京都地裁の「大飯原発差止訴訟」は、2012年11月提訴以来、12年になろうとしていますが、いよいよ最終段階の証人調べにはいっています。
同訴訟第43回期日は9月17日午後に行われました。今回は、赤松純平さん(元京都大学助教授、専門:地盤構造)の証人調べでした。
赤松さんは、この訴訟が提訴されてから、ご専門の立場から、さまざまな意見書によって
(1)大飯原発の「基準地震動策定」において
①原発敷地地盤構造の評価に合理性がないこと、
②地盤モデルに妥当性がないこと、
③基準地震動に妥当性がないこと、
(2)基準地震動による地盤のすべり安定性評価に問題があること
などの論点について意見をのべてこられました。
今回の証人調べにあたっても、「大飯原発敷地の地盤構造の評価について」「大飯原発の基準地震動について」「大飯原発の地震力に対する基礎地盤の安定性の評価について」「若狭湾地域で発生した地震の応力降下量について」「PS検艘におけるダウン・ホール法とサスペンション法の違いについて」等の意見書を提出されています。
今回の証人調べは、原告側弁護士による尋問でしたので、赤松さんの意見書の主要な論点にそって質問し、赤松さんの意見の内容を確認していくものとなりました。
赤松さんは、証人調べのなかで、若狭の地震は基準地震動ではとらえられない高周波成分が卓越するものであることや、地質構造の評価についても「敷地内の浅部構造に特異な構造はみられない」などとする関西電力の評価は妥当でなく、欺瞞的であることについて、データをもとに丁寧に論述されました。
たとえば、「地質調査結果の評価について」は、「関電は、敷地内の断層破砕帯が地盤の震動特性に及ぼす影響を検討していない」「関電は、岩盤の亀裂に関する情報の空間的変化が、地盤の震動特性に及ぼす影響を等閑視している」「関電の作成した地質断面図の岩級分布は、地質柱状図の岩級分布とは全く異なっており、地質断面図は岩盤が堅硬であると誤認させる」などと指摘されました。
また、「基礎地盤のすべり安定性および傾斜の評価について」も、「原子炉建屋基礎の岩盤分布は、亀裂を多く含むCM級が多く分布しているにも拘わらず、2次元FEMにおいて殆ど全ての岩盤を堅固なCH級としてモデル化し、すべり安全率を大きくしている」「岩石の引張強度を岩盤の引張強度であると詐称し、岩盤の引張強度を大きく設定することにより、破砕帯などの弱面に沿うすべり破壊の危険性を隠蔽している」など、「大飯原発の基礎地盤の地震力に対する安定性の評価は、原子力規制委員会の審査ガイドの要請を充たしていない」と論述されました。
証人調べは2時間を超えるものとなりましたが、赤松さんは最後まで力強く意見を述べられました。陳述が終ると傍聴席から大きな拍手が沸き上がりました。
この赤松さんの意見陳述が裁判官の良心を揺り動かしたものと思いますが、12月には関電側の反対尋問が予定されています。赤松さんの勇気ある証言に傍聴席から応援してください。
(文責:原 強)