関電と原発 memo」カテゴリーアーカイブ

◆関電と原発 memo No.14–「子ども脱被ばく裁判」で山下俊一福島県放射線健康リスク管理アドバイザー(事故当時)への尋問

「子ども脱被ばく裁判」弁護団長・井戸謙一弁護士から。
山下俊一福島県放射線健康リスク管理アドバイザー(事故当時)に対する証人尋問レポート

2020年3月7日
「子ども脱被ばく裁判」第26回口頭弁論期日のご報告
弁護団長 井 戸 謙 一
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 さる3月4日、山下俊一氏の証人尋問が行われ、この裁判の終盤の大きな山を越えました。弁護団としては、万全の準備をして臨んだつもりでしたが、振り返れば反省点が多々あります。しかし、獲得した成果も大きかったと考えています。

 山下氏は、尋問前に提出書面で、自分が福島県民に対してしたのは「クライシスコミュニケーション」であり、住民のパニックを抑えるためには、わかりやすい説明が必要だったのだと正当化していました。しかし、いくら緊急時であっても、住民に嘘を言ったり、意図的に誤解を誘発することが正当化されるいわれはありません。私たちは、山下氏がした具体的な発言の問題点を暴露することに重点を置きました。

 山下氏は、福島県内の講演では、ゆっくりと余裕を感じさせる話しぶりでしたが、法廷では、語尾が早口で消え入るように小さな声になり、緊張感が窺えました。尋問によって山下氏に認めさせることができた主な点は、次のとおりです。

(1) 100ミリシーベルト以下では健康リスクが「ない」のではなく、正しくは「証明されていない」であること

(2) 国際的に権威ある団体が100ミリシーベルト以下の被ばくによる健康影響を肯定しているのに、そのことを説明しなかったこと

(3) 「年100ミリシーベルト以下では健康被害はない」との発言は、単年だけの100ミリシーベルトを前提としており、連年100ミリシーベルトずつの被ばくをする場合は想定していなかったが、住民には、連年100ミリシーベルトずつの被ばくも健康被害がないとの誤解を与えたこと

(4) 「1ミリシーベルトの被ばくをすれば、遺伝子が1つ傷つく」と話したのは誤解を招く表現だったこと、すなわち、実効線量1ミリシーベルトの被ばくをすれば、遺伝子が1つの細胞の1か所で傷がつき、人の身体は37兆個の細胞でできているから、全身で遺伝子が37兆個所で傷つくことになるから、自分の発言は、37兆分の1の過小評価を招く表現だったこと

(5) 子どもを外で遊ばせたり、マスクをするなと言ったのは、リスクとベネフィットを考えた上のことだったこと(すなわち、子どもを外で遊ばせたり、マスクをしないことにはリスクがあったこと)

(6) 水道水にはセシウムが全く検出されないと述べたのは誤りだったこと

(7) 福島県民健康調査で福島事故後に生まれた子供に対しても甲状腺検査をすれば、多数見つかっている小児甲状腺がんと被ばくとの因果関係がわかること

(8) 鈴木俊一氏がいうように、福島県民健康調査で見つかり摘出手術をした小児甲状腺がんには、手術の必要がなかったケースは存在しないこと、

 被ばく医療の専門家が住民に対してこれだけ多数の虚偽の説明をした目的は何だったのか、山下氏を利用した国や福島県の意図はどこにあったのか、今後、これらを解明していかなければなりません。弁護団は、これから最終準備書面の準備にかかります。

 裁判は、次回の7月28日午後1時30分からの弁論期日で結審します。年内か年明けには判決が言い渡される見通しです。最後までご支援をお願いします。

以 上

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「子ども脱被ばく裁判」とは?
◆2011年3月11日、東京電力福島第一原子力発電所事故は、4年が経過する今も放射性物質を放出し続け、収束の目途すら立っていません。
◆「低線量の放射線に長期間にわたり継続的に曝されることによって、その生命・身体・健康に対する被害の発生が危惧される」(2013年4月24日仙台高等裁判所判決文抜粋)と司法も認めているように、子どもたちの健やかな成長が脅かされています。
◆福島で子育てをする私たちは、「子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されていることの確認」(子ども人権裁判)をそれぞれが居住する自治体(福島市、川俣町、伊達市、田村市、郡山市、いわき市、会津若松市)に求めるとともに、事故後、県外に避難した人たちとも力を合わせて、国と福島県に対し、「原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任」(親子裁判)を追及するために、2014年8月29日福島地方裁判所に提訴しました。

・原告(延べ人数)
子ども人権裁判 35名
第一次提訴 23名
第二次提訴 12名
親子裁判 166名
第一次提訴 84名
第二次提訴 82名
(2015年1月14日現在)

「子ども脱被ばく裁判のブログ」より
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【参考…山下俊一氏については、こちらのNo.17 にも。】

◆関電と原発 memo No.15–脱原発おすすめの本 & 原発広告 & 東京オリンピック

▼『ストップ原発』(全4巻)

  • 大月書店、A4判、各40ページ。2012年発行。
  • 多くの漢字にルビが付いているので、小学生でも楽に読める。第4巻をふくめてカラー図解、カラーイラスト、カラー写真で紙面がきれい。
  • とくに、第4巻の「原発はもうかるビジネス」では、総括原価方式の説明があったり、「原発にたよらない町づくり」「電気をへらして楽しいくらし」「電力会社が広告を出す理由」などのページもある(現状に合わないと記述も見られるが)。
  • 京都市図書館に所蔵あり。

▼『ストップ原発』第4巻
~「原発は安全」「原発は必要」という広告~

(「天野祐吉のBlogあんころじい」などを参考)

「着古したセーターでもちょっと手を加えれば新品同様。ウラン燃料もくり返し使えます」(電気事業連合会1985年7月)
 

「原発からの放射線量は自然放射線の20分の1以下です」(電気事業連合会1983年1月)

▼『東京五輪がもたらす危険』

  • 東京五輪の危険を訴える市民の会[編著]渡辺悦司[編集]
  • 緑風出版、A5判、216ページ。2019年発行。1800円+税。
  • 内容…東京オリンピックの開催が、参加するアスリートや観客・観光客にもたらす放射線被曝の恐るべき危険性を警告する!
  • 第1部 東京五輪の危険を警告して発言する科学者・医師・市民…雁屋哲、石津望、渡辺悦司、IPPNWドイツ支部、梶川ゆう、桂木忍 川崎陽子、石津望、小出裕章、ノーマ・フィールド、村田光平、山田知惠子、岡田俊子、柳原敏夫、山田耕作、落合栄一郎、矢ヶ崎克馬。
  • 第2部 東京五輪での被曝が危険なこれだけの根拠…渡辺悦司、本行忠志、山田耕作、藤岡毅、大山弘一、鈴木優彰、下澤陽子、大和田幸嗣。
  • 第3部 避難者たちが体験した被曝影響と症状…三田茂、渡辺悦司、斉藤さちこ、福島敦子、羽石敦、下澤陽子、園良太、鈴木絹江。
  • 京都市図書館に所蔵あり。

▼『フクシマ事故と東京オリンピック』

  • 小出 裕章 (著)
  • 径書房、四六判、152ページ。2019年発行。1、600円+税。
  • 「罪のない人を棄民したまま『オリンピックが大切』という国なら、私は喜んで非国民になろう」──悔恨と怒りの思いを4600字余の言葉に込めた覚悟のメッセージ。 59頁の写真図版と7つの言語で世界に告発する、原発事故9年目の実情と東京五輪という犯罪的愚行。
  • 今、私たちがやるべきことは五輪ではない! ──オリンピックは、いつの時代も国威発揚に利用されてきた。近年は、箱モノを作っては壊す膨大な浪費社会と、それにより莫大な利益を受ける土建屋を中心とした企業群がオリンピックを食い物にしてきた。しかし、今もっとも大切なのは、「原子力緊急事態宣言」を一刻でも早く解除できるよう、国の総力を挙げて働くことである。フクシマ事故の下で苦しみ続けている人たちの救済こそ、最優先の課題である。──(本書より)
  • 出版の経緯…2018年7月、元京大原子炉実験所助教・小出裕章氏は、ひとりの日本人女性からの依頼を受け「フクシマ事故と東京オリンピック」と題する文章を書いた。その後それは英訳され、同年10月、世界各国のオリンピック委員会などに書簡として送られた。今回、その原稿を基に一部加筆・修正。初めてまとまった形で出版される。
  • 京都市図書館に所蔵あり。

◆関電と原発 memo No.13–原発重大事故で放水砲が大活躍

原発の重大事故
原子炉の格納容器破損にも備える関電!

放水砲で放射性物質の放出を抑制する!

(関電のホームページ→こちら、他より)



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▲マジか・・・|゚Д゚;)))
これは火災のときの訓練なのでは?

格納容器に水をかけて、放出される目に見えない放射性物質を打ち落とすというわけか?
放水砲で落とすことができてもできなくても、極度の汚染は免れないのでは?
格納容器が破損してしまったような事態のとき
こんな“放水砲”が本当に有効なのか?
虹がきれいだなあ!(~o’)”\basi!
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▲マジか・・・(~_~;)
炉心まで損傷したようなときも、放水砲か?
ヘリコプターで避難できるのか?
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▲マジか・・・!!!(> <)!!!
シルトフェンスなんか張ってるときか? トットと逃げるときでは?
それにしても放水砲は大活躍!
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◆関電と原発 memo No.12–大飯原発に近い活断層

大飯原発に近い活断層
Fo-B断層、Fo-A断層、熊川断層、上林川断層

◆大飯原発から30km以内の海域には、Fo-B(エフオービー)、Fo-A(エフオーエイ)、Fo-C(エフオーシー)断層が、陸域には熊川(くまがわ)断層、上林川(かんばやしがわ)断層などがある。若狭湾 一体は、活断層だらけ。

◆これらの断層のうち、関西電力が当初、連動の可能性があるとしていたのはFo-B断層とFo-A断層だけ(約35㎞)。その結果、基準地震動は700ガルとされた。

◆これに、熊川断層を加えて3つの活断層の連動を考慮すれば(約60㎞)→基準地震動は1、260ガルを超える(石橋克彦氏)という計算もある。しかし関電は規制委の指示で3連動=856ガルの基準地震動を設定し了承された。

◆地震はまったく予測ができない。基準地震動をこえる地震がないとは言えない。兵庫県南部地震のように離れた断層が連動して動いたり、福岡県西方沖地震のように既存の活断層の延長上に地震が起こることもある。

◆また、「Fo-B断層、Fo-A断層、熊川断層」とほぼ直角の角度をなしている上林川断層は、前者の3つの断層に対して共役(きょうやく)断層となっている可能性がある。さらに、上林川断層は、原発から遠ざかる綾部の方には伸ばされたりしているが、なぜか福井県に入ると断層が消えてしまう。

◆共役断層…地殻に水平方向の同じ圧縮(または引っ張り)力が働いたとき、互いに断層面が直交し、ずれの向きが逆向きになる断層のセット。共役断層がある場合、どちらの断層が動くか、すなわち、どちらで地震が起こるか、まったく分からない。

◆活断層カッター…例えば20kmの長さの活断層が見つかった場合に、それを3つにカットして審査に通る長さにしてしまう御用学者のこと。こうすれば、地震の規模が小さくなるので、原発を建設したい国の審査を通ってしまう。“活断層カッター”が関与して活断層を過小評価されたあげくに建てられた原発は、日本国中にあるという。大飯原発もその1つとされる。
→「世の中の不思議をHardThinkします


▲この図ではFo-AとFo-Bの2連動だが、その後、熊川を含む3連動に。


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関西電力大飯原発3、4号機
2017年5月、規制委は新規制基準に適合の
審査書を確定

◆原子力規制委員会は2017年5月、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が新規制基準に適合しているとする審査書を確定し、設置変更を許可。大飯原発をめぐっては、規制委の前委員長代理の島崎邦彦東京大学名誉教授が裁判や学会などで、想定される地震の揺れ(基準地震動)が過小評価されていると指摘しているが、規制委は見直しを拒否。

◆関電は大飯原発の基準地震動を856ガルとし、規制委も了承。

◆島崎氏が2016年4月の熊本地震を検証したなかで、規制委が認めた算出方法では基準地震動が過小評価になると指摘した点については、規制委は現在の方法でも過小評価の問題はないと反論し、島崎氏の主張を採用せず。

◆その結果、原子力規制委員会による大飯原発3、4号機の設置変更許可が認められ、関西電力の原発は、すべての再稼働が許可された。
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島崎邦彦氏は 大飯原発の 基準地震動の 見直しを 主張
内陸地殻内地震に関する島崎邦彦氏の指摘

(「原子力市民委員会特別レポート5」より)

◆設計基準地震動の設定が、耐震安全設計の出発点である。新規制基準に従って各電力会社が設定し、規制委が承認した設計基準地震動の大きさについて、地震学の専門家から過小評価になっている可能性の指摘がなされている。

◆社会的に大きな注目を受けている指摘として、地震学者の島崎邦彦・東京大学名誉教授(前・原子力規制委員会委員長代理)が 2015 年に複数の学会(日本地球惑星科学連合大会、日本地震学会、日本活断層学会)において、断層モデルをもとに震源の大きさを推定する際に各電力会社が使用している入倉・三宅式は過小評価をもたらす可能性があるので不適切であることを発表した。2016 年 6 月には、そのことが同年4月に発生した熊本地震のデータで裏付けられたことを論文発表した。また名古屋高裁金沢支部での大飯原発3、4号機運転差止め訴訟控訴審に、そのことを論じる意見陳述書を提出した。

◆規制委は以前に委員長代理を務めたことのある島崎氏の指摘を無視できなくなり、2016年6月に田中俊一委員長らは島崎氏からの意見聴取を公開の場で行った。

◆しかし、規制委は7月27日の定例会合で「現時点で大飯原発の基準地震動を見直す必要はない」と結論づけた。島崎氏が提案した政府の地震調査研究推進本部・地震調査委員会の資料に記載されている別の計算式を使った評価については、原発に対して「今まで使ったことがない」(櫻田道夫・原子力規制庁原子力規制部長)ことを理由に、基準地震動の検証を実施しない考えを示した。この規制委の決定に関して、島崎氏は異議を唱えている。

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同時多発事故、避難計画やその実効性は審査されず

◆若狭湾周辺は、廃炉中も含め15基もの原発がひしめく“原発銀座”。しかし、規制委の審査は、それぞれの原発での重大事故対策のみ。集中立地で、地震などの災害で同時に複数の原発で事故が起きた場合の検討はされていない。

◆また、大飯原発の30km圏は3府県にまたがり、住民の避難計画の実行は困難と指摘されている。さらに、複数の原発で同時に事故が起きれば、避難は一層困難になる。しかし避難計画やその実効性については、規制委の審査の対象外。
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◆関電と原発 memo No.11–大飯原発のF-6断層

2012年の大飯原発再稼働のとき
「活断層か地滑りか」問題となった「F-6断層」とは

◆関西電力の大飯原発(福井県おおい町)の3号機と2号機の間を、斜めに横切る断層がある。(以下、「週刊朝日 2012年7月27日号)

・「F-6」と呼ばれるこの断層が、いまや大きくクローズアップされている。「活断層である可能性を否定できない」として、複数の専門家が再調査を求めている。ところが、国や関西電力がこれに応じていない。F-6断層の具体的な危険性を訴えるのは、東洋大学の渡辺満久教授(変動地形学)。「もし地震で地盤がズレて、非常用取水路が破損すれば、緊急時に原子炉を冷却できなくなるおそれがあります」。

・白か黒か。決着をつけるには、写真や図面をもとに考えるのは時間の無駄で、「掘って確認すればいい」と渡辺教授は言う。「保安院は関電に写真を出せなどと言っていますが、色の具合とか、余計な情報に引きずられることがあるので、写真で活断層かどうかを確認してはいけないのは我々の常識です。専門家がこの目で見ればはっきりする。その結果、活断層でないとわかったら、それはそれで安心できるじゃないですか」(渡辺教授)

◆そして、実際に調査が行われた。その結果、委員の誰一人として明確に「F-6破砕帯は活断層ではない」と断定していない。地滑り説に固執した岡田教授ですら「現時点で活断層とみなすことはできない。幅広い識者で再検討すべきだ」と言っている。しかし、規制委は、大飯原発の再稼働を認めてしまった。

◆こうした状況で重要なのは、グレーやクロが完全に否定されるまで、安全側に立って、原発を停止させておくのが、原子力規制委員会の仕事ではないか。

◆安全側に立てば、大飯原発の再稼働は認められなかったはず。

◆大飯原発では、重要施設の一つである非常用取水路の下を横切っているF-6断層が活断層と認定されれば、大規模な改造を余儀なくされ、当面は運転が認められなかったはず。関電が電力不足を声高に言い立て、計画停電をほのめかすなど、政府、電力会社は、大飯原発の再稼働に躍起になっていた状況もみておく必要がある。大飯原発では、下図のように、他にも「破砕帯」とされる断層は多い。


◆以下、大飯原発差止訴訟[京都地裁]での原告側の主張。竹本修三原告団長は、活断層が見いだされていない所でも大きな地震は起こるとして、活断層かどうか議論しても意味がないと陳述している。

大飯原発差止訴訟[京都地裁]第4回口頭弁論

(2014年5月21日)

裁判官の交代に伴う弁論の更新で
「F-6破砕帯」に関する
竹本修三 原告団長 による意見陳述

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既存の活断層だけを問題視していては危険

 8.……原子力規制委員会は大飯原発敷地内の重要施設の直下を通る「F-6破砕帯」が活断層であるかどうかに焦点を絞って検討をすすめ、「活断層ではない」との結論を出しました。

 9.しかしこれも空しい議論です。つまり、

  • 活断層の認定は、専門家(と言われる人々)の間でも議論が分かれていて、そう簡単ではない。
  • 鳥取県西部地震(M7.3)や福岡県西方沖地震(M7.0)のように、事前に活断層が見出されていないところでもM7クラスの地震が起きている。
  • 同じ活断層で地震が起きたとしても、前回の地震と全く同じ断層面で割れるとは限らない。断層面の傾きが数度違えば、地表に現れる断層は別のところに顔を出す。

ということです。

 10.同じ震源から破壊が進行しても、その時々の地殻の三次元的な応力状態により、圧縮軸の方向がわずかに違えば、地震断層は地表の別の場所に顔を出します。従って原発敷地内にある破砕帯が活断層かどうかと議論してもあまり意味はないと思います。
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◆関電と原発 memo No.10–老朽原発どうして危険?

老朽原発うごかすな!
老朽原発どうして危険?

◆原子炉が割れてしまう!中性子照射脆化

  • 中性子が当たることによって金属=鋼鉄がもろくなること(脆化、ぜいか)。
  • 原子炉容器がパリンと割れてしまう可能性。
  • おおむね1970年代に運転開始の原発は、鋼材中に銅やリンの成分が多いので、照射脆化の進行が速い。
  • 中性子照射脆化の進行…脆性(ぜいせい)遷移(せんい)温度ではかる。
  • 脆性遷移温度…金属が温度低下によって延性(粘り強さ)を失い、脆性(もろさ)が現れる温度。
  • 一般にマイナス20℃くらいまでは大丈夫な鋼が、お風呂につけたくらいの温度40℃で割れてしまっては危険。
  • なお、原発で沸かすお湯の温度は300℃くらい。基準地震動をこえる地震などで緊急炉心冷却装置が働いた場合、冷たい水が投入されて原子炉の鋼の温度が下がったとき、どうなるか。
  • 名古屋地裁の「老朽原発40年廃炉訴訟」で、原告側は、中性子照射脆化をはかった元データを出すように求めているが、国や関電はこれを拒否。

中性子照射脆化の著しい(=とくに危険な)
原発ワーストテンは
廃炉原発6基を除けば
関電の原発ばかり4基!
その4基のうち3基が40年超えの老朽原発


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関電どうかしてる、金だけ!今だけ!自分だけ!
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【ワーストテン】
(1) 高浜1…脆性遷移温度99℃(試験時期:2009)。99℃より低温になると、割れる可能性。
(2)~(5)廃炉(玄海1、美浜2、美浜1、大飯2)
(6) 高浜4…脆性遷移温度59℃(試験時期:2010)。現在、稼働中 !!!(>_<)!!!
(7) 美浜3…脆性遷移温度57℃(試験時期:2011)
(8)~(9)廃炉(敦賀1、福島1)
(10) 高浜2…脆性遷移温度40℃(試験時期:2010)

(『原発はどのように壊れるか 金属の基本から考える』 小岩昌宏・井野博満 著)

◆検査の限界

・原発は巨大かつ複雑…経年劣化した、金属、機器、配管、ケーブルの検査は容易でない。
・100万kW級原発(大飯原発や高浜原発)の物量
・ケーブルの長さ…1、700km。ケーブルの劣化は制御不能につながる。
・溶接個所…65、000個所。溶接不良の可能性。応力腐食割れの発生。
・配管…170km、10、000トン。金属疲労、腐食、減肉(肉厚減)の発生。
・モーター…1、300台
・弁…30、000台
・ポンプ…360台

・規制委も接近できる範囲のみに容認…加圧水型(関電の原発)の格納容器は「接近できる全検査可能範囲」を検査すれば良い。
・圧力容器などのひび割れ対策…超音波検査がおこなわれる。
しかし、検査しても、その判定は技術者の技量や主観に左右される。

◆致命的弱点の蒸気発生器でトラブル続き

・高浜原発では、稼働中の3号機と4号機で蒸気発生器細管の損傷事故が続いている。2018年9月に3号機で1本、2019年10月には4号機で計5本、2月18日には、3号機の3台の蒸気発生器のうち2台からそれぞれ1本の細管で外側部分が削れたとみられることが確認された。しかし、原因は不明のまま。老朽原発で大丈夫か!

・福島第一原発のような沸騰水型原発(BWR)では、原子炉が冷却できなくなってから3~4時間後にメルトダウンが始まるのに対して、高浜原発や大飯原発のような加圧水型原発(PWR)では、原子炉が冷却できなくなってから22分後にメルトダウンが始まる。

・それは加圧水型原発が、高温高圧の蒸気を利用しているため。高温高圧の蒸気が通っているのが、蒸気発生器の細管。沸騰水型では280~290℃、70気圧で運転するが、加圧水型では340℃以上と高く、圧力が2倍以上の150気圧で運転されているので、蒸気発生器の細管が破断すると一次冷却水が一気に漏れ、メルトダウンにつながる。

*蒸気発生器の細管は、1本の直径がおよそ2cm、全長約20m、肉厚はわずか1.3mm。高浜原発には蒸気発生器が3器あって、その細管は合計で1万本をこえる。

◆関電と原発 memo No.9–1973年にはじまった伊方原発訴訟とは

1973年にはじまった伊方原発訴訟とは

『関西電力と原発』より
(うずみ火編集部、西日本出版社2014年、巻末資料を一部編集)

提訴から最高裁での敗訴確定まで

◆伊方原発訴訟は、四国電力が建設を計画していた伊方原発(愛媛県)の安全性をめぐって争われた行政訴訟で、原発の科学技術的問題が議論された日本初の「科学訴訟」と言われ、原発について初めて触れた訴訟、そして実は、「原発の安全性」が全面的に問題とされた訴訟としては世界で初めてのものだった。日本の電力会社が商業用原子炉の建設に本格的に着手して間もない73年8月、伊方原発1号機の原子炉設置許可処分の取り消しを求めた周辺住民35人が松山地方裁判所に提訴した。住民側は、設置許可の際に原子炉等規制法に基づいて行われた国の安全審査が不十分だと訴え、行政処分の取消しを求めたのである。

◆78年4月、一審の松山地方裁判所は請求棄却判決を出し、同時に原発建設の決定権は国に属するとの判断が下された。原告は高松高等裁判所に控訴したが、84年12月に控訴は棄却された。さらに、原告は最高裁判所に上告をしたが、92年10月、上告は棄却され原告敗訴が確定した。

伊方原発訴訟の判決

◆伊方原発訴訟について、海老澤徹(「熊取六人組」の一人)は「福島第一原発をはじめとした軽水炉が抱える科学技術的問題点は、裁判を通じて当時既にほとんどすべてが明らかにされていた。しかも、原告側の指摘に対して被告側はまともな反論ができず、法廷ではほぼ論破されていたと思う」と振り返る。
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裁判の判決自体も非常にいい加減な形で下されていた。証人尋問終了後、判決前の不可解な裁判長交代があり、交代した裁判官は1度も法廷に姿を見せず体調不良ということで更に別の裁判官に交代し、3人目の裁判官が判決を下している。
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専門的な科学論争が行われた訴訟の判決を、事実審理を担当しなかった裁判官が国側の主張を引き写して判決文を書いたのだった。
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◆また、裁判における住民側の主張には
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「潜在的危険性があまりにも大きく、重大事故は人々の健康と環境に取り返しのつかない被害をもたらす」
「被曝労働という命を削るような労働:労働そのものの中に差別的な構造を内包」
「平常時でも一定の放射能を環境中に放出し、環境汚染と健康被害の可能性」
「放射性廃棄物の処分の見通しが立っていない」
「核燃料サイクルの要、プルトニウムは毒性があまりにも強く、核兵器拡散をもたらす」
「原子力推進のため、情報の統制が進み、社会そのものの表現の自由が失われる」
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など、今日まで未解決となっている原発をめぐる本質的な問題も網羅されていた。

安全審査の資料は秘密で裁判所にも提出せず

◆伊方原発の安全審査がなされた当時、原子炉設置の許可手続きにおける様々な検討は、主に原子力委員会に設置された原子炉安全専門審査会(以下、審査会)が行っていた。審査会は申請者(電力会社)によって提出されている施設の位置や構造、設備の基本設計や技術仕様などの資料をもとにして、原子炉の安全に関する調査審議をすることとなっている。そして、それらの資料は原則的に公開されない。伊方原発訴訟に限らず、原発訴訟において原告は、許可の違法性や原子炉の危険性を立証しなければならないが、審査に関する資料のほとんどを被告(国や電力会社)が持っているわけだ。
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伊方原発訴訟では、原告側が情報開示を求めた資料のうち、裁判所が文書提出命命を出した一部の資料ですら、被告は最後まで「企業秘密」を理田に提出をしなかった。
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原告は国の主張をことごとく論破したが

◆にもかかわらず、「熊取六人組」をはじめとした原告側の科学者たちは、国の主張をことごとく論破した。川野眞治(「熊取六人組」の一人)はその一例として
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「炉心溶融をしないという国の主張に対し、審査委員の一人である東大教授は裁判で、自身の教科書で炉心溶融について生々しい記述をしていることを指摘されると、しどろもどろになって『自分の教科書は間違っている』と述べた」
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という事実を挙げる。裁判でそのようなやり取りが続いたにもかかわらず、
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判決を下した裁判長は、炉心溶融について国が想定していなかったにもかかわらず、「安全審査において炉心溶融に至るまでの想定はしている」という前提を示すなどして、原告敗訴の判決を下したのであった。
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炉心溶融による事故も指摘していた

◆裁判ではのちに福島第一原発で現実に起こった一次冷却材喪失事故についても議論されたが、国側は「炉心は溶融しないが、全炉心が溶融したのに相当する放射能が格納容器中に放出される。しかし、格納容器は健全に保たれ外部にはほとんど放射能は出ない」などとしていた。溶融しない理由は「緊急炉心冷却装置(ECCS)が設計通りに働くから問題はない」と主張したが、当時、ECCSは実証が一度もされていなかった。

◆不十分な研究、未解明な部分が多かった当時の楽観論で、住民側の訴えは退けられてしまった。
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原告は、冷却に失敗すれば炉心溶融が起こり、絡納容器の気密が破壊され莫大な量の放射能が環境に放出するのを避けられないと主張していた。つまり、福島第一原発事故で起こったシナリオはすでに伊方原発訴訟で原告がはっきりと指摘していたのであった。
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◆関電と原発 memo No.8–六ヶ所村再処理工場の恐怖

六ヶ所村再処理工場の恐怖
高レベル廃液タンクに迫る爆発の危険性

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六ヶ所村の高レベル廃液は1m3放出されただけで、北海道南部と東北地方全域が壊滅する。
その223倍の量があるのだから、爆発して全量が出れば、やはり日本が消えるわけです。
東海村の再処理工場にも高レベル廃液が430m3あり、プルトニウム溶液も3.5m3保管されている。
(『広瀬隆 白熱授業 日本列島の全原発が危ない』による)
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危険どころの話ではない 青森県六ケ所村再処理工場・核燃料サイクル施設と事業主体=日本原燃の驚愕の姿勢

(青森県・岩手県・宮城県・北海道の7市民団体による日本原燃との質疑応答・要請)

★2016年6月20日、青森県、岩手県、宮城県、北海道の7市民団体が、日本原燃へ「六ケ所再処理工場の落雷事故やガラス固化、その他」に係る質問状を提出し文書で回答を得、7月20日説明会において質問や要請を行った。

★落雷による事故の事実関係の確認:本格稼働中ならば重大事故になっていた!
【説明会でわかったこと】
→2015年8月2日に起きた落雷事故(落雷26)による計測器被害は主要建屋の全てで生じた。絶対に故障してはならない重要なものが15件もあった。仮に本格操業中の落雷事故であったとすると大事故に発展した可能性がある。

★高レベル廃液とガラス固化情報の公開:ガラス固化された廃液量、核種の放射能量は非公開!
【説明会でわかったこと】
→過去の試験で使用済み燃料を425トンせん断溶解し得た高レベル廃液量、その中に含まれているセシウム137とストロンチウム90の放射能量、ガラス固化体として固定された両核種の放射能量は「運転情報等に当たるため回答できない」とのこと。日本独自とされるガラス固化の技術は、本当に確立されているのか?

★水素爆発に至る時間:高レベル廃液貯槽は電源喪失時に7時間で水素爆発へ!そして日本壊滅!
【説明会でわかったこと】
→これまでは約35時間とされてきた高レベル廃液の放射線分解による水素が爆発濃度限度8%に到達する時間は最も早い貯槽で約7時間ということ。このことは六ヶ所再処理工場で電源喪失や掃気系のパイプ等が破損した場合7時間で復旧しなければならないことを意味する。
→従来は水素濃度4%が爆発下限濃度とされており、実際は7時間よりも短い時間で水素爆発の下限濃度になる可能性がある。福島原発1号機は津波到来後約24時間で建屋が水素爆発し破壊された。高レベル廃液貯槽が約7時間で水素爆発とは、原発よりも急速に大事故へと進行する恐ろしい現実。
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◆関電と原発 memo No.5–関電の小口顧客離れ300万件に

関電の小口顧客離れ300万件に

◆OCCTO(オクト)[電力広域的運営推進機関]スイッチング支援システムの利用状況によると、2019年1月末の関電の小口顧客離れは、300万件を超えました。

◆関電の契約数は1200万件と言われているので、その4分の1に達しました。
(2018年 8月に100万件超え)
(2019年11月に200万件超え)
(2020年 1月に300万件超え)

◆なお、電力自由化が始まった2016年は月平均5.8万件、2017年は6.3万件、2018年は6.6万件、2019年は7.7万件の減少となっており、年を追うごとに、関電離れが進行しています。


(低圧のほか500kW未満の高圧の需要者を含む。2~3%程度)
(厳密には「新電力から関電へ」のスイッチング件数も含まれます)

関電純減は226万件

◆上記のデータは、OCCTO(オクト)[電力広域的運営推進機関]の「スイッチング支援システムの利用状況」からみたスイッチング件数データです。毎月10日までに前月分が発表され、速報性が高いものです。ただし、このデータでは、500kW未満の高圧需要者も含まれているうえ(そのため「小口」と表記)、「新電力から関電へ」戻るスイッチングも件数としてカウントされています。

◆自由化が始まった当初は、「新電力から関電へ」戻るといったケースは少数と思われましたが、関電がガスとのセット販売(2017年4月~)を強化したり、失った顧客の取り戻し営業を強めるようになった現状では、必ずしも関電の純減「関電から新電力へ」のデータとは言えなくなってきました。

◆そこで、電力・ガス取引等監視委員会による「電力取引の状況」の低圧データを下記に示します。データの発表までに2か月半くらいかかるり、速報性はありませんが、「関電純減」数が分かります。

◆これによると、電力自由化以来の関電の低圧での顧客離れ「関電純減」は、昨年10月末までの累積で226万件にのぼります。関電が取り戻した件数(「新電力→関電」)の累積は12万件弱です。(2020/1/15発表)

◆関電と原発 memo No.3–多発する高浜原発のトラブル

◆2016~2019年。関電のWebで「プレスリリース」のページによる。
◆トラブルの中で、蒸気発生器伝熱管の損傷がめだつ。
(下記の年月日はプレスリリースの日付で、
 当該トラブルの発生日とは異なる場合がある。)
◆有名なハインリッヒの法則は、1つの重大災害や重大な事故1件につき、軽微な事故が29件、さらにその背後に隠れた事故寸前の案件が300件あるというもの。元々労働災害に関する経験則だが、普遍的な意味がある。


(1)高浜発電所4号機の定期検査状況について(蒸気発生器伝熱管の損傷)
 2019年10月17日

(2)高浜発電所1、2号機安全対策工事における協力会社作業員の負傷について
 2019年9月19日

(3)高浜発電所4号機の保全品質情報について
(A蒸気発生器主蒸気流量計の一時的な指示値低下に伴う運転上の制限の逸脱および復帰について)
 2019年9月17日

(4)高浜発電所1号機格納容器内における火災について
 2019年3月6日

(5)高浜発電所1号機格納容器上部遮蔽設置工事における協力会社作業員の負傷について
 2018年10月6日

(6)高浜発電所協力会社作業員の計画線量超過について
 2018年9月12日

(7)高浜発電所3号機の定期検査状況について
(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果の原因と対策等について)
 2018年9月12日

(8)-1 高浜発電所2号機クレーン倒壊の原因と対策について
 2017年2月8日

(8)-2 高浜発電所構内でのクレーンブームの損傷について
 2017年1月21日

(9)高浜発電所3号機の定期検査状況について
(蒸気発生器伝熱管の渦流探傷検査結果)
 2017年1月12日

(10)高浜発電所4号機の原子炉施設故障等報告書の提出について
(高浜発電所4号機発電機自動停止に伴う原子炉自動停止について)
 2016年3月9日
 2月29日14時01分に並列操作を実施した際、発電機が自動停止するとともに、タービンおよび原子炉が自動停止した件。

(11)高浜発電所4号機における管理区域内での水漏れに係る原因と対策について
 2016年2月22日