発生する地震を、人類の現在の科学において予測可能であるか、ということを推認するためには、極めて証拠価値の高い文書である。

このような、証拠価値の高い文書が、客観的には、原子力安全・保安院と、原子力規制委員会によって、証拠隠滅されたに等しい状態になっているのが現状である。

そこで、被告国に対して以下の点の釈明を求める。

1「15年報告」を政府傘下にある東京電力株式会社から再度取得する等して、本件の証拠として提出されたい。

2 原発の安全性に関して、行政機関である原子力安全・保安院が発電事業者に対して報告を求めた件について文書で提出を受けた以上、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条2項の「行政文書」に該当すると思われるが、何故紛失したのか、経緯を説明されたい。

また、いずれにせよ、上記のような資料の紛失が判明しても、公に何の発表もせずに平気でいる原子力規制委員会は、東日本大震災前の原発行政の隠ぺい体質を何ら改善しておらず、原発について適正な規制などしようもないことは付言する。

以上

◆高浜原発の再稼働を許さず、廃炉に追い込みましょう

【2017年3月31日,2017年4月上旬に若狭、舞鶴で配布。】

原発は安全上も、経済的にも成り立たない装置です
動いていなくても電気は足りています
高浜原発の再稼働を許さず、
廃炉に追い込みましょう

 大阪高裁(山下郁夫裁判長)は、3 月 28 日、高浜原発 3、4 号機の運転差止めを命じた大津地裁の昨年3月9日の仮処分決定、および、関電の異議申し立てを退けた同裁判所の7月12日の決定を取り消しました。これを受けて、関電は、高浜原発3、4号機の再稼働を急いでいます。許してはなりません。
 大阪高裁の決定は、関西電力、政府、原子力規制委員会の主張のみを取り入れ、圧倒的多数の脱原発・反原発の民意を踏みにじり、人の生命と尊厳をないがしろにしたものです。

以下に、大津地裁の決定と大阪高裁の決定を比較し、大阪高裁決定の問題点を述べます。【大津地裁】【大阪高裁】は、それぞれ、大津地裁、大阪高裁の見解、【コメント】は、チラシ作成者のコメントを示します。

原子力規制委員長までもが、「安全を保証するものではない」と繰り返す「新規制基準」に適合さえすれば、原発は安全とする大阪高裁

【大津地裁】:「福島原発事故の原因を徹底的に究明できていないので、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない」とし、福島事故後に作られた新規制基準でも「公共の安全・安心の基礎にはならない」と断じました。すなわち、福島の事故を踏まえた規制基準や安全性を求めています。また、災害が起こるたびに「想定を超える」災害と繰り返されてきた過(あやま)ちに真摯(しんし)に向き合うならば、「常に危険性を見落としている」という立場に立つべきだとしました。
【大阪高裁】:新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいて策定されており、福島事故の原因究明や教訓を踏まえていないものとは言えない。また、原発に「絶対的安全性」を期待することは適当でないとして、これまでの原発訴訟(例えば、昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定)と同様に、原発が新規制基準に適合しているかどうかを争点としました。
【コメント】:福島で溶け落ちた原子炉は、高放射線で、内部の様子は事故から6年経った今でも分かっていません。したがって、福島事故が大惨事に至った真の原因が究明されたとは言えないのです。現在「想定」されている事故原因(津波による電源喪失)が真の事故原因とは異なるという指摘は多数あります。また、次の事故が福島の事故と同じ原因で起こるとは限りません。事故原因が異なれば、重大事故を避けるための基準も異なります。一方、汚染水はたれ流され続け、汚染土壌をはぎ取ることはできても除染する有効な方法はなく、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震の発生時期や規模を予測することも不可能な状況が科学技術の現状であり、最新の科学的・技術的知見でも原発の安全運転を保証するものではありません。すなわち、新規制基準は万全とは程遠いと言えます。したがって、田中規制委員長までもが、ことあるごとに「“新規制基準”は安全を保証するものではない」と言わざるを得ないのです。それでも、大阪高裁は“新規制基準”を「安全基準」とみなし、この「安全基準」に適合しているとして、高浜原発3.4号機の運転差止め仮処分を取り消したのです。大阪高裁は、新規制基準に適合とされた原発は事故を起こさないとする「新安全神話」を作ろうとしています。

原発に「絶対的安全性」を期待しなくても良いとする大阪高裁

◆この大阪高裁の姿勢は、「危険性はあっても、経済のためには原発を運転しても良い」とする、人の命と尊厳をないがしろにした考え方です。原発で重大事故が起これば、被害が続く年月、被害の範囲の何れをとっても、他の事故とは比較にならない惨事となるので、原発は万一にも重大事故を起こしてはなりません。したがって、絶対安全性(あるいはそれに近い安全性)が求められますが、現代科学技術の水準、人がミスをおかす可能性、人の事故対応能力の限界などを考え合わせると、そのような安全性を確保することは不可能ですから、原発を運転してはならないのです。
福島事故以降の経験は、原発は無くても、人々の生活に何の支障もないことを実証し、原発は経済的にも成り立たないことを明らかにしています。したがって、ドイツ、イタリアをはじめ、リトアニア、ベトナム、台湾が原発を断念し、アメリカまで脱原発に向かっています。国内でも、ほとんどの世論調査で脱原発を求める声が原発推進の声の2倍を超え、東芝をはじめ、多くの企業が原発製造から撤退しつつあります(福島事故以降、世界中の原発に対する規制が強化され、原発建設費が高騰したたこと、シェールガスなどの燃料が安価になったことが原因。ずさんな経営も一因)。必要でもない原発を、安全性をないがしろにして運転する理由は見当たりません(国民からすれば)。

地震の過小評価を認める大阪高裁

【大津地裁】:関電は裁判で、基準地震動(下記のコメントをご参照下さい)について、高浜原発周辺には、平均像を上回る地震が発生する地域はないので、平均像で良いと主張しましたが、住民側は、実際の観測記録は大きくばらついているので、少なくとも最大値をとるべきと主張しました。大津地裁は、平均性を裏付けるに足りる資料は見当たらず、関電の主張は採用できないとしました。
【大阪高裁】:関電の主張する基準地震動が、規制委員会によって、新規制基準適合とされているから、また、基準地震動の策定には合理性が検証されている関係式などが用いられているので、過小であるとは言えないとしました。
【コメント】:基準地震動とは、原発の設計において基準とする地震動(地震で発生する揺れ)で、原発周辺の活断層などによって大地震が起きたとして、原発直下の最大の揺れを、地盤の状況を考慮して見積もったものです。地震は地下深くで起こる現象ですから、地震の原因となる断層面を観察することは困難であり、地震現象の形態は様々ですから、地震の規模を理論的に推定することは困難です。そこで、基準地震動は、過去の(極めて限られた)観測地震データを基に作られた経験式によって計算されます。この計算式は、地震動の平均像(複数の要因を組み合わせて求めているので、平均値と呼ばず、平均像と呼ぶ)を表現したものですから、起こりうる地震動の最大値を示しているものではありません。例えば、500ガルの地震が4回、1500ガルの地震が1回起これば、平均値は700ガルです。平均からずれた地震はいくらでもあります。なお、阪神・淡路、東日本の大震災は地下16 km、24 kmの断層に起因して発生していますが、このような深層活断層は地震が起こって初めてわかるもので「未知の深層活断層」と呼ばれ、その様子は全く分かっていないので、深層活断層を考慮した計算は不可能です。

住民避難を伴う原子力災害は念頭に置いていない大阪高裁

【大津地裁】:福島事故の影響が広域におよんでいることを考えれば、自治体任せでなく、国主導で早急に避難計画を策定し、訓練を実施することが必要であるとし、また、そのような基準を策定すべき義務が国家には発生しているとしました。さらに、関電は、避難計画を含んだ安全対策を講じるべきであるとしました。
【大阪高裁】:新規制基準では、多重防護の考え方に基づいて第1層から4層までの安全確保対策が講じられているから、炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度なものになっているとし、第5層(避難計画など)は、重大事故は起こりえない原発で、放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態をあえて想定して、講じられる対策であるとしている。その上で、第5層の対策は、電力会社だけでなく、国、地方公共団体が主体となって適切に実施されるべきものであるから、新規制基準が避難計画などの原子力災害対策を規制対象にしていないのは妥当であるとしました。
【コメント】:大阪高裁は、新規制基準の下では、原発は事故を起こすはずがないという視点(すなわち、「新安全神話」)に立ち、不可能に近い被曝なしでの避難、長期の避難生活の悲惨さについて議論することを避けました。避難の問題を議論したら、原発の運転をできないことは、福島やチェルノブイリの大惨事によって実証されているからです。福島事故から6年、チェルノブイリ事故から31年経った今でも避難者の大半が故郷を失い、家族のきずなを引き裂かれ、心労と悲観、病苦から多数の方が自殺され、癌に侵され、発癌の不安にさいなまれていることを、大阪高裁はどう考えているのでしょうか。
大阪高裁は決定の中で、避難計画などの原子力災害対策については未だ改善の余地はあるが、取り組み姿勢や避難計画等の具体的内容は適切であり、不合理な点があるとは認められないとしました。しかし、昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人でした。それも県外への避難は約240人に留まりました。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささです。車道などが使用不能になったことを想定して、陸上自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていましたが、強風のために中止されました。また、悪天候のため、船による訓練は全て中止されました。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われましたが、実際行動の必要はないとされました。
なお、高浜原発から50 km圏内には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏内には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれます。このことと福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、高浜原発で重大事故が起こったとき、数100万人が避難対象となる可能性が大であり、避難は不可能であることは明らかですが、避難訓練では、そのことが全く考えていません。この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題です。さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がありません。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままです。高浜原発で重大事故が起これば、若狭には永遠に帰れなくなる可能性があります。

避難者は、高放射線地域への帰還を強要される可能性もあります

◆政府は、福島からの避難に関して、1年間の空間放射線量が20ミリシーベルト(mSv/y)以下になった地域の避難指示を解除し、避難者に帰還を強要しています。この線量は、国際放射線防護委員会が勧告する平常時の管理基準1 mSv/yの20倍であり、チェルノブイリの移住義務基準5 mSv/yに比べても極めて高いと言えます。また、避難指示が解除された地域の電気、ガス、水道、交通網などの生活基盤の整備や、医療、介護などの生活関連サービスも復旧したとするには程遠い状態にあります。したがって、帰還の意志のある住民は少数にとどまり、ほとんどが高齢者です。それでも、強引に帰還を進めようとする政府は、帰還に応じない人への支援の打ち切りの恫喝も行っています。東電や政府の賠償負担や生活支援支出の軽減のためであり、責任回避のためです。人々の安全や生活を優先する考えはいささかもありません
このように、原発重大事故は、筆舌に尽くしがたい悲惨を産むことが福島やチェルノブイリの事故によって実証されていて、その対策は必要不可欠であるにもかかわらず、大阪高裁は、新規制基準が避難計画などの原子力災害対策を規制対象にしていないのは妥当であるとしているのです。

大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
目先の経済的利益や便利さを、人が人間らしく生きる権利や
事故の不安なく生きる権利と引き換えにしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

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高浜原発の再稼働を阻止するために以下の行動が提起されています。是非ご参加下さい。

「5.7 高浜原発うごかすな!現地集会」

日時;5月7日(日)14時、場所;高浜町文化会館
11時に高浜町音海地区に集合して高浜原発へ。ゲート前で抗議行動も行います。また集会後、高浜町内デモも行います。

「5.8 – 5.13 高浜‐福井リレーデモ」

日程; 5月8日(月)9時高浜町役場に申入れ後出発、おおい町、小浜市、若狭町、美浜町、敦賀市、越前市を経て5月13日(土)に福井市到着。途中の各自治体に申入れを行います。

「5.13 高浜原発うごかすな!福井集会」

日時;5月13日(土)14時、場所;福井市中央公園
13時福井市フェニックスプラザ前広場集合。デモ行進で福井市中央公園へ。
以上の集会、デモは、「高浜原発うごかすな!」実行委員会が主催します。
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若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆原告第32準備書面
(既存準備書面の訂正)

2017年(平成29年)2月23日

原告第32準備書面[90 KB]

原告第29準備書面および原告第31準備書面について、以下の部分につき脱字、誤植があったので、別紙のように訂正する。

1.原告第29準備書面[1 MB]訂正箇

  1. 12頁目下から3行目
    (甲第  号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)

    (甲第301号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)
  2. 15頁目6項本文4行目
    の差 → 両の差

2 原告第31準備書面の訂正箇所

2頁目冒頭部分「原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では木津川市における避難計画の問題点についての主張を行う。」を削除する。

以上

◆3月28日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者ほか2名。
使い捨て時代を考える会;4名。

今回は以下の質問書を提出し、話し合いました。

質問書
……………………………………………………………………………

  1. 1月20日に起きた高浜原発2号機における大型クレーン倒壊事故について、プレスリリースを拝見しました。これについて質問します。
    • ①燃料取扱建屋と原子炉補助建屋の構造を教えてください。建屋内にはどのように燃料が保管されているのかも教えてください。
    • ②大型クレーンをたたむ作業はどのように行い、どれだけ手間を要することなのでしょうか。たたまずに済ませようとしたのは、費用の節約ではないのですか。
    • ③もし建屋が損傷したら、どのような事故になったかという予測をお聞かせください。
    • ④ささいな人為的ミスが事故に至るという事例と思いますが、貴社および元請会社は極めて危険な施設を取り扱っているという認識が甘いのではないでしょうか。
    • ⑤今回の事故を見て、自然現象への読みの甘さが第二の福島原発事故を起こすことになりかねないと懸念しますが、地震・津波・豪雨・豪雪・強風等すべての自然現象について十分に検討されていますか。
  2. 高浜原発緊急時対策所および耐震棟について質問します。
    • ①前回高浜1・2号の間に緊急時対策所が設置してあり、別途耐震棟をつくると聞きしましたが、それぞれどういう機能のものですか。
    • ②緊急時対策所には職員が寝泊まりすると聞きしましたが、職員の安全は確保できるのですか。
    • ③耐震棟は準備工事に入ったそうですが、いつまでにできるのですか。またベント付フィルター装置についても準備に入ったと聞きしましたが、いつまでにできるのですか。
    • ④全体で7300億円という工事費用は高浜原発全体の安全対策費用ですか。
  3. 大飯原発について質問します。
    • ①まもなく運転開始から40年となる大飯原発1.・2号機の運転延長を申請する方針であると聞きました。巨額の安全対策費が必要であるにもかかわらず、なぜ延長しなければならないのですか。老朽原発の危険性をどう認識していますか。
    • ②大飯3・4号機が新規制基準に適合しているとの規制委員会による審査書案がまとまり、貴社は再稼動を進める方向でおられますが、新基準については地震動評価で専門家の食い違いがあり、確実な安全性は誰も保証できない状況です。それでも再稼動するのでしょうか。
  4. 使用済み核燃料の処理・処分についての今後の見通しをどのように判断しておられますか。
  5. 電力自由化によってこれまで他社に切り替えた消費者はどのぐらいの割合ですか。原発に依存しない電力会社を選んだ消費者が少なくないと聞きますが、そのことについてどのように考えられますか。
  6. 原発事故処理費用のうち、賠償分について、「本来過去に積み立てておくべきであった費用」を、原発の電気を拒否する新電力も含めて、託送料金に上乗せして、2020年から40年間徴収する方向が出されていますが、福島原発事故の教訓があるというのに、さらに原発の再稼動を行って、それらが事故を起こした場合の賠償費用を新電力からもとろうというのは納得できません。貴社のお考えをお聞かせください。

以上
……………………………………………………………………………
話し合いの内容(Q;こちら側の発言  A;関電の発言)
Q 質問1(クレーン事故)について、燃料取扱建屋と原子炉補助建屋の構造を聞きたい。
A 構造は鉄骨、一部コンクリートで、取扱建屋には燃料プールがある。プールの上には空間があって、その上にクレーンが移動する構造がある。

Q 空間の高さは?
A 相当高い。港にあるようなクレーンが天井のキワにある。

Q 事故がひどかったらどうなっていたか。
A 規制庁でリスクを言われたのは、通信ケーブルのたぐいだ。今回腰壁が損傷し、変形したがそれ以上は大丈夫だった。

Q 事故は起きる。現場が気象警報を知らなかったとは驚きだ。
A 警報が作業後に出た。連絡体制に不備があり、ご迷惑をかけた。

Q ゼネコンに友人がいるがありえない事故だ、このような事故を起こしたら首になると言っている。大成建設が請け負っていたというが。
A 大成建設についての事情は言えない。

Q この近く工事現場のクレーンについても心配だが、原発はもっと危険性がある。
A 場所が、場所なので…。

Q 赤字が大きく、保安にお金をかけられないので下請けにしわ寄せが行ったのではないか。
関電職員の自殺は、1,2号機の申請で自殺されたとか。すごく急いでいるのではないのか。
A 自殺についてはここでは言えない。安全対策を値切ったと言われるが、お金をケチって事故を起こした方が損害は大きい。
A(1-②について)クレーンの倒壊は事前評価で42m/秒の風速で大丈夫ということだった。その評価で作業を終えた時に大丈夫ということだった。

Q 現地は無人だったのか。
A 直営社員は常駐しているが、クレーンの管理まではしていなかった。

Q 社員が管理するのか。
A 社員が直接管理はできないが、管理体制に関与する方向だ。

Q 他の場所でもか。
A 原発は電力会社が責任を負う。
A(1-③について)通信設備の不具合の可能性があったかもしれない。通信設備には複数あるが、衛星通信設備が使えなかったかもしれない。

Q どういう影響があるのか。
A バックアップ体制に影響あったかもしれない。

Q 一部の建物で無く高浜原発全体への影響か。
A そうだ。天井の近くにケーブルがあるから。大きな事故だったら、そういうこともあるかもしれないと規制委員会の委員が言っていた。

Q 原発はコストが見合わないのでは。東芝もアメリカなどの規制強化でコストがどんどん上がり、困っている。
A 東芝のことはわからないが、コスト面では運転期間とか回収期間とかいろいろ要因はある。

Q 投資と見合っているのか。
A 重要な電源として考えている。

Q 耐震棟について聞きたいが、免震棟ではなく耐震棟にしたとのことだが、揺れに耐えられるのか。耐震棟は着工しているのか。
A 緊急時対策所として既存の建屋内にある。高浜1,2号機の中にある。原発が動いていない場合に限る。1,2号機が動いたら建てる。基本設計がある。昨年から始めて3年かかる。

Q フィルタ付ベントはどうなっているのか。
A 5年間に作るというルールがある。平成32年までに作るので準備をしている。

Q 最大限の安全が確保できてから動かすべきだ。そういうコストをかけずに再稼動してお金を回収しながら進めるのか。
Q 耐震棟やフィルタ付ベントができても不安だ。規制委員会はどういうチェックをしているのか。
A 規制委員会で潰れそうになった電力会社もある。

Q 規制委員会は電力会社とつるんでいると思える。
A 規制委員会の範囲はとても広い。部門をあげてやっている。

Q 質問2について聞くが、免震と耐震は違う。
A 揺れに耐えるのが耐震で、福島は免震重要棟と言っていた。固有名詞だ。

Q なぜ免震でなく耐震なのか。
A 免震神話があったのではないかと言われている。関電としては耐震の方が技術が確立している。安全性もあって耐震とした。免震でなくても、耐震で機能が維持されると評価された。

Q 安全第一というが、コアキャッチャーを造ろうともしていない。
A 原子力のタイプで違う。溶融燃料を受け止めるために、水をはる機能はある。規制基準は、機能の要求で設備の要求ではない。

Q 水をはることができるのか確信がない。より強固な安全性を。
A 安全に投資している。

Q 避難場所の問題とかいろいろある。避難は国と電力会社の責任だ。体制が整っていないのに安全重視と言っている。
Q 賠償費用などが倍になった。20兆円以上となっている。新電力も負担するという。採算が合わないのではないか。福島原発ではカメラが入って2時間で壊れた。コストが膨らむ一方だ。
Q 福島原発では除染や終息作業の作業員がのべ12万人という。5ミリシーベルト/年を浴びて被ばくした作業員が1万人以上だそうだ。年間5ミリシーベルトで白血病の症状が出て、労災認定されている。6000人弱が今も毎日フクイチで働いている。東電社員がもっとも大量に被ばくした。関電も自社の原発で事故が起きたら、関電社員が最も被ばくすることになるだろう。そこまでして、なぜ原発を続けるのか。健康被害はどこまでいくかまだ分からない。どんどんコストが上る。リスクが高すぎる。
A おっしゃる通り、一番(被ばくするのは)は社員だ。

Q 命をかけてまでやるのか。そうなる前にやめた方がいい。
Q 耐震棟、ベントなどできてもいないのに再稼動は心配だ。
Q 働く人が減るだろうし、再稼動はしてほしくない。
Q 長崎出身だが、しばらくして影響が出たことを知っている。原発を動かすとさまざまなリスクが生まれる。
A すべてのリスクを考えてやっている。
A(2-④について)大飯も含め再稼動を進めているものについて8300億円だ。
(3-①について)大飯1・2号機の申請については最後の判断はしていない。
(4について)六ケ所の処理場が基本だ。

Q 稼動していないではないか。再処理工場の放射能の環境への放出は、1日で通常の原発の1年分であり、運転自体が危険だ。再処理自体をやめるべきだ。
A 六ケ所に関しては(稼働について?)もうすぐ発表される。中間所蔵所も考えてある。

Q いったいどこに作るのか。
Q いつ稼働させるつもりか。
A 粛々と準備している。

Q なぜ違う形で技術や資金を使えないのか。
A 原子力のみの会社ではない。
A(同席した他の社員)もう時間なので。

質問したことが多くて若干散漫なやり取りとなってしまいました。次回はもっと要点を絞ってのぞもうと思います。

◆3/28の大阪高裁決定-国と電力会社に屈した判断

【2017年3月31日,京都キンカンで配付。】

大阪高裁抗告審で
民意を踏みにじり、裁判制度の根幹を揺るがす決定
脱原発・反原発が民意
国と電力会社の圧力に屈した判断を乗り越えて、
原発全廃に向けて前進しよう!

◆大阪高裁第11民事部(山下郁夫裁判長、杉江佳治裁判官、吉川慎一裁判官)は、3 月 28 日、高浜原発 3、4 号機の運転差止めを命じた大津地裁2016年3月9日仮処分決定、および、これに対する関電の異議を退けた同裁判所同年7月12日決定を取り消しました。

関電、政府、原子力規制委の主張のみを追認し、
圧倒的多数の脱原発・反原発の民意を踏みにじり、
人の生命と尊厳をないがしろにする大阪高裁

大津地裁とは正反対の決定

以下に、大津地裁の決定と大阪高裁の決定を比較します。【大津地裁【大阪高裁】は、それぞれ、大津地裁、大阪高裁の見解、【コメント】は、チラシ作成者(木原)のコメントを示します。

・福島事故への反省と新規制基準

【大津地裁】
◆「福島原発事故の原因を徹底的に究明できたとは言えないので、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない」とし、福島事故後に作られた新規制基準でも「公共の安寧の基礎にはならない」と断じた。すなわち、福島の事故を踏まえた規制基準や安全性を求めている。また、災害が起こるたびに「想定を超える」災害と繰り返されてきた過ちに真摯(しんし)に向き合うならば、「常に危険性を見落としている」という立場に立つべきだとした。
【大阪高裁】
◆新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいて策定されており、福島事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとは言えない。また、原発に「絶対的安全性」を期待するのは相当でないとして、これまでの原発訴訟(例えば、昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定)と同様に、新規制基準に適合しているかどうかを争点とした。
【コメント】
◆福島で溶け落ちた原子炉は、高放射線で、内部の様子は事故から6年経った今でも分かっていない。したがって、福島事故が大惨事に至った真の原因が究明されたとは言えない。現在「想定」されている事故原因(津波による電源喪失)が真の直接事故原因とは異なるという指摘は多い。また、次の事故が福島の事故と同じ原因で起こるとは限らない。事故原因が異なれば、重大事故を避けるための基準も異なる。一方、汚染水はたれ流され続け、汚染土壌をはぎ取ることはできても除染する有効な方法はなく、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震の発生時期や規模を予測することも不可能な状況が科学技術の現状であり、最新の科学的・技術的知見でも原発の安全運転を保証するものではない。すなわち、新規制基準は万全とは程遠いと言える。したがって、田中規制委員長までもが、ことあるごとに「“新規制基準”は安全を保証するものではない」と言わざるを得ないのである。それでも、大阪高裁は“新規制基準”を「安全基準」とみなし、この「安全基準」に適合しているとして、高浜原発3.4号機の運転差止め仮処分を取り消したのである。新規制基準に適合とされた原発は事故を起こさないとする「新安全神話」を作ろうとしている。

◆大阪高裁は、原発に「絶対的安全性」を期待しなくても良いとした。リスクはあっても、経済のためには原発を運転しても良いとする、人の命と尊厳をないがしろにする考え方である。原発で重大事故が起これば、時間的・空間的に、他の事故とは比較にならない惨事となるので、原発は万一にも重大事故を起こしてはならない。したがって、絶対安全性(あるいはそれに近い安全性)が求められるが、現代科学技術の水準、人為ミスの可能性、人の事故対応能力の限界などを考え合わせると、そのような安全性を確保することは不可能であるから、原発を運転してはならないのである。

◆福島事故以降の経験は、原発は無くても、人々の生活に何の支障もないことを実証し、原発は経済的にも成り立たないことを明らかにしている。したがって、ドイツ、イタリアをはじめリトアニア、ベトナム、台湾が原発を断念し、アメリカまで脱原発に向かっている。国内でも、ほとんどの世論調査で脱原発を求める声が原発推進の声の2倍を超え、東芝をはじめ、多くの企業が原発製造から撤退しつつある(福島事故以降、世界中の原発に対する規制が強化され、原発建設費が高騰したたこと、シェールガスなどの代替燃料が安価になったことが原因。杜撰経営も一因)。必要でない原発を安全性をないがしろにして運転する理由は見当たらない(国民からすれば)。

・基準地震動について

【大津地裁】
◆関電は基準地震動(下記コメント参照)について、高浜原発周辺には、平均像を上回る地震の発生する地域性はないので、平均像で良いと主張したが、住民側は、実際の観測記録は大きくばらついているので、少なくとも最大値をとるべきと主張した。大津地裁は、平均性を裏付けるに足りる資料は見当たらず、関電の主張は採用できないとした。
【大阪高裁】
◆関電の主張する基準地震動が、規制委員会によって、新規制基準適合とされているから、また、基準地震動の策定には合理性が検証されている関係式などが用いられているので、過小であるとは言えないとした。
【コメント】
◆基準地震動とは、原発の設計において基準とする地震動(地震で発生する揺れ)で、原発周辺の活断層などによって大地震が起きたとして、原発直下の最大の揺れを、地盤の状況を加味して見積もったものである。地震は地下深くで起こる現象であるから、地震の原因となる断層面を観察することは困難であり、地震現象の形態は多様であるから、地震の規模を理論的に推定することは難しい。そこで、基準地震動は、過去の(極めて限られた)観測地震データを基に作られた経験式によって計算される。この計算式は、地震動の平均像(複数の要因を組み合わせて求めているので、平均値と呼ばず、平均像とする)を表現したものであるから、起こりうる地震動の最大値を示しているものではない、例えば、500ガルの地震が4回、1500ガルの地震が1回起これば、平均値は700ガルである。平均からずれた地震はいくらでもある。なお、阪神・淡路、東日本の大震災は地下16 km、24 kmの断層に起因して発生しているが、このような深層断層は地震が起こって初めてわかるもので「未知の深層活断層」と呼ばれ、その様子は全く分かっていないので、深層活断層を考慮した計算は不可能である。

・電力会社の立証責任について

【大津地裁】
◆「新規制基準に合格したから安全」という関西電力(関電)に対して、「福島事故後に、どう安全を強化したのか」を立証するように厳しく求めた。しかし、関電は、外部電源の詳細、基準地震動設定の根拠などを納得できるほど十分に証明せず、使用済み燃料ピットが安全であることを証明する十分な資料の提出もしなかった。過酷事故時の安全対策が十分である証明もいい加減であった。したがって、関電による立証は不十分であるとした。
【大阪高裁】
◆関電は、新規制基準に適合とされたのであるから、原発の安全性を立証しているとした。ここで、もし住民側が、新規制基準(大阪高裁は安全性の基準と呼んでいる)自体が、現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠く、または、規制委の審査および判断が合理性を欠くと考えるのなら、住民側でそのことを立証する必要があるとしている。
【コメント】
◆大阪高裁は、住民が“新規制基準”に不備があるとするのであれば、それを住民側が立証すべきだとして、「立証能力が無ければ泣き寝入りしろ」と言わんばかりの、裁判制度を根底から揺るがしかねない要求をしている。

◆ところで、原発裁判のような高度の専門的知識を要する裁判では、一般人が、議論のすべてに関する資料や根拠を調べて、裁判所に提出することは困難である。したがって、1992年の伊方原発裁判で最高裁は、被告である政府や電力会社の側が、原発稼働を進めるにあたって、依拠した具体的審査基準、調査審議および判断の過程等の全てを示し、政府や電力会社の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づいて主張、立証する必要があるとしている。また、政府や電力会社が主張、立証を尽くさない場合には、彼らの判断に不合理な点があることが事実上認められたとすべきであると述べている。

◆しかし、先にも述べたように、新規制基準は、福島事故の原因も確定せず、事故炉の内部も分からず、汚染水や汚染土壌対策も十分とするには程遠く、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震の発生時期や規模を予測することも不可能な状況下で作成されたものであり、どの角度から見ても原発の安全運転にとって不十分であり、規制委員長も言うように、科学技術的に安全を保証したものではない。それゆえに、安全安心に不安を持つ住民が、原発の運転差止めを求めているのである。それ故、新規制基準に適合した原発を安全というのなら、関電や政府は、伊方原発訴訟最高裁判決の要求に従って、新規制基準が安全を保証するということを立証する責任を果たさなければならない。

・原子力災害時の避難について

【大津地裁】
◆福島事故の影響が広域におよんでいることを考えれば、自治体任せでなく、国主導で早急に避難計画を策定し、訓練を実施することが必要であるとし、また、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているとした。さらに、関電は、避難計画を含んだ安全対策を講じるべきであるとした。
【大阪高裁】
◆新規制基準では、多重防護の考え方に基づいて第1層から4層までの安全確保対策が講じられているから、炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度なものになっているとし、第5層(避難計画など)は、重大事故は起こりえない原発で、放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態をあえて想定して、講じられる対策であるとしている。その上で、第5層の対策は、電力会社だけでなく、国、地方公共団体が主体となって適切に実施されるべきものであるから、新規制基準が避難計画などの原子力災害対策を規制対象にしていないのは妥当であるとした。
【コメント】
◆大阪高裁は、新規制基準の下では、原発は事故を起こすはずがないという視点(すなわち、「新安全神話」)に立ち、不可能に近い被曝なしでの避難、長期の避難生活の悲惨さについて議論することを避けた。避難の問題を議論したら、原発の運転をできないことは、福島やチェルノブイリの大惨事によって実証されているからである。福島で6年、チェルノブイリで31年経った今でも避難者の大半が故郷を失い、家族の絆を引き裂かれ、心労と悲観、病苦から多数の方が自ら命を絶たれ、癌に侵され、発癌の不安にさいなまれていることを、大阪高裁はどう考えているのであろうか。

◆大阪高裁は決定の中で、避難計画などの原子力災害対策については未だ改善の余地はあるが、取り組み姿勢や避難計画等の具体的内容は適切であり、不合理な点があるとは認められないとした。しかし、昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人であった。それも県外への避難は約240人に留まった。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささである。車道などが使用不能になったことを想定して、陸上自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていたが、強風のため中止された。また、悪天候のため、船による訓練は全て中止された。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われたが、実際行動の必要はないとされた。

◆なお、高浜原発から50 km圏には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれる。このことと福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、高浜原発で重大事故が起こったとき、数100万人が避難対象となる可能性が大であり、避難は不可能であることは自明であるが、避難訓練では、そのことが全く考えられていない。なお、この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題である。さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がない。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままである。

◆それでも、大阪高裁は、避難計画等の取り組み姿勢や具体的内容は適切であるとしている。

大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!
さらに大きな反原発のうねりを創出しましょう!
目先の経済的利益や便利さを、人が人間らしく生きる権利や
事故の不安なく生きる権利と引き換えにしてはなりません。

[追記]3月30日、広島地裁は、伊方原発運転差止め仮処分の申し立てを退けた。昨年4月6日の福岡高裁宮崎支部、去る28日の大阪高裁の場合と同様の理由によって、電力会社、政府の主張をそのまま追認したもので、民意を踏み躙るものです。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆前橋地裁判決◆まもなく大阪高裁決定

【2017年3月24日,京都キンカンで配付。】

福島原発事故を発生させた責任は、
国と東電にある。

前橋地裁判決

福島原発事故で福島県から群馬県に避難し、生活の基盤を失い、精神的苦痛を受けた住民ら137人が国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は17日、巨大津波を予見し得た東電と安全規制を怠った国の賠償責任を認め、62人に3855万円の支払いを命じた。

東電は、安全性より経済的合理性を優先するなど、
非難に値する。

◆判決で、前橋地裁(原道子裁判長)は、「政府は2002年に福島沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波を伴う地震が30年以内に発生する確率は20%程度」との長期評価を発表しているので、国と東電は巨大津波の発生を予測できたはず」と述べ、また、「東電は2008年には、長期評価に基づき、津波の高さを試算し、実際に予測していた」と指摘した。その上で、東電は、「この予測にもかかわらず、容易で、実行していれば事故は発生しなかった措置(配電盤を高所に設置するなど)をとらなかった」、「原発の津波対策は常に安全側に立って行わなければならないにもかかわらず、東電は、安全性より経済的合理性を優先させたことなど、とくに非難に値する事実がある」と述べている。

この裁判および他の同様な訴訟において、核心的な争点は「津波の予見可能性」である。

前橋地裁の判決は、「可能か否か」を飛び越えて、「実際に予見していた」と断言した点で画期的である。

国は、東電に対する規制権限を行使せず違法。

◆判決で、前橋地裁は国の責任について、「国には、東電に津波対策を講じるよう命令する権限があり、事故を防ぐことは可能であった。2007年8月に、東電が自発的な津波対策をとることを期待することは難しいことも分かっていたと言え、国の対応は著しく合理性を欠く」として、「国と東電には何れも責任があった」と認めた。国の責任を司法が初めて認めたのである。現在約30の集団訴訟が行われているが、その最初の判決で、国の責任を認めたことは、他の裁判へ与える影響は大きいと考えられる。

この裁判および他の同様な訴訟において、もう一つの核心的な争点は「電力会社と一体で原発事業を推進してきた国の責任」である。国策である原子力事業の関連法制は複雑で、原発事故の責任の所在は分かり難い。原子力賠償法でも、原子力事故の賠償は電力会社が行い、国が必要費用を援助するという規定はあるが、今回の訴訟では、国は規制権限(津波対策を命ずる権限)の存在すら否定していた。

前橋地裁の判決は、「国は、2007年8月には、東電が自発的あるいは口頭による指示に従って適切な津波対策を行うとは期待できないことを認識していた」と指摘し、「この時点で対策を命じていれば事故は防げた」と断言した。その上で、「国と東電には同等な責任がある」とした。一度事故が起これば、甚大な被害が出る点を重視した画期的な判決である。

福島原発事故は「人災」であることを強調

◆判決では、国と東電が対策を怠ったために事故が起こったとする「人災」の側面を強調し、事故は防げなかったとする国や東電の主張をことごとく退けた。[国や東電には、原発事故は、一旦対応を間違え、炉心損傷が進行し始めたら、現代科学技術で制御することが出来ず、取り返しがつかない大惨事に発展するという認識が薄かったし、現在も薄い。これが、原子力ムラの傲慢でたるみ切った体質である(筆者の意見)]。

◆一方、「事故により、平穏な生活が奪われた」という原告の主張を認め、国が定めた指針とは異なる独自の枠組み(右の表を参照)を採用して。賠償を命令した。これに関して、原告は、「生活基盤が一瞬で奪われ、長期間不便を強いられ被害は例がない。慰謝料は不十分。放射性物質への不安のために、自主避難するのは合理的」と主張し、被告(国と東電)は、「過去の裁判例も参考にした国の指針は妥当。避難区域外に滞在することに支障はなく、自主避難者への賠償は事故後の一時期を除いては理由がなく不要」と主張していた。

賠償が認められたのは一部だけ。
それも低額。

◆前橋地裁の判決は。上記のように、今までの司法判断を乗り越えて、国と東電の責任を問い、賠償についても、一定程度、避難者の側に立つもので、原発事故で避難者がこうむった苦しみやストレスに目を向けている。

しかし、賠償が認められたのは、一部だけであり、故郷と生活基盤を奪われ、平穏な日々が戻らない人々にとって、納得できるものではない。

▲2017年3月18日京都新聞朝刊

高浜原発3、4号機運転差止め仮処分決定
大阪高裁での保全抗告審:28日に判断
当日、大阪高裁に結集しよう!

(時間は、前日27日に連絡されるとのこと)

大津地裁仮処分決定→大阪高裁抗告審の経緯

◆大津地裁(山本善彦裁判長)は、昨年 3 月 9 日、高浜原発 3、4 号機の運転を差止める決定をしました。若狭の原発が重大事故を起こせば、深刻な被害を受ける可能性が高い滋賀県に住む人々の申し立てを全面的に認めたものです。なお、滋賀県は全県、高浜原発から100 km 圏内にあります。

◆稼働中の原発の停止を司法が求めたのは世界初です。また、立地県外の裁判所での原発運転差し止め判断は日本では例のないことです。福島原発事故の被害が広範囲に及び、今も解決していない現実を踏まえた、勇気ある画期的な決定でした。

◆仮処分決定は、速やかに行動しなければ取り返しがつかない事態が生じかねない案件のみに出されるもので、決定されれば即座に効力を発するものです。したがって、関電は、稼働中の 3 号機を 決定翌日の10 日夕刻に停止しました。関電は、大津地裁に決定の執行停止および異議を申し立てましたが、各々、6月17日、7月12日に退けられ、現在も高浜3,4号機は停止したままです。関電はそれでも懲りずに、大阪高裁に抗告しました。抗告審の審尋は10月13日に1回だけ行われ、それぞれ相手の主張に対する反論、再反論をする機会が与えられ、12月26日に終結し、今日の決定に至りました。

大津地裁仮処分決定の骨子

以下に、大津地裁仮処分決定の骨子と背景を簡単に解説します。

1.新規制基準に適合したからと言って、原発が安全だとは言えない。

◆政府は、福島原発事故後にできた新規制基準は「世界一厳しい」と言っています。一方、原発がこの新基準に適合するか否かを審査した原子力規制委員会(規制委)の田中委員長は、「新基準に適合しただけで、原発の安全を保証したものではない」とコメントしています。これらの発言からは、政府と国の規制委が異なる見解を持っているようにも受け取れますが、冷静に考えれば、これは、「世界一厳しい」基準で審査しても、原発は安全でないと国が言っていることになります。それでも、関電、政府、規制委は一丸となって高浜原発再稼働に突っ走ろうとしました。

◆これに対して、大津地裁は「福島原発事故の原因を徹底的に究明できたとは言えないので、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない」とし、福島事故後に作られた新規制基準でも「公共の安寧の基礎にはならない」と断じました。これまでの原発訴訟では、新規制基準に適合しているかどうかが争点でしたが、大津地裁の決定は、新規制基準自体の合理性にも疑問を投げかけ、新たな判断枠組みを示したものともいえます。この判断は、全国で行われている多くの裁判にも影響を与えるものと考えられます。例えば、去る3月17日の前橋地裁決定にも何らかの後押しをしているのでしょう。

2.原発の安全性の立証責任は関電側にある:
十分説明できない場合は再稼働に不合理な点があると考えざるを得ない。

「新規制基準に合格したから安全」という関電に対して、大津地裁は「福島事故後に、どう安全を強化したのか」を立証するように厳しく求めました。しかし、関電は外部電源の詳細、基準地震動の設定の根拠などを、納得できるほど十分に証明しませんでした。使用済み燃料ピットが安全であることを証明する十分な資料の提出もしませんでした。過酷事故時の安全対策が十分である証明もいい加減でした。すなわち、関電は、彼らの主張を立証する責任を果たしていません。

◆なお、伊方原発訴訟(地元住民が原子炉設置許可をした内閣総理大臣に対して、設置許可の取り消しを求めて提訴したもの)での最高裁判決(1992年10月)は、原発の賛否に係わらず、原発の安全性確保に関して留意すべき、行政と司法のあり方を次のように示しています。(大津地裁の裁判は、内閣総理大臣が被告でなく、関電が被告ですから、行政庁を関電と読み替えてみて下さい。)

◆原子炉施設の安全性に関する裁判では、専門技術的な調査審議を基にしてなされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。このとき、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、行政庁の側において、まず、その依拠した具体的審査基準ならびに調査審議および判断の過程等、行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、行政庁が主張、立証を尽くさない場合には、行政庁がした判断に不合理な点があることが事実上認められたとすべきである。

3.避難計画が新規制基準での審査に含まれていないことが問題。

◆政府は、1昨年12月、高浜原発から半径 30 km 圏の福井、京都、滋賀の広域避難計画を了承しましたが、大津地裁の決定時までには、関係自治体による一斉訓練は一度も行われていません。この点について、大津地裁は、自治体任せでなく、国主導で早急に避難計画を策定し、訓練を実施することを求めています。福島の過酷事故を経験した国には、避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準を作成することが望まれ、作成が義務であろうとし、また、関電は、万一の重大事故発生時の責任を誰が負うのかを明確にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、避難計画を含んだ安全対策を講じるべきであるとしています。

◆なお、政府や自治体による避難計画たるや、数週間ピクニックに出かけるようなものです。一旦、若狭で福島級の事故が起これば、若狭や京都北部、滋賀北部の地形や交通事情からして、避難は著しく困難であることは無視しています。また、例え避難しえたとしても、故郷には二度と帰れないという危機感はありません。福島原発事故から6 年、チェルノブイリ原発事故から 31 年経った今でも、両事故で避難した10 数万人の多くが故郷を奪われたままで、長期の避難生活が健康をむしばみ、家族の絆を奪い、大きな精神的負担となっていること、多くの方が避難生活の苦痛で病死され、自ら命を絶たれたこと、癌の苦しみ、発癌の不安にさいなまれていることは忘れたかのような計画です。

◆福島では事故炉から約 50 km 離れた飯舘村も全村避難を強いられました。このことは、高浜原発で重大事故が起これば、若狭や近畿北部だけでなく、60 km 程度しか離れていない京都市全域を始め、関西の大都市も永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示しています。避難計画では、その地域の住民数百万人の避難は不可能であること、琵琶湖が汚染されれば、関西の住民 1,450 万人や避難者の飲料水がなくなることも考えていません。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)