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◆11/28の第13回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1289 2016年12月15日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

原発事故の住民避難は困難

大飯原発差止訴訟 第13回口頭弁論で陳述

  • 京都府などの住民3,086人が関西電力と国を相手に大飯原子力発電所1~4号機の運転差し止めと慰謝料を求めている訴訟の第13回口頭弁論が,11月28日,京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。今回も法廷は弁護団,原告,被告代理人,傍聴席(86席)がすべて埋め尽されるなかで開廷しました。
  • 原告第26・27・28の各準備書面と書証を提出。弁護団と原告が要旨を陳述(下記はその一部)をしました。
  • 大河原壽貴弁護士「高浜原発広域避難訓練の問題点(第27準備書面)」―京都,福井,滋賀の三府県で8月27日,自治体職員,自衛隊,電力会社社員2千人,避難住民7千人,合計9千人が参加する,高浜原発の事故を想定した住民避難訓練が実施された。
  • 午前6時に若狭湾沖で地震が発生,午前9時に緊急事態宣言発令となり,5キロ圏,30キロ圏内の住民に屋内避難指示が出される,このまま24時間が経過,翌日午前10時,毎時20ミリシーベルトを超えた地域住民の一時避難指示が出されるという想定になっている。しかし,この初動の24時間が極めて重要。問題なのは,屋内避難の対象とされた住民の8割の5千800人に「自宅のドアを閉め,換気扇を止めて外気を遮断し,屋内に避難」との通知を出し,消防団員が地域の見回りに回ったとされ,さらに24時間経過後も同様の指示と見回りだけで,住民が実際に訓練に参加したのかどうかわからない。
  • 二つ目の問題は,避難住民と車両のスクリーニングと除染の訓練。あやべ球場と丹波自然運動公園で実施されたが,体制や除染機材がまちまちだった。あやべでは,千代田テクノルという会社の除染機材,除染用シャワーテントだが,丹波運動公園では自衛隊の仕切りも目隠しもない除染シャワーで車両の除染は汚染水の垂れ流しだった。除染にあたるあやべの職員は着用を想定している防護服ではないし,丹波ではほとんどが防護着用だった。また,避難に当たる職員の労働衛生安全面での放射線被ばくへの装備や対策が取られているのか,大変な問題だ。これらが自治体まかせで,国は責任をもって対応していない。船舶の避難も8キロ圏の舞鶴市成生(なりう)地区から実施を予定していたが波が高くてできず,実際このような波は1年の半分はあり,海上保安庁の船があたるとなっているが,漁港には入れない,などの問題があり,広域避難訓練がいかに困難か明らかになった。福島の原発事故で安全神話は崩壊した。住民を安全に避難させられなければ原発の再稼働は許されない。原発は廃炉しかない。」
  • 原告・池田豊さん…福島第一原発の事故直後の大熊町や富岡町の初動対応からも住民避難が困難なことは明白。情報が届かず,バスで移動するにも,何台のバスに何人の職員を添乗させ避難先で対応するのか,全住民の避難の確認はだれがどのようにするのか,などの判断が求められ,100人足らずで1万人以上の住民を安全に避難させるのは非常に困難。三府県の広域避難訓練は,福島原発の初動の訓練を省略したもので,実効性が疑わしい。
  • 原告・吉田真理子さん…宮津市の避難計画は自家用車またはバス等となっているが,冬は雪も積もり,高齢者が多く,バスに乗るまでが困難,道路も寸断されたり渋滞となり,避難は困難を極める。自治会の役員をしているので,被ばくしながら近所の人の安否を見て回らなければならないし高齢の家族を連れて逃げる場所などない。宮津市の人口は,2万人弱だから,60人乗りのバスに乗っても,のべ300台以上が必要。これだけのバスを緊急時に用意することなどできない。
  • 次回第14回口頭弁論…2月13日(月)午後2時から,同法廷で。

◆9/14の第12回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1283 2016年10月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

原発は美山の自然・くらし奪う

大飯原発差止訴訟第12回口頭弁論で陳述

  • 京都府などの住民3,086人が関西電力と国を相手に大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料を求めている訴訟の第12回口頭弁論が、9月14日、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。法廷は柵内の弁護団に原告36人、満席の傍聴者(86人、外れた人は弁護士会館での模擬法廷を30人が傍聴)、関電や国の代理人などぎっしり席を埋めつくしました。

谷文彰,渡辺輝人弁護士が準備書面の要旨陳述

  • 最初に原告代理人の谷文彰弁護士が、第23準備書面の要旨陳述に立ち、熊本地震のようなマグニチュード7クラスの地震が連続的に発生した際の原発事故の危険性を指摘しました。原発は一度目で倒壊を免れた建物が二度、三度目に壊滅する熊本地震の事例を踏まえた設計になっていないこと、事前に観測された活断層よりもはるかに長いところで地震が発生していて、大飯原発の場合もこの危険があること(「想定外」の危険が常に存在する)、地震学者の島崎邦彦氏(元原子力規制委員会委員長代理)の指摘「活断層の長さから地震モーメントを予測すれば過小評価となる可能性」は実際に起きた地震の数値から証明されて、予測は3分の1から4分の1程度過小評価していた、これらの危険がある大飯原発の稼働は停止されるべき、と述べました。
  • つづいて渡辺輝人弁護士が第24準備書面の要旨を陳述。「被告関西電力らは、『想定外』を繰り返すばかりで、原告の新基準での原発の危険性の指摘に反論していない、外国でいくつもの危険を想定した基準をつくっている。また被告は避難計画に対しても一切言及していないが、これは許されない」などと主張しました。

美山町の栢下(かやした)壽(ひさし)さんが意見陳述

  • 最後に陳述した,原告の栢下壽さんは,(要旨)次のように述べ,傍聴席の拍手を誘いました。以下要旨。
  • 私は、南丹市美山町に76年住んでいる。町は大飯原発から20キロから30キロ圏内にあり、原発事故が起こった際の避難計画を市などが作成しているが、高齢世帯が圧倒的で、4000人もの住民をバスで緊急避難することなどとうてい不可能。冬の積雪、夜間などの危険、しかも緊急時の避難者の車の渋滞もある。自然環境に恵まれ、町は「京丹波高原国定公園」であり、町全体が『森の京都』の景観を生かした町づくりに取り組んでいる。国が重要建造物群に指定した『かやぶきの里』をはじめ観光名所には年間78万人が訪れる。この観光客をどうするのか避難計画はふれていない。SPEEDI(大気中放射性物質の拡散予測システム)の活用についても、ネットワークシステムを活用するとあるが、その計測データを住民に公表する保障はない。放射性物質のセシウムから身を守る安定用ヨウ素材にしても、全住民に届けるのは不可能。市の担当者に保管場所を尋ねたら把握していなかった。美山町は貴重な自然の宝庫、絶滅寸前の「ベニバナヤマシャクヤク」の増殖、保護にも取り組んでいる。京都大学芦生研究林もあり、京都府指定気象野生生物25種の半数近くが生息する。西日本でも有数の自然環境に恵まれた美山町を誇りに思っている。原発事故が起これば世界に誇るべき美山町の自然が失われてしまう。裁判所には、自社の利益のための再稼働ばかりを追求している電力会社を強く批判し、原発の運転を差し止めていただくようお願いしたい。

次回

  • 次回第13回口頭弁論は、11月28日(月)午後2時から(抽選のリストバンド交付は1時20分から)、同地裁101号法廷で。

報告集会で今後の進行,原告の拡大などを確認

  • 裁判終了後京都弁護士会館で開かれた報告集会では、竹本修三原告団長のあいさつにつづいて、この間の原告拡大の活動などについて吉田明生原告団事務局長が報告しました。今後さらに原告を拡大し、今年末には700人(現在123人)をふやしたい、原告1人がもう1人のつもりで拡大の協力をと呼びかけました。
  • 進行協議を終えてから駆けつけた弁護団も交え、裁判の内容や今後の進行について報告されました。裁判への質疑応答や、感想も語られ、出口治男弁護団長のあいさつで終了しました。

裁判所周辺を「脱原発」パレード

  • 裁判開廷前の昼休み、弁護団や原告団など51人は裁判周辺のパレードをしました。
  • 横断幕を掲げた、出口弁護団長、竹本原告団長を先頭に、ノボリにさらにサイドにも原発稼働反対の幕、ハンドマイクで市民に呼びかけます。「大飯は危険」「子どもを守ろう」「自然を守ろう」の声を響かせ、裁判所前、柳馬場通と進み、夷川通の家具屋街にもアピール、古い街並みの寺町通りでも出会う外国人観光客らにも訴えました。最後は丸太町通りで解散しました。

◆3/15の第10回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1268 2016年4月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

琵琶湖が放射能汚染されたら

―大飯原発差止訴訟第10回口頭弁論で原告陳述―

  • 京都府などの住民3,068人が関西電力と国を相手に大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料を求めている訴訟の第10回口頭弁論が、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。法廷は柵内の弁護団、原告50人余り、満席の傍聴者(80人、外れた人は弁護士会館での模擬法廷傍聴)、関電や国の代理人など160人ほどがぎっしり席を埋めつくしました。

原告の林森一さん意見陳述

  • 最初に原告の林(はやし)森一(もりかず)さんが意見陳述に立ち、福井県若狭湾岸に大飯原発など13基の原発が存在し、事故で琵琶湖が放射能汚染されたら近畿1,450万人が水を飲めないことになるなど取り返しのつかない被害が発生すると、自らの暮らしの基盤から大飯原発の稼働停止を訴えました(以下陳述要旨)。
  • 生家が左京区久多にあり、北区の自宅から週1,2回程度通うが、こちらで老人クラブ役員や町会長などを務め、重要な生活の一部。大飯原発30キロ圏に入る。周辺は芦生原生林や八丁平湿原など貴重な自然遺産にもめぐまれ「京都丹波高原国定公園」と新たな指定が国に答申された。この区域も原発から30キロ、50キロ圏内になる。左京区役所や警察、消防署、地域団体あげての避難訓練が実施されたが不安を増大するばかりだ。車での避難は、車、運転手、道路・交通状況、地震、積雪などを想定すると安全避難は不可能。12歳のとき死者3,769人、負傷者2万2,203人、全かい家屋3,684戸の被害を出す、マグニチュード7.1の福井大地震があった。大飯原発は熊川断層の上にあり、このような地震の危険が常にある。近畿の水がめの琵琶湖が放射能で汚染されれば1,450万人の水源が断たれる。京都市は舞鶴市からの避難の受け入れ計画をいうが、私たち京都市民の避難先、避難施設、安定ヨウ素剤の用意、食糧・水の確保など考えれば胸が苦しくなるばかりだ。東京電力は津波による全電源停止を知らなかったと責任逃れをしている。関西電力も高浜原発の水漏れ、自動停止といった事態の原因を究明し住民に情報公開をしていない。核兵器の被害を受けた上に福島原発事故、日本国民は核兵器も原発もなくしてほしいと願っている。使用済み核燃料も対策もないまま、再稼働など絶対あってはならない。原発差し止めを訴える。

福井地裁の再稼働容認 「決定」 を批判-森田弁護士

  • つづいて原告第18準備書面の要旨を森田基彦弁護士が陳述しました(以下論旨)。
  • 昨年4月14日、福井地裁が出した高浜原発3,4号機の運転差し止め仮処分決定に関西電力が異議を申し立てた審理(異議審)で、福井地裁は12月24日、仮処分決定を取り消し、再稼働を容認する決定を出した。これは、司法審査の枠組みを従来の行政追随型に後退させただけでなく、行政審査をより劣化させる規範。高浜3号機が今年1月29日、4号機が2月26日にそれそれ再稼働。4号機の汚染水漏れ、6万ベクレルの放射能漏れも発生、再稼働直後2月29日には緊急停止のトラブル。地質・地質構造についての地盤の議論も継続中。この異議審決定は、立証責任を資料や知見のそなわっている関電側に負わせ、原子力規制委員会に不合理な点がないことを示すよう求めた判断を、原告住民に立証責任を転換させるもの、規制委員会の安全性の判断に不合理があるか否かで判断すべきとしてきた司法審査の対象についても、絶対的安全性を要求するのではなく、危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理されているかどうか、とゆるめている。福島原発事故の原因が解明されないままにつくられた新規制基準を過度に信頼して社会通念とする誤りを犯している。そもそも規制委員会の判断を司法審査の対象とするのが誤り。判断基準は、①人格権侵害の具体的危険、②福島第一原発事故の行政審査の限界は明白で行政審査とは異なるのが新審査であるべき。③「想定外」の「過酷事故」が起こり得ることが明白な今日、深層防護のすべての段階で「危険がないこと」を被告(関電)が主張・立証しなければならない。

次回は

  • 次回、第11回口頭弁論は、5月16日(月)午後2時から、101号法廷で。

◆1/13の第9回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

  • 救援新聞 京都版No.1268 2016年4月5日
    橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)

琵琶大飯原発差し止め訴訟で393人が第4次提訴
3068人の大原告団のたたかいへ
―第9回口頭弁論開く―

  • 京都府などの住民が関西電力と国を相手に大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料を求めている訴訟は、第9回口頭弁論の開かれる1月13日、新たに393人の原告が提訴し、合計3068人の大原告団が弁護団とともにたたかう裁判として、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。法廷は柵内に弁護団、原告50人余り、満席の傍聴者(80人、外れた人は弁護士会館での模擬法廷に参加)、関電や国の代理人など160人ほどが席を埋めての進行となりました。
  • 弁論では、原告代理人の岩佐英夫弁護士が第16準備書面の要旨を陳述。関西電力が標準的・平均的な地震の震動を前提に策定した「基準値振動」の不合理性を、「貯蓄の平均額が暮らしの実相を少しも示していないのと同じ」とパワーポイントの図表を示しながら批判しました。「日本の1世帯あたりの貯蓄平均は1739万円だが、3割以上いるといわれる貯蓄ゼロの世帯が除かれている。平均値からは貯蓄高の実際はみえてこない。地震についても同様で、関電の主張には合理性がない。地震にはばらつきがあり、地下の深部での動きは推測に頼らざるを得ない。将来予測は困難。バラつきによる誤差は2倍から5倍以上になる。従来の地震動評価は過小評価であることが実際に起こった地震の事例をとりあげ専門家からも指摘されている。関電の主張は万が一を大きく上回る危険を全く考慮しないで原発を稼働させるものだ」と陳述しました。
  • つづいて、舞鶴市在住の原告・阪本みさ子さんが意見陳述。要旨、以下のように述べました。「私は、1950年生まれの65歳。大飯原発から20キロメートル弱、高浜原発から約9キロメートルで夫と二人で暮らす。訴訟に踏み切ったのは、大切な舞鶴の人たちが命をなくしたり行き場を失ったりするようなことがあってはならないと考えたから。私は小学校の教員をしてきた。そのうちの20年ほどは1、2年生の担任で、子どもやその家族に支えられて務めをはたすことができた。助け合って学び成長する、いままでできなかったことができるようになった子どもたちのいくつもの笑顔が浮かんでくる。それを支え続けた家族の方々、そんな人たちの行き場がなくなるようなことはあってはならない。そのためにも制御のできない危険な原発をやめていただきたい。原発以外にいくらでも電気を作る方法があるのだから、ぜひ止めてもらいたい。原発事故を想定した舞鶴市の避難計画も、確保した事業者の車で20往復もしないと住民を移動させられない。多くの人がその間に放射能汚染にさらされる恐れがある、しかも観光客は自力で避難をしてもらうなど、実際不可能な、ずさんで、安全性のないもの。私たち夫婦は、70坪の畑ももっていて、そこで栽培したイチゴや玉ねぎなどの農作物を近所の人に配って喜ばれている。コミュニケーションが生まれきずなが強まり、夫の生きがいでもある。原発事故が起こればこんな地域の人間関係がすべて失われてしまう。夫は事故があってもここに残るといっている。しかし、避難命令が出ればそれも選択できなくなる。舞鶴の人たちは、事故があったらもうだめやわ、といっている。起きたらもうどうしようもない。こんなことがゆるされるのでしょうか」
    終わると傍聴席などから拍手が起こりました。
  • 次回、第10回口頭弁論は、3月15日(火)午後2時から、101号法廷で。

◆5/28の第7回口頭弁論の報告
 ~救援新聞より

関西電力と国を相手に、福井県の大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料の請求を京都府などの住民が求めている裁判は、5月28日京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で第7回口頭弁論が開かれました。法廷は柵内に弁護団15人、原告36人、満席の傍聴者(80人、外れた28人は弁護士会館での模擬法廷に参加)、関電や国の代理人など170人余りが席を埋めての進行となりました。弁論では、4人の原告代理人弁護士と原告が準備書面の要旨や意見陳述に立ちました。

大飯原発の根本的危険性―毛利崇弁護士

■ 最初に原告代理人の毛利崇弁護士が第10準備書面の要旨を陳述しました。毛利弁護士は、大飯原子力発電所は脆弱な基盤の上に、構造上も根本的危険をかかえているもので、いつ大事故が起きてもおかしくないことを指摘。「事故を防ぐには『止める、冷やす、閉じ込める』機能が必要だが、原発の仕組みそのものに事故で機能を失う欠陥がある。しかも、使用済み核燃料はたまる一方で危険度が増し、保管、処分方法も確立されていない。実際、過去に大飯原発では「放射能漏れ」「冷却水漏れ」などの多くの事故が発生している(具体的事実をあげて指摘)。大飯原発の老朽化も危険だ。これはそもそも対策を講じることができない危険である。関電の計画している対策では過酷事故は防げない」と述べました。

新基準に合致しない大飯原発―森田基彦弁護士

■ 続いて森田基彦弁護士が立ち、第9準備書面の要旨を次のように解明しました。「大飯原発は、水素爆発を防止すべき新規制基準にも合致していない。現実に爆発の危険性が存在する(福島原発の爆発や建屋の損傷状況を映像で示す)。過酷事故で核燃料が高温になり炉心溶融が起こる。それにより燃料被覆管の金属・ジリコニウムと水が反応して水素が発生。溶融した炉心が格納容器のコンクリート底に達するとコンクリート床が化学反応(コンクリートの相互作用)、漏れ出た水と溶融炉心が反応して水素が発生する。この水素濃度を13パーセント以下に抑えるのが新基準で、大飯原発はまだ審査基準がでていないものの、川内原発や高浜原発の反応量を仮定しても水素濃度は13.7パーセントで基準に合致しない。大飯原発3、4号機は重大事故時に水素爆発の危険が存在する。

被害は暮らしや地域すべての崩壊―岩橋多恵弁護士

■ さらに、岩橋多恵弁護士は、第12準備書面の原発事故の避難状況と暮らしやコミュニティの破壊について陳述しました。―福島の12万人の人が今なお避難生活をしている。政府の委員会資料で48兆円を超える損害費用を指摘しているが、これも原発事故の全容が解明されていないいま、損害の一部にすぎない。被害の特性は、長期間の避難により従来の暮らしが根底から覆され、家庭も地域コミュニティも崩壊するところにある。豊かな自然のもとでの生活は山の幸海の幸を家族、地域で分け合い、交流し、歴史と伝統文化を築いてきたが、放射能汚染で一変した。三食から飲料水、外出時の被ばく、土や草木などふれるものすべてから、放射線への懸念と不安を考慮しなければならず、現在、および将来の健康への影響にも悩む。農林・漁業や山菜採りも家庭菜園も奪われ、喪失と絶望感に打ちのめされ、自死をする人も出ている。また、避難者は、家族や友人、地域と引き裂かれるなどの問題に苦悩している。こうした生業と地域コミュニティすべてが崩壊している。

収束ほど遠い放射能汚染―渡辺輝人弁護士

■ 渡辺輝人弁護士は、放射線物質の環境汚染について、次のように陳述しました。保安院の試算では、福島原発の事故による放射性物質の放出量が、キセノン133で1100京ベクレル、ヨウ素131で16京ベクレル、セシウム134で1.8京ベクレル、セシウム137で1.5京ベクレル、で想像を超える。キセノンの放出はチェルノブイリ事故の1.69倍だ。この汚染が福島だけでなく近隣の県でのキノコ類、山菜、肉などの出荷制限となり、また大気中からの海洋への投下、原発施設からの漏えいが今も続いている。原発事故による被害や避難のストレスなどで体調が悪化して死亡する、原発関連死は、2014年9月11日時点で少なくとも1,118人。浪江町、富岡町、双葉町、大熊町などで1か月20件以上の関連死の申請がある。住宅地などでは除染が進められているが、屋根の瓦や壁には細かい穴があり、多くを占める放射性セシウムはそこにこびりついたまま取り除かれない。住宅除染の進捗状況は、15年1月の時点で、全体計画の47.5パーセント。道路除染は22.9パーセント。事故の収束自体も収束には程遠い。廃炉の計画も、期間に根拠がなく完了の見通しはない。「核のゴミ」は、12年9月末時点で、全国の原子力発電所及び六ヶ所村の再処理工場に保管されている使用済み核燃料、1万7000トン超。大飯原発では2020トンの保管スぺースがあるが、その71パーセントに使用済み核燃料が入っている。最終処分場のめども立たず、10万年単位での安全な保管など不可能。地中深く埋めても容器の破損や地震による変動で安全性の保障はない。原発の稼働をさせてはならない。

福島から避難して―原告・菅野千景(かんの・ちかげ)さん

■ 2011年8月、放射能を避けるため、仕事で離れられない夫を残し、2人の娘を連れて京都に避難してきた。「誰が悪いんだべね」と夫は泣き、子たちも京都へ向かうバスでしゃくりあげていた。避難してから子どもたちはおびえ、慣れない関西弁の授業や違う教科書で追いつくのに必死でがんばった。夫は、月に1・2度京都にやってくるが、半年ほどしてくるのがつらいという。帰るときのつらさは、家族みんなの思いだった。避難が正しかったのか悩む。でも、福島の自宅の放射線量は室内で毎時1.2マイクロシーベルト、庭は6マイクロ
シーベルト以上のところもあり、正しい選択だったと確信している。夫がいるときは家族がにこにこ元気でいるが、帰ってしまうと機嫌が悪くなり、ご飯を食べなくなったり、子どもたちが心のバランスを崩す。原発事故は、自由・夢・未来へつながること・家族・友人・動物・豊かな自然・食物・仕事・愛し合うこと・命・すべてを破壊していくものだと知ってしまいました。それは一瞬に起きて、長い長い時間をかけて壊し続けてゆく。原発はずっと動いていない。再稼働を希望する前に、これらのことに取り組むべきだ。始めることに必死になるなら、後始末のことも必死にならなければならない。危険を冒してお金を得るより、大切なこと、よいことを選ぶ強さや勇気をもって、子ども達のお手本となれるように、恥ずかしくない生き方を選びたい(拍手あり)。

次回弁論は10月20日

■ 次回第8回口頭弁論は、10月20日(火)午後2時から、101号法廷で開かれます。期日がせまりましたら改めて案内をします。

市民アピールも

■ なお、この日の12時15分からは、弁護団、原告団などが54人ほどで弁護士会前から市民アピールのパレードをしました。関西電力の料金値上げに抗議、原発の早期廃炉、大飯原発の危険性などを訴えて裁判所の周辺を行進しました。

◆第6回口頭弁論
 新基準は再稼働のための改定
 大飯原発差止裁判で原告側が批判

関西電力と国を相手に福井県の大飯原子力発電所1から4号機の運転差し止めと慰謝料の請求を京都府などの住民が求めている裁判は、1月29日京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で第6回口頭弁論が開かれました。傍聴席、原告席、合わせて130人を超える人々が参加し、法廷でのやり取りを見守りました。この日は、最初に原告代理人の森田基彦弁護士が、原告第7準備書面で主張した要旨を陳述。森田弁護士は、「福島第一原発事故後作成された新規制基準は、原発立地審査指針を排除していて、原子炉の格納容器の加熱、破損、水素爆発などが起これば、住民をむき出しの危険にさらすことになる。福島の原発事故のような放射能の放出を仮定すると立地条件が合わなくなるから(田中俊一原子力委員長)、従来より甘いルールに改定した。これは再稼働を可能にするためのルール作りだ)と批判しました。

つづいて、舞鶴市在住の原告、三澤正之さんが意見陳述。「自身は8人家族で、高浜原発から15キロ。舞鶴の住民は大飯原発からもほとんどが30キロ圏内。公表された舞鶴市の避難計画は、避難方向も、受け入れ先も明示がない。移動手段もバス利用1,350台(うち600台がピストン輸送との計画)とされているが、道路が車であふれるなどの大混乱になることも想定され、浪江町では放射能汚染地域へ運転手が入らなかった。とても避難計画が機能するとは思えない。危険な原発をなくすことが一番だ」と述べました。
次回口頭弁論は5月28日(木)午後2時から、同法廷で。

■2693人の大原告団に
この日はまた、京都や滋賀など19都道府県の住民730人が第三次の提訴をしました。これで原告団は、同種裁判では全国で2番目の2,693人の大原告団となりました。

■活発に意見交換―報告集会
裁判終了後の報告集会では、弁護団による裁判の解説や参加者との質疑応答、今後の運動などについて活発な意見交換がされました。原告団事務局からは、支援ネットワークづくりも進めて多くの人との連帯した運動をする方針も示されました。

■「原発いらない」「大飯は危険」とデモ
裁判開始前の12時15分からは、デモによる市民アピールも行いました。出口治男弁護団長、竹本修三原告団長を先頭に約60人が、横断幕やのぼり、プレートなどかかげ、「原発いらない」「大飯は危険」「子ども守ろう」「いのちをろう」などの唱和を響かせ、裁判所の周辺や夷川通り、寺町通りなどを行進しました。

◆原発の再稼働中止へ英断を!
 大飯原発差止訴訟第5回口頭弁論の報告

 京都府の住民など1063人が国と関西電力を相手に大飯原発の差し止めと慰謝料を求めた訴訟の第5回口頭弁論が、9月30日、京都地裁(第6民事部合議A係・堀内照美裁判長)101号法廷で開かれました。満席(支援者約80人余)の傍聴者が見守るなか、原告代理人弁護士4人が新規制基準の問題点について要旨を陳述、原告2人が福島第一原発の被害実態や地域・都市計画に原発事故が欠落している問題などを訴えました。要旨は以下の通りです。

 森田基彦弁護士「福島第一原発の事故は地震による外部電源の喪失、津波による全交流電源の喪失によって冷却が不能となり炉心損傷にいたった。新規制基準はこの教訓を生かした指針になっていない。地震で土砂災害をこうむった場合など再び同じような事故の起こる危険があるのに対応できていない。立地審査も新基準から削除されている。避難計画の策定も再稼働の条件となっていないなど、これらの重大な不備が残されたまま再稼働審査がなされている。人格権に基づいて原発再稼働を差し止めるべきだ」

 渡辺輝人弁護士「大飯原発の過酷事故が起こった場合、原子力規制委員会の予測でも放射性物質の拡散が南方32.2キロメートル地点の南丹市まで[7日間で100ミリシーベルト]という避難が必要なレベルに達する。近畿の水がめの琵琶湖も汚染され飲用制限に達する。近畿の水道水もすべて原発から45~100キロ圏にあり長期にわたって飲用できなくなる可能性は十分ある。それでも『ただちに健康に影響はない』などといわれ汚染水を飲む恐れもある」

 三上侑貴弁護士「大飯原発の事故で放射性物質が放出された場合、周辺住民の生命、身体に被ばくの危険が及ぶが、これに対する環境整備はできていない。原子力規制庁は、半径30キロ圏で防災計画を推進しているが、風向きの影響が考慮されていない。放射性物質は同心円状には拡散しないから、危険防止ははなはだ不十分。オフサイトセンター(緊急事態応急対策等拠点施設)は、事故発生時、国や自治体と連携して対策を講じていく拠点。住民に避難指示と広報をする。ところが、その立地場所は、大飯原発から約7キロメートル、おおい町の海岸沿いで海抜2メートル、海の護岸から100メートル足らずで、津波襲来時の電源喪失による機能停止が考えられる」

 畠中孝司弁護士「原発事故で住民の生命・身体に危険が及ぶ地域の避難計画に多くの問題がある。おおい町、高浜町、舞鶴市、宮津市、綾部市に限ってみても、関電からの迅速的確な情報が得られない可能性があり、避難手段を自家用車とする計画では道路、橋の破壊による遮断の可能性、たくさんの車が限られた道路に集中して渋滞、しかも原発に近い住民ほど渋滞の後方で被ばくの危険にさらされる。バスでの避難計画でも住民を輸送するほどのバスの台数は追いつかない。渋滞によるガソリン切れ、放置、避難先の駐車場不足。要援助者の移動による命の危険(福島でも11年3月末までに60人が死亡)。全住民が被ばくなしに安全迅速に避難することなどとても不可能である」

 尾崎彰俊弁護士「おおい町住民らが求めた稼働差し止め訴訟で福井地裁は5月21日、人格権を最優位の権利とする判決を出した。この判断の対象は、生命を守り生活を維持する利益が極めて広範に奪われる事態を招く具体的危険性が万が一にもあるかである。この指摘は原告が訴状において主張してきたところである。関電は、原発停止の場合の経済的損失などを主張するが、福井地裁判決は、極めて多数の人の生存そのものにかかわる権利と電気代の問題などとを並べて論じることはできない、とし、『豊かな国土とそこに国民が根をおろして生活していることが国富である』と明快に判断を示した。京都地裁は大飯原発の具体的危険性を認定して課せられた重大な責務をはたすべきだ」

 原告:萩原ゆきみさん「原発事故前、郡山市で夫、9歳、3歳の子どもと4人で暮らしていた。3月15日、子どもと3人で大阪に避難、その2年後に夫とともに京都で暮らす。3月12日原発の爆発でライフライン切断、情報も入らず、食物、飲み物、ガソリン確保に並び続けた。物資が届かない、原発が危ないから避難した方がいいとの親戚からのすすめもあり、放射能にやられてしまう恐怖におびえた。夫を残し、3人着の身着のまま、空港に行き、キャンセル待ちで夜を明かし、翌日の便で大阪にやってきた。やっと安心して深呼吸した。いまでも福島を思い出し、胸が苦しくなる。望郷の念はつのるばかり。原発事故の9年前、夢のマイホームを建てた。両家の両親との同居を考え建材を厳選してつくった。手放すのは身を切られるようにつらかった。夫は残って放射能に汚染されつづけた。我が家の庭の土はチェルノブイリでの『移動権利ゾーン』、空間線量では『移動義務ゾーン』の汚染度だった。2012年夏休みに3人が自宅へ帰った。掃除をしたりしたが、子どもも私も鼻血を出した。京都に帰ったらやんだ。13年に夫が避難してきた直後、また子どもたちが鼻血を出し咳をするようになった。夫の荷物や車が汚染されていたからだ。掃除(除染)し荷の処分をすると線量が以前より低くなり、鼻血、咳もとまった。しかし、被ばくの今後の影響を思うと健康不安は底知れぬ恐怖。このことから、大飯原発の事故が起こった場合のことを考えると、事故に関する真実の情報が伝わるとは限らないし、策定される避難計画も実態に沿わない。避難区域の範囲も狭すぎる。福井地裁判決は、半径250キロ地域にとりかえしのつかない被害の出る可能性を指摘している。私は、毎週金曜日の関電前の行動や集会などでも訴え続けている。見捨てられてよい命があるはずがないと心に強く思ったから(陳述後に傍聴席から拍手―裁判長がやめるよう言及)」

 原告:広原盛明さん(京都府立大元学長)「私は、地域計画、都市計画の研究者。専門分野から、原子力規制委員会の原発新基準の問題点を以下述べる。史上最大の危険施設である原発に対しては史上最大の立地規制が求められる。にもかかわらず、新基準では万一の事故で住民の被ばくが重大なレベルに達しないような地域計画や都市計画がはかられていない。福島の事故では、当時の原子力規制委員会が250キロ圏の住民の避難を検討した。しかし、規制委員会が基準合致と認めれば、原発立地自治体の承認だけで稼働ができる。30キロ圏内の自治体の承認はいらない。これでは国土全体にわたって影響をおよぼす原子力災害から国民を守れない。とりわけ問題なのは、国土開発計画に原発の立地による災害の問題がまったく欠落していることだ。国土交通省の【国土グランドデザイン2050】では、原発災害・原発問題に関する記述が一切ない。3・11以後、国土計画を考えるにあたっては原発問題をどう扱うかが最大のテーマのはず。このように政府が解決できていない、原発問題をそのままに原発を稼働することは許されない。司法の英断で再稼働を中止させていただきたい」

 次回第6回口頭弁論は1月29日(木)午後2時から101号法廷で(1時からは傍聴券の抽選の予定)。

140人が参加―デモ・傍聴・模擬裁判・報告集会

 この裁判に先立ち原告・弁護団などは12時15分から61人で裁判所周辺をパレード。市民に「脱原発」をアピールしました。また、傍聴券にはずれた57人には、京都弁護士会館で「模擬法廷」を同時進行させ、弁論内容を再現させました。

◆原発報告

5/21の口頭弁論~福井地裁での画期的判決~6/7原告団総会
自由法曹団京都支部ニュース 2014年7月 第327号
  尾崎彰俊(大飯原発差止訴訟、弁護団)

1 大飯原発差し止め訴訟弁論期日

 5月21日、京都地方裁判所において、大飯原発差し止め訴訟第4回口頭弁論期日が開かれました。当日は、午後12時過ぎから裁判所を出発してデモ行進を行いました。デモには約50人が参加し、「原発やめろ」のシュプレヒコールを行いました。

 午後2時から第4回口頭弁論が101号法廷で開かれました。原告団や支援者の方で120人の傍聴席が埋まりました。今回の期日から、これまで裁判を行ってきた3人の裁判官が全員交代しました。3人の裁判官にこれまで原告側が行ってきた弁論内容を伝えるために、原告側が第1回から第3回までの口頭弁論期日に行った弁論のまとめを行うとともに竹本修三原告団長と原告の福島さんが意見陳述を行いました。竹本団長は、地震国日本では、どの原発も福島第一原発事故と同じ事故が起きる危険性を孕んでいると力強く述べられました。福島さんは、福島第一原発事故からの避難者として、原発事故の被害について述べた後、司法に真剣に原発事故と向き合うよう求めました。原告代理人の弁論では、安全神話の崩壊、放射線の人体への影響、日本の安全対策の遅れ、新規性基準の問題点について、これまでの期日で原告が主張してきたポイントを再度主張し大飯原発の危険性を訴えました。

 第4回口頭弁論が行われた5月21日は、福井地裁で行われている大飯原発差し止め訴訟の判決期日でもありました。京都地裁での口頭弁論が終わり、弁護団と裁判を傍聴した原告団・支援者の方が報告集会のため、京都弁護士会に移動した15時過ぎに、福井地裁での差し止め訴訟の原告勝利判決の速報が流れました。この速報を聞き、報告集会のために会場に集まった原告団・弁護団から大きな歓声と拍手がありました。複数人の新聞記者も会場に来ており、出口弁護団長は自ら裁判官を務めてきた経験からもこういう住民勝訴の判決は大変難しいと思っていたが、司法が住民の命と暮らしに向き合い、憲法が保障した人権を生かそうとの判断に立ったもの、私たちも未来をみすえて原発のない社会へ行政の政策転換をもとめてこの裁判でもたたかう、と述べました。次回、裁判期日は9月30日になります。次回も多くの方の傍聴をお願いします。

2 福井地裁での画期的判決

 福井地裁の判決文の特徴は、生存を基礎とする人格権が公法、司法を問わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされていると指摘し、人格権の価値を最高のもとに認めている点です。さらに判決は、人格権は憲法上の権利であり(13条、25条)、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできないと述べています。

 私は判決のこの部分を読んだとき思わず「かっこいい」と言ってしまいました。
さらに、判決文は、本件原発に関わる安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ないと述べています。これまで、国と電力会社が宣伝し続けてきた安全神話が崩壊したことを裁判所が認めました。他にもすばらしいところが数え切れないほどある判決ですので、まだ読まれていない方は、是非とも判決原文を読んでいただきたいと思います。

3 原告団総会

 6月7日午後1時30分から京都駅前のキャンパスプラザ京都で第2回原告団総会が行われ約100人の方が参加されました。原告団総会の前に梅小路公園に集合し関電京都支店周辺のデモ行進を行いました。デモ行進には約40人が参加しました。

 総会では、まず、竹本原告団長が5月21日福井地裁の勝訴判決を紹介して、京都でも勝訴判決を勝ち取るためもっと原告を増やそうと呼びかけられました。続いて、出口弁護団長から挨拶がありました。次に、お楽しみ企画として「乙女文楽」によるパフォーマンスが行われました。総会に参加された参加者の多くが携帯電話を使って、パフォーマンスの映像を記録していました。最後に、横断幕に人形が「脱」の文字を書き、「きょうから脱被爆」の横断幕が完成しました。「乙女文楽」によるお楽しみ企画が終わった後に、弁護団事務局長の渡辺弁護士が訴訟の経過報告と判決の紹介を行い、第三次提訴を予定しているので、さらに原告を増やしましょうと呼びかけられました。その後、原告団新募集ツール「紙芝居」の発表が行われました。紙芝居では、国や電力会社は「原発は絶対安全」と宣伝を振りまき、夢のエネルギーとして原発が始まったこと、しかし2011年の原発事故で安全神話が崩壊したこと、原発事故による被害、なぜ国や電力会社が安全神話に乗り続けてきたのかを可愛い絵とイラストで紹介が行われました。

 休憩を挟んで、国会事故調査委員であった田中三彦さんによる記念講演がありました。田中さんは記念講演の中で、①実は、いまもなお地震と津波の議論決着がついていないこと②新規制基準は「がけっぷちの安全論」であることについてお話されました。特に田中さんが講演の中で強調されていたのが、新規制基準を満たせば、原発は安全になったと思った方がいるかもしれないが、そんなことは全くないという点です。新規制基準という考え方自体がこれまで国や電力会社が安全だと言い張ってきた原発が、実は危険なものであることを認めているのです。

 これまで、原発の安全性対策は、3段構えで行われてきました。1層目(異常、故障の発生防止)の対策が機能せず、原発に異常、故障が発生しても2層目(事故への拡大防止)の対策がある。2層目がダメでも3層目(著しい炉心損傷事故の防止)がある。3層目の対策がダメなことはあり得ない。このように考えられてきたのです。新規制基準はさらに2つの基準を加えて、3層目がダメでも4層目、5層目の対策があるから安全だと言っています。しかし、このように2つの対策を付け加えたということは、万に一つも原発事故は起こらないというこれまでの考え方を180度転換して、原発は本質的に危険なものであることを認めたのと同じ事だと言えます。田中さんの記念講演を聴いて、原発が本質的に危険であり、事故が起きれば、取り返しのつかないことになるということを改めて感じました。最後に、原告団のアピール文を採択して第2回原告団総会は終了しました。

 今年の秋には、第3次原告を提訴したいと思います。そのために、新しい原告募集ツールである紙芝居などを使って原告拡大をがんばっていきたいと思います。

◆個人の生命の本質的価値と
 原発の本質的危険性–福井判決を読む

宗川吉汪(そうかわ・よしひろ。日本科学者会議京都支部事務局長)

原発の運転差し止めを命じた画期的な判決がでた。5月21日、折しも京都地裁では大飯原発運転差止訴訟の第4回口頭弁論が開かれていた。弁論では、原告団長の竹本修三さん(京大名誉教授、地球物理学)が、日本列島は地震の巣窟だ、現在の地震学はさほど正確ではないので地震予知は難しい、だから既存の活断層だけを問題視しては危険だ、関電が基準時震動を700から856ガルに上げても安全とは言えない、1500ガルに耐えられる設備を作るのは技術的にも経費の面からも不可能だ、関電は直ちに廃炉に踏み切れ、と明快に述べた。福井判決にもほとんど同じことが書かれている。

京都訴訟原告の一人で、福島から京都に避難してきた福島敦子さんは、福島原発が爆発してからの苦難に満ちた逃避行とその後の避難生活を切々と訴え、3年経った今も事故は収束せず、事故原因も分からず、被災者は生活に疲弊し、家族の崩壊と向きあっている、と述べ、放射性セシウムが93万ベクレル/m2もある南相馬の自宅の庭の土を示して、チェルノブイリなら移住区域にあたるとして、裁判長に、子どもを守るに必死な母親たちを救ってほしい、子どもたちに明るい未来を託してほしい、司法が健全であることを信じている、国民は憲法に守られていることを信じている、と訴えた。

福井判決はこの訴えを正面から受け止める内容であった。個人の生命・身体・精神・生活に関わる利益は各人の人格に本質的なもので、人格権は憲法上の権利であり、これを越える価値は他になく、「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかに想定し難い」として、「少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのが当然である」と述べて、大飯原発3、4号機を運転してはならない、と命じた。

68ページにわたる判決文の中で、「本質的」という言葉が人格権に関わる文言以外に二度登場する。一つは、運転を停止しても被害の拡大が阻止しえない「原子力発電に内在する本質的な危険」を指摘した個所と(43ページ)、もう一つは、地震大国日本での原発運転が「原子力発電所が有する前記の本質的な危険性についてあまりに楽観的」と断じている個所(59ページ)である。

湯川秀樹は核兵器は絶対悪と言った。私は原発は絶対危険と主張している。福井判決も原発は本質的に危険な科学技術であると指摘した。

被告関電は、1260ガルを超える地震に大飯原発は耐えられないことを認めた上で、このような地震はやって来ないとしている。これに対して福井判決は、「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である」と反論し、ここで「本来的」という文言を使用した(45ページ)。つまり現在の地震学の科学的限界を指摘したのである。

ある著名な科学者は、科学技術はもともと価値中立で、使いようによって天使の贈り物にも、悪魔の企てにもなる、だから科学者は原発についてもそのメリット・デメリットを市民に知らせて、最終的判断は市民がすれば良い、と述べている。

しかし福井判決は、原発という科学技術は「本質的に」危険であり、科学的地震予知は「本来的に」不可能である、と明快に述べた。科学者はそのことを市民に知らせる義務があった。福島原発事故は、原発の安全神話だけでなく、科学の価値中立神話も崩壊させた。

私は科学者会議の一員として今回の福井判決から多くのことを学んだ。これをテコに京都の大飯原発差止訴訟でも勝利したい。

[週刊] 京都民報 2014年6月22日付け

◆裁判勝利で原発廃炉をめざす
 大飯原発差止訴訟原告団が総会

橋本宏一(日本国民救援会京都府本部 事務局長)
救援新聞 京都版No.1213 2014年6月25日[393 KB](PDFファイル 392KB)
…↑クリックで表示します。右クリック→「対象をファイルに保存」でダウンロードできます。

 関西電力と国を相手に福井県の大飯原発再稼働の差し止めなどを求めて京都地裁で裁判をたたかっている原告団(1963人)の第2回総会が、6月7日午後、京都市下京区のキャンパスプラザ京都で約100人の参加者を集めて開かれ、福井地裁の「差し止め判決」を力に裁判に勝利しすべての原発を廃止に追い込む運動への決意を固め合いました。

「原発いらない」「いのちを守ろう」とパレード

 総会に先立ち、弁護団、原告団は塩小路公園に集合。出口治男弁護団長、竹本修三原告団長を先頭に、横断幕やのぼり、プラカードなどをかかげてパレードに出発しました。関電京都支店前から烏丸通り、七条通りなどを進みながら市民への訴えやシュプレヒコール、「大飯は危険」「原発いらない」「子どもを守ろう」「いのちを守ろう」などの声を響かせました。

福井地裁の大飯原発差止判決を力に

“万一”が起きることがわかったんだから大飯もだめ
 開会の冒頭、竹本修三原告団長があいさつ。「福井地裁の大飯原発差し止め判決は大変すばらしい判決だ。原発差し止め訴訟を審理する他の裁判所でもどう判断するか考えているはず。憲法の人権を保障する考えに立つよう運動をひろげてわれわれも勝訴判決を勝ち取り原発廃止へつなげたい。そのためにも、いまひとまわりの原告を拡大したい。ぜひ、まわりにひろげていこう」と述べました。続いて、出口治男弁護団長があいさつし、福井地裁の原発差し止め判決は、けれんみのない歴史に残る判決、国策に正面から立ち向かって憲法上の人権を尊重する判断をくだした、勇気のある骨太の判決で哲学的思想的にも質が高い、と評価。原告の人たちもこの判決を先取りする意見陳述を法廷で述べてきた。弁護団もしっかりやらないといけない、と決意を語りました。
 弁護団の渡辺輝人事務局長が、この間の訴訟の要点と経過について報告。いままで大飯原発がなぜ危険か、準備書面にして提出してきたが、京都府は大飯原発の事故を想定した被害調査の資料を作成しているはずで、これらも提出を迫って行きたいと述べました。

国会事故調委員の田中三彦さんが講演

 この後、原子力発電の設計技術者であり、国会事故調査委員会の委員でもある田中三彦さんが「国は福島の原発事故から何を学んだか」―原子力規制委員会はもはや期待できない―と題して講演。田中さんは次のような話をしました。

 ―最先端の技術にあこがれ、原子力発電の設計に9年間かかわったがおもしろくなくてやめた。自然科学や哲学が好きで、その翻訳や著作をやっていた。そこへ1986年チェルノブイリの原発事故が起こりショックを受けた、かつては専門知識の受け売りで福島第一原発の4号機を設計した。しかし、製造過程でとんでもないミスがあり、圧力容器が歪んでいたのを違法に矯正した。私は危険だからやめた方がいいと警告したが、上司が修正を指示してきた。チェルノブイリ事故以後、日本の原発は安全だとキャンペーンをつづけてきたが、これは大ウソだった。雑誌「世界」に私は「安全神話の虚構」という論文を発表した。シンポジウムでも話した。そのための脅迫やいやがらせを受けた。原子炉の製造をしている日立からは家族がおどされた。技術評論家も圧力を受けた。それらは90年代中ごろまでつづいた。3・11の地震と津波による福島の事故で、電源喪失と聞いてもう駄目だと思った。NHKテレビの解説が間違っていたりした。実は、事故の原因は地震によるものなのか、津波によるものなのか、絶対起きないといわれてきた全電源喪失が何故起きたのかいまもって決着がついていない。1号機は間違いなく地震でやられている。写真データからみて津波の到達する以前に電源が喪失している。電源が失われれば、冷却水を回すポンプが停止し、圧力容器内の燃料棒が溶融しメルトダウン起こす。水素が発生し爆発をして大量の放射性物質が拡散したのが福島の事故。事故原因の解明でもそうだが、われわれは騙されている。今度は新基準でだまされようとしている。福島の際もそうだったが、ひとたび事故が発生すれば職員では手におえない。政府事故調査委員会はこうした現場の事実をつかんでいない調査だ。その上に立って新基準なるものをつくっている。万が一起きても大丈夫だといってきた基準がだめだったのだから大飯原発の稼働もだめだ、と考えるのが道理だ。原子力規制委員会は、委員に規制に必要な知識がない。旧原子力保安院の役員、原子力村のメンバーがそのままで、原子炉メーカーの人もよく知った人たちだ。燃料や放射線の専門家ではあっても原子力発電の危険を知った専門家ではない。まさに「規制の」の復活である。規制をしなければならない側がとりこまれて、電気事業連合会などの思いのままに判定を出すところにされている。今回の人事入れ替えでいよいよ、全員右へならえ、になった。これらを監視し、批判の声をあげて行く責任がわれわれにはある。