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◆原告第39準備書面
-原子力規制委員会の「考え方」が不合理なものであること-
目次

2017(平成29)年10月27日

原告第39準備書面
-原子力規制委員会の「考え方」が不合理なものであること-

原告第39準備書面[2 MB]

目 次

第1 はじめに(甲369の序論部分参照)

第2 原子力規制委員会の構成における違法(甲369の1~12p)
1 前提:国会事故調は両議院の同意を得て両議院の議長が任命した委員長及び委員に選任されたこと,およびその提言内容
2 原子力規制法2条2項、及びIAEA安全基準
3 欠格要件に関する法の明文規定、国会で明らかにされた立法者意思、及びガイドライン
4 選任された委員長及び委員が欠格事由に該当すること

第3 原子力規制委員会の「考え方」は最高裁判決に反し,司法審査の基礎とできないこと(甲369の13~26p)
1 原子力規制委員会の考え方の要旨は次のとおりである(甲369の13p)
2 上記の考え方が法の明文や最高裁判決等に反すること
3 規制委員会の上記「考え方」が,今日における科学的知見にも反すること
4 原子力規制委員会が各分野について最新の専門的知見を有するという前提を欠くこと

第4 規制基準の不合理性・総論(甲369の27~92pとりわけ41~92p)
1 福島原発事故の経緯が未解明である以上、合理的な規制基準を策定しようがないこと
2 国際原子力機関の安全基準と日本の規制基準の関係‐新規制基準がIAEA安全基準を踏まえるべきは、日本法の要請であること
3 安全重要度分類の考え方
4 共通要因故障に起因する設備の故障を防止する考え方の欠如
5 偶発故障が一度に1つしか起こらないという考え方は非現実的であること

第5 シビア・アクシデント対策の不合理性(甲369の93~120p)
1 設置基準対象施設の不備
2 重大事故等対策の不備
3 重大事故等対処施設
4 可搬型設備に過度に依拠していること
5 特定重大事故等対処施設設置の猶予は合理性を欠くこと
6 大規模損壊対策

第6 電源確保対策の不合理性(甲369の121~145p)
1 福島第一原発事故の原因を決めつけ,同事故の教訓を踏まえていないこと
2 外部電源の信頼性強化対策が放棄されていること
3 非常用電源設備の機能確保対策が不十分であること
4 全交流動力電源喪失対策設備(設置許可基準規則14条)の不備
5 3系統目の猶予が違法であること
6 全電源喪失に対する対策の欠如
7 不合理に低い外部電源系の重要度分類
8 不合理に低い耐震設計上の重要度分類

第7 使用済燃料の貯蔵施設(甲369の146~167p)
1 使用済燃料の危険性
2 福島第一原発事故の教訓:使用済燃料の冠水状態が維持できない事態も生じ得ることを想定すべきこと
3 国会事故調報告書が指摘した技術的問題が解消されていないこと
4 原子力学会の提言
5 使用済燃料の貯蔵施設
6 使用済燃料貯蔵施設の不合理な耐震重要度分類
7 計装系をSクラスとすべきであること

第8 地震(甲369の168~209p)
1 地震対策の規制の経緯とその誤り
2 その理由:地震の科学の限界
3 具体的な基準は合理的な理由なく,時間切れというだけで作られなかった
4 規制上の要求事項は曖昧であり,原発への規制として合理性を欠くこと
5 国際的に確立されたIAEA・SSG‐9の不採用
6 応答スペクトルに基づく地震動評価
7 断層モデルを用いた手法による地震動評価
8 震源を特定せず策定する地震動
9 「安全余裕」について

第9 津波(甲369の210~219p)
1 津波対策に関する「考え方」の基本的な問題点
2 基準津波の想定
3 東京大学地震研究所教授の纐纈一起氏の「原発のように重要なものは世界中の既往最大の地震や津波に備えるしかない」という見解を,結局規制委員会も否定できていないこと

第10 火山(甲369の221~258p)
1 立地審査指針の基本的不合理性
2 火山影響評価ガイドにおける評価方法
3 立地評価の方法
4 将来の活動可能性評価に関する国際基準違反
5 川内即時抗告審決定によっても立地評価に係るガイドの合理性は否定されていること
6 大規模噴火の予測に関する火山学者の発言等
7 降下火砕物による影響
8 非常用ディーゼル発電機への影響

第11 立地審査指針(甲369の271p~最後)
1 立地審査指針の構成
2 福島第一原発事故を経験した今日における立地審査指針の重要性
3 具体的な適用場面における甘い事故想定
4 現在における立地審査指針の位置づけ
5 過酷事故対策や原子力防災の強化によって立地審査指針が不要となったとする考え方は,法や国際基準とも整合しない。
6 原子力規制委員会の「考え方」が本末転倒な不合理なものであること
7 小括

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◆第17回口頭弁論 原告提出の書証

証拠説明書 甲第369号証[87 KB](第39準備書面関連)
2017年(平成29年)10月27日

  • 甲第369号証[4 MB](=kou369-2.pdf)
    「新規制基準の考え方」検討報告書~原子力規制委員会の欺瞞~(脱原発弁護団全国連絡会)

    【注意】甲第369号証の旧ファイル「kou369.pdf」は、「p.164=ノンブルp.151、脚注203」記載の下記リンクが切れていましたので、削除しています。
    [リンクエラー箇所]203 奥山俊宏「震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル」
    http://judiciary.asahi.com/articles/2012030800001.html
    [新ファイル「kou369-2.pdf」では下記のように訂正してあります。]
    https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2712030800001.html
    (論座アーカイブ)

証拠説明書 甲第370~380号証[183 KB](第40準備書面関連)
2017年(平成29年)10月27日

  • 甲第370号証[273 KB]
    南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について(南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査会)
  • 甲第371号証[5 MB]
    岩波科学2014年9月号『過酷事故のナイトメアシナリオ』(岩波書店・佐藤暁)
  • 甲第372号証[4 MB]
    原子炉事故に人を立ち向かわせるということ(岩波書店・佐藤暁)
  • 甲第373号証[292 KB]
    「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準」(原子力規制委員会)
  • 甲第374号証[5 MB]
    被告関電ホームページ(被告関電)
  • 甲第375号証[6 MB]
    「吉田昌郎の遺言―吉田調書に見る福島原発危機―」(一般財団法人日本再建イニシアティブ 民間事故調報告書検証チーム)
  • 甲第376号証[2 MB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第377号証[2 MB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第378号証[983 KB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第379号証[3 MB]
    福島第一原子力発電所の従業員に対するアンケート調査結果(国会事故調)
  • 甲第380号証[8 MB]
    NHKスペシャル『メルトダウン』取材班著『福島第一原発 1号機冷却「失敗の本質」』(第4章の抄)(鈴木章雄、岡本賢一郎、国枝拓)

◆第17回口頭弁論 原告提出の書証

証拠説明書 甲第369号証[87 KB](第39準備書面関連)
2017年(平成29年)10月27日

  • 甲第369号証[4 MB](=kou369-2.pdf)
    「新規制基準の考え方」検討報告書~原子力規制委員会の欺瞞~(脱原発弁護団全国連絡会)

    【注意】甲第369号証の旧ファイル「kou369.pdf」は、「p.164=ノンブルp.151、脚注203」記載の下記リンクが切れていましたので、削除しています。
    [リンクエラー箇所]203 奥山俊宏「震災4日前の水抜き予定が遅れて燃料救う福島第一原発4号機燃料プール隣の原子炉ウェル」
    http://judiciary.asahi.com/articles/2012030800001.html
    [新ファイル「kou369-2.pdf」では下記のように訂正してあります。ただし文字列はリンクとしては機能していないので、ブラウザにコピペしてご覧ください。]
    https://webronza.asahi.com/judiciary/articles/2712030800001.html

証拠説明書 甲第370~380号証[183 KB](第40準備書面関連)
2017年(平成29年)10月27日

  • 甲第370号証[273 KB]
    南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について(南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査会)
  • 甲第371号証[5 MB]
    岩波科学2014年9月号『過酷事故のナイトメアシナリオ』(岩波書店・佐藤暁)
  • 甲第372号証[4 MB]
    原子炉事故に人を立ち向かわせるということ(岩波書店・佐藤暁)
  • 甲第373号証[292 KB]
    「実用発電用原子炉に係る発電用原子炉設置者の重大事故の発生及び拡大の防止に必要な措置を実施するために必要な技術的能力に係る審査基準」(原子力規制委員会)
  • 甲第374号証[5 MB]
    被告関電ホームページ(被告関電)
  • 甲第375号証[6 MB]
    「吉田昌郎の遺言―吉田調書に見る福島原発危機―」(一般財団法人日本再建イニシアティブ 民間事故調報告書検証チーム)
  • 甲第376号証[2 MB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第377号証[2 MB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第378号証[983 KB]
    聴取結果書(被聴取者吉田昌郎)(東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会事務局局員 加藤経将)
  • 甲第379号証[3 MB]
    福島第一原子力発電所の従業員に対するアンケート調査結果(国会事故調)
  • 甲第380号証[8 MB]
    NHKスペシャル『メルトダウン』取材班著『福島第一原発 1号機冷却「失敗の本質」』(第4章の抄)(鈴木章雄、岡本賢一郎、国枝拓)

◆原告第38準備書面
-上林川断層について-

原告第38準備書面
-上林川断層について-

2017年(平成29年)7月20日

原告第38準備書面[779 KB]


目次

1 上林川断層は被告関西電力の想定よりも長い
2 被告関西電力の想定の恣意性
3 共役断層としての上林川断層



1 上林川断層は被告関西電力の想定よりも長い

上林川断層について被告関西電力は,平成17年の地震調査研究推進本部の公表内容を踏まえ,上林川以北では断層に沿ってリニアメントが確認できなかったことなどを理由に断層の存在が明確な範囲は約26キロであるとしつつ,同断層の西端部が不明瞭であることから福知山付近まで延長し,保守的に39.5キロと評価したとする(準備書面〔3〕53頁,甲丙28・右上「55」以下など)。

被告関西電力は同断層を北東方向に延長しない理由について,断層に沿ってリニアメントが確認できないことを挙げるが,しかし,リニアメントが確認できないとしても,その程度の調査では活断層が存在しないということはできない。
リニアメントは,空中写真から地表に認められる直線的な地形の特長(線状模様)の有無を見るにすぎないからである。トレンチ調査やボーリング調査などのより詳しい調査を行なえば明瞭に活断層が確認される可能性は十分にあるし,それどころか,そもそも事前に確認されていない場合であっても実際には活断層が存在する場合のあることは,直近の熊本地震を実例にするなどして詳細に述べたとおりである。

また,断層や活断層が確認されていない場合であっても既知の活断層の延長線上でM7クラスの大地震が発生した例はほかにもある。平成17年3月20日に発生した福岡県西方沖地震では,以前より陸域に警固断層という活断層の存在が知られていたが,下図のとおり,同地震では同断層の北西延長上の玄界灘の地震空白域で地震が発生している。同地震後には,福岡県西方沖地震「の地震の余震域と警固断層は,直線状にほぼ連続していることから,一連の活断層体であると考え,これらをまとめて警固断層として扱っています」としており,同地震発生前には知られていなかったものの実際には玄界灘まで続く活断層が存在していたと述べている。

地震調査研究推進本部ホームページ(http://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f108_kego.htm)より抜粋【図省略】

そもそも被告関西電力は,上林川断層の北東端について,故屋岡町付近(下図A地点付近)【図省略】において活断層が存在しないことを確認したとしているが,原子力発電所のある福井県との県境付近でちょうど「活断層が存在しないことを確認した」というのは余りにも不自然である。次に述べるとおり,また下図からも明らかなとおり断層自体は存在するにもかかわらず,県境付近でちょうど活断層ではなくなるということは,恣意によるものといわざるを得ない。

よって,被告関西電力が上林川断層の北東端であるとしている地点よりもさらに北東方向に活断層が存在する可能性は十分にあり,同被告の活断層評価は過小であって,ましてや上林川断層を「保守的に評価した」とは到底言えるようなものではない。

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2 被告関西電力の想定の恣意性

このように上林川断層の北東方向に活断層がさらに存在する可能性が十分にあるのであるが,少なくとも同方向には地質断層(断層)が存在しており,先に挙げた図のとおり,超丹波帯と丹波帯との境界の断層が存在することは被告関西電力の調査からも明らかとなっている。

この地質断層としての上林川断層は,亀高らの調査によれば,福井県大飯郡おおい町笹谷付近まで追跡される(甲365)。そうすると,活断層・断層としての上林川断層は,被告関西電力の想定よりも10キロ近く長いということになる。同地点は,本件原発からわずか15キロ程度の地点である。もちろん,その地点が断層の終点であるという保障もない。

地質断層としての上林川断層は左横ずれ断層であり,活断層である上林川断層の右横ずれ断層とは変位センスが一致しない。しかしこの点については,上林川断層はもともとは丹波帯の褶曲構造形成後に活動した左横ずれ断層であり,現在の活断層である上林川断層はその一部を利用した右横ずれ断層であるとされている。このような断層の運動方向の逆転は特に西南日本内帯では多く見られ,その成因としては,海洋プレートの沈み込み方向の変化による応力場の変換のほか,地塊(日本列島)の回転による断層方向の変化があると考えられている。つまり,両者はもともと1つの断層だったのである(甲365[111 KB]甲366[111 KB]甲367[5 MB])。そうすると,両者が一体として活動する危険性は十分に認められる。保守的に評価して西方には延長するが北東方向には延長しないというのは恣意的というほかない。

ましてや被告関西電力は,FO-A~FO-B断層と熊川断層について,当初これらは連動しないと考えていたものの,その後より安全側に考えることとして連動を想定し,断層長さ63.4キロ,マグニチュード7.8の地震を想定して基準地震動を求めている。そうすると,地質的連続性のないFO-A~FO-B断層と熊川断層についてさえ「より安全側に考え」連動を想定するのであるから,活断層としての上林川断層と地質断層としての上林川断層が連動することは「より安全側に考え」当然考慮すべきであり,両者がもともと一体の断層であったことからすればなおさらである。それにもかかわらず上林川断層についてのみそのような想定をしないのは,恣意的というほかない。真に「より安全側に考える」のであれば,北東方向にこそ延長して検討すべきなのである(甲368[821 KB])。

さらに,上林川断層を北東方向にそのまま延長すると,本件原発付近へと至ることは下図からも明白である。また,FO-C断層との連動も「より安全側に考える」のであれば十分にあり得る。被告関西電力が北東方向に延長しない理由は,これらの事情に鑑みてのことと考えざるを得ないのである。

若狭湾周辺の主な活断層の分布(関電側準備書面(3)51頁より引用)【図省略】

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3 共役断層としての上林川断層

共役断層とは,同一の応力下で互いに90度程度斜交した断層面が形成され,断層のずれの向きが互いに逆向きを示すものをいう。例えば下図【図省略】で力(応力)の主軸が東西方向を向いている場合,(1)北東-南西方向に走行を持つ右横ずれ断層と(2)北西-南東に走行を持つ右横ずれ断層の組み合わせが共役断層となる。

このような共役断層の例としては,飛騨高地の北部の富山県南部から岐阜県北部にかけて分布する跡津川断層(北東-南西方向で右横ずれ)と,岐阜県・長野県に跨がる阿寺山地と美濃高原との境界に位置する阿寺断層(北西-南東方向で左横ずれ)や,兵庫県淡路市にあり阪神大震災を引き起こした活断層の1つである野島断層(北東-南西方向で右横ずれ)と,岡山県東部から兵庫県南東部にかけて分布する山崎断層(北西-南東方向で左横ずれ)などが挙げられる。また,本件大飯原発の西側にある山田断層と郷村断層も共役断層である。

そして,上林川断層とFO-A~FO-B-熊川断層とも共役関係にある。それは,当該地域ではほぼ東西方向に1×10-7/年程度の縮みのひずみが発生しており,正に上記図のような形で共役断層が存在すると解するのが合理的だからである。よって,FO-A~FO-B断層と熊川断層の3連動の想定地震と同じウェイトで,上林川断層の北東延長上の空白域でもM7クラスの地震が発生することを考慮すべきである。それをしない被告関西電力の想定は,過小であるというほかない。

以上

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◆第16回口頭弁論 原告提出の書証

甲第361~362号証(第36準備書面関係)
甲第363~364号証(第37準備書面関係)
甲第365~368号証(第38準備書面関係)



証拠説明書 甲第361~362号証[90 KB](第36準備書面関係)
2017年(平成29年)7月20日

甲第361号証[2 MB]
原子力災害避難計画(京都市防災会議)

甲第362号証[90 KB]
京都市ホームページ(京都市)

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証拠説明書 甲第363~364号証[126 KB](第37準備書面関係)
2017年(平成29年)7月20日

甲第363号証[813 KB]
柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況(東京電力株式会社)

甲第364号証[705 KB]
東京電力ホームページ 「地震対策」2007年10月26日段階のもの(東京電力株式会社)

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証拠説明書 甲第365~368号証[122 KB](第38準備書面関係)
2017年(平成29年)7月20日

甲第365号証[111 KB]
京都府北部,上林川断層の横ずれインバージョン(亀高正男ほか)

甲第366号証[111 KB]
舞鶴・小浜地域の地質:超丹波帯・丹波帯の地質構造(亀高正男ほか)

甲第367号証[5 MB]
京都府北部,上林川断層および三峠断層の古地震調査(吉岡敏和ほか)

甲第368号証[821 KB]
大飯原子力発電所近傍の活断層の挙動に関する一考察(竹本修三ほか)

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◆原告第36準備書面
-京都市原子力災害避難計画の問題点について-

原告第36準備書面
-京都市原子力災害避難計画の問題点について-

2017年(平成29年)7月19日

原告第36準備書面[177 KB]


目次

第1 京都市原子力災害避難計画の作成

第2 京都市原子力災害避難計画の問題点について
1 迅速的確な情報伝達の非確実性
2 避難手段について
3 滋賀県のシミュレーションを踏まえていない
4 「避難」を選択することの困難性

第3 結論


原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面では京都市における避難計画の問題点について追加の主張を行う。


第1 京都市原子力災害避難計画の作成

京都市防災会議は、平成25年3月18日、京都市地域防災計画原子力災害対策編を策定し、同対策編において、原子力災害避難計画(以下「京都市原子力災害避難計画」という。)を定めた(甲361号証[2 MB])。これまで、原告が、各地の避難計画について主張したとおり、京都市の避難計画においても、具体的な事態や個々の避難者の個別事情を想定して作成されていないのであり、避難計画としては、全く対策となっていない。

さらに、京都市防災会議は、平成26年3月20日、同年11月10日、平成27年11月9日、の合計3回、京都市地域防災計画原子力災害対策編の修正をおこなった(甲362号証[90 KB])。しかし、京都市原子力災害避難計画については、全く修正がなされておらず、問題点の改善がなされていない。

このことこそが、現実的な避難計画を作成することが不可能であることを示しているのである。

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第2 京都市原子力災害避難計画の問題点について


 1 迅速的確な情報伝達の非確実性

京都市原子力災害避難計画においては、国の災害対策本部長(内閣総理大臣)が、屋内退避の勧告又は指示が迅速になされ、京都市が正確に情報を受け取ることができることを前提として作成されている(甲361号証[2 MB]126頁)。

しかし、福島原発事故では停電により情報発信そのものが十分できなくなったり、処理能力を超えてメール等の送受信ができなくなったことにより、迅速的確な情報伝達は行われなかったりしたことを考慮すると、上記前提自体が覆される可能性が高い。

京都市原子力災害避難計画が策定されてから、4年以上が経過しているにもかかわらず、上記問題点は一切改善されていない。


 2 避難手段について

京都市原子力災害避難計画は、「避難又は一時移転」の方法として、下記のとおり定めている。

「本部長は、直ちにUPZごとに緊急輸送に必要な車両及び緊急輸送を行う者(以下「緊急輸送車両等」という。)を手配するとともに、避難者の緊急輸送を依頼する。緊急輸送車両等の手配要領は、原則として次のとおりとする。
(ア)UPZ付近にある公用車両を活用する。
(イ)UPZ付近にある民間事業者等の協力を要請する。
(ウ)交通部の保有する馬主
(エ)京都府バス協会にバス輸送の協力を要請する。

しかし、同規定は、地域ごとの具体的な避難人数を前提としてどれだけの輸送車両が必要となり、その輸送車両が、現実に確保できるのかといった検討が全くないままに定められており、非現実的である。

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 3 滋賀県のシミュレーションを踏まえていない

滋賀県が2014年1月24日に公表した琵琶湖の汚染予測調査の結果(ベクレル)(甲89)は、福島第一原子力発電所事故に、滋賀県が策定した放射性物質の拡散モデルを適用し、琵琶湖へのセシウム137と、ヨウ素131沈着量の予測を行ったものである。具体的な条件としては、大飯原発または美浜原発から、2011年3月15日(福島第一原発の事故において最も排出量の多かった日)の24時間の放射性物質排出量が排出された場合をシミュレーションし、琵琶湖流域に最も影響が大きいと考えられる日を抽出したものである。

この結果、セシウムについて、琵琶湖表層の浄水処理前の原水について、IAEAが飲料水の摂取制限の基準であるOIL6(経口摂取による被ばく影響を防止するため、飲食物の摂取を制限する際の基準。セシウム137について飲料水で200Bq/Lとされる)を超過する面積比率が事故直後には最大20%程度(北湖)となり、またこうした水域が長い場合で10日間前後残る可能性が示された。

また、ヨウ素については、琵琶湖表層の浄水処理前の原水について、同様の分析をしたところ、OIL6を超過する面積比率が事故直後に北湖で最大30%程度、南湖で最大40%程度となる事例が見られ、北湖では10日間程度で、南湖では7日間程度はその状態が続く可能性があることが判明した。

なお、この調査では専ら琵琶湖の汚染に焦点が当てられているが、同時に、人間の居住地域を含む土地の汚染が発生することは言うまでも無い。京都府は、滋賀県と隣接する都道府県であるにもかかわらず、京都市原子力災害避難計画は滋賀県のシミュレーションの内容を全く踏まえていない。

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 4 「避難」を選択することの困難性

京都市原子力災害避難計画は、原子力災害において、「避難」を選択することを前提として避難方法などについて定めている。しかし、そもそも、それまで、長年住み続けてきた地域から、仮に「避難」を選択する場合、それまで居住してきた住居を手放し、現在行っている仕事を退職するなど、重大な決断を行う必要があり、容易に「避難」を選択できるものではない。


第3 結論

このように、京都市原子力災害避難計画は、具体性・現実性が全く無く、避難計画としては、全く対策となっていないのである。策定されてから、4年以上が経過しても、同計画の問題点が何らの改善もされていないことこそが、現実的な避難計画を策定することが不可能であることを示している。

以上

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◆第16回口頭弁論 意見陳述

第16回口頭弁論意見陳述

市川章人

私は市川章人と申します。1948年1月7日生まれの69才で、京都市伏見区に家族4人ですみ、すぐ近くには娘夫婦が幼い孫2人と住んでおります。住まいは大飯原発から直線距離でわずか66kmであり、原発事故と放射能被害に対する不安と恐怖から、この訴訟に加わりました。

【被曝事故の経験と日本での原発過酷事故の予感】

私の原発と放射能に対する不安と恐怖は47年前の体験に始まります。大学で原子物理学を学びましたが、放射能の実験中に被曝事故にあい、それ以来がんへの恐怖を抱えて来ました。同じ頃の1970年大阪万博へ美浜原発から送電が始まりましたが、処理方法のない放射性廃棄物を大量生産する原発に疑問を持ち、学友と議論し、いずれ大問題になる、今儲ければよくて後は野となれ山となれ式の商業運転をやめるべきだという結論に達しました。

その後、1999年の東海村JCOウラン燃料工場の臨界事故とその時の国の対応は、チェルノブイリに続く過酷事故は日本で起きるに違いないという私の予感を一気に高め、不幸にして福島原発事故として的中しましたが、しかし想像を超える深刻さに身が震えました。

【恐怖の中でも福島から避難できなかった親戚】

福島第一原発から61.5kmの福島市内に私の親戚が住んでおり、事故の直後に法事で会いました。その時5人の子供を抱えた夫婦が涙ながらに訴えたのが放射能への恐怖でした。「事故直後からテレビ画面に白い点がいっぱい飛ぶ。これは何か?」と問われ、私は屋内で放射性物質が浮遊し、強い放射線エネルギーで発光するのではと疑いました。彼らに避難先として福知山市夜久野町で空いている私の実家の提供を約束しましたが、結局避難は叶わず、彼らは恐怖の中で生活せざるを得ませんでした。それは、福島における職を夫婦ともに失うことであり、5人もの子どもを抱えての生活のめどが立たないこと、さらに年老いた両親を残して自分たちだけ避難することは、家族を一番に大切にする強い宗教的信念で結ばれ共に生きてきた夫婦にとっては耐えがたいことであったからです。

【我が家は安定ヨウ素剤が必要な被曝範囲】

福島原発事故の後、重大事故の発生を前提にした原発の再稼働を認め、避難計画を安全審査の対象としない原発政策に変わることで、私たちも原発と活断層の集中する若狭湾で原発の過酷事故が発生する危険に怯えることになりました。

避難計画でUPZの範囲は大飯原発から半径32.5㎞に設定されましたが、その元になった規制庁の放射性物質拡散シミュレーションは被曝量の高い側のデータを削除しており、そのデータも使えばほぼ2倍の半径になることが指摘されています。滋賀県によるシミュレーションでも、北風の場合、大飯原発から66kmの我が家は、安定ヨウ素剤の服用が必要な範囲にすっぽり入ります。また、滋賀県は私たちの飲料水である琵琶湖が汚染されたら、放射性ヨウ素のために約1週間水が飲めないという試算もしています。

したがって私たちにも避難と安定ヨウ素剤の服用は不可欠ですが、京都市原子力災害避難計画にそのような対策は一切記載されていません。

【原災指針の改悪は30㎞以遠住民を危険の中に放置するもの】

2015年の原子力災害対策指針の改悪で不安は一層増しました。それは、避難よりも屋内退避を強調し、さらにUPZ以遠の地域で当初予定していた放射性プルーム対策としてヨウ素剤を服用する区域PPAを廃止し、ヨウ素剤配布はやめ屋内退避で十分としたからです。

これでは、事故の際、私たちには行政による対策も指示もなく、自分で身を守るしかなくなります。しかし、公的にはUPZ以遠の住民に何の知識も与えられておらず、正しい判断も適切な行動も困難です。情報も届かず、放置される危惧さえあります。

もし、緊急避難が必要になったとしても、私たちには指定避難先はありません。屋内退避で十分とされていることも大いに疑問です。私の学生時代の被曝事故は他の実験班の放射線をコンクリートの壁を通して浴びたものです。このように放射線遮蔽は普通のコンクリート壁でも不十分であり、木造家屋の屋内退避では効果はほとんどありません。

とりわけ心配なのは、保育園に通っている私の孫です。仮に、孫が保育園で保育を受けている際に、原発事故が起きた場合、きちんと避難出来るのでしょうか。この点について、京都市原子力災害避難計画は、一切具体的な対策を記載していません。

長期避難が必要な場合、私たちの移住先は夜久野町の実家しかありませんが、そこは大飯原発から64㎞、高浜原発から51kmであり、放射能に強く汚染される危険性があります。

そもそも、今の居住地を捨てるのは、福島の親戚と同様、耐え難いことです。私たち夫婦は年金で何とか生活できるかもしれませんが、我が子は仕事の継続が困難になり、生活の術を失います。中でも長男は、10年以上も展望の見えない就職活動を続け、37歳になった昨年ようやく就職できたもので、この職を失うわけにはいきません。私の子や孫たちには移住という選択肢もないのです。

【命と生活を最優先にした裁判所の判断を】

今、日々成長する幼い孫たちに接しながら命の輝きと尊さを深く実感しています。この幸せと被曝すれば影響を最も受ける孫たちの命と未来を守るために、他の技術とは異質の被害をもたらす原発で万が一の危険も冒すわけにはいきません。原発廃止こそ最大の安全対策であり、命と生活を最優先にした判断を裁判所が下されるよう切に願うものです。

以上

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◆原告第37準備書面
-被告関電は大飯原発の地盤特性を把握していないこと-

2017年(平成29年)7月20日

原告第37準備書面
-被告関電は大飯原発の地盤特性を把握していないこと-

原告第37準備書面[1 MB]


目次

第1 2007年新潟県中越沖地震のメカニズムについて
1.2007年新潟県中越沖地震は想定外の地震であったこと
2.同地震が「想定外」になったことに関する東京電力の後付けの説明の内容

第2 大飯原発の地盤特性がほとんど把握されていないこと
1 陸域の反射法調査は地下500m位までしか反射面が確認されていないこと
2 海域については更に浅い範囲でしか把握されていない
3 地震波干渉法では低速度帯の存在が示唆されること

第3 まとめ


本書面は原告第34準備書面第35準備書面を踏まえた上、さらに、被告関西電力が大飯原発の地盤特性を把握していないことを述べるものである。

 


第1 2007年新潟県中越沖地震のメカニズムについて

 

 1.2007年新潟県中越沖地震は想定外の地震であったこと

2007年新潟県中越沖地震及びそれによる東京電力柏崎刈羽原発への被害については、すでに第34準備書面11頁以下で述べた。
要旨以下のことを述べている。

活断層が認識されていなかった海底で地震が発生したこと
地震後も海底の地震断層が発見されなかったこと
営業中の原子力発電所の構内で想定を遙かに上回る地震動が発生したことについて事前に原因を予測できなかったこと
その原因を後付けで探し出したこと
マグニチュード6クラスの地震でも原発の重要設備に深刻な損害が生じた可能性があり、10年が経過した現在も設備健全性に関する報告書が提出されていない原子炉が3つあること

 

 2.同地震が「想定外」になったことに関する東京電力の後付けの説明の内容

訴外東京電力は、同地震により柏崎刈羽原発に「想定外」の地震動が到達したことについて、下図のように3つの要因によって説明している。

東京電力「柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性向上の取り組み状況」より【図省略】

要因1:地震規模から推定される揺れが通常より大きかった(約1.5倍)
要因2:発電所周辺の地表から4~6kmの深部地盤の傾きにより波が同時集中した(約2倍)
要因3:発電所の地下2kmの敷地地盤の褶曲構造により1~4号機に波が集中した(約2倍)

これらの「要因」のうち2と3については、科学的に正確な調査をおこなうことも、再現性の検証を行うことも、少なくとも現代の文明社会の経済感覚、時間感覚では不可能であり、仮説の域を出るものではないというべきだろう。

そして、2007年の新潟県中越沖地震の前に作られたと思われる東京電力は、ホームページ上で、原発の「地震対策」として「揺れの少ない強固な岩盤上に建てています。」「原子力発電所の重要な機器・建物等は、表層の軟らかい地盤を取り除き、地震による揺れが小さい固い岩盤の上に直接固定して建設しています。岩盤上の揺れは、新しい年代の軟らかい地盤の揺れに比べ1/2から1/3程度になることが分かっています。」などと記載していた。この東京電力のページは、インターネット上のアーカイブサイトに保存されていたものであるが、現在の東京電力のホームページにはこのページは存在していない【図省略】。

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第2 大飯原発の地盤特性がほとんど把握されていないこと

いずれにせよ、仮説レベルのものであれ、発電所周辺の地表から4~6kmの深部地盤及び発電所の地下2kmの敷地地盤という地盤特性に原因が求められたのである。

 

 1 陸域の反射法調査は地下500m位までしか反射面が確認されていないこと

大飯原発については、原子炉周辺のA側線、B側線について、反射法地震調査が行われている(丙28号証「大飯発電所の基準地震動について」17~18頁)。A側線について丙28号証の17頁を図示すると以下の通りである【図省略】。

ここでは、そもそも、1500mまでの深さまでしか断面図が存在しない上、「地下500m位まで反射面が確認され、その範囲内では特異な構造は認められていない。」と記されている(傍点は原告代理人が付した【ここでは下線】)。

同号証18頁では、B側線についても同様の記載がみられる【図省略】。

この地下500m程度の範囲でも、特異な構造が認められることはすでに第34準備書面でのべたところであるが、被告関西電力は、地下500m位より深い場所については、そもそも反射法による地盤特性を把握していないことになる。

 

 2 海域については更に浅い範囲でしか把握されていない

また、関西電力は、FO-B、FO-A、熊川断層の連動の可能性の評価やFO-C断層の評価をするについて、周辺海域の反射法の調査を行っている様子が見てとれる(丙29号証20頁、丙50)。逆に言えば、その目的以上での調査はそもそも行っていないと思われる。

この点、丙29号証の関電職員の陳述書では20頁で以下のような断面図が示されており、FO-A断層の評価との関係でせいぜい地下122.5m程度までしか断面図が示されていない反射法の調査結果が示されている【図省略】。

また、丙50号証では、FO-C断層の評価との関係でせいぜい地下75mまでしか断面図が示されていない反射法の調査結果が示されている【図省略】。

その他、被告関西電力が本訴訟に証拠で提出していない、インターネット上で収集可能な資料を前提に善解しても、海域については、せいぜい、地下2~300mまでしか地盤特性が把握されていないうえ、原発周辺海域を網羅的に調査するものではない。

 

 3 地震波干渉法では低速度帯の存在が示唆されること

関西電力は、地震波干渉法による調査に基づく評価を地下4kmまで行ったとしているが、これが恣意的なものである上、地震波を増幅させる低速度帯の存在が示唆されることについては、すでに、第34準備書面で述べた。

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第3 まとめ

結局、2007年新潟県中越沖地震の前には、揺れの少ない強固な地盤の上に立っているはずだった柏崎刈羽原発は、実際に想定外の1699ガルの地震動に襲われ、大きなダメージを受けた。その原因は後付けで、地下4~6kmの周辺地盤、地下2kmの敷地地盤の特性に求められたが、これは仮説の域をでないものである。

仮にこの仮説を援用するにしても、関西電力は敷地及び周辺について、せいぜい地下500mまでの範囲でしか地盤特性を把握していないし、その範囲でも特異な地盤特性の存在が示唆されている。

そして、東京電力が2007年新潟県中越沖地震で問題にしたような、地下4~6kmとか地下2kmの地盤特性については、そもそもまともな調査すらされていない。

被告関西電力が、大飯原発の地盤特性を把握していないことは明らかである。
このような状態を「特異な地盤特性は存在しない」などと評価することは不可能であり、むしろ、自然界に多数存在する複雑な要因を発見できていないだけと考えるべきだろう。

以上

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◆第15回口頭弁論 意見陳述

第15回口頭弁論意見陳述

福島敦子   竹本修三   赤松純平[5 MB]6/22提出の4枚めグラフ訂正版[523 KB]

福島敦子

水は清き故郷(ふるさと)でした。
命がけで川へ戻ってくる鮭の躍動が、子どもたちに感動を与えてくれる故郷(ふるさと)でした。
たらのめや栗や、まつたけが季節の移り変わりを教えてくれました。
今は、除染の効果が少なく、人間の住む世界と隔絶された世界が大きく広がる故郷(ふるさと)になりました。
癒しと恵みをもたらしてくれた私たちの故郷(ふるさと)の山や海に、何百年も消えることのない毒をまかれたのです。

私は、福島県南相馬市より京都へ避難してきた福島敦子です。
福島第一原子力発電所の爆発当時は川俣町そして、放射線量が最も高く示された福島市に避難しておりました。あの頃は、なぜ近距離の南相馬市より線量が高いのか解りませんでした。
一度戻ろうと思った南相馬市は13日には市の境に川俣町の警察署員などによりバリケードが張られ、入ることができなくなりました。
2011年3月13日の夜、福島市飯坂町の小さな市民ホールの避難所には、800人以上の人が押し寄せました。地震のたびに携帯電話を手にする人々、消灯後の部屋がぼんやり青白く光ると、夜中なのに大きな荷物をもってせわしなく足早に出入りする人々が寝ているわが子の頭を踏みそうになります。放射能が多く降り注いだとされる15日には、仮設トイレまで雪をかぶりながら入らなければなりませんでした。私はその日の夕方、鼻血を出しました。目の前の男性も2人、鼻血を出していました。
毎日毎日外で遊べない子どもたち。ボランティアの人に風船をもらった娘たちは次々に飛び跳ねては上手にパスしあいます。足元には、体を横たえている大人が数人いました。わたしは、一番年長の娘に今すぐやめるよう強く言いました。辛抱強い娘は子どもたちにそれぞれ家族のもとへ戻るよう告げると、声を殺して泣きました。
明け方のトイレには、壁まで糞便を塗りつけた手のあと。苦しそうな模様に見えました。
食べるものなどほとんど売っていないスーパーに何時間も並び、列の横に貧血で倒れている老女がいました。インフルエンザが蔓延した近くの避難所では、風呂に入ることができないため、温泉街までペットボトルに温泉水を汲みに行き、湯たんぽの代わりにして暖をとる人がいました。
ガソリンを入れるのに長時間並び、ガソリンを消費して帰ってきました。思うほどガソリンが手に入らずより遠くへは避難できない人がたくさんいました。
雪が降る季節なのに、冷たいおにぎりや菓子パンと紙パックの牛乳を配る列に並んでいると、「戦争が終わって、年をとってもまたこうして配給の列に並ばなければならないなんて」と涙を流す人がいました。隣のスペースに、孫にかかえられて避難してきた年老いた人は、硬い床に座っていることがつらくて、物資の届かない南相馬市へ帰っていきました。ロビーにあるテレビで、次々に爆発していく福島第一原子力発電所の様(さま)を避難所の人たちが囲

んで観ている。毎日が重く張り詰めた空気の中、私を含め死を覚悟した人も大勢いた避難所の生活は、昨日のことのようで忘れられません。

2011年4月2日、私は娘2人を連れ、京都府災害支援対策本部やたくさんの友人の力を借り、ごみ袋3つに衣服と貴重品をつめて、京都府へと3度目となる避難をしてまいりました。
その時に、貴重品以上に大切なものが私たちにはありました。『スクリーニング済証』というものです。
これを携帯しなければ、病院に入ることも避難所を移ることもできませんでした。私たちは、被ばくした人間として、移動を制限されていたからです。また、この証明書は、外部被ばくに限られた証明書であって、私たち家族の内部被ばくの状況は、今はまだはっきりとわかりません。これは、広島長崎の原爆被害、チェルノブイリの症状でも明らかなように、血を受け継いでいくものであり、永遠の苦しみとなることはゼロではないからです。
到着は夜でした。翌朝からは、京都府災害支援対策本部の方の案内で居住地を決めたり、娘2人の小学校の手続きをしたりしました。2日後に、始業式がせまっていました。

40歳の2人の子を持つ女性として、就職活動も始めなければなりませんでした。時給800円の6ケ月期限の事務の仕事にかろうじて就くことができました。
学校では、名前がふくしまということもあり、『フクシマグンバツ』とあだ名をつけられたこともあった娘ですが、気遣ってくださる先生方、たくさんの気の合う友達に恵まれ、持ち前の明るさで乗り切りました。さよならを言う間もなくバラバラになってしまった南相馬市の友達には、避難所の様子や仮の校舎で学ぶ姿をテレビの報道で見つけては、元気をもらっているようでした。
私たちの暮らしは、その日その日を精一杯『生きる』ことで過ぎていきました。

福島第一原子力発電所の状況は収束せず放射能が放出し続けています。なぜ事故が起こったのかの具体的な理由も責任も、誰一人問われることなく、ただ被災した人々は日々の生活に疲弊し、家族の崩壊と向かい合っていかなければならなくなりました。除染が進まない避難指示区域の解除をされても、家はすでにすさみ、なじみの店はありません。孤独死や、自殺する人を耳にすることが増えました。子どもたちの声も聞かなくなりました。
私たちが今、福島県へ帰ったとしても、元の街にはもう戻らないのです。

こう陳述したのはちょうど3年前。
国は、『避難者がいる状態が、復興の妨げである』との政治判断の元、このすさんだ状況そのものがまちの復興を妨げていると思わせるかのように、避難指示区域解除を続けざまに打ち立てていきました。避難者への住宅無償提供の一方的な打ち切りもこの避難指示区域解除に通ずるものであります。東京を中心に、この京都でも住宅無償提供打ち切りになった今、私を含め路頭に迷いつつある仲間がいます。わが身をわが子とともにここ京都に

安心して暮らす生活基盤を置くこともできない、それが原発事故の恐ろしさです。

また、最近の『福島県民健康調査』の結果では、185名の子どもたちが小児甲状腺がんの患者数だと公表されていますが、実際には2千人以上の子どもたちが、B判定以上の結果を受けておきながら『経過観察』とされ、この健康調査から外され、小児甲状腺がんになっても保険診療になっていて数すらわからず、県民健康調査における患者数にカウントされていない今後もされないことが明らかになったことも、事故の真相をうやむやにしようとしている証拠です。

このような一つ一つの衝撃的事実がある中で、多くの国民が、原発事故は収束していない、避難者は強制帰還させられている、事故の原因究明もなされず、国や東電は謝罪もしていないことをきちんと知ることもなく日々を過ごしています。

6年が経ち、真の情報に触れることができない多くの人々は、原発事故への関心が薄れていき、意識の風化と知識の開きが生まれ、無意識の中で子どもたちにも飛び火し、全国で『原発いじめ』が起こりました。

私たち自主避難者は、このように経済的にも追いつめられ、原発事故の罪にも問われない国と東電のあまりにも非情な対応にも歯を食いしばり、この京都にいなければならないのはなぜか。避難指示区域解除後のまちに戻った人々はほんの1割程度にとどまる自治体があるのはなぜなのか。
私たち避難者は、国の復興大臣から「避難は自己責任だ」と罵声を浴びせられたとしても、「裁判でもなんでもすればいい」と切り捨てられても、そして、私たちの美しかった故郷を、水は清かった故郷を、『事故は東北だったからよかった』とののしられ、打ちのめされても、なぜ踏みとどまっているのか。
避難指示解除されたとしても、放射能汚染の状況が変わらなければ帰れない。はっきりとした理由。それは、私たちはみな、『放射能汚染した地から、被ばくを避けるために避難してきた』からです。

子どもの引きこもりが原因で避難元に戻った仲間もいます。福島県や、その近隣都県に住まう人々の中にも、放射能汚染に対する不安を抱え住んでいる人は多いのです。

そうした中での大飯原発の再稼働は、関西電力の経営努力の怠慢さも浮き彫りになり、地元の人々の不安と日本国民の原発に対する懸念の声を全く無視した人権侵害であり、日本だけではなく世界最大級の公害問題といえます。また、先の名古屋高裁金沢支部であった大飯原発3・4号機差し止め請求裁判控訴審では、専門家の証人尋問で元原子力規制委員会の島崎委員長が、「問題の入倉・三宅の過小評価」を証言したことは記憶に新しいです。

司法に対しては、日本国民の大きな民意を水俣裁判のように50年以上も放置することなく、真剣に向き合ってくださることを希望します。

今日もここに、私の実家の庭の土を持ってまいりました。子どものころにシャベルで穴を堀ったり、イチゴを摘んだり、母は長い年月をかけてコケを育て、灯篭の上にも珍しい種

の苔が生える自慢の癒しの日本庭園でした。そのコケをはぎ、むき出しになったこの土を、京都・市民放射能測定所で測定したところ、放射性セシウム濃度は、1平方mあたり93万ベクレルでした。
これは、チェルノブイリ被災者救済法では移住必要地域にあたるレベルです。ここが、チェルノブイリのある地域なら、母たちは移住しているはずであります。

裁判長、子どもを守ることに必死な、懸命な母親たちをどうか救ってください。
子どもたちに少しでも明るい未来をどうか託してあげてください。
私たち国民一人ひとりの切実な声に、どうか耳を傾けてください。
大飯原発の再稼働は、現在の日本では必要ないと断罪してください。
もう、私たち避難者のような体験をする人を万が一にも出してはいけないからです。
司法が健全であることを信じています。日本国民は、憲法により守られていることを信じています。

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地震国ニッポンで原発稼働は無理!  原告団長 竹本修三

図1 地震国ニッポンで原発稼働は無理!

(1)福島第一原発の事故は6年経ったいまでも収束していない。

国会事故調は、大気中への放射能漏れについて、「福島第一原発事故の主因を津波のみに限定するべきではなく、地震による配管損傷の可能性も否定できない」としている。

(2)福島の原発事故は例外的なものではなく、地震国ニッポンの全ての原発が同様な事故を起こす危険性をはらんでいる。

図2 世界の地震・日本の地震

M4以上の地震をプロットすると日本の島影は見えなくなる。
日本の国土面積は全世界の約0.25%.そこで、世界のM6以上の地震の約20%が起こっている。

図3 世界の地震源分布と原発立地の図

4つのプレートの会合部である日本に50基超の原発が設置されたのは世界的に見て異常。

図4 6年を経た福島第一原発事故の現状(1~4号機)

  • 2011年に大気中に放出された放射能は全体の約1%、 残り約99%は辛うじて原子炉と建屋の使用済み核燃料プールの中にあるという。
  • 1~3号機の格納容器内に276トンのデブリ、また燃料プール中には、合計1573体の燃料棒が残っている。

図5 とくに2号機は?

格納容器内の空間で650Sv/hが見つかる!(1時間650シーベルト=年間569万シーベルト)。これは、「避難指示解除」の基準になっている年間20ミリシーベルトの約2.8億倍に相当する。

図6 福島第一原発は3・11地震(Mw9,0)の余震域にある!

  • 2011年4月11日にM7.0の余震が起きた(福島県浜通り地震)。
  • 原発までの震央距離は61.7km、いわき市で震度6弱 。
  • この地震で装置の損傷等は報告されていない。震度5強くらいの揺れではデブリは大丈夫ということであろう 。

図7 アンダーコントロール?

  • 余震域にある福島第一原発の直下(震央距離10km以内)で、M7クラスの地震が起こること、傷だらけの原子炉が震度6強~7の揺れに見舞われ、新たな放射能汚染(あるいは放出)をひき起こすことになる。
  • これまでの世界の原発事故で、メルトダウンの後に核燃料デブリが震度6強とか震度7の強震動で揺すられた例は過去にない。地震国ニッポンの福島第一原発が初めて経験することになるであろう。

図8 M7クラスの地震予知は不可能!

  • 1995年1月の兵庫県南部地震(M7.3)のあと、2016年4月の熊本地震(M7.3)の直前までの約20年間に、M7以上の内陸の地殻内断層地震は、2000年に鳥取県西部地震(M7.3)、2005年に福岡県西方沖地震(M7.0)、2008年に岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2011年福島県浜通り地震(M7.0)と、5~3年間隔で広範囲な地域でバラバラと起こった。
  • これらの地震の前兆的ひずみ変化は観測されなかった。さらに、2000年鳥取県西部地震と2005年福岡県西方沖地震は活断層の知られていないところで起こった。
  • 全国の原発が危ない。いつM7級の地震に襲われるか、地震学者もわからない。

図9 日本付近の地震

  • M8を超す大地震は、太平洋側の海・陸プレート境界で起きる海溝型巨大地震である。
  • 日本列島内陸部及び日本海側では、プレート間のせめぎあいによる地殻ひずみの蓄積に伴ってM8以下の地殻内断層型地震が起きる。

図10 わが国の地震予知研究の現状

  • 1962:地震予知のブループリント(坪井・和達・萩原)。
  • 1965:地震予知計画が発足。そのなかで地震の直前予知の本命と目されていたのが傾斜計や伸縮計を用いた地殻変動連続観測である。(1943年鳥取地震M=7.2の際に地球潮汐変化の2倍近くの異常傾斜変化を京都大学が生野鉱山で観測したことが契機。)

図11 地震予知計画発足前の地震直前の異常地殻変動

昭和18(1943)年9月:鳥取地震(M=7.2)のときに震央から60km離れた生野鉱山で異常傾斜変化が観測された。

図12 ブループリントのまとめ(32ページ)

  • 地震予知がいつ実用化するか、すなわち、いつ業務として地震警報が出せるようになるか、については現在では答えられない。しかし、本計画のすべてがきょうスタートすれば、10年後にはこの間に充分な信頼性もって答えることができるであろう。
  • 1965年に発足したわが国の地震予知5か年計画(第1次のみ4年で終了)は第2次、第3次と進むにつれて、次第に研究の進捗面と予算要求の書類上の乖離が大きくなった。

図13 わが国の地震予知計画は1995年兵庫県南部地震で破綻

  • 図は兵庫県南部地震(M=7.3)の本震と24時間以内の余震分布及び六甲高雄観測室の位置を示す。
  • 震源断層面のほぼ直上で高精度レーザー伸縮計を用いて精密観測を実施していたが、地震前の異常変化はまったく観測されなかった。

図14 六甲高雄観測室内のレーザー伸縮計の配置

図15 兵庫県南部地震の予知はできなかった!【地震前1週間の記録】

京大防災研・理学部では、新神戸駅から2kmほど北に上がった新神戸トンネル内の六甲高雄観測室でレーザー伸縮計を用いた高精度地殻変動精密観測を続けていたが、地震の前兆的変化は捉えられなかった。

図16 地震前30時間の記録

M7.3の震源領域のほぼ真上で観測していたにもかかわらず、地震発生前に異常ひずみ変化は、まったく見られなかった。精密地殻変動の観測をやっていても、M7クラスの地震の予知はできない。

図17 兵庫県南部地震前10年間の微小地震活動

微小地震の活動変化を追いかけても、地震予知にはつながらない。

図18 活断層はどうだろうか?

  • 兵庫県南部地震までに認識されていた近畿およびその周辺の近畿地方では山崎断層や三峠断層が注目されていた。六甲断層系と淡路島の断層系がいっしょに動いてM7.3 の地震が起こるとは予測されていなかった。
  • 地震後に、兵庫県南部地震の震源断層と山崎断層は共役断層との見方もある(藤田1995)。
  • 活断層だけに注目していても、地震予知はむずかしい。

図19 兵庫県南部地震の地震断層

  • 兵庫県南部地震の際に、地表に地震断層が現れたのは、淡路島北部の野島断層だけであった。
  • 後世の人が野島断層を見て、ここだけが活断層と考えれば、兵庫県南部地震の全体像を見失うことになる。

図20 活断層が知られていない場所でも、M7級の地震は起こる

2000年10月6日13時30分 鳥取県西部地震(M7.3)の例。

図21 福岡県西方沖地震の例

  • 2005年3月20日の福岡県西方沖地震(M7.0)は、近くの陸域には警固(けご)断層という活断層が認められていたが、地震はその北西延長上の玄界灘の地震空白域で発生した。この地震の余震域と警固断層が直線上にほぼ連続していることから、2005年の地震後は、一連の活断層帯であると考え、これらをまとめて警固断層帯として扱っている。
  • 若狭湾の活断層が連動して動く可能性は十分考えられるし、既知の活断層の延長上を含めていっしょに割れる可能性も考えておかなければならないであろう。

図22 大飯原発の現状:補正書の概要(地震)関電資料(2016)

  • ここまでは、主にわが国の地震予知の現状を説明したが、専門家の話によれば、“いわゆる地震予知と、JASO(耐震総合安全機構)による耐震安全性審査で行われているシナリオ地震動予測とはまったく無関係である。”と指摘された。これも問題であるがそれはさておき、以下に関電が大飯原発で用いている想定地震についての矛盾点を述べる。
  • 関電は2013年7月の段階でFO-B~FO-A断層の2連動を基本ケースとして基準地震動700ガルを策定した。ここで、FO-A断層と熊川断層は15km離れており、この間が連続していることを示す地質構造は確認されていなかったそうだ。
  • その後、原子力規制委員会の議論も踏まえて、2016年5月には、熊川断層を含む3連動を基本ケースとして基準地震動856ガルを策定した。

図23 FO-B~FO-A~熊川断層の3連動の想定地震

  • ・想定地震の断層面は、既存のFO-B、FO-A及び熊川断層の3つの活断層をつなぐ位置に仮定された。
  • 1~9は、想定地震動の計算に用いられた破壊開始点の位置を示す。
  • 断層面はこの位置を通り基本的に鉛直方向(断層傾斜角90°)である。
  • アスペリティの領域は薄い緑色で示されているが、この範囲が唯一解ではない。
  • 856ガルという基準地震動を決めるのに用いられたパラメータには2桁の精度が保証できないものも多数含まれている。
  • このことは、すでに指摘したが、準地震動を3桁の有効数字で表記するのは、ゴマカシである。

図24 上林川断層の評価

  • 関電は、断層の南西端を味方町付近と評価。また、断層の北東端を福井県との県境付近と評価。
  • 想定地震断層の北東端から大飯原発は20km離れているので、大きな影響はない。  ホントにそうか?

図25 FO-B、FO-A、熊川断層と上林川断層

  • 国土地理院の過去111年の測量結果によれば、このあたりは東西方向に主応力の方向があり、年間1×10-7の割合で縮み変化を示している。
  • 関電は、FO-B、FO-A、熊川断層の3連動による想定地震を最も深刻なケースとして856ガルの基準地震動を定めているが、その場合の起震力としては、東西方向の主応力を考えているのであろう。
  • これが重要なポイントで、それならば、共役関係をなす上林川断層も同じウェイトで考えなければならない。
  • FO-Aと熊川断層の間が連続していることを示す地質構造は認められず、15km離れているものを一連の想定地震の震源として認めている。
  • 上林川断層の北東端を走行に沿って20km延長したとことに大飯原発がある。
  • 地震断層の一部しか活断層として残っていない1995兵庫県南部地震の場合や、既存の活断層の延長上の空白域で起こった2005福岡県西方沖地震の例から考えても、上林川断層の北東端の延長上を大飯原発まで伸ばした想定地震を考えなければならない。

図26 国土地理院 過去111年間の地殻変動

  • この地域は東西方向に1×10-7/年の縮み変化をしている。
  • 早ければ1000年に1度、同じ場所で地震が発生することになる。

図27 共役(共軛:きょうやく)断層

水平方向の同じ圧縮(または引っ張り)力が働いたとき、互いに断層面が直交し、ずれの向きが逆向きになる断層の組のこと。郷村断層と山田断層の走行は約90°ずれており、主圧力の方向と互いに約45°ずれているのは、その典型的な例。「FO-B、FO-A及び熊川断層」と「上林川断層」は東西主圧力のもとでの共役断層と考えられる。

図28 南海トラフの海溝型巨大地震と若狭湾周辺の地殻内断層地震

1925年 北但馬地震(M6.8)、1927年 北丹後地震(M7.3)
1943年 鳥取地震 (M7.2)、
1944年 東南海地震(M7.9、Mw8.2)
1946年 南海地震(M8.0、Mw8.4)、
1948年 福井地震(M7.1)、1963年 越前岬沖地震(M6.9)
2000年 鳥取地震西部地震(M7.3)、2016年 鳥取地震中部地震(M6.6)
2038年(?) 南海トラフの海溝型大地震(>M8.0)

図29 2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)

だんだん若狭湾に近づいてきている。次は。若狭湾(?)

図30「新規制基準の考え方について」

「科学技術の分野においては、絶対的に災害発生の危険がないといった『絶対的な安全性』というものは、達成することも要求することもできないもの…」(2ページ)。

  • このことは航空機の発達の例から、一般論としては理解できる。しかし、航空機事故は被害が限定的であるのに対して、原発事故は、無関係な広範の人々・動植物が被害を受けるだけではなく、地球全体に影響が及ぶ点が根本的に異なる。
  • 東電は、原発事故前に敷地を15.7mの津波が襲うことも検討していながら、そんなことは千年に1度あるかないかのことだから、いまその対策を考える必要はないと言い切って、津波想定を6.1mとしていた。そして現実には15.5mの津波が、福島第一原発を襲った。
  • いまの原子力規制委員会の「新規制基準」を忠実に守っていても福島第一原発のような事故は再び起こるであろう。
  • 裁判官が、科学技術の進歩のためにはそれも許せると考えるかどうかに注目している。

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◆第15回口頭弁論 原告提出の書証

甲第343~356号証(第34準備書面関係)
甲第357~360号証(第35準備書面関係)
甲第358-2号証(第35準備書面関連)

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証拠説明書 甲第343~356号証[161 KB](第34準備書面関係)
2017年(平成29年)5月8日

・甲第343号証
活断層とは何か(ホームページより)(国土交通省国土地理院)

・甲第344号証
兵庫県南部地震の概要(国土地理院時報1995 No.83)(地殻調査部橋本 学)

・甲第345号証
北淡震災記念公園写真撮影報告書(原告代理人弁護士渡辺輝人)

・甲第346号証
神戸市三宮周辺について兵庫県南部地震直後と現在の状況の対比報告書
(本報告書は兵庫県南部地震直後に大木本美通氏が撮影した被災状況の写真(神戸大学のホームページで「震災記録写真(大木本美通撮影)」として公開されているもの)と同じ場所の2016年10月30日の状況の弁護士渡辺輝人撮影の写真を対置し比較したもの。)

・甲第347号証
新編 日本の活断層―分布図と資料 京都及大阪(抜粋)(活断層研究会編 東京大学出版会)

・甲第348号証
新編 日本の活断層―分布図と資料 和歌山(抜粋)(同上)

・甲第349号証
新編 日本の活断層―分布図と資料 姫路(抜粋)(同上)

・甲第350号証
新編 日本の活断層―分布図と資料 徳島(抜粋)(同上)

・甲第351号証
新編 日本の活断層―分布図と資料 45 長岡(抜粋)(同上)

・甲第352号証
平成19年(2007年)新潟県中越地震の評価(主に断層面に関する評価)(ホームページより)(地震調査研究推進本部地震調査委員会)

・甲第353号証
2007年新潟県中越沖地震直後の東京電力柏崎刈羽原子力発電所の状況写真(原子力・安全保安院、武本和幸)

・甲第354号証
各号機における報告書柏崎刈羽原子力発電所(ホームページより)(東京電力ホールディングス)

・甲第355号証
新潟県中越沖地震記録誌 第7章 中越沖地震に係る原子力発電所への影響(抜粋)(新潟県)

・甲第356号証
平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所地域活断層の再評価に関する調査結果について(東京電力株式会社)

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証拠説明書 甲第357~360号証[130 KB](第35準備書面関係)
2017年(平成29年)5月8日

・甲第357号証
意見書「大飯発電所基準地震動の策定における問題点 ―地盤の速度構造(地盤モデル)について―」(赤松純平(元京都大学防災研究所助教授))

甲第358号証[5 MB]
パワポ資料「基準地震動の策定における問題点 ―地域性および地盤モデルについて―」(同上)

・甲第359号証
学会報告要旨「日本における原発運転上の測地学的及び地震学的リスク」(竹本修三(京都大学名誉教授))

・甲第360号証
パワポ資料「地震国ニッポンで原発稼働は無理!」(同上)


証拠説明書 甲第358-2号証[96 KB](第35準備書面関連)
2017年(平成29年)6月22日

甲第358-2号証[523 KB]
パワポ資料「基準地震動の策定における問題点―地域性および地盤モデルについて」の中の(2)地震波の伝播特性減衰定数Q値についてのページ(赤松純平元京都大学防災研究所助教授)

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