投稿者「meisei」のアーカイブ

◆原発立地・若狭でも「原発NO」が大多数~私たちが聞いた若狭の皆さんの声

私たちが聞いた若狭の皆さんの声

◆福島原発事故は、原発が重大事故を起こせば、人々の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を根底から奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。また、原発事故の被害はきわめて広域におよぶことを実証しました。若狭の原発で過酷事故が起これば、その深刻な被害は、若狭だけでなく、関西一円にも広がりかねないことを示唆しています。

◆そう考えた「若狭の原発を考える会」は、毎月2回、1回1泊2日すなわち月4日かけて、若狭の集落から集落、路地から路地を歩いて原発反対を訴えながらチラシを配り歩く通称「アメーバデモ」を行っています。この行動は、京都、滋賀、大阪、兵庫、福井、ときには関東、中部などからの参加者も得て、すでに5年以上継続し、配布したチラシは30万枚以上になります。また、直接お話を伺った住民の方は、千数百人になります。

◆私たちは、この活動を通して、原発立地・若狭でも「原発はいらない」の声が大多数であることを知りました。とくに、関電が運転を画策している老朽原発(運転開始後45年にもなろうとする高浜1、2号機、美浜3号機)の再稼働にはほとんどの方が反対でした。ただし、若狭には、この声が表には現れ難い雰囲気があることも事実です。

「原発はいらない」は「若狭の民意」

◆3月~5月のアメーバデモでは、チラシを配布中に約70人の住民の方と話をしました。皆さんの反応を、原発反対の視点から、
①非常に好意的(原発反対の意見を述べ、チラシ配布を激励された)、
②好意的(「原発はいらんな!」程度の短い言葉をいただいた)、
③普通(「ご苦労さん」と言ってチラシを受け取られた)、
④否定的(「原発賛成」の意見を述べる、あるいはチラシの受け取りを拒否)
に分けると、① 3、② 2、③ 4、④ 1の割合でした。「原発NO」は、「若狭の民意」と言えます。

◆以下に, 最近、若狭で聞かせていただいた声を紹介します。

○「ここらはみんな原発反対やのに、町長さんや議員さんはどないしてはるんやろ」と住民の命や財産を守るべき自治体や議員の姿勢への批判を何度も聞きました。

○縁側におられたご夫婦にチラシを渡すと「おおい町では住民説明会が開かれてるわ。上の人がちゃんと『原発反対!』を言うてくれなあかん。あれは整理券がないと参加できないんや。」とのこと。自分が住む京都市内の方が福井県庁より原発に近いと伝えると「そうなんやなー。」と驚いた様子でしたが「がんばってな。」と言って下さいました。

○農作業姿の80歳代男性は、「使用済み燃料の行先も無くて、10万年も管理しなければならないというのに、いつまで原発を動かしているんや!今すぐ止めてほしいわ。」と言ってチラシ受取って下さいました。

○田植えの準備や畑の作付けをされている約10人の方に声をかけ、全ての方から「ごくろうさまです。」と言われました。

○チラシを両手で渡すと、わざわざ作業手袋を外して「ごくろうさん、原発はいらん。」といって受け取られました。

○80歳代の女性にチラシを渡すと、「どこから?」、「京都、滋賀からです。」と答えると「原発事故が起こったら、一緒やなあ。」と言って受け取って下さいました。その後チラシを渡した7、8人の方から「ごくろうさん。」と言われました。

○桃源郷のような集落で、畑仕事の70歳代の女性は、「ここはほんとにいいところや。」とおっしゃり、「若狭の原発で事故が起きたら、このきれいな景色も畑も田んぼもダメになりますよね。」と言うと、「そうや、原発はいらんね。福島の人ら気の毒やなあ。」としみじみとおっしゃった。

○草取りをしている年配の女性に、チラシを渡して話しかけると、「原発には反対や。もってくるときには、橋を架けてやる、道を通してやる、電気はただで、とか甘い言葉でだまされた。反対だけど、ここらでは隣の人ともそんな話はできん。外から来たあんたやから言えるんや。」とおっしゃったのが印象的だった。その後、3軒ほど隣のうちの庭におられた年配の女性にチラシを渡すと「このチラシいつも読んでる。いいことが書いてある。原発は反対や。応援してるで。」と、また、その近くの家の男性にチラシを渡すと「ありがとう。原発はあかんな。」と、わずか10軒ほどの集落の3人の方が「原発反対」を訴えられた。このとき、同じ村のこれだけの人が原発反対のご意見をお持ちなのをご本人たちはご存じなく、原発についての話しができない若狭の現状を垣間見た思いで、とても複雑でした。

○農家の前で80歳代の女性が、「一度聞いてほしかったんやけど、関電や東電は儲けるだけ儲けて、事故が起きると、国や関電は私らの税金を使って事故処理をする。私ら始末して生活しているのに。選挙は共産党に入れた方がいいんかなあ。一度聞いてほしかったんやあ。」と人生相談を受けました。

○自転車を押して坂道を登ってくる老婦人に原発反対のチラシを渡すと、「福島を見ていたら、高浜原発の5㎞圏内に住んでいる私は他人事とは思えない。」「私は原発反対。原発事故が起きたら、人間ばかりでなく、牛、犬、猫、ねずみまで命が奪われてしまう。こんなものはなくさないと。」「なぜ政府は原発をやめると言わないのか?不思議でならない。」「ここで事故が起きたらどうするのか?ヨウ素剤も配られていないし、避難の方法も分らない。」など、とうとうと述べられた。お年を伺うと「90歳を超えている」とのこと。

チラシの受け取りを拒否された方の声

○10~20人に1人くらいの方は、チラシの受け取りを拒否されました。理由は、「身内が関電関係に勤めているから」「原発がなかったら働く場所がなくなる、商売が成り立たないから」などです。

○「原発に反対するのなら、我々の生活を保障する、地域づくりについて考えてくれ。」との声も聞かれました。チラシの配布者は、「原発に頼らない町作り」を考え、議論することが大切だと思いました。

「老朽原発運転はダメ」はほとんど全員

(老朽原発運転に賛成の声は、聞かれません。)

○石垣に座っている80歳代の男性に、チラシを渡し、「関電は45年にもなる高浜原発を動かそうとしています」と言うと、「そんなもん動かしたらあかんわなー。事故でも起こらんとわからんのかなー」とおっしゃられたので「もう福島で事故を経験しましたよね」と言うと、「そうや!あんたごくろうさんやな」と言って下さいました。

○ポストにチラシを入れていたら、「何や」と声をかけられたので、「原発反対のチラシです。読んでいただけますか」と渡すと、「そうか、みんな反対や。ごくろうさん。関電も無茶や、40年超えて動かすのは。工事が遅れて動かすことができないようやなあ。遅れた方が良いんだが」と苦悩を訴えられました。

○通りに面した家の中に、通行人に見えるようにお雛様が飾ってあったので、じっと見入っていたら、「どうぞ中に入ってみてください。」と家人に言われ、年代物のお雛様など珍しいお雛様を見せていただきました。帰り際に「京都から来ました。こんなチラシを配っています。」と老朽原発の危険性について書かれたチラシを渡すと、じっと見てからボソッと「約束違反やな。」とおっしゃった。国策だからと原発をうけいれてきた地元の住民の方たちも、「40年超えの原発だけは動かしてはいけない。」ということは暗黙の内の約束事なのだと、このときはっきり感じました。

○庭木の剪定をしていた70歳代男性の方に、「40年を越える老朽原発を動かしてはならないと思ってビラを配っています」と話しかけると、「それはご苦労さんやな。頑張ってな。」と言われました。

○農作業用の軽トラで帰宅された70歳代の男性に「老朽原発のチラシです」と言って渡すと、「アカン、あかん、あかん、老朽原発はあかんで!ほんとにごくろうさんやなあ」と言われました。最初聞いた時は怒られたのかと思いました。

○「老朽原発は事故率が高くなります」と言ってチラシを渡すと「古くなると故障も起こる。そんなもん動かさんといてほしいわ」という声がほとんどで、「チラシはいらん」という人はありませんでした。

○「原発は反対だけど、何もできないから、こうして反対の声を届けてくれるのはありがたい」という方も2人おられて、「ゆっくり読ませてもらうわ」とチラシ配りを歓迎されている様子の方が数名おられました。老朽原発を動かすのは怖いというのは共通の認識だと感じました。

◆私たちが見聞した限り、
「原発反対」は「若狭の民意」です。
この声を顕在化させましょう!


2019年6月27日
若狭の原発を考える会 連絡先:木原(090-1965-7102)


◆老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の 再稼動を許さない! 今年後半の運動についての提案

老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の
再稼動を許さない!
今年後半の運動についての提案

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」


「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、「オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、 サヨナラ原発福井ネットワーク、 福井から原発を止める裁判の会、 原発住民運動福井・嶺南センター、 原発問題住民運動福井県連絡会で構成)」、「若狭の原発を考える会」、「ふるさとを守る高浜・おおいの会」の呼びかけで2017年8月に結成された「大飯原発うごかすな!実行委員会」を2018年6月に改称して設立された団体です。


◆6月29日、「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は拡大実行委員会を開き、関電が来年にも画策している老朽原発・高浜1、2号機,美浜3号機再稼動の野望を阻止するための行動について話し合い、以下を決定しました。

【1】10月1日から11月22日を「老朽原発うごかすな!キャンペーン」期間とし、創意工夫を凝らした多種多様な行動を展開する。

この期間中には、

①各地で大中小の集会、学習会、懇談会、デモなど、多様な催しを工夫して繰り広げる、
②若狭全域での大規模なチラシ配布と宣伝行動(拡大アメーバデモ)を行なう、
③京都府下、滋賀県下、福井県下、兵庫県下で街宣車を出して、老朽原発反対を訴える、
④若狭、関西で比較的大きな集会を開催する、
⑤名古屋地裁の老朽原発裁判をはじめ、各地での原発裁判と連携する、

などが提案されました。

【2】11月23日に高浜原発を出発し、12月8日に関電本店(大阪)に至る200 km、16日間の「老朽原発うごかすな!リレーデモ」を行う。

◆このリレーデモでは、高浜町(高浜原発)→滋賀県高島市→(湖西)→大津市→京都市→大阪(関電本店)のコースを本流とし、

(1)高浜町を出発し、舞鶴市、宮津市、京丹後市、福知山市、綾部市、亀岡市を経由して本流に合流するコース、
(2)福井市を出発し、美浜町を経由して本流に合流するコース、
(3)名古屋市を出発し、米原市、大津市を経由して本流に合流するコース、
(4)姫路市を出発し、神戸市を経由して大阪(関電本店)に到るコース、
(5)奈良市を出発し、大阪(関電本店)に到るコース

などを支流とするリレーデモも行い(下図参照)、最終的には大阪で大集会を開催することになりました。

◆本流は徒歩で踏破することを基本にし、支流は自転車、自動車、列車の利用も含めて、あまり無理のない行動を考える。また、支流の実施時期は、本流の実施時期に合わせなくてもよく、【1】のキャンペーン期間中に、先取り的に実施する案も出ました。

【3】昨年来続けている公開質問状運動を継続する。すでに提出済みの新任の福井県知事への公開質問状への回答は、7月31日に得られるので、公開質問状、回答をチラシにして、若狭をはじめ全国に広く配布する。

これらの行動への、ご賛同、ご支援、ご参加をお願いします。

なお、【1】~【3】の行動の積み上げの上に、来年、「老朽原発うごかすな!関西大集会」を企画することも話し合われました。


「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」・木原壯林(若狭の原発を考える会)


◆京都地裁所長あてに,三度目の申入書を提出

申 入 書

2019年7月16日

5月31日に,所持品検査のあり方についての申入書を提出しました。その中において「遅くとも6月末までには文書にて回答してください。」とお願いしましたが,まだ回答をもらっていません。これまで,どのように検討されているでしょうか。

また,私どもの大飯原発差止訴訟では,8月1日午後に,次回の口頭弁論が予定されています。8月1日といえば,猛暑が予想されます。野外での待機では,熱中症などのおそれがあります。とりあえずの措置として,裁判所建物内において持品検査を受けないで待機できるスペースをつくってください。

以上,ご検討いただき,早急にご返事いただきたく,申し入れます。


原告団の申し入れ(1月31日付→こちら
弁護団の申し入れ(3月28日付→こちら
原告団の二度目の申し入れ(5月31日付→こちら

◆来年4月から、原発稼働は電力会社の思いのまま?

【2019年7月19日,京都キンカンで配付】

2020年4月から始まろうとしている健全性評価制度【注1】に基づく新検査制度では、原発運転に関わる検査が大幅に緩和されようとしています。


【注1】「健全性評価制度」による検査では、定期検査等で原子炉の本体や冷却材等の高圧のかかる設備や機器に、亀裂などの欠陥が見つかった場合は、発生原因を推定し、設備を使い続けると一定期間後に欠陥がどの程度進むかを予測し、安全性への影響を評価します。その結果、安全上の基準すなわち「維持基準」を満たしていることが確認できれば、欠陥部分の交換や補修をしなくても、監視の強化や経過観察を行いさえすれば、その設備を継続して使用することができます。従来は、欠陥部分を補修あるいは交換していました。

【チラシ作成者の意見】この制度では、「健全性評価」を科学的・合理的な根拠に基づいて実施するとしていますが、健全性は当該装置の特性や置かれた環境に大きく依存するため、現在科学技術では確実な評価など不可能です。


◆以下は、若狭連帯行動ネットワーク2019年5月16日発行の「若狭ネット」第175号、その修正版(6月7日)および若狭ネット資料室長・長沢啓行氏の講演を基に、来年4月施行予定の新検査制度についてまとめたものです。

新検査制度の施行に至る経緯

東電等の事故隠しが新検査制度導入の発端

◆新検査制度導入の発端は、福島第二原発3号機で2001年の定期検査時に発覚した検査データ改ざんによる長年の原子炉内シュラウド【注2】のひび割れ隠しでした。3号機では、1997年定期検査でシュラウド4か所にひび割れが見つかり、最大の1カ所はほぼ全周(16.5 m)に断続的に広がっていたのですが、東電は「異常なし」と隠したまま定期検査を終了したのです。その後の4年間に行われた定期検査でもひび割れを隠し通し、放置したまま運転を続けました。定期検査の期間も極端に短縮され、1998年には国内最短の36日を記録しました。しかし、2001年の定期検査で「原子炉内の清掃状況を確認していたら,偶然シュラウドのひび割れを発見した」と、ひび割れ発見日を改ざんして国へ報告し、修理したのです。データ改ざんは1986年以降長期にわたって、東電取締役も関与して組織的に行われました。


【注2】シュラウド(shroud;「覆うもの」の意)。原子力分野では、沸騰水型原子炉(BWR)圧力容器内に設置され、燃料集合体と制御棒が配置された原子炉内中心部の周囲を覆っている、円筒状のステンレス製構造物の名称。「炉心の燃料集合体を支える傘立」として機能する。原子炉運転中は摂氏300℃弱、70気圧前後の環境下で、燃料集合体より多量の放射線を受ける。


このようなトラブル隠しがあれば、本来なら検査を一層厳しくすべきところですが、逆に、大幅に緩和された検査制度が導入されました。「データ改ざんが行われたのは、ひび割れを評価する基準がなかったためだ」という理屈で、2003年10月に新しい安全性評価基準(維持基準)が導入されました。以後、この基準に適合していれば、ひび割れなどの欠陥を補修したり、取替えたりしなくても、そのままにして原発の運転を継続できるようになったのです。

◆しかも、この検査制度の導入時には、「運転状態が良好でも連続運転期間の延長を認めることはない」としていたにもかかわらず、この検査制度を基調として2009年1月に施行された新検査制度では、連続運転期間を最大24ヶ月まで延長することを認めています。

◆この新検査制度による連続運転期間延長を申請したのは、運転開始後6年目の東北電力東通1号機でした。2010年11月に「連続運転の13ヶ月から16ヶ月への延長申請」が提出され、2011年7月から国内初の16ヶ月運転に入る予定となっていました。その矢先に福島原発事故が起きたため、東北電力は6月に「13ヶ月運転へ戻す」と発表し、11月には延長申請を取り下げました。

新検査制度の見本は米国にあります

◆米国原子力規制委員会(NRC)は「計画的に行う機器の分解修理作業を縮小し、代わりに、確率論的リスク評価(PRA)【注3】で原発システムの故障時期を予測し、実際に故障する数週間前に対応して、故障を避けるという方針を推し進めました。


【注3】事故は、事故のきっかけとなる出来事(起因現象)と、その出来事が事故に発展することを防ぐための様々な安全対策との関りで発生する。PRAでは、起因現象の発生頻度に各種安全装置が故障などで機能しない確率を掛け合わせて、事故に至る頻度を評価する。


◆また、この方針の下で、「運転中に保守・検査を行うか、12ヶ月毎に保守・点検をしなくても故障に至らないことを高い信頼性で示すことができれば、12ヶ月を超える連続運転を承認する」ことにしました。その結果、原発の連続運転期間が18~24ヶ月へ延長され、核燃料の高燃焼度化が可能になり、設備利用率が1990年代に70~80%へ急上昇し、2002年には91.5%に達しました。

◆例えば、ブランズウィック1号機は、2003年3月の停止までの23.2ヶ月の連続運転で、軽水炉運転の世界最長記録を達成しました。保守・点検も蒸気発生器細管検査を10%のサンプリング(抜き出し)検査で済ませるなどで時間とコストを節約し、検査のための原発停止期間は平均60日から40日以下へと短縮されました。

◆また、2002年9月までに、約半数の原発で安全対策を犠牲にした電気出力の上昇(1~10%)が認可され、2001年以降は、蒸気発生装置やタービン等の効率改善による大幅な出力上昇(15~18%)も相次いで承認されました。運転ライセンスの40年から60年への延長も認められました。

◆米国では、建設費高騰で原発新設は経営的に成り立たず、既設原発でも設備利用率が90%台を割り込めば、LNGやシェールガスによる火力や再生可能エネルギーに太刀打ちできない状態に立ち至っています。そのため、老朽原発の一層の経済性追求と運転延長が推し進められています。

◆日本は10年以上遅れて米国の安全規制緩和に追従しようとしたのです。

福島原発事故で中断された新検査制度が息を吹き返す

◆福島原発事故で棚上げになった新検査制度は、原子力安全・保安院と原子力安全委員会の解体に伴って発足した原子力規制委員会に引き継がれましたが、2017年4月に抜本改訂され(以後、これを「新」新検査制度と呼びます)、規則や運用ガイドの整備が行われ、昨年10月から始まった試運用も、本年10月から全原発で最終フェーズに入り、来春4月から施行されようとしているのです。

「新」新検査制度とは?

電力会社が定期検査を行い、運転期間も決める

◆来年4月施行予定の「新」新検査制度は、下記①~③のように、電力会社の一義的責任(電力会社任せ)を一層助長するものです。「新」新検査制度導入の根底には、「国が規制を強めると、電力会社は規制をクリアするために、データ改ざんや事故の隠蔽に走るから、むしろ規制を緩和すべきだ」というとんでもない考え方があります。

①「定期検査」は「定期事業者検査」として電力会社が実施し、原子力規制委員会は立会う必要もなく「合否判定」も「了解」もせず、報告を受領し、公表するだけになります。

② 次の検査までの期間も最大24ヶ月で、原子炉の状態の維持基準に基づいた評価によって電力会社が決め、「原子力規制検査」で確認されるだけになります。
これで運転期間を最大24ヶ月へ引上げ、定検期間を大幅に短縮して、設備利用率を90%以上へ引上げようとしています。

③ 定期検査時に原発を止めて行っていた保守点検の多くを、運転中に行い(オンライン検査)、記録をとって報告すれば良いになります。報告が遅れたり、内容に疑義が生じたり、見直しが必要と判断されたときに初めて、原子力規制委員会から措置命令や罰則適用が行われる手順になります。

①~③のような電力会社の都合任せの検査では、組織的かつ系統的に報告が改ざんされ、危険な状態が隠蔽されても未然に防ぐ手立てはありません。保全システムや保全計画は事前審査され、保全結果の報告はチェックされますが、建屋・施設や機器・配管類の劣化や異常を早期に発見して対処できているかどうかは、「一義的責任」の名目の下に電力会社任せになります。

◆連続運転期間の13ヶ月(現行)から最大24ヶ月への延長は、維持基準による健全性評価に基づいて行われます。たとえば、ひび割れなどの欠陥が見つかったとき、欠陥の進展によって安全機能が維持できなくなるまでの期間(「判定期間」:法令では「技術上の基準に適合している状態を維持することが確認された期間」という)を電力会社が勝手に評価し、連続運転期間を決めます。連続運転期間は、「判定期間」が13ヶ月以上であれば最大13ヶ月、18ヶ月以上であれば最大18ヶ月、24ヶ月以上であれば最大24ヶ月の3種類の枠内で決めることができます。

◆実際には、核燃料の設計燃焼度を超えては運転できないため、燃料交換の都合も加味して運転期間を決めます。ここで、24ヶ月運転を行うには燃焼度を今の4.8万MWd/t(メガワット日/トン)から5.5万MWd/t以上へ引上げる必要があります。高燃焼度燃料では、燃料棒内に放射性物質量が増え、崩壊熱が高まるため、炉心溶融事故の危険性が高まり、長期連続運転による燃料棒破損も深刻になります。

以上から明らかなように、「新」新検査制度は、原発の稼働率向上を目的とし、電力会社の経済性(利潤)追求に迎合するためのものです。また、欠陥を放置したままの運転や長期連続高燃焼度運転を容認するもので、原発重大事故の危険を増大させるものです。

「新」新検査制度は、老朽原発の審査・認可に先取りされています

◆新検査制度の施行は来年4月からですが、その内容は、すでに老朽原発の40年超運転認可に取り込まれています。

◆40年超運転が認可されるには、
① 特別点検を実施し、
② 劣化状況評価を行い、
③ 保守管理に関する方針を策定しなければなりません。

◆ただし、特別点検で原発に重大な劣化が見つかっても、それで運転が不許可になるのではなく、その劣化を維持基準で評価し、補修・取替の保守管理方針を策定すれば、補修・取替をしなくても、40年超運転が認可されるのです。

◆すなわち、新規制基準に適合するための過酷事故対策工事は避けられませんが、老朽化で劣化した建屋・施設や機器・配管類を直ちに補修・取替する必要はなく、維持基準に基づいて劣化を評価し、40年超運転に入った後で、保守管理計画に沿って対処すれば良いのです。

◆なお、高浜1、2号機と美浜3号機の40年超運転は2016年4月と10月に認可され、3基合計で約4千億円をかけて対策工事が進められていますが、上記のように、この工事でこれらの原発が新品同様に生まれ変わるのではありません。

◆例えば、高浜1、2号機の工事では、過酷事故対策として格納容器上部遮蔽を設置し、基準地震動引上げに伴って耐震性がないと分かった燃料取替用水タンクの取替や海水取水設備の移設を行い、総延長約1,300 kmのケーブルの防火シート施工や難燃ケーブルへの取替などを行っています。

◆美浜3号機の工事でも、基準地震動引上げに伴って耐震性がないと分かった使用済燃料リラッキング用ラックの取替、使用済燃料ピット補助建屋基礎の補強、炉内構造物(炉心槽、上部炉心支持板、上部炉心板)の取替、地震時に崩壊する恐れのある高台の掘削・構台設置、総延長約1,000kmのケーブルの防火シート施工や難燃ケーブルへの取替などを行っています。これらは、新規制基準に対応する対策で、老朽劣化した建屋・施設や機器・配管類を補修するあるいは取替るものではありません。

原発は劣化していても、運転60年までの保安計画を提出すれば運転認可

◆以下の①、②は、特別点検で重大な劣化が見つかっているにも拘わらず、40年超えの運転審査で、劣化状況調査と保守管理に関する方針を策定すれば良いとされた例です。

① 原子炉容器の中性子照射脆化に関して、高浜1号機では運転開始後60年時点の脆性遷移温度【注4】の予測値は97℃と高く、上部棚吸収エネルギー【注5】の予測値も65J(ジュール)と基準の68Jを下回り、事故時に原子炉容器が冷却水によって急冷されたとき、破損する危険性が高いにもかかわらず、そのまま60年運転してもかまわないとされています。


【注4】原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ています。鋼鉄は、高温ではある程度の軟らかさ[粘り強さ;靱性(じんせい)]を持っていますが、脆化(ぜいか)温度以下に冷やされると、ガラスのように硬く、脆(もろ)くなります。圧力容器の鋼鉄は、原子炉運転中は、約320℃、約150気圧の環境(加圧水型PWRの場合)で中性子などの放射線に曝(さら)されているため、原子炉運転期間が長くなると、鋼鉄の硬化温度(脆性遷移温度)が上昇します。例えば、初期にはマイナス16℃で硬くなった鋼鉄も、1、18、34年間炉内で放射線に曝されると、それぞれ35、56、98℃で、40年を超えると100℃以上で硬化するようになり、脆くなります。
 圧力容器の脆性遷移温度が高くなっている原子炉が緊急事態に陥ったとき、冷却水で急冷すると、ガラスを急冷したときのように、圧力容器が破損する(割れる)危険性があります。使用前の鋼鉄は、脆性遷移温度が零度以下ですから、水冷では破壊されません。


【注5】上部棚吸収エネルギーは、高温時(脆化していない温度)における材料の粘り強さ(靱性:外力によって破壊され難い性質)の指標。このエネルギーが大きいほど、破壊され難い。


脆性遷移温度や上部棚吸収エネルギーの予測の誤差は大きく、基準地震動が過小評価されているにもかかわらず、予測値の計算で加圧熱衝撃【注6】にも耐えられる、亀裂が一気・瞬間的に進行する破壊(不安定破壊)は発生しないと評価しているのです。


【注6】事故などにより加圧された原子炉容器が急激に冷却され,原子炉容器内外間の温度差により高い引張応力(引っ張る力が働いたとき材料内部に生じる力)が容器内面に発生する事象;PTS(Pressurized Thermal Shock)


② 電気・計装設備の絶縁低下に関して、高浜1、2号機のケーブルは60年時点までに絶縁低下が起こると評価されたのですが、すぐには取替えず、寿命年54年と評価されたケーブル(高浜1号機)は50年運転時点までに取替え、寿命年47年と評価されたケーブル(高浜2号機)は45年運転時点までに取替えればよいとしています。
(ケーブルの寿命年は、ケーブルの設置環境などに依存するため、正確な予測が困難なことは自明です。)

このように、老朽劣化していても、維持基準で60年時点まで技術上の基準が維持されるかどうかを評価して、維持できない場合には保守管理方針を策定しさえすればよいことになったのです。

「新」新検査制度は、とんでもない制度

① 原発の機器・配管等が劣化(ひび割れの発生など)していても交換・補修せずに、そのまま運転することを認めています。

② 13カ月ごとに行われていた「施設定期検査」に代わる「定期事業者検査」では、例えば、電力会社が「劣化は24ヶ月以上経っても深刻にはならない」と評価すれば、原発を最大24ヶ月まで連続運転できます。

③ 定期検査は「定期事業者検査」として電力会社が行い、原子力規制委員会の合否判定(了解)を要しません。

④ 原発を止めて行っていた点検を減らし、運転しながらのオンライン検査を増やそうとしています。

施行を許してはなりません


2019年7月17日発行
若狭の原発を考える会 連絡先;木原壯林(電話:090-1965-7102)


「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は
次の行動を呼びかけています。

【1】10月1日から11月22日を「老朽原発うごかすな!キャンペーン」期間とし、創意工夫を凝らした多種多様な行動を展開する。
【2】11月23日に高浜原発を出発し、大阪(関電本店)に至る200 km、15日間の「老朽原発うごかすな!リレーデモ」を行う。

ご賛同、ご支援、ご参加をお願いします。


◆8/1の第24回口頭弁論のご案内

重要なお知らせ!
8/1の傍聴席抽選のリストバンド配布は,裁判所からの通知によって

13:00~13:45
になりました。
(13:30~13:45,は間違いです)
(13:00~13:15,も間違いです)
(デモは予定通り,12:10集合,12:15出発です。)

◆Facebookのイベントページ → こちら

◆裁判に参加する方法…以下,三つの方法があります。

[1] 原告席…法廷の中で柵の内側に,原告として入ります。被告の正面に座ります。

・原告団が氏名を裁判所に通知します。希望される場合は★7/23(火)★までに電話,FAX,葉書などで末尾記載の事務局宛ご連絡ください。
・E-Mailでの応募と合わせて先着順とし,定数に達するまで募集します。
・この郵送連絡を受け取っている方は,申し込めば,先着順で原告席に座ることができます。
・合計35名ほどの原告が参加できます。

[2] 傍聴席…法廷の中で柵の外側。88席あり,そこに座るには,裁判所が抽選を行います。

・13:30~13:45(見込み)の間に,京都地裁正面玄関前で,抽選リストバンドが配布されます。
・傍聴席は,原告でない方も,誰でも抽選によって参加することができます。
・傍聴席に入ることができなかった場合は,次の[3]に記載の模擬法廷にご参加ください。

[3] 模擬法廷…弁護団が用意します(法廷と同じ14:30開始)。そこに参加するには,

・京都地裁の構内の南東角にある「京都弁護士会館・3F大会議室」へ,直接おこしください。
・法廷よりもわかりやすく,弁護団が解説します。【注意】 今回は地階ではなくて,3階です。
・事前に提出されている被告(国や関電)側の書面があれば,その解説も行います。

◆報告集会の開催

・法廷の終了後(15:30頃から16:30頃まで)「京都弁護士会館・3F大会議室」にて報告集会を開催します。【注意】 今回は地階ではなくて,3階です。
・裁判の進行などを,弁護団から説明いたします。裁判に関するご質問なども受け付けます。

◆開廷前のデモ

・市民に脱原発裁判をアピールするため,毎回,裁判所周辺のデモを行っています。12:10 までに京都弁護士会館前(京都地裁構内の南東角)に集合です。ぜひご参加ください。
・出発は12:15 です。13:00ごろには終わる予定です。
デモの後に,裁判所が行う傍聴席の抽選に応募することができます。

◆タイムテーブル

・12:10…弁護士会館の前に集合
・12:15…裁判所の周辺のデモに出発。13:00頃まで
・13:30…傍聴券の抽選リストバンド配布開始。地裁北玄関前。傍聴は誰でも可能です。
・13:45…裁判所による傍聴席の抽選リストバンド配付終了
直ちに抽選→傍聴券の配布
抽選にもれた方,入廷を希望されず模擬法廷に参加される方は
・ 14:30までに弁護士会館・3階大会議室の模擬法廷へどうぞ
・14:30…開廷,弁論開始。同時刻に弁護士会館・3階大会議室で模擬法廷を開始
・15:30ごろから…閉廷後,弁護士会館・3階大会議室で報告集会。30~60分程度

◆裁判の内容

・原告から……太田歩美さん。福島第一原発事故で,避難指示区域外の水戸市から大阪に避難し,現在は損害賠償関西訴訟(大阪地裁)原告。福島県と茨城県との県境に壁があるわけではない。もし大飯原発で何らかの事故が発生したら,また避難しなければならないでしょう。しかし,縁もゆかりもない土地で一から生活を始めることの辛さは,もう十分味わいました。

・原告から
……近江裕之さん。与謝野町(京都府北部で宮津市や京丹後市に隣接)に住む現職の高校教師。学校で授業中に原発事故が起こったら,生徒や自分自身はどのように避難するのか,皆目,目処が立たない実情を訴える。

・弁護団から
…地震について,関電の主張に対する反論。「関西電力による大飯原発に襲来する強震動予測の不正確性、原子力規制庁による2016年熊本地震の分析の問題点」

「6.26 おおい町現地行動」の報告とお礼

【2019年7月5日,京都キンカンで配付】

大飯原発3号機起動(再々稼働)阻止!
6.26 おおい町現地行動」の報告とお礼

◆標記の集会は「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」の主催で、6月26日(水)午後1時より大飯原発ゲート前で開催されました。緊急の呼びかけにもかかわらず、65名の結集を得て、原発全廃の強い決意を関電と政府に突きつけることが出来ました。集会に先立つ12時からは、おおい町大島地区で、酷暑の中、3.3 km のデモ行進を行い、おおい町の皆さんに、声を限りに「原発全廃!老朽原発再稼働阻止!」を訴えました。また、関電の会長、社長、大飯発電所長に、申し入れを行い、大飯原発3号機再々稼働に抗議し、原発全廃を要求しました。

ご参加、ご支援をいただきました皆様に、深く感謝し、お礼申し上げます。

◆「3.24老朽原発うごかすな!高浜全国集会」、「5.19老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」、「6.26おおい町現地行動」の成果を拡大し、さらに大きな反原発運動を波状的に展開して、老朽原発廃炉、原発全廃を実現ましょう!


「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」木原壯林(若狭の原発を考える会)
2019年7月発行


◆6月20日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者ほか1名。
使い捨て時代を考える会;4名。

今回は以下の質問書を提出し、話し合いました。

質問書
……………………………………………………………………………
1.このたび関西電力の分社化で京都支社のビルには送配電カンパニーが入り、発電事業は他へ移行するとのことですが、全体としてどのような組織編成になるのか教えてください。そうなった場合の本会との話し合いはどのように継続できるのでしょうか。

2.これまでの話し合いの中で私たちが述べた疑問を列記します。どのような見解をお持ちでしょうか。

1)テロの対象となるような設備で発電すること
2)地震および火山などの影響評価が確定していない状態で原発を稼働させていること
3)危険性の高い稼働40年を超えた老朽原発の運転延長を進めていること
4)危険性の高いMOX燃料での発電を進めていること
5)使用済み核燃料の処理の目途が立たないのに原発を運転し続けていること
6)避難計画が立てられていない中で原発を運転していること
7)立地自治体以外の自治体と再稼動・運転延長には事前了解を必要とするという安全協定が結ばれていないこと

3.分社化によって、送配電部門は新電力にどのように対応するのでしょうか。原発を推進する関電からの顧客離れが続いていますが、今後の対応をお聞かせください。

以上

……………………………………………………………………………
話し合いの内容
(Q;こちら側の発言,A;関電の発言)

Q 送配電カンパニーは関電の100%子会社なのか。

A 京都支社は7月から送配電カンパニーとなり2020年4月より子会社となる。2020年3月までは同じ会社である。7月以降は送配電カンパニーとなり電気事業法23条により広域性・中立性をもって事業を行うので、個別発電に関する話し合いはできなくなる。

Q 関電は他の電力会社と比べて圧倒的な規模だから公平性はむずかしいのではないか。どう理解したらよいのか。

A 電気事業法の解釈の問題を言っているのか。新電力と関電は公平に扱われなければならない。

Q その公平性が疑問視されている。九州電力など巨大発電施設を持つところでは新電力の受け入れを拒否することが現に起こっている。弱小電力を全面的に引き受けるなら問題ない。原発は突然止まるが、そうなったらどこかに割り振らなければならなくなるのではないか。

A 出力制御の順番のことか。優先する発電が決まっているのでどうしても再生可能エネルギーで調整することになる。

Q そのことを議論するつもりはない。そもそも原発を優先するという順番を決めているのは日本だけのことで、欧州などでは再生可能エネルギーをベース電源として、原子力や火力で調整している。公平性がこれまでの実績ですでに疑問ということだ。公平性は予定されていない。

A 質問を端的に言ってもらいたい。

Q 100%子会社では関電の存在は大きい。法律的に中立となっているが、それが保たれるか疑問だ。

Q 公平性を保つために話し合いを続けられないというが、送配電部門が話し合う場とならないとは言えない。

Q 組織図からするとみなさん(谷口氏たち)は送配電の広報になるのか。

A そうだ。

Q 発電部門は福井と大阪になるのか。

A そうだ。面談は大阪本社に広報室があるがそこではやらないと言っている。

Q 月1回ランチタイムの行動があるということだが。

A ビル管理上、新規は受け付けないとなっている。1階ロビーで話し合いをしていたが、こういう紳士的な場になっていない。録音で聞いたが罵声が飛び交っていた。

Q 1回参加したことがあるが、その時は「紳士的」だった。

A みなさんは「新規」に当たるので、本店では受けられないということだ。

Q 我々は8年も続けてきたので新規とは言えないのではないか。組織改編で受け付けられないというのはおかしい。送配電部門だから受け付けないということにも疑問がある。託送料金はいまのところ関電の廃炉には使われないかもしれないが、福島事故には使われる。今後はどうなるかわからない。送配電に関しても質疑をしたい。

A 福島に関する質疑などはホームページなどで対応している。質疑の場をもってしまうと、原子力の話をしていないと言っても、査察に入られたら…(問題になる)。社内では受けられない。福井では面談はやっていない。申し入れ書など持ち込まれることがあるが、ビル管理上受け取るだけだ。

Q 話し合いを避けるとは役所以上に官僚的だ。民間企業としてそれでいいのか。慎重に考えてほしい。

Q この話し合いでは広報担当のみなさんは広報の役割を果たしていた。いろいろなことが聞けた。大阪、福井で対応できないというのでは困る。

A 本店で受け入れるか否かについて、微力ながら受け入れられないかと聞いてみたが、HP、SNSで発信しているので、そちらを参照してHPで問い合わせてもらいたいとのことだった。

Q 経営のことや技術のわかる人と話したいと言ってきたが、本店の態度は厳しい。改めて本店に交渉してもらいたい。本店は公式に行くとすべて拒否される。

Q 明日の株主総会でこのチラシ(「加速している関電離れ」というチラシ)を配りたい。喧嘩する気ではなく健全経営を望んでいるのだ。電力の安定供給は大事だし、分社化で健全性がなくなるなら分社化すべきではない。東電は国が守っている。東電の元幹部3人が訴えられているが、裁かれるべきは霞が関だ。経営を変えてほしい。話し合いが受けれないなら、この動きをもっと広げていく。だからこの話し合いは大事なのだ。慎重に受け止めてもらいたい。関電からの離脱を願っているのではない。健全経営に変わることを願っている。

A 不買運動なのか。

Q そのようなことだ。原発の電気は買わないということだ。話し合いの窓口もないとなるとそうせざるを得ない。送配電美門は完全別会社でなければならない。公平性を疑う。話し合うことは大事だ。このままだと本社で話し合うことになる。

Q 火山灰について聞きたい。

A 5月29日に規制委員会の資料が出ているが見ていない。規制委員会が判断した通り大山は活火山ではなく、たとえ噴火しても大きな影響は受けないとのことで、運転差止にはならない。

Q 今年12月27日までに再申請になったとのことだが、どういう内容か。

A 規制委員会が30㎝というので、30㎝で申請することになると思う。

Q きちんと対策をとっているのか。

A もともと50センチくらいの重量の火山灰に耐える建物を作っていた。だから私個人の考えだが、数字を書きなおして申請し直すだけでいいだろうと思う。

Q 地震のガル数でも計算がどんどん上がっていく。本当に安全か疑問だ。

A 審査がOKで稼働している。

Q 樋口元裁判官の話では耐震性が一般住宅より低いということだそうだ。大丈夫なのか。

Q 疑問に対して先に答えありきだ。計算で大丈夫でも実証されていない。原子力発電は実証できない。火力発電などは改善されてきているが、原発はどんな危険があるか想定していなかった。企業姿勢そのものが問題だ。これまで続けてきた話し合いがなくなるなら、危険が暴走することに居直ったと考える。分社化しても資本系列が一緒では。金がすべてなのではないか。

A そんなことはない。

Q 送配電部門での話し合いはホールディングスの指示でできなくなるのではないか。

A 同じ会社だから電気事業法上はできる。

Q この社会のルールに従っていることに異議はないが、そのルールで福島の事故が起きた。規制委員会に責任を押し付けている。慎重に受け止めて、この話し合いを続けてほしい。FIT電力を差別しているのではないか。

A 日本のルールがある。

Q スペインなどは違う。

Q 原発のことは送配電の問題でもある。公平性を期待しているからこそ話し合いたい。

A 今後の面談を申し込むということか。

Q 送配電部門での話し合いはできないのか。

A みなさまとは特別に話し合っている。

Q 特別とはそちらの事情ではないか。

A 引き続き京都でということか。

Q そうだ。なぜここでできないのか。

A 7月1日から変わってしまうので。

Q 話し合いはここで続けてもらいたい。谷口さんはどこに行くのか。

A 送配電部門だが、大阪本店に行くことになっている。京都の送配電部門では、質問書を持ってきたら受け取ることはできる。受け取って電力事業部門にもっていくことはできる。ここの建物は関電のものだが、建物の管理は送配電カンパニーが行う。

Q 発電も送配電も一つのものだと理解している。原発の電気が優勢と思ったらそれに物申したい。

A 本店でも福井でも話し合いはやっていない。

Q 前は本社で対応していたが、チェルノブイリ事故以降は一切会わなくなった。

Q 本店に行くか、もしくはここに本店から来てもらいたい。

A 取次も法律上できない。

Q 公平性を求めているなら完全に分社化するべきだ。日本では社内分社だ。

Q 本店で市民団体が罵声を出したというが、仮に彼らが罵声を出したとしても、罵声を出すのは関電側に問題があるからだ。

A 取り次げない。

Q なぜか。

A 電気事業法上だ。

Q 本社の広報室とは話をしたのか。

A していない。

Q 話し合いを続けるように再度申し入れたい。

A 本社に聞いて後日連絡する。

Q 来年4月末までは同一会社なら、話し合い継続は問題ないのではないか。

A 広域性・中立性は7月から適用される。京都支店は7月から送配電部門になるので。

Q それまでに本社に取り次いでもらいたい。8年間話し合ってきたのに、できないというのは乱暴ではないか。何とかならないのか。

A 我々は送配電部門に入る。

Q 7月から送配電に入るなら6月いっぱいは取り次ぐことができる。ぜひやってもらいたい。

Q このビルには発電部門はいないのか。

A 基本的にいない。大阪の話し合いは無理。

Q 利害関係者との話し合いを断つなら、こちら側の姿勢は厳しくなる。ここで話し合えないのなら、窓口を縮小するということか。

A 話し合いの場所がないなら明日の株主総会で荒れるということか。

Q そうではない。

A 不買運動をしようとする報告しておく。

Q 京都で話し合いができないのなら大阪でやりたいと本店に強く伝えてもらいたい。

Q 6月中に話し合いを続けてもらいたい。

Q 原発が作った電気が混ざっているという現実は変わらない。8年間友好的だった。

Q 小さい場だがたくさんの人が見ている。

Q 大阪と話し合いができない状態なので、関電の状況がわからないから、この話し合いは大事だ。

Q ここでは使い捨て時代を考える会のメンバーだけできているが。大阪となるともっと広くなる。

A 自分は(谷口氏)カンパニー所属で大阪に行くことになる。

Q どんなに小さくても希望があるなら、荒れることはない。

Q これまでの話し合いには感謝している。

Q 大阪本社が受けない理由は何か。

A HP,SNSでという方針だ。本社で荒れたすごい記録を聞いた。

Q HPやSNSではなく直に話し合っていろいろと聞きたいのだ。

A そのことも伝える。

Q ちゃんと話を聞いてくれたら荒れることはない。

A 話し合いの継続については今月中に返事をする。

—–

7月からの分社化で京都支社での話し合いはできなくなるというので、話し合いの継続をめぐって1時間10分にわたりやり取りした。今後も京都での話し合いを継続するように口頭で何度も強く申し入れ、一応本社に掛け合い返事をするということになった。6/26現在、まだ連絡はない。

大阪本店では基本的に市民団体の申入れに対して話し合いの場はもうけてきていないので、今後、市民団体が申し入れて関電が話し合いに応じる場がなくなるということを意味している。非常に問題だ。

—–

6/28(金)キンカンの最中に、関電から連絡が入り、部署は検討するが、京都で話し合いを継続するとのこと。

 

 

◆大飯原発3号機再々稼働阻止!大飯原発ゲート前抗議行動

関電は、4月11日より定期点検中であった大飯原発3号機を、6月26日にも稼働(再々稼働)させようとしています。許してはなりません!

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、大飯原発3号機再々稼働阻止を訴えるために、下記の要領で、おおい町で町内デモを行い、大飯原発ゲート前抗議行動を展開します。奮ってご参加下さい。

原発うごかすな!実行委員会@関西・福井
木原壯林(若狭の原発を考える会)

大飯原発3号機再々稼働阻止!大飯原発ゲート前抗議行動
集合日時;6月26日(水)正午
集合場所;おおい町大島半島(詳細は後日連絡します)
行動;おおい町内デモで、原発ゲート前に移動し、抗議行動を行います(午後5時頃までの予定)。
主催;原発うごかすな!実行委員会@関西・福井
連絡先;木原(電話090-1965-7102、E-メール:kiharas-chemアットzeus.eonet.ne.jp)
京都、大阪、滋賀からは、配車の予定です(8時30分頃出発)

◆「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」拡大実行委員会へのお誘い

【2019年6月14日、京都キンカンで配布

決意を新たにして、
老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の
再稼働を阻止しよう!

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」拡大実行委員会へのお誘い

◆福島原発事故の大きな犠牲と圧倒的な民意に後押しされた脱原発・反原発の大衆運動のために、今、原発の安全対策費は膨れ上がっています。また、とくに安全対策費がかさむ老朽原発は、廃炉に追いこまれ、福島事故当時54基あった稼働可能な商用原発は、33基にまで減少しています。脱原発、反原発の世論は、世界的にも安全対策費を高騰させ、安倍政権が「インフラ輸出の柱」として推進してきた海外での原発建設の全てが頓挫しました。原発は、経済的にも破綻しているのです。しかも、原発を動かせば増加し続ける使用済み核燃料の行き場もないのです。

◆それでも、関電は45年超えになろうとする老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機まで稼働させようとしています。

◆それは、安全対策の困難な老朽原発は切り捨て、残った原発全ての運転を60年まで延長して、原発電力を「巨大資本に奉仕する国造り、戦時下でもエネルギーを確保できる国づくり」の基盤電源にしようとする、安倍政権のエネルギー政策に迎合するためです。関電はその露払いをしようとしているのです。原発の運転期間延長は、「例外中の例外」としていた筈ですが、安倍政権はこの約束も反故にしています。

◆原発は本質的に事故・トラブルの多い装置ですが、老朽化すると、取り換えることのできない圧力容器、配管、配線の脆化や腐食が進むなど、重大事故の要因が急増します。老朽原発の運転を許してはなりません。

◆老朽原発運転を阻止し、原発新設を阻止すれば、美浜町からは即時、高浜町からは6年後に、おおい町からは14年後に、原発がゼロになります。もちろん、その前に重大事故が起こる可能性もありますから、原発の早期全廃を勝ち取らなければなりません。

◆ところで、去る4月、原子力規制委員会が、「特定重大事故等対処施設(特重施設;通称テロ対策施設)」の設置が期限に間に合わなければ、運転中でも、原発を停止させると決定しています。

◆規制委員会や安倍政権には、意図があるとしても、私たちはこれを原発全廃を加速させる好機にしなければなりません。突破口である老朽原発再稼働阻止の闘いに全力で総決起しましょう!

◆「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、去る3月と5月に、老朽原発全廃を目指して、「3.24老朽原発うごかすな!高浜全国集会」と高浜町内デモ、「5.19老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」と御堂筋デモを呼びかけましたが、1000をはるかに超えるご賛同(団体170、個人921人)をいただき、各々350名、750名のご参加を得て開催することができました。老朽原発再稼働阻止!、原発全廃!の強い決意を関電と政府に突きつけることができました。ご支援、ご参加、有難うございました。

◆「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」では、この成果をさらに飛躍・発展させるために、「関西、福井の総力を結集して、高浜、美浜の老朽原発をを廃炉に追い込もう!」をスローガンとする今後の老朽原発再稼働阻止闘争の方向性を討議し、夏から秋の運動を具体的に提起するために、下記の要領で拡大実行委員会を開催します。

老朽原発の再稼働を何としても阻止したいとお考えの方なら、どなたでも、ご参加いただけます。
叡智を集めて大闘争を準備し、老朽原発を廃炉に追い込みましょう!

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」
木原壯林


老朽原発再稼働を阻止するために!
行動を討議する
「拡大実行委員会」

と き:6月29日(土)15:00~17:00
ところ:滋賀県教育会館
(滋賀県大津市梅林1丁目4-15;大津駅を琵琶湖側に出て徒歩 3 分)
主 催:「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」
連絡先:木原(090-1965-7102;kiharas-chemアットzeus.eonet.ne.jp)[アット→@]


2019年6月14日


◆原発は止まる・止められる◆特重施設の未完成で原発停止◆原発にかかわる5月の出来事

【2019年6月7日,京都キンカンで配付】

原発は止まる・止められる!

「特定重大事故等対処施設」
期限内に完成しなければ
原発運転停止:規制委決定
運転停止を原発全廃の好機に!

◆原子力規制委員会(規制委)は、4月24日の定例会合で、原発の「特定重大事故等対処施設(特重施設;報道ではテロ対策施設とも呼ばれている)」が期限までに完成しなければ、原発の運転停止を命じることを決めた。

◆特重施設の設置は、福島原発事故を契機につくられた「新規制基準」(2013年7月施行)で義務付けられた。当初の設置期限は、新規制基準施行から5年の2018年7月であったが、規制委の審査が長期化し、期限内の完成が難しくなったので、規制委は期限を延期し(2015年)、「原発本体の工事計画の認可から5年」と定めた。

◆特重施設は「第2の制御室」ともいわれ、テロ行為その他の緊急事態によって原発過酷事故が発生した場合に、遠隔操作で原子炉を冷却したり、原子炉格納容器内の圧力を下げて崩壊を避けることなどを目的とした施設である。原子炉建屋から100メートルほど離れた場所に設置される。建設費は1基500~1200億円とされる(朝日新聞)。

◆電力各社は、特重施設を期限内に完成させるとしていたが、4月17日の規制委の会合で、施設の完成が1年~2.5年遅れる見通しを示し、再延期を認めるように要請していた。工事が遅れた理由は、「工事が当初の見込みより大規模になったため」としている。なお、電力各社によると、特重施設を建設するためには、敷地内の山を切り開く、工事用車両のトンネルを掘るなど、大規模工事が必要であることが判明したという。
チラシ作成者の意見:杜撰(ずさん)な工事計画しか立てられない電力会社が、原発を安全に運転できるはずがない。]

◆規制委の会合(4月24日)では、「自然災害などで工事が遅れたのではない」などと指摘し、期限延長の必要性はないと決めた。
チラシ作成者の意見:約束を守らせるのは当然で、これまで、たびたび約束を違えても、虚偽のデータを使用していたことが発覚しても、原発運転を停止させなかった規制委の甘い姿勢こそ問題である。]

◆新規制基準審査に合格し再稼働した関電、四電、九電3社の5原発9基の原発の中で最も早く期限が来るのは、九電の川内原発1号機である。来年(2020年)3月に期限を迎え、その時点で施設が完成していなければ、運転中でも、工事完成まで運転停止となる。停止見込み期間は、九電の計画通りに工事が完成したとしても、約1年となる。

◆川内1号機以外の5原発8基の期限と停止見込み期間(カッコ内に示す)は、
・川内2号機;2020年5月(約1年)、
・高浜3号機;2020年8月(約1年)、
・高浜4号機;2020年10月(約1年)、
・伊方3号機;2021年3月(約1年)、
・大飯3、4号機;2022年8月(約1年)、
・玄海3号機;2022年8月(未定;九電は間に合わせると表明)、
・玄海4号機;2022年9月(未定;九電は間に合わせると表明)。

◆再稼働していない原発の期限と停止見込み期間(カッコ内に示す)は、
・高浜1、2号機;2021年6月(約2.5年)、
・美浜3号機;2021年10月(約1.5年)。
・日本原電・東海第2原発での設置期限は2023年10月であるが、工事完成時期は不明(工事計画すら未申請)。

◆なお、関電は、45年超えの老朽高浜原発1号機を2020年6月に再稼働しようとしているが、再稼働したとしても、1年後には2年半の停止をしなければならない。

福島原発事故は防げた可能性

◆原発のテロ対策などの重大事故対策は、2001年9月の米国での同時テロをきっかけに、世界各地で強化された。米国では、2002年に米原子力規制委員会(NRC)が米国の原子力事業者に対して、航空機の衝突や全電源喪失などへの対策を求めている

◆しかし、日本では、福島原発事故後になってやっと特重施設の設置が義務付けられた。福島原発事故についての国会事故調査委員会の報告によれば2002年当時の「原子力安全・保安院」は、NRCから安全対策強化の情報を得ていたが、電力会社には伝えていない。上記報告書は、「電気事業者に伝え、対策を要求していれば、福島原発事故は防げた可能性がある」と指摘している。

過酷事故原因はテロだけではない
特重施設があっても事故を防げるとは限らない

◆報道では特重施設をテロ対策施設と呼んでいるが、原発過酷事故の原因は、テロだけとは限らない。スリーマイル島原発事故(1979年)は、機器の故障と人為ミスがいくつも重なって発生した。チェルノブイリ原発事故(1986年)は非常用電源に関する実験中に起きたが、原因は原子炉設計上の欠陥、判断および操作ミス、マニュアル遵守違反の複合である。福島原発事故(2011年)の原因は解明されたとは言えないが、地震、津波の自然災害、原発施設の不備、人為ミスの複合と考えられる。

◆このように、原発過酷事故の原因は多様であり、テロによる事故を想定した施設が完成しても、他の要因による事故の拡大→過酷事故の防止に有効であるとは限らない。

特重施設では使用済み燃料プールの
安全は保障されない

◆使用済み燃料プールは「むき出しの原子炉」ともいわれる。プールが自然災害やテロによって倒壊・崩壊すれば、特重施設が完備していても使用済み核燃料の冷却は不可能である。このことは、福島第一原発4号機の使用済み燃料プールが倒壊の危機にあったため、大急ぎで使用済み燃料を抜き取り、難を逃れた事実からも明らかである。

なぜ規制委は一転強硬姿勢に出たか

◆今回の規制委の決定は唐突の感がある。また、この決定には、早速、菅官房長官も支持を表明している。それは、自民党政権が、原発の安全性が担保されていない状況では、東京オリンピックへの海外からの支持と参加に悪影響を与えると判断したためではなかろうか?

◆ただし、特重施設があったからと言って、大幅に原発の安全性が高くなるものでもない。とくに、使用済み燃料プールの危険性は特重施設では除去できない。

原発全廃、使用済み燃料の安全保管対策の強化こそが、原発事故の回避策である。

脱原発・反原発の行動を強化し、
全原発の即時廃炉を勝ち取ろう!

◆電力会社は、特重施設の完成が間に合わなければ、色々な欺瞞工事や手抜き工事を行う可能性もある。とくに、「特重施設」を「テロ対策施設」とすることによって、テロ対策を口実に、施設の内容に関する情報の多くが不開示にされていることが、「特重施設」の有効性を疑わせる。

◆また、自然災害、人為ミス、テロなどによる原発過酷事故が、特重施設の完成を待ってくれるとは限らず、過酷事故は今日にも起こりかねない。あらゆる角度から電力会社や規制委を徹底的に糾弾し、原発即時全廃を勝ち取ろう!


原発に関わる 5 月(2019年)の出来事

昨 5月の1ヶ月間に起こった原発に関わる出来事を振り返ってみました。

経団連が電力提言(5月12日報道)

◆経団連が、電力システムの再構築を求める提言を公表した。日本の電力システムは、
①化石燃料依存度の高止まり、
②再生可能エネルギー活用のための送電線網不足
チラシ作成者の意見:原発用の送電線網を再生可能エネルギーにまわせばよい]、
③原発の再稼働問題、
④国際的に割高な電力料金の「4つの危機」に直面している
として、発電や送配電分野への投資を呼び込む環境整備が必要だと訴えている。

◆全体として、大資本に奉仕し、戦争できる国の基盤電源としての電力システムの視点が色濃い。③については、原発の稼働停止が続き、特重施設の設置が間に合わず、国内外を問わず安全対策費が高騰し、脱原発が世界の流れになっているにもかかわらず、「例外中の例外」であるべき老朽原発の運転まで固執している。

◆また、原発の停止期間を新規制基準に定められた最大60年の運転期間から除くべきだと主張し、60年を超えたさらなる運転期間延長に向けて、技術的検討を求めている。投資を回収するビジネスの視点が色濃く、脱原発・反原発の民意を蹂躙すること甚だしい。

福島復興拠点汚染土、最大200万立方メートル(5月13日報道)

◆福島原発事故に伴う帰還困難地域の一部を再び人が住めるように整備する福島県内6町村の「特定復興再生拠点区域(復興拠点)」の除染で、地表から削り取った汚染土などが最大約200立方メートル(東京ドーム1.6個分)出ると環境省が試算している。汚染土は、双葉、大熊両町にまたがる中間貯蔵施設に搬入する計画であるが、すでに福島県内の除染では、1400万立方メートルが発生しており、復興拠点の整備に伴いさらに増える。最終処分地はまだ決まっていない。なお、環境省は、中間貯蔵施設に搬入した汚染土のうち、放射性セシウムの濃度が、1キログラム当たり8000ベクレル以下のものは道路整備などで再利用する方針を掲げている。汚染土のバラマキである。

◆復興拠点は、福島原発事故による避難区域のうち、放射線量が年間50ミリシーベルトを超え、立ち入りが制限されている「帰還困難区域」の一部に、住民の居住再開を目指して、除染やインフラ整備を進める区域。放射線量が年間20ミリシーベルト以下に低減することや居住に適することが「復興拠点」に認定される条件。双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村で整備が進んでいるが、避難者の高放射線地域への帰還強制、東電や政府による被害補償の打ち切りに繋がりかねない。

韓国原発、あわやの大惨事(5月22日報道)

◆韓国原子力安全委員会は、10日にハンビッ原発1号機の熱出力が運営技術指針書上の制限値の5%を超え、18%まで急騰したのに、即時停止を定めた運営指針に反し、運営会社の韓国水力原子力(韓水原)が停止させたのは、異常感知から約11時間半後であったと発表した。放射性物質の漏洩はなかったが、重大事故に繋がる恐れがあった。出力急騰の原因はヒューマンエラーで、原子炉操縦士の免許がない韓水原職員による原子炉の制御棒の過多抜き取りだった。制御棒の過多抜き取りは、当時の現場作業者の中性子反応度の手計算ミスと抜き取り可否の判断ミスのためだったという。

◆1979年米国のスリーマイル島、1986年ウクライナのチェルノブイリ、2011年日本の福島事故も、ヒューマンエラーが主な原因だったという指摘も多い。

玄海原発、使用済み燃料の「プール内詰め直し(リラッキング)」と「乾式貯蔵」の併用を規制委容認(5月23日報道)

◆規制委は22日、玄海原発3号機の使用済み燃料について、核燃料プール内の燃料の間隔を詰めて保管量を増やす「リラッキング」と「乾式貯蔵(プール内に保管して、放射線量と発熱量が減少した使用済み燃料を空冷で保管する方法)」を併用する九電の方針を認めた。

◆玄海原発の稼働が続けば、4号機で2023年度、3号機で24年度に燃料プールが満杯になり、原発運転ができなくなるため、プールに空きを作り、原発運転を続けようとする九電と規制委の策動である。

◆規制委は、福島原発事故の教訓から、プール内で放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を、安全性が高いとされる乾式貯蔵に移すこと求めていたが、九電には乾式貯蔵施設の設置経験はなく、整備しても完成は2027年末になる。したがって、当面、乾式貯蔵によってプール内に空きを作ることができないので、プールの危険度が増すリラッキングを行おうとしているのである。リラッキングは、福島事故後初めて。

◆九電のリラッキングの計画では、プール内で一定の間隔で核燃料を納めるラック(棚)を交換して、燃料間隔を現状の約36 cmから約28 cmに狭め、プールの収容量を1050体から1672体に約6割増やす。このとき、核分裂反応が起き、臨界に達することを避けるために、収納容器をホウ素を含んだステンレス容器に変更する。リラッキングがプールの危険度を大幅に高くすることは多くが指摘している。

◆なお、使用済み核燃料を乾式貯蔵容器に移したとしても、その保管を引き受ける場所はない。また、安倍政権が進める核燃料サイクル政策では、全国の使用済み核燃料は再処理工場で処理する計画であるが、再処理計画は完全に破綻している。したがって、電力各社は使用済み燃料を自前で保管せざるを得ない状況に陥っている。

◆使用済み燃料を増やす原発を運転してはならない!

規制委、関電に3原発の再審査申請提出を命じる(5月29日報道)

◆規制委は、関電に対し、美浜、大飯、高浜原発の再稼働審査の一部やり直しに必要な申請を年内に提出するよう命令を出す方針を決定した。火山の大規模噴火時に3原発に降る火山灰の厚さを巡り、規制委は10 cmを妥当としていたが、より多量の降灰を示す新たな論文が発表されたため、より多量の降灰時でも3原発の機能が維持されるか否かを再審査で確認するという。

◆降灰を巡って関電は、鳥取県の大山が噴火した場合のシミュレーションを基に、3原発ではいずれも10 cm と想定していた。しかし、その後、大山からの距離が3原発と同程度の京都市で、約8万年前の地層に約 30 cmの火山層があるとする論文が発表され、規制委が昨年12月に関電に再調査を指示。関電が調べた結果、高浜で21.9 cm、大飯で19.3 cm、美浜で13.5 cmと新たに予測した。
チラシ作成者の意見:この種の予測に3桁の精度の数値を示すこと自体が、科学者の資質を疑わせる。]

◆原発に想定を超える降灰があると、非常用発電機の吸気フィルターの目詰まりなどが懸念される。

◆関電は、29日に「準備ができ次第、再審査を申請する」と発表し、「原発の稼働停止は求めておらず、電気供給などに対する大きな影響はない」と、人ごとのような無責任なコメントを発している。

高浜原発、警報ない津波に対策(5月31日報道)

◆昨年12月にインドネシア・スンダ海峡で発生した津波は、地震によるものではなく、火山噴火で山の一部が海に崩れ落ちたこと(山体崩壊)が原因とみられ、津波警報は作動しなかった。これを受けて、規制委は今年1月、津波警報が出ないまま高浜原発に津波が襲来した場合の影響を調べるよう、関電に求めていた。以下が、関電の調査結果。

◆調査では、高浜原発の沖合100 kmで海底地すべりがあり、警報がないまま津波が襲来したと想定。結果、取水路の門が開いていても、海抜3.5 mの敷地は浸水しないと評価した一方、1~4号機4基分の取水路が開いていれば、引き波で取水不能になり、設備に影響が出る恐れがあるとした。追加対策では、敷地内の3台の潮位計で異常を検知した場合、6分後には取水路の門を遠隔で閉門できるようにするという。
チラシ作成者の意見:関電に都合の良い仮定の下の推定には何の意味もない。とくに、海抜3.5 mの敷地が浸水しないとすることは信じがたい。]


2019年6月7日発行

若狭の原発を考える会
連絡先;木原壯林(若狭の原発を考える会)
電話:090-1965-7102