◆原告第39準備書面
第1 はじめに(甲369の序論部分参照)

2017(平成29)年10月27日

原告第39準備書面
-原子力規制委員会の「考え方」が不合理なものであること-

目次


第1 はじめに(甲369の序論部分参照)

原子力規制委員会は,2016年6月29日開催の会議において,原子力規制庁が作成した「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(以下「考え方」という。
丙69)を了承した[1]。「考え方」は,この僅か1回の会議で策定され,その後,同年8月24日に改訂されている[2]

原子力規制庁の説明によれば,「考え方」は,新規制基準の内容や考え方について,設置許可基準規則を中心に解説する資料として作成されたものであり[3],更田委員によれば,「考え方」は,法律や規則で要求しているものと安全対策をつなぐ,安全対策の基本的な考え方を理解するための文書ということである[4]

しかし,上記のとおりわずか1回の会議を経たのみで策定されたことや,田中委員長が上記会議において訴訟対策として「考え方」を作成したと発言し(甲369のi~iiページ参照),これを受けて「考え方」が了承された[5]ことからも示されるように,この「考え方」は,法が要求する,最新の科学的知見を反映させた万全の安全対策を示したものではない。

また,「考え方」はあくまでも,原子力規制委員会の「主張」を記載しているに過ぎない。「考え方」の項目の中には,これといった理由を述べることなくほとんど結論しか述べていない項目が多い。このような「考え方」が「原子力規制委員会がそのように結論付けている」という理由だけで安易に採用されるとすれば,必然的に誤った判断を招き,司法が単に行政に追随するだけの機関に堕すことになる。

そして,上記懸念は,杞憂とはならず,大津地裁2016年3月9日高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定の抗告審において,大阪高裁は,「考え方」の内容の当否を検討することなく,「原子力規制委員会がそのように結論付けている」という理由だけで「考え方」を安易に採用し,2017年3月28日,高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定を取り消した[6]。かかる判断が明らかに誤りであることは,同決定が原子力規制委員会の委員長代理という要職にあった,我が国を代表する地震学者である島崎邦彦氏の科学的知見を「不合理」と断じたことからも明らかである。

「考え方」の中には,法令の規定,確立された国際的な基準,あるいは今日の科学的知見に反する記載が随所に見られる。このような不合理な「考え方」に基づいて作成された新規制基準に依拠した審査では,深刻な原発事故の発生が避けられない。このことの詳細は甲369で,客観的な証拠を摘示した上で詳しく述べられており,原告らもこれらの記載を援用するが,本準備書面においては特に,その中でも要点に絞って主張する。

本件の審理にあたっては,安全性を著しく軽視する原子力事業者及び規制当局に安易に追従して福島第一原発事故を招いた司法の反省を踏まえ,同報告書(甲369)の内容を十分ご検討いただき,新規制基準や適合性審査の合理性・妥当性については慎重に吟味し,福島第一原発事故のような悲劇を二度と繰り返さないという改正された原子力関係法令の趣旨を実現していただくよう求めるものである。

[1] 「平成28年度原子力規制委員会18回会議議事録」27頁

[2] https://www.nsr.go.jp/data/000155788.pdf

[3] 「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方に関する資料の作成について」

[4] 「平成28年度原子力規制委員会18回会議議事録」25頁

[5] 「平成28年度原子力規制委員会18回会議議事録」27頁

[6] http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/742/086742_hanrei.pdf

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