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◆5/28の第7回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

関西電力と国を相手に、福井県の大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料の請求を京都府などの住民が求めている裁判は、5月28日京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で第7回口頭弁論が開かれました。法廷は柵内に弁護団15人、原告36人、満席の傍聴者(80人、外れた28人は弁護士会館での模擬法廷に参加)、関電や国の代理人など170人余りが席を埋めての進行となりました。弁論では、4人の原告代理人弁護士と原告が準備書面の要旨や意見陳述に立ちました。

大飯原発の根本的危険性―毛利崇弁護士

■ 最初に原告代理人の毛利崇弁護士が第10準備書面の要旨を陳述しました。毛利弁護士は、大飯原子力発電所は脆弱な基盤の上に、構造上も根本的危険をかかえているもので、いつ大事故が起きてもおかしくないことを指摘。「事故を防ぐには『止める、冷やす、閉じ込める』機能が必要だが、原発の仕組みそのものに事故で機能を失う欠陥がある。しかも、使用済み核燃料はたまる一方で危険度が増し、保管、処分方法も確立されていない。実際、過去に大飯原発では「放射能漏れ」「冷却水漏れ」などの多くの事故が発生している(具体的事実をあげて指摘)。大飯原発の老朽化も危険だ。これはそもそも対策を講じることができない危険である。関電の計画している対策では過酷事故は防げない」と述べました。

新基準に合致しない大飯原発―森田基彦弁護士

■ 続いて森田基彦弁護士が立ち、第9準備書面の要旨を次のように解明しました。「大飯原発は、水素爆発を防止すべき新規制基準にも合致していない。現実に爆発の危険性が存在する(福島原発の爆発や建屋の損傷状況を映像で示す)。過酷事故で核燃料が高温になり炉心溶融が起こる。それにより燃料被覆管の金属・ジリコニウムと水が反応して水素が発生。溶融した炉心が格納容器のコンクリート底に達するとコンクリート床が化学反応(コンクリートの相互作用)、漏れ出た水と溶融炉心が反応して水素が発生する。この水素濃度を13パーセント以下に抑えるのが新基準で、大飯原発はまだ審査基準がでていないものの、川内原発や高浜原発の反応量を仮定しても水素濃度は13.7パーセントで基準に合致しない。大飯原発3、4号機は重大事故時に水素爆発の危険が存在する。

被害は暮らしや地域すべての崩壊―岩橋多恵弁護士

■ さらに、岩橋多恵弁護士は、第12準備書面の原発事故の避難状況と暮らしやコミュニティの破壊について陳述しました。―福島の12万人の人が今なお避難生活をしている。政府の委員会資料で48兆円を超える損害費用を指摘しているが、これも原発事故の全容が解明されていないいま、損害の一部にすぎない。被害の特性は、長期間の避難により従来の暮らしが根底から覆され、家庭も地域コミュニティも崩壊するところにある。豊かな自然のもとでの生活は山の幸海の幸を家族、地域で分け合い、交流し、歴史と伝統文化を築いてきたが、放射能汚染で一変した。三食から飲料水、外出時の被ばく、土や草木などふれるものすべてから、放射線への懸念と不安を考慮しなければならず、現在、および将来の健康への影響にも悩む。農林・漁業や山菜採りも家庭菜園も奪われ、喪失と絶望感に打ちのめされ、自死をする人も出ている。また、避難者は、家族や友人、地域と引き裂かれるなどの問題に苦悩している。こうした生業と地域コミュニティすべてが崩壊している。

収束ほど遠い放射能汚染―渡辺輝人弁護士

■ 渡辺輝人弁護士は、放射線物質の環境汚染について、次のように陳述しました。保安院の試算では、福島原発の事故による放射性物質の放出量が、キセノン133で1100京ベクレル、ヨウ素131で16京ベクレル、セシウム134で1.8京ベクレル、セシウム137で1.5京ベクレル、で想像を超える。キセノンの放出はチェルノブイリ事故の1.69倍だ。この汚染が福島だけでなく近隣の県でのキノコ類、山菜、肉などの出荷制限となり、また大気中からの海洋への投下、原発施設からの漏えいが今も続いている。原発事故による被害や避難のストレスなどで体調が悪化して死亡する、原発関連死は、2014年9月11日時点で少なくとも1,118人。浪江町、富岡町、双葉町、大熊町などで1か月20件以上の関連死の申請がある。住宅地などでは除染が進められているが、屋根の瓦や壁には細かい穴があり、多くを占める放射性セシウムはそこにこびりついたまま取り除かれない。住宅除染の進捗状況は、15年1月の時点で、全体計画の47.5パーセント。道路除染は22.9パーセント。事故の収束自体も収束には程遠い。廃炉の計画も、期間に根拠がなく完了の見通しはない。「核のゴミ」は、12年9月末時点で、全国の原子力発電所及び六ヶ所村の再処理工場に保管されている使用済み核燃料、1万7000トン超。大飯原発では2020トンの保管スぺースがあるが、その71パーセントに使用済み核燃料が入っている。最終処分場のめども立たず、10万年単位での安全な保管など不可能。地中深く埋めても容器の破損や地震による変動で安全性の保障はない。原発の稼働をさせてはならない。

福島から避難して―原告・菅野千景(かんの・ちかげ)さん

■ 2011年8月、放射能を避けるため、仕事で離れられない夫を残し、2人の娘を連れて京都に避難してきた。「誰が悪いんだべね」と夫は泣き、子たちも京都へ向かうバスでしゃくりあげていた。避難してから子どもたちはおびえ、慣れない関西弁の授業や違う教科書で追いつくのに必死でがんばった。夫は、月に1・2度京都にやってくるが、半年ほどしてくるのがつらいという。帰るときのつらさは、家族みんなの思いだった。避難が正しかったのか悩む。でも、福島の自宅の放射線量は室内で毎時1.2マイクロシーベルト、庭は6マイクロ
シーベルト以上のところもあり、正しい選択だったと確信している。夫がいるときは家族がにこにこ元気でいるが、帰ってしまうと機嫌が悪くなり、ご飯を食べなくなったり、子どもたちが心のバランスを崩す。原発事故は、自由・夢・未来へつながること・家族・友人・動物・豊かな自然・食物・仕事・愛し合うこと・命・すべてを破壊していくものだと知ってしまいました。それは一瞬に起きて、長い長い時間をかけて壊し続けてゆく。原発はずっと動いていない。再稼働を希望する前に、これらのことに取り組むべきだ。始めることに必死になるなら、後始末のことも必死にならなければならない。危険を冒してお金を得るより、大切なこと、よいことを選ぶ強さや勇気をもって、子ども達のお手本となれるように、恥ずかしくない生き方を選びたい(拍手あり)。

次回弁論は10月20日

■ 次回第8回口頭弁論は、10月20日(火)午後2時から、101号法廷で開かれます。期日がせまりましたら改めて案内をします。

市民アピールも

■ なお、この日の12時15分からは、弁護団、原告団などが54人ほどで弁護士会前から市民アピールのパレードをしました。関西電力の料金値上げに抗議、原発の早期廃炉、大飯原発の危険性などを訴えて裁判所の周辺を行進しました。

◆第6回口頭弁論
 新基準は再稼働のための改定
 大飯原発差止裁判で原告側が批判

関西電力と国を相手に福井県の大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料の請求を京都府などの住民が求めている裁判は、1月29日京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で第6回口頭弁論が開かれました。傍聴席、原告席、合わせて130人を超える人々が参加し、法廷でのやり取りを見守りました。この日は、最初に原告代理人の森田基彦弁護士が、原告第7準備書面で主張した要旨を陳述。森田弁護士は、「福島第一原発事故後作成された新規制基準は、原発立地審査指針を排除していて、原子炉の格納容器の加熱、破損、水素爆発などが起これば、住民をむき出しの危険にさらすことになる。福島の原発事故のような放射能の放出を仮定すると立地条件が合わなくなるから(田中俊一原子力委員長)、従来より甘いルールに改定した。これは再稼働を可能にするためのルール作りだ)と批判しました。

つづいて、舞鶴市在住の原告、三澤正之さんが意見陳述。「自身は8人家族で、高浜原発から15キロ。舞鶴の住民は大飯原発からもほとんどが30キロ圏内。公表された舞鶴市の避難計画は、避難方向も、受け入れ先も明示がない。移動手段もバス利用1,350台(うち600台がピストン輸送との計画)とされているが、道路が車であふれるなどの大混乱になることも想定され、浪江町では放射能汚染地域へ運転手が入らなかった。とても避難計画が機能するとは思えない。危険な原発をなくすことが一番だ」と述べました。
次回口頭弁論は5月28日(木)午後2時から、同法廷で。

■2693人の大原告団に
この日はまた、京都や滋賀など19都道府県の住民730人が第三次の提訴をしました。これで原告団は、同種裁判では全国で2番目の2,693人の大原告団となりました。

■活発に意見交換―報告集会
裁判終了後の報告集会では、弁護団による裁判の解説や参加者との質疑応答、今後の運動などについて活発な意見交換がされました。原告団事務局からは、支援ネットワークづくりも進めて多くの人との連帯した運動をする方針も示されました。

■「原発いらない」「大飯は危険」とデモ
裁判開始前の12時15分からは、デモによる市民アピールも行いました。出口治男弁護団長、竹本修三原告団長を先頭に約60人が、横断幕やのぼり、プレートなどかかげ、「原発いらない」「大飯は危険」「子ども守ろう」「いのちをろう」などの唱和を響かせ、裁判所の周辺や夷川通り、寺町通りなどを行進しました。

◆原発の再稼働中止へ英断を!
 大飯原発差止訴訟第5回口頭弁論の報告

 京都府の住民など1063人が国と関西電力を相手に大飯原発の差し止めと慰謝料を求めた訴訟の第5回口頭弁論が、9月30日、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。満席(支援者約80人余)の傍聴者が見守るなか、原告代理人弁護士4人が新規制基準の問題点について要旨を陳述、原告2人が福島第一原発の被害実態や地域・都市計画に原発事故が欠落している問題などを訴えました。要旨は以下の通りです。

 森田基彦弁護士「福島第一原発の事故は地震による外部電源の喪失、津波による全交流電源の喪失によって冷却が不能となり炉心損傷にいたった。新規制基準はこの教訓を生かした指針になっていない。地震で土砂災害をこうむった場合など再び同じような事故の起こる危険があるのに対応できていない。立地審査も新基準から削除されている。避難計画の策定も再稼働の条件となっていないなど、これらの重大な不備が残されたまま再稼働審査がなされている。人格権に基づいて原発再稼働を差し止めるべきだ」

 渡辺輝人弁護士「大飯原発の過酷事故が起こった場合、原子力規制委員会の予測でも放射性物質の拡散が南方32.2キロメートル地点の南丹市まで[7日間で100ミリシーベルト]という避難が必要なレベルに達する。近畿の水がめの琵琶湖も汚染され飲用制限に達する。近畿の水道水もすべて原発から45~100キロ圏にあり長期にわたって飲用できなくなる可能性は十分ある。それでも『ただちに健康に影響はない』などといわれ汚染水を飲む恐れもある」

 三上侑貴弁護士「大飯原発の事故で放射性物質が放出された場合、周辺住民の生命、身体に被ばくの危険が及ぶが、これに対する環境整備はできていない。原子力規制庁は、半径30キロ圏で防災計画を推進しているが、風向きの影響が考慮されていない。放射性物質は同心円状には拡散しないから、危険防止ははなはだ不十分。オフサイトセンター(緊急事態応急対策等拠点施設)は、事故発生時、国や自治体と連携して対策を講じていく拠点。住民に避難指示と広報をする。ところが、その立地場所は、大飯原発から約7キロメートル、おおい町の海岸沿いで海抜2メートル、海の護岸から100メートル足らずで、津波襲来時の電源喪失による機能停止が考えられる」

 畠中孝司弁護士「原発事故で住民の生命・身体に危険が及ぶ地域の避難計画に多くの問題がある。おおい町、高浜町、舞鶴市、宮津市、綾部市に限ってみても、関電からの迅速的確な情報が得られない可能性があり、避難手段を自家用車とする計画では道路、橋の破壊による遮断の可能性、たくさんの車が限られた道路に集中して渋滞、しかも原発に近い住民ほど渋滞の後方で被ばくの危険にさらされる。バスでの避難計画でも住民を輸送するほどのバスの台数は追いつかない。渋滞によるガソリン切れ、放置、避難先の駐車場不足。要援助者の移動による命の危険(福島でも11年3月末までに60人が死亡)。全住民が被ばくなしに安全迅速に避難することなどとても不可能である」

 尾崎彰俊弁護士「おおい町住民らが求めた稼働差し止め訴訟で福井地裁は5月21日、人格権を最優位の権利とする判決を出した。この判断の対象は、生命を守り生活を維持する利益が極めて広範に奪われる事態を招く具体的危険性が万が一にもあるかである。この指摘は原告が訴状において主張してきたところである。関電は、原発停止の場合の経済的損失などを主張するが、福井地裁判決は、極めて多数の人の生存そのものにかかわる権利と電気代の問題などとを並べて論じることはできない、とし、『豊かな国土とそこに国民が根をおろして生活していることが国富である』と明快に判断を示した。京都地裁は大飯原発の具体的危険性を認定して課せられた重大な責務をはたすべきだ」

 原告:萩原ゆきみさん「原発事故前、郡山市で夫、9歳、3歳の子どもと4人で暮らしていた。3月15日、子どもと3人で大阪に避難、その2年後に夫とともに京都で暮らす。3月12日原発の爆発でライフライン切断、情報も入らず、食物、飲み物、ガソリン確保に並び続けた。物資が届かない、原発が危ないから避難した方がいいとの親戚からのすすめもあり、放射能にやられてしまう恐怖におびえた。夫を残し、3人着の身着のまま、空港に行き、キャンセル待ちで夜を明かし、翌日の便で大阪にやってきた。やっと安心して深呼吸した。いまでも福島を思い出し、胸が苦しくなる。望郷の念はつのるばかり。原発事故の9年前、夢のマイホームを建てた。両家の両親との同居を考え建材を厳選してつくった。手放すのは身を切られるようにつらかった。夫は残って放射能に汚染されつづけた。我が家の庭の土はチェルノブイリでの『移動権利ゾーン』、空間線量では『移動義務ゾーン』の汚染度だった。2012年夏休みに3人が自宅へ帰った。掃除をしたりしたが、子どもも私も鼻血を出した。京都に帰ったらやんだ。13年に夫が避難してきた直後、また子どもたちが鼻血を出し咳をするようになった。夫の荷物や車が汚染されていたからだ。掃除(除染)し荷の処分をすると線量が以前より低くなり、鼻血、咳もとまった。しかし、被ばくの今後の影響を思うと健康不安は底知れぬ恐怖。このことから、大飯原発の事故が起こった場合のことを考えると、事故に関する真実の情報が伝わるとは限らないし、策定される避難計画も実態に沿わない。避難区域の範囲も狭すぎる。福井地裁判決は、半径250キロ地域にとりかえしのつかない被害の出る可能性を指摘している。私は、毎週金曜日の関電前の行動や集会などでも訴え続けている。見捨てられてよい命があるはずがないと心に強く思ったから(陳述後に傍聴席から拍手―裁判長がやめるよう言及)」

 原告:広原盛明さん(京都府立大元学長)「私は、地域計画、都市計画の研究者。専門分野から、原子力規制委員会の原発新基準の問題点を以下述べる。史上最大の危険施設である原発に対しては史上最大の立地規制が求められる。にもかかわらず、新基準では万一の事故で住民の被ばくが重大なレベルに達しないような地域計画や都市計画がはかられていない。福島の事故では、当時の原子力規制委員会が250キロ圏の住民の避難を検討した。しかし、規制委員会が基準合致と認めれば、原発立地自治体の承認だけで稼働ができる。30キロ圏内の自治体の承認はいらない。これでは国土全体にわたって影響をおよぼす原子力災害から国民を守れない。とりわけ問題なのは、国土開発計画に原発の立地による災害の問題がまったく欠落していることだ。国土交通省の【国土グランドデザイン2050】では、原発災害・原発問題に関する記述が一切ない。3・11以後、国土計画を考えるにあたっては原発問題をどう扱うかが最大のテーマのはず。このように政府が解決できていない、原発問題をそのままに原発を稼働することは許されない。司法の英断で再稼働を中止させていただきたい」

 次回第6回口頭弁論は1月29日(木)午後2時から101号法廷で(1時からは傍聴券の抽選の予定)。

140人が参加―デモ・傍聴・模擬裁判・報告集会

 この裁判に先立ち原告・弁護団などは12時15分から61人で裁判所周辺をパレード。市民に「脱原発」をアピールしました。また、傍聴券にはずれた57人には、京都弁護士会館で「模擬法廷」を同時進行させ、弁論内容を再現させました。

◆原発報告

5/21の口頭弁論~福井地裁での画期的判決~6/7原告団総会
自由法曹団京都支部ニュース 2014年7月 第327号
  尾崎彰俊(大飯原発差止訴訟、弁護団)

1 大飯原発差し止め訴訟弁論期日

 5月21日、京都地方裁判所において、大飯原発差し止め訴訟第4回口頭弁論期日が開かれました。当日は、午後12時過ぎから裁判所を出発してデモ行進を行いました。デモには約50人が参加し、「原発やめろ」のシュプレヒコールを行いました。

 午後2時から第4回口頭弁論が101号法廷で開かれました。原告団や支援者の方で120人の傍聴席が埋まりました。今回の期日から、これまで裁判を行ってきた3人の裁判官が全員交代しました。3人の裁判官にこれまで原告側が行ってきた弁論内容を伝えるために、原告側が第1回から第3回までの口頭弁論期日に行った弁論のまとめを行うとともに竹本修三原告団長と原告の福島さんが意見陳述を行いました。竹本団長は、地震国日本では、どの原発も福島第一原発事故と同じ事故が起きる危険性を孕んでいると力強く述べられました。福島さんは、福島第一原発事故からの避難者として、原発事故の被害について述べた後、司法に真剣に原発事故と向き合うよう求めました。原告代理人の弁論では、安全神話の崩壊、放射線の人体への影響、日本の安全対策の遅れ、新規性基準の問題点について、これまでの期日で原告が主張してきたポイントを再度主張し大飯原発の危険性を訴えました。

 第4回口頭弁論が行われた5月21日は、福井地裁で行われている大飯原発差し止め訴訟の判決期日でもありました。京都地裁での口頭弁論が終わり、弁護団と裁判を傍聴した原告団・支援者の方が報告集会のため、京都弁護士会に移動した15時過ぎに、福井地裁での差し止め訴訟の原告勝利判決の速報が流れました。この速報を聞き、報告集会のために会場に集まった原告団・弁護団から大きな歓声と拍手がありました。複数人の新聞記者も会場に来ており、出口弁護団長は自ら裁判官を務めてきた経験からもこういう住民勝訴の判決は大変難しいと思っていたが、司法が住民の命と暮らしに向き合い、憲法が保障した人権を生かそうとの判断に立ったもの、私たちも未来をみすえて原発のない社会へ行政の政策転換をもとめてこの裁判でもたたかう、と述べました。次回、裁判期日は9月30日になります。次回も多くの方の傍聴をお願いします。

2 福井地裁での画期的判決

 福井地裁の判決文の特徴は、生存を基礎とする人格権が公法、司法を問わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされていると指摘し、人格権の価値を最高のもとに認めている点です。さらに判決は、人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできないと述べています。

 私は判決のこの部分を読んだとき思わず「かっこいい」と言ってしまいました。
さらに、判決文は、本件原発に関わる安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ないと述べています。これまで、国と電力会社が宣伝し続けてきた安全神話が崩壊したことを裁判所が認めました。他にもすばらしいところが数え切れないほどある判決ですので、まだ読まれていない方は、是非とも判決原文を読んでいただきたいと思います。

3 原告団総会

 6月7日午後1時30分から京都駅前のキャンパスプラザ京都で第2回原告団総会が行われ約100人の方が参加されました。原告団総会の前に梅小路公園に集合し関電京都支店周辺のデモ行進を行いました。デモ行進には約40人が参加しました。

 総会では、まず、竹本原告団長が5月21日福井地裁の勝訴判決を紹介して、京都でも勝訴判決を勝ち取るためもっと原告を増やそうと呼びかけられました。続いて、出口弁護団長から挨拶がありました。次に、お楽しみ企画として「乙女文楽」によるパフォーマンスが行われました。総会に参加された参加者の多くが携帯電話を使って、パフォーマンスの映像を記録していました。最後に、横断幕に人形が「脱」の文字を書き、「きょうから脱被爆」の横断幕が完成しました。「乙女文楽」によるお楽しみ企画が終わった後に、弁護団事務局長の渡辺弁護士が訴訟の経過報告と判決の紹介を行い、第三次提訴を予定しているので、さらに原告を増やしましょうと呼びかけられました。その後、原告団新募集ツール「紙芝居」の発表が行われました。紙芝居では、国や電力会社は「原発は絶対安全」と宣伝を振りまき、夢のエネルギーとして原発が始まったこと、しかし2011年の原発事故で安全神話が崩壊したこと、原発事故による被害、なぜ国や電力会社が安全神話に乗り続けてきたのかを可愛い絵とイラストで紹介が行われました。

 休憩を挟んで、国会事故調査委員であった田中三彦さんによる記念講演がありました。田中さんは記念講演の中で、①実は、いまもなお地震と津波の議論決着がついていないこと②新規制基準は「がけっぷちの安全論」であることについてお話されました。特に田中さんが講演の中で強調されていたのが、新規制基準を満たせば、原発は安全になったと思った方がいるかもしれないが、そんなことは全くないという点です。新規制基準という考え方自体がこれまで国や電力会社が安全だと言い張ってきた原発が、実は危険なものであることを認めているのです。

 これまで、原発の安全性対策は、3段構えで行われてきました。1層目(異常、故障の発生防止)の対策が機能せず、原発に異常、故障が発生しても2層目(事故への拡大防止)の対策がある。2層目がダメでも3層目(著しい炉心損傷事故の防止)がある。3層目の対策がダメなことはあり得ない。このように考えられてきたのです。新規制基準はさらに2つの基準を加えて、3層目がダメでも4層目、5層目の対策があるから安全だと言っています。しかし、このように2つの対策を付け加えたということは、万に一つも原発事故は起こらないというこれまでの考え方を180度転換して、原発は本質的に危険なものであることを認めたのと同じ事だと言えます。田中さんの記念講演を聴いて、原発が本質的に危険であり、事故が起きれば、取り返しのつかないことになるということを改めて感じました。最後に、原告団のアピール文を採択して第2回原告団総会は終了しました。

 今年の秋には、第3次原告を提訴したいと思います。そのために、新しい原告募集ツールである紙芝居などを使って原告拡大をがんばっていきたいと思います。

◆個人の生命の本質的価値と
 原発の本質的危険性–福井判決を読む

宗川吉汪(そうかわ・よしひろ。日本科学者会議京都支部事務局長)

原発の運転差し止めを命じた画期的な判決がでた。5月21日、折しも京都地裁では大飯原発運転差止訴訟の第4回口頭弁論が開かれていた。弁論では、原告団長の竹本修三さん(京大名誉教授、地球物理学)が、日本列島は地震の巣窟だ、現在の地震学はさほど正確ではないので地震予知は難しい、だから既存の活断層だけを問題視しては危険だ、関電が基準時震動を700から856ガルに上げても安全とは言えない、1500ガルに耐えられる設備を作るのは技術的にも経費の面からも不可能だ、関電は直ちに廃炉に踏み切れ、と明快に述べた。福井判決にもほとんど同じことが書かれている。

京都訴訟原告の一人で、福島から京都に避難してきた福島敦子さんは、福島原発が爆発してからの苦難に満ちた逃避行とその後の避難生活を切々と訴え、3年経った今も事故は収束せず、事故原因も分からず、被災者は生活に疲弊し、家族の崩壊と向きあっている、と述べ、放射性セシウムが93万ベクレル/m2もある南相馬の自宅の庭の土を示して、チェルノブイリなら移住区域にあたるとして、裁判長に、子どもを守るに必死な母親たちを救ってほしい、子どもたちに明るい未来を託してほしい、司法が健全であることを信じている、国民は憲法に守られていることを信じている、と訴えた。

福井判決はこの訴えを正面から受け止める内容であった。個人の生命・身体・精神・生活に関わる利益は各人の人格に本質的なもので、人格権は憲法上の権利であり、これを越える価値は他になく、「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかに想定し難い」として、「少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのが当然である」と述べて、大飯原発3、4号機を運転してはならない、と命じた。

68ページにわたる判決文の中で、「本質的」という言葉が人格権に関わる文言以外に二度登場する。一つは、運転を停止しても被害の拡大が阻止しえない「原子力発電に内在する本質的な危険」を指摘した個所と(43ページ)、もう一つは、地震大国日本での原発運転が「原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりに楽観的」と断じている個所(59ページ)である。

湯川秀樹は核兵器は絶対悪と言った。私は原発は絶対危険と主張している。福井判決も原発は本質的に危険な科学技術であると指摘した。

被告関電は、1260ガルを超える地震に大飯原発は耐えられないことを認めた上で、このような地震はやって来ないとしている。これに対して福井判決は、「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である」と反論し、ここで「本来的」という文言を使用した(45ページ)。つまり現在の地震学の科学的限界を指摘したのである。

ある著名な科学者は、科学技術はもともと価値中立で、使いようによって天使の贈り物にも、悪魔の企てにもなる、だから科学者は原発についてもそのメリット・デメリットを市民に知らせて、最終的判断は市民がすれば良い、と述べている。

しかし福井判決は、原発という科学技術は「本質的に」危険であり、科学的地震予知は「本来的に」不可能である、と明快に述べた。科学者はそのことを市民に知らせる義務があった。福島原発事故は、原発の安全神話だけでなく、科学の価値中立神話も崩壊させた。

私は科学者会議の一員として今回の福井判決から多くのことを学んだ。これをテコに京都の大飯原発差止訴訟でも勝利したい。

[週刊] 京都民報 2014年6月22日付け

◆裁判勝利で原発廃炉をめざす
 大飯原発差止訴訟原告団が総会

橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)
救援新聞 京都版No.1213 2014年6月25日(PDFファイル 392KB)
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 関西電力と国を相手に福井県の大飯原発再稼働の差し止めなどを求めて京都地裁で裁判をたたかっている原告団(1963人)の第2回総会が、6月7日午後、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で約100人の参加者を集めて開かれ、福井地裁の「差し止め判決」を力に裁判に勝利しすべての原発を廃止に追い込む運動への決意を固め合いました。

「原発いらない」「いのちを守ろう」とパレード

 総会に先立ち、弁護団、原告団は塩小路公園に集合。出口治男弁護団長、竹本修三原告団長を先頭に、横断幕やのぼり、プラカードなどをかかげてパレードに出発しました。関電京都支店前から烏丸通り、七条通りなどを進みながら市民への訴えやシュプレヒコール、「大飯は危険」「原発いらない」「子どもを守ろう」「いのちを守ろう」などの声を響かせました。

福井地裁の大飯原発差止判決を力に

“万一”が起きることがわかったんだから大飯もだめ
 開会の冒頭、竹本修三原告団長があいさつ。「福井地裁の大飯原発差し止め判決は大変すばらしい判決だ。原発差し止め訴訟を審理する他の裁判所でもどう判断するか考えているはず。憲法の人権を保障する考えに立つよう運動をひろげてわれわれも勝訴判決を勝ち取り原発廃止へつなげたい。そのためにも、いまひとまわりの原告を拡大したい。ぜひ、まわりにひろげていこう」と述べました。続いて、出口治男弁護団長があいさつし、福井地裁の原発差し止め判決は、けれんみのない歴史に残る判決、国策に正面から立ち向かって憲法上の人権を尊重する判断をくだした、勇気のある骨太の判決で哲学的思想的にも質が高い、と評価。原告の人たちもこの判決を先取りする意見陳述を法廷で述べてきた。弁護団もしっかりやらないといけない、と決意を語りました。
 弁護団の渡辺輝人事務局長が、この間の訴訟の要点と経過について報告。いままで大飯原発がなぜ危険か、準備書面にして提出してきたが、京都府は大飯原発の事故を想定した被害調査の資料を作成しているはずで、これらも提出を迫って行きたいと述べました。

国会事故調委員の田中三彦さんが講演

 この後、原子力発電の設計技術者であり、国会事故調査委員会の委員でもある田中三彦さんが「国は福島の原発事故から何を学んだか」―原子力規制委員会はもはや期待できない―と題して講演。田中さんは次のような話をしました。

 ―最先端の技術にあこがれ、原子力発電の設計に9年間かかわったがおもしろくなくてやめた。自然科学や哲学が好きで、その翻訳や著作をやっていた。そこへ1986年チェルノブイリの原発事故が起こりショックを受けた、かつては専門知識の受け売りで福島第一原発の4号機を設計した。しかし、製造過程でとんでもないミスがあり、圧力容器が歪んでいたのを違法に矯正した。私は危険だからやめた方がいいと警告したが、上司が修正を指示してきた。チェルノブイリ事故以後、日本の原発は安全だとキャンペーンをつづけてきたが、これは大ウソだった。雑誌「世界」に私は「安全神話の虚構」という論文を発表した。シンポジウムでも話した。そのための脅迫やいやがらせを受けた。原子炉の製造をしている日立からは家族がおどされた。技術評論家も圧力を受けた。それらは90年代中ごろまでつづいた。3・11の地震と津波による福島の事故で、電源喪失と聞いてもう駄目だと思った。NHKテレビの解説が間違っていたりした。実は、事故の原因は地震によるものなのか、津波によるものなのか、絶対起きないといわれてきた全電源喪失が何故起きたのかいまもって決着がついていない。1号機は間違いなく地震でやられている。写真データからみて津波の到達する以前に電源が喪失している。電源が失われれば、冷却水を回すポンプが停止し、圧力容器内の燃料棒が溶融しメルトダウン起こす。水素が発生し爆発をして大量の放射性物質が拡散したのが福島の事故。事故原因の解明でもそうだが、われわれは騙されている。今度は新基準でだまされようとしている。福島の際もそうだったが、ひとたび事故が発生すれば職員では手におえない。政府事故調査委員会はこうした現場の事実をつかんでいない調査だ。その上に立って新基準なるものをつくっている。万が一起きても大丈夫だといってきた基準がだめだったのだから大飯原発の稼働もだめだ、と考えるのが道理だ。原子力規制委員会は、委員に規制に必要な知識がない。旧原子力保安院の役員、原子力村のメンバーがそのままで、原子炉メーカーの人もよく知った人たちだ。燃料や放射線の専門家ではあっても原子力発電の危険を知った専門家ではない。まさに「規制の」の復活である。規制をしなければならない側がとりこまれて、電気事業連合会などの思いのままに判定を出すところにされている。今回の人事入れ替えでいよいよ、全員右へならえ、になった。これらを監視し、批判の声をあげて行く責任がわれわれにはある。

◆福井地裁判決をめぐる新聞各社の論説

以下、大飯原発差止訴訟の弁護団の浅野則明弁護士が、Facebookに投稿された内容を転載します。
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大飯原発差し止め判決(福井地裁)についての社説を比較してみた。
朝日、毎日、京都は、概ね司法の役割を果たした画期的な判決として高く評価している。しかし、読売だけは、不合理な推論が導く不当な判決であるとこき下ろしている。

<朝日新聞>
・東京電力福島第一原発事故の教訓を最大限にくみ取った司法判断だ。電力業者と国は重く受け止めなければならない。・原発は専門性が高く、過去の訴訟では裁判所は事業者や国の判断を追認しがちだった。事故を機に、法の番人としての原点に立ち返ったと言えよう。高く評価したい。
・事業者や国、規制委は、判決が投げかけた疑問に正面から答えるべきだ。上級審での逆転をあてに、無視を決め込むようなことは許されない。

<毎日新聞>
・住民の安全を最優先した司法判断として画期的だ。
・司法判断を無視し、政府が再稼働を認めれば世論の反発を招くだろう。
・いったん原発事故が起これば、多数の住民の生命を脅かす。判決が「万が一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置を取らなければならない」と電力事業者側に強く求めたことも納得できる。
・安倍政権は、震災を忘れたかのように、なし崩し的に運転再開しないよう慎重な判断をすべきだ。

<京都新聞>
・原発の安全性は何ものにも優先されねばらない。そんな当然の感覚を反映した判決と言える。
・福島事故から3年余。政治が再稼働容認へ傾斜する中だけに、画期的な司法判断を評価したい。
・関電は判決を真摯に受け止めるべきだが、言い渡しの法廷に関電関係者が誰も出席していなかったのは理解に苦しむ。・原発は電気を生み出す一手段にすぎないのに、いったん大事故を起こせば大勢の生活基盤と人生を根底から覆してしまう。それほどのリスクを私たちは抱えきれるのであろうか。-判決の問いかけを重く受け止めたい。

<読売新聞>
・「ゼロリスク」に囚われた、あまりに不合理な判決である。
・昨年7月に施行された原発の新たな規制基準を無視し、科学的知見にも乏しい。
・判決がどれほどの規模の地震が起きるかは「仮設」であり、いくら大きな地震を想定しても、それを「超える地震が来ないという確たる根拠はない」と強調した点も、理解しがたい。
・非現実的な考え方に基づけば、安全対策も講じようがない。
・(大阪高裁が)規制委の安全審査が続いていることを考慮し、「その結論の前に裁判所が差し止めの必要性を認めるのは相当でない」という理由からだ。常識的な判断である。
・(伊方原発最高裁判決は)原発の審査に関し、司法の役割は抑制的であるべきだとした妥当な判決だった。福井地裁判決が最高裁の判例の趣旨に反するのは明らかである。

◆大飯原発運転差止訴訟第4回口頭弁論に出廷して

日本科学者会議京都支部の支部ニュース (2014年6月号)

 福井地裁が「大飯発電所の3号機と4号機の原子炉を運転してはならない」とする判決を下した同じ5月21日(水)の午後2時、京都地裁大法廷において標記裁判の第4回口頭弁論が行われました。今回の特徴は、担当判事3名が全員交代したことです。そのため、第1回(2,013年7月2日)の口頭弁論と同じ内容の陳述が同じ口述人により行われました。新たに登場した裁判長は女性で、熱心に陳述に耳を傾けていました。これまでも全く陳述をしてこなかった被告側は、当然、述べるものは何もなく、次回を9月30日午後2時の開廷として、法廷は約1時間で終わりました。
 今回の法廷では、原告側が原告34名と弁護士10数名の出廷に対して被告側は15名でした。また、これまで同様、傍聴席はほぼ満席でしたが、記者席は、第1回10席が、第2回(2013年12月3日)9席、第3回(2014年2月19日)5席と減少し、今回の第4回は3席しかありませんでした。記者席は事前通告制らしく、いつも満席です。
 傍聴券抽選漏れの人も加わって、毎回の裁判の後、裁判所敷地内にある弁護士会館で開かれている報告集会では、冒頭に午後3時開廷の福井地裁での勝利判決の紹介が行われ、会場から大きな拍手とどよめきが起こりました。そのせいで、会場には、NHK京都支局が取材のカメラを持ち込み、弁護団長や原告団長の発言や会場からの発言の様子を撮影していました。夜のニュースで放映されたのをご覧になった方も多いと思います。報告会の途中で中島晃弁護士と竹本修三原告団長が、夜に開かれる福井の報告集会に向けて、連帯の挨拶を伝えに出発しました。福井地裁判決と同じ勝利判決を勝ち取るべく、年内に3000人の原告団達成を目指して奮闘することを誓い合って散会しました。

(大飯原発差止訴訟京都脱原発訴訟原告団世話人、日本科学者会議京都支部 幹事 富田道男)

◆原発再稼働差し止め判決に歓声
 第4回口頭弁論・報告集会

大飯原発差止京都訴訟第4回口頭弁論・報告集会

橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

救援新聞 京都版No.1211 2014年6月5日(PDFファイル 365KB)
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 福井県の大飯原発の差し止めと賠償を求めて京都などの原告1963人が関西電力と国を相手に起こした訴訟の第4回口頭弁論が京都地裁 (第6民事部合議A係・堀内照美裁判長) 101号法廷で開かれ、弁護団・原告団、支援の傍聴者120人余りがぎっしり席を埋めた法廷では、裁判官の交代に伴う更新手続きが行われました。原告や、弁護団が新任の裁判官に、訴訟にあたっての意見陳述や準備書面の趣旨説明で危険な大飯原発の差し止めを訴えました。

 弁論終了後京都弁護士会館で開かれた報告集会では、冒頭、この日福井地裁 (樋口英明裁判長) で出された大飯原発の再稼働差し止めを命ずる勝訴判決が報告されると、会場は大きな拍手と歓声に包まれました。ニュース映像も映し出され、喜びに沸く裁判所前には「司法は生きている」の横断幕も。出口治男弁護団長は、記者団の質問に答えて、自ら裁判官を務めてきた経験からもこういう住民勝訴の判決は大変難しいと思っていたが、司法が住民の命と暮らしに向き合い、憲法が保障した人権を生かそうとの判断に立ったもの、私たちも未来をみすえて原発のない社会へ行政の政策転換をもとめてこの裁判でもたたかう、と述べました。

 この日の弁論では、最初に竹本修三原告団長(固体地球物理学・京都大学名誉教授)が意見陳述。竹本団長は、要旨次のように訴えました。「世界地図の0.25パーセントの狭い日本で世界の地震の20パーセントが起こっている。ここに50基もの原発が存在することが異常。しかも海溝型巨大地震が2030年代終わりに南海トラフ沿いで起こることも予測される。原子力規制委員会は、大飯原発敷地内を活断層の有無だけにしぼって結論を出しているが、これはむなしい議論だ。兵庫県南部地震のように過去の地震は活断層から離れたところでも発生している。地震の予知も確立していない。使用済み放射性廃棄物の処分問題も解決していない。福島第一原発の事故は、震災・津波・人災の複合災で、どの原発も同じような危険性をはらんでいることをしっかり認識していただき、子や孫の代に負債を残さないために、脱原発に向かって進んでいただきたい」
 
 つづいて原告弁護団の渡辺輝人弁護士が立ち、事故は起こらないという安全神話によりかかって対策をとってこなかった、電気事業体や行政の怠慢を批判。また、裁判所もこれにくみしてきたことを指摘。福島第一原発の1号機、3号機の爆発した動画、写真も流しながら、危険性を明らかにしました。さらに、三上侑貴弁護士が、避難の状況とその後、現在の状況について陳述。海洋汚染の画像や図を示し、被ばく検査を受けた実態を述べました。また、畠中孝司弁護士は、無人化した双葉町のアーケードの写真 (「原子力明るい未来のエネルギー」の文字がみえる) などを映し、「福島第一原発の事故は地域コミュニティを破壊し、正常な家族生活すら破壊しており、放射能汚染の危険がある限りその回復は望めません」と被害の甚大さを説きました。

 福島県南相馬市から二人の子どもを連れて京都に避難してきた原告の福島敦子さんは、自宅に帰った際持ち帰った庭の土です、とビンの土を高く掲げ、「1平方メートル当たり93万ベクレルありました。チェルノブイリなら移住必要地域に当たるレベルです。ここがチェルノブイリなら母たちは移住しているはずであります」と述べ、「裁判長、こどもを守ることに必死な、懸命な母親たちをどうか救ってやってください」と迫りました。

 原告弁護団の大河原壽貴弁護士は、原発の根源的危険性、としてとりわけ放射線被曝が人体に与える影響について簡明に解説。人体への被害が非常に深刻なものであるのに、放射線被曝から住民の生命・身体を守るための法定規制がきわめてズサンであることを指摘し、司法の果たすべき役割の重大さを強調しました。最後に森田基彦弁護士が原告第1準備書面の骨子について陳述。「大飯原発は必要な安全対策を備えていない」問題点を指摘しました。

 次回の第5回口頭弁論は、9月30日(火)午後2時から、101号法廷で。

「原発いらない」のデモも

 弁論に先立ち、午後0時10分過ぎには、弁護団・原告など50人が裁判所周辺をデモ行進しました。横断幕やノボリ、プレートをかかげ、「大飯は危険」「原発いらない」「子どもを守ろう」などと声を合わせ、太鼓などの鳴りものも交えて裁判所職員や市民にアピールしました。

6月7日に原告団総会

 原告団の総会は、6月7日(土)午後1時30分から、京都駅前のキャンパスプラザ京都で開催されます。なお、12時30分からは塩小路公園に集合し、関電京都支店前などへのデモ行進と市民アピールを計画しています。ご参加を。

◆福井地裁判決の意義と
 全国弁護団連絡会のアピール

【拡散自由】
 脱原発弁護団全国連絡会の共同代表である河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士が、今回の大飯差し止め判決の解説と意見を述べておられます。
 ご自由に拡散してくださいとのことで、転載いたします。

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2014年5月23日
大飯原発3、4号機運転差止訴訟福井地裁判決の意義と
全国弁護団連絡会としての今後の行動提起

共同代表 河合 弘之
同      海渡 雄一

第1 経緯
福井地裁は、5月21日、関西電力に対し、大飯原発3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡した。
この判決は、福島第一原発事故後の正式訴訟の判決としては初めての判決であるが、我々はこれに勝訴することができた。
判決内容は、以下に詳しく説明するとおり、司法が原発の抱える本質的な危険性を深く認識し、差し止めの結論を導いたものであり、これからの脱原発訴訟に大きな影響を与える画期的な内容となった。
判決の理論的な立場と差し止めと理由とするところを概観する。

第2 判決の内容
1 人格権
 人格権は憲法上の権利、人の生命を基礎とする。わが国の法制下でこれを超える価値を見いだすことはできない。

2 福島原発事故
 原子力委員会委員長は福島第1原発から250キロ圏内に居住する住民に避難を勧告する可能性を検討し、チェルノブイリ事故でも同様の規模に及んだ。
 ウクライナ、ベラルーシで今も避難が続く事実は、放射性物質のもたらす健康被害についての楽観的な見方、避難区域は最小限のもので足りるという見解の正当性に重大な疑問を投げかける。250キロは緊急時に想定された数字だが過大と判断できない。

3 本件原発に求められる安全性
(1)原子力発電所に求められる安全性
 原発の稼働は法的には電気を生み出す一手段である経済活動の自由に属し、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきだ。自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広範に奪われる事態を招く可能性があるのは原発事故以外に想定しにくい。具体的危険性が万が一でもあれば、差し止めが認められるのは当然である。
 原子力技術の危険性の本質、そのもたらす被害の大きさは福島原発事故により、十分に明らかになった。このような事態を招く具体的な危険性が万が一でもあるのかが判断の対象である。福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい。

(2)原子炉等規制法に基づく審査との関係
 4の考えは、人格権と条理によって導かれる。原子炉等規制法などの行政法規のあり方、内容によって左右されない。
 新規制基準の対象となっている事項についても、基準への適合性や規制委員会による基準適合性審査の適否という観点からではなく、3(1)の理にもとづいて裁判所の判断が及ぼされるべきである。

4 原子力発電所の特性
 原子力発電技術で発生するエネルギーは極めて膨大で、運転停止後も電気と水で原子炉の冷却を継続しなければならない。その間、何時間か電源が失われるだけで事故につながり、事故は時の経過に従って拡大する。これは原子力発電に内在する本質的な危険である。
 施設の損傷に結びつく地震が起きた場合、止める、冷やす、閉じ込めるという三つの要請がそろって初めて原発の安全性が保たれる。福島原発事故では冷やすことができず放射性物質が外部に放出された。
 本件原発には地震の際の冷やす機能、閉じ込める構造に次の欠陥がある。

5 冷却機能の維持
(1)ストレステストのクリフエッジを超える可能性を認めた。
 1260ガルを超える地震では冷却システムが崩壊し、メルトダウンに結びつくことは被告も認めている。
 ストレステストの基準とされた1260ガルを超える地震も起こりうると判断した。
 わが国の地震学会は大規模な地震の発生を一度も予知できていない。
 地震は地下深くで起こる現象であるから、その発生の機序の分析は仮説や推測に依拠せざるを得ない、地震は太古の昔から存在するが、正確な記録は近時のものに限られ、頼るべき過去のデーターはきわめて限られていることを指摘した。

(2)700ガルを超えて1260ガルに至らない地震について、過酷事故につながる危険がある。
① 被告は、700ガルを超えるが1260ガルに至らない地震への対応策があり、大事故に至らないと主張する。
 被告はイベントツリーを策定してその対策をとれば安全としているが、イベントツリーによる対策が有効であることは論証されていない。
 事態が深刻であるほど、混乱と焦燥の中で従業員に適切、迅速な措置を取ることは求めることができない。地震は従業員が少なくなる夜も昼と同じ確率で起き、人員の数や指揮命令系統の中心の所長がいるかいないかが大きな意味を持つことは明白だ。
 また対応策を取るには、どんな事態が起きているか把握することが前提だが、その把握は困難だ。福島原発事故でも地震がどんな損傷をもたらしたかの確定には至っていない。現場に立ち入ることができず、原因は確定できない可能性が高い。
 仮にいかなる事態が起きているか把握できたとしても、全交流電源喪失から炉心損傷開始までは5時間余りで、そこからメルトダウン開始まで2時間もないなど残された時間は限られている。
 地震で複数の設備が同時にあるいは相前後して使えなくなったり、故障したりすることも当然考えられ、防御設備が複数あることは安全性を大きく高めるものではない。
 原発に通ずる道路は限られ、施設外部からの支援も期待できない。

②(基準地震動の信頼性)
 従来と同様の手法によって策定された基準地震動では、これを超える地震動が発生する危険があるとし、とりわけ、4つの原発に5回にわたり想定した基準地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視した。
 このような誤りが重ねられた理由は学術的に解明されるべきだが、裁判所が立ち入る必要はない。
 これらの事例は「地震という自然の前における人間の能力の見解を示すもの」というほかない。
 基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは、根拠のない楽観的見通しである。

③(安全余裕について)
 被告は安全余裕があり基準地震動を超えても重要な設備の安全は確保できるとしたが、判決は、基準を超えれば設備の安全は確保できない、とした。過去に基準地震動を超えても耐えられた例があるとしても、今後基準を超えたときに施設が損傷しないことを根拠づけるものではない。

(3)700ガルを超えない地震について
 地震における外部電源の喪失や主給水の遮断が、700ガルを超えない基準地震動以下の地震動によって生じ得ることに争いがない。しかし、外部電源と主給水が同時に失われれば、限られた手段が効を奏さなければ大事故となる。
 補助給水には限界があり、①主蒸気逃し弁による熱放出、②充てん系によるホウ酸の添加、③余熱除去系による冷却のうち、一つでも失敗すれば、補助給水設備による蒸気発生器への給水ができないのと同様の事態に進展する。
 主給水系が安全上重要でないという被告の主張は理解に苦しむ。

6 閉じ込め機能(使用済み核燃料の危険性)
 使用済み核燃料は原子炉格納容器の外の建屋内にある使用済み核燃料プールと呼ばれる水槽内に置かれている。本数は千本を超えるが、プールから放射性物質が漏れた時、敷地外部に放出されることを防御する原子炉格納容器のような堅固な設備は存在しない。
 福島原発事故で、4号機のプールに納められた使用済み核燃料が危機的状態に陥り、この危険性ゆえ避難計画が検討された。原子力委員会委員長の被害想定で、最も重大な被害を及ぼすと想定されたのはプールからの放射能汚染だ。使用済み核燃料は外部からの不測の事態に対し、堅固に防御を固めて初めて万全の措置といえる。
 大飯原発では、全交流電源喪失から3日たたずしてプールの冠水状態を維持できなくなる危機的状況に陥る。そのようなものが、堅固な設備に閉じ込められないまま、むき出しに近い状態になっている。
 国民の安全が優先されるべきであるとの見識に立たず、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しで対応が成り立っている。

7 本件原発の現在の安全性
 人格権を放射性物質の危険から守るとの観点からみると、安全技術と設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立つ脆弱(ぜいじゃく)なものと認めざるを得ない。

8 原告らのその余の主張
 さまざまな違法理由や環境権に基づく主張、高レベル放射性廃棄物の問題などについては、判断の必要がない。
幾世代にもわたる後の人々に対する我々世代の責任という道義的にはこれ以上ない重い問題について裁判所に判断する資格が与えられているか、疑問である。

9 被告のその余の主張について
 被告は原発稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるような議論に加わり、議論の当否を判断すること自体、法的には許されない。原発停止で多額の貿易赤字が出るとしても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の損失だ。
 被告は、原発稼働がCO2(二酸化炭素)排出削減に資すると主張するが、福島原発事故はわが国始まって以来最大の環境汚染であり、原発の運転継続の根拠とすることは甚だしく筋違いだ。

第3 判示の波及効果
1 これらの理由のうち、主給水の遮断が基準地震動以下の地震動によって生じ得ることについては、加圧水型の原発すべてにあてはまるものである。
 それ以外の判示は、大飯原発3、4号機のみならず、全国の原発すべてにあてはまるものである。
したがって、この判決は、大飯原発3、4号機に限らず、原発が抱える本質的な危険性を認めた判決であると評価できる。

2 原子力規制委員会の適合性審査の下、川内原発や高浜原発の再稼働が強行されようとしているが、川内原発や高浜原発を含むすべての原発は、本判決が指摘する危険性を有しているため、再稼働することは認められない。
また、関西電力は、大飯原発や高浜原発の基準地震動を2割から3割程度引き上げて耐震工事を行うことを明らかにしているが、本判決は、現在行われている基準地震動の策定手法自体に根本的な疑問を提起しているのであり、このような場当たり的な対応によって、本判決が指摘する原発の危険性を否定することはできない。

第4 弁護団連絡会としての本判決の評価
 本判決は、福島原発事故という深刻な事故を真正面から見据えた司法判断である。
福島原発事故のような深刻な事故を二度と繰り返してはならないという原告、弁護団の一致した声が司法の場にも届いた。
我々は「司法は生きていた」と胸を張って言える。
勇気と確信をもってこの判決を言い渡した、福島地裁民事部の樋口英明裁判長以下の合議体に、心から敬意を表したい。
しかしながら、この判決を特殊な判決であると考えることは誤りである。むしろ、深刻な事故を二度と繰り返してはならないという原点から出発し、深刻な事故を引きおこす具体的な危険性が万が一でもあるのかについて、骨太の事実認識にもとづいて手堅い判断を示したものだと言える。
これまで原発を容認してきたも同然であった司法は、市民感覚に沿って、福島第一原発事故とその被害の深刻な現実を目の当たりにして、「地震という自然の前における人間の能力の限界」を率直に認める画期的な判断を下したものということができるだろう。

第5 脱原発弁護団全国連絡会からのアピール
1 脱原発弁護団全国連絡会は、この判決を支持し、関西電力に判決に従うことを求め、もし関西電力が控訴するならば、全力で控訴審を当該弁護団と共に闘い、この判決を守り抜くことを宣言する。

2 脱原発弁護団全国連絡会は、規制委員会に対して、福島第一原発事故という現実を見つめ直し、判決の具体的な指摘を正面から受け止め、再稼働のための基準適合性審査を中止し、耐震設計、基準地震動、耐震重要度分類、共通原因故障などの諸点について、根本的な再検討を行うよう求める。

3 脱原発弁護団全国連絡会は、政府・国に対して、判決の指摘を受け、地震国日本における事故リスクを避けるため、再稼働を断念し、原発政策を根本から見直し、脱原発のための政策に舵を切るように求める。

4 脱原発弁護団全国連絡会は、全国の電力会社、そして原発立地及び周辺の地方自治体に対して、この判決を機に原発推進・依存から早期に脱却し、再生可能エネルギーを中心とするエネルギー政策への転換と環境重視の地域経済を目指すことを求める。