裁判資料」カテゴリーアーカイブ

◆原告第35準備書面[2]
第1 はじめに

原告第35準備書面
 ―被告主張の地域特性に根拠がないことについて― 目次

第1 はじめに

被告関電は、地震動の想定に地域特性の把握が重要であるとして、「地震動に影響を与える特性である、(1)震源特性、(2)伝播特性、(3)地盤の増幅特性(サイト特性)が重要な考慮要素となる。」「特定の地点における地震動を想定するには地域性の考慮が不可欠」である(関西電力準備書面(3)[17 MB]17~18頁)と主張している。

関西電力準備書面(3)[17 MB] 16頁 【図省略】

そして、大飯原発の基準地震動も地域特性を考慮して策定したとして「最新の地震動評価手法(「震源特性」と地下構造による地震波の「伝播特性」及び「地盤の増幅特性(サイト特性)」を、地域性を踏まえて詳細に考慮する地震動評価手法)を用いて、検討用地震の地震動評価を行なっている(「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の評価)。さらに「震源を特定せずに策定する地震動」も評価した上で、本件発電所の基準地震動Ss-1~Ss-19を策定している。したがって、本件発電所敷地に基準地震動を越える地震動が到来することはまず考えられないところである。」(同上[17 MB]159頁)と主張している。

これに対して原告らは、基準地震動を超える地震の発生する危険性があると批判している。過去に各地の原発で基準地震動を越える地震が繰り返し起きており、それは基準地震動が「平均像」に基づいて策定されているからだと指摘している。被告関電は、基準地震動が「平均像」に基づいて策定されていることを認めながら、大飯原発の地域特性が十分に把握できており、その地域特性に照らせば、基準地震動を越える地震発生の可能性を否定できると主張している。このように地域特性は、被告関電の地震動に関する主張の柱に位置付けられている。

ところが、被告関電は、地域特性のうち、(1)震源特性と(2)伝播特性については、具体的な主張立証を何らしていない。(3)地盤の増幅特性(サイト特性)については、「大飯発電所の基準地震動について(平成27年1月)」(丙28)を提出し、地下構造の調査の結果、敷地浅部には硬質の岩盤が広がっていること、それ以深においても地下構造には特異な構造は認められなかったと主張をしている。しかし、基準地震動が小さくなる方向で、地盤データを曲げて整理し、隠蔽し、地盤のモデル化がなされている。以下、意見書「大飯発電所の基準地震動の策定における問題点 ―地盤の速度構造(地盤モデル)について―」(甲357、赤松純平)に拠り、被告関電の地域特性論を批判する。

◆原告第35準備書面[1]
 ―被告主張の地域特性に根拠がないことについて―
目次

原告第35準備書面
―被告主張の地域特性に根拠がないことについて―

原告第35準備書面[1 MB]

2017年(平成29年)4月28日

目次

第1 はじめに

第2 丙28の地下構造の調査・評価について
1 はじめに
2 PS検層
3 試掘坑弾性波探査
4 反射法地震探査
5 微動アレイ探査と地震波干渉法
6 減衰定数
7 不確かさの扱いについて

第3 震源特性

第4 伝播特性

第5 まとめ

◆原告第34準備書面[5]
4 まとめ

原告第34準備書面
―「断層」とは何か― 目次

4 まとめ

2011年3月11日の東日本大震災とその後の福島第一原発の事故では「想定外」が連呼されたことは記憶に新しいが、この20年ほどの間、日本で発生している地震も、地震により原発が受けた地震動も、繰り返し「想定外」が発生している。

そして、本書面で述べた「想定外」、すなわち、未知の活断層や既存の活断層の延長線での地震の発生、断層の連動、事前に予測できない規模の地震動の発生などは、大飯原発についてもその可能性があることがそのまま当てはまる。

そして、このように短期間で「想定外」を繰り返しているのに、本質的に原発を稼動させるための基準である、現在の「新」規制基準であれば原発の安全性を担保できる、と考えるのは、地震に関する科学の発展状況を大きく見誤ったものといわざるを得ないだろう。

関西電力や被告国はこれまでも、そしてこれからも、科学的らしさを装った立証を行うが、そもそも、現在の地震に関する科学の到達水準は「想定外」を常に繰り返している段階のものであることを大前提にしなければならない。

とくに、被告関電や被告国が地震動を増幅させる要因と主張する「地盤特性」「地域特性」に関する議論は、少なくとも原発に関する限り常に後付けであり、そのような特性が事前に発見されて実際に発生した地震で実証されたことはないし、そのような「特性」自体について、すべて解明されたわけでもないことは極めて重要である。

以上

◆原告第34準備書面[4]
3 原発近傍で起きた「想定外」の地震の典型例としての2007年中越沖地震

原告第34準備書面
―「断層」とは何か― 目次

3 原発近傍で起きた「想定外」の地震の典型例としての2007年中越沖地震

 (1)地震の概要

2007(平成19)年7月16日、新潟県中越沖(震央は北緯37度33.4分、東経138度36.5分とされる)、深さ約17km で、マグニチュード6.8の地震が発生した。この地震により新潟県長岡市、柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町で最大震度6強を観測し、震源地に近い長岡市、出雲崎町、刈羽村をはじめとして、多くの市町村が被害を受けた。新潟県によると死者は15人、重軽傷者は2345人にのぼる。
震央から東京電力柏崎刈羽原子力発電所はおおよそ14~16km(構内が広いため)の距離にある。

 (2)事前に東京電力が震源海域を調査していたのに地震を予測できなかったこと

東京電力は、地震が発生したとされる海域を事前に調査したとされており、地震の4年前の2003(平成15)年には、当時の原子力安全・保安院の指示に基づき、通称「15年報告」と呼ばれる報告文書を提出していた、と東京電力は主張している。

ここでは柏崎の沖合に最大20kmの断層が存在する「可能性がある」とされ、評価を行ったところ、「全ての周期帯で、重要設備の設計に用いる基準地震動S2 を余裕を持って下まわるものであったことから、安全上の影響ないと判断した」とされた、と東京電力は地震後の2007(平成19)年に作成した別文書で述べている(甲356)。
なお、『[新編]日本の活断層』(1991年 東京大学出版会)では、震源域を含む「45長岡」の図において、中越沖は全くの空白となっている。

(図2:『[新編]日本の活断層』45 長岡)【図省略】

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 (3)東京電力が地震前に保安院に提出した報告書が紛失していること

原告第33準備書面で指摘した通り、今日、被告国は行政文書である「15年報告」を紛失したとして開き直っており、東京電力の報告が本当にあったのかすら疑わしい。

いずれにせよ、断層は認識されず、仮にされていたとしても、「安全上の影響ないと判断」されていたのである。

 (4)実際の地震でも地震断層は発見されなかったこと

新潟県中越沖地震の後、2008(平成20)年1月11日に政府の「地震調査研究本部」がまとめた「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の評価(主に断層面に関する評価)」(甲352)では、

「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(以下、新潟県中越沖地震)は、大局的には南東傾斜(海から陸に向かって深くなる傾斜)の逆断層運動により発生した。また、震源域北東部では北西傾斜(陸から海に向かって深くなる傾斜)の断層も活動したと考えられる。今回の地震に伴う、海底でのずれは確認できなかった。しかし、余震分布から推定される南東傾斜の断層面の浅部延長は、既知の活断層に連続している可能性がある。」

(下線および傍点【Webでは太字で掲示】は原告代理人が付した)などとした。

結局、この地震については、地震海域で海底の地震断層は発見されず、震源断層のモデル化すら「大局的」にしかできなかった。また、既知の断層と震源断層の関係も特定できなかった。

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 (5)柏崎刈羽原発の甚大な被害

この地震が発生したとき、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は2号機、3号機、4号機、7号機が稼働中であったが、柏崎刈羽原発は、想定を大きく上回る地震動に見舞われた。

※東京電力「柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況」より 【表省略】

※新潟県ホームページ「想定外の揺れに襲われた柏崎刈羽原子力発電所」(甲354)【表省略】

「解放基盤表面」での地震動は、1号機では基準地震動S2の450ガルを大幅に上回る最大1699ガルと推定され、2号機は1011ガル、3号機は1113ガル、4号機は1478ガルと、基準地震動S2を大幅に上回った。本訴訟の訴状36頁で「既往最大」との関係で述べた「1699ガル」とはこの数値が根拠となっている

1~4号機で観測された加速度も、設計値との関係で、水平方向で2.5倍から3.6倍、鉛直方向で1.2倍から1.7倍、上回った。

この地震により、柏崎刈羽原発は甚大な被害を受けた。判明しているだけで、3号機脇の変圧器で火災発生、6号機原子炉建屋天井クレーン継ぎ手破損、6号機・7号機での放射能漏れ、地震直後に緊急挿入された7号機の制御棒1本が事故後に引き抜けなかったこと、使用済み燃料プールの溢水などの事故が起きた。

以下に、旧原子力安全・保安院が撮影したものを中心にいくつかの写真を示す(甲353)。

<写真9 3号機タービン建て屋脇の変圧器の火災の後 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真10 3号機の建屋脇の地盤の沈下 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真11 3号機の排気塔に続く排気ダクトのずれ 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真12 2号機の主変圧器の基礎ボルトが完全に破断している状況 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真13 2号機の主変圧器の基礎地盤が沈下している状況 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真14 2号機の排気塔に続く排気ダクトずれ 原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真15 2号機排気塔基礎地盤の沈下原子力・安全保安院撮影>【省略】

<写真16 2号機原子炉建屋の基礎脇地盤の沈下 武本和幸氏撮影>【省略】

<写真17 2号機海水ポンプの基礎地盤沈下 武本和幸氏撮影>【省略】

 (6)2~4号機について設備健全性の報告書が提出されていないこと

この地震の後、1号機及び5~7号機については、「新潟県中越沖地震後の設備健全性に係るプラント全体の機能試験・評価報告書」が旧原子力安全・保安院に提出された。

しかし、2号機、3号機、4号機については、地震から10年経った現在でも、東京電力から国に対して、設備健全性に関する報告書すら提出を確認できないのである(甲354)。

<東京電力のホームページ 2~4号機について報告書の掲載がない>【図省略】

この地震による柏崎刈羽原発の被害状況が全て明らかになっているとは言い難いのが現状であり、幸いにして過酷事故は免れたが、この地震により、柏崎刈羽原発が過酷事故に陥る危険があったことは否定できないだろう。

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 (7)地震が発生し甚大な被害が出てから原因探しが始まったこと

東京電力は、2007年新潟県中越沖地震のあと、すでに述べた「15年報告」を公表しなかったことについて不合理きわまりない弁解を開始し、同時に、基準地震動や各号機の設計値を大きく超える地震動が発生し、特に1~4号機でその傾向が顕著だったことについて、後付けの調査を始めた。

その結果、

  1. この地震の震源が同程度の規模の地震の1.5倍の地震動を発生させる特性を持っていること
  2. 4~6kmの深部地盤の傾きにより地震波が2倍程度増幅したこと
  3. 発電所の敷地地盤の地下2kmくらいのところに古い褶曲構造があり1~4号機側の地震動がさらに2倍程度強まった

などというもっともらしい理由を後から探し出した。

そして、それにも関わらず、2011年3月11日の東日本大震災に際して東京電力はなすすべがなく、福島第一原子力発電所が過酷事故を引き起こしたのである。ここでも、東京電力は、過酷事故に至る原因を、事前に予測しなかったのである。

 (8)小括

この2007年の新潟県中越沖地震については以下のことが言える。

  • 活断層が認識されていなかった海底で地震が発生したこと
  • 地震後も海底の地震断層が発見されなかったこと
  • 営業中の原子力発電所の構内で想定を遙かに上回る地震動が発生したことについて事前に原因を予測できなかったこと
  • その原因を後付けで探し出したこと
  • マグニチュード6クラスの地震でも原発の重要設備に深刻な損害が生じた可能性があり、10年が経過した現在も設備健全性に関する報告書が提出されていない原子炉が3つあること

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◆原告第34準備書面[3]
2 「想定外」の地震の典型例としての1995年兵庫県南部地震(神戸大震災)

原告第34準備書面
―「断層」とは何か― 目次

2 「想定外」の地震の典型例としての1995年兵庫県南部地震(神戸大震災)

 (1)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の概要

1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は、淡路島と神戸市の間にある明石海峡付近の深さ約14kmまたは約18kmを震源とするマグニチュード7.2の地震であった(甲344「兵庫県南部地震の概要」)。地震を引き起こした断層の長さは約50kmとされている。死者6434名を出し、神戸市や淡路島を中心にして大きな被害が出た震災として記憶されている。

 (2)発見されている地震断層の一部(甲345参照)

この「約50km」とされる震源断層は、全体として、「右横ずれ断層」とされる。

このうち、我が国の義務教育で身につける程度の知識でそれと認識できる断層(地表地震断層)が現れているのは、淡路島の北部にある「野島断層」約10kmである。

現在、野島断層の一部は「北淡震災記念公園」として保存されており、見学することも可能である。

写真1~4は、北淡震災記念公園の北西側から南西側を順に、すべて南東方向に向けて撮影した写真である。いずれも「断層線に沿って手前側に立った場合、向こう側が右側にずれた」、右横ずれ断層を見てとることができる(各写真の赤矢印がずれの方向性とおおよその長さを示している)。横ずれの幅はメモリアルハウスの南壁(同公園の南西の端)では、1.2mにも達する。

<写真1 北淡震災記念公園北東側>【省略】
※U字溝がZ字に折れ曲がっており右横ずれを見てとれる

<写真2 北淡震災記念公園 写真1の南西側>【省略】
※青い丸の点、橙の丸の点が一致していたところ右横ずれを起こしていることが分かる

<写真3 写真2の南西側にあるメモリアルハウス北壁 写真4 同南壁付近>【省略】※写真3は塀がZ字に折れ曲がっており右横ずれを見てとれる
※写真4は花壇のレンガの位置がずれており「120cm」の右横ずれを見てとれる

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 (3)神戸市側では断層が地表に現れておらず将来も発見できないとされていること(甲346参照)

しかし、兵庫県南部地震において、このような右横ずれ断層が発見されたのは淡路島の野島断層だけであり、「神戸側では国土地理院等の調査でも、地表に地震断層は確認され」なかった(甲  印字8頁の4項)。それのみならず、神戸側の「六甲断層系」については、「実際、今回の地震では神戸側に地表に地震断層が現れなかったので、未来の人間が六甲断層系でトレンチ調査をしても、1995年の地震は認識されず、繰り返し周期を長く見積もることになるだろう。」(甲  印字13頁6項)とされる。

地震断層を発見できない、ということは、将来の人類が既知の「活断層」から1995年の兵庫県南部地震の規模を推計する際にも誤りが生じる、ということを意味する。

 (4)神戸市側でも建物に大きな被害が出たこと

しかし、阪神・淡路大震災で多くの死者が出たのは大都市であった神戸側である。神戸市内では建物の倒壊が多く発生し、これが犠牲者を増やす原因となった。

倒壊したのは民家ばかりではない。神戸市の中心街である三宮周辺のビルにも大きな被害が出た。

例えば、神戸市役所の2号館(神戸市中央区加納町6-5)は、地震動により6階部分が押しつぶされた(左)ため、6階より上の部分を取り除いた上で今日まで使用継続されている(右)。

<写真5 神戸市役所2号館>1995年1月18日(左) 2016年10月30日(右)

このように中層階が押しつぶされたようになった建物は神戸市役所だけではない。フラワーロードを挟んで、神戸市役所2号館のほぼ向かい(北東側)にあった明治生命ビル(神戸市中央区磯上通8-3-5)も中層階が座屈するように潰れ(左)、立て替えを余儀なくされた(右)。

<写真6 明治生命ビル(建て替え後の現明治安田生命ビル)>
1995年1月18日(左) 2016年10月30日(右)【省略】

フラワーロード沿いにある、県や市が出資する複合施設である「神戸国際会館」(神戸市中央区御幸通8-1-6)も同じような形で押しつぶされ(左)、立替を余儀なくされた(右)。

<写真7 神戸国際会館>
1995年1月18日(左) 2016年10月30日(右)【省略】

JR三宮駅の前にあるそごう神戸店(神戸市中央区小野柄通8-1-8)は建物の中程に亀裂が入り(左)、その部分のみ、立替をして使用している(右)。

<写真8そごう神戸店>
1995年2月3日(左) 2016年10月30日(右)【省略】

このように、兵庫県南部地震では、地表に地震断層が現れず、将来にわたって発見することができないとされる神戸側で、公共施設や大企業のビルなどが倒壊する大きな地震動が発生したのである。このような性質をもつ地震動の発生はその時点では「想定外」だったのである。一方で、三宮周辺でも倒壊しなかったビルも沢山あり、その差を明確に説明できるわけではない。

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 (5)断層の連動自体が想定されていなかったこと

兵庫県南部地震は、神戸側において地震断層を発見できないだけでなく、そもそも、野島断層と神戸側の六甲断層系が連動して大きな地震を引き起こすこと自体が全く想定されていなかった。

下記は、被告関西電力も引用することがある活断層研究会編『[新編]日本の活断層』(1991年 東京大学出版会)のうち、淡路島、神戸市周辺の地図をつなぎ合わせ、合成したものであるが、兵庫県南部地震のわずか4年前に出版されたこの本では、図1の淡路島の北端にある赤数字「1」が示す野島断層は淡路島の北端で終了しており、神戸側には全く延長されていない。神戸側の断層帯と野島断層が連動して動く可能性に関する知見も見られなかった。むしろ、その時点では、神戸から兵庫県方面に北西にある番号「6」に英小文字を付した「山崎断層系」が警戒されていた。

この点、同書(1991年段階)では、そもそも「六甲断層系」という言葉すらなく[1]、六甲断層系と淡路島の野島断層が連動して起きた兵庫県南部地震に関して言えば全く「想定外」の地震だったのである。

(図1:『[新編]日本の活断層』76・77・80・81図の合成図)【図省略】

[1] 「兵庫県南部地震の概要」(国土地理院時報1995 No83 6頁)では、「六甲断層系」を諏訪山断層、須磨断層、甲陽断層等からなる、と定義した上、活断層研究会編『[新編]日本の活断層』(1991年 東京大学出版会)437頁を引用するが、同頁は同書の本文最終ページを示しているだけであり、管見の限り同書の該当箇所「76 京都及大阪」(272頁以下)に「六甲断層系」という言葉は見当たらない。Ciniiで「六甲断層系」というキーワードで検索しても兵庫県南部地震以前の論文は該当しない。なお、今日、淡路島と神戸側の断層帯をあわせて「六甲・淡路島断層帯」と把握されるようになった。

 (6)小括

以上からは以下のことが言える。

  • 兵庫県南部地震では事前に想定されていない断層の連動が起きたこと
  • 同地震では約50kmの断層が動いたところ人類が震源断層のうち地表地震断層を確認できたのは淡路島の野島断層10kmの区間だけであること
  • 同地震の神戸側の地震断層は将来にわたって発見できないこと
  • 同地震の断層を発見できなかった区間(神戸側)でも大きな地震動が発生し、甚大な被害が発生したこと

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◆原告第34準備書面[2]
1 「断層」「活断層」「震源断層」「地表地震断層」

原告第34準備書面
―「断層」とは何か― 目次

本書面は1995年の兵庫県南部地震、また、東京電力柏崎刈羽原子力発電所が大きな被害を被った2007年の新潟県中越沖地震を例に、断層とはどのようなものなのか基本的な事項を述べ、あわせて、地震に関する科学の到達点の不確かさを述べるものである。

 1 「断層」「活断層」「震源断層」「地表地震断層」(甲343参照)

地震は大きく分けて海溝型地震と内陸型地震があるとされ、日本国の場合、太平洋岸では海溝型地震が問題になるが、日本海側では主に内陸型地震が問題とされる。

海溝型地震、プレート内地震、内陸型地震の模式図 国土地理院HPより【図省略】

内陸のプレート内でも様々な力が加わっており、それにより生じた割れ目が「断層」であり、その際に発生するのが地震である。

また地下深部で地震を発生させた断層を「震源断層」、地震時に断層のずれが地表まで到達して地表にずれが生じたものを「地表地震断層」などという。そして「断層」のうち、特に数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」と呼ぶ(第四紀(260万年前以後)中に活動した証拠のある断層すべてを「活断層」と呼ぶこともある)。地下に隠れていて地表に現れていない「活断層」もたくさんあるとされる。

このように「活断層」の定義からして一定しないし、人類が発見できていない活断層や、活動性がないと考えたものが実は活動性をもっていることがあとから判明することもある。そもそも未発見の断層を「活断層」の定義に含むのであれば、「断層がない場所でも大地震は発生し得る」と言っているに等しい。

地震断層と震源断層 国土地理院HPより【図省略】

我々は、新聞記事や、様々なテキストの類で、地図の上に赤い線を引かれると、それが「断層」であり、かつ、将来発生する地震の震源、周期、規模を規定するものと思いがちであるが、必ずしもそうではなく、例外に満ちあふれていることを肝に銘じなければならない。

◆原告第34準備書面[1]
―「断層」とは何か―
目次

原告第34準備書面
―「断層」とは何か―

原告第34準備書面[770 KB]

2017年(平成29年)4月28日

目次

1 「断層」「活断層」「震源断層」「地表地震断層」

2 「想定外」の地震の典型例としての1995年兵庫県南部地震(神戸大震災)
(1)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の概要
(2)発見されている地震断層の一部
(3)神戸市側では断層が地表に現れておらず将来も発見できないとされていること
(4)神戸市側でも建物に大きな被害が出たこと
(5)断層の連動自体が想定されていなかったこと
(6)小括

3 原発近傍で起きた「想定外」の地震の典型例としての2007年中越沖地震
(1)地震の概要
(2)事前に東京電力が震源海域を調査していたのに地震を予測できなかったこと
(3)東京電力が地震前に保安院に提出した報告書が紛失していること
(4)実際の地震でも地震断層は発見されなかったこと
(5)柏崎刈羽原発の甚大な被害
(6)2~4号機について設備健全性の報告書が提出されていないこと
(7)地震が発生し甚大な被害が出てから原因探しが始まったこと
(8)小括

3 まとめ

◆第33準備書面関係 原告提出の書証

証拠説明書 甲第341~342号証[93 KB](第33準備書面関係)
2017年4月10日

◆原告第33準備書面
行政文書紛失にかかる国に対する求釈明

原告第33準備書面[364 KB]

2017年(平成29年)4月10日

被告国に対する求釈明

原告らは、次回(5月9日)の口頭弁論において、活断層や活断層から発生する地震動を事前に想定できないことについて証拠とともに弁論する予定であるが、この点について、想定外の巨大な地震動が発生し、原発が大きく損壊し、いくつかの原子炉については、いまだにその修理が終わったという報告すらなされていない典型事例として「2007年中越沖地震」がある。

この地震の震源域については、地震前の2003(平成15)年6月、東京電力株式会社が旧原子力安全保安院の指示により作成し、原子力安全・保安院に提出した、柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の評価に関する報告書(いわゆる「15年報告」)が存在する。

「15年報告」については、東京電力株式会社が2007年中越沖地震の後の平成19年12月21目付で作成し、原子力安全・保安院に提出したと思われる「平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の再評価に関する調査結果について」で、その存在と旧原子力安全・保安院への提出が明記されている。引用すると同文書には以下のように書いてある。

(2)平成14年7月の原子力安全・保安院による海域活断層再評価指示から中越沖地震発生(H19.7.16)まで

(1) 平成14年7月、原子力安全・保安院から、当時行われていた北海道電力株式会社泊地点における安全評価において、褶曲を考慮したことを踏まえ、電力各社においても、海域活断層再評価を実施するよう口頭にて指示があり、当社は、自社の記録の再解析、地質調査所、石油公団から開示を受けた記録に基づく再解析等を実施し、F―B断層については、褶曲構造を考慮すると、20キロメートル(従来の認識は、最大8キロメートルの断層)の長さを有する活断層の可能性があるとの再評価を行った。

しかし、F―B断層が活断層であると仮定し、発電所敷地への地震動の影響について、当時の地震動を評価する標準的な方法である「大崎スペクトル」を用いた評価を行った結果、すべての周期帯において、重要な設備の設計に用いる基準地震動S2を、余裕を持って下回るものであったことから、安全上の影響はないと判断した。

当社は、以上の調査結果について、平成15年6月、原子力安全・保安院に書類で報告(以下、この報告を「15年報告」という)したが、新潟県、柏崎市、刈羽村、および地域の皆さまへの説明、さらにはプレスへの公表は行わなかった。

ところが、この「15年報告」について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、原子力規制委員会に情報公開請求したところ「取得しておらず、保有していないため。」との理由で不開示決定が出た(平成28年12月26目付原規規発第1612262号[1 MB])。

そこで、解体前の原子力安全・保安院が所属していた資源エネルギー庁に同様の情報公開請求を求めたところ「保有していないため」との理由で不開示決定が出た(平成29年2月14日 20170116公開資第1号[2 MB])。

実際に発生し、原発が大きな損害を被った地震の直前の時期に、震源海域周辺の「活断層」について、発電事業者が行った検討結果の報告文書は、原発において将来発生する地震を、人類の現在の科学において予測可能であるか、ということを推認するためには、極めて証拠価値の高い文書である。

このような、証拠価値の高い文書が、客観的には、原子力安全・保安院と、原子力規制委員会によって、証拠隠滅されたに等しい状態になっているのが現状である。

そこで、被告国に対して以下の点の釈明を求める。

1「15年報告」を政府傘下にある東京電力株式会社から再度取得する等して、本件の証拠として提出されたい。

2 原発の安全性に関して、行政機関である原子力安全・保安院が発電事業者に対して報告を求めた件について文書で提出を受けた以上、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条2項の「行政文書」に該当すると思われるが、何故紛失したのか、経緯を説明されたい。

また、いずれにせよ、上記のような資料の紛失が判明しても、公に何の発表もせずに平気でいる原子力規制委員会は、東日本大震災前の原発行政の隠ぺい体質を何ら改善しておらず、原発について適正な規制などしようもないことは付言する。

以上

◆原告第32準備書面
(既存準備書面の訂正)

2017年(平成29年)2月23日

原告第32準備書面[90 KB]

原告第29準備書面および原告第31準備書面について、以下の部分につき脱字、誤植があったので、別紙のように訂正する。

1.原告第29準備書面[1 MB]訂正箇

  1. 12頁目下から3行目
    (甲第  号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)

    (甲第301号証83頁「2、太陽光発電の爆発的普及」参照)
  2. 15頁目6項本文4行目
    の差 → 両の差

2 原告第31準備書面の訂正箇所

2頁目冒頭部分「原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では木津川市における避難計画の問題点についての主張を行う。」を削除する。

以上