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◆関電原子力事業本部(美浜町)での申入書

【2020年9月28日,関電原子力事業本部での申入書】

関西電力株式会社:
 取締役会長 榊原定征 様
 取締役社長 森本 孝 様
 原子力事業本部長 松村孝夫 様

申 入 書

 原発は、事故確率の高さ、事故被害の深刻さ、事故処理や使用済み核燃料の処分の困難さなど、現在科学技術で制御できる装置でないことを、福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。その原発が老朽化すれば、危険度が急増することは多くが指摘するところです。それでも、貴関西電力(関電と略)は、2016年、高浜発電所(高浜原発と略)1、2号機および美浜発電所(美浜原発と略)3号機の40年超え運転の認可を原子力規制委員会(規制委と略)から得て、再稼働準備を進めています。

 しかし、規制委の認可以降に、関電の原発に関連して、下記のように、認可の過程では想定されなかった、あるいは重要視されなかったトラブル、事故、不祥事が頻発しています。原発の40年超え運転が理不尽であることを示しています。

【1】関電の原発での最近のトラブルの例

(1)高浜4号機では、再稼働準備中の1昨年8月、事故時に原子炉に冷却水を送るポンプが油漏れを起こし、また、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されました。再々稼働準備中の昨年10月には、3台の蒸気発生器の伝熱管5本の外側が削れて管厚が40~60%減少していることが見つかりました。蒸気発生器伝熱管の減肉・損傷は、高浜3号機でも、本年2月に見つかっています。関電は、伝熱管の減肉や損傷は、混入した異物が、配管を削ったためとしました。

(2)大飯3号機では、定期検査中の去る9月7日、原子炉と蒸気発生器をつなぐ1次系配管で深さ約4.3 mm、長さ約6.7 cmの傷があることが明らかになりました。

 上記のトラブルの中でも蒸気発生器伝熱管などの1次系配管の損傷はとくに深刻です。高温・高圧水が流れる1次系配管が完全に破断すれば、原子炉水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があるからです。実際、1991年に美浜原発2号機で伝熱管破断が起き、緊急炉心冷却装置が作動しています。

 損傷した伝熱管も多数に上ります。例えば、高浜原発3号機では、1昨年9月段階で約1万本の伝熱管中の364本が摩耗による減肉、腐食、応力腐食割れによって使用不能になり、栓がされています。

 蒸気発生器の破損は、取り替えたばかりの蒸気発生器でも発生しています。米国のサン・オノフレ原発2、3号機では、2010年、2011年に蒸気発生器を三菱重工業製の新品に取り替えましたが、2012年、両機ともに3000本以上の伝熱管に早期摩耗が発見され、2013年6月に廃炉となりました。

 このように損傷が進む蒸気発生器ですが、高浜1、2号機、美浜3号機の蒸気発生器は、更新後、約25年も経過しています。それでも、規制委はこれらの原発の運転が認可しているのです。

 蒸気発生器は、「加圧水型原発のアキレス腱」と言われるほど、トラブルが頻発する装置ですが、上記の減肉は、さらに深刻な問題を提起しています。それは、減肉の原因が、規制委の審査では想定されていない「混入した異物による損傷」であることです。「異物の混入」は、人為ミスや腐食、金属疲労によっても起こりますが、炉内での腐食や破損によって発生した固形物によっても起きます。例えば、規制委の審査では、炉内構造物を固定するバッフルフォーマーボルトの応力腐食割れによる損傷数は60年運転時点で全1088本の内の20%以下であるから安全を維持できるとしていますが、破損ボルトが異物として配管、核燃料などを損傷する可能性もあります。

 腐食、減肉、損傷が頻発する蒸気発生器を持ち、運転開始後40年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の運転などもってのほかです。

【2】原発再稼働準備工事での相次ぐ人身事故

(1)昨年9月、老朽原発・高浜1、2号機の特定重大事故対処施設建設用のトンネル内で溶接作業中の9人が一酸化炭素中毒で救急搬送されました。このトンネルには外気を取り込む送気ダクトが設置されていませんでした。今年3月、高浜原発1、2号機の敷地内にある掘削中の作業用トンネルで、協力会社社員が、後退してきたトラックにはねられて亡くなられました。社員は耳栓をし、トラックに背を向けていたと報道されています。4月には、高浜原発1号機の安全対策工事を行っていた協力会社社員が、脚立から転落し、骨盤を折る重傷を負われました。

 これらの人身事故は、老朽原発再稼働準備作業中に起こりました。老朽原発を無理矢理動かそうとして、安全な労働環境づくりを怠ったために起こった事故です。

(2)美浜3号機では、昨年9月、安全対策工事用の足場が崩れ、2人が重軽傷を負われました。本年8月には安全対策工事中の協力会社社員が足場から転落して重傷を負われました。安全帯を付けていなかったそうです。同様な事故は、大飯原発3号機でも起きています。最近の2件の事故は、2004年8月に美浜3号機で発生した2次冷却水配管の破損により5人が死亡し、6人が重傷を負われた事故の慰霊行事で、森本関電社長が「労災防止」を誓った直後に起こったものです。

【3】老朽原発運転を企む関電幹部の不祥事

 昨年9月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されたことが暴露され、今年3月には、電気料金値上げ時にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填をしていたことが公表されました。しかも、これらの不祥事に関与した関電幹部のほとんどは、原発の推進に奔走した人たちです。原発が、汚れた原発マネーによって推進されたことを示します。

 関電は、この不祥事の後、役員人事を刷新し、旧経営陣を告発していますが、真に信頼回復に努めるのであれば、不祥事の原因となった原発の稼働や再稼働準備を中止して、原発稼働の是非を再考すべきです。

【4】行き場のない使用済み核燃料

 関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、候補地を2018年内に決定すると明言していましたが、この約束を反故にしたまま今に至っています。それでも、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続し、老朽原発の運転まで進めようとしています。人々の安全や安心を顧みない身勝手極まりない関電の姿勢の表れです。許されるものではありません。

 上記【1】~【4】のトラブル、事故、不祥事、約束違反は、原発の安全にとって看過できないものであり、関電が原発を安全に運転できる資質、能力、体制を持ち合わせていないことを物語る証左です。老朽原発の運転などもっての他です。

 なお、昨日(9月27日)の報道は、世界全体の再生可能エネルギーによる発電量は原発を上回ったことを明らかにしています。発電効率も上がり、蓄電法の改良も進み、省エネ機器も進歩してきた現在、危険極まりない原発を動かそうとする姿勢は、時代遅れで、電力会社の私利私欲でしかありません。

 以上の視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、貴関西電力株式会社に、以下を申し入れます。

【1】危険極まりない老朽原発・高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の再稼働準備を即時中止し、これらの原発の廃炉を決定して下さい。

【2】原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。全ての原発の停止と、安全な廃炉を検討してください。

【3】使用済み核燃料の安全な保管地と安全な処理・保管法を早急に提示してください。
なお、貴社が、私たちの再三の危険性指摘を無視して原発を稼働して、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます。

2020年9月28日

老朽原発うごかすな!実行委員会
9.28行動参加者一同
(連絡先;木原壯林 090-1965-7102)

◆京都府下の避難計画の非現実性

私たち原告の主張:ハイライト
2020/9/8 の第26回口頭弁論=裁判長の交代にともなう弁論更新の要旨「第3 6 京都府下の避難計画の非現実性」より…こちら

◆2018年3月に大飯原発3号機、5月には4号機がそれぞれ再稼働しました。再稼働に先立つ2017年10月、広域避難計画である「大飯地域の緊急時対応」が取りまとめられました。この問題点については、すでに原告第27、48準備書面などですでに主張したとおりですが、更新にあたり、改めてその問題点について申し上げます。

◆なお、この計画は本年7月に一部改定されています。この改定内容の問題点は改めて準備書面で主張いたしますが、基本的な問題点については何ら解決していません。むしろ新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、より問題は深刻となっていると言わざるを得ず、到底、住民の安全を守れるものではありません。

◆そもそも、この避難計画は、原発から5キロ圏内をPAZ、約30キロ圏内をUPZと定め、その範囲に含まれる自治体、その中に居住する住民のみが対象とされています。

◆しかしながら、そもそも原発で重大事故が発生し、放射性物質が放出された場合、その被害は、決して同心円状に広がるものでもなければ、ましてや30キロメートルの範囲にとどまるようなものではありません。このことは、福島第一原発事故の被害状況を見れば明らかです。このこと一つをとっても、この避難計画が住民の健康や安全を守ることのできないものだと言わなければなりません。

◆避難計画では、大飯原発で重大事故が発生した場合、UPZ圏内の住民に対しては、避難指示が出るまでの間、屋内退避が指示されます。しかしながら、原発が損傷するほどの大きな地震が起き、目の前で原発事故が進行している場面で、住民に対して屋内退避をさせ続けることが現実問題できるのでしょうか。福島第一原発事故の際も、事故が報じられた後、多くの住民が自家用車で避難を開始しています。原発事故、そして放射性物質による被害を考えれば当然です。屋内退避指示は、放射性物質が来るのを家の中で待てというようなものです。

◆そして、本年の改定で、「屋内退避を行う場合には、放射性物質による被ばくを避けることを優先して屋内退避を実施し、換気については、屋内退避の指示が出されている間は原則行わない」とされました。これは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染防止との関係です。感染対策において、政府はあれだけ「換気」を強調しながら、屋内退避の場面では換気はできないのです。このことは、新型コロナウイルスの感染防止と原発再稼働との間に深刻な矛盾を抱えていることを端的に示しています。

◆次に、避難指示が出された場合、対象となる住民は指定された避難先へバス等で避難することになります。ここでも新型コロナウイルスの感染防止との矛盾に直面します。もともとの計画は「バス1台当たり45人程度の乗車を想定」していました。満員のバスです。しかしながら感染症が流行しているときには「バス等で避難する際は、密集を避け、極力分散して避難」するものとされ、そのために「マスクを着用し、座席を十分離して着席する。追加車両の準備やピストン輸送等を実施する。」とされています。

◆もともとの計画が策定された時点で、京都府北部だけでは想定されるバスの必要台数を確保することができない。京都市内や京都府南部から原発事故の起こっている京都府北部に向けてバスを移動させなければならないという問題が指摘されていました。感染予防のため、さらにバスの台数が必要になるというのであれば、バスの台数は確保できるのでしょうか。そして、間隔を取り、感染予防対策を実施しながら避難するためには一体どれだけのバスの台数が必要になるのか、具体的な想定はなされていません。また、「感染者とは、別々の車両で避難」するともされていますが、その「別々の車両」の確保についても、具体的な手当てはされていません。

◆この避難計画においては、半島や沿岸部については船による海上を通じての避難が計画されています。舞鶴市大浦半島では、成生漁港、田井漁港等が利用する港の例として挙げられています。ここで例に挙げられている成生漁港は、2016年8月に実施された広域避難訓練において、船舶による避難訓練が予定されていながら、実際は訓練が行えなかった港です。海上保安庁の船舶による避難が計画されていながら、海上保安庁の船舶は、その大きさの関係で入港することができず、関西電力がチャーターした観光船も、悪天候により船を出すことができなかったのです。そして、この天候条件からすると、1年のうち約半分の期間は避難を行うことができないとも指摘されています。現に行われた避難訓練で具体的な問題点が指摘されたにもかかわらず、その点に応えられていない、まさに机上の避難計画だと言わざるを得ません。

◆この避難計画では、広域避難を行う場合の、避難先への移動経路が設定されています。しかしながら、国道27号線や舞鶴若狭自動車道、京都縦貫自動車道など、主要な道路が地震などで寸断された場合、その避難は極めて困難になります。

◆そして、道路が使用できなくなる状況は、決して地震に限りません。京都府北部では、冬は雪の問題もあります。2018年2月、福井県内で大規模な雪害が発生し、北陸自動車道は通行止め、国道8号線など主要国道も長時間にわたって通行できない状況となりました。国や各自治体、高速道路会社が持つ除雪能力を超えて雪が降ったのです。この点について、本年改定では「情報連絡本部を各府県の国道事務所に設置、対応」すると改定されました。しかしながら、そこで行うのはあくまで「調整」に過ぎず、そもそも除雪能力が拡充されなければ意味がありません。避難計画が、国や自治体、高速道路会社の除雪能力任せにしているのは極めて無責任な対応です。

◆原発において過酷事故が発生した場合、すべての住民を安全に避難させるなどということは到底困難なことであって、このような無理のある避難計画を策定しなければならないところに最大の問題があります。原発を稼働させず、速やかに廃炉にしていくことこそが住民の安全を確保する唯一の道です。大飯原発を含めあらゆる原発の運転をただちに中止することを求めます。

◆口頭弁論(2020/9/8更新弁論)弁論要旨 全体

2020年9月8日

はじめに

 本日の更新弁論は、原告らが本訴訟において特に強調している三つの柱に基づいて行います。三つの柱とは、巨大地震発生の現実的危険性、大飯原発敷地の地盤の脆弱性、住民の避難計画の不備と避難の困難性の三つです。
 今日は、第一の柱について、原告団長の京都大学名誉教授の竹本修三氏にお話を頂きます。次に第2の点について、弁護団が弁論を行います。そして、第3の点について、原告の福島敦子氏にお話を頂き、また、弁護団が弁論を行います。

第1 巨大地震発生の現実的危険性
 別紙スライド参照。

第2 地盤特性についての原告ら主張の要旨
 大飯原発では、基準地震動【注1】(856ガル)超えの地震が起き、過酷事故が発生する危険があります。

【注1】地震動とは、特定の地点における地盤の揺れのことで、単位はガル(1cms²)である。基準地震動とは、原子力発電所毎に定められている耐震設計基準である。

 過去わが国では、何度も、基準地震動超えの地震が起きています【注2】。

【注2】平成17年8月16日宮城県沖地震女川原発、平成19年3月25日能登半島地震志賀原発、平成19年7月16日新潟県中越沖地震柏崎刈羽原発、平成23年3月11日東北地方太平洋沖地震福島第一原発、平成23年3月11日同上女川原発

 それは、基準地震動が過去の多数の地震の平均像をもとに策定されているからです。
 過去に基準地震動超えの地震が繰り返し起きていることと、基準地震動が平均像をもとに策定されている事実に、争いはありません。
 しかし、関電は、基準地震動超えの地震は起きないと主張しています。
 関電は、それを地域特性で説明しています。大飯原発の地盤には均質で堅硬な岩盤が広く分布している、地下に特異な構造は認められない、だから平均像を超える地震動は起きないのだと。
 このように、地域特性は関電の主張の柱に位置付けられています。本当に関電が言うとおりの地盤特性が認められるのか、本件で重要な争点となっています。
 関電は、地盤特性に関して関電自身が行った調査結果を規制委員会に報告しています。そのいくつかから明らかになった事実を紹介します【注3】。

【注3】地震動の振幅は、震動の伝わる速さ(すなわち、伝播速度)の速いところでは小さく顕われ、遅いところで大きく顕われる。そこで、地下構造の調査では、伝播速度を明らかにすることが重要になる。尚、地震動には、S波とP波がある。S波は進行方向に垂直に振動する波動であり、大きな揺れを起こす。P波は進行方向に平行に振動する波動であり、粗密波とも呼ばれる。

 尚、ここでは地域特性のうち地盤特性についてだけ触れます【注4】。

【注4】地域特性には、震源特性、伝播特性そして地盤特性(サイト特性)がある。

 【試掘坑弾性波探査】は、原子炉敷地に横穴(試掘坑)を掘り、その中に適当な間隔で地震計を置き、別の場所で人為的に震動を起こして、伝播速度を測定する方法です。地震計を震計を置き、別の場所で人為的に震動を起こして、伝播速度を測定する方法です。地震計を並べた横穴から離れた位置で震動を与える方法は、特にその形状からファン・シューティン並べた横穴から離れた位置で震動を与える方法は、特にその形状からファン・シューティングと呼ばれています。
 被告関電は、試掘坑弾性波探査調査結果から「解放基盤【注5】のS波速度を2.2km/s」」と説明しています。

【注5】解放基盤面とは、大飯サイトの場合、基準地震動が策定される所である。(原定義を基準地震動から見ての説明)

 しかし、正確に集計すると、S波速度は2.2km/sを下回っており【注6】、過大な速度を報告し、過大な速度を報告しています。また敷地の西側から東側に向けて速度が大きく低下し、地盤を通る破砕帯部分でています。また敷地の西側から東側に向けて速度が大きく低下し、地盤を通る破砕帯部分で速度が急変し、低下していました。速度が急変し、低下していました。

【注6】全体では全体では (2.1±0.3)km/s、
4号炉近傍では、 (2.2±0.3)km/s、
3号炉近傍では、 (2.0±0.4)km/s。

 堅硬な岩盤が広く存在しているとも、特異な構造が認められないとも言えないことが明らかになりました。


 【反射法地震探査】は、地表の探査測線上に密な間隔で多数の地震計を設置し、探査測線に沿って震源車が一定の間隔で人為的に振動を起こして、その地震波が地下の地層や断層に沿って震源車が一定の間隔で人為的に振動を起こして、その地震波が地下の地層や断層によって反射してくる反射波を測定して地下構造を探査します。

 これは反射法地震探査の結果を図化したものですが、関電は、特異な構造は認められないと説明しています。

 しかし、元物理探査学会長の芦田譲京大名誉教授は、典型的な回析波が認められるとコメントしており、特異な構造が認められないとは言えないことが明らかとなりました。
 反射法地震探査は、石油探査のために開発活用され、医療分野で超音波エコー検査として応用されています。当初は2次元でしたが、1990年代には3次元探査に発展し、コストはかかりますが情報量が膨大で高精度なため地盤構造を正確に把握するため広く利用されています。以下の図は、3次元反射法地震探査による3D表示の例です。新規制基準は「最先端の調査手法」を用いるべきで、「地下構造が成層かつ均質」でない場合は「三次元」探査が適切だと定めています。
 しかし関電は三次元探査を行わずに、特異な構造は認められないと主張しています。

(▼海洋探査の例)

(▼地上探査の例)3次元探査結果

(▼地上探査の例)任意方向震度断面

 【微動アレイ観測・地震干渉法】はいずれも、地面の微動を常時観測し、その微動から周期毎の速度(位相速度)を求め、そこから地下構造(速度構期毎の速度(位相速度)を求め、そこから地下構造(速度構造)を「推定」する方法です。
 政府地震調査推進本部HPによると、この方法は、簡単かつ経済的だが、「推定」にとどまり、地盤構造の詳細までを把握できないと指摘しています。より詳しい把握には、人為的に振動を起こしてする地震波伝播速度等の調査を併せて行うことが望ましとされています。
 関電は、この微動アレイ・地震干渉法の調査結果から、本件原子炉建屋は堅硬な岩盤(Vp=p=4.64.6KKm/sm/s、、Vs=2.2Km/sVs=2.2Km/s)の上に設置されている、地下に特異な構造は認められないと)の上に設置されている、地下に特異な構造は認められないとの関電モデルを主張しています。
 しかし、この関電モデルは恣意的な解析操作によって得られたものです。
 何より関電モデルは、地震本部が併せて調査すべきと指摘している、試掘抗弾性波探査や反射法地震探査の結果に矛盾していますが、関電はその矛盾に口をつぐんでいるのです。

 以上、地盤は均質で堅硬な岩盤が広く分布しているとも、地下に特異な構造は認められないとも言えず、平均像を超える地震動が起きないとは到底言えないのです。

第3 避難計画の不備と実際の避難困難性避難計画の不備と実際の避難困難性

2 避難計画の不備避難計画の不備に関する主張の位置づけに関する主張の位置づけ

 被告らの主張は、それ自体立証されていませんが、要は現在の科学的知見に基づいて過酷事故に至る可能性が十分に低い、というもののように思われます。しかし、この考え方自体が、我々が有する現在の科学的知見を過信するものであり、また一方では、過酷事故が生じたときには「現在の知見に基づいて想定外であった」という弁解を許す構造を持っています。福島第一原発事故の際に、事前には重大な事故は起こりえないとされ、事後には一部の科学者や政府が「想定外」を繰り返したことは何度でも思い起こされなければなりません。
 この点、世界的には「深層防護」「多重防護」の考え方が最も重要な指導理念とされてきました。原告ら第1準備書面、第5準備書面18頁でこのことを書いています。具体的には、第1防護レベルが「通常運転からの逸脱の防止」、第2防護レベルが「異常事象の検知・事故への発展の防止」、第3防護レベルが「設計基準事故の影響緩和」、第4防護レベルが「過酷事故への対応」、第5防護レベルが「事故に起因する放射性物質の放出への対応」です。米国の場合、さらに第6層で「立地」を考慮します。深層防護の考え方では、①「階層間の独立」と②「前段否定の論理」が充たされなくてはならないとされます。原発における過酷事故対策とは全く独立して、最大限の事故を想定して、住民の人権が保障されなければならないのです。
 日本のいわゆる新規制基準は、この深層防護という考え方自体が非常に不徹底であり、それ自体が大きな問題ですが、第5層について避難計画の整備や実効性は規制基準に取り入れてすらおらず、これ自体が規制基準の大きな不備です。原告らは第6準備書面でさらにこの点を詳述し、また、大飯原発で過酷事故が生じた場合にどのように放射性物質が放出されるのか、どのような被害をもたらすのかを述べています。なお、水道に関して言えば、琵琶湖が放射性物質で汚染されたときにもっとも被害を受けるのは、滋賀県民ではなく、琵琶湖疏水を大半の上水道の水源にしている京都市民であることも述べています。

3 福島第一原発事故における避難の困難性

 大量の放射性物質の放出を前提にした場合、どのように避難がなされ、その過程で人々の健康や命がどうなるのか。福島第一原発事故について、原告第53準備書面で詳しく検討しました。県別の震災関連死の数は、2017(平成29年9月30日の段階では、岩手県464名、宮城県926名、福島県2202名で、2202名のうち1984名が65歳以上の高齢者であった。震災とは別に福島第一原発の事故が起きた福島県だけ、人口比での震災関連死が多く、かつ、事故から6年経った段階でも震災関連死の伸びが続いているのであり、福島県では「原発事故関連死」という呼び方をするのです。具体的に見ても、地震後にがれきの下で助けを求めているのに、避難指示が出て救助を諦めた事例が報道されており、施設に入所していた高齢者が事故直後の混乱の中や、避難中に衰弱死した例が多数ありました。酷いものでは、事故後の混乱の中で、双葉病院の施設外に迷い出たまま行方が分からなくなった方すらいました。
 また、地震とは関係なく同時に発生しえる台風等の被害によって、避難が困難になる実態があることを第49準備書面で指摘しました。

4 逃げられない私たち

 原告らは、福島第一原発事故の実態も踏まえた上で、実際に過酷事故が起きた場合に、自分たちが避難困難であることを口々に述べています。
 京都市左京区久多(第19)、京都府南丹市美山町芦生(第68)など、大飯原発にもほど近い限界集落の住民が、逃げようにも逃げられない実情を訴えています。これらの限界集地震によるただでさえ幅の狭い道路の寸断や、豪雨や土砂崩れによる寸断、豪雪より道が閉ざされる事態になったときに、避難が事実上不可能であることは明らかです。
 両下肢機能障害を有する京都市左京区在住の原告(第41)が、避難所にたどり着けないこと、避難所が障害者に対応していないこと、障害者が避難すべき避難所が整備されていないこと、周りに迷惑を掛ける心理的抵抗など多くの理由で避難困難であることを訴えました。この点、障害者に限らず、避難所で発生する人権侵害的な過酷な状況は第45準備書面で述べました。また、多数の入院患者がいる丹後ふるさと病院の事務長(第57)が、多数の高齢者の患者を移動させること事態の困難性や、受け入れ先がないこと、家族も高齢化して助けに来られないこと等からの避難困難性を訴えました。
 また、京都府北部地域の舞鶴市や京丹後市の学校の先生が、避難した生徒たちのストレスの大きさや、保護者への児童生徒の引き渡しができないこと、また引き渡しが完了しない限り自分たちが避難できないことからの避難困難性を訴えました(第66)。
 今現在、障害を持たない住民であっても、京都府南部の住民ですら、実際に過酷事故が起
これば避難困難になることを次々に述べました(第30、第59、第63)。

5 行政の避難計画の不備

 また、原告らは、このような原告らの実情も前提にしながら、行政が策定した避難計画の問題点についても、舞鶴市(第8、第17、第50)、綾部市(第22)、南丹市(第25)、宮津市(第28)、京都市(第36)など自治体ごとのものや、これらをとりまとめた大飯原発に関する避難計画全体(第48)について問題点を指摘しています。
 その上で、実際に行われた広域避難訓練の問題点も指摘していますが、この点は代理人を交代します。

6 京都府下の避難計画の非現実性

 2018年3月に大飯原発3号機、5月には4号機がそれぞれ再稼働しました。再稼働に先立つ2017年10月、広域避難計画である「大飯地域の緊急時対応」が取りまとめられました。この問題点については、すでに原告第27、48準備書面などですでに主張したとおりですが、更新にあたり、改めてその問題点について申し上げます。なお、この計画は本年7月に一部改定されています。この改定内容の問題点は改めて準備書面で主張いたしますが、基本的な問題点については何ら解決していません。むしろ新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、より問題は深刻となっていると言わざるを得ず、到底、住民の安全を守れるものではありません。

 そもそも、この避難計画は、原発から5キロ圏内をPAZ、約30キロ圏内をUPZと定め、その範囲に含まれる自治体、その中に居住する住民のみが対象とされています。
 しかしながら、そもそも原発で重大事故が発生し、放射性物質が放出された場合、その被害は、決して同心円状に広がるものでもなければ、ましてや30キロメートルの範囲にとどまるようなものではありません。このことは、福島第一原発事故の被害状況を見れば明らかです。このこと一つをとっても、この避難計画が住民の健康や安全を守ることのできないものだと言わなければなりません。

 避難計画では、大飯原発で重大事故が発生した場合、UPZ圏内の住民に対しては、避難指示が出るまでの間、屋内退避が指示されます。しかしながら、原発が損傷するほどの大きな地震が起き、目の前で原発事故が進行している場面で、住民に対して屋内退避をさせ続けることが現実問題できるのでしょうか。福島第一原発事故の際も、事故が報じられた後、多くの住民が自家用車で避難を開始しています。原発事故、そして放射性物質による被害を考えれば当然です。屋内退避指示は、放射性物質が来るのを家の中で待てというようなものです。
 そして、本年の改定で、「屋内退避を行う場合には、放射性物質による被ばくを避けることを優先して屋内退避を実施し、換気については、屋内退避の指示が出されている間は原則行わない」とされました。これは言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染防止との関係です。感染対策において、政府はあれだけ「換気」を強調しながら、屋内退避の場面では換気はできないのです。このことは、新型コロナウイルスの感染防止と原発再稼働との間に深刻な矛盾を抱えていることを端的に示しています。

 次に、避難指示が出された場合、対象となる住民は指定された避難先へバス等で避難することになります。ここでも新型コロナウイルスの感染防止との矛盾に直面します。もともとの計画は「バス1台当たり45人程度の乗車を想定」していました。満員のバスです。しかしながら感染症が流行しているときには「バス等で避難する際は、密集を避け、極力分散して避難」するものとされ、そのために「マスクを着用し、座席を十分離して着席する。追加車両の準備やピストン輸送等を実施する。」とされています。
 もともとの計画が策定された時点で、京都府北部だけでは想定されるバスの必要台数を確保することができない。京都市内や京都府南部から原発事故の起こっている京都府北部に向けてバスを移動させなければならないという問題が指摘されていました。感染予防のため、さらにバスの台数が必要になるというのであれば、バスの台数は確保できるのでしょうか。そして、間隔を取り、感染予防対策を実施しながら避難するためには一体どれだけのバスの台数が必要になるのか、具体的な想定はなされていません。また、「感染者とは、別々の車両で避難」するともされていますが、その「別々の車両」の確保についても、具体的な手当てはされていません。

 この避難計画においては、半島や沿岸部については船による海上を通じての避難が計画されています。舞鶴市大浦半島では、成生漁港、田井漁港等が利用する港の例として挙げられています。ここで例に挙げられている成生漁港は、2016年8月に実施された広域避難訓練において、船舶による避難訓練が予定されていながら、実際は訓練が行えなかった港です。海上保安庁の船舶による避難が計画されていながら、海上保安庁の船舶は、その大きさの関係で入港することができず、関西電力がチャーターした観光船も、悪天候により船を出すことができなかったのです。そして、この天候条件からすると、1年のうち約半分の期間は避難を行うことができないとも指摘されています。現に行われた避難訓練で具体的な問題点が指摘されたにもかかわらず、その点に応えられていない、まさに机上の避難計画だと言わざるを得ません。

 この避難計画では、広域避難を行う場合の、避難先への移動経路が設定されています。しかしながら、国道27号線や舞鶴若狭自動車道、京都縦貫自動車道など、主要な道路が地震などで寸断された場合、その避難は極めて困難になります。
 そして、道路が使用できなくなる状況は、決して地震に限りません。京都府北部では、冬は雪の問題もあります。2018年2月、福井県内で大規模な雪害が発生し、北陸自動車道は通行止め、国道8号線など主要国道も長時間にわたって通行できない状況となりました。国や各自治体、高速道路会社が持つ除雪能力を超えて雪が降ったのです。この点について、本年改定では「情報連絡本部を各府県の国道事務所に設置、対応」すると改定されました。しかしながら、そこで行うのはあくまで「調整」に過ぎず、そもそも除雪能力が拡充されなければ意味がありません。避難計画が、国や自治体、高速道路会社の除雪能力任せにしているのは極めて無責任な対応です。
 原発において過酷事故が発生した場合、すべての住民を安全に避難させるなどということは到底困難なことであって、このような無理のある避難計画を策定しなければならないところに最大の問題があります。原発を稼働させず、速やかに廃炉にしていくことこそが住民の安全を確保する唯一の道です。大飯原発を含めあらゆる原発の運転をただちに中止することを求めます。

以 上

◆口頭弁論(2020/9/8更新弁論)弁論要旨 原告 福島 敦子の意見陳述

2020年9月2日

 水は清き故郷(ふるさと)でした。
命がけで川へ戻ってくる鮭の躍動が、子どもたちに感動を与えてくれる故郷(ふるさと)でした。
北寄貝やいのはな、栗やまつたけ料理が季節の移り変わりを教えてくれました。
今は、除染をしても原状回復には至らず、「経済優先の復興、復興、復興」の故郷(ふるさと)になりました。
今まで癒しと恵みをもたらしてくれた私たちの故郷(ふるさと)の山や海に、何百年も消えることのない毒をまかれたのです。

 私は、福島県南相馬市より避難してきた福島敦子です。
福島第一原子力発電所の爆発当時は、川俣町そして、放射線量が最も高く示された福島市に避難しておりました。当時は、なぜ近距離の南相馬市より線量が高いのか解りませんでした。
一度戻ろうと思った南相馬市は13日には市の境に川俣町の警察署員などによりバリケードが張られ、入ることができなくなりました。
 2011年3月13日の夜、福島市飯坂町の小さな市民ホールの避難所には、800人以上の人が押し寄せました。地震のたびに携帯電話を手にする人々、消灯後の部屋がぼんやり青白く光り、夜中なのに大きな荷物をもってせわしなく足早に出入りする人々が寝ている子らの頭を踏みそうになります。放射能が多く降り注いだとされる15日には、仮設トイレまで雪が降る中、外に出て歩いていかなければなりませんでした。避難してからずっと外で遊べない子どもたち。ボランティアの人に風船をもらった娘たちは次々に飛び跳ねては上手にパスしあいます。足元には、心身ともに衰弱し体を横たえている大人が数人いました。わたしは、一番年長の娘に今すぐやめるよう強く言いました。辛抱強い娘はこどもたちにそれぞれ家族のもとへ戻るよう告げると、一人声を殺して泣きました。
 明け方のトイレには、壁まで糞便を塗りつけた手のあと。苦しそうな模様に見えました。
食べるものなどほとんど売っていないスーパーに何時間も並び買うものを選び、またレジ列に並びます。長い列の横に貧血で倒れている老女がいました。インフルエンザが蔓延した近くの避難所では、風呂に入ることができないため、温泉街までペットボトルに温泉水を汲みに行き、湯たんぽ代わりに暖を取る人がいました。
 ガソリンを入れるのに長時間並び、ガソリンを消費して帰ってきました。そのためより遠くへは避難できない人がたくさんいました。隣のスペースに、孫にかかえられて避難してきた年老いた人は、硬い床に座っていることがつらく、物資の届かない南相馬市へ帰っていきました。テレビで次々に爆発していく福島第一原子力発電所の様(さま)を避難所の人たちが囲んで観ている。毎日が重く張り詰めた空気の中、死を覚悟した人も大勢いた避難所の生活は、忘れられません。

 2011年4月22日、私は娘2人を連れ、京都府災害支援対策本部やたくさんの友人の力を借り、ごみ袋3つに衣服と貴重品をつめて、京都府へと3度目となる避難をしました。
その時に、貴重品以上に大切なものが私たちにはありました。『スクリーニング済証』というものです。
これを携帯しなければ、病院に入ることも避難所を移ることもできませんでした。私たちは、被ばくした人間として、移動を制限されていたからです。また、この証明書は、外部被ばくに限られた証明書であって、内部被ばくの状況は今もわかりませんが「黒い雨裁判」判決で認められ、広島長崎の原爆被害、チェルノブイリの症状でも明らかなように、血を受け継いでいくものであり、永遠の苦しみとなるものです。病気などほとんどしたことがない父(74歳)が、がんに冒され全身転移し入院し、亡くなりました。私の周りでも避難者含め命短くこの世を去る人がいる事は決して放射線の被ばくと無縁ではないと肌で感じじていています。
 京都へ避難してきてからは、居住地を決めたり、2日後に始業式がせまっている娘2人の学校の手続きをしたりしました。40歳の2人の子を持つ女性として、就職活動も始め自立することは大きな課題でしたが時給800円の6ヶ月期限の事務の仕事にかろうじて就くことができました。
学校では名前がふくしまということもあり、下の娘が『フクシマゲンパツ』『フクシマゲンパツ』とあだ名をつけられたこともありました。
 原発賠償京都訴訟の原告である子どもたちの心の調査をした結果、原発事故から陳述書作成までの間に80%の子どもに何らかの身体的異変があったこと、そしてそのうち「放射能の影響が考えられる症状の発症」が過半数の65%を占めていることがわかりました。
 事故から数年後の私の実家の庭の土を京都・市民放射能測定所で測定したところ、放射性セシウム濃度は、1平方mあたり93万ベクレルでした。子どものころにシャベルで穴を掘ったり、イチゴを摘んだり、母は長い年月をかけてコケを育てたりする自慢の癒しの日本庭園の土です。そのコケをはぎ、むき出しになったこの土、チェルノブイリ被災者救済法では移住必要地域にあたるレベルです。私の実家がある土地は移住すべきレベルなのです。
 私たちの暮らしは、その日その日を精一杯『生きる』ことで過ぎていきましたがもう10年。福島第一原子力発電所の原子力発電所の状況は収束せず放射能が放出し続けています。なぜ事故が起こったのかの具体的な理由も責任すら誰一人問われることなく、ただ被災した人々は日々の生活に疲弊し家族がどんどん崩壊し、避難者は避難者用住宅を追い出され避難先のコミュニティすら破壊され情報がほとんど報道されないこの世の中にあって人々は孤独に追いやられ経済的にも苦しくなりました。「原発事故はなかったこと」のように口にする人も減りました。除染をしても原状回復しない避難指示区域を次々に解除し生活インフラを整備したとしてももう元の町は戻りません。孤独死や、自殺する人を耳にすることが増えました。

 大飯原発の再稼働は、関西電力の経営努力の怠慢さ、原発マネーと呼ばれる原発稼働のための「悪質な慣習」も浮き彫りになり、地元の人々の不安と日本国民の原発に対する懸念の声、憲法を全く無視した人権侵害であり、日本最大級の公害問題であります。
 司法が、この日本国民の大きな民意を水俣裁判など多くの公害訴訟のように半世紀以上放置していることは許されません。真剣に向き合ってください。
 裁判長、こどもを守ることに必死な、懸命な母親たちをどうか救ってください。
 こどもたちに少しでも明るい未来をどうか託してあげてください。
 私たち国民一人ひとりの切実な声に、どうか耳を傾けてください。
 大飯原発の再稼働は、現在の日本では必要ないと断罪してください。
もう、私たち避難者のような体験をする人を万が一にも出してはいけないからです。
司法が健全であることを信じています。日本国民は、憲法により守られていることを信じています。

◆原告第74準備書面 - 避難 困難性の敷衍( 原告福島敦子の個別事情について)-

 原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では、福島から京都府京都市に移住した原告福島敦子の個別事情をもとに、避難困難性について述べる。

1 原告福島敦子について

 原告福島敦子は、福島第一原子力発電所の爆発後、川俣町、福島市に避難し、その後、京都市に避難してきたものである。

2 原告福島敦子の故郷について

 原告福島敦子の故郷は、水が清く、命がけで川へ戻ってくる鮭の躍動が、子どもたちに感動を与えてくれる故郷であった。北寄貝やいのはな、栗やまつたけ料理が季節の移り変わりを教えてくれた。現在は、除染をしても原状回復には至らず、「経済優先の復興、復興、復興」の故郷になった。今まで癒しと恵みをもたらしてくれた故郷の山や海に、何百年も消えることのない毒がまかれたのである。

3 福島第一原子力発電所爆発当時の状況について

 原告福島敦子は、福島第一原子力発電所の爆発当時は、川俣町そして、放射線量が最も高く示された福島市に避難した。原告福島は、事故後、南相馬市に一度戻ろうとしたが、南相馬市は2011年3月13日には市の境に川俣町の警察署員などによりバリケードが張られ、入ることができなくなっていた。
 2011年3月13日の夜、福島市飯坂町の小さな市民ホールの避難所には、800人以上の人が押し寄せた。地震のたびに携帯電話を手にする人々、消灯後の部屋がぼんやり青白く光り、夜中なのに大きな荷物をもってせわしなく足早に出入りをする人々が、寝ている子ども達の頭を踏みそうになる状況であった。放射能が多く降り注いだとされる同月15日には、仮設トイレまで雪が降る中、外に出て歩いていかなければならなかった。子どもたちは、避難してからずっと外で遊べなかった。
 ボランティアの人に風船をもらった子どもたちは次々に飛び跳ねては上手にパスしあっていたが、足元には、心身ともに衰弱し体を横たえている大人が数人いたため、原告福島敦子は、一番年長の娘に今すぐやめるよう強く言った。辛抱強い娘は、他のこどもたちにそれぞれ家族のもとへ戻るよう告げ、一人声を殺して泣いていた。
 明け方のトイレには、壁まで糞便を塗りつけた手のあとがあり、原告福島敦子には、苦しそうな模様に見えた。
 原告福島敦子は、食べるものなどほとんど売っていないスーパーに何時間も並び買うものを選び、またレジ列に並んだ。長い列の横に貧血で倒れている老女がいた。インフルエンザが蔓延した近くの避難所では、風呂に入ることができないため、温泉街までペットボトルに温泉水を汲みに行き、湯たんぽ代わりに暖を取る人がいた。
 ガソリンを入れるのに長時間並び、ガソリンを消費して帰ってきた。そのためより遠くへは避難できない人がたくさんいた。隣のスペースに、孫にかかえられて避難してきた年老いた人は、硬い床に座っていることがつらくて、物資の届かない南相馬市へ帰っていった。テレビで次々に爆発していく福島第一原子力発電所の様を避難所の人たちが囲んで観ていた。原告福島敦子にとって毎日が重く張り詰めた空気の中、死を覚悟した人も大勢いた避難所の生活は、忘れられない事態であった。

4 京都への避難及びその困難性

 2011年4月2日、原告福島敦子は娘2人を連れ、京都府災害支援対策本部やたくさんの友人の力を借り、ごみ袋3つに衣服と貴重品をつめて、京都府へと3度目となる避難をした。避難においては、貴重品以上に『スクリーニング済証』が、大切なものであった。原告福島たちは、被ばくした人間として、移動を制限されていたため、『スクリーニング済証』を携帯しなければ、病院に入ることも避難所を移ることもできなかった。
 『スクリーニング済証』は、外部被ばくに限られた証明書であって、内部被ばくの状況は今もわからない。
 これまで、病気などほとんどしたことがない原告福島敦子の父(74歳)が、がんに冒され全身転移し入院し、亡くなった。原告福島敦子の周りで避難者含め命短くこの世を去る人がいる事で、原告福島敦子は、決して放射線の被ばくと無縁ではないと肌で感じている。
 原告福島敦子は、京都へ避難後、居住地を決めたり、2日後に始業式がせまっている娘2人の学校の手続きをしたりした。原告福島敦子は、時給800円の6ヶ月期限の事務の仕事にかろうじて就くことができた。避難後は、子どもの入学の手続を行ったり、新たな職場を探したりしなければならない。就職先が、見つかる保障など無く、就職先が見つかるまでは、経済的に非常に厳しい状況が続くのであり、原発事故後、避難することは、多くの困難を伴うのである。
 また、学校では名前がふくしまということもあり、原告福島敦子の娘が『フクシマゲンパツ』とあだ名をつけられたこともあった。

5 原発事故は、かけがえのない故郷を奪う

 事故から数年後の原告福島敦子の実家の庭の土を京都・市民放射能測定所で測定したところ、放射性セシウム濃度は、1m2あたり93万ベクレルであった。原告福島敦子が子どものころにシャベルで穴を掘ったり、イチゴを摘んだり、原告福島敦子の母が、長い年月をかけてコケを育てたりする自慢の癒しの日本庭園の土である。そのコケをはぎ、むき出しになったこの土、チェルノブイリ被災者救済法では移住必要地域にあたるレベルである。私の実家がある土地は移住すべきレベルなのである。

6 大飯原発は今すぐ、廃炉にすべきである

 原告福島敦子たちの暮らしは、その日その日を精一杯『生きる』ことで過ぎ、10年が経過しようとしている。しかし、福島第一原子力発電所の状況は収束せず放射能が放出し続けている。原告福島敦子は、「なぜ、事故が起こったのかの具体的な理由も責任すら誰一人問われることなく、ただ被災した人々は日々の生活に疲弊し家族がどんどん崩壊し、避難者は避難者用住宅を追い出され避難先のコミュニティすら破壊され情報がほとんど報道されないこの世の中にあって人々は孤独に追いやられ経済的にも苦しくなっている」と感じている。除染をしても原状回復しない避難指示区域を次々に解除し生活インフラを整備したとしてももう元の町は戻らない。2度と原発事故が起こらないようにするために、大飯原発は今すぐに廃炉にするべきである。

以 上

◆9.6「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」報告とお礼

原発再稼働阻止、原発全廃のためにご奮闘の皆様

 9.6「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」は、新型コロナウイルス、台風、酷暑を乗り越えて、1600人を超える結集を得て開催され、引き続く御堂筋デモにも多くの方が参加され「老朽原発うごかすな!」の強い決意が示されました。

 コロナウイルスの終息が見えない中、市民団体や労働団体の組織参加は自粛されたものの、脱原発を目指す市民団体、労働団体、政党のほとんどの代表が参加されました。大集会への賛同は全国から寄せられ、賛同総数は1000をはるかに超えています(団体は212、賛同845人:9月6日現在→こちら)。

 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」へのご参加、ご賛同、ご支援に深くお礼申し上げます。

 9.6大集会やデモは全国に中継され、この大集会に連帯する各種の集会やスタンディングアピールも以下に記しましたように、9月6日前後に開催され、あるいは予定されています。

 9.6大集会に連携して、関電の原発が立地する自治体(福井県、高浜町、美浜町、おおい町)への申入れハガキおよび関電への抗議ハガキを送る行動も進められ、多くの皆さんのご協力を得ています。

 9.6大集会の成功によって、「老朽原発うごかすな!」の声はますます大きくなっていることが実証されました。この成功を橋頭保として、関電が来年1月、3月に画策する老朽原発・美浜3号機、高浜1号機の再稼働を阻止する戦線をさらに拡大し、老朽原発廃炉を勝ち取り、それを突破口に原発のない社会を実現しましょう!

「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」実行委員会
木原壯林(若狭の原発を考える会:電話090-1965-7102)

—–
(9月2日までに連絡があったもの:SAはスタンディグアピールの略)

◆≪福島県≫ 9/4(金)17:00~18:00,郡山駅前でSA
◆≪茨城県≫ 9/6(日)17:00~,牛久駅前でSA
◆≪東京都≫ 8/19(水)夕方,関電東京支社前で演説,SA,コール,抗議文提出
◆≪愛知県≫ 9/6(日)13:00~14:00,名古屋栄の三越前でSA。同時間帯にSNSデモ…「#0906老朽原発うごかすな」をつけTwitter,Facebook,Instagramでの一斉投稿を呼びかけ
◆≪福井県≫ 9/4(金)13:00~14:00,高浜町役場前でSA。9/6(日)13:00~14:00,高浜原発前でSA。
9/6(日)13:30~14:30,福井駅西広場で街頭演説とSA
◆≪滋賀県≫ 9/6(日)11:00~12:00,彦根キャッスルロード京橋の交差点でSA。9/6(日)16:00~
17:00,堅田駅東口でSA。10/17(土)13:30~,脱原発市民ウォークin滋賀。10/24(土)
14:00~16:00,「老朽原発うごかすな!10.24滋賀講演会」(滋賀県教育会館)
◆≪奈良県≫ 8/21,8/28,9/4(各々金)18:30~,奈良駅前で400回目,401回目,402回目の「脱原発奈良でも行動」。9/11(金)15:10~17:00,「9.6おおさか大集会」のIWJビデオ視聴会,
18:00~18:30,奈良駅前でSA
◆≪大阪府≫ 9/6(日)15:00~17:00,「いらんわ原発!有志」が「老朽原発うごかすな★御堂筋SA」。
9/7(月)17:00~18:00,堺筋本町でSA
◆≪兵庫県≫ 9/4(金)17:00~18:00,関電姫路支店前と姫路駅前で「関金行動」。9/11(金)17:00~
19:00,加古川駅前でSA。9/11(金)18:00~19:00,神戸大丸前でイレブンアクション
◆≪香川県≫ 8/30(日)16:00~17:00,高松市内デモ

◆9月8日に行った関電との話し合いの記録

関電側;広報担当者など3名。
使い捨て時代を考える会;4名。

事前に提出した以下の質問書にそって話し合いました。

…*…………………………………………………………………………………………*

1.昨年の金品受領の露見以降、報酬補填など貴社の旧経営陣のさまざまな問題が報道されています。最近では旧取締役が、損害賠償提訴について圧力をかけたとの報道がありました。すべて原発に関わる金銭問題に端を発しています。経営トップがこぞって不正をする貴社に原発を動かす資格はなく、現在動かしていることに恐怖を感じます。原発を止めることが先決ではありませんか。現在の状況について貴社の考えをお聞かせください。

2.新型コロナウイルスの感染拡大により大飯原発3号機の5月に予定されていた定期検査が延期になり、現在定期検査に入っているとのことですが、まだコロナ禍は終息していません。新型コロナウイルスの脅威にさらされている状況においては、すべての原発を停止させるべきだと考えます。万が一事故が起きたら事故処理に当たる作業員も避難する住民も三密は避けられず、二次災害で感染が起きることは明らかです。コロナ禍が起きている中で、国は原発事故の際の避難所では、換気しないという指針を出しました。放射能を防ぐために、コロナ感染防止をしないということです。このことについて貴社の見解をお聞かせください。

3.40年越えの原発、高浜原発1号機・2号機、美浜原発3号機の安全対策工事が遅れるとのことで、美浜3号と高浜1号は9月に工事が終わるため、来年3月と1月に再稼働を目指すとの報道がありました。それぞれの工期と再稼働予定についてお聞かせください。前回の話し合いで、安全対策工事費は2019年が1,937億円、累計で7,000億円とお聞きしました。今後の稼働次第では採算の取れない可能性もあると思われますが、どうお考えですか。老朽原発の再稼働は不安です。なぜ再稼働を急ぐのですか。

4.使用済み核燃料の処理についての見通しを述べてください。前回使用済みMOX燃料処理の実証実験をしているとのお答えでしたが、具体的にどこで、どういう方法で行い、どういう実績があるのかお示しください。実用化はできるのでしょうか。高浜では今後1/4までMOX燃料を使い、その場合MOX中のプルトニウムは1.7tと聞いていますが、最大でどのぐらいになるのでしょうか。また2018年度中に決めるとなっていた中間処理施設の見通しは立っていますか。北海道寿都町長が高レベル廃棄物最終処分場の調査を受け入れると表明したことで、地域で反対が起きています。過疎の進む地域に原発のゴミを押し付けることについて社会的責任は感じませんか。

5.貴社の再生エネルギー開発について、2030年代には600万kwにする、現在200万kwの新規開発を進めているというお答えでしたが、再エネへの投資が、原発の安全対策費に比べあまりにも小さいのではないでしょうか。再生エネルギー専任の技術者、職員は何人いるのですか。2017年から2018年に投資が減っているのはなぜですか。再エネへの取り組みが少ないことは国際的にも批判を受けています。コロナ禍のことも考えると、これからの社会は再エネへ転換しないと持たないと言われています。いますぐ再エネへのシフトを図るべきではないでしょうか。

6.6月に京都府が高浜・大飯原発事故が同時に起きてもUPZ内は避難の必要なし(屋内退避)というシミュレーションを発表しましたが、これに対して府民はシミュレーションのやり直しを求めています。貴社の原発事故についてのことですが、このシミュレーションの作成に当たって貴社はどのような関わりを持っていますか。

7.高浜原発で露見した汚職などで貴社に対する社会的信用は失墜し、貴社からの契約離脱は350万件を超えたと言われています。その状況下で電力販売量は落ちているにもかかわらず黒字決算となっているようですが、その収益の根拠は何ですか。発電部門ごとの発電量と部門支出を、福島原発事故前と事故後について年次ごとにお教えください。福島事故後、原発部門は会社にどの程度の貢献をしているのか教えてください。廃炉や使用済み燃料の後始末など技術的未解決課題が積み残されており、将来巨額の出費となるのではないでしょうか。原発推進によって経営破綻となるのではないでしょうか。破綻は困るので、改善できるという見通しを提示して下さい。

以上

…*………………………………………………………………………………………………*

話し合い内容 Q(こちら側の発言),A(関電の発言)

A 役員への報酬補填について、社内でもがっかりするという声はある。多大な迷惑をかけている。申し訳ない。秘密主義だったが社外の目を入れ、コンプライアンスを徹底して改革の取り組みを進めている。森本社長がリーダーシップを発揮して、CSRを検証し見直すことや、トレーニング、企業風土の変革に取り組んでいる。社員の生の意見を上げて活かしていく。外部の人材を活用する。原子力事業本部についてもそのようにしていく。それぞれの委員会で外部の意見を取り入れる。原子力事業では資材調達、発注の権限を本店に移した。委員会も設置して内容のチェック、フォローを行う。信頼関係の回復に努めている。

Q あってはならないひどさだ。あまりにもひどすぎたということを認識してもらいたい。森本社長は批判的意見を聞こうとしていない。株主総会での対応は本当にひどかった。森本社長の不信任が4割もあったのに辞任しないことが信じられない。今の答えは空虚だ。何も信じられない。取締役が辞任しないというのは、元の体質のままだ。社内の空気は変わったと思う。社内情報が洩れている。関電がつぶれたら困るが、つぶれずに居直ったらもっと困る。

A 株主総会についての意見は本店に伝えている。できることとできないことがある。

Q 社長の辞任はできることだ。誠実さ、真剣さを示して本物と思える状況にしてもらいたい。そこから始めてもらいたい。

—–
A(Q-2について)コロナウイルスの拡大は重く受け止めている。各設備との併存は重要課題と思って取り組んでいる。自治体とも協力して、定検に入る人は検査して来所している。定検に入った人の検査や(追跡)調査もしている。地域防災計画は国の支援により自治体がやるが、それに協力する。6月2日に内閣府から「新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた感染症の流行下での原子力災害時における防護措置の基本的な考え方について」が出た。京都府は9月1日に防災訓練があったが、原子力については秋に行うと聞いている。災害拡大防止など原子力事業者として課題を抽出していく。スクリーニングなどへの出動要請などに会社を挙げて取り組んでいきたい。

Q 今の問題は国、自治体に丸投げして関電は済むのかということだ。関電でやるべきことではないか。京都府では予算が限られているからそこまでしかできなかったと言っていた。京都府のシミュレーションに関電は協力しなかったでしょう。誠実さがない。京都府は数百万の予算でシミュレーションしたと聞いているが、関電は老朽原発の工事は何千億もかけている。落差が激しすぎる。福島事故では事前に考えていなかったから病院や老人施設でお年寄りが死んだ。そのことに学んでいない。

A 丸投げという認識はない。地域防災、避難計画は自治体が策定するので、必要な支援はする。

Q これまでどんな支援をしたか教えてほしい。

A 情報を持っていないので次回に答える。

Q 福島事故から9年たっている。その間何をしてきたのか。

Q 京都府のシミュレーションは30キロ圏内は避難しなくていい、屋内避難で良いという結果だったが、それを信じて避難せずに住民が被ばくしたとしたら犯罪的なことだ。関電がシミュレーションに関係していないということも信じられない。

Q 京都府は700万円しか予算がなくて1条件でしかシミュレーションができなかったと言っていた。セシウム137の放出量を福島事故の1/150で計算している。関電の老朽原発再稼働にかけるお金を回せばもっとできるはずだ。京都府は予算も人も足りない。

Q 責任を持って受け止めてもらいたい。

Q 原発を動かしているので、京都府など自治体が働かされている。

A 府・市の防災にはお世話になっている。府のシミュレーションについての公表は関電各所に報告されているが、評価はなく、お知らせだけだ。府などへの負担は確かにある。発電事業者として管理が及ぶ部分では、放射能を放出しないことだ。

Q 京都府はスクリーニング場所で、放射能を洗い落とすことで地域環境を汚染するなど、場所の選定でも大変な苦労をしている。原発がなければその作業はいらない。そういうことを関電ではなく自治体がやり、負担している。税金を使っている。これは原発のコストだ。

Q 国が法律を作ったのかもしれないが、自治体に押し付け、企業として責任を取らないのはおかしい。

Q 原子力事業の一部も避難の問題に使っているように見えない。コンプライアンスというが倫理的に問われる。

Q 大飯3号機の事故はどういうことか。

A 配管の接続部分と聞いているが、詳しくはまだ知らない。

Q 1次配管が破断したら大変だ。問題が明らかになっても発表されない。

Q 応力腐食はひずみ、割れとなる。地震が起きたら、耐震設計など成り立たない。

Q 交換せずにこのまま使うというがどうなのか。

A 規格に基づいて評価する。数値上、基準を満たしているかいないかを国が検討する。

Q 田中前規制委員会委員長さえ原発は先がないと言っている。規制を通ったということと安全とは違うと言っている。この問題の深刻さは大きい。

Q 福島事故以前には安全神話があった。福島事故が起きてからは事故が起きるということが分かった。福島では避難できなくて亡くなった人がいる。事故が起きることを前提にして人命を守ってもらいたい。事故が起きたらどう避難するかを出してから再稼働してもらいたい。

Q 安全対策を徹底しているというが、配管を替えずに動かすのは徹底していないことではないか。安全対策を手抜きしている。配管を交換しないという意味が理解できない。本当に大丈夫なのか。

Q 配管の厚さが8.2㎜で大丈夫というが、均等に8.2㎜であるならまだわかる。ひびが入ったら均等ではないから大丈夫とは言えないだろう。そこから非常に破断しやすくなる。危険すぎる。

Q 万全を期すなら取り換えるべきだ。お金がかかるから取り替えないのか。

A 取り換えるか否かはこれから決まると思う。

Q 応力腐食割れというがそれも推定という。推定としていることも問題だ。

Q そもそも高浜4号機だって、蒸気細管の損傷の原因がわからないまま再稼働しているではないか。原因がわからないのに動かすとは!安全第一ではないのではないか。次々と不安が起きる。

—–
A(Q-3について) 再稼働の日程、費用については質問書に記載のとおりだ。老朽原発再稼働に反対する気持ちは理解できる。なぜ急ぐかというと原発に必要性があるからで、競争力など見きわめながら進めていく。

Q お金をかけて、どんどん危険なものを動かし続けるのは、経済的にも大変なのではないか。ドブにお金を捨てているようなものだ。経営は大丈夫なのか。

Q 当初原発は30年と言われていたのがいつの間にか40年になり、60年動かそうとしている。

Q 放射性廃棄物のことを考えても動かすことはできないはずだ。

Q MOX燃料は危険だ。熱伝導が不純物で落ちる。内部にたまった熱で炉心が崩れ落ちる。いまだに燃料のことがわかっていない。スリーマイル事故は加圧式で、炉心が溶けたのではなく崩れ落ちた。福島は沸騰水型で炉心の設計が違う。加圧水型のほうがさらに危険だ。関電は加圧水型だ。私は頭では原発の危険性を理解していたが、実際に福島事故で水素が出て爆発したのを見て、大変な原子炉だと改めて認識した。

Q 核燃料サイクルが動かない。最終処分場がない。そういったことを無視したまま動かさないでもらいたい。

A MOX燃料の処理の実証実験はJAEA(日本原子力研究開発機構)でやっている。敦賀のふげんで出たものを東海村で再処理したとされている。経産省に2016年3月4日付で出されている。また海外ではフランスのラ・アーグで2004年から処理している。

A 高浜にはMOX燃料は1/4しか入れないのでそれが最大値になる。

Q 高浜ではプルトニウムが最大で1.7tという数値は合っているのか。もんじゅでも1.4tだ。

A MOXなのでウラン部分も入っているかもしれない。

Q プルトニウムで計算しているはずだ。

A どれだけプルトニウムがあるか確認する。

Q プルトニウムは核兵器に使用するから、核兵器を持っている国で再処理するのは当たり前だ。他国でやっているから大丈夫というのは問題だ。日本の技術は世界で著しく低いとは思わない。なぜできないのかはきちんと押さえておく必要がある。一筋縄ではいかない。

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A(Q-5について) 再エネについては有価証券報告書に出ている。太陽光発電3か所のみ記載されており、従事者は2名だ。基本的に無人で遠隔地でオペレーションをしている。再生可能エネルギー部門は専任85名。水力、風力、太陽光、バイオマスも含めての人数だ。

Q 給与で見ると人件費は2人分ぐらい。そんなにたくさんいない。新エネは3か所ということか。

A 3か所2人と出ているだけで、新エネと書いているのは太陽光だけだ。水力や風力をいれたら専任85人だ。

Q 新エネの発電費用が2011年と2019年で比較すると減っている。水力も重視しているように見えない。原発にお金を使って他部門が割を食っている。

A 再エネの開発は積極的にやっている。秋田沖とかアメリカなどでも洋上風力を開発中だ。

Q 18年に営業費が7億円から5億円に減った。

A 太陽光の設備容量の目標は2030年に600万kW/時にする。現在400万kW/時持っており、新規に200万kW/時つくることになるが、現状で447万kW増やしているところで、すでに390万kWできており、目標を大きく超える予定だ。目標にあった設備投資、人的配置にしている。

Q 新エネ開発にもっと力を入れて老朽原発をやめてもらいたい。

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A(Q-7について) 7月31日の第一四半期決算では減収減益だった。コロナ拡大の影響で電力量が減少した。不動産部門などグループ企業でも減少した。経常費用も減少した。金品受領問題などがどう影響したかなど見極める必要がある。離脱が進んでいることは事実だ。

A 「発電部門ごとの」とは何を指しているのか。

Q すべてだ。電気を作るためにどれだけ費用が掛かっているか知りたい。原発についてはほかにもある。例えば日原燃に電気代を何百億円も払っている。燃料費は確かに安いが部門発電費とすると原発は高い。

A 電源別コストは経営戦略上明確にできない。

Q 公表されている事実をどう見るかを知りたい。経営の立て直しに原発が必要というのは本当か。発電コストは火力よりも悪くなる。それでも経営のためか。森本社長は関電をつぶすのではないか。労組幹部も原発推進だ。来月この続きを聞きたい。

A 社内で確認するが、経年で出すのは難しい。国が出したものは出すことができる。

Q 部門発電費から発電コストを見たい。どれだけコストをかけて発電しているのか知りたい。私が調べた数値を持ってくるので、それが合っているか見てもらいたい。

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問題が山積みで1時間超の話し合いでしたが、かなり駆け足で進みました。この日の朝報道された大飯原発3号機の配管に傷があったにもかかわらず、配管を取り換えないで運転するという事実に驚愕。「安全第一」という嘘がまた明らかになりました。
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◆9/8 第26回口頭弁論の報告

2020年9月8日(火)に京都地裁で第26回口頭弁論(裁判長交代に伴う更新弁論 )が開かれました。2020年4月から4人目の裁判長に代わり,この日から裁判官は,裁判長:池田知子,右陪席:光吉恵子,左陪席:荻原淳(京都地裁第6民事部)でした。

  • 当日,原告団より,下記2つの更新弁論がありました。
    竹本修三(原告団長)「地震国ニッポンで、原発稼働は土台無理スジ」
    福島敦子(原告団世話人)「水は清き故郷(ふるさと)でした」
  • このうち,原告団長の「地震国ニッポンで、原発稼働は土台無理スジ」という更新弁論 の 講演要旨(4ページ)と発表パワポ(5ページ)を示しておきます。
    ◆大飯原発差止京都訴訟 原告団長 竹本修三 報告集 → こちら
  • 当日の12:15から定例の裁判所周辺デモがありました。弁護士会館前正面入口を出発点として,富小路通を北上し,丸太町通を西に曲がり,柳馬場通りを下がって戎川通を東に折れて,寺町通を北上して,丸太町通りを西に曲がるコースです。
  • 14:30より京都地裁1階の大法廷で 第26回口頭弁論が開かれましたが,コロナウィルス蔓延の影響のため,参加者は,原告席・傍聴席ともに,通常の1/3以下しか入れませんでした。
  • 14:30から鴨沂高校の北側の「鴨沂会館」で模擬法廷が開かれましたが,多くの人がそれに参加してくれました。氏名記入者は,45 名でした。
  • 閉廷後,「鴨沂会館」で報告集会が開かれ,約75名が参加しました。

鴨沂会館での報告集会
鴨沂会館での報告集会

◆8月19日に京都府危機管理部原子力防災課に質問を提出し,8月28日に話し合い→その報告

 京都府は,6月23日に「高浜・大飯発電所発災時の放射性物質の拡散予測について」という文書を発表しました。「UPZ内の住民は屋内退避による防護措置にとどまり、避難を要しない結果となりました。」との結論部分を太字にして,下線まで付けて強調しています。
こちら

 使い捨て時代を考える会は、8月19日に京都府危機管理部原子力防災課に下記の質問を提出し、8月28日に話し合いの場を持ちました。府側は危機管理部原子力防災課参事石山哲さん、危機管理部原子力防災課原子力防災係主幹兼係長津田聡雄さんのお二人。使い捨て時代を考える会からの出席は4名(槌田・山田・西澤・吉田)。30分という約束で話し合いました。

なお,この件では「避難計画を案ずる関西連絡会」も府に抗議などを行っています→こちら

【質問】………………………………………………………………………………………

1.京都府UPZ内の住民は「避難の必要なし」という結果でしたが、あまりにも事故を過少に評価しているのではないでしょうか。なぜそのような結果が出たのか、避難の必要なしと結論を出したのかご説明ください。

2.屋内退避で良いと結論されていますが、その根拠はどこにありますか。また屋内退避はどのように実施するものと想定されていますか。現在新型コロナウイルス禍のもとにありますが、この状況で事故が起きたら、放射能汚染で換気できない屋内にとどまることを推奨されるのでしょうか。新型コロナウイルス対策と矛盾して混乱を招くのではないでしょうか。

3.関西電力は「避難のことは国や自治体が考えるもの」として、全く避難について考えていません。そのうえ、自治体が「避難の必要なし」とするのであれば、もし福島原発並みの事故が起きたら、住民はどうしたらよいのでしょうか。

以上

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【話し合いの概略】

*京都府石山*(以下「府」。ほとんど石山さんが答えました)

「避難の必要なし」としたのは、前提に福島事故以降防災の枠組みが変わり、新規制基準で安全対策を強化したことがある。原子力災害指針策定OILで定められている安全工事がなされたとしてセシウム137を100T㏃としている。ほかの核種は福島事故の推定割合に応じて計算した。24時間後の空間放出線量が国の基準で見た時どうかというところでシミュレーションをやった。屋内退避はOIL2に即して地上1メートルで20μ㏜/時、1日経過しても20μ㏜/時とした。今回、放出開始から24時間後がどうかを見たが20μ㏜を超えなかった。

*使い捨て時代を考える会*(以下「会」)

OILの基準は国が決めたかもしれないが、それを参考にして京都府が考えているとしていいのか。それは妥当なのか。国が決めた基準なら何でもいいのか。放射線管理区域で働く人と一般市民とは違う。20μ㏜は大きすぎる。シミュレーションをした専門家の名前を聞きたい。避難についてこのシミュレーションから短絡することはあり得ない。放出量ももっと大きいかもしれない。甘く見てはいけない。

*府* 国の定めた20μ㏜に合わせて判断した。

*会* 京都府は京都府民を守るために別の判断をしないのか。

*会* 関東にいたが事故後に京都府南丹市に引っ越してきた。事故は起きないと思っていたが、起きて世の中が暗転し、反省した。千葉の家の庭の土は4年たっても577㏃/㎏で、周辺を除染したが時間がたってもセシウムが出てくる。「避難の必要なし」は、福島事故の大きな犠牲から学ばず、安全神話を再び広げてしまう。想定できる最悪で考え始めるべきではないか。避難の必要なしとすると、準備を怠る。府民を守ってほしい。

*会* 三通りのシミュレーションの結果だというが、避難しなくていいという発表は書きすぎではないか。誤解を招く。新聞の書き方も問題がある。

*府* 京都新聞には1面と5面に載って、1面には「避難の必要なし」と出たが、5面には「安心材料ではない」と出ている。避難計画そのものがいらないと考えているわけではない。「安心」のために使うわけではない。

*会* 避難の対策はいままで以上に続ける、と合わせて言うほうが正確なのではないか。

*会* 100T㏃で避難の必要なし、という前提を考えたシミュレーションではないのか。

*府* 今の結果を参考に避難計画をやっていく。

*会* 避難の必要のあるシミュレーションで、さらに検討してもらいたい。

*会* 三つのシミュレーションは極めてシンプルだ。福島ではホットスポットがあった。気象条件は風向きだけではない。誤解を与える。もっと精密にやってもらいたい。20μ㏜という数値は原発事故時の特別な扱いだ。

*会* 20μ㏜を基準に考えること自体がおかしい。

*会* 避難の心配をする必要なしとなると誤解を与える。

*会* 避難の必要なしとインプットされると本当に事故が起きた時、「自分は避難しない」と言い張る人の説得をするのに困る。説得は消防団や警察や行政がやることになると思うが、消防団は地元の将来を担う大事な若い人たちだ。そういう人たちが被ばくすることになる。最悪の事態を想定してやるべきだ。行政の方たちが動きやすくするためにも準備が必要だし、府民のために働く人を守ってもらいたい。

*会* 関電と話し合っているが、関電は無責任だ。避難は一企業では手が付けられないとして、投げ出している。

*会* 避難のことは自治体がやると法律で決まっているようだが、「企業の不始末の後始末を自治体にさせるな」と自治体として国に言ってもらいたい。

*会* 避難対策の費用を行政の責任にする構造がおかしい。予算が少なくてシミュレーションができなかったと言っているが、関電にお金を出させたらいいのではないか。ばらまかれた放射能は公有物だというひどい判決もある。防災課は本来はやらなくて良い無駄な仕事をしているのではないか。

*会* 夢の原子力として登場したが、危険だし嘘が並んでいる。何重にも安全装置がついているというのも全部嘘だった。政治の問題だ。今の政治はひどすぎる。政治が絡むと大きな問題が起きる。関電はスリーマイルの事故の後に原発がなくなると電気がなくなると宣伝した。

*会 *わずかばかりの予算での結論はなぜか?マスコミに流してしまったとしたら今から訂正をしてもらいたい。今後シミュレーションするなら市民に聞きながらやってもらいたい。

*会* 東電はひどい会社だと思ったが、関電はもっとひどい。その関電が40年を超えた原発を動かそうとしている。怖い。事故は起きる。実効力のある対策を考えないといけない。

*会* 40年越えの老朽原発を動かすし、異物が混入している原発も動かしている。信用できない。現状でやるしかないので府民の生活を守るとしてやってほしい。

*会* 何兆円もかかる事故が起きた。シミュレーションの予算700万円とは小さすぎる。

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*30**分経過したのでここまで。こちら側が言いたいことを言っているうちに時間となってしまいました。今後、シミュレーションのやり直し、マスコミ発表のやり直しなどを要求していく予定です。*