◆6.16 舞鶴現地行動で市長へ申し入れ

【2023年6月16日。舞鶴市への申し入れ】
【PDF→ mousiire2023-06-16[258 KB] 】

2023年6月16日

舞鶴市長 鴨田 秋津 様

老朽原発うごかすな!実行委員会*別紙注1

申し入れ書

 原発は、現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後12年を超えた福島原発事故が、大きな犠牲の上に教えています。一方、ウクライナ紛争では、戦争になれば、原発は攻撃目標となることが実証されました。このように、原発は人の命と尊厳を脅かします。

 その原発が、運転開始後40年を超え、老朽化すれば、過酷事故の危険度が急増することは、多くが指摘するところです。それは、高温、高圧の下で高放射線(とくに中性子)にさらされた原子炉本体・圧力容器の脆化や配管の腐食、減肉などが進むからです。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた圧力容器などです。

 それでも、政府や電力会社は、ウクライナ紛争に因るエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、老朽原発の運転に躍起です。

 岸田政権は、本年の第211回通常国会で、福島原発事故の教訓から「原発運転期間は原則40年、最長でも60年」とした法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません。最も老朽な原発でも、運転期間は53年です。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。
なお、岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。

 そもそも、岸田政権の「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。もし、先見の明がある政権であったなら、原発に費やされた膨大な税金や電気料金を、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回し、今頃、核燃料、化石燃料など必要のない社会を実現し、世界をリードしていたでしょう。

 ところで、舞鶴市議会は2020年12月に、運転開始後48年、47年を超えた(2023年6月現在)老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を決議し、2021年4月には、当時の多々見良三市長がこれらの原発の再稼働容認を経産省資源エネルギー庁に伝えています

 しかし、老朽原発の再稼働を目論む関電は、これらの再稼働容認表明後にも、稼働中の高浜原発3、4号機で、別紙(注2)の表に示したようなトラブルを続発させています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷の頻発です。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。また、1月30日に高浜4号機で制御棒が急挿入され、自動停止したトラブルも深刻です。制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。

 一方、関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰なのか? 不備はこれ以外にも、多数あると思われます。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。

 さらに、関電は、以下のように、不祥事を繰り返しています。

(1) 2019 年に、関電の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していたこと、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた元役員18人の報酬について、退任後に計2億5900万円を不正還流していたこと、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填をしていたことが発覚しました。この不祥事を調査した関電のコンプライアンス委員会は、本年4月に3件の不正取引を公表しました。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注し、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払っていました。合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(2) 2021 年には、関電グループ全体で社員180 人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していたことが発覚しています。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(3) 2021 年には、電力販売でカルテルを締結していたことも発覚しています。2018 年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、独占禁止法違反のカルテルを結んでいました。公正取引委員会は、中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じましたが、主導者である関電は、調査前に違反行為を自主申告し、課徴金を免れています。

(4) 昨2022 年には、関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていたことが発覚しました。電力システム改革を否定する違法行為です。

(5) 今年になって、関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定に関して、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(6) 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、未だに候補地の見通しは示されていません。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブルが頻発し、人々を欺かなければならなくなるのです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。とくに、舞鶴市は高浜原発から 5 km 圏の予防防護措置地域(PAZ)を含み、約8万人が生活する市全域が 30 km 圏の緊急防護措置地域(UPZ)ですから、高浜町以上の深刻な被害を被る可能性があります。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発立地自治体や原発に近接する自治体の首長や議会の動向は、当該自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 以上のような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」に結集する私たちは、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とされる舞鶴市長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を取り消し、政府および関電に原発との決別を要請し、「原発過酷事故の不安のない社会」に向かって市政を進められるよう申し入れます。

別紙

注1 「老朽原発うごかすな!実行委員会」について
(連絡先;事務担当・木原壯林 住所;〒607-8466 京都市山科区上花山桜谷40-5
電話 090-1965-7102 E-メール kiharas-chem@zeus.eonet.ne.jp)
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、全国の団体231と個人854名の賛同を得て、2020年1月18日に結成された「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」を、2020年9月20日に改称して結成された団体です。以来、関西、若狭を中心に、各地で「老朽原発うごかすな!」を訴える活動を行っています。現在までに、下記のような集会(集会後にデモ行進)を実行しています。また、若狭の集落から集落をめぐって「原発うごかすな!」を訴えながらチラシを各戸配布する行動(通称アメーバデモ)、一人ひとりが数十メートルの間隔をとって、旗指物、拡声器で「原発反対」を訴えて歩く行動(通称ヒトリデモ:関西各地、若狭で実施)、自動車による街宣、「老朽原発うごかすな!ニュース」の発行などを行っています。

●「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.9.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1600人参加
●「老朽原発うごかすな!実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.11.23~12.9 関電本店~美浜原発200 kmリレーデモ 延べ約1000人参加
2021.1.24 「関電よ 老朽原発うごかすな!大集会」関電本店前 350人参加
2021.3.20 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 400人参加
2021.6.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1300人参加
2021.6.23 「美浜3号再稼働阻止現地集会」 美浜原発前、原子力事業本部前 350人参加
2022.5.29 「原発のない明日を-老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」うつぼ公園 2100人参加
2022.7.24 「老朽原発・美浜3号うごかすな!現地全国集会」 美浜町弁天崎、
原子力事業本部前 300人参加
2022.12.4 「老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」 関電本店前 900人参加
2023.3.21~4.2 関電本店~高浜原発230 kmリレーデモ 延べ約900人参加
2023.4.29 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 320人参加

注2 高浜町長が、高浜原発1、2号機の再稼働に同意した後(2021年2月1日~)に
高浜原発3、4号機で発生したトラブル