原告第21準備書面
2016年(平成28年) 5月 13日
第1 3.9大津地裁仮処分決定の意義について ―国と電力会社が進める再稼働の流れに見直しを迫る―
1、福島第一原発事故後の原発訴訟の流れ
2、大津地裁仮処分決定の意議
3、大津地裁決定の内容
4、大津地裁決定の影響
第2 川内原発稼働等停止等差止仮処分申立却下決定に対する即時抗告について
1 司法審査の在り方について
2 地震に起因する本件原子炉施設の事故の可能性
3 避難計画の実効性について
4 結論
2016年(平成28年) 5月 13日
第1 3.9大津地裁仮処分決定の意義について ―国と電力会社が進める再稼働の流れに見直しを迫る―
1、福島第一原発事故後の原発訴訟の流れ
2、大津地裁仮処分決定の意議
3、大津地裁決定の内容
4、大津地裁決定の影響
第2 川内原発稼働等停止等差止仮処分申立却下決定に対する即時抗告について
1 司法審査の在り方について
2 地震に起因する本件原子炉施設の事故の可能性
3 避難計画の実効性について
4 結論
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第6 結論
1 結論1-炉心損傷の具体的危険
東京大学地震研究所纐纈一起教授は、外部電源喪失による事故の可能性を認めた福井地裁判決(甲91)に対して、地震学者の立場より、「700ガル未満の地震動が発生することはかなりの確率で起こり得ることであり,外部電源の設備がそれにより被災することは同じくかなりの確率で起こり得ることである。外部電源設備の被災は福島原発事故の原因のひとつであったことを考えれば,これをもって大飯原発が事故を起こす危険性があるとすることは科学的に妥当であるように見える。さらには,原子力規制委員会による新規制基準において,この問題に対して外部電源設備の重要度分類をSクラスに格上げするのではなく,Bクラス[17]のままで独立した2系統の外部電源を用意させるとしていることは適切ではないとこの判決では判断されていることになり,その判断は科学的に正しいように見える。」(甲274[110 KB]:「大飯原発運転差止判決における科学の問題」)と述べている。纐纈教授の見解は原告の主張に合致するものである。
本書面で説明したとおり、基準地震動未満の地震であっても、耐震Cクラスの複数の機器が同時に損傷することによる炉心損傷の具体的危険[18]が認められる。
[17] Cクラスの誤記と思われる
[18] 炉心が冷却できない場合の炉心溶融については訴状[1 MB]第3,1参照
2 結論2-新規制基準の瑕疵
審査ガイドは耐震Sクラスの施設として、「(1)地震により発生する可能性のある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設、…」を挙げている。
福島第一原発事故により外部電源の重要性が明らかになったにも関わらず、新規制基準が外部電源を耐震Cクラスとすることの問題点についてはすでに第5準備書面で述べたとおりである(上記纐纈論文も同旨)。
また、本書面にて詳述したとおり、非常用取水設備は崩壊熱の最終的な排熱のために必要不可欠な設備であるから、「炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設」に該当し、Sクラスとして耐震性を審査されるべきである。しかるに、非常用取水設備を耐震Cクラスとして許容している点で耐震重要度分類に関する新規制基準には重大な瑕疵がある。
以上
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第5 シビアアクシデント対策の不可能性
1 シビアアクシデント対策
シビアアクシデントとは、「『設計基準事象』[7]を大幅に超える事象であって、安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない状態であり、その結果、炉心の重大な損傷に至る事象」と定義される(甲3-96:国会事故調査報告書)。シビアアクシデント対策は深層防護の4層目に位置づけられていたにもかかわらず、日本では法制化されていなかったという問題点は原告第1準備書面で指摘したとおりである。福島第一事故前においては、電気事業者の自主的な対策とのみ位置づけられ、国会事故調査報告書(甲3-96)は、「日本では、シビアアクシデント対策として、設備、体制、手順書、訓練・教育の整備が行われてきたが、実効性に乏しく、本事故では様々な問題が顕在化し、事故の緩和、防止には不十分なものであった。」と総括した。
以上の経緯より、新規制基準はシビアアクシデント対策を規制要件化し、被告関西電力はシビアアクシデントの対応策を原子力規制委員会に提出した。
しかしながら、原子力規制委員会におけるシビアアクシデント対策の議論を鑑みても基準地震動未満の地震による具体的危険が指摘できる。
以下詳述する。
[7] 設計基準事象とは、「原子炉施設を異常な状態に導く可能性のある事象のうち、原子炉施設の安全設計とその評価に当たって考慮すべきとされた事象」をいう(甲3-96:国会事故調査報告書)。
2 第7回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム資料
(1)経緯
平成24年10月25日から平成25年6月3日にかけて、原子力規制委員会内に設置された「発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム」がシビアクシデント対策の基本方針を検討した(甲263[101 KB]:「発電用軽水型原子炉の新規制基準に関する検討チーム」について(案)[8])。その後、上記基本方針に基づき、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第四十三条の三の六第一項第四号の規定に基づく、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」、同「規則の解釈」、「審査ガイド」が制定された(甲264[6 MB]:原子力百科事典ATOMICA[9]「商業用原子力発電炉に係る新規制基準」、甲265[61 KB]:表1[10]、甲266[113 KB]:実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関する審査ガイド)。
[8] 原子力規制委員会HP:https://www.nsr.go.jp/data/000050165.pdf
[9] 一般財団法人高度情報科学技術研究機構が文部科学省より委託を受けて作成するインターネット上の原子力に関するデータベース
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=11-02-01-03
[10] 原子力百科事典ATOMICA「商業用原子力発電炉に係る新規制基準」の引用文献
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/11/11020103/01.gif
(2)第7回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム資料
平成24年12月20日の第7回検討チーム会議においては、事務局より「『シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)(案)』の網羅性について 改訂版」(☆甲267)と題する資料が提出され、シビアアクシデント対策としての要求事項が確認された(甲268[539 KB]:発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム 第7回会合 議事録)。同資料の3ページ目にはPWRプラントに対するシビアアクシデント対策の概要が示されている。これは、起因事象(事故の原因、又は発端となる事象)の発生から冷温停止状態に持ち込むまでの対応を「イベントツリー」[11]方式で示したものである。
ここで、シビアアクシデント対策は、概要、設計基準事故対処設備の機能が喪失した場合に「原子炉を止める」「炉心を冷却する」「放射能を閉じ込める」ことであるが、炉心を冷やすためには冷却水を循環させ続けることのみならず、最終的に海に排熱する必要がある。また、冷却のための設備(ポンプ等)を運転するために電源が必要である。
下記の図によれば《図省略》、PWRプラントにおいて起因事象が生じた場合に、(1)電源確保対策、(2)原子炉停止対策、(3)最終ヒートシンク確保対策(2次系)、(4)原子炉冷却材高圧時/低圧時の冷却対策、(5)水源の確保対策、(6)最終ヒートシンク確保対策、が要求されている。
この枠組は、シビアアクシデントの際の事故の進行具合に沿って対策を配置した図であり、対策をすべて成功させて最終的にOKと書かれたシーケンス(=冷温停止状態)に持ち込むことが想定されている。
[甲267[336 KB]-3「シビアアクシデント対策における要求事項(個別対策別の主な設備等について)(案)」の網羅性について 改訂版]《図省略》
[11] 事象の木解析――イベントツリーアナリシスevent tree analysis(略称ETA)
ETAは,構成要素に故障(入力)が発生したとして,時間の経過をたどり,どんな事象(出力)に発展するかを解析する図式解法で,各事象の発生確率が推定できると定量的な解析もできる。
3 外部電源喪失+取水口破損の場合の問題点
原告らは、原告第10準備書面第6にてすでにイベントツリーに基づく事故対策に対する批判を述べたが、仮に検討チームが作成した上記のイベントツリーに基づく対策を前提としても、「外部電源喪失」と「取水口破損」が同時に起こった場合、原子炉損傷に至る危険がある。
まず、上記イベントツリーによれば、外部電源が喪失した場合(起因事象)、可搬式代替電源設備(電源車)、および、恒設代替電源設備(ガスタービン電源車)により、代替電源を確保するものとされる[12]。
次に、可搬式代替電源により電源が確保でき、かつ原子炉が停止したとしても、原子炉を冷却しなくてはいけない。ここで、短期的な除熱機能として、二次系除熱(補助給水系による除熱)およびECCS(非常用炉心冷却系)による除熱が予定されている(甲269[6 MB]:非常用炉心冷却装置等の例(PWR)[13]、甲275[2 MB]-118)。
しかし、これらは復水ピット(前者)、燃料取替用水タンク(後者)内の水を利用する冷却方法であり、ピット内の水が枯渇すればその機能を維持できなくなる。また、ECCSは燃料取替用水タンクの水位が低下すれば水源を格納容器再循環サンプ[14]に切替えて注水が継続され再循環モードに移行するが(甲270[100 KB]:「図4」[15] 原子炉格納容器スプレイ設備(PWR)系統説明図,甲275[2 MB]-118)、循環水が熱交換されなければ時間の経過とともに冷却能力は低下する。
したがって、電源の回復およびECCS等による短期的な冷却が成功しても、最終ヒートシンク(海水への排熱)が奏効しなければ長期的な冷温停止状態が不可能となる。
[甲275[2 MB]-118:関西電力㈱大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価 (一次評価)に関する審査書に加筆] 《図省略》
[12] 大飯原子力発電所の「工事計画変更認可申請書(3号機添付資料)」によれば、非常用電源設備として空冷式非常用発電装置および電源車が施設されている。
[13] 電気事業連合会HP:http://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/shikumi/bougo/sw_index_02/
[14] 格納容器再循環サンプ:1次冷却材喪失事故時等において、燃料を冷却するための水源として使用する燃料取替用水タンクの水がなくなった場合に、次の水源として、漏れ出た1次冷却材を回収して使用するために、格納容器内の底に設置されているタンク。
[15] ATOMICAより引用
http://www.rist.or.jp/atomica/data/fig_pict.php?Pict_No=02-04-04-01-04
4 取水口から取水できない場合の関電の対策
第4で述べたように、最終ヒートシンクの設備の一部である非常用取水設備は基準地震動に耐えられず、基準地震動未満の地震によって海水への排熱機能が損傷する可能性が高い。したがって、基準地震動未満の地震によって、最終ヒートシンク機能が喪失し、冷温停止状態に移行できない可能性が生じる。この場合、原子炉は高温高圧化し炉心損傷に至る。
最終ヒートシンク機能喪失に対し、上記イベントツリーでは、車載代替UHSS[16]、恒設代替UHSSにて対応するとされている。関西電力は、当初、非常用取水設備からの取水が不可能となった場合、複数の消防ポンプにより海水を汲み上げ仮設水槽および復水ピットに給水する方針を打ち出していたが、その後、送水手段を消防ポンプから送水車に変更した(甲271[2 MB]:関西電力HP「大飯発電所の安全対策トピックス2015 特別号 VOL.13」)。
[甲271[2 MB]:関西電力HP「大飯発電所の安全対策トピックス2015 特別号 VOL.13」]《図省略》
大飯3号機および4号機の取水口から復水ピットまでの距離は約1400mであり、約60本のホースを接続して敷設するとされている。
しかし、関西電力の計画ではホース敷設系統は僅かに1系統であり多様化が図られていない。したがって、何らかの事情(地震による障害物、地盤沈下)で、1400mの敷設ルートの一部が寸断されれば、送水は不可能となる。また、ホースは60箇所もの接合部があるため、このうちの一点でも不具合による漏水があれば所定の水量を送水できない。
さらに、冷温停止状態を継続するには送水車の稼働を継続する必要があるが、自然災害時に送水車の燃料を維持できるか甚だ疑問である。
したがって、関西電力のシビアアクシデント対策は、非常用取水施設が損傷した際の具体的危険を排除できない。
[甲272[405 KB]-3-7:大飯発電所3号炉及び4号炉基準適合性のうち 試験、検査可能性について]《図省略》
[甲273[8 MB]-11.3-152:「新規制基準適合性審査に関する事業者ヒアリング(大飯3、4号機(302)) 審査資料『大飯3号炉及び4号炉 設置許可基準規則等への適合性について (重大事故等防止技術的能力)』」《表省略》
[甲273[8 MB]-1.13-153]《画像省略》
[16] UHSS: 最終ヒートシンクへの熱移送系統
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第4 非常用取水設備の問題
1 非常用取水設備の役割
非常用取水設備は、その名称にある「非常用」が示すとおり、通常運転状態から逸脱した異常や事故の発生時において安全性を確保するための重要な機能を担っている。
すなわち、下図の通り《図省略》原子炉停止時において原子炉から崩壊熱を除去し、安定停止状態である冷温停止状態にするには、原子炉の熱を、余熱除去冷却器、原子炉補機冷却水冷却器を介して最終的に海に排熱する必要がある。このために海水を汲み上げるための設備が「非常用取水設備」[5]である。
[甲260[1 MB]-0270:「非常用取水設備の耐震 C クラスは誤りである」滝谷紘一]《図省略》
[甲261[15 MB]-9-405頁「大飯発電所3、4号機の新規制基準適合性審査に関する事業者ヒアリング(170)」(平成26年3月20日)添付資料4より引用]《図省略》
[5] なお、同設備の安全機能の重要度は最上位のMS-1である(甲262[324 KB]-10)。
2 非常用取水設備損傷後のシナリオ
非常用取水設備が地震により損傷すれば、最終排熱のための海水の汲み上げが不可能となる。この場合、原子炉補機冷却海水設備への海水供給による熱交換が所定通りにはできなくなり、原子炉補機冷却水の温度が異常に上昇し、崩壊熱除去設備による原子炉の崩壊熱除去機能が喪失し、その結果、炉心損傷に至る(甲260[1 MB]-0270:「非常用取水設備の耐震 Cクラスは誤りである」)。
また、原子炉補機冷却水は、原子炉の崩壊熱除去に必要であるのみならず、非常用ディーゼル発電機、非常用換気空調系冷凍機(いずれもMS-1[6])、格納容器スプレイ冷却器、使用済燃料ピット冷却器、格納容器再循環ユニットなどにも供給されて必要な冷却を行っているところ、非常用取水設備の機能が損なわれるとこれらの設備機器も機能喪失に陥り、炉心損傷、使用済燃料損傷、格納容器損傷などに至る。(甲260[1 MB]-0270、別紙(甲275)[190 KB]参照)。
[6] 安全機能の重要度MS-1は耐震Sクラス
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第3 外部電源の問題
1 大飯発電所の電力系統の概要
大飯発電所は、500kV送電線4回線と77kV送電線1回線にて電力系統に連系している。500kV送電線は西京都変電所に2回線(大飯幹線)及び京北開閉所に2回線(第2大飯幹線)、77kV送電線(大飯支線)は小浜変電所にて接続されている(甲259[3 MB]-2,10:平成25年10月29日第38回新規制基準適合性に係る審査会合提出資料「大飯3号炉及び4号炉 保安電源設備について」。
被告関電によれば、「大飯発電所に接続する送電線は、500kV4回線と77kV1回線の設備構成であり、全ての送電線が同一鉄塔に架線されている箇所はなく、物理的に分離した設計である」とのことである(甲259[3 MB]-14)。
[甲259[3 MB]-10:大飯3号炉及び4号炉 保安電源設備について]《図省略》
2 関西電力の外部電源対策の問題点
被告関電は、5ルートの送電線が物理的に分離した設計であり、すべてのルートが同時に機能を停止する可能性は小さいと主張するものと考えられる。
しかしながら、地震は、風害や経年劣化等による局所的な故障と異なり、広い範囲に影響を及ぼすため5ルートの外部電源が同時に損傷する危険がある。
また、以下の図によれば《図省略》、大飯幹線(2回線)、第2大飯幹線(2回線)、大飯支線(1回線)が密集した地域があり、当該地域に地震が起きれば、すべての送電線が損傷する事も容易に想定できる。
[甲259[3 MB]-14 :大飯3号炉及び4号炉 保安電源設備について]《図省略》
3 福島第一原発では地震により全外部電源が喪失
福島第一原発事故は、地震発生後間もなく、外部電源設備の一部である鉄塔の倒壊、遮断器及び断路器の部品落下、引込鉄構の傾斜等の損傷が生じたことから、外部電源設備が機能を喪失し、外部から受電することができなくなったことを契機とする(甲92-32,34:政府事故調中間報告書)。
ここで、東北地方太平洋沖地震は巨大な地震であったが、必ずしも福島第一原子力発電所の立地地点において広範囲に基準地震動を超える地震動が観測されたわけではない。ところが、6ルートあった外部電源はすべて機能喪失した。
すなわち、基準地震動未満の地震であっても、外部電源全てが機能喪失することは十分に有り得るのである。
[甲92-79:政府事故調中間報告書資料編]《図省略》
[甲92-18:政府事故調中間報告]《表省略》
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第2 耐震重要度分類
1 新規制基準における耐震重要度分類
平成25年6月19日、発電用軽水型原子炉施設の設置許可段階の耐震設計方針に関わる審査において、審査官等が「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成25年原子力規制委員会規則第5号)並びに実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則の解釈(原規技発第1306193号(平成25年6月19日原子力規制委員会決定)の趣旨を踏まえ、耐震設計方針の妥当性を確認するために、「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」[1](甲255[487 KB] 以下「審査ガイド」という)が策定された。
審査ガイドの「II 耐震設計方針」は、新規制基準における原子炉施設の耐震重要度分類について3クラス(Sクラス、Bクラス、Cクラス)に分けて、「重要な安全機能を有する施設はSクラス、これと比べて影響が小さいものはBクラス、これら以外の一般産業施設、公共施設と同等の安全性が要求される施設はCクラスと適切に分類されていることを確認する。」「Sクラスの各施設は、基準地震動による地震力に対してその安全機能が保持できること。」(甲255[487 KB]-14:審査ガイド)とした。
すなわち、基準地震動[2]に耐えうる施設は、Sクラス[3]のみであり、Bクラス及びCクラスの施設は基準地震動未満の地震に対して「安全機能が保持」できる設計ではない。
[1] 平成25年6月19日 原管地発第1306192号 原子力規制委員会決定
[2] 大飯原子力発電所の基準地震動は、平成21年3月には700ガルであったが、平成25年12月には759ガル、平成26年5月には856ガルと変遷
関西電力HP:http://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nuclear_power/anzenkakuho/ooi/topics_012sp.html
[3]審査ガイド16頁はSクラスの施設として、(1)地震により発生する可能性のある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設、(2)自ら放射性物質を内蔵している施設、(3)当該施設に直接関係しておりその機能喪失により放射性物質を外部に拡散する可能性のある施設、(4)これらの施設の機能喪失により事故に至った場合の影響を緩和し、環境への放射線による影響を軽減するために必要な機能を持つ施設、(5)これらの重要な安全機能を支援するために必要となる施設、(6)地震に伴って発生する可能性のある津波による安全機能の喪失を防止するために必要となる施設
Bクラスの施設として、「安全機能を有する施設のうち、機能喪失した場合の影響がSクラスと比べ小さい施設」、Cクラスの施設として「Sクラス施設及びBクラス施設以外の一般産業施設、公共施設と同等の安全性が要求される施設」と分類する。
2 大飯原子力発電所の耐震設計
(1) 外部電源
被告関西電力は、大飯原子力発電所3,4号機の「設置変更許可申請書」の「添付書類八」8-1-120頁以下において施設ごとに耐震クラスを明記しているものの、ここに「外部電源」の項目はない(甲256[1 MB]:平成25年7月8日付「設置変更許可申請書」「添付書類八」)。
しかし、平成25年11月12日被告関電が原子力規制委員会第45回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合に提出した資料(甲262[324 KB]-11:「大飯3号炉及び4号炉共用に関する設計上の考慮について」)によれば、外部電源の安全機能の重要度は「PS-3」[4]とされ、耐震Cクラスと同義である。
また、平成24年2月13日付原子力安全・保安院の資料において、関西電力は、「各起因事象の発生に直接関係する設備等の耐震裕度を評価した結果、起因事象発生までの耐震裕度が最も小さいのは「主給水喪失」及び「外部電源喪失」であり、それぞれSs未満の地震動においても耐震Cクラスの設備等(それぞれ主給水ポンプ、碍子等:発電所構内の母線などの電線を支持し、絶縁する磁器製の支持構造物等)の破損により当該事象が発生する」と報告している(甲258[9 MB]-33,34:「関西電力(株)大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価 (一次評価)に関する審査書」)。
したがって、大飯原子力発電所の外部電源(及び主給水器)は耐震Cクラスであり、かつ、地震に対してもっとも脆弱な設備である。
[甲262[324 KB]-11:大飯3号炉及び4号炉 共用に関する設計上の考慮について]《表省略》
[4] 原告第5準備書面参照
(2) 非常用取水設備
被告関西電力は、大飯原子力発電所3,4号機の「設置変更許可申請書」の「添付書類八」8-1-120頁以下において施設ごとに耐震クラスを明記しているものの、「非常用取水設備」の項目はない。しかし、被告関電が、平成25年12月20日原子力規制委員会の第61回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合に提出した資料(甲257-113[18 MB],115[10 MB]:「大飯3号炉及び4号炉 耐震設計の基本方針」)によれば、非常用取水設備は耐震Cクラスである。
[甲257-113[18 MB],115[10 MB]:「大飯3号炉及び4号炉 耐震設計の基本方針」]《表省略》
原告第20準備書面
-基準地震動未満の地震による炉心損傷の具体的危険性- 目次
第1 はじめに
原発を構成する施設は、その安全機能が喪失した場合の放射線による公衆への影響の程度に応じて、重要度の高い順から、耐震性をSクラス、Bクラス、Cクラスに分類され(耐震重要度分類)、それぞれのクラスごとに定められている設計用地震力と設計方針にもとづいて設計される。
本書面は、大飯原子力発電所の(1)外部電源、及び、(2)非常用取水設備が耐震Sクラスに分類されていないことから、基準地震動未満の地震が生じた場合でも炉心損傷に至る具体的危険が存在することを述べる。
2016年(平成28年) 5月 13日
第2 耐震重要度分類
1 新規制基準における耐震重要度分類
2 大飯原子力発電所の耐震設計
第3 外部電源の問題
1 大飯発電所の電力系統の概要
2 関西電力の外部電源対策の問題点
3 福島第一原発では地震により全外部電源が喪失
第4 非常用取水設備の問題
1 非常用取水設備の役割
2 非常用取水設備損傷後のシナリオ
第5 シビアアクシデント対策の不可能性
1 シビアアクシデント対策
2 第7回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム資料
3 外部電源喪失+取水口破損の場合の問題点
4 取水口から取水できない場合の関電の対策
第6 結論
1 結論1-炉心損傷の具体的危険
2 結論2-新規制基準の瑕疵
※このサイトでは下記書証データ(PDFファイル)は保存していませんので、原告団の事務局の方にお問い合わせください。
●証拠説明書 甲第240~254号証[248 KB](第18準備書面関係)
2016年(平成28年)3月15日
意見陳述
2016年3月15日
氏名 林 森 一
私は、京都市左京区久多中の町253番地に生家があります。私は、京都市北区紫野に居住していますが、生家には週に1から2回程度通っており、5年前から久多老人クラブ役員、3年前から町会長と京都市政協力委員久多自治振興会役員、京都市の福祉施設久多いきいきセンター運営委員などを兼任しています。またこの間京都市・左京区の区役所・消防署・警察署など共同で実施された全町・全住民参加の防災・避難訓練に参加しました。月1回開催される自治振興会役員会、町内会、区民行事、町の伝統行事、いきいきセンター、老人クラブの会議と行事、にも参加しています。昭和12年生まれです。去る2月24日に79歳になりました。今年は雪が少なく屋根雪降ろしは1回だけで助かりましたが雪解け水が少なくなりますので春からの琵琶湖の渇水が気になっております。久多は私の重要な生活の一部です。本日は、久多で生活を送る者として発言をします。
福井県若狭湾岸に13基の原子力発電所が存在します。なかでも私が町会長をしている左京区久多中の町は、大飯原発の30km圏内にあります。
5年前の3・11福島第1原発の事故を目の当たりにしてこの5年間の体験と思いを裁判官にそして被告席の皆さんに聞いていただきたいと思います。
京都市の左京区久多は60世帯90人の高齢化、過疎化の進む田舎町です。同じく左京区の花背の広河原と右京区京北町黒田と共に大飯原発の30㎞圏内になっております。さる2月23日京都府北中部の芦生の森や八丁平湿原を含む「京都丹波高原国定公園」の新しい指定が国に答申されました。この指定区域は京都市・南丹市・綾部市と京丹波町にまたがる約6万9千ヘクタールにおよび由良川、桂川、鴨川、安曇川の支流を網羅しています。久多の自治振興会でも公園指定を期待していました。
京都府の「森の京都」の構想3市1町の関係者もおおいに歓迎されていることだと思います。ただしこの地域はこの間、再稼働された高浜原発と大飯原発の30㎞圏・50㎞圏にすっぽり入ってしまいます。
【その1】
この5年の間に2回、左京区役所・下鴨警察署・左京消防署・久多の関係団体をあげての避難訓練を実施しました。避難訓練の結果、私の不安は増大しました。
5つの町内住人全てに避難の連絡・車での避難所集合が100%出来るのか、出来たとしてそこから先の避難移動はどうなるのか等の質問に対しては、京都市から迎えに来てくれると説明がなされました。
安曇川の支流である久多川、針畑川沿いに京都府道781号麻生古屋梅の木線を通り滋賀国道で避難させて頂くことになります。迎えの車が避難所の久多いきいきセンターに到着するには渋滞が無かったとしても、1時間以上かかってしまいます。何処の車で誰が運転して来てくれるのでしょうか。京都府道781号麻生古屋梅の木線は軽自動車でも離合が困難なところが何ヶ所もあります。冬は積雪もあり除雪がされていなければどうすることもできません。住人以外にも魚釣り、登山・ドライブ・山菜取り・キャンプなどのために来ている人はどうするのでしょうか。最低でもサイレンなどで全ての人に放射能からの避難を知らせないといけないのではないのでしょうか。キャンプ場で遊んでいる子供たちの姿を思い浮かべて放射性物質の被害から子どもたちを守るにはどうしたらいいのかと考えてしまいます。
左京区久多は、山の中にあり、京都市内へ行く道路は限られています。仮に、地震などにより、道路を通ることが出来なくなった場合、避難は不可能ですし、京都市から迎えに来ることなど出来ません。
【その2】
放射能線量を常時監視しモニタリングする測定器が設置されました。京都府内の30㎞圏内31ケ所と聞いています。30㎞圏外にある15ヶ所ある線量計は一時移転基準の20シーベルトは測定できないと新聞に書かれていました。国はPEEDI(スピーディー)データーを使わず、計測データーの濃度があがった時点で避難勧告を出すということになっていると理解しています。私たち久多の住民は「汚染される前に避難したい」と考えています。国には、迅速に避難勧告を出していただきたいと思います。
【その3】
12才の時(1948年6年28日)に福井地震がありました。この日私はスモモの木に登っていましたが、木々の枝がシュワシュワと大きく縦揺れして驚いてスモモの木にしがみつきました。近くの畠にいた母親が慌てて見に来ました。後に福井でマグネチュード7.1の地震があり死者3769人・負傷者22203人全壊家屋36184戸の大きな地震だったことを知りました。大飯原発は熊川断層の上にあると知らされると本当に驚いてしまいます。あわせて火山の爆発などによって全国の原発への影響と事故についても同じことが言えると思います。
【その4】
水の問題です。国定公園に指定される3市1町の四つの川の支流の広大な山々と川と琵琶湖の水が汚染されたらどうなるのでしょうか。
嘉田由紀子前滋賀県知事は、2月17日付京都新聞で「琵琶湖が汚染されたら滋賀・京都・大阪・兵庫にまたがって1450万人の命の水源である琵琶湖の価値保全に責任がある知事として若狭湾岸に集中立地する原発の万一の事故に格別の関心を示さざるをえなかった。とのべて情報共有、避難計画での交通上の実効性について頭を痛めた。6万人近く、196集落の高島市と長浜市の住民を短時間で非汚染地域に誘導避難できるか、自家用車の避難は渋滞をもたらすので500台でのバス避難を計画した。最も悩ましいのが運転手の確保だ。事業者は従業員を危険区域に送れないし、知事に運転手を派遣させる権限はない。」と言っておられます。1450万人が琵琶湖の水が飲めないことになったらどうするのでしょう。
3・11の日、東京にいる息子さんのお嫁さんとお孫さんがすぐ京都のおばあちゃんのところへ避難せよと京都へ向かい新幹線の車中で福島の原発の爆発のニュースを見たとのことでした。東京へ戻られた後も1年以上もお孫さんに牛乳を送り続けておられました。
【その5】
避難受入れの自治体の問題です。京都市は舞鶴市民65000人の受け入れ責任がありますがどんな計画ができているのでしょうか。私たちの避難を受けてくださる施設は何処になるでしょうか。安定ヨウ素剤の用意は、食料や水はと考えますが、その前に60キロの京都が避難の対象になってしまったらと思うと胸が苦しくなります。
【その6】
原発事業者の責任の問題です。東京電力の元会長ら3人の強制起訴が決まりました。新聞には3人は津波で全電源停止になるとは聞いていなかった。知らなかったと無罪を主張するだろうと書いていますが信じられません。そんな会社に原発を管理運営する資格があるのでしょうか。この間関西電力の高浜原発の水漏れ、原子炉の自動停止なども原因を調査しているとして万一の時緊急対応を負わされている自治体に何時間も知らせない、なにも報告しない隠蔽と無責任体質はどうしても納得できません。
昨年8月6日の広島被爆70周年の平和記念式典では広島で被爆し、この1年に死亡が確認された死没者は5359人となり、あわせて29万7684人となった。8月19日の長崎では死没者3373人、昨年までの死没者とあわせて16万8767人となりました。2つの原爆で被爆し被爆者健康手帳を持つ被爆者は18万3519人となり平均80歳を超えました。被爆者はいまなお続く原爆の後遺症に苦しみながらも原爆体験の継承、核兵器廃絶への歩みを続けています。日本国民は核兵器も原発も無くしてほしいと願っています。
使用済み核燃料の問題を真剣に考えず対策もないまま再稼働ばかり追及している電力会社の無責任さを強く批判します。その運転をさしとめて頂くよう訴えます。
以上