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◆[第6回原告団総会]原告団・世話人会からの報告

[2018年7月22日 第6回原告団総会]

[1] 京都地裁における大飯原発差止訴訟

◆京都地裁における大飯原発差止訴訟は,すべての原発を止めるための第一歩です!

◆福島第一原発の過酷事故(2011年3月11日~)のあと,国内の稼動原発はゼロの状態になっていました。ところが,福井県にある関西電力・大飯原発は,当時の民主党政権のもと2012年7月に再稼働が強行されました(3・4号機)。京都脱原発弁護団・原告団は,大飯原発の運転差し止めと損害賠償を求め,2012年11月29日,京都地裁に1,107名の原告で運転差止の裁判を起こしました。

◆大飯原発は2012年の再稼働後,2013年9月に定期検査にはいって止まりました(3・4号機)が,2018年3月(3号機),5月(4号機)から再稼働されています。なおこの間,1・2号機の廃炉が決定しました(2017年12月)。

◆私たちは,多くの市民でたたかう脱原発訴訟をめざし,原告募集をすすめてきました。2013年12月に856名で第二次,2015年1月に730名で第三次,2016年1月に393名で第四次,2017年2月に184名で第五次,2018年3月に53名で第六次[追加]提訴を行い,現在,原告総数は3,323名となりました。原告募集はこれで終了しました。

◆京都地裁の大飯原発差止訴訟では3,323名が原告となっているほか,裁判傍聴は原告以外も多くの市民が参加しています。市民の願い,弁護団の熱意,研究者の知恵を結集して,脱原発を実現しましょう。

◆私たちは,開廷の前には毎回,裁判所周辺の30分程度のデモを行って,脱原発裁判の意義を市民に訴えています。14:00開廷の場合,12:15に京都弁護士会館前からスタートしています。

◆現在の弁護団,原告団の体制は以下の通りです。
・弁護団長…出口治男 弁護士。弁護団長代行…中島晃 弁護士。弁護団事務局長…渡辺輝人 弁護士。
・原告団長…竹本修三 京大名誉教授。原告団事務局長…吉田明生。事務局次長…山崎正彦,田中善久。

[2] 法廷での追及

◆これまでの各回の口頭弁論(2013年7月第1回~2018年6月第20回)の概略は,本総会案内のチラシとともに,全原告にお送りしました。また,訴状は,第六次原告まで,すべての原告にお送りしました。

◆最近では,本年3月27日に第19回口頭弁論,6月5日に第20回口頭弁論と回を重ねています。その中で,事故が起こった際の避難が困難であること,そして大飯原発の安全性,設定された基準地震動への疑問について,着々と主張を積み重ねています。

◆次回第21回口頭弁論は9/4(火),第22回は11/20(火)。時間はいずれも,14:00開廷です。

◆被告・関西電力は,主張するだけで保有している根拠資料すら提出せず,それどころか原発の地域特性の調査として当然になすべき重要な調査がなされないままです。また実施された調査結果は「科学技術を冒涜する所作」以外の何物でもないと言えるほどに,基準地震動が小さくなるよう歪めて評価していることを明らかにしました。
◆2017年12月に関西電力が高経年原発である大飯1・2号機の廃炉を決定したことは,私たちの大きな勝利ということができます。安全対策費が膨大になり,経済的合理性からペイしなくなったのです。

[3] 大飯原発,各地の法廷での追及

◆福井地裁…2012年11月,大飯原発3・4号機の運転差止を請求した(福井から原発を止める裁判の会)のに対し,2014年5月,その運転差止を命じる勝利判決が言い渡されました(樋口英明裁判長)。福島第一原発事故後初めての原発運転差止訴訟の判決は,歴史的な住民側勝訴判決となりました。その後,同じ裁判長の下で運転差止の仮処分も出されました。しかし,仮処分は福井地裁の意義審で覆され(林潤裁判長),名古屋高裁金沢支部の控訴審も2018年7月差止を認めない判決により覆されました(内藤正之裁判長)。

◆大津地裁…2013年12月,美浜,大飯,高浜の各原発で,関電,国に対し運転差止を請求して,審理が続いています(7/12第19回口頭弁論。福井原発訴訟[滋賀]を支える会)。なお,2016年3月には,関西電力高浜原発3・4号機の運転を禁止する仮処分決定が出て(山本善彦裁判長),稼働中だった3号機は運転を停止しました(4号機はトラブルで停止中)が,2017年3月,大阪高裁で覆されました(山下郁夫裁判長)。

◆大阪地裁…2012年6月提訴の大飯原発3・4号機行政訴訟は,審理が続いています(9/10第27回口頭弁論。美浜の会)。2017年12月に大飯原発3・4号機運転差止の仮処分が提起され,現在,審尋が続いています。

[4] この一年間の原告団のおもな活動

(1)毎月1回の原告団・世話人会

①原告団・世話人会の成立(2013/2/9)後,毎月1回,土曜日の午前に世話人会を開催しています(2018/7/7に第66回)。原告団の事務,いろいろな取り組み,裁判期日の内容の確認などを行っています。

②現在,原告団・世話人会は27名の世話人で構成しています。一昨年総会時の世話人は22名でしたので,新しい人が増えています。世話人は,随時,募集しています。

(2)広瀬隆さん&守田敏也さんジョイント講演会~日本列島の全原発が危ない!
次の大事故で市民の命と生活は?

①【2018年2月17日】お二人の熱意あふれる講演で,原発と闘う決意を新たにさせたと思います。参加者は222名で,ほぼ会場いっぱいの満席になりました。広瀬さんの本,守田さんの書籍を販売しました。

②閉会後もロビーにて講師を囲んで交流してもらうことができました。その後,懇親会を設けました。

(3)京都府知事選挙で,弁護団の福山和人さんを推薦

①【2018年3月22日告示→4月8日投票】
・福山和人さんは,京都脱原発弁護団の一員として奮闘されてきました。京都脱原発原告団は,立候補を予定されているかた二人に原発に関する政策を質問しましたが,福山和人さんは,推薦するのにふさわしい回答でした。

②質問と回答は,原告団Webに掲載。選挙結果は,質問状に答えなかった相手候補が当選しましたが,福山和人さんは,多くの市民の運動にも支えられて,その奮闘はめざましいものがありました。

(4)原告名簿,原告団ML,原告団Webの管理

①原告の皆さまへの連絡は,郵送希望の原告(1,000円の実費で登録)のほかは,原告団メーリングリスト(一斉メール送信,ML)で行っています。できるだけメールアドレス(携帯可)の登録をお願いします。また,最近,配信停止となるメールアドレスが増えていますので,携帯の機種変更などでメールアドレスが変更になった場合は,再度,事務局宛にご連絡ください。

②原告の皆さまで,住所が変更になった場合も,事務局宛にご連絡ください。

③原告名簿,原告団MLの管理につきまして,かなり改善を図りました。しかし,専従者がいる訳ではなく,あくまでボランティアベースの活動ですので,行き届かない点もあるかと思われます。今後とも,原告の皆さまのご協力を得て可能な範囲で改善していきますので,お気づきの点はご指摘ください。

(5)原告団が協力してきた署名など

①原発賠償京都訴訟の公正判決要請署名…終了しました。原発賠償京都訴訟は,2018年3月に判決がでましたが,避難者原告団は大阪高裁に控訴しました。大飯原発差止訴訟の原告団は,これまでと同様に引き続き全力で支援していきます。

②原発の電気はいらない署名…2017年3月から始め,2017年末で9111筆,2018年5月現在で,累計9801筆になりました。この署名は,引き続き集めています。

(6)缶バッジマシンの貸し出し

・缶バッジをつくるための缶バッジマシンは,京都木津川マラソンの東日本震災復興支援に応募して援助を受けたものです。
・マシン本体は他団体への貸し出しに応じています(無料)。パーツを用意されれば(対応パーツは「バッジマン」製),各団体でオリジナルの缶バッジをつくることができます。事務局にご連絡ください。

[5] 世話人会からの提起とお願い

(1)これからの運動の方向

・脱原発といってもいろいろな運動の形があります。また,それぞれの人には,得手,不得手のフィールドもありますし,好き,嫌いのフィーリングもあります。しかし,民主主義をめざす,脱原発の社会を実現するという共通点があるのですから,お互いの取り組みを尊重しあいながら,いろいろな動きが少しずつ足し算されていく感覚で多方面に伸びていく運動を期待したいと思います。
①関電は高浜原発,大飯原発の4基を再稼働し,名古屋高裁金沢支部は大飯原発の運転差止を命じた福井地裁判決を覆しました。この結果,地元の若狭はもちろん,京都府,滋賀県などで原発事故のリスクは各段に高まっています。大小の事故の起きる確率は高まっていますので,原告団としては,今後,舞鶴や宮津など,若狭の原発に近い京都府北部を中心に運動をつくっていきます。

②当面,舞鶴での集会や,「このあたりプレート」の配布を検討します。

③原告の募集が終了しましたので,今後は原告にはなっていない方にも,メールなどで広く訴訟案内などを送るようにします。

④裁判の進行,遠くない将来の判決を見据えて,行政や関電との関係づくりを検討します。この点については,経験のある他団体と協力したいと考えています。

(2)本日のカンパのお願い

・カンパ袋を配付資料にセットにしています。お帰りの際,出口で,ご意見用紙と一緒にお願いします。
・経済情勢の厳しい折りですが,当原告団の活動は,皆さまのカンパによって成りたっています。ぜひとも,ご協力いただきますよう,心からお願い申し上げます。
・領収書が必要な場合は,袋の表に住所氏名などを記入してください。後日,郵送します。

(3)その他いろいろなお願い

・以下,お願いばかりで恐縮ですが,可能な範囲でご協力ください。

①裁判期日には,原告席や傍聴席にて裁判に参加してください。開廷前には,弁護士会館前を出発して裁判所周辺のデモを行い,市民に脱原発裁判をアピールしています。時間などはその都度,ご連絡します。

②陳述書をまだ提出されていない原告の皆さまには,本総会の案内とともに書き方や用紙などを同封していますので,脱原発の思いを陳述書に書いて送ってください。原告になっているからといって,どうしても作成する義務があるというものではありません。あくまで任意ですが,裁判所,裁判官に思いを伝える機会として捉えてください。なお,陳述書のお願いは,今回の総会をめどに区切りをつけます。

③書籍,物品販売に協力してください。

④「このあたりプレート」を活用してください。
ご自分の土地などに,大型看板を出せる場合,ご連絡ください。

[6] 財政について

(1)財政の基本

・弁護団と原告団の活動は,皆さまのカンパでまかなっています。
・財政は弁護団財政一つです。
・弁護団は無報酬で活動しています。
・原告団,世話人の活動も,無償のボランティアが基本です。

(2)会計の報告

・(略)

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◆[第6回原告団総会]確認されたスローガン

大飯原発差止訴訟[京都地裁]第6回原告団総会にあたり
参加者一同で確認しましょう!

~原発事故で故郷を失うような事態,子どもたちを放射能にさらすような事態を二度と招かないために~
~若狭,京都,琵琶湖を,第二のフクシマにさせないために~

(1)すべての原発の新設と再稼働に反対しよう。
(2)40年超えの高経年原発を筆頭に,すべての原発の廃炉を求めよう。
*(3)原子力をベースロード電源とするエネルギー基本計画を改めさせ,節電,小規模分散,地産地消を基本とする再生可能な自然エネルギーの振興を求めよう。
(4)核武装の潜在能力を維持するための核燃サイクル,MOX燃料の使用は,即刻止めさせよう。
(5)原発事故に備える避難計画にとどまらず,全原発廃炉による原子力防災を前進させよう。
*(6)トルコ,インド,イギリスなどへの原発の輸出を止めさせよう。

(7)福島第一原発事故の原因究明を求めよう。
(8)福島第一原発事故について,国と東京電力,原子力ムラの事故責任を明確にさせよう。
(9)福島第一原発事故で被災,避難したすべての人に対する相当な補償を実現させよう。
(10)福島第一原発事故について,賠償を求めている全国の裁判を支援しよう。
(11)福島第一原発事故の被曝により,福島などで多発している甲状腺がんなどについて,実態解明と対策を求めよう。
*(12)学校教育や原発事故被災地における放射能の影響の過小評価,放射線安全宣伝,風評被害攻撃をうち破ろう。

(13)脱原発に道を開き,立憲主義,民主主義,平和主義を守る政権を実現しよう。
(14)あらゆる選挙において,原発推進勢力を排し,脱原発勢力を大きくしよう。
*(15)「原発ゼロ・自然エネルギー基本法」を成立させよう。
(16)原子力「推進」委員会と化している「規制」委員会の改廃を求めよう。
(17)福島第一原発事故に責任を負うべき裁判所が,今また原発推進に加担している責任を追及しよう。
(18)関西電力には,市民の声を聞くこと,原発から脱却した経営政策を強く要求しよう。
*(19)原発の電気はいらない署名などで,関西電力から新電力への切り替えを促進しよう。

*(20)京都脱原発原告団は,「市民参加の訴訟」をふまえ,脱原発市民運動との共闘をすすめよう。
(21)京都地裁における大飯原発差止訴訟に勝利しよう。
(22)原発の運転差し止めを求めるすべての裁判と連帯しよう。
(23)すべての原発運転差し止め裁判に勝利しよう。

以上,世話人会からの提案が,総会で確認されました。
(*は,昨年からの変更,または本年の追加です)

◆地震と原発に関わる特別質問

質問者 原発うごかすな!実行委員会@関西・福井

◆去る6月18日午前8時前、大阪府北部を震源とするマグニチュード(M)6.1、最大震度6弱の地震が発生し、4人が亡くなられ、300人以上が負傷されました。この地震は、大阪府下では、1923年に観測を始めて以来、最大の地震です。若狭は震度4でした。

◆この地震の震源地のやや南(奈良県北部)と一昨年の熊本地震(熊本・大分大震災)の震源地は中央構造線と呼ばれる日本最大の断層帯で結ばれていて、途中には伊方原発があります。中央構造線を南西に延長すれば川内原発、北西に延長すれば玄海原発があります。今回の震源地・大阪府北部の北北東には若狭の原発群があります。

◆この地震は、南海トラフ大地震の予兆であると多くの人々が指摘しています。南海トラフ大地震が発生すれば、中央構造線の分岐・延長上の若狭での地震が連動することも考えられます。そうなれば、原発重大事故は避けられません。
今回の大地震、熊本地震(熊本・大分大震災:2016年)、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災:2011年)、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災:1995年)は、何れも予知できませんでした。日本のような地震大国では、どこでも、大地震が発生する可能性がありますが、現代科学では、それを止めることはもちろん、予知することすらできないのです。

◆福井でも、1948年6月28日、M7.1の内陸直下型地震が発生し、死者3769人、負傷者約2万人を出し、震度「7」を設けるきっかけになりました。兵庫県南部地震発生まで戦後最大の地震でした。

◆どんな地震も、原発重大事故を招く大地震につながる可能性があります。地震を感じたら、即座に原発運転を停止し、総点検をすべきです。重大事故に到ってからでは遅すぎます。

◆若狭の原発について、地震でとくに危険なのは、すでに貯蔵容量の7割以上が埋まっている使用済み燃料プールです。
今回の大阪地震では、若狭は震度4でしたが、関西電力は原発を止めることすらしていません。人々の安全より、関西電力の利益を優先しているのです。

質 問

町は、地震の揺れを感じたら原発を即時停止し、最低でも、余震の沈静化までは原発を動かさず、原発および使用済み燃料プールの点検に専念することを関西電力に約束させるべきだと考えますが、ご見解を伺います。

◆原発の現状と将来に関わる公開質問状

【2018年7月18日,若狭の3町長に提出】

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、
野瀬 豊 高浜町長、
中塚 寛 おおい町長、
山口 治太郎 美浜町長に、
原発の現在および将来に関する下記のような公開質問状を提出しました。回答期限は、8月15日です。回答が得られた場合、チラシにして配布します。原発についての原発立地自治体首長のお考えに注目しましょう。

原発の現状と将来に関わる公開質問状

質問者…原発うごかすな!実行委員会@関西・福井

◆質問者である「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、「オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、 サヨナラ原発福井ネットワーク、 福井から原発を止める裁判の会、 原発住民運動福井・嶺南センター、 原発問題住民運動福井県連絡会で構成)」、「若狭の原発を考える会」、「ふるさと守る高浜・おおいの会」の呼びかけで、昨年8月に結成された「大飯原発うごかすな!実行委員会」を本年6月に改称して設立された団体です。

公開質問する理由

◆福島原発事故から 7年になりますが、この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、生活基盤を奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。

◆一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても何の支障もないことが実証されました。そのため、脱原発、反原発は圧倒的な民意となっています。

◆私たちは、原発立地・若狭で、長期にわたって住民の方々から、原発に対するご意見をお聞きしてきましたが、若狭でも、「原発は不要」、「原発は不安」の声が大多数で、原発賛成の声はわずかでした。原発立地でも、表に出てはいないけれども、脱原発、反原発が民意なのです。

◆それでも、関西電力は高浜原発3、4号機、大飯原発3、4号機を再稼働させ、老朽でさらに危険な高浜原発1、2号機、美浜3号機まで再稼働させようとしています。

◆これらの原発については、次のような問題があることは、原発への賛否を問わず、多くの人々が認めるところです。

①原発の安全性について:

◆福島原発事故は、原発が重大事故を起こした時、被害は、広域かつ長期におよび、悲惨を極めることを教えています。したがって、原発は事故を起こしてはならないのです。

◆しかし、重大事故が起こることを想定して制定された「新規制基準」も、原子力規制委員長が再三にわたって指摘するように、安全を保証するものではありません。「新規制基準」は、福島原発事故の検証もほとんど進んでいない2013年7月に施行されたものです。(事故炉の内部は、今でも、ほとんど分からず、事故処理の方法も未定ですから、現在でも、事故原因や事故拡大の理由が解明されたとするにはほど遠い状況にあります。)したがって、「新規制基準」に適合とされたから原発は安全とする考え方は、無責任な原発推進の意見と言えます。

◆とくに、老朽原発が危険極まりないことは自明で、したがって、老朽原発の安全対策費は高騰し、老朽原発の廃炉が相次いでいます。老朽な高浜原発1、2号機、美浜3号機の再稼働は許されないことです。

②使用済み核燃料について:

◆使用済み核燃料プールは、原子炉本体・圧力容器に比べても格段に脆弱です。その使用済み核燃料プールについて、若狭の原発では、すでに70%以上が埋まっています。もう数年で満杯になります。今、大地震でプールが倒壊すれば、福島事故以上の大惨事になりかねません。使用済み核燃料プールは、一刻も早く空にしなければなりません。空になったプールに新しい使用済み燃料を入れるなどはもっての他です。とくに、使用済みMOX燃料の発熱量と放射線量は下がり難く、長期の水冷保管が必要です。MOX燃料プルサーマル炉は、使用済み燃料の保管の視点からも、危険極まりないのです。

◆一方、使用済み核燃料は、ある程度冷却されて、空冷保管が可能になったとしても、保管を引き受けるところはどこにもありません。現在の科学技術では再処理工場の安全運転は困難で、使用済み核燃料の処理法もなく、きわめて長期の保管が必要です。放射性物質の消滅など荒唐無稽の話です。

③重大事故時の避難について:

◆政府や自治体は、若狭の原発で重大事故が起これば、住民を避難させるとしていますが、重大事故では、原発立地自治体だけでなく、京都府、滋賀県などの広域が放射性物質で汚染される可能性もあり、そうなれば、数100万人以上の避難になり、避難は不可能です。

◆福島原発事故では事故炉から30~50 km の距離にある飯舘村も全村避難を強いられました。また、約 200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が飛来しました。このことは、若狭の原発で重大事故が起こった場合、原発のある若狭だけでなく、約259万人が暮らす京都府や、約141万人が暮らす滋賀県の全域が永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示しています。京都市は、大飯原発や高浜原発からおおよそ30~75 km の距離にあり、京都府全域が100 km 以内にあります。琵琶湖が汚染されれば、関西 1,450 万人の飲料水がなくなります。

◆若狭で福島級の重大事故が起これば、若狭や京都北部の地形や交通事情からして、これらの地域からの避難は著しく困難です。さらに、京都や滋賀も避難地域に加われば、数百万人の避難となり不可能であることは明らかです。1昨年8月に行われた最大級といわれる避難訓練で、ちょっとした強風のために、ヘリコプターは飛ばせず、船すら出せなかったことも避難の困難さを裏付ける事実の一つです。

④脱原発に向かう世界の趨勢について:

◆今、世界は脱原発に向かっています。スイス・ドイツ・イタリア・リトアニア・ベトナム・台湾・韓国が脱原発の動きを加速しています。アメリカでさえ、経済的にも成り立たない原発を縮小しようとする動きが広がっています。

◆一方、国内でも、脱原発、反原発の圧倒的な民意に押されて、原発を動かそうとするとき、電力会社は多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、安全対策費のかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっています。昨年末からでも老朽大飯原発1、2号機、伊方原発2号機の廃炉が決定し、福島第二原発1~4号機の廃炉が表明されました。これで、福島事故時に54基あった原発の19基が廃炉になります。

◆さらに、国際的な安全対策費の高騰は、原発産業を成り立たなくさせています。破綻した東芝が米国での原発新設計画から撤退し、伊藤忠商事がトルコの原発建設計画から撤退すると報道されています。日立が政府と一体となって英国で進める原発建設計画にも暗雲が立ち込めています。

以上のように、原発は現在の科学技術で安全に運転できる装置ではなく、重大事故が起これば、原発立地の内外を問わず、大きな被害を受けかねません。したがって、原発に関して大きな発言力を有する原発立地自治体の姿勢は、立地自治体の住民だけでなく、広域(例えば、若狭の原発では関西一円)の住民の大きな関心事であり、生存権をも左右する問題です。そのために、私たちは、立地自治体の長である貴殿に、裏面の事項を公開で質問します。

質 問

原発は、①「近い将来なくなる、または、なくしたほうがよい」とお考えですか、あるいは、②「原発は存続する、または、存続させたい」とお考えですか。

①の場合、以下の質問【A】に、②の場合、質問【B】にご回答下さい。
ご回答は2018年8月15日までにお願いします。

【A】「原発はなくなる」あるいは「原発をなくしたほうがよい」とお考えの場合

【1】原発廃止は、いつごろになるとお考えですか。

【2】原発廃止に向けて町はどういう行動をされますか。県、国、関電にどういう働き掛けをされますか。

【3】廃炉前や廃炉中に生じた使用済み燃料、放射性廃棄物は、誰が、どこで、どう処理し、処分するのがよいとお考えですか。

【4】原発廃炉に向けて、町はどのような準備をされますか。

【5】原発をなくした後の町の発展のために、どんな政策を実現したいと考えていらっしゃいますか。産業(雇用)、福祉、教育、人口(過疎化対策)など、できるだけ具体的にお願いします。例えば、現在でも、「原発はない方がよいが、雇用不安から存続に賛成せざるを得ない」という住民の声があります。原発をなくした後の雇用を確保するために、お考えはありますか。

【6】原発後の町の建設に向けて、町は現在どのような準備をされていますか。今後どういう準備をされますか。

【7】現在、町の財政の多くの部分を原発交付金・補助金や原発関係税で賄われていますが、別の交付金や税金を獲得することは十分可能で、それによって、財政運営ができます。早急に、「原発マネー」からの撤退を決意するお考えはありませんか。(【B】【9】をご参照下さい。)

【B】 原発は存続する、または、存続させたい」とお考えの場合

【1】原発は、いつまで存続する、あるいは、存続させたいとお考えですか。

【2】運転開始後40年を超える原発について、20年の運転延長は妥当とお考えですか。あるいは運転延長は避けるべきだとお考えですか。その理由もお示し下さい。
(なお、原発の運転期間は、「40年原則」および例外規定により、最長でも60年と定められています。老朽原発がとくに危険であることは多くが指摘するところです。)

【3】60年の期限で現存の原発が廃炉になった後も原発を存続させることを望まれるなら、どのようにして存続させるのですか(老朽原発の運転延長あるいは原発新設やリプレース?)。
また、存続に向けて、町はどういう行動をされますか。県、国、関電にどういう働き掛けをされますか。
(なお、高浜原発1号機は2034年、2号機は2035年、3、4号機は2045年、大飯原発3号機は2051年、4号機は2053年、美浜原発3号機は2036年、敦賀原発2号機は2047年に運転開始後60年を迎えます。)

【4】原発重大事故時に、町は、町民およびさらに広域(例えば、関西一円)の周辺被害地域住民を安全に避難させ、その後の生活の安寧を保証できるとお考えですか。また、そうお考えのとき、根拠をお示しください。

(なお、福島原発事故では、事故炉から50 km 近くも離れた飯館村も全村避難になりました。このことは、原発重大事故時の避難区域は30 km 圏・UPZをはるかに超え、避難者も数100万人になる可能性があることを示しています。また、避難は、きわめて長期に及びかねないことは、事故から7年以上たった今でも、福島から避難された十数万人のうちの5万人以上が、故郷を奪われたままであることが教えています。)

【5】立地自治体として稼働に同意した原発が重大事故をおこしたとき、貴職および町は、被害を被る町民および周辺被害地域住民にどのように謝罪し、責任を取るお考えですか。

【6】原発を存続させれば、原発から発生する使用済み核燃料や放射性廃棄物は増え続けます。使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理、保管について、町としてどのような対応をお考えですか。
(なお、使用済み燃料プールは、現在でも満杯に近く、廃棄物の保管場所も限られています。また、使用済み核燃料や廃棄物を引き受ける場所はありません。)

【7】原発を存続させれば、町はどう発展するとお考えですか。

【8】原発に頼らない社会の創造についてお尋ねします。
若狭には、原発以外にも資源、産業基盤は沢山あります。交通、情報、通信が発達した現在、若狭と関西などの都市圏との距離は縮まっています。都市生活に不安を持つ人(特に子育て世代の女性)は多数いて、Uターン、Iターン希望者も多いといわれています。
この人たちを受け入れることができれば、町は過疎化を避けて発展します。しかし、彼らが原発立地を選ぶとは考えられません。原発を止めて、Uターン、Iターンを促進するお考えはありませんか。

【9】現在、町の財政のかなりの部分を原発交付金・補助金や原発関係税で賄われていますが、別の交付金や税金を獲得することは十分可能で、それによって、財政運営ができます。早急に、「原発マネー」からの撤退を決意するお考えはありませんか。

(なお、原発立地は、原発にかかわる交付金や補助金があるから発展しているといわれます。しかし、原発導入前と近年の「製造品出荷額の伸び率」、「観光客の入込数の伸び率」の比は、原発のない福井県嶺北部が、原発のある嶺南部に比べて格段に高いことは明らかです。嶺北部は、原発以外の産業や観光の振興に努力しているのです。

また、福井県と人口数が類似している徳島県の財政を2010年度を例にして比較しますと、原発のある福井県の県税収入+国庫支出金+普通交付金の合計額は2856億円です。この中には「原発マネー」である電力会社からの法人県民税、法人事業税、核燃料税の合計118億円(県税収入)と国からの電源三法交付金69億円(国庫支出金)が含まれています。

一方、原発のない徳島県の県税収入+国庫支出金+普通交付金の合計額は2854億円で、福井県より2億円少ないに過ぎません。これは、徳島県は、「原発マネー」の代わりに、普通交付金を多く獲得しているためです。この事実は、原発の有無に関らず、地方自治体は、努力次第で、財政運営できることを示します。)

以上の質問へのご回答をお待ちしています。
回答期限;2018年8月15日

2018年7月18日

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」担当・木原壯林(090-1965-7102)

◆報告…7月18日 高浜町長、おおい町長、美浜町長に公開質問状を提出

【2018年7月20日,京都キンカンで配付。】

◆「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、7月18日、若狭の原発の運転や再稼動について、大きな発言力を持つ、高浜町、おおい町、美浜町の町長に、公開質問状と特別質問状提出しました。公開質問状では、原発の存続、使用済み核燃料、老朽原発運転、重大事故時の住民避難、原発に依存しない町づくりなどについて尋ね、特別質問状では、地震時の原発停止について尋ねています。

◆公開質問とした理由は、この質問状を、若狭や周辺自治体および広く関西をはじめとする全国に配布し、原発立地・若狭や原発電気を利用してきた関西、全国の皆さんが、原発の是非、原発後の社会を考える端緒にしていただければ幸いと考えるからです。

◆これらの質問状は、8月15日を回答期限としています。回答があり次第、その内容をチラシにして皆様にお知らせいたします。

◆高浜町長、おおい町長、美浜町長の姿勢は、当該自治体の住民だけでなく、さらに広域(例えば、関西一円)の住民の大きな関心事であり、生活や生存の権利をも左右するものです。これらの町長の回答にご注目ください。

◆公開質問状の提出にあたって、美浜町では、エネルギー政策課、防災・原子力対策室の課長、課長補佐ら3人、高浜町では、防災安全課の課長補佐ら2人、おおい町では総合政策課などの課長2人、課長補佐2人など5人が対応しましたが、何れも丁寧な対応で、中には、「原発後の社会を考える」ような発言もありました。

▲(左)2018年7月19日 福井新聞朝刊,(右)2018年7月19日 朝日新聞朝刊


定期点検中の高浜原発4号機、
8月21日に起動?

◆関電は7月17日、定期検査中の高浜原発4号機について、検査工程の変更申請を原子力規制委員会に届け出ました。9月15日としていた発電・送電開始を8月24日に前倒しするということです。

◆今回の定検中に見つかった蒸気発生器の細管2本のひび割れの補修工事が、7月中に終わるめどが立ったため、工程を変更するのだそうです。8月18日からの予定だった燃料装荷は7月25日に始めるといわれています。通常、発電・送電の2、3日前に原子炉を起動させますから。8月21日(火)に起動(いわゆる再々稼働)の可能性が大です。この予定で起動を許せば、9月19日に営業運転を再開することになります。
(なお、運転中の高浜3号機は8月3日から定期検査に入る予定です)。

起動を阻止し、このまま廃炉に追い込もう!


高浜原発4号機起動(再々稼働)阻止!

高浜現地抗議行動

高浜原発4号機起動(再々稼働)の当日
(8月21日あるいは22日)、
高浜町現地で抗議デモ、
高浜原発ゲート前抗議集会を
展開します。

日 時;8月21日あるいは22日(確定し次第お知らせします)、正午。
場 所;高浜原発から音海地区側に 300 m の展望所に集合後、デモでゲート前へ。
主 催;原発うごかすな!実行委員会@関西・福井

たとえ稼働は許しても、
反原発運動の意義は大きい!

◆昨年来、高浜原発、大飯原発の再稼働を許してしまったことは悔しいことですが、それでも、私たちは、私たちの行動も含め、数多く展開された脱原発・反原発の行動は一定の勝利を収めていると総括しています。

◆それは、以下の理由によります。

① 私たちの運動も含めた広範な反原発の闘いのために、傲慢な電力会社といえども、原発を動かそうとするとき、多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、それが、原発重大事故を防いでいるとも言えます。大衆運動がなければ、電力会社は多額の費用を要する安全対策もせずに、老朽原発を含む原発を次々に動かし、重大事故の確率は格段に高くなっていたでしょう。

② 電力会社は、安全対策費がとくにかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっています。昨年末からでも老朽な大飯原発1、2号機、伊方原発2号機の廃炉が決定、福島第2原発4基の廃炉が表明されました。福島事故時に54基あった原発のうち19基の廃炉が決定したことになります。

③ 国際的な安全対策費の高騰は、企業の原発から撤退を促しています。東芝が破綻し、米国の原発建設から撤退し、伊藤忠がトルコの原発建設計画から撤退すると報道されています。

④ 反原発の大きな声が、裁判闘争を後押しし、司法を動かしています。福井地裁、大津地裁、広島高裁での原発運転差止め決定など司法での勝利も、福島原発事故後、格段に多くなっています。

⑤ 現地での行動は、原発再稼働に抗議するだけでなく、表にはでていないものの、若狭に広範に存在する「原発は嫌だ」の声に呼応し連帯するものです。脱原発の声は、徐々に顕在化しています。

◆以上のように、反原発の大衆運動は、原発重大事故の防止、老朽原発の廃炉,原発からの企業の撤退に貢献し、裁判闘争の勝利にも貢献しています。

さらに反原発運動を高揚させれば、必ず原発全廃を勝ち取れます。

断固とした、
高浜原発起動阻止行動に
起ちましょう!


8.25高浜原発このまま廃炉!

関電包囲全国集会

日 時;8月25日(土)15:00から16:00
場 所;関西電力本店前(大阪市北区中之島)
(集会終了後うつぼ公園に移動して、同公園から御堂筋デモ)
主 催;原発うごかすな!実行委員会@関西・福井
呼びかけ
(1)「オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、 サヨナラ原発福井ネットワーク、 福井から原発を止める裁判の会、 原発住民運動福井・嶺南センター、 原発問題住民運動福井県連絡会で構成)」
(2)「若狭の原発を考える会」
(3)「ふるさと守る高浜・おおいの会」
連絡先
宮下正一(原子力発電に反対する福井県民会議、0776-21-5321)
木原壯林(若狭の原発を考える会、090-1965-7102)


定期点検中の高浜原発4号機をこのまま廃炉にしよう!
電力消費地での「原発電気NO!」の声を拡大しよう!
関電に原発を断念させよう!


2018年7月20日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆7月10日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者ほか2名。
使い捨て時代を考える会;4名。

今回は以下の質問書を提出し、話し合いました。
質問書
……………………………………………………………………………
1.現在、貴社は高浜3号機、大飯原発3、4号機を稼動させていますが、安全性に関して以下の質問にお答えください。

① 大飯原発4号機において再稼動直後に蒸気発生器の水位低下を知らせる警報が鳴ったことについて、前回の話し合いでは「原因はわからない」というお答えでしたが、その後原因はわかりましたか。

② 6月29日に行われた規制庁との会合で、貴社は越畑の火山灰層について、26センチを否定する根拠を示すことはできませんでした。越畑の26センチを前提とした原発の火山灰の影響評価を至急行うべきと考えますがいかがでしょうか。

③ 原子力規制委員会が九州電力川内原発1号機について、テロ対策等の拠点となる「特定事故等対処施設」の工事を認可したと報じられました。高浜原発、大飯原発に関する特定施設の設置計画について、設置予定年度、予算を示してください。

④ 安全が完全に保証されない限り再稼動すべきではないと考えますが、再稼動を急ぐ理由はどこにあるのでしょうか。

2.使用済み核燃料の処理についての、技術的、経費的な目途は立っているのですか。また、中間貯蔵施設を福井県外に作るということで、候補地を2018年に示すとのことですが、具体案はあるのですか。

3.日本原電東海第2原発について、再稼動・運転延長には立地自治体以外の5市町村の事前了解を必要とするという安全協定がむすばれました。貴社の原発に関しても京都府・滋賀県の市町村と同様の協定を結ぶ必要があると考えますが、どのような見解をお持ちでしょうか。

4.電力自由化によって、貴社から他社へ切り替えた消費者は、4月末で155万件に上るとのことです。大飯原発再稼動、高浜原発再稼動で契約離れが加速していますが、そのことについてどうお考えですか。消費者は原発に依存しない電力会社を望んでいるのです。このことについてどのような見解をお持ちでしょうか。

以 上
……………………………………………………………………………
話し合いの内容(Q ;こちら側の発言 A ;関電の発言)

A (質問1-①について)  水位が変動したのだが、確定的なことはわかっていない。5月10日17:30に警報が鳴った。蒸気発生器の1か所で水位低下が確認された。最も水位が低くなり警報が鳴った。警報をまず止めて内容を確認した。手順通り確認をして、水位計設定の基準を満たしていたので、警報をリセットし、通常に戻した。これが事実関係だが、すぐ復旧したので確定的なこと(原因)は言えない。一時的な揺らぎが発生したのか、水位を測る配管に異物が混入したのか、水位を信号化する電気回路での不具合があったのか、と推定しているが、現在は通常通り動いている。

Q 原因もわからないのになぜ動かすのか。止めて原因を探るべきではないか。常識では考えられない。

Q 子供が熱を出したとき39度が36度に下がったから大丈夫と言っているのと同じで、怖い。病気を見逃している場合もある。関電に対する不信感につながり、株価も下がるのではないか。

A 復旧しているので(原因は)推測なのだが、国も大飯町も認めてくれた。

Q 1-②について聞きたい。

A どなたか会合に出ているのか?

Q 傍聴した人から聞いた。

A 火山灰が26㎝も堆積したのかどうか事実関係を詰めている。規制委員会と関電に食い違いがあり、今調査している。

Q 大山の火山灰は30㎝堆積しているというのは規制庁が依頼した研究での発表だ。規制委員会から昨年6月に関電に調査をするようにと指示があり、それ以来すでに1年やり取りが続いている。関電は層厚とは判断できないと主張しているが、規制委員会の疑問に明確な答えが出せていない。その間に再稼働の審査に合格し、今、大飯原発を稼働させている。私は関東から避難してきたが、千葉に所持している家は今でも庭土が582ベクレル/㎏ある。東電の刑事裁判を傍聴しているが、福島原発では推本の長期評価から15メートルを超える津波がくることを想定していたのに、トップが経営判断でさらに土木学会に研究をさせることにした。法廷では、トップの判断に防潮堤の担当をしていた人は予想外の結論に力が抜けて後の話は覚えていないと証言した。原発を止めないロジックが必要ともトップが言ったそうだ。関電の火山灰の問題も、これと似ている。学術論争を続けながら、原発を稼働させ続けることには、言いようのない気持ちになる。
Q 津波対策をしていたら原発事故は起きなかったかも知れないのだ。

Q この間地震や豪雨による天災が多発している。必ず天災は来る。どう思うか。

Q 福島事故以前と事故後は違う。東電の元経営陣は業務上過失致死傷罪で被告席に座っている。もっとも安全側で対策を取るべきではないか。今すぐ火山灰の影響評価を26センチで始めてもらいたい。

A ご意見として頂戴するが、事実関係は調査中だ。

Q いつまでかかるのか。学術論争をするなら原発を止めてしてほしい。

Q 昨日枚方では突然局地的に豪雨が降った。これが大飯で起きるかもしれない。引き延ばすほどリスクは高くなる。

Q 他の電源ならこのような問題は起きない。このように話し合いすることも裁判をすることも、ほとんど必要ない。他の電源に代えてもらいたい。社長さんに伝えてもらいたい。

Q 関西に来て、関東とは原発事故の恐ろしさの感覚に違いを感じた。健康被害が家族にあったら…と思い移住をしたが、私は避難者にも被害者にもカウントされていない。私のような原発事故の被害者は山のようにいる。原発事故が起これば、電力会社は責任の取りようがないし、取りきれない。他の発電方法をとってほしい。

Q 命より経営か。

A 東京電力は、なぜ責任を問われないのでしょうか(???)

Q 国が守っているからではないか。

A 推測だが国の認可産業なので、どうしても国に従わざるを得ない。

Q 規制基準は上り、輸出もできなくなっている。経営判断はないのか。

A 世界的には原発は増えているのではないか。

Q とんでもない日経も原発が無くなると書いている。

A 朝日ではないのか。日経は読んでいるが、見たことがない。日経でも社会部とか報道部とかいろいろあるので。

Q 山一證券は潰れたけど電力会社はなぜ潰れないのか。

A がんじがらめになっている。

Q 会社の中から声を上げるのは無理か。原発は世界的にも斜陽産業だ。

A もう時間なので。

Q 最後に質問2の放射性廃棄物について聞きたい。2018年中に中間貯蔵施設候補地は示せるのか。

A 候補地などは答えられない。

Q 複数検討しているのか。

A それについては答えられない。

Q 使用済み燃料の処分も決まっていないのになぜ動かすのか。ますます増えるだけだ。

A  7年~9年はもつ。

Q あまりにも短い期間だ。あっという間ではないか。目先の採算ばかり見ないでほしい。

【感想】関東から移住された方が参加されたので、リアルに安全性や責任問題をやり取りしましたが、ことの重大さを自覚していないという感じがしました。東電のこともどこまでも他人事らしいです。

◆政権の奴隷と化した名古屋高裁、最悪の不当判決

【2018年7月6日,京都キンカンで配付。】

司法の役割を自ら放棄し、
政権の奴隷と化した名古屋高裁
大飯原発3、4号機運転差止請求
控訴審で最悪の不当判決

◆関電大飯原発3、4号機運転差止め請求訴訟の控訴審で、名古屋高裁金沢支部は、7月4日、差止めを命じた2014年5月の1審・福井地裁判決を取り消す不当判決を行いました。福井地裁での1審(樋口英明裁判長)では、

①「人の生命と尊厳を守る人格権が全ての法分野で最高の価値を持ち、人格権が最優先されなければならない」とし、

②基準地震動について、「各地で想定を超える地震が到来しており、大飯の想定だけが信頼に値するとする根拠は見出せない」、「地震大国日本において、基準地震動を超える地震が来ないとするのは、根拠のない楽観的な見通し」とし、「自然の前における人間の能力の限界」にも言及しました。さらに、

③大飯原発の安全性について、「安全技術や設備は確たる根拠に基づかず、脆弱(ぜいじゃく)である」として、大飯原発3、4号機の運転を差止めていました。

控訴審判決で、内藤正之裁判長は、おどおどとした様子で、全く自信なさげに、しどろもどろに判決要旨を読み上げました。あたかも、国家権力、関電あるいは最高裁に後ろから拳銃や匕首(あいくち)を突きつけられて、脅迫されながら朗読しているようでした。朗読が始まった直後から、法廷内では、抗議の怒号が飛び交いましたが、裁判長はこれを制止するゆとりすら持たず、朗読が終わるや否や背後の扉から逃げ去りました。

◆以下に、「判決要旨」の全文と本チラシ作成者の【コメント】を示します。

判決要旨

1 原子力発電所の設備等について事故を起こす欠陥があり,周辺の環境に対して放射性物質の異常な放出を招く危険かあるのであれば,どの範囲の住民が運転の差止めを求め得るのかはともかく,人格権を侵害するとして,当該原子力発電所の運転差止めを請求することができる。その一方で,現在の我が国の法制度は,原子力基本法,原子炉等規制法などを通じて,原子力の研究,開発及び平和利用の推進を掲げ,原子力発電を一律に有害危険なものとして禁止することをせず,原子力発電所で重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常に放出される危険などに適切に対処すへく管理・統制がされていれば,原子力発電を行うことを認めている。このような法制度を前提とする限り,原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって,それ自体で人格権を侵害するということはできない。もっとも,この点は,法制度ないし政策の選択の閤題であり,福島原発事故の深刻な被害の現状等に照らし,我か国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止,禁止することは大いに可能であろうが,その当否を巡る判断は,もはや司法の役割を超え,国民世論として幅広く譲論され,それを背景とした立法府や行政府による政治約な判断に委ねられるへき事柄である。

【コメント】
司法の義務を果たさず、憲法の下の三権分立を自ら否定しています。司法府は立法府や行政府の僕(しもべ)となる宣言をしたことなります。また、「本質的・内在的な危険があるからといって,それ自体で人格権を侵害するということは出来ない」という判断は、人の命と尊厳を経済的利益の犠牲にしても構わないとするものです。

2 原子力発電所における具体的危険性の有無を判断するに当たっては,その設備が,想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し,かつ,重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か,すなわち,原子力発電所の有する危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているか否かが検討されるべきである。そして,原子炉等規制法の下,高度の専門的知識と高い独立性を持った原子力規制委員会が,安全性に関する具体的審査基準を制定するとともに、設置又は変更の許可申請に係る原子力発電所の当該基準への適合性について,科学的,専門技術的知見から十分な審査を行うこととしているのであって,具体的審査基準に適合しているとの判断が原子力規制委員会によってされた場合は,当該審査に用いられた具体的審査基準に不合理な点があるか,あるいは具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に見過ごし難い過誤,欠落があるなど不合理な点があると認められるのでない限り,当該原子力発電所が有する危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理され,周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価できる。

【コメント】
原子力規制委員会が「新規制基準」に適合としたときには、原発の危険性は無視でき、人格権を侵害する危険性はないとしています。「新規制基準」が、福島原発事故から2年少ししか経たず、事故原因の究明も進んでいない(今でも解明には程遠い)2013年7月制定されたものであり、この「新規制基準」に適合とされて再稼動した原発の大半が再稼動時や再稼動直後にトラブルを起こしていること、「新規制基準」について前規制委員長までもが「この基準に適合としたからといって、安全を保証するものではない」と繰り返していることも無視しています。

3 本件発電所の安全性審査に用いられた新規制基準は,各分野の専門家が参加し,最新の科学的・専門技術的知見を反映して制定されたもので,所定の手続も適切に踏んでいるのであって,手続面でも実体面でも原子炉等規制法を始めとする関係法令に違反していると認めうる事情はなく,また,内容において不合理な点も認められない。

【コメント】
2に対するコメントで述べたとおり、「新規制基準」は、安全を保証するものではありません。この判決は、解明されていないことが山積する現在科学技術の水準を全く理解していない裁判官の人間としての思い上がりと傲慢さを表すものです。

4 本件発電所の基準地震動及び基準津波は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて策定されたものであり,そこで用いられた各種パラメータは安全側に配慮して保守的に設定され,性質や程度に応じて不確かさが考慮されているほか,計算過程及び計算結果に不自然,不合理な点は見当たらず,年超過確率も極めて低い数値になっていることからすれば,これらが新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点があるとは認められない。

なお、基準地震動の策定に当たり,地震モーメントを求めるに際し用いられた入倉,三宅式について,地震動の事前予測に用いると地震モーメントが過小評価される旨の専門家の証言があるが,対象となる活断層の長さや幅を保守的に大きく見積もり,断屑面積を地表地震断層の長さそのものから求めた数値より大きく設定することなどによって過小評価を防ぐことが可能であると考えられ,本件においても対象となる活断層の断層面積は,詳細な調査を踏まえて保守的に大きく設定されているから,1審被告の策定した基準地震動が過小であるとはいえない。

【コメント】
地震の規模や時期の予知が困難であることは、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大分大震災あるいは先日の大阪北部を震源とする大震災が全く予知されていなかったことからも明らかです。万が一にも重大事故を起こしてはならない原発は、地震大国、火山大国にあってはならないのです。

5 本件発電所の安全上重要な設備の耐震性,対津波安全性,、異常の発生・拡大防止対策及び重大事故等対策(火山灰対策を含む),テロリズム対策等は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて講じられており,地震,津波を始めとした外部事象による共通要因故障のみならず,偶発的な設備の単一故障を仮定しても設備の安全性が確保されているほか,重大事故等対策の有効性も科学的手法によって検証されるなどしており,IAEAの国際基準等に反するともいえないのであって,これらが新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。

【コメント】
最新の科学的知見によっても、原発重大事故を完全に防ぐことは不可能です。最新の科学的知見がそこまで進歩していないことは、地震や火山噴火の予知も出来ず、福島原発事故から7年経った今でも、事故を起こした原発の内部も分からず、汚染水の垂れ流しを防げず、使用済み核燃料を保管・処理する有効な方法もないことを考え合わせれば明らかです。さらに、原子力規制委員会のような限られた分野から集められた少人数の委員会での評価は、現在の科学的知見すら集積して行われたものとはいえません。この名古屋高裁の判断は、福島原発事故前に「日本の原発が事故を起こすはずがない」としていた「原子力ムラ」の体質を受け継ぐもので、福島原発事故の反省が全く見られないものです。

6 以上によれば.本件発電所の安全性審査に当たって用いられた新規制基準に違法や不合理の点はなく,本件発電所が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められず.本件発電所の危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているといえるから.本件発電所の運転差止めを求める1審原告らの請求は理由がない。

【コメント】
政府、関電の意を受けて「原発運転ありき」の裁判を行い、このような判決を下した裁判官は、原発で重大事故が起こったとき、万死に値する責任を取らなければなりません。また、自らの利害のために、三権分立の上に成り立つ民主主義を蹂躙し、司法府を立法府、行政府の奴隷にしようとする策略は許されるものではありません。


8.25高浜原発このまま廃炉!
関電包囲全国集会

日  時;8月25日(土)15:00から16:00
場  所;関西電力本店前(大阪市北区中之島)
(集会終了後うつぼ公園に移動して、同公園から御堂筋デモ)
主  催;原発うごかすな!実行委員会@関西・福井
呼びかけ
(1)オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、サヨナラ原発福井ネットワーク、福井から原発を止める裁判の会、原発住民運動福井・嶺南センター、原発問題住民運動福井県連絡会で構成)
(2)若狭の原発を考える会
(3)ふるさと守る高浜・おおいの会
連 絡 先
宮下正一(原子力発電に反対する福井県民会議、0776-21-5321)
木原壯林(若狭の原発を考える会、090-1965-7102)


定期点検中の高浜原発4号機を
このまま廃炉にしよう!
電力消費地での「原発電気NO!」の声を
拡大しよう!
関電に原発を断念させよう!

◆原発は、事故の多さ、事故被害の深刻さ、使用済み燃料の保管や処理の困難さなど、あらゆる視点から、人類の手におえる装置ではありません。一方、福島事故以降の経験によって、原発はなくても何の支障もないことが実証されています。

◆それでも関電は、前原子力規制委員長までもが「安全を保証するものではない」と公言してはばからない“新規制基準”に適合とされたことを拠り所にして、昨年来、高浜原発3,4号機、大飯原発3,4号機を再稼働させたのみならず、40年越え老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の再稼働も画策しています。関電の目先の利己的利益のために、人の命と尊厳をないがしろにしようとするものです。また、脱原発に向かう世界の潮流に逆らうものです。

◆若狭の原発が重大事故を起こせば、若狭のみならず、原発電気の消費地・関西も、高濃度の放射性物資で汚染されかねません。福島事故では、約50km離れた飯舘村も全村避難になり、約200km離れた関東にも高濃度の放射性物質が降下しました。高浜原発、大飯原発は、京都駅から60数km、大阪駅から80数kmの位置にあります。100km圏内には都府、滋賀県、福井県のほほ全域、大阪府、兵庫県の大部分、奈良県、岐阜県、三重県の一部が含まれます。避難対象になっても、避難は不可能です。琵琶湖の汚染は、1,450万人の飲用水を奪います。

◆そのような原発重大事故が起こっても、関電も政府も責任を取らない、取りようがないことは、福島原発事故が示すところです。

◆原発はなくても電気は足ります。不要な原発を動かして、事故の恐怖に怯える必要はないのです。節電に努め、「原発電気はNO!」の声を拡大し、原発を推進する関電を糾弾し、原発全廃を勝ち取りましょう。とくに、5月18日より定期点検中の高浜原発4号機はこのまま廃炉にしましょう。4号機は、プルサーマル炉で、ウラン原子炉に比べても、危険極まりなく、長期保管を要する使用済み核燃料を残します。

◆「8.25高浜原発このまま廃炉!関電包囲全国集会」と御堂筋デモへの大結集とご支援をお願いします。

原発うごかすな!実行委員会@関西・福井


2018年7月6日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

◆人々を愚弄(ぐろう)する原発政策

原発避難円滑化モデル事業で福井県、京都府、愛媛県に
補助金・計4億9千万円
本質的に不可能な避難に「端(はした)金」

◆6月22日、中川原子力防災担当大臣は、原発周辺地域の避難経路の道路改修費等を補助するモデル事業として、福井県、京都府、愛媛県の計4事業を選んだと発表しました。本年度は、計4億9千万円が交付され、例えば、高浜町の狭い道路を部分的に拡幅する事業、伊方町の避難経路の土砂崩れ防止用のり面保護対策に使用されます。

◆このような端金で、原発事故時の円滑な住民避難が保証されるはずがありません。住民懐柔策であることは明らかです。

◆若狭で福島級の重大事故が起これば、若狭や京都北部の地形や交通事情からして、これらの地域からの避難は著しく困難です。さらに、滋賀や京都も避難地域に加われば、数百万人の避難となり不可能であることは明らかです。小手先の道路改修で、避難が可能になることはありません。このことは、1昨年8月に行われた、最大級といわれる避難訓練でも、ちょっとした風で、ヘリコプターは飛ばず、船すら出せなかったこと一つをとっても明らかです。

不可能な避難の計画に費やす時間と経費を原発のない社会創りに使いましょう。原発全廃こそ原子力防災です!

関電の使用済み核燃料の中間貯蔵を引き受ける場所はない
再稼動で、保管場所もない使用済み核燃料が増え続けている

◆若狭の原発の使用済み核燃料プールは、貯蔵容量の7割以上が埋まっていて、再稼動が続いて数年もすれば満杯になります。とくに、MOX燃料が使用済みになったとき、その放射線量、発熱量は、ウラン燃料に比べて減衰し難く、4倍近くの水冷保管を要します。そのため、プルサーマル運転は、使用済み核燃料プールの満杯を加速することになります。

◆なお、使用済み核燃料プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかです。使用済み核燃料プールは一刻も早く空にしなければなりません。

◆ところで、関電は、西川福井県知事が求める「使用済み核燃料の県外搬出」について、大飯原発再稼動前の昨年11月、「2018年に具体的な場所を示す」と約束しています。大飯原発を再稼動させるための、無責任な方便です。

◆この約束のために、関電は、原子力関連施設が多い青森県に目をつけ、事業に参画する構想をチラつかせ、地元の反発をかっています。今年1月には、関電の原発から出た使用済み核燃料の一時保管先の候補地として、同県むつ市に東電と日本原子力発電(原電)が建設した中間貯蔵施設の名が挙がり、市が強く反発しています。

◆その後、同県東通(ひがしどおり)村で建設中の東通原発の共同事業化の協議に関電が加わるとの見方も浮上しました。関電には「東通原発に参画すれば、中間貯蔵施設への相乗りが認められるのでは」との思惑が見え隠れします。この他、関電は、今月、青森市に事務処理拠点を開設し、さらに2件目の設置も発表するなど“青森進出”を強めています。

◆なお、関電は、むつ市への使用済み燃料搬入について「方針を固めた事実は一切ない」と否定はしていますが、岩根社長は、使用済み核燃料を福井県外に搬出する候補地について、「あらゆる可能性はある」と発言し、青森県について「対象外ということはない」と話したとも報道されています。

行き場がなく、危険極まりな使用済み核燃料を増やす、原発を全廃しましよう!

東海第2原発、「新規性基準」適合の策動

◆東海第2原発(茨城県東海村)は、日本原子力発電(原電)の原発で、日本で初めて建設された百万kW級(110.0万kW)沸騰水型軽水炉1基を所有しています。1978年11月の運転開始で、今年11月で40年越えとなります。同原発から半径30km圏内に96万人が居住し、東京駅まで直線距離で約120kmしか離れていない、いわば、首都圏の原発です。

◆2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、原子炉が自動停止し、常用の外部電源も停止したため、非常用ディーゼル発電機3台で電源を確保しましたが、1台が津波によって故障したため、2台で原子炉冷却に必要な電源を確保しました。その後、外部予備電源が回復し、3月15日0時過ぎに原子炉水温度が100℃未満の冷温停止状態となりましたが、その間は、注水と水蒸気逃がし弁の綱渡り的な操作で、冷温停止までには通常の2倍以上の時間がかかりました。

◆原発専業会社で、他の発電法を持たない原電は、7年以上も発電してこなかったので、業績と財務状態は最悪で、東電、東北電、関電、中部電からの基本料金収入と債務保証によって、かろうじて命脈を保っています。

◆東海第2原発には、日本原子力研究開発機構・東海再処理施設が近接(約2.5km)していますが、同施設には、東海第二原発の炉心・使用済燃料プールの合計を上回る放射性物質がより無防備な状態で貯留されています。いずれかが緊急事態に陥った場合には、関係者も退避せざるを得ず双方の対処ができなくなる可能性もあります。

◆以上のように、東海第2原発は、首都圏立地、老朽化、地震による設備劣化など、何処から見ても即時廃炉とすべき原発です。しかし、あろうことか原電は、2017年11月、この原発の20年間運転延長を原子力規制委員会(規制委)に申請し、規制委は、去る6月21日、再稼働の条件となる「新規制基準」適合の審査書案を近くとりまとめると発表しました。ただし、実際に再稼働させるには、茨城県と東海村など6市村の同意が必要になります(注1)。一方、安全対策に必要な1740億円の工事費の確保も難題です(今後増える可能性も高い)。

(注1)東海第2原発所がある東海村と周辺の水戸、日立、ひたちなか、那珂、常陸太田の5市で構成する「原子力所在地域首長懇談会」は、3月29日、原電が5市にも実質的な事前了解権を与える安全協定を全国で初めて締結しています。

◆さらに、東海村JCO臨界事故(1999年9月)や福島原発事故、同種の事故につながりかねない東北地方太平洋沖地震の津波によるトラブルなどを経験した地元では、近年、廃炉を求める声が高まっています。最近でも、一部が30km圏内にある高萩市の大部市長、高萩市の北隣の北茨城市豊田市長が「再稼動を反対」を表明し(4月25日)、今月19日には水戸市議会が再稼働に反対する意見書を可決しています。

規制委の「新規性基準」審査が極めていい加減であることは、今までに再稼動した原発の大半が、再稼動前後にトラブルを起こしたことからも明らかです。とくに、高浜1、2号機、美浜3号機の審査が示すように、老朽原発審査は全くの手抜きです。

◆断固として、東海第2原発運転延長を阻止しましよう!

高浜原発4号機の蒸気発生器伝熱管に損傷

◆福井県と規制委は、6月22日、定期検査中の高浜原発4号機で、3台ある蒸気発生器のうち1台の伝熱管2本に傷が見つかったと発表しました。運転開始後33年の高浜原発でも、配管の腐食、減肉が相当進んでいることを示しています。

◆また、規制委が「新規制基準」適合とした原発の大半が再稼動直後にトラブルを起こしている事実は、規制委の検査や電力会社の点検が極めていい加減で、今回のような損傷は、他にも多数ある可能性を示しています。

大飯原発もプルサーマル化を企む

◆関電岩根社長は、6月27日、大飯原発4号機でMOX燃料を使ったプルサーマル発電に取り組む方針を示しました。岩根社長は「大飯原発の1基か2基かをプルサーマルにして、余剰プルトニウムを減らす」としています。(原発を動かすから、プルトニウムが増えるのです。)

◆MOX燃料原発は、運転が難しく、燃料が不均質化しやすく、燃料被覆管の腐食が進み易く、使用済み核燃料の冷却に長期を要するなど、危険極まりありません。とくに、ウラン燃料使用を前提にして審査された原発でMOX燃料を使用するなどもっての他です。さらに、MOX燃料使用は、現在科学技術の手に負えない再処理工場の運転を前提にしています。
(プルサーマルの問題点については、別途述べます。)

プルサーマル発電を阻止し、原発を全廃しましょう!


素晴らしい感性、平和への想い
感激の涙で聞きました
6月23日沖縄「慰霊の日」、
中学3年生の相良倫子さんが詩を朗読


私は、生きている。
マントルの熱を伝える大地を踏みしめ、
心地よい湿気を孕(はら)んだ風を全身に受け、
草の匂いを鼻孔に感じ、
遠くから聞こえてくる潮騒(しおざい)に耳を傾けて。

私は今、生きている。

私の生きるこの島は、
何と美しい島だろう。
青く輝く海、
岩に打ち寄せしぶきを上げて光る波、
山羊の嘶(いなな)き、
小川のせせらぎ、
畑に続く小道、
萌え出づる山の緑、
優しい三線の響き、
照りつける太陽の光。

私はなんと美しい島に、
生まれ育ったのだろう。

ありったけの私の感覚器で、感受性で、
島を感じる。心がじわりと熱くなる。

私はこの瞬間を、生きている。

この瞬間の素晴らしさが
この瞬間の愛おしさが
今と言う安らぎとなり
私の中に広がりゆく。

たまらなく込み上げるこの気持ちを
どう表現しよう。
大切な今よ
かけがえのない今よ
私の生きる、この今よ。

七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
小鳥のさえずりは、恐怖の悲鳴と変わった。
優しく響く三線は、爆撃の轟(とどろき)に消えた。
青く広がる大空は、鉄の雨に見えなくなった。
草の匂いは死臭で濁り、
光り輝いていた海の水面は、
戦艦で埋め尽くされた。
火炎放射器から吹き出す炎、幼子の泣き声、
燃えつくされた民家、火薬の匂い。
着弾に揺れる大地。血に染まった海。
魑魅魍魎(ちみもうりょう)の如く、姿を変えた人々。
阿鼻叫喚(あびきょうかん)の壮絶な戦の記憶。

みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜(むこ)の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。

摩文仁(まぶに)の丘。眼下に広がる穏やかな海。
悲しくて、忘れることのできない、この島の全て。
私は手を強く握り、誓う。
奪われた命に想いを馳せて、
心から、誓う。

私が生きている限り、
こんなにもたくさんの命を犠牲にした戦争を、
絶対に許さないことを。
もう二度と過去を未来にしないこと。
全ての人間が、国境を越え、人種を越え、宗教を越え、
あらゆる利害を越えて、平和である世界を目指すこと。
生きる事、命を大切にできることを、
誰からも侵されない世界を創ること。
平和を創造する努力を、厭(いと)わないことを。

あなたも、感じるだろう。
この島の美しさを。
あなたも、知っているだろう。
この島の悲しみを。
そして、あなたも、
私と同じこの瞬間(とき)を
一緒に生きているのだ。

今を一緒に、生きているのだ。

だから、きっとわかるはずなんだ。
戦争の無意味さを。本当の平和を。
頭じゃなくて、その心で。
戦力という愚かな力を持つことで、
得られる平和など、本当は無いことを。
平和とは、あたり前に生きること。
その命を精一杯輝かせて生きることだということを。

私は、今を生きている。
みんなと一緒に。
そして、これからも生きていく。
一日一日を大切に。
平和を想って。平和を祈って。
なぜなら、未来は、
この瞬間の延長線上にあるからだ。
つまり、未来は、今なんだ。

大好きな、私の島。
誇り高き、みんなの島。
そして、この島に生きる、すべての命。
私と共に今を生きる、私の友。私の家族。

これからも、共に生きてゆこう。
この青に囲まれた美しい故郷から。
真の平和を発進しよう。
一人一人が立ち上がって、
みんなで未来を歩んでいこう。

摩文仁の丘の風に吹かれ、
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。


2018年6月29日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林090-1965-7102)

◆2018/7/4 名古屋高裁金沢支部の判決に対する抗議声明

名古屋高裁金沢支部による大飯原発訴訟控訴審不当判決に抗議する声明
2018年7月4日
大飯原発福井訴訟原告団
代表 中嶌 哲演
大飯原発差止訴訟福井弁護団
団長 島田 広

1 名古屋高等裁判所金沢支部は,2018年7月4日,福井地方裁判所が2014年5月21日に言い渡した,関西電力株式会社に対し大飯原子力発電所(以下「大飯原発」)の3号機及び4号機の原子炉について運転差止めを命じる判決(以下「福井地裁判決」)につき,原判決を取り消し,住民らの請求を棄却する不当判決を言い渡しました(以下「本判決」)。

2 福井地裁判決は,生命を守り生活を維持する利益を日本国憲法が保障する人格権の中核部分として位置づけ,これらがきわめて広汎に奪われる原子力災害の具体的危険が万が一でもあれば,原発の差止めが認められるのは当然,という判断を示しました。「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」と語る判決の言葉は,現在もなお癒えることのない福島第一原発事故の被害に真摯に向き合う倫理的な問いかけであり,人権を守る砦としての裁判所の責務に忠実に原発の安全性を厳しく審査した同判決は,国内外で多くの共感を呼びました。

しかし,関西電力や原子力規制委員会は,原判決の指摘を真摯に受け止めることなく,控訴審の審理中にもかかわらず遮二無二大飯原発の再稼働を強行しました。「第二のフクシマ」をまたなければ,関西電力をはじめ,立法府も行政府も,廃炉・脱原発を決断できないのか?とさえ思わせるような,愚かな原発再稼働が進む中で,司法が国民の期待に応え,再び原発の安全性を厳しく審査するのか否かが,注目されていました。

3 審理の過程の中で,関西電力は,住民側が提起した疑問点にはまともに答えようとせず,また,安全性に関する関西電力の主張の根拠となる,基準地震動の算定や地盤調査に関する生データの開示を,一貫して拒否しました。その態度は,自らの基準地震動策定や安全審査について裁判所が科学的に再検討を行うことを妨害しデータ隠しに終始する,きわめて不当なものでした。

4 こうした関西電力による不当なデータ隠しにもかかわらず,裁判の中で次々に大飯原発の危険性が明らかになりました。

(1)島崎邦彦・元原子力規制委員会委員長代理が,2017年4月に証言し,基準地震動策定の際に用いられる入倉・三宅式は,過去の地震データがない大飯原発で用いると,基準地震動の大幅な過小評価になることを,過去の複数の地震の科学的検証結果をもとに指摘し,政府の地震本部のレシピ改定にしたがった,より科学的で安全側に立った計算方法をとるべきであると指摘しました。

 島崎証言の指摘は,纐纈一起東京大学地震研究所教授も繰り返しこれを支持しており,きわめて信用性の高いものでした。

(2)物理探査学会元会長である石井吉徳氏はじめ複数の同学会関係者や,元京都大学防災研究所助教授の赤松純平氏が,関西電力の地盤調査がきわめて不充分で,しかも不充分な調査の結果すら関西電力の都合のよいようにゆがめて解釈されており,大飯原発の地盤は関西電力の想定より軟弱で,地下には断層の存在さえも疑われることを指摘しました。

 関西電力の安全設計が,基準地震動の計算方法に加え,地盤調査でも,基準地震動の大幅な過小評価を引き起こす重大な欠陥のあるものだったことが明らかになったのです。

(3)さらに最近,原子力規制庁が,大飯原発の大山噴火に伴う火山灰想定が過小であると指摘し関西電力による火山灰想定の欠陥が明らかになりました。

 このように,島崎氏の勇気ある証言を端緒として,①被告の地盤調査の問題点,②基準地震動の過小評価,③安全審査の欠陥など,生データの提出や各専門分野の有力な証人尋問によって解明する必要が生じており,住民側は複数の科学者証人の証人尋問を求め,法廷の内外で,審理を尽くし事実を解明するよう裁判所に繰り返し求め続けましたが,裁判所は,2017年5月に原子力規制委員会が大飯原発を安全審査合格とするや審理終結を急ぎ,基準地震動の計算方法や地盤調査という,まさに原発の安全性の根幹に関わる重要な問題も含め島崎氏以外の証人全ての尋問を「必要性なし」として拒否し強引に審理を終結するという暴挙に出ました。

5 本判決は,関西電力が基準地震動を策定した経緯や安全審査の過程について,関西電力の主張をそのまま引き写したかのような通り一遍の認定をしそれだけで,関西電力による安全性の証明はなされたものと認めました。これは,関西電力には,上記のような重大な疑間点に答える義務はないというに等しい,不当な判断です。

一方で,本判決は,住民側に対し高度の具体的危険性を立証するよう求め,しかも,自ら住民側が請求した証拠調べを軒並み却下して立証手段を奪っておきながら,具体的危険性の証明がないなどとして,原判決を覆しました。

こうした判決内容を踏まえ,控訴審の経過をひと言で言えば,原子力規制委員会の安全審査の結果さえ出れば,裁判所は,自ら主体的に原発の安全性を審査することなく,住民側の立証手段を奪ってでも強引に審理を打ち切ってこれに追随するだけだった,ということになります。

これは,もはや裁判ではありません。
福島の被害に背を向け,「見ざる,聞かざる,言わざる」の態度で行政追随を決め込み,あたかも「関西電力のサーヴァント(召使い)」(審理終結後の記者会見での中嶌代表の言葉)であるかのごとく,住民側の裁判を受ける権利を奪った不当な「裁判」に対し,満腔の怒りをもって,強く抗議します。

6 本判決は,行政追随を急ぐあまり,多数の事実誤認や論理破綻を犯しています。

(1)判断枠組みについて,いわゆる伊方型の判断枠組みを採用しながら,関西電力に求められる安全性の主張立証については,ほとんどその主張通りの認定に終始しており,先の高浜原発差止仮処分において大阪高裁が示したと同様の,電力会社寄りの事実認定となっています。

(2)基準地震動に関して,本判決は,地震の予知予測は正確に行うことができないことは疑いがない,全国的な観測網の整備が進んでから蓄積されたデータが少ない,クリフエッジとされた基準地震動の1.8倍を超える地震動は将来来ないとの確実な想定は本来的に不可能,との原判決の指摘はいずれも正当と認めています。そうであれば,それだけで,現在の基準地震動では本件原発の安全は到底確保できず,具体的危険の存在を認めた原判決は維持されるはずでした。

 ところが,本判決は,それは政策的な選択に委ねられるべきで,司法判断としては,「最新の科学的,専門技術的知見に照らし,その想定が合理的な内容となっているか否か」を問題とすべきだとして「クリフェッジとされた基準地震動の1.8倍を超える地震動」の可能性があっても,その想定は合理的なものでありうるかのごとき判断を示しています。

 電力会社の安全設計が完全に崩壊するクリフエッジを超える可能性があるとしても,具体的危険はないといいうるという判断は,恐るべき安全軽視であり,そもそも司法審査を放棄したとしか言いようがありません。

(3)本件訴訟の中心争点となった,大飯原発の基準地震動の著しい過小評価を指摘した島崎証言については,同証言が指摘する,関西電力の行った調査がきわめて不充分で,かつ,基準地震動の過小評価は関西電力の言うところの「保守的な評価」「不確かさの考慮」ではカバーしきれないほど大きなものであることを完全に無視しきわめて抽象的に,関西電力の主張通りに,関西電力の想定が保守的であると認めています。真摯に基準地震動の合理性を検討しようとする姿勢は微塵もありません。

(4)地盤調査について,原子力規制委員会の審査ガイドでは,敷地地下の地層が水平かつ成層でなければ,3改元的な評価をしなければならないのに関西電力がこうした調査をしていないことについて,本判決は,そもそも地層が均質な水平成層構造を呈していることなど考えにくい,という乱暴な認定をしました。そうであれば,審査ガイドにしたがって3次元的な評価をしなければならないのに,それをしていない関西電力の調査の不充分さについては,完全にこれを無祝しています。

 また,一審原告らが指摘した低速度層(軟弱地盤)の存在や,断層等の存在を示す回折波の間題については,いずれもその評価が判然としない,明らかでないという暖味な判断に終始しています。裁判所が判断できないと考えるのであれば,一審原告らが求めるように,関西電力の生データを提出させ,科学者証人の尋問を実施し審理を尽くすべきでしたが,そうした審理を一切放棄して,上記のような暖味な判断をくり返すのは,司法の責任放棄としか言いようがありません。

(5)大山噴火に伴う火山灰想定について,原子力規制庁が関西電力の現在の想定10cmを大きく超える層厚26cmの層厚を大飯原発とほぼ等距離の地点に認めたことに触れつつも,それは単なる可能性に過ぎないなどとして,関西電力の想定が信頼できるとしている点も,火山の危険性を著しく軽視したものといえます。

(6)法的にも,「安全」であるかどうかの判断基準として,福島原発事故の経験を踏まえて「危険性が社会通念上無視し得る」かどうかという規範を定立していますが,現在のわが国の地震学の最も権威ある学者2人が基準地震動の計算方法の誤りを指摘し元物理探査学会長を含む複数の学者から数々の地盤調査の問題点を指摘され,原子力規制庁からさえ火山灰想定の過小評価を指摘されている大飯原発の危険性が「社会通念上無視しうる」とは,到底いえるはずがなく,判決の論理は完全に破綻しています。

7 行政に追随し住民側の裁判を受ける権利を奪ってまで強引に判決をし,形式的には福井地裁判決を覆しても,かかる裁判とはいえない不当な判決によって,福井地裁判決の正当性は,いささかも揺るぐものではありません。また,福井地裁判決が指摘し控訴審の審理の中でさらに明らかになった大飯原発の危険性に対する市民の不安は,払拭されるどころか,ますます深まらざるを得ないでしょう。

私たちは,関西電力と国及び福井県に対し同原発が抱える根本的な危険性から眼をそむけることなく,直ちに同原発の運転を停止するよう,強く求めるものです。

◆2018/7/4 名古屋高裁金沢支部の判決要旨

平成26年(ワ)第126号大飯原発3,4号機運転差止請求控訴事件

【判決要旨】

1 原子力発電所の設備等について事故を起こす失陥があり,周辺の環境に対して放射性物質の異常な放出を招く危険があるのであれば,どの範囲の住民が運転の差止めを求め得るのかはともかく,人格権を侵害するとして,当該原子力発電所の運転差止めを請求することができる。その一方で,現在の我が国の法制度は,原子力基本法,原子炉等規制法などを通じて,原子力の研究,開発及び平和利用の推進を掲げ,原子力発電を一律に有害危険なものとして禁止することをせず,原子力発電所で重大な事故が生じた場合に放射性物質が異常に放出される危険などに適切に対処すべく管理・統制がされていれば,原子力発電を行うことを認めている。このような法制度を前提とする限り,原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって,それ自体で人格権を侵害するということはできない。もっとも,この点は,法制度ないし政策の選択の問題であり,福島原発事故の深刻な被害の現状等に照らし,我が国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止・禁止することは大いに可能であろうが,その当否を巡る判断は,もはや司法の役割を超え,国民世論として幅広く議論され,それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄である。

2 原子力発電所における具体的危険性の有無を判断するに当たっては,その設備が,想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し,かつ,重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か,すなわち,原子力発電所の有する危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているか否かが検記されるべきである。そして,原子炉等規制法の下,高度の専門的知識と高い独立性を持った原子力規制委員会が,安全性に関する具体的審査基準を制定するとともに,設置又は変更の許可申請に係る原子力発電所の当該基準への適合性について,科学的・専門技術的知見から十分な審査を行うこととしているのであって,具体的審査基準に適合しているとの判断が原子力規制委員会によってされた場合は,当該審査に用いられた具体的審査基準に不合理な点があるか,あるいほ具体的審査基準に適令するとした原子力規制委員会の判断に見過ごし難い過誤,欠落があるなど不合理な点があると認められるのでない限り,当該原子力発電所が有する危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理され,周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価できる。

3 本件発電所の安全性審査に用いられた新規制基準は,各分野の専門家が参加し,最新の科学的・専門技術的知見を反映して制定されたもので,所定の手続も適切に踏んでいるのであって,手続面でも実体面でも原子炉等規制法を始めとする関係法令に違反していると認めうる事情はなく,また,内容において不合理な点も認められない。

4 本件発電所の基準地震動及び基準津波は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて策定されたものであり,そこで用いられた各種パラメータは安全側に配慮して保守的に設定され,性質や程度に応じて不確かさが考慮されているほか,計算過程及び計算結果に不自然,不合理な点は見当たらず,年超過確率も極めて低い数値になっていることからすれば,これらが新規制基準に適舎するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点があるとは認められない。

 なお,基準地震動の策定に当たり,地震モーメントを求めるに際し用いられた入倉・三宅式について,地震動の事前予測に用いると地震モーメントが過小評価される旨の専門家の証言があるが,対象となる活断層の長さや幅を保守的に大きく見積もり,断層面積を地表地震断層の長さそのものから求めた数値より大きく設定することなどによって過小評価を防ぐことが可能であると考えられ,本件においても対象となる活断層の断層面積ほ,詳細な調査を踏まえて保守的に大きく設定されているから,1審被告の策定した基準地震動が過小であるとはいえない。

5 本件発電所の安全上重要な設備の耐震性,対津波安全性,異常の発生・拡大防止対策及び重大事故等対策(火山灰対策を含む。),テロリズム対策等は,最新の科学的知見及び手法を踏まえて講じられており,地震,津波を始めとした外部事象による共通要因故障のみならず,偶発的な設備の単一故障を仮定しても設備の安全性が確保されているほか,重大事故等対策の有効性も科学的手法によって検証されるなどしており,IAEAの国際基準等に反するともいえないのであって,これらが新規制基準に適舎するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない。

6 以上によれば,本件発電所の安全性審査に当たって用いられた新規制基準に違法や不合理の廉はなく,本件発電所が新規制基準に適令するとした原子力規制委員会の判断にも不合理な点は認められず,本件発電所の危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制されているといえるから,本件発電所の運転差止めを求める1審原告らの請求は理曲がない。

以 上