関西電力 闇歴史」カテゴリーアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆003◆

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◆高浜原発用のMOX燃料製造データ改ざんを隠ぺい(1999年)
 ( ↓ 各記事へのリンク)
 【付 (10) ◆大手電力がプルトニウムの所有権を交換(2024年2月)】
 【付 (9) ◆高浜原発のMOX燃料 】
 【付 (8) ◆MOX燃料を使っている原発と不良品多発問題 】
 【付 (7) ◆MOX燃料の経済性 】
 【付 (6) ◆MOX燃料の危険性 】
 【付 (5) ◆毎日新聞の連載「迷走プルトニウム」(2022年9月 】
 【付 (4) ◆廃止措置中の東海再処理施設も難題山積 】
 【付 (3) ◆核燃料サイクルと会計問題 …再処理等拠出金法 】
 【付 (2) ◆核燃料サイクルとその破綻 】
 【付 (1) ◆MOX燃料をめぐる資源エネルギー庁との交渉 】

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◆MOX燃料製造データ改ざんと隠ぺい
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 1999年9月14日、高浜原発3号機に使用予定だったMOX燃料ペレット(イギリス原子燃料公社[BNFL]製造)の寸法データが改ざんされていることが明らかになった。データの偽造は、22ロット分。関電は独自の抜き取り調査を行っていたが、偽造を見抜けなかったとしている。発覚当時、高浜4号機用のMOX燃料が日本へ向けて輸送中であったが、国と関電は1999年9月24日、現地調査に基づく中間報告を発表した。この報告書は、高浜3号機用のデータ改ざんを認めたが、高浜4号機用のMOX燃料については不正はないとしていた。しかし、その後、4号機用の燃料でもデータのねつ造が判明した。MOX燃料製造の難しさの結果とされる、

 関電は翌2000年1月に、1999年10月の段階で4号機用燃料でのデータ改ざんの疑惑について情報を得ていたが、BNFLからの不正はないとの連絡を受けて、12月まで通産省や福井県に報告していなかったことを発表したとしている。つまり、不正があったという報告を受けていても、それを福井県をはじめ一般に公開せず握りつぶしていた。

 以上が、「BNFL製MOX燃料品質保証データ不正事件」。なお、東芝は2006年にアメリカの原子炉メーカー大手のウエスチングハウス(WH)を買収したが、売り手は1999年にWHを買収したBNFLであった。イギリス政府は2002年以来、原子力産業のリストラを行い、政府資産の削減を進め、BNFLも2010年に廃止され、MOX燃料工場も閉鎖された。
(Wikipedia、グリーン・アクション、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会などによる)

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【付 (10) ◆大手電力がプルトニウムの所有権を交換(2024年2月) 】
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 政府は「利用目的のないプルトニウムは持たない」ことを原則にして、プルトニウム保有量を減少させるとしている。しかし、見通しは立っていない。プルトニウムを減らす具体策の一つが、MOX燃料を使ったプルサーマル運転であるが、それもゆきづまっている。
 2024年2月15日、電力大手は、海外に保管するプルトニウムの所有権を交換するという契約を結んだが、まったく小手先の打開策にすぎない。電気事業連合会が発表した。

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【付 (9) ◆高浜原発のMOX燃料 】
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▲『はとぽっぽ通信』(原発設置反対小浜市民の会)、2023年8月、第254号より

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【付 (8) ◆MOX燃料を使っている原発 と不良品多発問題】
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(以下、毎日新聞「迷走プルトニウム 日本保有の22トンが英国で塩漬け 国内原発での再利用難航 2022/9/1」、続報による)
 2022年2月、電力各社で作る「電気事業連合会」が22~24年度のプルトニウム利用計画を明らかにした。それによると、関西電力は高浜原発3、4号機でプルトニウム0.7トンずつを新たに原子炉に入れて使うが、他の電力会社には利用する計画がないという。

 そもそも、2011年3月の福島第1原発事故以降、プルサーマルを実施できたのは高浜3、4号機、九州電力玄海原発3号機、四国電力伊方原発3号機の4基だけ。しかし玄海3号機は19年度に、伊方3号機は21年度に、それぞれ約0.2トンのプルトニウムを入れたのが最後となった。玄海3号機は2023年11月、伊方3号機は2024年7月までの運転で、海外に加工を委託したMOX燃料を使い切り、プルサーマルを中断する見通し。九電と四電がプルサーマルをできなくなってしまった理由は、燃料用に加工したプルトニウムの在庫が尽きたからだ。高浜原発3、4号機も、2024年度の利用は、0.0トンとなった(2023/2/17発表)。

 在庫が尽きたのは、フランス工場(オラノ社メロックス工場)の不良品多発問題による。ウランとプルトニムを均一に混ぜる技術的なハードルは高い。不均一なMOX燃料を使うと、部分的に高温になり、燃料自体が壊れやすくなる。

▼「はんげんぱつ新聞」2022年10月20日号より

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【付 (7) ◆MOX燃料の経済性 】
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MOX燃料は、高価でプルサーマルに経済合理性はまったくない。
・2013年6月輸送のMOX燃料は、1体当たり9.3億円。
・2011年3月輸送のウラン燃料は、1体当たり1億円。MOXは、9.3倍。

その詳細(1)…『電力と政治(上)』(上川龍之進,勁草書房,2018)によると

◆MOX燃料は価格が高く,プルサーマルに経済合理性はない。電力会社は「契約に関わる事項」などとしてMOX燃料の価格を公表していない。だが,財務省の貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されている。それを輸入本数で割ると,MOX燃料(燃料集合体)は一本あたり,2010年と2013年では7億~9億円台になり,2013年6月に高浜原発に搬入されたものは,一本9億2570万円となった。
◆それに対しウラン燃料の価格も非公表だが,同様の方法で計算すると,2013年10月輸入分は一本1億259万円で,同年6月輸入のMOX燃料は,その約9倍の高値ということになる。要するにプルサーマルには,余剰プルトニウムを増やさないという目的しかないのである。そのうえ,使用済みMOX燃料は六ヶ所村で建設中の再処理工場では処理できない。将来,第二処理工場が建設予定ではあるが,その見通しは立たず,使用済みMOX燃料の処分方法は決まっていない。

その詳細(2)…2016年2月28日 朝日新聞によると

◆使用済み核燃料を再処理して作るウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は,通常のウラン燃料より数倍高価なことが,財務省の貿易統計などから分かった。再稼働した関西電力高浜原発3,4号機(福井県)などプルサーマル発電を行う原発で使われるが値上がり傾向がうかがえ,高浜で使うMOX燃料は1本約9億円となっている。
◆プルサーマル発電は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する国の核燃料サイクル政策の柱とされる。核兵器に転用できるプルトニウムの日本保有量(47.8トン)を増やさない狙いもあるが,国内の再処理施設は未完成なうえ,コスト面でも利点が乏しいことが浮き彫りになった。
◆電力各社は「契約に関わる事項」などとしてMOX燃料の価格を明らかにしていないが,貿易統計で輸送費や保険料を含むとされる総額が公表されている。それを輸入本数で割ると,MOX燃料1本あたり2億604万~9億2570万円。時期でみると,1999年の福島第一は1本2億3444万円なのに対し,直近の2010年と2013年は7億~9億円台。13年6月に高浜に搬入されたものは1本9億2570万円となった。
◆ウラン燃料の価格も非公表だが,同様に1998年7月輸入分は1本1億1873万円。2013年10月の輸入分は同1億259万円で,13年6月輸入のMOX燃料はこの約9倍にあたる。


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【付 (6) ◆MOX燃料の危険性 】
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(以下、「老朽原発うごかすな!実行委」木原壯林さんによる)
 2021年9月9日の報道によれば、高浜原発3、4号機で使用するMOX燃料を積んだ船が8日、フランス北西部のシェルブール港を出発し、11月後半に高浜原発に到着する見通しです(ルート、日程の詳細は、公表されていません)。

・この燃料の製造は、関電がフランスの企業「オラノ」に依頼していたものです。フランスから日本へのMOX燃料の輸送は7回目(高浜原発へは4回目)で、福島原発事故以降では3回目です(前回は4年前です)。このMOX 燃料は、港から20km離れた「アレバ」の施設から、数10台の車両とヘリコプター1機に護衛された2台のトラックで夜明け前に港に運び込まれたそうですが、車列が港に到着する直前には、グリーンピースの約20人が横断幕を掲げて抗議デモを行い、車列に発煙弾を投げつけたそうです。

・高浜原発では現在、3号機で20体、4号機で20体のMOX燃料が使用されていて、両機ともに、炉心の3分の1までの使用が認可されています(全燃料体は157体)。現在MOX燃料を使用して、プルサーマル運転を行っている原発は、玄海3号機(2009年から)、伊方原発3号機(2010年から)、高浜原発3号機(2011年から)、4号機(2016年から)の4基です。

・原発は事故確率の高い装置ですが、MOX燃料を使用してプルサーマル運転すれば、以下のような理由で、重大事故の確率さらに高くなります。

① 燃料被覆管が破損しやすい。例えば、酸素と結合し難い白金族元素が生成しやすく、余った酸素が被覆管を腐食します。また、核分裂生成物ガスとアルファ線であるヘリウムガスの放出が多く、燃料棒内の圧力が高くなり、被覆管を破損させやすくなります。

② MOX燃料では、中性子を吸収しやすいアメリシウムの生成量が多く、原子炉の運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下します。

③ 核燃料の不均質化(いわゆるプルトニウムスポットの生成)を招きやすい。

④ MOX燃料では、中性子束(中性子密度)が大きく、高出力で、過渡時(出力の増減時)に原子炉の制御が難しくなる。

⑤ 使用済みMOX燃料の発熱量は、ウラン燃料に比べて下がり難い。そのため、使用済みウラン燃料の4倍以上も長期にわたって燃料プール内で水冷保管しなければ、空冷保管が可能な状態になりません。なお、燃料保管プールが脆弱であり、冷却水を喪失しやすいことは、福島原発4号機のプールが倒壊寸前であった事実からも明らかです。

 危険きわまりないMOX 燃料の搬入を許してはなりません!MOX 燃料搬入阻止の闘いを準備しましょう!

 関電は、老朽原発・美浜3号機を再稼動し、高浜1、2号機の再稼動を画策し、高浜3、4号機のプルサーマル運転を強行しています。危険極まりないこれらの原発の運転を許してはなりません!「老朽原発廃炉」を勝ち取り、プルサーマル運転を阻止し、原発全廃へと前進しましょう!


▲2021年11月、高浜原発にてMOX燃料搬入に抗議。そのチラシ…◆報告とお礼~11.17「MOX 燃料搬入抗議!緊急現地行動」に早朝から約30 人→こちら。なお、フランス原子力大手オラノ(Orano)は2022年9月17日、MOX燃料を積んだ、英企業PNTL所属の特殊船、パシフィック・ヘロン『(Pacific Heron)』と『パシフィック・イーグレット(Pacific Egret)』がフランスのシェルブールを出港したと発表。11月頃に高浜到着の予定。

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【付 (5) ◆毎日新聞の連載「迷走プルトニウム」(2022年9月 】
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・9/1…日本保有の22トンが英国で塩漬け 国内原発での再利用難航 → こちら
(データねつ造が迷走の始まり)
・9/2…「裏技」編み出した電力業界 塩漬け解消の切り札となるのか→ こちら
(イギリスとフランスにあるプルトニウムの所有権を交換)
・9/3…仏のMOX燃料工場で相次ぐ不良品 原発で異常核反応も→ こちら
(プルトニウムとウランを均一に混ぜるのは難しい)
・9/4…燃料の不良品多発で脱プルサーマル化 仏が直面する「負のサイクル」→ こちら
(期待通りの品質と量を製造するのが困難で、仕様を満たしたMOX燃料が不足)
・9/5…高すぎるMOX燃料 電力会社が口をつぐむその価格と経済性→ こちら
(元米国務次官補のトーマス・カントリーマン氏「ウラン燃料の8倍高い」)
・9/6…使用済みMOX燃料は「ごみ」となる運命か 再処理に技術的な壁→ こちら
(使用済み核燃料の再処理はいまだ実験レベル)

▲いつまで経っても完成しない六ヶ所村の再処理工場(トリチウムの放出◆075◆、再処理工場→◆082◆)。その竣工延期は、2022年9月に26回目となった。次の竣工時期は示されていなかったが、2022年12月になって「2024年度上期のできるだけ早期」と発表した。2022年に再処理工場冷却停止事故→こちら
▼破綻した核燃料サイクルの現状。MOX燃料製造工場はイギリスで閉鎖(製造の難しさから検査データのねつ造が発覚した末に)、フランスでは工法が「湿式」「乾式」と二転三転している。そんな中で、日本のMOX燃料工場がうまくいくのか、疑念はつのるのみ。

核燃料サイクルの現状

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【付 (4) 廃止措置中の東海再処理施設も難題山積 】
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 2022/10/1、日本原子力研究開発機構は、廃止措置中の東海再処理施設(茨城県東海村)で高レベル放射性廃液のガラス固化処理を中断した。7月に約9か月ぶりに再開したばかりだが、前回の中断と同様、廃液をガラスと混ぜる溶融炉に残留ガラスが想定より早くたまったため、炉の運転を停止。今年11月下旬までに60本を予定していたガラス固化体の製造は、25本にとどまった。廃止措置に向けて固化処理を始めた2016年1月以降では5回目の中断。

 共同通信は、以下のように伝える(2022/9/3)。日本原子力研究開発機構が使わなくなった「東海再処理施設」(茨城県東海村)の廃止措置(解体)の担い手確保が課題となっている。2014年に廃止が決まり70年かけて作業を進める計画だが、同施設で働く機構職員は最盛期から4割減り、熟練技術者は定年を迎えて次々と退職している。人がそばにいれば数十秒で死ぬともされる強力放射性物質を安定化させ、総額1兆円規模となる巨大プロジェクト。
 以下、タイトルのみ。記事は → こちら
▽廃止は1兆円の費用がかかる巨大プロジェクト
▽50代は10年たてばいなくなる
▽絶対に落としてはいけない緊張感
▽食品、IT業界より歴史に残る仕事
▽なかなか来ない人材

 茨城新聞は、以下のように伝える(2023/9/25)。原子力規制委員会は9/25の会合で、日本原子力研究開発機構に対し、「東海再処理施設」(廃止措置中)で保管している高レベル放射性廃液のガラス固化作業を巡り、2028年度に完了するとしている計画について「非現実的な数字ではないか」として、見直すよう求めた。原子力機構は年内に見直す方針。28年度末までにガラス固化体を880本製造する計画だが、溶融炉トラブルが相次ぎ、これまでの製造は354本のみ。しかし、固化作業は炉内に金属が堆積したため中断しており、溶融炉を交換した上で(溶融炉の炉底を四角錐状から円錐状に改良)25年3月末にも再開させるという。再開から3年間で残り526本を作るというのが、現行計画。なお、「東海再処理施設」では、使用済み核燃料の再処理で発生した廃液を約360立方メートル保管している(2023年3月末)。

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【付 (3) ◆核燃料サイクルと会計問題…再処理等拠出金法 】
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 核燃料サイクルと再処理等拠出金法における会計問題  → こちら。日本大学商学部『商学研究』 第34号 121-144 2018年3月)、村井秀樹。原発の会計基準はあくまでもリアルな原発の経済実態を財務諸表に落とし込むためのツールであるが,これまで核燃料サイクルを作為的に後押ししてきたツールでもあった。今後は,核燃料サイクルを推進させるような基準を策定するのではなく,破綻している核燃料サイクルの現実を直視して,このサイクルを停止,廃止に導くような会計基準の策定が求められる。

 なお、再処理等拠出金法(2016年)は、使用済燃料の再処理等事業に必要な資金を引き続き安定的に確保するため、以下の措置を講ずることになっている。(1)発生者責任の原則に基づいて、使用済燃料の発生量に応じて再処理等事業に必要な資金は原子力事業者が負担するが、積立金制度を改め、新たに設立する法人に拠出する仕組みとする。(2)拠出金が支払われた場合、当該拠出金に係る使用済燃料の再処理等事業を経産省の新認可法人「使用済燃料再処理機構NuRO、Nuclear Reprocessing Organization of Japan)」(青森市)が進める。この法律は、2023年に改正され、「使用済燃料再処理機構(NuRO)」の業務に、各地の廃炉作業の統括(廃炉拠出金の納付を受けて管理する業務など)を追加した上で、名称を「使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)」に変更(2024年4/1~)。

▼原子力事業に係る既存の法人と新法人の検討資料。左端が、使用済燃料再処理・廃炉推進機構となった。資源エネルギー庁(→ こちら )より。なお、NUMO(ニューモ)は、英語名「Nuclear Waste Management Organization of Japan」を素直に訳せば、核廃棄物管理機構となる。

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【付 (2) ◆核燃料サイクルとその破綻 】
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 核燃料サイクルをになう日本原燃株式会社には、関西電力からも人材が投入されている。関電の大飯原発所長から2022年6月に日本原燃の審査担当執行役員再処理事業部副事業部長に就任した决得(けっとく)恭弘氏は、8月25日の規制委事務局との面談で「これまで多くの支援があったにもかかわらず、いまだ審査が進まず、改革は難しい」と吐露。経験のある外部人材を登用しても、組織の立て直しは望めそうにない。なお、决得恭弘氏は、大飯3号機加圧器スプレイライン配管溶接部のひび割れの進展予測をごまかして、配管を取り替えないまま運転しようとした(→◆019◆)ときの審査会合で指揮をとっていた。
・東京新聞…核燃料サイクル政策の破綻が明らかな理由、「26回目」核燃料再処理工場の完成延期を発表、日本原燃(2022年9月8日)→ こちら

 2022年9月末、「核燃料サイクル」の要である日本原燃の六ヶ所再処理工場では、26回目の完成時期の延期が発表された。すでに着工(1993年4月28日、当初完成予定は1997年)から30年近くが経過しており、総事業費は、当初発表されていた7600億円から、14.44兆円(2021年時点)にまで膨れ上がっている。一方、事業主の日本原燃は、使用済み核燃料の再処理実績はゼロにもかかわらず、工場の維持に必要な費用(毎年2,000億円超)を使用済燃料再処理機構(NuRO)から得ており、それを「収入」として計上するといった、企業会計の常識からかけ離れた処理が続けられている。

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【付 (1) ◆MOX燃料をめぐる資源エネルギー庁との交渉 】
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 以下は、2019年6月21日に行われた「玄海原発プルサーマルと全基ををみんなで止める裁判の会」「原子力規制を監視する市民の会」などによる政府交渉の報告。★は経産省資源エネルギー庁の発言。

<政府交渉報告>原発の使用済み燃料問題・使用済みMOX冷却に300年以上!
こちら

原子力規制を監視する市民の会…使用済みMOX燃料のトイレ問題~発熱量がウラン燃料と同等になるのに「300年以上」・資源エネ庁に根拠を聞いてみた →こちら。(下図も)


▲「プルトニウム燃料産業–その影響と危険性 核戦争防止国際医師会議報告書」(1995/10/4)

・市民側は、使用済ウラン燃料を乾式貯蔵所に移すためには燃料プールで15年間冷却する必要があり、これと同等の発熱量になるのは、使用済MOX燃料の場合は100年以上プールでの冷却が必要であることを指摘しました。

┌──経産省資源エネルギー庁
★使用済MOX燃料が使用済ウラン燃料と同等の発熱量となるのに
「300年以上かかるのは事実」
└──
・交渉で,参加者がいちばん驚いたのが,プルトニウム燃料(MOX燃料)をプルサーマルで用いた後の使用済MOX燃料の発熱量が,使用済ウラン燃料と同等になるのに300年以上かかることをエネ庁が明言したときでした。こちらで示した資料は100年までしかなく,100年以上かかりますねと聞いた答えがこれでしたので,なおさらでした。ウラン燃料ですら,使用後15年経って発熱量が下がってからでないと,乾式貯蔵に回すことはできません。使用済MOX燃料は,300年以上経たないと再処理はおろか,運搬することもできないことになります。
・使用済みMOX燃料は発熱量が高いため乾式貯蔵施設にも入れられませんが,国は「使用済ウラン燃料の15年後と同等の発熱量まで下がるには300年かかる」と言いました。その間,ずっと原発サイトのプールで保管するのでしょうか? 誰がどうやって安全に保管するのでしょうか? 処理方法は「研究開発段階」とのこと。伊方原発でも高浜原発でも,使用済みMOX燃料が出てきています。玄海原発でももうすぐ出てくるのです。
(ただし、後でこの「300年」については「過去の報道の内容を申し上げたもの」と否定)

┌──経産省資源エネルギー庁
★使用済MOX燃料を処理するための
第二再処理工場は「目途は立っていない」
└──
・使用済MOX燃料の再処理は,現在の六ヶ所再処理工場では技術的にできないため,第二再処理工場で行うことになっています。しかし,エネ庁に対して,技術的な目途はあるのかと問うと「目途は立っていない」と答えました。
・プルサーマルにより出てくる使用済MOX燃料は,原発サイトのプールで300年以上冷やし続けなければならないことになります。原発を抱える地元の住民にしてみればたまったものではありません。300年間,冷やしたあとの処理方法も決まっていないのです。

┌──経産省資源エネルギー庁
★中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の
「行き先は決まっていない」
└──
・交渉では,六ヶ所再処理工場の稼働期間について,日本原燃が40年としていることをエネ庁に確認しました。中間貯蔵・乾式貯蔵への搬出時には,六ヶ所再処理工場は操業が終っています。審査中のむつの中間貯蔵施設について,申請書では搬出先について,「契約者に返還する」としか書いていないことを規制庁に確認しました。第二再処理工場の目途はたたず,中間貯蔵・乾式貯蔵後の使用済燃料の行き場がないことが改めて確認されました。

◆002◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆004◆

◆関西電力 闇歴史◆002◆

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◆美浜原発2号機で緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動(1991年)
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 1991年2月9日、美浜原発2号機(現在は廃炉)の蒸気発生器の伝熱管1本が破断し、原子炉が自動停止する事故が発生した。この事故は日本の原子力発電所において初めてECCSが実際に作動したものである。

 事故の原因は、伝熱管の振動を抑制する金具が設計通りに挿入されておらず、そのため伝熱管に異常な振動が発生し、高サイクル疲労(金属疲労)により破断に至ったものと判明した。この金具は点検対象とされていなかったことも一因とされる。

 この事故により微量の放射性物質が外部に漏れたが、周辺環境への影響はなかったと発表されている。また、美浜沖の海水から、通常なら数Bq/Lより少ないトリチウムが、2月10日に470 Bq/L、2月18日にも490 Bq/L検出された。国際原子力事象評価尺度(INES)はレベル2と判定された。レベルの低い「事故」は「事象」や「逸脱」にしてしまうような “ 厳密な ” 尺度。

(国際原子力事象評価尺度[INES]→こちら
(おもにWikipediaによる)

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【参考】「東電という会社は…」
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 東京電力福島第一原発2号機は1992年9月29日、全給水喪失事故を起こし、緊急炉心冷却装置が作動した。ところがこの事故報道の際、同じ福島第一原発2号機で1981年5月12日に同様の全給水喪失事故で緊急炉心冷却装置が作動していたことが明らかになった。これが日本の原発で最初の緊急炉心冷却装置作動事故と思われるが、現在までこの事故の詳細は明らかにされていない。

 とりわけ、事故記録類は、この原子炉の履歴や寿命を判断するため、また、原子炉の安全運転を行うための重要な資料であるが、東京電力株式会社では、生のチャート類を含め、1981年事故時の生データは保存していないと回答している。

 以上は、東京電力福島第一原発2号機の緊急炉心冷却装置作動事故に関する質問主意書、提出者 鈴木 久さん(日本社会党)、1993年6月16日
こちら

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【参考】わが国においてECCSが作動した事故・故障
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 原研(日本原子力研究開発機構、JAEA)のWebサイトによれば、わが国の原子力発電所において緊急炉心冷却系(ECCS)が作動した事例は、1970年の軽水型原子力発電所運転開始から2003(平成15)年度までに、5件ある (~2004年5月)。ただし、1件を除いた他の4件はいずれも誤信号の発生又は誤操作に起因した事象によって作動したもので、運転が停止された以外の影響は生じていない。美浜2号機で1991年2月に発生したものは、蒸気発生器の伝熱管が1本破断するという事故に起因して作動した事例である。しかし、安全審査の段階で評価されていた通りに安全系統が作動し、事故の拡大に繋がることもなく周辺への影響も無視しうる程度に収めることが確認された、として、安全を強調している。

(1)1979. 7.14、関西電力 大飯1号機(PWR)。定格出力運転中、「冷却材ポンプ遮断機トリップ」の誤信号が発生して、原子炉が自動停止した。さらに、主蒸気逃がし弁が作動して主蒸気管相互の圧力に不均衡が生じた結果安全注入信号が発信しECCSの一つである「高圧注入系」が作動した。しかし、系統から冷却水の流出はなかった。
(2)1981. 5.12、東京電力 福島第一、2号機(BWR)
(3)1981.11.19、東京電力 福島第二、1号機(BWR)
(4)1991. 2. 9、関西電力 美浜2号機(PWR)
(5)1992. 9.29、東京電力 福島第一、2号機(BWR)
こちら
 ただし、上記、原研のWebサイトにまとめられた後、ECCSの作動例は2件ある。
(6)2009. 2.19、東北電力 女川 1号機(BWR)
(7)2011. 3.11、東京電力 福島第一、3 号機(BWR)

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【参考】ECCSを避けたい動機
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 「東日本地震が発生してから、津波が福島第一原発に到達するまでの約50分間に、最初に起動しておくべきだった原子炉の緊急冷却装置を起動しなかったのはなぜか」。
『福島第一原発 メルトダウンまでの50年』の著者・烏賀陽(うがや)弘道氏に聞く。
こちら

◆001◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆003◆

◆関西電力 闇歴史◆001◆

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◆1973年、関電の美浜原発1号機で核燃料棒の折損が発見されるも、
 4年近く事故の存在を隠ぺいし、その上、発覚後は虚偽の説明か?
 関電の原子炉運転者としての技術的、法的、常識的能力は、あまりにも欠如!
 国の定期検査関与もあまりにも杜撰で、関電と結託して事故を隠ぺい!
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 1973年3月、美浜原発1号機(現在は廃炉)において核燃料棒が折損する事故が発生した。しかしこの事故は当初外部には明らかにされず、関西電力は秘密裏に核燃料集合体を交換しただけであった。

 この事故が明らかになったのは、当時、雑誌『展望』に「原子力戦争」を連載していた田原総一朗さんに宛てて内部告発があったためという。田原さんはこれを「美浜一号炉燃料棒事故の疑惑」として明らかにした。これを受けて、衆議院議員の石野久男さん(日本社会党)が衆議院科学技術振興対策特別委員会などで追及した結果、原子力委員会はこの事故を認めた。しかし、原子力委員会が認めたのは1976年12月7日であり、事故が発生してから4年近く経った後であった。

 内部告発では、この事故は核燃料棒が溶融したものと指摘していたが、原子力委員会の発表ではこれは溶融ではなく「何らかの理由で折損」したものであり、「重大な事故ではない」としている。しかし、田原さんはこの発表に対し「原子力戦争」の追記で、「この発表の内容はもとより発表前後の経過にも、つじつまの合わない点や新たな疑惑が数多く指摘されており」と疑問を投げかけている。

(以上、おもに『原子力戦争』による。講談社文庫、ちくま文庫→こちら
『原子力戦争』


(以下、おもに『決定版 原発大論争!』による。宝島社文庫)

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◆折損事故発生から発覚まで
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 関電の美浜原発1号機では、第2回定期検査中(1973/3/15~)の1973年4月4日、燃料棒2本が合計170cmにわたって折れ落ち、破片が炉内に散らばっていたことが発見された。関電は、この事故に関して何も公表せず、隠ぺいを図った。発覚後は、折損が生じたのは燃料取扱作業中であり、運転中ではなかったとしているが、はたして本当に取扱作業中に折損したかどうか、運転中に破損したのではないか、この点については、その後、強い疑義が出されている。
 
・今中哲二、小出裕章
「美浜原子炉の燃料事故をめぐる問題 (1)」→こちら
「折損が燃料取扱中に生じたという関電の判断は、余程の技術的な無能力か意図的なものを感じさせる」
「定期点検に立会っている筈の検査官は …… 相当な怠け者か急に眼が悪くなったのであろう」
「美浜原子炉の燃料事故をめぐる問題 (2)」→こちら

 この事故の隠ぺいは4年近く続いたが、内部告発もあり、やがて次第に明らかにされることになった。1976年7月に出版された『原子力戦争』というドキュメンタリーの中では、著者の田原総一郎氏は、美浜原発1号機で重大な燃料事故が隠されていることを、「美浜1号炉燃料棒事故の疑惑」として指摘した。事故の存在が公表される前のドキュメンタリーであるにも関わらず、正確な情報源に支えられている。

 国会では1976年8月以来、事故の有無をただす追及があったが、政府は曖昧な答弁に終始し、現地調査も行わなかった。関電も事故があったことを公表しなかった。しかし、事故後4年近く経った1976年12月7日になって、関電はようやく新聞発表で事故の存在を公表した。原子力委員会も初めて事故が起きていたことを認めた。

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◆燃料棒の折損がもらたす危険
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 原子炉においては、燃料棒の健全性はきわめて重要。たとえ、わずかなピンホールでも重視され、原因究明と対策が練られてきた。破損に至っていない場合でも、燃料棒の曲がり、焼きしまりも重視されてきた。
(焼きしまりとは、一定の条件によって燃料ペレットの密度が増す現象。局所的な出力増加がおこり、冷却材喪失事故の際にはペレットの蓄積エネルギーが増加するので、ECCS=非常用炉心冷却装置の性能が低下する)
燃料棒が破損したときには、蓄積していた希ガスなどの核分裂生成物(F.P.)が一度に放出され、放射能レベルが急激に上昇する。原子炉内で発生した希ガスは、炉内にとどまらず、環境に放出される。

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◆その後の経過
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 なお、国会での追及によって事故が公表されるには4か月もかかったが、事故後の国の対応は迅速であった(→前掲「美浜原子炉の燃料事故をめぐる問題 (1)」による)。

「原子力委員会の指示により燃料棒の折損片を茨城県の日本原子力研究所に運び、試験調査を実施することになったが、その移送は事故公表の2週間後には完了していた。現状凍結を求める福井県知事の要請を無視し、発電所前での移送阻止のピケを強行突破して折損片移送が行われたのであった。」

 この問題を国会でおもに追及したのは、日立労組出身の石野久男 衆議院議員(社会党、旧茨城2区)で、1977年2月に質問主意書を出している。石野議員は社会党の反原発政策確立に最も影響力のあった人物とされ、反原発的な主張を繰り返したために、労使協調路線に転じた日立労組からは次第に疎んじられる。1980年の総選挙では、対立候補を立てられ、落選した。

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◆参考サイト
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関西電力(株)美浜原子力発電所第一号炉燃料棒折損事故に関する質問主意書→こちら
1977年2月16日
提出者 石野久男
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衆議院議員石野久男君提出関西電力(株)美浜原子力発電所第一号炉燃料棒折損事故に関する質問に対する答弁書→こちら
1977年3月4日
衆議院議員石野久男君提出関西電力(株)美浜原子力発電所第一号炉燃料棒折損事故に関する質問に対する答弁書
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関西電力(株)美浜発電所第1号機の燃料体の損傷の原因について→こちら
1977年8月
科学技術庁、通商産業省
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関西電力(株)美浜発電所第1号機の折損燃料棒片の回収状況及び同1号機運転再開に当たっての安全性について→こちら
1978年7月
科学技術庁、通商産業省
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