◆関西電力 闇歴史◆072◆

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◆関電の原発マネー不正還流は、最悪の幹部腐敗!(2019年発覚)
 その追及は、株主代表訴訟刑事告発
 ①株主代表訴訟は、会社訴訟と株主訴訟へ(→◆018◆
 ②刑事告発は、大阪地検が相次いで不起訴処分へ(~2022年12月)
 ・市民が大阪地検に告発→不起訴→検察審査会へ[4][6]
  →9名全員が再捜査へ(2022年8月)[8]
  →大阪地検は再度、不起訴処分(2022年12月)[9]
 ・地検はさらに追加の告発3件も、不起訴(2022年9~12月)[7]
 ・検察審査会へ申し立てるも、すべて却下(2023年3~10月)[7]
 【付 関電の四つの調査報告書へのリンク】
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▲告発の経緯(井戸謙一弁護士のまとめ、~2022年)

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◆[11] 検察審査会、2度目の審査で「起訴議決に至らず」[2023年3月30日付、4/29報道]
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・関電の金品受領問題に関連して、役員報酬減額分追加納税分の補填問題で刑事告発され、検察が再度、不起訴にした八木誠 前会長(73)、岩根茂樹 元社長(69)、森詳介 元相談役(82)の3人について、検察審査会は2回目の審査で、「起訴すべきという議決には至らなかった」という結論を出した。今回の告発内容で、強制的に起訴されることはなくなり、前会長らの刑事責任は問われないことになった。大阪第2検察審査会は、「特別背任などにはあたらない。説明責任は民事裁判の場で明らかにされるべきであり、刑事責任を問うことまでは困難だという結論に至った」としている。
・しかし、関西電力の企業体質は厳しく批判した。議決の最後に「真実を隠して説明責任を逃れようとする関電の隠ぺい体質や、庶民にとっては相当高額な報酬が一部の幹部職員によって決定されるなど公益性の高い企業に求められている公開性(手続きの透明性)の欠如を許せないという市民感覚は、当審査会においても原議決と変わるところはない。」「説明責任や義務は関電の提起した民事訴訟の場において明らかにされるべき」とある。
【弁護団の批判】
・告発した市民らの弁護団は、4/28、声明を発表。検察審査会の議決について、「起訴議決としなかったことは大変残念である。個人で納付すべき所得税を、なぜ会社が市民から支払われた電気料金から補填してもよいのかについて何ら説明がない」と批判。その上で、「このような事件を検察庁が不起訴にし続けたことが、関西電力を中心とする大手電力会社の闇カルテル問題、大手電力会社に相次ぐ不正閲覧、新電力の顧客情報を盗み見て営業、という不正問題などを次々と発生させる背景になっているのではないだろうか」としている。
・弁護団声明(2023/4/28)→こちら

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◆[10] 刑事責任、容疑ごとの今後の追及[2022年12月]
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・金品受領問題……検察審査会で「不起訴不当」とされていたため、再捜査で検察が再び不起訴としたことによって、刑事責任の追及はこれ以上不可。

・不正・不適切発注問題……不明朗なお金を生み出して地元工作に充てるという、事件の本丸である不正・不適切発注問題も、検察審査会で「不起訴不当」とされていたため、再び不起訴とされて当初告発による刑事責任追及は終了。

・役員報酬減額分、追加納税分の補填問題……検察審査会が「起訴相当」としたこれらの事件まで、検察は再び不起訴にした。「起訴相当」としている検察審査会が再び審議し、もう一度「起訴相当」と議決されれば、強制起訴される。

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◆[9] 大阪地検は再度、不起訴処分[2022年12月]
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・大阪地検特捜部は12/1、会社法の特別背任などの疑いで告発された元役員9人を再び不起訴処分(嫌疑不十分)とした。12/8、不起訴処分にあたって強制捜査をしたかどうか質問された検事は、強制捜査をしたか、しなかったかも、明らかにしなかった。

・今後、検察審査会は「起訴相当」と議決していた容疑(役員報酬の減額分を補塡したとする会社法の特別背任容疑や、金品受領に関する追加納税分を補塡したとする業務上横領などの容疑)について、2度目の審査を行う。
・「不起訴不当」と議決していた容疑(金品受領などをめぐるその他の容疑)については捜査終結。
・結局、森詳介、八木誠、岩根茂樹の3名が、再度、検察審査会の審査にかけられる。以下の図は、朝日新聞2022/12/2より

【参考】検察審査会の議決
11人の審査員のうち、8人以上が起訴を求めると「起訴相当」。
 起訴相当が2度議決されると強制起訴される。
②過半数(6人か7人)が再捜査を促すと「不起訴不当」。
③過半数(6人以上)が不起訴を妥当とすると「不起訴相当」。

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◆[8] 大阪地検の再捜査
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・検索審査会の指摘を受けて、大阪地検は再捜査に着手。
・2022年10月25日、弁護団に大阪地検から「起訴相当の議決を受けた告発の再捜査の期間を1か月延長する」との連絡。
・12月1日までに起訴相当とされた報酬等の闇補填を起訴するかどうかの決定が行われる。はて、どうなるか。

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◆[7] 地検はさらに追加の告発3件も、不起訴[2022年9~12月]
 検察審査会へ申し立てるも、すべて却下[2023年3~10月]

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(1) 2022年9月6日、土砂処分土地賃借の不正で新たな告発状を提出。関電コンプライアンス委員会報告書が、原発に絡んでの土砂処分と土地賃借で高値発注を行っていたことを具体的に明らかにしたこと(新聞では既に報道済み)から、これらの行為は特別背任、背任にあたると、関与した豊松元副社長ら3人を新たに告発。
(→◆062◆  1.土砂処分問題2.土地賃借問題

・ただし、この告発状は、当初告発とダブっているという理由で、2022年11月10日付にて、不受理になった。それならば、当初告発が「不起訴不当」と検察審査会から指弾されていることを受けて、検察自らが起訴すべきではないか。2023年2月3日、検察審査会申立。同年3月20日、検察審査会が申立却下。

(2) 2022年10月12日、同委員会が指摘した倉庫貸借の不正は贈収賄等にあたると新たな告発状を提出。原発推進派の高浜町会議員の事業失敗を救済するため、相場のおよそ倍の価格で倉庫を貸借し、相応の価格に戻す時に見返りとして土砂処分を高値発注したこと(新しく指摘された不正)は、贈収賄や特別背任等にあたるとして新たな告発状を、告発人1040人で提出。2022年12月27日、地検が不起訴の決定。2023年4月24日、検察審査会へ申立。2023年10月27日、検察審査会が不起訴相当の決定。
(→◆062◆  3.倉庫貸借問題

・その後、大阪地検特捜部は2022年12月27日、森元会長や元高浜町議ら7人をいずれも嫌疑不十分で不起訴処分とした。贈収賄の容疑については「職務との関連性や賄賂の受け渡しが認められなかった」、また特別背任の容疑については「財産上の損害や職務に背く行為などは認められなかった」としている。
・検察審査会への申立へ。

コンプライアンス委員会調査報告書(概要)こちら
コンプライアンス委員会調査報告書こちら

(3) 土砂処分、土地賃借、倉庫賃借で関電が高値発注を行い、高浜町元助役の関係会社や原発推進派町会議員に不当な利益を与え、会社に損害を出していたことが明らかになった。提訴時に分かっていた不正発注の損害額は3億2千万円だが、土砂処分だけで最大22億円の高値発注があった可能性がある。この間の非公開の「書面による準備手続き 」等で損害額が大きくなるので、請求の拡張を考えていると主張したところ、裁判所から請求拡張は株主代表訴訟では会社に対する提訴請求が必要とされた。そこで関電に提訴請求を行うことにし、関電宛に送付した(2022年10月26日)。

・その回答が、12月26日にあったが、関電は提訴請求を拒否。関電は、自らのコンプライアンス委員会報告書を否定して、あくまで高値発注はなかったと主張したいのか。そのため、関電に替わって株主が損害賠償請求を提訴する。

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◆[6] 2022年8月発表の検察審査会の詳細
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すべての容疑について不起訴が正当でなかったと判断
議決書「強制捜査や関係者から再度の事情聴取などを行って事実を明らかにしてほしい」

(1) 役員報酬の減額分の補填。退任した森元会長を含む18人に、退任後に補填することを決定。「公共性の高い企業のトップの地位にあったのに、みずからや身内だけにひそかに利益を図っており強い非難に値する。会社に損害が生じたことは明白だ」「内々に報酬額を決定しており、会長らに委託された権限の範囲を逸脱する」「自らの立場を利用して秘密裏に補填を行い、口止めまでしていた」
…会社法違反(特別背任)
★起訴相当→→森詳介元会長、八木誠前会長
●不起訴不当→八嶋康博元監査役

(2) 豊松秀己元副社長が納めた追加納税分の補填。豊松元副社長が国税局に納めた税金を補填。「会長、社長に委託された権限を逸脱」
…会社法違反(特別背任)、業務上横領
★起訴相当→→森詳介元会長、八木誠前会長、岩根茂樹元社長

(3) 福井県高浜町の森本元助役の関連会社に対する不適切な工事発注
…会社法違反(特別背任、背任)
●不起訴不当→八木誠前会長、岩根茂樹元社長、豊松秀己元副社長、白井良平元取締役、鈴木聡元常務執行役員、大塚茂樹元常務執行役員、八嶋康博元監査役の計7人

(4) 元助役側からの金品受領。「一部の役職員が不適切な工事発注に関与し利益の一部の還流を受けていたことは電気利用者などへの裏切り行為であり強い非難に値する。検察は強制捜査を行っておらず旧経営幹部らへの事情聴取も十分だったか疑問だ」「利用者からの電気料金を懐に入れていたに等しい」「悪しき慣行を正さなければ任務違背に当たりうる」
…会社法違反(収賄)
●不起訴不当→岩根茂樹元社長、豊松秀己元副社長

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[5] 検察審査会は大阪地検の全面的な誤りを指摘するも
 関電は「我 関せず」で、素知らぬ態度[2022年8月]

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・2022年8月1日…大阪第2検察審査会が3人を「起訴相当」と議決。経営不振を理由に電気利用者に料金の値上げを求めながら、その陰で元役員らの利益を図ったことについては、「電気利用者への裏切り行為」ととりわけ強く非難している。
・検察審査会は、会社法の特別背任容疑などで告発され、大阪地検特捜部が不起訴にした八木誠前会長(72)、森詳介元会長(81)、岩根茂樹元社長(69)の計3人を「起訴相当」とした。八木、森、岩根以外の6人は「不起訴不当」と議決した。
・「起訴相当」の場合、特捜部が再捜査し、原則3か月以内に刑事責任の有無を改めて判断する。再び不起訴としても、検察審査会が2度目の「起訴相当」の議決を出せば、検察官役に指定された弁護士が強制起訴することになる
・「不起訴不当」の場合は、検察が再捜査の上で不起訴とすれば、捜査が終結する
検察審査会の全面的な検察庁の誤りの指摘に関する弁護団声明こちら
・「原発マネー不正還流を告発する会」からの報告→こちら
・なお、関電は「当事者ではなく、お答えする立場にない」とのコメントを発表した。「原発マネー不正還流を告発する会」の加納雄二弁護士は「長年の癒着があったにもかかわらず、全く信じられない発言だ」と関電の姿勢を批判した。

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◆[4] 市民による刑事告発はすべて不起訴、検察審査会へ[2021年~]
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・2021年11月9日…大阪地検特捜部が不起訴処分。「関電の原発マネー不正還流を告発する会」は9人を刑事告発していたが、特捜部は、いずれも関電に損害を与える故意性などは認定できないとして、9人全員を容疑不十分で不起訴にした。強制捜査等は行われず、嫌疑不十分で全員を不起訴処分にしてしまった。地検OBが多数関電役員に就任した経過からみて、不都合な真実の隠ぺいに検察も加担したのか?
・2022年1月7日…1,194人で検察審査会へ申立

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◆[3] その後、株主代表訴訟と刑事告発で追及[2020年]
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・3月14日…金品受取り問題に関する第三者委員会からの調査報告書が関電に提出される。金品受領は75人、総額約3億6000万円と公表
【第三者委員会の調査報告書こちら
・【投稿】関西電力金品受領問題・原発の深い「闇」を隠す第三者委員会調査報告書
 Assert Web、投稿日:2020年3月31日 作成者:杉本 達也 →こちら

・6月8日…取締役責任調査委員会が旧経営陣の善管注意義務違反を認めた調査報告書を公表
【取締役責任調査委員会の調査報告書こちら

・6月9日…市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が役員報酬補填問題などに絡み、業務上横領などの疑いで八木氏らについて告発状を大阪地検に提出(→◆18◆
・6月16日…関電が八木氏ら旧経営陣5人に約19億円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴
・6月23日…脱原発個人株主5人が現旧経営陣ら22人に約92億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を提起
・裁判は、関電会社訴訟株主提訴併合)と関電株主代表訴訟の二本立てで進行されている(→◆018◆)。
・8月17日…コンプライアンス委員会が役員報酬補填問題で八木氏ら3人の善管注意義務があったと認定
・10月5日…大阪地検が告発状を受理

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◆[2] 新聞報道後の経過[2019年9月~]
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・9月27日…岩根氏や八木前会長ら23人が計約3億円相当の金品を受け取ったと報道
・10月2日…2018年9月にできていたが非公表にされていた社内報告書を公表
【社内調査委員会の調査報告書こちら
・10月9日…八木氏が辞任。第三者委員会を設置
・12月13日…市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が特別背任などの疑いで八木氏らを大阪地検に告発

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◆[1] 2019年6月、内部告発文書の送付までの経過
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・1977~1987年…森山栄治氏が高浜町の助役を務める
・2018年1月…金沢国税局が高浜町の建設会社を税務調査
・2018年7月…関電が社内調査委員会を設置。社外委員3名、社内委員3名(人事担当役員、コンプライアンス担当役員、経営企画担当役員)により構成
・2018年9月…社内調査委員会の調査報告書ができる。岩根茂樹社長ら6人を社内処分としたが、報告書は公表せず。岩根茂樹社長(当時)は、報告書を受領したが、同月中に八木誠会長(同)とともに、森詳介相談役(同)に相談し、「コンプライアンス上不適切な点はあったが、違法性は認められない」などとして公表見送りを決めていた(注-1-)。その後の第三者委員会は、このときの3人の対応を「ガバナンス(企業統治)の機能不全を示すものであったと言わざるを得ない」と厳しく批判
・2019年3月…森山氏が死去
・2019年3~6月…「関西電力良くし隊」から、岩根社長や監査役宛に通告などの手紙4通(→◆041◆、(1)~(4))
・2019年6月…「関西電力良くし隊」から、最終的な内部告発文書が広く各方面に送付(注-2-)(→◆041◆、(5))
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(注-1-)〔会計不正調査報告書を読む〕【第91回】関西電力株式会社「調査委員会報告書(平成30(2018)年9月11日付)」→こちら
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(注-2-)底が深い原発マネー
関西電力という会社はコーポレートガバナンスが全く機能しない会社、こんな会社は原発を持つ資格なし、全機運転を止めて廃炉にする以外ない
……高浜町の東山幸弘さん( 2019年9月29日記す、原発なくす蔵)→こちら
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◆[0] 関西検察のOBと関西電力の密接な関係
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(1) 2021年11月9日、大阪地検特捜部が刑事告発を不起訴処分にしたときは、「関西検察のドン」とよばれた土肥孝治元検事総長が元監査役、佐々木茂夫元大阪高検検事長が現取締役、小林敬元大阪地検検事正が今回の事件の社内調査委員会委員長を務めるなど、大阪地検と関電の深いつながりが、起訴の決定を阻んだのではないかと疑われる。

土肥孝治…大阪高等検察庁検事長などをへて、関西電力社外監査役など。「関西検察のドン」とよばれた。→Wiki
佐々木茂夫…大阪高等検察庁検事長などをへて、関西電力監査役、取締役など。2022/12/8の株主訴訟で明らかにされた内部告発によれば、検察官退任後は、原発マネー不正還流の問題は隠しとおすよう助言し、しかしマスコミに明らかにされそうになったら先んじて公表するようになどと、対応を指南していた。ばれなければ隠せという助言は、元検察官としての見識を疑わせる。「関西検察マフィアの親玉」「関電検察癒着共同体の親玉」と言われる所以。→Wiki
小林敬…大阪地方検察庁検事正のとき、「大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件」の責任を問われて辞職。関西電力コンプライアンス委員会社外委員、関西電力調査委員会委員長など。→Wiki

 → 郷原信郎:関電経営トップ「居座り」と「関西検察OB」との深い関係こちら
 (2019.10.7 Yahooニュース)

(2) 2022年8月1日
以下は『検察審査会の全面的な検察庁の誤りの指摘に関する弁護団声明』
(→こちら)の一節。
(関電不正マネー還流事件刑事告発弁護団 団長 河合 弘之、事務局長 加納 雄二)
「…・・ 検察は、自らの判断が市民感覚と甚だしくずれていることを猛省すべきである。まして、今回の事件については、関西検察のOBと関西電力の密接な関係が取りざたされている。大阪地検は、市民の合理的な疑念を晴らすためにも、直ちに再捜査に着手して、起訴相当とされた被疑事実のみならず、不起訴不当とされた被疑事実についても速やかに起訴すべきである。・・…」

(3)【参考図書】
『日本を滅ぼす 電力腐敗 政・官・司法と電力会社との癒着・天下りの実態』

三宅勝久 著
新人物往来社文庫
2011/11/8発行(なので、内容は少し古くなるが、腐敗の構造は今に継続)
関西電力についても、二人の経産官僚の天下りについて記載

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