老朽原発うごかすな!実行委員会」カテゴリーアーカイブ

◆報告とお礼~5.20 美浜原発3 号機燃料装荷糾弾闘争

【2021年5月21日,京都キンカンで配付】

 関電と政府は、危険極まりない老朽原発・高浜 1、2 号機、美浜 3 号機を再稼働させようとし、原発マネーにしがみつく高浜町、美浜町の議会と町長、福井県知事は老朽原発再稼働への同意を表明しています。

 この間の老朽原発再稼働への同意をめぐる「茶番劇」で、
・原発マネー不祥事、原発トラブル(蒸気発生器配管の損傷など)、約束違反(使用済み核燃料中間貯蔵候補地など)を頻発させている関電は、安全確保を空約束し、
・「自治体住民の安全・安寧を保全することが地方自治の基本」であることを忘れた原発立地自治体の議会や首長は、住民の安心、安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、
・原発関連企業の利益を優先させる政府は、税金によって立地自治体を買収して、老朽原発再稼働を強行しようとしたのです。

 しかし、このような「茶番劇」にも拘わらず、4 月 30 日、関電は、5 月再稼働を目指して進めていた高浜 2 号機の安全対策工事の完了が、コロナ禍による人員不足で遅れ、当面の再稼動が不可能になったと発表し、5 月 13 日の新聞は、6 月9 日に特定重大事故等対処施設(特重施設;テロ対策施設)の設置期限を迎える高浜 1 号機の当面の再稼働を断念し、燃料装荷テストのみ行うと報じています。燃料装荷は 5 月 17 日に終えていますが、特重施設の完成までには 2 年以上要しますから、再稼動は 2 年以上遅れたことになります。

 圧倒的な「原発うごかすな!」の民意に後押しされた市民運動、裁判闘争などの反原発運動の勝利とも言えます。

 ただし、関電は、特重施設の設置期限が10 月25日である美浜3 号機の6月末稼働を目指して、昨日5 月20 日に、3 日間の予定で燃料装荷を始め、政府は美浜 3 号機再稼働を先例として、全国の原発の60 年運転への道を開こうとしています。許してはなりません!

 「老朽原発うごかすな!実行委員会は」昨日約50人の結集を得て、美浜町、関電原子力事業本部、美浜原発に向けて、緊急抗議行動を展開しました。(こちらの関電への申入れをご参照ください。)

5.20 美浜現地闘争にご参加、ご支援いただきました皆様、
有難うございました。

 まだまだ、老朽原発再稼働阻止は可能です! 理は私たちにあります。老朽原発再稼働の理不尽に、もっともっと大きな運動で対抗しましょう! あらゆる可能な行動で「老朽原発うごかすな!」を訴えましょう!

老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先;木原 090-1965-7102)
 
▼2021 年 5 月 21 日毎日新聞朝刊

▼2021 年 5 月 21 日中日新聞、県民福井朝刊

▼美浜町役場前集会

▼2021 年 5 月 21 日京都新聞(滋賀版)朝刊

▼2021 年 5 月 21 日福井新聞朝刊


◆関電への申し入れ


関西電力株式会社:
  取締役会長 榊原定征 様
  取締役社長 森本 孝 様
  原子力事業本部長 松村孝夫 様
  美浜発電所長 高畠勇人 様

申し入れ書

 福島原発事故から 10 年が経ちましたが、今でも避難者の多くが故郷を失い、苦難の生活を続けておられます。事故炉内部の詳細は未だに不明で、増え続ける放射性汚染水は太平洋に垂れ流されようしています。原発は、現在科学の手に負える装置でないことは明らかです。その原発が老朽化すれば、危険度が急増することは多くが指摘するところです。

 それでも、貴関西電力(関電と略)は運転開始後45年を超えた老朽原発・美浜3号機の再稼働を画策し、今日から燃料装荷を行っています。

 美浜 3 号機について、原子力規制委員会が、拙速審議によって再稼働を認可したのは 2016 年ですが、認可以降に、関電の原発では、高温・高圧の1 次冷却水が流れる蒸気発生器配管の減肉、亀裂をはじめとする各種のトラブル、原発再稼働準備工事中の人身事故が頻発しています。

 一方、関電に関して、1 昨年発覚した原発マネーに係わる不祥事の調査は,未だに納得できるものではなく、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。例えば、関電は 2 月 10 日、「競争入札を経ない発注(特命発注)などによ、地元企業の活用に努める」として、戸嶋美浜町長の美浜 3 号機再稼働への同意を取り付けました。公共性が高く、税金に準じる性質を持つ電気料金で運営される電力会社が、特命発注の乱発など許されるはずがありません。これは、関電の経営体質は、原発マネー不祥事後に行った「人事刷新」によっても全く変わっていないことを物語るものです。

 さらに、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を何度も反古にしておきながら、原発の運転を続け、使用済み核燃料を増やし続けています。その上、関電は、去る 2月 12 日、候補地提示期限を「2023 年末まで」と先送りし、「期限が守れなければ老朽原発を停止する」として、老朽原発再稼働への福井県の同意を取り付けました。なお、関電が「2023 年末を期限」とした拠り所は、むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性だと考えられますが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発しています。

 以上述べましたトラブル、事故、不祥事、約束不履行の多くは、美浜原発3号機運転認可の審査過程では想定されていなかったことです。原発は、運転開始後40年に満たなくても、トラブルや事故を多発させる装置であること、関電が原発を安全に運転できる資質を持ち合わせていないこと、老朽原発再稼働認可の拠り所となった新規制基準が極めて不完全で、規制委員会の審査がいい加減であることを示しています。なお、昨年 12 月に、基準地震動の評価が過小であるとして、大飯原発 3、4 号機の設置許可取り消しを命じた大阪地裁判決は、規制委員会審査のいい加減さを端的に指摘しています。大阪地裁が指摘した地震動の大きさに関する議論は、いやしくも科学・技術に携わる者なら、誰しも納得できるものです。関電は、基準地震動の再評価を行い、それに見った耐震対策を施すべきです。

 ところで、水戸地裁は、3 月 18 日、老朽原発・東海第 2 原発の運転差し止めを命じました。誰もが不可能だと考える避難の問題をっ向から取上げた、民意に支えられた判決です。美浜原発から100 km 圏内には、76 万人が住む福井県のみならず、257 万人が住む京都府、141 万人が住む滋賀県のほぼ全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、愛知県の多くの部分が含まれます。琵琶湖は、28~80 kmにあります。このことと、福島原発事故では事故炉から約 50 km 離れた飯舘村も全村避難であったことを考え合わせれば、美浜原発で重大事故が起これば、原発周辺の住民のみならず、何 100 万人もの人々が避難対象になりかねないことになります。避難は不可能です。

 重大事故では、琵琶湖が汚染され、関西 1400 万人以上の飲用水が奪われます。若狭湾が汚染され、観光や漁業が壊滅します。しかも、今、新型コロナウイルスの感染終息の兆しも見えません。この中で、超危険な老朽・美浜原発 3 号機が稼働され、重大事故を起こたら、避難のバスの中で、長期にわたる避難生活の中で、感染を防ぐことは不可能です。大勢の感染者が出ます。医療崩壊が起こります。コロナの終息が宣言されるまでは、原発の運転を見合わせることが最低限の企業倫理です。

 以上のように、関電が原発の運転に足る資質、体制、企業倫理に欠けることは明らかです。そのため、関電については、小口顧客の 40%近くが離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。

 このような視点に立って、私たちは、貴関西電力に、以下を申し入れます。

【1】 危険極まりない老朽原発・美浜 3 号機の再稼働準備を即時中止し、廃炉を決定してください。
【2】 原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。貴社の有する全ての原発を停止し、安全な廃炉を進めてください。

 なお、貴社が、私たちの再三の危険性指摘を無視して原発を稼働して、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます。

2021 年 5 月20 日
5.20 申し入れ・抗議行動参加者一同

◆危険すぎる老朽原発うごかすな!重大事故が起こったとき避難は困難

【2021年1月~,京都キンカンなど各地で配付】

原発は現在科学技術で制御できない

◎福島原発事故から 10 年を超えましたが、この事故は、原発が重大事故を起こせば、人の命と尊厳を奪い、職場を奪い、農地を奪い、海を奪い、学校を奪い、生活基盤を根底から奪い去ることを、大きな犠牲の上に教えました。

原発が重大事故を起せば、放出された放射性物質が風や海流に乗って運ばれ、被害は広域におよびます。福島原発事故では、事故炉から 50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、200 km 以上離れた関東でも高放射線地域が見つかっています。

原発事故の被害は長期におよびます。福島原発事故で避難された方の多くは今でも、避難先で苦難の生活を送っておられます。事故を起した原子炉の内部の様子は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていません。汚染された土壌の除染法はなく、ごく表層をはぎ取ってフレコンバックに保存する他はありません。

 トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が溜り続け、太平洋に垂れ流されようとしています。

◎原発は、事故を起さなくても、運転すれば、トリチウムを含む冷却水を垂れ流します。

 以上のように、原発は現在科学技術で制御できる装置でないことは明らかです。

原発が老朽化すれば危険度が急増

 原発は事故の確率が高い装置ですが、長期間運転すれば、危険度はさらに高くなります。したがって、政府は、福島原発事故後 4~5 年間は、「運転開始後 40 年を超えた原発の稼働は例外中の例外」としていました。そのため、40 年超えの原発は老朽原発と呼ばれています。2021 年 4 月現在、高浜原発 1 号機(46 年超え)、2 号機(45 年超え)、美浜原発 3 号機(45 年超え)、東海第 2 原発 1 号機(42 年超え)が老朽原発です。

 原発が老朽化すれば、交換することのできない圧力容器(原子炉本体)などが脆化(ぜいか;もろくなること)し、配管が腐食などによって減肉(やせ細る)あるいは応力腐食割れ(腐食環境にある金属に力が加わって生じる亀裂)などが生じます。

 また、老朽原発では、建設時には適当とされていたが、現在の基準では不適当と考えられる部分が多数あります。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中には交換不可能なものがあります(圧力容器など)。

 それでも、関西電力(関電)と政府は、原発の 40 年超え運転は「例外中の例外」としていた約束をホゴにして、老朽原発・高浜 1、2 号機,美浜 3 号機の再稼動を画策しています。

老朽原発の運転認可後に、想定外の
トラブル、人身事故、不祥事が頻発

 原子力規制委員会(規制委)は、2016年、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機の40年超え運転を、拙速審議によって認可しました。しかし、この認可以降に、関電の原発では、トラブル、死亡を含む人身事故、原発マネーに関わる不祥事などが頻繁に発生・発覚しています。規制委による審査の過程では想定されていなかったことばかりです。

 原発の40年超え運転が、人の命や尊厳を軽視し、企業倫理をないがしろにして画策され、無責任な規制委がそれを認可していることを示しています。なお、規制委審査のいい加減さは、昨年12月4日の大阪地裁判決が端的に指摘しています。大阪地裁は、規制委が推定した原発敷地で生じる地震の大きさ(基準地震動)が過小であるとしたのです。

蒸気発生器で多発する配管損傷はとくに深刻

 頻発するトラブルの中でも蒸気発生器配管の損傷はとくに深刻です。関電の原発のような加圧水型原発の格納容器の中には、圧力容器と蒸気発生器(3~4 器)があります(図参照)。

 圧力容器の中には核燃料があり、蒸気発生器の中には、外経約 2.2 cm、肉厚約 1.3 mm の伝熱管と呼ばれる細管が約 3400本あります。圧力容器で 157 気圧、320℃の熱湯となった1次冷却水は、伝熱管内を巡って、伝熱管の外を流れる 2 次冷却水を沸騰させて、約 60 気圧、約 280℃の水蒸気にします。この水蒸気が、発電機に連結されたタービンを回します。

 もし、高温・高圧の一次冷却水が流れる蒸気発生器配管が完全に破断すれば、冷却水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があります。そのため、「蒸気発生器は、加圧水型原発のアキレス腱」と呼ばれています。

 最近では、高浜 4 号機(1 昨年 10 月)、3 号機(昨年 2 月)で、蒸気発生器伝熱管の外側が削れて管厚が 40~60%減少していることが見つかりました。関電は、混入した「異物(金属片)」が、配管を削ったためとしました。また、大飯 3 号機では、昨年 9 月、原子炉と蒸気発生器をつなぐ配管か枝分かれした直径約 11 cm、厚さ約 14 mm の配管(加圧器スプレー菅)の溶接部に、深さ約 4.6 mm、長さ約 6.7 cm の亀裂が発覚しました。原因は応力腐食割れ(前述:しばしば未熟な溶接技術によって生じる)とされています。関電は、次の定期検査まで運転を継続しようとしましたが、規制委は運転停止を命じました。さらに、高浜 4 号機では、昨年 11 月にも蒸気発生器伝熱管の外側からの減肉・損傷が発覚しました。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊(スケール)がはがれて、伝熱管を減肉・損傷させたと発表しました。

 人がうっかりミスで持ち込んだ「金属片」、自然発生した鉄さびの塊、腐食で脱落したボルトなどが、冷却水の流れに乗って高速でかけ巡って、配管を損傷させているのです。

 破断すれば重大事故を招く蒸気発生器配管の損傷は多数に上ります。例えば、高浜原発 3 号機では、2018 年 9 月段階で約1 万本の伝熱管の内、364 本が摩耗によって使用不能になり、栓がされています。

 蒸気発生器の破損は、取り替えたばかりの蒸気発生器でも起こっています。米国のサン・オノフレ原発 2、3 号機では、2010年、2011 年に蒸気発生器を新品に取り替えましたが、2012 年、両機ともに 3000 本以上の蒸気発生器伝熱管に早期摩耗が発見され、2013 年 6 月に廃炉となりました。

 このように損傷し易い蒸気発生器ですが、高浜 1、2 号機、美浜 3 号機の蒸気発生器は、更新後、約 25 年も経過しています。それでも、規制委はこれらの原発の運転を認可しています。腐食、減肉、損傷が頻発する蒸気発生器を持ち、運転開始後40 年をはるかに超えた老朽原発・高浜 1、2 号機、美浜 3 号機の運転を許してはなりません。

原発重大事故時、避難は不可能

避難訓練を行わなければならないほど
危険な施設は原発だけです

 政府や自治体は、原発重大事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、政府や自治体で考えている「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、避難に要するバスの台数も避難する場所も全く足りません。政府や自治体は、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視して、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。(大規模で長期の避難訓練は不可能であるからです。)

 原発が重大事故を起こせば、原発近辺だけでなく広範な周辺地域も放射性物質で汚染されます。高浜原発から福井県庁は 88 km 離れていますが、京都府庁は 59 km、滋賀県庁は64 km の地点にあります。若狭の原発から 100 km の圏内には、76 万人が住む福井県のみならず、257 万人が住む京都府、141 万人が住む滋賀県の全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、奈良県の多くの部分が含まれます。福島事故では、事故炉から約 50 km 離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の原発で重大事故が起こったとき、何 100万人もが避難対象になりかねません。避難は不可能です。琵琶湖は、高浜原発から 50~72 km、美浜原発から 28~80 kmにあり、汚染されれば、1400 万人以上が飲用水を失います。

 なお、水戸地裁は、3 月 18 日の判決で、老朽東海第 2 原発の運転差し止めを命じました。「避難計画が不十分で、重大事故を起こしたとき、避難が困難であるから原発を運転してはならない」とした、圧倒的な民意に支えられた判決です。

処理法も行き場もない
使用済み核燃料を増やし続ける関電

 原発を運転すれば、処理法がなく、何万年もの長期保管を要する「負の遺産」・使用済み核燃料を残しますが、その処分地どころか中間貯蔵すら引き受けるところがありません。

 それでも、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を何度もホゴにして、原発の運転を続け、使用済み核燃料を増やし続けています。その上、老朽原発再稼働まで画策し、使用済み燃料をさらに増加させようとしています。

 なお、関電は、それまで 2020 年末としていた中間貯蔵候補地提示期限を2023年末へとさらに先送りしました(本年2月)。むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性を拠り所にした先送りですが、宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発しています。

 関電は、何の成算も無く「空約束」し、平気でそれをホゴにする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業です。

原発マネーにしがみ付く
立地自治体の議会や首長

 昨年 11 月から本年 2 月にかけて、関電と政府の意を汲み、原発マネーにしがみつく高浜町、美浜町の議会と町長は早々に老朽原発再稼働への同意を表明しました。

 一方、経産相、資源エネルギー庁長官、関電社長との 4 者会談(2 月 12 日)で、老朽原発再稼働への同意を求められた福井県の杉本知事は、それまでの「中間貯蔵候補地提示が前提」とする発言を一転させ、県議会に老朽原発再稼働に向けた議論を要請しましたが、県議会は、知事の変節を納得せず、老朽原発に関する議論は一旦中断しました。しかし、この中断は、国からさらなる見返りを得るための作戦であり、県知事は国から1原発最大 25 億円の交付金(2 原発で計 50 億円)を引き出し、梶山経産大臣の「原子力を持続的に活用する」との原発推進に前のめりな姿勢を強調する言質を取り、4月28日、再稼働同意を発表しました。

 結局、原発立地自治体は、「自治体住民の安全・安寧の保全が地方自治の基本」であることを忘れ、住民の安心・安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、政府は、税金によって立地自治体を買収して、労協原発再稼働を恐々仕様としているのです。

 このように原発を推進する人たちは、その理由として、「国策だから」、「規制委が、世界一厳しい基準で審査して、運転を認めているから」、「町の経済発展に不可欠だから」などを挙げています。

 しかし、国策で進められた福島原発で大事故が起こり、多くの人々が今でも、苦難の生活を続けておられます。自治体住民の安全・安寧を保全することが地方自治の基本であることに鑑みれば、国策にかかわらず、住民に塗炭の苦しみを与える重大事故を起こしかねない老朽原発の再稼働など認めてはならないことを示しています。

 また、規制委の認可を得て再稼働した原発で、事故やトラブルが頻発している事実は、「世界一厳しい審査基準」に適合した原発であっても、トラブルや事故は避けえないこと、規制委の審査がいいかげん極まりないことを示しています。

 さらに、もし、原発で重大事故が起これば、地域の経済発展どころか、地域は 2 度と住めない故郷になる可能性があります。老朽原発の再稼働は、一時の経済的利益のため、私企業・関電の利益のために画策されているとしか考えられません。

老朽原発運転を企むのは
原発で私腹を肥やす関電

 1 昨年9 月、関電が支払った原発関連工事費が、多額の金品として関電幹部に還流されていたことが暴露され、また、昨年3 月には、電気料金値上げの際にカットした役員報酬や役員が追加納税した税金を、退任後、関電が補填していたことが発覚し、多くの人々の怒りをかっています。

 関電は、不祥事の発覚後も、原発の運転を継続し、危険極まりない老朽原発まで再稼働させようとしています。また、不祥事を反省して役員人事を刷新したとしていますが、不祥事の調査は不十分で、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。例えば、関電は、去る 2 月 10日、「競争入札を経ない発注(特命発注)などにより、地元企業の活用に努める」として、戸嶋美浜町長の美浜 3 号機再稼働への同意を取り付けました。これは、関電の経営体質は、原発マネー不祥事後に行った「人事刷新」によっても全く変わっていないことを物語るものです。関電幹部には、企業倫理や法令を遵守する姿勢がないことは明らかです。

原発ゼロ法案を実現し、
原発に依存しない若狭を!

  原発地元の自治体や経済界は、脱原発をしたら地域経済が成り立たなくなると宣伝しています。

 しかし、国会の経産常任委員会に付託された「原発ゼロ法案」では、
①全ての原発等の速やかな停止→廃止、
②電気の需要量の削減、
③再生可能エネルギー電気の供給量の増加をを謳(うた)うとともに、
④原発を停・廃止する「事業者への支援、周辺地域の雇用・経済対策」を行うための「法制
上、財政上、税制上、または、金融上の措置」を条文として要求しています。
「原発ゼロ法案」が施行されれば、原発に頼らない地域の構築に向かって踏み出すことができます。

 2 年余りも棚ざらしされているこの法案の審議を要求し、経済的不安をも克服して、脱原発社会を目指しましょう!

原発電気を拒否しよう!

 原発延命に奔走し、電気料金の高い関電については、今、小口顧客の 30%以上(本年 2 月末現在)が見切りをつけ、離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。老朽原発再稼働は、関電にとっても危機となるのです。原発電気 NO の行動に起ちましょう!

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原発ゼロに向けて、

「老朽原発うごかすな!」の声を上げよう!

「老朽原発うごかすな!大集会in おおさか」

に結集しよう!

6 月 6 日(日)13 時 うつぼ公園

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老朽原発うごかすな!実行委員会 (連絡先:木原 090-1965-7102)
2020年2月発行


◆民意を逆なでし、住民の命と人格権を蹂躙する立地自治体の原発推進議員と首長を許すな!

【2021年4月30日,京都キンカンで配付】

重大事故で避難は不可能
使用済み核燃料は処分法も保管場所もない
汚染水は海に垂れ流し
それでも、老朽原発再稼働に同意

民意を逆なでし、住民の命と人格権を蹂躙する
立地自治体の原発推進議員と首長を許すな!

老朽原発再稼働同意の茶番劇

 関電は、運転開始後40年をはるかに超え、危険極まりない老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を再稼働させようとしています。また、「原発の40年超え運転は例外中の例外」としていた政府は、この約束を反古にして、老朽原発再稼働に躍起です。さらに、関電と政府の意を汲み、原発マネーにすがりつく高浜町、美浜町の議会と町長は早々と老朽原発再稼働への同意を表明しています。

 一方、杉本福井県知事は、2月の経産大臣、資源エネルギー庁長官、関電社長との会談の後、それまでの「関電が使用済み核燃料の県外中間貯蔵候補地を提示することが議論の前提」とする態度を一転させ、県議会に再稼働に向けた議論を要請しましたが、県議会は知事の変節に納得せず、老朽原発に関する議論は一旦中断しました(3月12日)。ただし、この中断は、再稼働同意を諦めたのではなく、再稼働同意に対する国からのさらなる見返りを求めて、条件闘争をしたのです。

 これに対して知事は国から5年間で1原発最大25億円の交付金(2原発で計50億円)を取り付け、県議会に提示しました。これによって、県議会は、深い議論もなく、再稼働同意の判断を県知事に一任しました(4月23日)。

 その後、県知事は、美浜3号機、高浜1、2号機を視察し(4月24日)、また、森本関電社長の「プラントの安全性を社長自らが先頭に立って確保していく」という覚悟と決意を聞き(4月27日)、梶山経産大臣の「2050年カーボンニュートラル実現に向けて、原子力を持続的に活用する」との言質をとり(4月27日)、再稼働同意を発表しました(4月28日)。

結局、
・政府、関電、一部の原発関連企業の意のみに依拠し、「自治体住民の安全・安寧を保全することが地方自治の基本」であることを忘れた福井県知事や議会は、中間貯蔵候補地問題は棚上げにし、人々の安心・安全を犠牲にして、原発マネーを得ようとし、

・原発マネー不祥事、原発トラブル(蒸気発生器配管の損傷など)、約束違反(使用済み核燃料中間貯蔵候補地など)を頻発させている関電は、安全確保を空約束し、

・原発関連企業の利益のみを優先させる政府は、税金によって立地自治体を買収して、老朽原発再稼働を強行しようとしているのです。

数日から数カ月で、運転停止になる
老朽原発を何故再稼働するのか?

 新規制基準では、原発の運転には、特定重大事故等対処施設(特重施設;いわゆるテロ対策施設)の設置が義務付けられています。特重施設の設置期限は、高浜1、2号機が6月9日、美浜3号機が10月25日ですが、いずれも完成が期限に間に合わず、各々、約2年半、約1年半遅れるといわれています。したがって、これらの原発は、再稼働したとしてもこの期限が来た段階で停止しなければなりません。数日から数ヶ月しか稼働できない老朽原発を敢えて稼働させようとしたのです。

 これには、40年超え原発再稼働の運転実績をつくり、全国の原発の60年運転への道を開こうとする菅政権の意思が強く反映しています。

 一方、杉本福井県知事が老朽原発再稼働への同意を急いだのは、稼働認可された原発が6ヶ月経っても動かないと「電源立地地域対策交付金」が減額され、9ヶ月を過ぎるとゼロになるからともいわれています。高浜1、2号機は、2月15日に保安規定認可がおりていますから、この原発に関わる交付金は、6ヶ月後の8月までに稼働しないと減額、11月までに稼働しなければゼロになります。高浜1号機は、6月9日の特重施設の設置期限で停止しますから、それまでに稼働しておかないと、停止が2年半も続けば、交付金はゼロになることを懸念したからです。

関電、高浜1号機、当面の再稼働断念
反原発運動の成果

 4月29日、関電が、高浜1号機の再稼働を当面見送る方向で最終調整していることが明らかになりました(福井新聞報道)。特重施設の完成が間に合わず、再稼働しても、1週間程度で停止せざるを得ないためです。市民運動、裁判闘争をはじめとする反原発運動の成果ともいえます。

 ただし、関電は、美浜3号機の再稼働を優先させ、5月10、11日に、核燃料をサイトに搬入しようとしているという情報もあり、五月中の再稼働も危惧されます。あらゆる可能な行動で「老朽原発うごかすな!」を訴えましょう!

原発重大事故時、避難は不可能
避難訓練を行わなければならないほど
危険な施設は原発だけです

 老朽原発再稼働の風雲が急を告げる中、水戸地裁は、老朽東海第2原発の運転差し止めを命じました(3月18日)。「避難計画が不十分で、重大事故を起こしたとき、避難が困難であるから」とした、至極当然な判決です。

 政府や自治体は、原発重大事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、政府や自治体で考えている「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、避難に要するバスの台数も避難する場所も全く足りません。政府や自治体は、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視して、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。(大規模で長期の避難訓練は不可能であるからです。)水戸地裁判決は、このような現実を踏まえたものです。

 ところで、高浜原発から福井県庁は88km離れていますが、京都府庁は59km、滋賀県庁は64kmの地点にあります。若狭の原発から100kmの圏内には、76万人が住む福井県のみならず、257万人が住む京都府、141万人が住む滋賀県の全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、奈良県の多くの部分が含まれます。福島事故では、事故炉から約50km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の原発で重大事故が起こったとき、何100万人もが避難対象になりかねません。避難は不可能です。琵琶湖は、高浜原発から50~72km、美浜原発から28~80kmにあり、汚染されれば、1400万人以上が飲用水を失います。

 若狭の老朽原発が重大事故を起こせば、避難は不可能に近く、被害は広域かつ長期におよびます。重大事故を起こしかねず、避難計画を立てようもない老朽原発を再稼働させてはなりません!

福井県議会、県知事へ
多彩な抗議行動の展開

 杉本福井県知事は、4月6日、畑県議会議長に面談し、国から最大50億円の交付金を引き出したことなどを報告して、県議会での再稼働議論を再度要請しました。これを受けて、畑議長は、老朽原発再稼働に前のめりの姿勢をあらわにしました。議会として、美浜原発、高浜原発を現地視察し(4月14、15日)、2度の全員協議会を開催し、与党・「県会自民党」が会派として再稼働に同意を表明した後、1日だけの臨時議会を開催し(4月23日)、老朽原発再稼働に反対や慎重な議論を求める請願60件を、ほとんど審議せず、全て不採択としました。一方、再稼働を前提とした原発推進団体から出された請願1件は、賛成多数で可決しました。この後、県議会は、再稼働同意の可否を県知事に一任しました。これを受けて、先述のように、知事は、美浜3号機、高浜1、2号機を視察し(4月24日)、また、森本関電社長および梶山経産大臣との会談を行い(4月27日)、再稼働同意を発表しました(4月28日)。

 このような県議会と県知事の動きに、多彩な抗議行動が展開されました。

・全国から、ハガキ、FAX、電話、メールで、県会議長と県知事へ「老朽原発うごかすな!」を申入れました。

・4月14日:県議会議員の美浜原発の現地視察には、原発ゲート前で抗議行動を行いました(8人参加;15日の高浜原発視察にも1人が抗議行動)。

・4月23日:「オール福井反原発連絡会」の呼びかけに応えて、県庁前で抗議行動を行い、県議会傍聴闘争を行いました。この日、「オール福井反原発連絡会」は、朝一番に知事へ「原発に反対する団体と話し合うこと」を、次に議長へ「多数の陳情請願に対して担当委員会で請願者の意見を聴くなど丁寧な対応をすること」を申し入れ、正午ごろから、県庁前で「拙速な審議をするな」と県内外の50名(関西から11名が参加)を超える参加者でアピール行動を行いました。「6月議会で避難計画や老朽原発の危険性をしっかり議論すべき」「県内外からの多くの請願を慎重に審議して」「原発から30キロ圏の琵琶湖が汚染されれば関西全域の住民が被害者になる」など次々とマイクで訴えました。議会は午後1時に開会されましたが、傍聴席はほぼ埋まりました。議場内の熱気と裏腹に、老朽原発再稼働に反対や慎重な議論を求める請願60件が全て不採択となりました。多くの請願者の願いは握りつぶされたのです。畑議長は、議場内の拍手にも過敏に反応し「そうだ」「審議はつくされていない」との声に対して退場を命じるなど過剰に対応しました。

・中島哲演さん、石森修一郎さんが、福井県の拙速審議による再稼働同意に抗議して、断食に入られ、8日間続けられました。

▼4月14日美浜原発前での抗議行動

▼4月23日福井県庁前での抗議行動

▼4月23日福井新聞朝刊

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◆老朽原発うごかすな!大集会inおおさか

6月6日(日)

午後1時開会 午後2時半~ 御堂筋デモ

うつぼ公園

(大阪地下鉄四つ橋線、中央線本町駅下車)
主催:老朽原発うごかすな!実行委員会

老朽原発廃炉を突破口に、
原発のない社会を実現しよう!

(くわしくは → こちら

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◆4月23日京都での
「6.6老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」への
参加要請行動での一コマ

あとからくる者のために
坂村真民「詩集・詩国」より

あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ
あとからくる者のために
しんみんよお前は
詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海をきれいにしておくのだ
あああとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々(それぞれ)自分で出来る
何かをしてゆくのだ
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老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先;木原090-1965-7102)


◆菅政権の企む2 つの犯罪①朽原発再稼働、②汚染水の垂れ流しを許してはならない!

【2021年4月16日,京都キンカンで配付】

菅政権の企む2つの犯罪
①老朽原発再稼働、
②汚染水の垂れ流し
を許してはならない!
許せば、
①全原発の60年運転、
②全核施設からの放射性物質汚染水放出の恒常化
に道を開く!

(老朽原発再稼働については別に譲り、ここでは放射性物質汚染水垂れ流しの犯罪性について述べる。)

 政府は、4月13日、福島原発で増え続ける放射性物質汚染水の海洋放出を決定しました。2年後を目途に放出を始めるとしています。なお、汚染水は3月時点で約125万トンたまり、来年秋には千基以上あるタンクの容量(137万トン)が満杯になるといわれています。また、この汚染水放出で生み出された空地を、福島2号機の溶融核燃料の取り出しや1、2号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し作業に必要な施設の用地にする計画もあります。

汚染水を「処理水」と言いなす
政府の欺瞞

 この水は、ALPSという吸着装置で処理したからと言っても、全く除去できないトリチウム(三重水素)、ALPSで除去しきれなかった放射性物質(ヨウ素、ストロンチウム、セシウムなど)を含んでいて、処理できていない水=汚染水です!

「政府が前面に立って
安全性を確保する」という空約束

 政府は、海洋放出の決定にあたって、「政府が前面に立って安全性を確保する」としていますが、同じように安全を確保すると言って運転した福島原発が重大事故を起こし、現在稼働中や稼働準備中の原発ではトラブル続きです。原発は現在科学技術で「安全を確保できる」ものではなく、この約束が国民だましの「空約束」であることは明らかです。政府の「安全確保」の技術とは「水で薄める」だけです!

トリチウムは、
法令基準の「1/40に希釈」しても
環境中濃度の1000倍以上

 海水中のトリチウム濃度は、1リッターあたり1ベクレルのレベルです。
 これに対し、原発からの放出水では、1リッターあたり60000ベクレルが規制値とされています。これは、原発を運転すれば、この濃度のトリチウムが生成し、それを除去する方法が無いからです。すなわち、60000ベクレルは原発を運転するために設定された濃度で、生態系等への影響は考慮されていないのです。
 政府が「安全を確保する」とした汚染水中のトリチウム濃度は、60000ベクレルの1/40ですから、海水中濃度の1000倍以上です。

汚染水に含まれる放射性物質は
トリチウムだけではない
(通常の原発排水とは異なる!)

 今、垂れ流そうとしている汚染水には、トリチウムだけでなく、ALPSで取りきれなかった、セシウム、ストロンチウム等の放射性物質が残存しています。これらを希釈して流しても、海の中で、生体濃縮されて、生態系を循環する可能性があります。
 放射性物質の残存について、2018年10月3日の毎日新聞は、「東電は、ALPSによってトリチウム以外の放射性物質の濃度を基準値以下にできると説明してきた。ところが、2018年8月時点でタンクに貯蔵していた処理水89万トンのうち75万トンは、トリチウム以外の放射性物質を浄化しきれていなかった。基準の100倍以上の放射性物質を含む処理水だけで、6万5000トンもあった」と報道しています。ALPSでの処理は完全ではないのです。
 政府は、放射性物質が残存する汚染水は、再度処理するとしていますが、どの程度とれるかは疑問です。
 一方、最近、ALPSでは取り除けない炭素14(14C:156keVのベータ線を出して崩壊;半減期5730年)が問題視されています(eVはエレクトロンボルトというエネルギーの単位)。東電が出した2014年の資料では「14Cは検出されず」となっていましたが、データを再検討した結果、その存在が浮かび上がったのです。14Cはあらゆる有機物に組み込まれます。生体内ではDNAにも取り込まれ、これを損傷します。半減期が長いので、環境へ影響を及ぼし続けます。「風評被害」だけではなく、実際の被害が発生する危険性も大です。

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環境中のトリチウム出所

①自然界で生成したもの
宇宙線(中性子、陽子)が大気中の窒素や酸素と核反応してトリチウムが生成します。
14N+1n→3H+12C   16O+1n→3H+14N
②過去の核実験で大量に放出され、今でも残っているもの
③原発や核燃料再処理工場などの原子炉関連施設から放出されたもの
【核燃料の冷却水に含まれる重水素(0.015%)に中性子が吸収されてもトリチウムは出来ます。】
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トリチウムの性質

①トリチウム(3H;陽子1個、中性子2個、電子1個で構成)は、化学的には普通の水素(1H;陽子1個、中性子0、電子1個で構成)とほぼ同じように挙動しますから、水や有機物(例えば、体内のDNAやタンパク)とも水素の代わりに結合します。
②弱いベータ線(18.6keV;eVはエレクトロンボルトというエネルギーの単位)を出してヘリウム3(3He)に変わります(半減期;12.32年)。このエネルギーの放射線は、紙1枚で遮蔽できます。→このことは生体内に取り込まれたトリチウムがベータ線を出すと、そのエネルギーの全てが体内で吸収されることを意味します。エネルギーが弱いといっても、生体内のDNAやタンパクの結合エネルギーは0.01eV程度~数eVであり、これに比べれば、18.6keV(=18600eV)は数万倍以上であり、このベータ線が生体内で1つ出れば(内部被曝)、原理的にはDNAやタンパク中の化学結合が数万も切断(損傷)されることになります(発癌要因になる)。ただし、DNAやタンパクには修復能力がありますから、トリチウムの濃度が薄い場合には、損傷したDNAやタンパクは修復されます。しかし、修復能力以上にトリチウムが生体内に取り込まれたときには、発癌します。
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人の命や安全を蹂躙する
政府と東電

 汚染水の垂れ流しを画策する政府や東電は、汚染水の放出が、漁業に携わる人々の生活を蹂躙し、現在だけでなく未来の人々までもの命と健康をむしばみ、世界の人々に不安を与えることを全く無視しています。このことは、下の記事中の麻生財務相の思いあがり発言1つをとっても明らかです。
 しかも、汚染水を垂れ流そうとしている東電は、コンプライアンス(法令遵守)の姿勢が全く感じられない企業です。その象徴的な出来事は、東電柏崎刈羽原発での核防護不備です。この原発では、昨年3月以降、計15ヶ所でテロ目的などでの侵入を検知する設備が故障したままになっていました。また、今年1月には、所員が同僚のICカードを不正に使って、中央制御室に入っていたことも判明しています。
 そのため、原子力規制委員会は東電柏崎刈羽原発に運転停止命令を出しています(4月14日)。
こんな政府と東電が、汚染水を垂れ流そうとしているのです。許してはなりません!

▼2021年4月16日京都新聞朝刊

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報告とお礼

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 老朽原発うごかすな!実行委員会は、緊急現地行動として、4月12日、高浜原発4号機再稼働抗議行動(約30人参加)を展開し、4月14日、福井県会議員の美浜原発視察に対して、同原発前で抗議・要請行動(8人参加)に起ちました。
 ご参加ご支援いただきました皆様に感謝し、お礼申し上げます。

▼2021年4月13日中日新聞・県民福井朝刊

▼2021年4月13日毎日新聞朝刊

▼2021年4月14日美浜原発前での抗議・要請行動


老朽原発うごかすな!実行委員会
(連絡先木原090-1965-7102)


◆3/20「関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会」

【2021年3月24日,老朽原発うごかすな!実行委員会MLで配付開始】

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 報告とお礼
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 関電は、運転開始後40年をはるかに超え、危険極まりない老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を再稼働させようとしています。また、「原発の40年超え運転は例外中の例外」としていた政府は、この約束を反古にして、老朽原発再稼働に躍起です。さらに、関電と政府の意を汲み、原発マネーにすがりつく高浜町、美浜町の議会と町長は早々に老朽原発再稼働への同意を表明しています。一方、杉本福井県知事は、2月12日、経産相、資源エネルギー庁長官、関電社長との4者会談の後、それまでの発言を一転させ、県議会に「再稼働に向けた議論」の開始を要請しましたが、県議会は知事の急な変節を納得せず、3月12日の予算決算特別委員会で再稼働審議を見送りました。ただし、福井県議会は、再稼働同意を諦めたわけではありません。再稼働同意に対する国のさらなる見返りを求めて、条件闘争をしているのです。

 このような中、水戸地裁は、3月18日、老朽原発・東海第2原発の運転差し止めを命じました。誰もが不可能だと考える避難の問題を真っ向から取上げ、避難できないから原発を動かしてはならないとした点は、全国の反原発運動にとって大きな追い風になるでしょう。圧倒的な民意に支えられた判決です。

 原子力規制委員会が推定した原発敷地で発生する地震の大きさが過小であることを指摘した大阪地裁判決(昨年12月4日)、避難者への東電と国の責任を認めた東京高裁判決(本年2月19日)に続く快挙です。
100km圏内に京都、滋賀の全域、大阪、兵庫、岐阜の多くの部分が含まれる若狭の原発が重大事故を起こしたら避難は不可能であることを、もっともっと声を大にして訴えなければなりません。

 一方、3月17日に大阪地裁で「コロナ禍の中で原発うごかすな」を求めた仮処分裁判について不当決定が出され、18日に広島高裁で「伊方原発3号機運転差し止め」仮処分に対する異議審で不当決定が出されていますが、最近の裁判では勝利判決の割合が増えています。

 さらに、最近の世論調査では、脱原発を望む声が82%にも達し、ますます大きくなっていると報道されています。

 これらを考え合わせれば、私たちが、創意と工夫を凝らした行動をさらに拡大すれば、老朽原発再稼働を阻止し、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現できる日も近いと考えられます。

 なお、関電が1月、3月に再稼動させようとしていた美浜3号機、高浜1号機は、未だに燃料装荷すらされていません。通常、燃料装荷は、稼働の1ヶ月前に行いますから、再稼動は少なくとも3ヶ月遅れていることになります。市民運動、裁判闘争を始めとする反原発運動の成果ともいえます。

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 「老朽原発うごかすな!」の声は、
 ますます大きくなっています
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 3月20日の「関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会」および町内デモには400人以上が参加されました。また、この集会の前段として行われた、高浜原発周辺でのデモ行進、抗議・申し入れ集会には250人以上が結集され、集会の行われた北ゲート前広場は溢れかえりました。

 高浜町文化会館での全国集会では様々な地域、多様な団体からの発言がありました。中嶌哲演さんの「福井県知事や県議会に老朽原発うごかすな!の声を」「原発で作った電気は買わない」「原発ゼロ基本法案を成立させよう」などを訴える主催者挨拶、福島で次々と出てくる困難な状況の紹介、水戸地裁判決の報告、青森・福島・富山・東京・愛媛・香川など全国各地の代表の自己紹介、若狭湾沿岸の8つの市や町の代表の「故郷を放射性物質汚染地域にしてはならない」という切実な訴えと反原発運動の報告、被ばく労働についての問題提起、3つの労働団体からの連帯の挨拶、いずれにも大きな拍手がわきました。井戸謙一弁護士の「エリート裁判官までもが原発運転を許さない判決をする時代がやってきた」との指摘と「次の過酷事故が起こる前に原発全廃を勝ち取るスピード感を持った運動の重要性」の訴え、京都北部の2反原発団体からの連帯表明、全国ほぼ全ての原発、核施設立地で闘う皆さんから寄せられ、原発、核施設の現状、運動の様子をまとめたメッセージ集も配布されました。

 集会後は、歴史を感じさせる旧街道を経由して、「老朽原発動かすな!」を訴える力強いコールを挙げながら、長蛇の町内デモを敢行しました。デモは、狭い街道ながら、道一杯に拡がり、フランスデモの様相を呈するものとなりました。窓を細く開けて見ている人、玄関前で笑顔で手を振ってくれる人、肩を震わせて泣きながら手を合わせて感謝を述べる老婦人など、反原発の願いの大きさを感じました。幼い男の子が、デモに呼応するように拳を振り上げ何度も、「オー!オー!」と響き渡る透明な声で応援してくれた時は、嬉しく一同どっと笑って、一緒に、「オー!っ」と拳を挙げました。

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 「関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会」にご参加、
 ご支援いただきました皆様、有難うございました。

 (写真の下の集会決議をご参照ください)
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老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先;木原090-1965-7102)


▼高浜原発北ゲート前行動▼



 

 


▼関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会▼



 

 


▼高浜町内デモ▼



 

 


▼新聞報道▼


▼2021年3月21日毎日新聞朝刊

▼2021年3月21日福井新聞朝刊


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 「関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会」集会決議

 老朽原発廃炉を突破⼝に、
 原発全廃をかちとろう︕

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 福島原発事故から10年が経ちましたが、この事故は、原発は現在科学の手に負える装置でないことを大きな犠牲の上に教えています。その原発が老朽化すれば、原子炉や配管の脆化、金属疲労、腐食などが進み、危険度が急増します。

 それでも、関電と政府は、運転開始後40年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を再稼動させ、全国の原発の60年運転に道を開こうとしています。

 ところで、老朽原発の再稼働を原子力規制委員会(規制委)が認可した2016年以降に、関電の原発では、蒸気発生器配管の減肉・損傷、再稼働準備工事中の人身事故、原発関連工事費の不正還流など、トラブル、事故、不祥事が頻発しています。また、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を県外に探すとした約束を何度も反古にしておきながら、原発の運転を続け、使用済み核燃料を増やし続けています。

 これらのトラブル、事故、不祥事、約束不履行の多くは、老朽原発再稼働認可の審査過程では想定されていなかったことです。原発の40年超え運転が理不尽であり、再稼働認可の拠り所となった新規制基準が極めて不完全で、規制委の審査がいい加減であることを示しています。なお、昨年12月に、基準地震動の評価が過小であるとして、大飯原発3、4号機の設置許可取り消しを命じた大阪地裁判決は、規制委審査のいい加減さを端的に指摘しています。

 一方、関電に関して、1昨年発覚した原発マネーに係わる不祥事の調査は,未だに納得できるものではなく、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。例えば、関電は、先月10日、「競争入札を経ない発注(特命発注)などにより、地元企業の活用に努める」として、戸嶋美浜町長の美浜3号機再稼働への同意を取り付けました。これは、関電の経営体質は、原発マネー不祥事後に行った「人事刷新」によっても全く変わっていないことを物語るものです。

 このように、関電が原発の運転に足る資質、体制、企業倫理を持たないことは明らかです。そのため、関電については、小口顧客の40%近くが見切りをつけ、離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。

 それでも、立地自治体である高浜町、美浜町の議会と町長は早々に老朽原発再稼働への同意を表明しています。一方、杉本福井県知事は、2月12日、経産大臣、資源エネルギー庁長官、関電社長との4者会談の後、それまでの発言を一転させ、県議会に「再稼働に向けた議論」の開始を要請しましたが、県議会は知事の急な変節を納得せず、3月12日の予算決算特別委員会で再稼働審議を見送りました。

 なお、関電が1月、3月に再稼動させようとしていた美浜3号機、高浜1号機は、未だに燃料装荷すらされていません。通常、燃料装荷は、稼働の1ヶ月前に行いますから、再稼動は少なくとも3ヶ月遅れていることになります。その上、福井県議会が再稼働同意を見送った現状からすれば、再稼働がさらに遅れることは確実です。市民運動、裁判闘争を始めとする反原発運動の成果ともいえます。ただし、福井県議会は、再稼働同意を諦めたわけではありません。福井県議会、県知事に再稼働に同意しないようにさらに強く求めましょう!

 ところで、水戸地裁は、一昨日の判決で、老朽原発・東海第2原発の運転差し止めを命じました。「原発が重大事故を起こしたら避難は不可能」および「老朽原発うごかすな!」の圧倒的な民意に支えられた判決です。一方、最近の報道では、脱原発を望む声が82%にも達し、ますます大きくなっています。創意と工夫を凝らした行動によって、この声をさらに拡大し、老朽原発再稼働を阻止し、2年余りも店(たな)ざらしにされている「原発ゼロ基本法案」を成立させ、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しましょう!

2021年3月20日
「関電よ💢老朽原発うごかすな!高浜全国集会」参加者一同

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 創意と工夫を凝らした行動をさらに拡大し、
 老朽原発再稼働を阻止し、
 原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を
 実現しましょう!
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◆1/24 「関電よ💢老朽原発うごかすな!大集会」報告とお礼

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◆報告とお礼
 コロナニモ、雨ニモマケズ、350 名超が結集

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 関電は、原発に関連して、一昨年来、原発マネーの不正還流、再稼働準備工事中の人身事故、蒸気発生器配管の損傷をはじめとするトラブル、使用済み核燃料中間貯蔵候補地に関わる約束違反など、不祥事を頻発させています。関電の倫理や技術は崩壊し、地に落ちていることを物語っています。

 それでも、関電は、運転開始後40 年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2 号機、美浜3 号機を本年早々にも再稼動させ、全国の原発の60 年運転に道を開こうとしています。

 関電は、昨年9 月、美浜3 号機、高浜1 号機の安全対策工事が終了したと発表し、各々の原発の本年1 月、3 月再稼働を画策していました。また、立地自治体・美浜町、高浜町の町議会は、再稼働同意を決議しています(昨年12 月、11 月)。

 しかし、もう一つの立地自治体・福井県の杉本知事は、「使用済み核燃料中間貯蔵候補地が提示されない段階では、再稼働を論じることはできない」としています。また、美浜町長、高浜町長も再稼働同意を逡巡しています。

 そのため、美浜3 号機の再稼働は、少なくとも1 カ月以上遅れています。再稼働を阻止し得ている背景に、「老朽原発うごかすな!」運動の高揚があることは言わずもがなです。

 なお、関電は「2018 年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言していました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、その時「候補地提示期限を2020 年末まで」と再約束しました。関電は、この再約束もホゴにして、大飯原発4 号機を、1 月15 日、起動させ、老朽原発再稼働まで画策しているのです。しかも、去る12 月4 日に、大阪地裁が大飯原発3、4 号機の設置許可の取り消しを命じ、国が控訴した、係争中の大飯原発4 号機の起動です。

 関電は、何の成算も無く「空約束」をし、平気でそれを反古にする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業と言っても過言ではないでしょう。

 昨年、「老朽原発うごかすな!実行委員会(実行委と略)」が呼びかけた「老朽原発うごかすな!大集会in おおさか」(9 月6 日)には、コロナ感染の拡大に加えて台風の中、1600人の参加を得ました。また、「老朽原発うごかすな!キャンペーン期間」(10 月1 日~11 月22 日)には、関西23 自治体に申入れを行いました。11 月23 日の「関電包囲大集会」(550人参加)を旅立ちとして、12 月9 日に美浜町に到着した「老朽原発うごかすな!リレーデモ」には延べ1380 人の参加を得ました。12 月9 日には、美浜町内デモ、町役場および関電原子力事業本部前での抗議・申入れ行動を闘いました(約200 人参加)。これらの昨年の行動は、脱原発を目指す関西、福井の市民団体、労働団体、政党のほとんどを含む220 の団体、840 人の個人の賛同を得て実行されました。昨年は、「老朽原発うごかすな!」を合言葉にした共闘の輪が大きく拡がった年でした。

 本年1 月15 日には、大飯原発4 号機再稼働阻止緊急行動を呼びかけましたが、40 名ものご参加の下、おおい町内デモ、原発前抗議、申し入れ集会を行いました。

 まだまだ、老朽原発再稼働を許してはいません。私たちの闘い如何では再稼働を阻止できます。

 1月24 日の関電前「関電よ💢老朽原発うごかすな!大集会」には、そのようなやむに止まれぬ決意をもって、コロナの緊急事態下、雨にも拘わらず、350 人超のご参加を得ました。

 ご参加、ご支援の皆様、ありがとうございました。

老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先;木原壯林(若狭の原発を考える会)

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◆主催者挨拶(要旨)
 原発ゼロ法案を実現し、原発に依存しない若狭を!

(老朽原発うごかすな!実行委員会・中島哲演)
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 原発地元の自治体 や経済界は、 原発経済から抜け出さないでいます。
しかし、国会の経産常任委員会に付託された「原発ゼロ法案」には、
① 全ての 原発等の速やかな停止―廃止、
② 電気の需要量の削減、
③ 再生可能エネルギー電気の供給量の増加を、あるいは、原発を停・廃止する「事業者への支援、周辺地域の雇用・経済対策」を、
「法制上、財政上、税制上、または、金融上の措置」を、条文として維持しているのです。 この法案は、2 年 余りも棚ざらしされていますが、その審議の開始こそ、経済的な不安をも克服する胎動へと続いています。
 原発電気を拒否しよう
原発延命に狂奔し、電気料金の高い関電については、今、小口顧客の 30 %以上 (昨年 11 月現在) が見切りをつけ、離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。老朽原発再稼働は、関電にとっても危機となるのです。 関電の「新たな時代」への転換を勧告してや みません 。

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◆集会宣⾔
 ⽼朽原発廃炉を突破⼝に、
 原発全廃をかちとろう︕

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 福島原発事故から10 年になりますが、避難者の多くが今でも故郷を失い、苦難の生活を続けておられます。事故炉内部は未だに不明で、増え続ける放射性汚染水は太平洋に垂れ流されようとしています。原発は、現在科学の手に負える装置でないことは明らかです。

 その原発が老朽化すれば、原子炉や配管の脆化、金属疲労、腐食などによって、危険度が急増します。

 それでも、関電と政府は、運転開始後40 年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2 号機、美浜3 号機を本年早々にも再稼動させ、全国の原発の60 年運転に道を開こうとしています。

 ところで、原子力規制委員会(規制委)が、老朽原発の運転を認可したのは2016 年ですが、認可以降に、関電の原発では、トラブル、人身事故が頻発しています。

 トラブルの中でも、高温・高圧の一次冷却水が流れる蒸気発生器や加圧器の配管の損傷はとくに深刻です。もし、これらの配管が完全に破断すれば、冷却水が噴出し、原子炉が空焚きになる可能性があるからです。配管の損傷は、昨年だけでも、高浜3 号機および4 号機の蒸気発生器伝熱管、大飯3 号機の加圧器スプレイ配管で発見されています。

 蒸気発生器伝熱管の減肉・損傷を生じさせた原因物質について、関電は、配管内で自然発生した鉄さびの塊であると発表しています。鉄さびの塊や腐食で生成した金属の破片などが、冷却水の流れに乗って原子炉内を高速でかけ巡って、配管を損傷させているのです。

 このような異物は、原発が老朽化すればどんどん増えます。運転開始後40 年をはるかに超える圧力容器を持ち、更新後25 年を超えた蒸気発生器を持つ高浜1、2 号機、美浜3 号機が安全なはずがありません。それでも、規制委員会はこれらの老朽原発の運転を認可しているのです。原発の40 年超え運転が理不尽であり、新規制基準が極めて不完全で、規制委の審査がいい加減であることを示しています。

 なお、規制委審査のいい加減さを端的に指摘したのが、去る12 月4 日に大飯原発3、4 号機の設置許可取り消しを命じた大阪地裁判決です。規制委は、原発運転の認可にあたって、基準地震動として過去の地震の大きさの平均値を採用し、原発の耐震性は平均値に見合ったもので可としています。大阪地裁は、これは、「バラツキ」を考慮していず、過小評価であるとしたのです。

 この判決に従えば、同様な方法で推定された老朽原発敷地の基準地震動も過小評価していることになります。

 一方、関電に関して、1 昨年発覚した原発マネーに係わる不祥事の調査は、未だに納得できるものではなく、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあります。もし、関電が真にこの不祥事を反省しているのなら、不祥事の原因となった原発の稼働を止め、原発稼働の是非を議論しなおすべきです。

 さらに、関電は、使用済み核燃料中間貯蔵候補地を福井県外に探すとした約束を2 度(2018 年、2020 年)もホゴにしています。

 このように、関電が原発の運転に足る資質、体制、企業倫理を持たないことは明らかです。

 そのため、関電については、今、小口顧客の30%以上が見切りをつけ、離脱しています。老朽原発を運転すれば、顧客の減少はさらに加速するでしょう。老朽原発再稼働は、関電にとっても危機となるのです。

 ところで、若狭の原発から100 km 圏内には、福井県のみならず、京都府、滋賀県のほぼ全域、大阪府、兵庫県、岐阜県の多くの部分が含まれます。このことと、福島原発事故では事故炉から約50 km 離れた飯舘村も全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の老朽原発で重大事故が起これば、何百万人もの人々が避難対象になります。避難は不可能です。

 しかも、今、新型コロナウイルスの感染が拡大し、終息の兆しも見えません。この中で、超危険な老朽原発が稼働され、重大事故を起こしたら、集団避難のバスの中で、長期にわたる避難生活の中で、ウイルスの感染を防ぐことは不可能です。それでも関電は、コロナはないかのごとく老朽原発再稼働を企てています。許してはなりません。

 今、私たちの運動はコロナの制約を受けていますが、私たちが萎縮すれば、政府や関電の意のままの政策がまかり通ることになります。コロナによって制約された分以上の行動を、創意と工夫によって創造し、老朽原発再稼働を阻止し、それを突破口に、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会を実現しましょう!

2021 年1 月24 日
「1.24 関電よ💢老朽原発うごかすな!大集会」
参加者一同

 
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◆原発をめぐる司法の状況
 井戸謙一弁護士の発言

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 みなさん、こんにちは。貴重な時間をいただいて、「原発めぐる司法の状態」について、ご報告いたします。

 昨年1月に広島高裁で伊方原発の差し止めの決定が出ました。そして12月に大阪地裁で大飯3・4号機の許可処分の取り消しの判決が出ました。いずれも重要な判決ですが、特に大阪地裁判決は非常に意義があるというふうに思っております。

 この第一報を聞いたときに海渡雄一弁護士は、潮目が変わったというふうに思ったそうです。私は第一報を聞いたときに「終わりの始まりだ」というふうに思いました。どういう意味でこの判決が重要なのかというとですね3つあると思います。

 ひとつは、被告が一電力会社ではなくて、「元締めである国」だということですね。

 それからふたつは、処分が違法だとした理由が、基準地震動策定段階における経験式のばらつきを考慮していないという問題で、これは大飯3・4号だけではなくて関西電力のすべての原発に共通する問題であり、かつ全国の電力会社のすべての原発に共通する問題です。この問題はすべての原発が抱えているということですね。

 それからみっつめは、大阪地裁行政部の判決であるということです。大阪地裁行政部というのはエリートのコースです。いままで原発の差し止めを認める判決はいくつか出ていますが、だいたいエリートコースからはずれた、地方の、変わった裁判官とかですね、定年まじかの高裁の裁判長とか、そういう人たちしか「差し止め判決」は出さないと言われてきました。今回の判決は、エリートコースの真っ只中しかもまだ年齢は50前後です。裁判官としてまだまだ将来もある、エリートコースに乗ってる裁判長の判決でした。弁護団に聞くとですね、森鍵裁判長は去年の4月に前の裁判長と交代で裁判長になったんですが、前の裁判長もこの「ばらつき問題」については、なみなみならぬ関心を示していたそうです。大阪地裁行政部の裁判長が二代続けて、「この処分は違法だ」と考えていたんであればですね、これは大変なことだと思います。

 じゃあ、本当に潮目が変わったのかどうかというのはこれからの裁判を見るとわかると思います。実はこれから判決・決定が目白押しです。

 まず3月12日に佐賀地裁で玄海原発の民事訴訟と行政訴訟の判決があります。この事件の弁護団は、今回の大阪地裁判決の弁護団と同じ人たちで、まったく同じ主張を玄海原発についてもしています。だから特に、このばらつき問題について、佐賀地裁はどういう判断をするのかというのは大変注目だと思います。

 それと3月18日、広島高裁で今、伊方3号機が止められていますが、これに対して四国電力が異議を出した。その異議審の決定が出ます。仮処分が維持されるかどうか、大変注目されるところであります。

 そして同じ日、水戸地裁で「東海第二原発の運転差し止め訴訟」の判決が出ます。東海第二原発というのは、全国で4つある老朽原発のひとつですね。老朽原発を動かしていいのかどうかということについて、初めて裁判所の判断が出ます。

 それから大阪地裁で今やっている「コロナが蔓延している状況では原発をうごかすな」という仮処分。これの判断も3月中に出ます。

 それから大飯4号機を(1月15日に)関電は動かし出しましたが、(大飯3・4号機の許可処分の取り消し)判決の原告の人たちが今、執行停止の申し立てをしています。 この執行停止が認められたら関電はせっかく動き出した大飯4号機をまた止めざるを得なくなります。大飯3・4号機は動かせなくなります。この判断も近く出ます。

 これらの判決・決定が目白押しです。このなかで本当に潮目が変わったのかどうかということがわかると思います。結果はどうなるかわからないけど この流れというのは着実に広がっていくと思います。(みんなの力が作り出した)この司法の潮目の変わりめを追い風にして是非市民運動を盛り上げて、老朽原発をうごかさない、全ての原発廃炉に向かって、頑張っていきましょう。ありがとうございました。
 
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◆老朽原発美浜3号機を動かすな!
 美浜町の河本猛(こうもと・たけし)さんからのメッセージ

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 美浜町議会議員の河本猛です。

 活断層に囲まれた敦賀半島に立地する美浜原発は、立地不適で危険な場所に存在しています。また、過去に死傷事故を起こしている老朽原発です。老朽原発には取り換えが不可能な重要機器があり、いくら高経年化対策を行っても老朽化した原発に鞭打って動かすのは非常に危険です。

 若狭地域の原発で発電した電気は、都市の関西圏で消費されてきました。しかし、関西圏に住む人々が「原発で発電する電気はもう必要ない!」と大きな声をあげています。美浜原発は不要な存在で、即時廃炉を決定するべきです。

 美浜町議会は昨年の12月定例会で、美浜原発3号機の再稼働について「議会同意」を可決してしまいました。その理由は、地元経済のためというのですから恥ずかしい限りです。

 「議会同意」は、原発事故が起これば避難を余儀なくされる30キロ圏内の住民、関西圏・中京圏の人々の生活を考えない身勝手なものでした。原発は、美浜町民の利益のため、自治体財源のために動かすものではありません。老朽原発美浜3号機は、広範囲の自治体住民の生活権、原発事故のない安全な暮らしを保障するために「なくす」べきものです。

 結果的に関西電力は、福井県と約束していた使用済み核燃料の県外搬出先の候補地が示せず、福井県は「原発40年超運転をはじめ、原子力のさまざまな課題の議論を進めることはできない」として、再稼働はストップしています。

 地元事業者の利益優先で、原子力を取り巻く課題が全く見えていない美浜町議会に原発の安全性を語る資格はありません。議会を傍聴されてきた皆さんは、「議会同意」のプロセスがいかに危険な判断であったかわかると思います。

 原発利益共同体に支配された地元任せの同意は非常に危険です。美浜原発はその影響を受ける広範囲の人々の判断で「なくす!」。そのために力を合わせましょう。

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◆福島からのメッセージ
 武藤類子さんより

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「関電よ💢老朽原発うごかすな!」大集会に参加の皆さまへ

 皆さま 寒い中を本当にありがとうございます。

 福島原発事故から10年がもうすぐ経ちます。原発事故は10年たっても収束することはおろか、溶け落ちた核燃料をはじめ汚染水や除染土、がれきや解体家屋など多くの放射性廃棄物を生み出し、問題は更に拡大しています。

 気候変動や激甚災害、コロナ感染拡大などこれからの時代に予想される出来事に私たちは、少しでもリスクを少なくしていかなくては、生き延びることができません。
危ない老朽原発を動かしてはいけません。

 最初に爆発を起こした福島原発1号機も運転から40年の老朽原発でした。
「せめて1号機を止めていたら…」と、どれだけ思ったかしれません。
力を合わせて、原発を止め、少しでも安全な社会を次世代のために創っていきましょう!

福島から武藤類子

◆2021.1.15 報告とお礼

【2021年1月22日,京都キンカンで配付】

 関電は、1月15日、定期点検中であった大飯原発4号機を起動させました。

 関電は「2018年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言していました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、その時「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束しました。関電は、この再約束もホゴにして、大飯原発4号機を起動させたのです。関電は、何の成算も無く「空約束」をし、平気でそれを反古にする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業と言っても過言ではないでしょう。

 しかも、去る12月4日に、大阪地裁が大飯原発3、4号機の設置許可の取り消しを命じ、国が控訴した、係争中の起動です。原子力規制委員会は、原発敷地で起こり得る地震規模の推定について、推定に用いる経験式で得られる規模は平均値であり、バラツキを考慮すればさらに大きな地震が発生する可能性があるから、「バラツキを考慮せよ」と規定していました。しかし、この規定にも拘らず、規制委員会は、原発運転の認定にあたっては平均値を基準地震動として採用し、原発は平均値に見合った耐震性で可としています。大阪地裁は、これが過小評価であるとしたのです。

 この大飯原発4号機の起動は、新型コロナウイルス(コロナ)の感染が拡大する中での起動です。コロナ下で原発が重大事故を起こしたとき、避難中のバスの中で、避難先での集団生活の中で、コロナコロナの感染を防ぐことは不可能です。

 1月15日、「老朽原発うごかすな!実行委員会」の呼びかけに応えて参集された皆さんは、次の新聞記事のように、断固とした緊急抗議行動を展開しました。ご参加の皆様、お疲れ様でした。有難うございました。
(さらに以下の関電への申し入れ文をご参照ください。)

老朽原発うごかすな!実行委員会・木原
(若狭の原発を考える会:090-1965-7102)

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 原発が老朽化すれば、危険度が急増します。それは、高放射線に長年さらされた圧力容器や配管では、脆化、金属疲労、腐食が進むからです。

 それでも、関電と政府は、運転開始後40年をはるかに超えた老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を本年早々にも再稼動させ、全国の原発の60年運転に道を開こうとしています。

関電よ💢老朽原発うごかすな!大集会

1月24日(日)13時30分 関電本店前(大阪市、中之島)
にご参集をお願いします。集会後、梅田デモを行います。

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申し入れ書

関西電力株式会社:
 取締役会長榊原定征様、
 取締役社長森本孝様、
 原子力事業本部長 松村孝夫 様、
 大飯発電所長 文能一成 様

 福島原発事故から10年近くになりますが、避難者の多くが故郷を奪われたままです。事故炉の内部は未だに掌握できず、事故終息は見えず、トリチウムなどの放射性物質を含む大量の汚染水が太平洋にたれ流されようとしています。原発は、事故確率の高さ、事故被害の深刻さ、事故処理の困難さなど、現在科学で制御できる装置でないことを、福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。

 それでも、貴関西電力(関電と略)は、昨年11月3日より定期点検入りしていた大飯原発4号機を再稼働させようとしています。

 しかし、以下【1】~【6】のような状況にある現在、原発の稼働は理不尽この上なく、許されるものではありません。

【1】 関電の原発に関連して、蒸気発生器配管の減肉、亀裂をはじめとする各種のトラブル、原発再稼働準備工事中の人身事故が頻発しています。例えば、昨年だけでも、高浜3号機の蒸気発生器伝熱管で減肉・損傷、大飯3号機の加圧器スプレイ配管で亀裂、高浜4号機の蒸気発生器伝熱管で減肉・損傷が発見され、高浜4号機でケーブル火災が発生しています。また、高浜原発1、2号機敷地内の掘削中のトンネルでの死亡事故、高浜原発1号機、美浜3号機、大飯原発3号機での転落事故などが報道されています。この事実は、原発はトラブルや事故を多発させる装置であることを物語っています。

 中でも、高温・高圧(320℃・157気圧)の1次冷却水が流れる配管の損傷は、原子炉空焚きの引き金となりかねず、深刻ですが、高浜3号機伝熱管損傷では原因物質が12月15日にやっと分かったところであり、大飯3号機配管損傷については、1月6日に亀裂の原因を公表したばかりです。これらの配管の調査結果が、大飯4号機の配管の保全に反映されているとは考えられません。

【2】 関電は、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を、福井県外に2018年内に決定すると明言していましたが、この約束を反故にし、その際2020年内と期限を再約束したにも拘わらず、この約束もまた反故にしました。それでも、関電は、使用済み核燃料を増やし続ける原発の運転を継続し、老朽原発の運転まで進めようとしています。関電は、何の成算も無く「空約束」をし、平気でそれを反古にする、企業倫理のかけらも持ち合わせない企業であることを裏付けています。

【3】 昨年来の原発マネーに係わる不祥事の調査は,未だに納得できるものではなく、関電が企業体質を抜本的に改善したとするにはほど遠い状態にあることは、原発立地自治体をはじめ、多くが指摘するところです。もし、関電が真にこの不祥事を反省しているのなら、不祥事の原因となった原発の稼働を止め、電力消費者や原発立地自治体住民が納得できる説明を行い、原発稼働の是非についても議論しなおすべきです。しかし、関電は、不祥事はなかったかの如く、大飯原発4号機や老朽原発の再稼働を行おうとしています。人々の安全や安心を顧みない身勝手極まりない姿勢の現われです。許されるものではありません。

【4】 去る12月4日、大阪地裁は、大飯原発3、4号機の設置許可の取り消しを命じました。原子力規制委員会は、原発敷地で起こり得る地震規模の推定について、推定に用いる経験式で得られる規模は平均値であり、バラツキを考慮すればさらに大きな地震が発生する可能性があるから、「バラツキを考慮せよ」と規定していました。しかし、この規定にも拘らず、規制委員会は、原発運転の認定にあたっては平均値を基準地震動として採用し、平均値に見合った耐震性で可としています。大阪地裁は、これが過小評価であるとしたのです。

 このバラツキに関する議論は、いやしくも科学・技術に携わる者なら、誰しも納得できるものです。関電は、基準地震動の再評価を行い、それに見合った耐震対策を施すべきです。

【5】大飯原発から100 km 圏内には、約76万人が住む福井県のみならず、約257万人が住む京都府、141万人が住む滋賀県のほぼ全域、大阪府、兵庫県、岐阜県の多くの部分が含まれます。このことと、福島原発事故では事故炉から約50 km 離れた飯舘村も全村避難であったことを考え合わせれば、大飯原発で重大事故が起これば、原発周辺の住民のみならず、何100万人もの人々が避難対象になりかねないことになります。避難は不可能です。重大事故では、琵琶湖が汚染され、関西1450万人の飲用水が奪われます。若狭湾が汚染され、観光や漁業が壊滅します。

【6】いま、新型コロナウイルス(コロナと略)の感染拡大は留まるところを知りません。美浜原発、大飯原発でも、昨年末までに、各々7人の感染が確認されたと報道されています。

 原発内でコロナが蔓延すれば、検査や点検が行き届かなくなり、原発の安全が保たれなくなります。

 一方、コロナが蔓延する中で原発が重大事故を起せば、集団避難中のバスの中で、避難先で長く続く集団生活の中で、ウイルスの感染を防ぐことは不可能です。大勢の感染者が出ます。医療崩壊が起こります。

 少なくとも、コロナの終息が宣言されるまでは、原発の運転を見合わせることが、最低限の企業倫理です。

 以上の視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」および「1.15申し入れ・抗議行動参加者一同」は、貴関西電力に、以下を申し入れます。

1. 原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。全ての原発を即時停止し、安全な廃炉を進めてください。
原発の即時廃炉を決定できなくても、少なくとも、以下を実行してください。

2. 使用済み核燃料の安全な保管地と安全な処理・保管法を早急に提示してください。提示できなければ、原発は稼働させないでください。

3. 関電の原発で最近起こったトラブル、事故、原発マネー不祥事の原因は解明されているとは言えません。原因が十分解明され、対策が施されるまで、原発を稼働させないでください。

4. 大阪地裁判決が求めているように、大飯原発、高浜原発、美浜原発の敷地の基準地震動の大きさを見直し、原発の耐震性を再検討してください。

5. コロナの終息が宣言されるまで原発を稼働させないで下さい。

6. 関電の原発が重大事故を起こせば、その被害は若狭をはるかに超えて関西や中部にもおよぶ可能性があります。原発を稼働させようとするのなら、広範な周辺自治体住民の意見にも、十分耳を傾けてください。

 なお、貴社が、私たちの再三の危険性指摘を無視して原発を稼働して、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます。

2021年1月15日
老朽原発うごかすな!実行委員会
1.15申し入れ・抗議行動参加者一同

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3月20日(土,休)14時から

関電よ💢老朽原発うごかすな!
高浜全国集会

高浜町文化会館で行い、
高浜町内デモを行います。

(主催:老朽原発うごかすな!実行委員会)

ご予定ください。

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◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(3) ]松下照幸 議員、再稼働反対の発言

松下照幸 議員(無所属)の発言

美浜原発3号機再稼働の請願に関する賛成討論

 ただ今から、私が紹介議員となりました請願第6号、10号、11号について、一括して、賛成の立場から討論を行います。<技術的問題><組織的問題><倫理的問題>の3つの観点から問題点を指摘します。

<技術的問題>

1,「老朽化」という問題について

 40年を超える3号機の老朽化問題についてですが、原発という巨大設備は、日本原子力学会編「原子力がひらく世紀」1999年版によれば、1000万点に及ぶ部品から成り立ちます。設備ごとの老朽化対策は難しく、「老朽化した配管の強度計算をどのようにするのか」と関電社員に聞いたことがあります。「新品材料を使い、配管肉厚を半分にして、強度を計算する」という回答です。「それは、そういう実験をしたと言うことに過ぎず、老朽化を加味した計算にはならない」と言いますと、引き下がってしまいました。この一事だけをとっても、老朽化を加味した対策がいかに困難かを理解できます。実機レベルでの老朽化検証は、まず不可能と言えるでしょう。

 関電の美浜3号機に関する住民説明会で、設備の老朽化をどう判断するかの質問を行いました。特に、経年劣化を考慮した動的解析がどのようになされているかを具体的に知りたかったからです。発電所長の回答は要領を得ないものでありましたので、エネルギー政策課を通して、再度、文面で説明を要請しました。未だに何の連絡もありません。不誠実です。行政側も、町民の安全に関して、老朽化をどのように解決しようとしているかの情報は必要なはずです。回答を出せないというのであれば、町民の安全を優先すれば、原発の運転をする資格はありません。

 老朽化に限らず、幾度にも渡り、個別課題に対して、関電事業本部に質問状を渡し、文面での回答を求め続けてきました。一度も回答を得られたことはありません。ずいぶん前になりますが、印象に残っておりますのは、使用済み燃料の高燃焼度に関する実験で、フランスのカブリ炉が興味深い実験結果を出していましたので、関電に高い燃焼度の使用済み燃料目視検査の実態を知りたいと申し入れました。電話での回答は「企業秘密と核物質防護の観点で、受けられない」とのことでした。「この件は町民の安全に深く関わることなので、そういうことであれば、正規に情報開示を求めることになる」と言いますと、後日職員が来られて、分厚い資料を頂きました。中身を見ると低燃焼度の燃料調査に関する資料です。「誰がこんな資料を要求した!」と怒ったことを記憶しています。

 カブリ炉の実験は、高燃焼度の燃料を選び、そこに反応度を入れて結果を見るものですが、高燃焼度の燃料の中で、目視検査により傷があった燃料棒が、大きな破損をしています。我々町民にとって、燃料棒の破損は安全上、極めて重要な案件なのです。

 関西電力の技術者や広報担当者は、美浜2号機事故が起こる前、蒸気発生器細管には粘りがあるので「ポキッと折れることはない」と言い張り、当時の原子力安全委員会の方も同様に言っていましたが、ギロチン破断をしてしまいました。その時に燃料棒が破損していたら、地域が一斉に避難しなければならない事態になったでしょう。それほど重要な情報が、オープンにされないのです。

 大飯3号機ひび割れに対する関電対応は、特別ではなく、過去にも同様のことが、美浜原発でも行われていました。その結果として、美浜2号機、美浜3号機事故が起き、3号機事故では11人の死傷者を出すことになりました。当時の若い下請け社員が「もう、会社をやめたい」と語っていたと伝え聞いています。原発で働く人にとっても、原発の安全はとても大きな問題なのであります。運転開始初期の頃、美浜1号機では燃料棒の大折損事故が起き、事の重大さ故に、全てが隠されました。田原総一郎氏がそれを暴き、ようやく多くの人が事故の存在を知ることになりました。国と電力会社が結託した隠蔽行為だと思われますが、今でも事故の詳細を知ることが出来ません。住民の安全や作業員の安全にとって重要な情報は、全てオープンにしなければなりません。これをしないところに、事故が入り込んできます。

 原発は巨大設備であるが故に、個々の設備を検証することは不可能で、ほとんどがコンピュータによる解析結果です。実証試験ができません。これでは事故が起きるのは必然です。

2,耐震安全性

 原発ごとに決められる基準地震動は、過去の地震観測記録から得られた解析データに基づいて経験式を作ります。経験式は、「平均値」としての地震規模を算出します。しかし、平均値から外れた「バラツキ」をどう考慮するかが、安全上重要な問題となります。私たちが以前から指摘してきたことです。12月4日の大阪地裁判決は、「原子力規制委員会は、平均値から上振れするリスクを前提とした、地震規模を設定するかどうかを検討せず、実際に上乗せもしていなかった」と指摘しています。原子力規制委員会自らが定めた「審査ガイド」があります。「経験式は平均値としての地震規模を算出するもので、平均値から外れたバラツキも考慮される必要がある」と定めています。ゆえに、大阪地裁判決は、審査において「看過しがたい過誤、欠落があり、違法である」と断じたのです。分かりやすい論点です。既往地震データの中で、平均的な地震動だけをみて、平均から離れた、突出した高い数値の地震データを無視し、その突出した地震動に対応していなければ、原発は破壊されることになります。

 判決が指摘した「バラツキ」への対策欠如は、「規制委員会が知らなかった」のではありません。「バラツキ」に対応しようとすると、対策のための時間とコストがかかるために意図的に対応しなかった、或いは、他の理由を付けて「バラツキ」を考慮する必要がないと主張したのです。この論理の目指すところは、住民の安全よりも、「電力会社への便宜」であります。それ以外にまっとうな理由はないと言えます。

 福島原発事故を経験して、二度とこのような事故を起こさないと反省し、「新規制基準」を創りました。再び、原子力規制委員会は電力会社の「虜(とりこ)」に成り下がってしまったのでしょうか。そう思わざるを得ません。自分たちが作った「審査ガイド」に「経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから、経験式が有するバラツキも考慮されている必要がある」と書いています。

 新規制基準は「世界一厳しい基準」とよく言われます。町長も語っていますし、原発輸出に力を入れて失敗した安倍元首相が、常に語っていた言葉でした。ほとんど大きな地震が起きないところに、世界の原発は建てられています。大きな地震が常に発生する日本、断層が集中する地域に原発を建ててきた日本。世界より厳しい耐震基準を作らなければならないことは自明です。しかし、前原子力規制委員長の田中氏が、「新規制基準をクリアしたとしても安全であるとは言えない」と語っています。「世界一の規制基準」と語る人たちは、再稼働を推進するための呪文を唱えているに過ぎません。まやかしです。原発を稼働させて、地域経済へお金を回すことを優先させる言葉であると、私たち住民は感じています。その耐震基準において、規制委員会自らが作った「審査ガイド」を無視して、原発の再稼働を規制委員会が容認したのですから、今回の大阪地裁判決は、住民サイドに立つ「まっとうな判断」と言えるでしょう。

 私が紹介議員となった3件の請願書において、その中の1件が、審査の過程で蒸気発生器伝熱管の耐震評価で、不正の疑いがあり、規制委員会はそれを容認するという「ずさん審査」を指摘しています。地震応答解析において、地震の揺れが収まる程度を示す「減衰定数」の設定で、不正に審査を通していることも指摘しています。基準地震動の過小評価、熊本地震のような「繰り返しの揺れ」に対応できているのか等も指摘しています。原子炉容器の劣化を調べるために、炉内に「監視試験片」を入れ、中性子の影響を調べますが、この「原データ」を確認もせず、規制委員会は関電の評価結果を鵜呑みにして認可していたことも指摘しています。この「原データ」は、金属のもろさを示す重要なものですが、関電はこの「原データ」の公開を頑(かたく)なに拒んでいると指摘しています。名古屋地裁での裁判の中で、規制委員会が関電の「生データ」をもらっていない旨を証言しているのです。

 これでは、福島原発事故を防げなかった「原子力安全・保安院」と、どう違うのか。聞くところによれば、「ホアンインアホ」という言葉が、都会の子供たちの中で「言葉遊び」として流行ったようです。どちらから読んでも同じです。的を射た言葉として、手をたたいて感心したことを思い出します。

 耐震安全について、設備の経年劣化を考慮すれば、さらに危険性が増します。阪神淡路大震災を経験し、地震計が全国に沢山設置され、様々な地震を身近に観測できるようになりました。その結果、建設時は小さく設定された原発の基準地震動は、3号機でも大きく引き上げられました。過小評価されてきたからです。今までの「基準地震動」は何だったのでしょう。大きな地震が当地を襲わなかったことに、胸をなで下ろさざるを得ません。

 美浜原発3号機は、敦賀半島北西岸を走るC断層が斜めに傾斜して入り込んだ震源断層面の真上に立っています。地震に関するメカニズムがわからなかった時代に、建設されました。そのC断層が動いたときにどれほどの地震エネルギーが発生するのか。原発直下に存在する震源断層がずれ動き、それに伴って原発の建つ地盤も上下左右に動くのですから、今でも、正確に予測できません。その上に、設備の劣化という条件が加わりますから、3号機の耐震安全性は大いに疑問があると言わざるを得ません。

 「大飯3号機配管のひび割れの進行速度を計算し、13ヶ月後に損傷配管の必要肉厚を確保すれば、ひび割れ配管を取り替えずに運転できる」とする技術の「維持基準」ですが、「傷の進行速度評価式の信頼性は低い」ということですから、技術の維持基準制度そのものが問われるべきです。新検査制度は、「傷の進行速度評価式の信頼性が低い」ことを承知で、経済性優先のひび割れ放置運転を可能にする制度ですから、「フリーアクセス」で安全をカバーできると考えるのは、余りに拙劣な考え方です。「傷を発見したら、運転を止めて、取り替えてから、運転再開すること」、これが最低限の町民への約束でなければなりません。

 美浜2号機事故では、1万本近くある蒸気発生器細管のたった1本が破断し、炉内が大きく揺れ動きました。一部沸騰が始まったとも言われています。大変危険な状態に陥ったと言えるでしょう。大飯3号機ひび割れは「炉心近く」の外側の直径が11cmを超える中口径配管で発生しています。このクラスの配管が地震等の外的要因で一気に破断したら、或いは、ひび割れを放置したままの運転で一気に破断したら、一次冷却水が噴き出し、原子炉内の圧力が150気圧から急激に下がって、圧力容器内は一気に「空だき」状態になるでしょう。

 傷を計算して必要肉厚を確保し、運転再開をしたとしても、そこに大きな地震動が来ればどうなるか。「信頼性の低い評価式」であれば、過小評価された配管は破断し、大きな事故に至るであろうことは誰にでも想像できることです。「破断する前に小さな漏れがある。小さな漏れを発見したら、すぐに点検し、取り替えるので、大事には至らない」と、いつも説明されてきました。LBBの原則と呼ばれています。技術の維持基準はこれを否定することになります。新検査制度は、地震の危険が少ないアメリカの後追いのような政策で、より危険な方向を規制庁が選択したと言えるでしょう。

3,使用済み燃料保管

 大飯3・4号機再稼働時の関西電力と西川前福井県知事との約束で、2018年中に、使用済み燃料を保管するための中間貯蔵施設の候補地を公表することになっていました。ところが、関電は県外候補地を決めることができず、「2020年まで延期する」と言わざるを得ませんでした。その期限は今月末に迫っています。現時点で県外候補地を示せないと言うことは、核のゴミとなる使用済み燃料の「中間貯蔵」を引き受ける県外の自治体はどこにもないと言うことでしょう。青森県むつ市の保管施設に、関電原発の使用済み燃料を無理矢理入れ込もうと画策していることが報道されました。むつ市長が拒否していますが、むつ市民においても迷惑な話です。使用済み燃料保管に関し、関電の無策が生み出した結果と言えます。「トイレなきマンション」と呼ばれる原発の最大の弱点を隠し続けた結果であるとも言えます。

 3号機の再稼働が始まると、ホットな使用済み燃料が生み出されます。危険な使用済み燃料をこれ以上生み出し続けることは認められません。ましてや、よく冷えた使用済み燃料の中間貯蔵施設候補地さえ明確に示せないままの再稼働は、認めるわけにはいきません。自分から言い出した知事との公約を守れない以上、再稼働の議論を始めるわけには行かないでしょう。まず再稼働の計画を撤回するのが筋であると言えます。3件の請願書は、この点を共通して指摘しております。

4,コロナ禍での避難訓練

 関電は、来年1月の美浜3号機再稼働を目指しているようですが、コロナ禍にあって重大事故が発生すれば、避難先自治体が美浜町民を受け入れることができるのでしょうか。そういう交渉を立地自治体と避難先自治体間でしているのでしょうか。対応していないと言うことであれば、町民の安全な避難誘導に責任を持てないと言うことになります。おおい町への避難ケースですが、おおい町の人口より多い美浜町の人口を受け入れられるのでしょうか。受け入れ施設がない、或いは、大きな体育館等にぎゅうぎゅう詰めにされるのでしょうか。コロナ禍ではあり得ないことです。

 世界は新型コロナ感染拡大を受けて、再びロックダウンを実行しています。日本でも第三波が都市部を中心に襲っています。医療崩壊が危惧されています。電気は余っている状況下で、なぜ、再稼働を急ぐのでしょう。ワクチン開発が報道されていますが、普及するにはまだ数ヶ月は必要でしょう。住民の安全など頭の中にない行為であると言わざるを得ません。

 以上が技術的問題に関する私の指摘であります。

<組織的問題>

1,関電の組織的体質について

 大飯3号機の炉心近くの配管部に傷が発見され、傷の進行速度の評価を巡って、原子力規制委員会と関電とのやりとりがオープンにされています。規則では12ヶ月間運転をするためには「13ヶ月後」まで健全であることを評価しなければならないところ、関電は「12ヶ月後」までの評価でひび割れ放置運転可能との報告を提出しました。数回の会合が関電と規制委員会の間でもたれていますが、規制委員会から指摘されるたびに、関電報告の数値が変更されています。変更状況を確認しますと、傷の進行速度に関する関電の予測値が10倍も引き上げられるケースがあります。関電の予測に不信を持つ規制委員会は、傷の進行予測を、技術基準の維持規格に沿って、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」)に「関電説明資料」の計算条件を用いた検証を依頼しました。原子力機構の維持規格に基づく評価では、関電が主張する「必要最小肉厚」を満たせないことが指摘されています。「許容亀裂深さ4.1㎜」を超えているのです。規制委員会の指摘を受けて、関電は大きな衝撃を受けたと推測されます。

 関電は、超音波検査による傷の長さの指示値は、配管外側の長さであって、内側の長さはもっと短いと主張し、長さ方向の亀裂進展速度を小さく見積もって「深さ方向の亀裂進展を少なく評価する」独自の手法を用いて、規制庁に説明しました。規制庁は、関電独自の手法は「既知の手法ではない」こと、「維持規格に基づくモデル化に反する」こと、「検査の範疇の枠内で議論すべき」と、厳しく突き放しています。定められた「維持規格」に沿ったやり方で評価しなかった関電に対し、事実上の「門前払い」だと言えます。関電は持参した資料の説明さえさせてもらえず、「検査の枠内で回答する」と答えて、引き下がらざるを得ませんでした。以上が10月19日までの規制委員会と関電との会合の要旨です。

 ではなぜ、この不合理な行動を関電はとったのでしょうか。大飯3号機の配管ひび割れを発見したにもかかわらず、「このまま次回定検まで運転しても、亀裂の進行は問題なし」と結論づけて、「ひび割れ放置運転」をしたかったからです。そうすることが、大きな利益を生み出すからです。

 電力自由化により、今年11月末には、関電の小規模電力消費者が380万件も離脱しています。1件当たり、月1万円と想定すると、年間4500億円強もの減収です。正確な予測ではありませんが、これに近い数字ではないかと思われます。電力自由化の元では、厳しい競争が行われます。苦しい経営を強いられる中で、なんとかして収益を確保しようとした行為であると言えます。住民の安全を無視した悪意ある行為であります。アメリカの例に倣って規制庁が導入した新検査制度。傷を評価して、必要条件を満たすと電力会社が判断すれば、傷を放置したままで運転を継続できるようになりました。電力会社や原発のコスト削減に寄与する政策です。安全を優先するなら、あり得ない政策変更です。「傷を発見したら、止めて点検し、取り替えてから再稼働する」、「小さな漏れを発見したら、すぐに止めて点検するから、大事に至らない」と言い続け、住民を説得してきました。福島原発事故を経験しながら、何で、新検査制度を導入しなければならないのか。バックエンドを含めた、設備コストの高い原発の経営を支えるための政策ではありませんか。

 「傷の進行速度を評価する計算式の信頼性は低い」とされます。美浜3号機の議会視察時に、私の質問に答えて「値は小さく出る」と発電所長は答えました。そうであればなおのこと、「傷の進行予測」など正確にはできないことを規制庁に伝えるべきです。規制庁も「評価式の信頼性が低い」ことを知っていて、「維持基準」を導入しているのですから、「同じ穴のムジナ」とも言える関係なのでしょう。今回の大阪地裁の判決は、原発の安全性に背を向ける原子力規制委員会・規制庁の本質を言い当てたことになります。

 昨年12月と今年6月、そして8月の三度にわたる会社法違反や業務上横領容疑の告発状が、ようやく10月初めに、大阪地検特捜部によって受理され、関電幹部の汚職の刑事責任が問われることになりました。大阪地裁の判決に加えて、関電のガバナンス、コンプライアンス欠如が問われることになります。もはや、何を言っても信用されない「安全規制」、「安全運転」に成り下がりました。原発、そして関電や規制庁への世論の信用はなくなり、再稼働など議論できる状況ではありません。請願3件は、そのことを厳しく糾弾しています。

<倫理的問題>

1,核のゴミ保管について

 使用済み燃料は再処理で取出されたプルトニウムがMOX燃料として高速増殖炉で燃やされなければ、そのまま核のゴミとなります。六ヶ所再処理工場はアクティブ試験中の度重なるトラブルで止まったまま、2014年から適合性審査に入り、今年7月にようやく合格したものの、工事竣工にはまだ1年以上かかります。また、原子力委員会の方針転換で、英仏保管の日本の余剰プルトニウムが減らない限り操業できない状況です。高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決定し、解体作業を進めています。軽水炉で燃やす「プルサーマルがある」と言いますが、軽水炉で燃やせるプルトニウムはごくわずかな量です。日本は核兵器を持たないと世界に公約しており、余剰プルトニウムを持てないことになっています。発電所でのプルトニウム消費量が、再処理を制約することになります。

 核燃料サイクルは事実上破綻し、「使用済燃料」は「核のゴミ」そのものです。その保管期間は、10万年と言われています。

 現代人の共通の祖先とされるホモサピエンスが、アフリカのサハラ砂漠を越え、世界各地に移動を始めたのが、今から8~7万年前。フィリピンから日本にたどり着いたとされるのが4~3万年前だと言われてきました。最近のゲノム解析ではさらに遡るようですが、途方もない時間です。私たちが今使う原発の電気は、10万年先の人たちにまで、その保管・管理を強要することになります。倫理的にとても認められないことであります。

 関電は、「2018年までに核のゴミ保管先を明確にする」と西川前福井県知事に約束しました。一度は反故にされ、今年中に「候補地」が示されることになっています。もし、議会が再稼働推進請願を認めてから「候補地を示せませんでした」と関電が言うことになれば、美浜町議会の決断が町民から強く批判されることになります。福井県知事も、県議会関連の方たちも、保管先が決まらない状況下で、「まだ再稼働を議論できる段階ではない」と語っています。そのとおりであると私も思います。さらに付け加えるなら、どこも引き受け手のない危険な使用済み燃料をこれ以上生み出すべきではなく、この点だけからでも、再稼働は認められません。再稼働はまだ議論できる段階ではないのだと言えます。

2、若狭湾原発の事故時の被害は甚大

 若狭湾の原発は、大きな事故を起こせば、その被害は福島原発の比ではないと推測できます。関西市民の水瓶である琵琶湖が汚染されるだけでなく、偏西風に乗って、放射性プルームは、日本列島中央部の山脈により拡散され、数百km先まで、広範囲に原子力被害を及ぼします。日本海側の半島の先端部に建つ福井県の原発群は、一度大きな事故を起こせば、汚染水をため置くスペースはなく、汚染水は処理されることなく、直接に日本海に放出されるでしょう。大変な被害を日本列島沿岸部に及ぼすことになります。中国や韓国、ロシア、北朝鮮から、莫大な賠償を要求されるでしょう。日本国内では「なぁなぁ」で済まされても、国際関係はシビアで、訴訟社会です。そうなれば日本の沈没です。美浜町の経済どころではありません。

 町長は、私の一般質問に、「国外の損害賠償は仮定の話で、お答えできない」と話しましたが、間違いなく損害賠償の請求を受けることになるでしょう。再稼働の判断は、そのような責任を意識して、判断することが求められます。

<事故の責任体制>

 事故の責任は一体誰がとるのか。11人の死傷者を出した美浜3号機事故。実質的責任を誰も問われておりません。福島原発事故でさえ、現時点で誰も責任を問われておりません。原発の分野では、責任が問われないように「仕組み」を作ってあるからです。これほどの事態を引き起こした東電でさえ、政治的判断の下、のうのうと生き残っています。破綻させた上で、新たな会社が電力供給を担うことが、この国の基本的システムであるはずですが、政治は東電を保護し、責任を負わせませんでした。

 歴史的に繰り返される東北地方太平洋沿岸の歴史地震。15mを超える津波が記録されており、東電内部でも対策を検討していました。浜岡原発裁判でも、大きな津波を巡って論争がなされました。福島原発事故は、まさに人為的事故でありました。事故の組織的責任、個人責任のあり方が明確にされない限り、事故は繰り返されます。再稼働の前に、しっかりした責任体制を作り上げるべきです。

 15mを超える津波が原発を襲うとどうなるか。東京電力、立地自治体と議会も十分に理解していたことであります。知っていながら、「不都合な真実」を語らなかったために、事故に至りました。防潮堤を建設することだけでなく、ディーゼル発電機の水密化処理だけでも議会で議論されていたら、事故の経緯は変わっていたでしょう。浜岡裁判で語られた批判的な声に耳を傾けなかったことが、福島原発事故を引き起こしたともいえるでしょう。

 40年を超える3号機の再稼働は全国初となります。再稼働は地域経済優先ではなく、安全が第一であるべきです。先に述べた関電・原子力規制委員会・規制庁の姿勢では、とても安全であるとは言えないでしょう。本日の美浜町議会において、批判的な意見に耳を傾け、請願に対する真摯な判断がなされることを、私は切に願っています。

 最後に、一言だけ付け加えます。美浜原発3基が動き始めて40数年。長期にわたって沢山の電源三法交付金をもらい続けてきました。その結果、美浜町経済は発展したでしょうか。今なお、美浜町の「地域振興」が叫ばれています。美浜町の私たちのお金の使い方が、問われているのです。道路やハコ物への投資が中心になり、維持コストが増加しました。その方向は今なお継続中です。

 美浜町はどういう町を目指すべきなのか。議会が町政の方向をしっかりチェックできる力量を身につけなければならないと、私は思っています。また、批判的な研究者の意見、賛否両論を聞くことが、判断の正確性に繋がりますので、今後に期待したいと思います。

 まだまだ語り尽くせないことが多々ありますが、以上を持って、3号機再稼働反対請願6号、10号、11号に賛成する私の討論を終えることにいたします。ご静聴、ありがとうございました。

↓ 関連ページへのリンク
2020.12.15 美浜闘争 報告とお礼
[2020/12 /15 美浜町議会資料(1) ]原子力発電所特別委員会報告(再稼働派議員の発言など)
[2020/12 /15 美浜町議会資料(2) ]河本猛 議員、再稼働反対の発言

◆[2020/12 /15 美浜町議会資料(2) ]河本猛 議員、再稼働反対の発言

河本 猛 議員(日本共産党)の発言

請願第5号 老朽原発の再稼働に関する請願書

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第5号 老朽原発の再稼働に関する請願書」に対し、賛成する立場から討論を行います。

 請願第5号から14号までは、美浜3号機を運転しないように求めるものであったり、再稼働についての拙速判断を避け、熟議を求めるもの、配管の総点検を求めるものであるので、一括して賛成討論します。

 美浜3号機の原子炉容器については、中性子照射脆化に加え、精錬技術が未熟だった70年代の鉄に含まれる銅の含有率によって、原子炉容器が脆くなるという指摘について、福井県原子力安全専門委員会の審査を見極める必要があると考えます。

 原子炉容器の監視試験片の「元のデータ」原データについては、請願者が裁判の中で、原子力規制委員会が原子炉容器の監視試験片の原データも見ずに認可を行っていたことを明らかにしたものです。

 科学者や学識経験者であれば、信頼できるデータの比較によって原子炉容器の安全性を評価していくので、原データの問題については、福井県原子力安全専門委員会に要請しています。

 また、原子力防災計画、住民避難については、新型コロナウイルス感染症の拡大により、感染症対策が大きな課題となっています。バスや避難所の定員を大幅に減らす必要があるため、これまでの2倍以上の車両や施設を準備する必要があります。議会でも、内閣府の原子力防災担当から「まだ決定版と言えるようなものは出来ておりません」という説明を受けており、感染症対策が盛り込まれた「緊急時対応」が未完のまま、原発の再稼働を容認することは許せません。

 原発の問題は、美浜町だけの問題ではありません。県内外の広範囲の人々が、私たちの故郷を守り、子どもや孫の代まで、この地で暮らし続けられるよう求めていることに真摯に向き合うべきです。

 また、「老朽原発美浜3号機の稼働再開について、拙速判断を避け、熟議を求める」件について、原特委員会の審査において、委員の中から一人も継続審査を求める提案がなかったことを残念に思います。継続審査の提案があれば、その賛否について議論し、本会議で報告されますので、本会議の採決においても継続審査についての項目が追加されるはずなんですが、原発を推進する議員に対して、審議のプロセス(過程)が大切であるという良心に訴えかける期間を持てずに、美浜3号機の再稼働か否かの採決に至ってしまったことを悔いるばかりです。

 また、これらの請願の中には、現在北海道に住む県内出身者が個人で提出されたものや、市民団体と一緒に全国各地の245名の議員が賛同して共同提出されたものがあります。

 原発の危険性を訴える側は、日常生活を壊され、避難を余儀なくされる広範囲の自治体住民です。

 原発の再稼働を決めたプロセス(過程)というのは、責任を追及する側にとって重要な争点になります。国や規制委員会は、美浜3号機の再稼働については、美浜町、福井県、関西電力が安全協定の中で判断することであって、国や規制委員会が美浜3号機の再稼働について、安全を担保するような発言はしないと言っているので、美浜3号機の再稼働については、再稼働を決断した「地元同意」というのが一番の争点になります。

 その「地元同意」を判断するプロセス(過程)の中で、議会が安全規制部門の審査結果を待たずに、原発を再稼働させる「地元同意」をした、規制基準の審査の信頼性が揺らいでいる中で、科学的観点を無視して地元経済を理由に「地元同意」をしたとなれば、それは美浜町議会の責任です。

 私は原発に反対の立場ですが、町民に対する責任を重く感じます。

 おそらく福井県知事は、立地と準立地、関電の経済圏ではない市町自治体の県民のことを考えていると思います。

 関電や原子力の受益者でない県民の命と安全をどう保障していくかという観点から「再稼働についても国や安全規制部門の責任を明確にし、国は、福井県民に再稼働の責任を押し付けるな!」ということを考え、県民に「地元同意」の責任が及ばないよう国が責任ある態度を示すように、国に対してボールを投げ返しているんだと思います。

 私は、町民と原子力の受益者以外の広範な人々をどう保護するのかという観点を、政治家は持たなければならないと思っています。

 議員245名の背景には、この議員を支える有権者がいます。数千、数百の得票を得て当選されていることを考えれば、平均で1000の有権者がいたとして24万5000人、美浜町と同じぐらいの平均500の有権者がいたと想定しても12万2500人の有権者が背景に見えます。

 245名の自治体議員が名前を連ねる請願1枚だけでも、美浜町の人口の12倍以上になるわけで、その重さを議会にも受け止めていただきたいと思います。

 原子力を取り巻く環境は、最近でも川崎重工が原子力事業を売却し、水素エネルギー事業に注力することを決めるなど、原子力は市場での競争力を失っています。

 半世紀前、化石燃料から原子力への転換が進みましたが、世界市場は原子力から持続可能な再生可能エネルギー、水素エネルギーの活用に転換しています。半世紀ともに歩んできた原子力がいつまでも最先端と思い込んでいるようでは、美浜町の過疎化、産業の衰退は止められません。

 原子力に頼ったままだと新たなイノベーション、新市場や新資源の獲得、新制度の導入などが遅れてしまいます。美浜3号機の再稼働をやめ、原発に頼らないまちづくりが必要です。

 また、美浜3号機のように被害が広範囲にわたり、多くの生活権を侵害する恐れのある問題で、専門家の見解が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で、一方の見解を安易に採用することがあってはならないと考えます。

 専門家による委員会を持っていない議会においては、福井県原子力安全専門委員会の審査結果を見極める必要があることから、請願第5号から14号までを一括して賛成し、慎重に議論を重ねていくべきだ!と申し上げ、賛成討論を終わります。

請願第3号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第3号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について」に対し、審査を付託された原特委員会で継続審査の提案がなかったので、本会議採決においても継続審査についての項目がありませんので、反対する立場から討論を行います。

 請願書の中には、「美浜発電所をはじめとする原子力発電所が稼働せず、停止したままの状態となっており、美浜発電所に関わる美浜町の企業や町民にも大きな影響をもたらしています。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、美浜町の経済も著しく停滞している状況にあります。」と、原発利益共同体と停滞している町の経済状況のためには、美浜3号機の再稼働が必須事項であるかのように書かれています。

 しかし、美浜原発は9年以上も停止し、11月には関電のすべての原発が停止しましたが、原発がなくても電力需給に影響が出ることはありませんでした。電力消費地にとって、リスクが大きい原発でつくる電気は不要になっているのが現実です。

 停滞している町の経済状況は、むしろ原発に固執した偏った産業構造にあります。停滞している町の経済状況を考えるなら、原発の再稼働ではなく、原発に固執した偏った産業構造からいち早く脱却し、原発に頼らないまちをつくるべきであります。

 また、新型コロナウイルスの感染拡大を考え、密閉した空間で作業し、感染症に脆弱な構造を持つ原子力発電所は停止するべきです。

 美浜発電所が大阪万博へ初めて原子力の灯りを送ってから半世紀が経過していますが、原発は世界的にも終焉を迎える産業です。

 世界の再生可能エネルギー発電量は原発を上回り、世界のエネルギー市場で持続可能な再生可能エネルギーの優位性が高くなっています。持続可能な再生可能エネルギーに比べ、原発の発電コスト、使用済み核燃料などの処理・処分に必要なバックエンドコスト、社会的リスクは高く、世界のエネルギー市場で競争力を完全に失っているのが現実です。

 高経年化対策で資産価値が上がった老朽原発の再稼働で、半世紀にわたり原発と共生してきた自治体を含む原発利益共同体に恩恵があっても、美浜町経済の更なる発展などありません。

 この半世紀、原発は、事故や不祥事を起こすたびに、地元に対して一定の恩恵を与えてきましたが、いまだにそのような恩恵に与れる(あずかれる)ような幻想を抱いて、金品受領問題や労災死亡事故、美浜3号機の死傷事故を忘れ去っているように感じます。

 原子力規制委員会の使用前検査や福井県原子力安全専門委員会の審査結果はまだ出ていません。

 この請願を採択するということは、国や規制委員会、福井県や原子力安全専門委員会の判断よりも早く、美浜町議会が「事実上の地元同意」をしたことになります。

 原発は科学的・学術的な議論を見極めるのではなく、原子力産業の恩恵に与る美浜町の人々ために、政治的な数の力で再稼働が進められていると言っても過言ではありません。

 国は「地元同意」がなければ原発の再稼働は出来ないと言っており、老朽原発美浜3号機を再稼働させるプロセス(過程)は、美浜町議会の「再稼働を求める請願」の採択から始まります。

 原発は国策でありますが、美浜3号機の再稼働については、美浜町、福井県、関西電力の安全協定に基づいて進められます。

 原発の再稼働に対しての責任は、地元にあります。原発は国策であるという理由で、国民に責任を転嫁する者は原発を推進する資格はありません。

 安全協定に基づいて考えても、美浜町議会は、美浜町、福井県、関西電力よりも早く、「事実上の地元同意」をしたことになり、美浜3号機の再稼働については、そのプロセス(過程)の始まりである美浜町議会に責任があることを明確に述べておきたいと思います。

 福井県は、県議会が再稼働に関わる審査ができるような判断材料が揃わない状態で県議会に判断を求めるようなことはしないでしょう。

 美浜町議会では、再稼働に関わる審査ができるような科学的・学術的な判断材料が出ていない中で、美浜町内や福井県内にとどまらない関西圏や中京圏などの広範囲の住民に影響を及ぼす原発の再稼働を非科学的に認めるようなことは許されないと考えることから、この請願に反対する理由とし、討論を終わります。

請願第4号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「請願第4号 美浜発電所3号機の再稼働を求める請願について」に対し、反対する立場から討論を行います。

 福井県原子力平和利用協議会美浜支部は、議会の中に半数以上の会員を有し、議会に対して大きな影響力を持つ組織です。この協議会の県会長には、山口治太郎・前町長が就任され、美浜町内での影響力を強く感じます。

 請願書の中では、「美浜の地で住民サイドに立った原子力の平和利用を推進する活動を行ってきました。」と言いますが、核兵器禁止条約に背を向けた議会議員の多くが、安全保障の名のもとにアメリカの「核の傘」にしがみつき核兵器を容認しています。

 原子力の平和利用を推進する活動を行ってきた組織であれば、町民の代表者である議員が核兵器を明確に否定する立場で、原子力の平和利用を唱えていると思っていたのですが、結局は、日米安保の「核の傘」の中で核兵器を容認した原子力推進です。私は、平和利用と称しながら核兵器を明確に否定することもできず、原子力を推進している活動には、疑念を抱いています。

 また請願書の中で、「国は、国は、」と、地元が国策を受け入れてきているようなことが書かれていますが、国策である原発を受け入れてから半世紀、国策である原発と巨大電力企業につき従ってきた地元にとって、今や原発の再稼働は、国策の受け入れではなく、地元の要求から始まり、再稼働されていく仕組みになっています。

 国は、「原発依存度を可能な限り低減させる方針の下」、原発のリプレースには慎重な姿勢を示しています。しかし、現状において、原発の再稼働やリプレースが地元政策になっている以上、責任は国民ではなく、それを推進する美浜町民にあると考えます。

 原子力政策は国策であるという理由で、美浜町の責任を国の責任に転嫁することは許されません。

 まずは、原子力を推進する地元の責任、原子力を推進する自らの責任を自覚するべきです。

 国は、2030年のエネルギーミックスにおける原子力発電のエネルギー構成比率20~22%の達成が困難であることを述べています。これから次々と40年を迎える老朽原発を再稼働し、原発の稼働率を80%~90%にしなければ、原子力発電のエネルギー構成比率20~22%の達成はできません。

 国が掲げる2030年のエネルギーミックスの実現は既に破綻しています。破綻している目標を無理やり達成するために、原則40年の運転期間を最長20年延長できる例外規定を当たり前のように認め、稼働率も引き上げる。こんな危険な計画が美浜から開始されることを経産省の説明を聞いて議会もわかっているはずです。

 私はこんな危険なことはとても容認できません。

 原発は、国策として機能できないほどの国民的な反対があり、また再生可能エネルギーの優位性による普及促進から、原発で生み出す電気が必要なくなっています。

 82.6万kW(キロワット)級の電気出力を誇る美浜原発3号機が9年以上も停止し、電源一極集中のリスクが高い原発の巨大なエネルギーは、不安定なエネルギー供給であることが証明されました。

 国から「ベースロード電源」として位置づけられながら、その役割を果たさなくても、電力供給が不安定になることはありませんでした。

 他人に責任を押し付け、原発が抱える難題・大きなリスクを顧みない(かえりみない)、原発の再稼働は許せません。

 また、原発は、安価な電気を人口の多い関西圏の広範囲の人々のために届けることが目的でした。それが今では、美浜町の基幹産業として町の経済や雇用の安定確保のために再稼働が求められるようになっています。

 ですが、高レベル放射性廃棄物、使用済み核燃料の処理など、膨大なバックエンドコストの問題が社会常識化する中で、安価な電気を届けるという原発の役割は終わりました。

 人類の英知は、リスクが大きい原子力に頼ることなく、持続可能な再生可能エネルギー(自然と向き合いエネルギーを確保していくこと)、自然と共存共栄を図っていく道に進んでいます。老朽原発美浜3号機の再稼働など必要性はありません。

 いつまでもコンクリートの巨大施設と共存共栄できるという幻想から抜け出し、美浜町の豊かな自然と共存共栄を図っていく、基幹産業の転換こそ、今必要な時です。

発委第4号 美浜発電所3号機の40年超運転にかかる意見書の提出について

 私は、ただいま討論の対象となっております。「発委第4号 美浜発電所3号機の40年超運転にかかる意見書の提出について」に対し、反対する立場から討論を行います。

 この意見書は、原特委員会から提出され、異議も反対もなく、全会一致で提出されたものであることが、本会議前の全員協議会で明らかになりました。

 意見書の中には、「美浜町議会は、原子力発電の将来にわたる必要性を認めつつ、再稼働の同意にあたり、次の7項目について、政府としての着実な取組みをここに求める」という記載があるので、この意見書の提出を認めるということは、原子力発電の将来にわたる必要性を認め、再稼働に同意することになりますので、私はこの意見書提出を認めることはできません。

 また、項目の中には、エネルギー政策の今後の展望について、「エネルギー基本計画の見直しに当たっては、新増設、リプレースを含む将来を見据えた原子力政策の方針を示すこと」と書かれています。まさにこの点は、国も認めていない地元要望であり、今や原発というものが、国策の受け 入れではなく、地元から進められる地元政策であることを証明するものです。

 また、国と事業者による原子力発電所の一層の安全管理について、原子力防災対策について、立地地域の振興について、地域共生について、原子力発電に関する理解活動の促進についてなどの課題があるのであれば、美浜3号機の再稼働など容認するべきではないと申し上げ、反対討論を終わります。

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2020.12.15 美浜闘争 報告とお礼
[2020/12 /15 美浜町議会資料(1) ]原子力発電所特別委員会報告(再稼働派議員の発言など)
[2020/12 /15 美浜町議会資料(3) ]松下照幸 議員、再稼働反対の発言