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◆ 原告第63準備書面
-避難困難性の敷衍(京都府南丹市園部町における問題点について)-

原告第63準備書面
-避難困難性の敷衍(京都府南丹市園部町における問題点について)-

2019年(平成31年)4月26日

原告提出の第63準備書面[123 KB]

目 次

1 原告石井琢悟について
2 原発事故は、かけがえのない自然を破壊する
3 避難の困難さ


原告第6準備書面において、避難困難性について述べたが、本準備書面で京都府南丹市園部町に在住する原告の石井琢悟の日々の暮らしをもとに、避難困難性に関する個別事情について述べる。

1 原告石井琢悟について

原告石井琢悟は、大飯原発から52.5km南に位置する、京都府南丹市園部町に住んでいる。原告石井琢悟の自宅は、町の中心部から数キロ、園部川沿いの里山にある。原告石井琢悟は、週の何日かは電車を使って京都市方面へ行くが、多くの日は自宅を仕事場にしており、仕事でも生活でも、大部分を自宅で過ごす。

2 原発事故は、かけがえのない自然を破壊する。

原告石井琢悟が、住んでいる地域には農業に従事する者が多く、専業で野菜を京都市や直売所で販売している農家が複数いる。朝霧に包まれることの多い園部川沿いの自然環境で、美味しいお米が採れ、都会の子供たちが米作り体験を通じて自然環境を学習する場でもある。宝酒造株式会社が主催する『田んぼの学校』の開催地にも選ばれ、数年以上、多くの子供たちを迎え入れてきている。近年は、農業をするために移住してきて子どもを育てる若い家族が見られる地域でもある。

原告石井琢悟も、10年前にここへ移り住んだ当初から、近くの畑を借り、作物作りを続けている。春から秋にかけては大豆や小豆といった豆類、冬の間はにんにくを中心として、採れた種の一部を次の世代のために回す自家採種をしながら、育てた作物について自給自足している。できるだけ自然に任せる形でのこの作物作りが、週末、原告石井琢悟にとって、妻と共有する大事な時間になっている。

大飯原発から原告石井琢悟の自宅までの直線距離は、福島第一原発から飯舘村と福島市の中間点までの距離程度である。福島第一原発事故のときには、飯舘村方向に放射性プルームが流れた。2年前に、原告石井琢悟が飯舘村を訪れたときに確認したモニタリングポストの空間線量では1μS/hを大きく超える箇所があった。農地など至る所が事実上、除染土置き場になっていた。環境省が公表している風向きデータによると、大飯原発から南に位置するこの地域で最も頻度の高い風は、北風である。もしも大飯原発が福島第一原発と同程度の事故を起こした場合、原告石井琢悟が住んでいる地域は、飯舘村と同程度の深刻な放射能汚染を受ける可能性が高い。

仮に、原発事故が起きた場合、かけがえのない自然環境が、奪われてしまい、金銭に置き換えることができない、回復不可能な損害が発生し、重大な人権侵害が起こることになる。

3 避難の困難さ

原発事故が起きて電気が止まった場合、電車を使用する事は出来ないため、自動車だけが、逃げる手段となる。

原告石井琢悟、が住んでいる園部町は、北側には原発があり、東側には山がある。このため、逃げる方向は、西か南に限られる。仮に、原告石井琢悟が、避難する場合、日常的に使い慣れており、京都市など行き先がイメージできる、国道9号線を南方へ逃げることが想定される。原告石井琢悟の母は、滋賀県大津市に、一人で居住している。そこは、山の中で交通の便があまりよくなく、なにより原告石井琢悟の母は車を運転できないため、原告石井琢悟は、いったん母の元を訪れ、連れて避難することになる。しかし、国道9号線は、園部町の少し先、亀岡市に入ると日常的に渋滞している。常時渋滞傾向にあるこの道が大規模災害時に動けなくなるだろうということは、原告石井琢悟を含め、園部町に住む者なら簡単に想像できる。実際、原告石井琢悟が自宅から亀岡市中心部を抜けるまでに一時間程度掛かることもある。環境省が公表している風速データを基にすると、大飯原発で放射性物質が放出されるような事故が起きた場合、平均2.5時間のうちに渋滞の列は放射性プルームに覆われると概算できる。そのように被曝する可能性が高いことを考えると、車で避難するのは危ない方法だということになり、結局、原発事故が起きた際に、避難することは、不可能である。

原発の本質の一つは、事故を起こしたときに、その被害が何十kmもの広範囲にわたる点にある。このような、原発は、今すぐ、廃炉にするべきである。

以上

◆ 原告第62準備書面
第3 我が国の行政でも原発以外の分野では「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定するようになっていること

原告第62準備書面
-いわゆる「社会通念論」批判-

2019年(平成31年)4月26日

目 次(←第62準備書面の目次に戻ります)

第3 我が国の行政でも原発以外の分野では「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定するようになっていること
1 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)に至る経過
2 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと
3 まとめ


第3 我が国の行政でも原発以外の分野では「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定するようになっていること

 1 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)に至る経過

第3は既に第42準備書面でも、法制度の整備のこととしてふれたところであるが、本書面は、社会通念との関係で、詳論する。

平成23年3月に発生した東日本大震災は、それまでの想定をはるかに超える巨大な地震・津波により一度の災害で戦後最大の人命が失われるなど甚大な被害をもたらしたため、「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告」において以下のよううに指摘された(甲495[640 KB])。

  • 対象地震・津波を想定するためには、できるだけ過去に遡って地震・津波の発生等をより正確に調査し、古文書等の史料の分析、津波堆積物調査、海岸地形等の調査などの科学的知見に基づく調査を進めることが必要である。この調査検討にあたっては、地震活動の長期評価を行っている地震調査研究推進本部地震調査委員会と引き続き十分に連携し実施する必要がある。
  • この際、地震の予知が困難であることや長期評価に不確実性のあることも踏まえつつ、考えうる可能性を考慮し、被害が想定よりも大きくなる可能性についても十分に視野に入れて地震・津波を検討する必要がある。
  • すなわち、今後、地震・津波の想定を行うにあたっては、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきである。

これらを踏まえ、いかなる大規模な地震及びこれに伴う津波が発生した場合にも、人命だけは何としても守るとともに、我が国の経済社会が致命傷を負わないようハード・ソフト両面からの総合的な対策の実施による防災・減災の徹底を図ることを目的として、平成25年に東南海・南海法を改正する形で、南海トラフ全体を対象とした「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(以下、「南海トラフ法」という。)が制定され、科学的に想定し得る最大規模の地震である南海トラフ巨大地震も対象に地震防災対策を推進することとされた。ここでは、法律の条文としても、中央防災会議の役割を定めた4条4項で、「中央防災会議は、基本計画の作成及びその実施の推進に当たっては、南海トラフ地震の発生の形態並びに南海トラフ地震に伴い発生する地震動及び津波の規模に応じて予想される災害の事態が異なることに鑑み、あらゆる災害の事態に対応することができるよう適切に配慮するものとする。」とした。

この法律により、南海トラフ地震により著しい被害が生ずるおそれのある地域が南海トラフ地震防災対策推進地域として指定され、同地域においては、大震法や東南海・南海法と同様に、国、地方公共団体、関係事業者等が、調和を図りつつ自ら計画を策定し、それぞれの立場から予防対策や、津波避難対策等の地震防災対策を推進することとされた。

 2 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと

このようななか、平成25年にとりまとめられた政府の「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」の下に設置された「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」(以下、「平成25年調査部会」という。)の報告において、「現在の科学的知見からは、確度高い地震予測は難しい。 」とされた。ここで「地震予測」とは「確度の高い地震の予測」とは、地震の規模や発生時期を確度高く予測すること」とされ、前述の「予知」を含む概念とされた。

さらに、平成29年、政府の「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」において、近い将来発生が懸念される南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性について最新の科学的知見を収集・整理して改めて検討した結果、「現時点においては、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測する科学的に確立した手法はなく、大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言後に実施される現行の地震防災応急対策が前提としている確度の高い地震の予測はできないのが実情である。」と、とりまとめられた。

 3 まとめ

このように、我が国の地震に対する防災に関する行政の考え方は、巨大地震の規模や発生時期を予測できないことを前提に、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を検討して「あらゆる災害の事態に対応することができるように」するものになっている。これは社会通念の範囲を遙かに超え、行政施策上の基本方針となっているのである。

この点で重要なのは、南海トラフ地震をはじめとする海溝型の地震より、本訴訟で問題になっている内陸型の地震の方が、ある断層で発生する地震の周期が長いこと等に起因して、地震の規模や発生時期の予測がより困難だということである。

そうであるなら、原発の地震対策についても、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震」を想定すべきであり、それは、少なくとも我が国の観測史上の既往最大の地震、地震動を下回ることはないのである。ましていわんをや、我が国の原発敷地に襲来した地震動を下回る「基準地震動」が社会通念を根拠に正当化されることは到底あり得ない。

以上

◆ 原告第62準備書面
第2 一般建築物に求められる耐震性との比較でも原発の安全性は社会通念にすら達していないこと

原告第62準備書面
-いわゆる「社会通念論」批判-

2019年(平成31年)4月26日

目 次(←第62準備書面の目次に戻ります)

第2 一般建築物に求められる耐震性との比較でも原発の安全性は社会通念にすら達していないこと
1 原発の耐震性を遙かに上回る耐震性を一般建築物でさえ具備していること
2 耐震性について科学的な検証がなされていないこと


第2 一般建築物に求められる耐震性との比較でも原発の安全性は社会通念にすら達していないこと

 1 原発の耐震性を遙かに上回る耐震性を一般建築物でさえ具備していること

  (1) 一般建築物が備える最高レベルの耐震性

大飯原発は,基準地震動が856ガル,クリフエッジが1240ガルであるが,それらを遙かに上回る耐震性を,以下のとおり,現実には一般建築物さえ有している。

   ア 三井ホームの耐震住宅(甲491[1 MB]
三井ホームの提供する住宅は,震度7に60回,最大5115ガル,231カイン(カインは地震の揺れの強さを速度で表した単位)に耐えるだけの耐震性を備えた住宅であり,以下のように紹介されている。

「今回の耐震実験では、あらゆる可能性を検討し、自然界では到底起こりえない過酷な条件で検証を行ないました。震度6強以上のさまざまな揺れ方の大地震を16種類、連続65回。(その内震度7は12種類、60回)想定外を想定することで、あらゆるタイプの地震動に対して安心安全な住宅を目指しています。※震度4以上は、125回実施。」

   イ 住友林業の耐震住宅(甲492[1 MB]
住友林業の提供する住宅は,最大加速度2699ガルの揺れを余裕でクリアし,震度7や震度6に繰り返し耐えるだけの耐震性を備えた住宅であり,以下のように紹介されている。

「東日本大震災と同等の最大加速度2,699galの揺れを余裕でクリア。阪神・淡路大震災(最大加速度818gal)の3.3倍の揺れにも耐え抜き、巨大地震への強さを実証しました。さらに、東日本大震災の震度7を2回、阪神・淡路大震災の震度7を20回」
「巨大地震と強い余震が繰り返し発生することも想定し、合計246回の加振を実施。」

   ウ 積水ハウスの耐震住宅(甲493[2 MB]
積水ハウスの提供する住宅は,245回に及ぶ振動実験の最後にかつて体験したことのない巨大地震を想定した揺れを発生させても耐えるだけの耐震性を備えた住宅であり,以下のように紹介されている。

「実大モデルによる振動実験は、総回数245回におよんだ実験の最後に、兵庫県南部地震の最大速度90カインをはるかに超える、入力波最大速度160カインという、かつて体験したことのない巨大地震を想定した揺れに挑戦。このとき建物が吸収した地震動エネルギーは、兵庫県南部地震の約10倍という破壊的なものでした」

   エ 新幹線(甲494[5 MB]
鉄道土木構造物は,阪神・淡路大震災以降,海洋型地震について1100ガル,直下型地震について1700ガルにそれぞれ想定し,そのような強い揺れに襲われても構造物の被害を軽微な損傷に留めるだけの耐震性能が要求されている。

この基準は観測された地震の規模を踏まえて随時改定されてきものであるが,1700ガルという数値は,阪神・淡路大震災で実際に観測された900ガルという数値の倍近い。これは,想定外を想定し最大規模の地震動に耐えうるだけの耐震性を備えるべきとの考えに他ならない。

   オ 小括
一般建築物がこのように高い耐震性を有しているのは,「あらゆる可能性を検討」「想定外を想定」「かつて体験したことのない巨大地震を想定」することによって最大級の安全・安心を確保し,万が一にも重大な事態とならないようにするために他ならない。

では,原子力発電所は「あらゆる可能性を検討」し,「想定外を想定」する必要がないのであろうか。それらをしていない原発の損座は許容されるであろうか。

  (2) 一般建築物の耐震性を大幅に下回る耐震性しか有していない原子力発電所の存在は許容されないこと

一般建築物でさえ既往最大や想定外を想定するような耐震性能を具備しているのに,大飯原発はそれに遥かに劣る856ガルにしか耐えられず,1240ガルを超えれば極めて深刻な事態を引き起こす。この1240ガルという数字は,上記の各住宅や鉄道土木構造物が優に耐えうる揺れであるから,一般建築物には重大な毀損が発生していないのに,それらよりも遙かに安全であるべき大飯原発ではクリフエッジを上回る揺れによる極めて深刻な事態が生ずるということである。このように,一般建築物は耐えられる程度の揺れで崩壊するような原子力発電所を許容する社会通念のないことは明らかである。

これに対して被告関西電力は,大飯原発の基準地震動は解放基盤面での数値であるから一般建築物とは単純に比較できないと主張するであろうが,一般建築物が,どこに建っていようと上記のような既往最大を上回るような想定をした上で耐震性を確保していることには変わりないから,当該地盤がどのようなものであるかが問題なのではない。「地盤が強固だから,一般建築物の耐震性を遙かに下回る耐震性しか有していない原子力発電所が存在してもよい」などという社会通念は存在しないのである。

基準地震動やクリフエッジを遙かに上回る,既往最大の揺れにすらこれらの建築物が耐え得ることは事実であるから,それを遙かに下回るような耐震性しか有していない原発は,社会通念上許容されないというべきである。

  (3) 「強固な地盤の上に建っている」という幻想

そもそも被告関西電力の主張は「地盤が強固だから強い揺れがこない」という幻想であり仮定の上に成り立つものにすぎず,原発という危険な施設についてそのような仮定を設定することは,科学的に誤りであることはもちろん,社会通念にも合致しない。

実際,柏崎刈羽原発では2007年の中越沖地震で基準地震動450ガルの4倍近い1699ガルを記録しているが,原告第37準備書面1~3頁等で述べたように,東京電力は同地震の前には「揺れの少ない強固な岩盤上に建てています。」「原子力発電所の重要な機器・建物等は、表層の軟らかい地盤を取り除き、地震による揺れが小さい固い岩盤の上に直接固定して建設しています。岩盤上の揺れは、新しい年代の軟らかい地盤の揺れに比べ1/2から1/3程度になることが分かっています。」などと述べて「地盤が強固だから強い揺れがこない」と主張していたにもかかわらず,いざ基準地震動を上回る地震動に見舞われるや「要因2:発電所周辺の地表から4~6kmの深部地盤の傾きにより波が同時集中した(約2倍)」「要因3:発電所の地下2kmの敷地地盤の褶曲構造により1~4号機に波が集中した(約2倍)」などと述べて「実は地盤が軟弱だった」と180度主張を反転させたのである。そうすると,大飯原発でも同じことが起こらないとなぜ明言できるのであろうか。地盤特性は事前には詳らかにしようがない事柄であるから,いまは「地盤が強固だから強い揺れがこない」といわれていても,基準地震動を遙かに上回る地震動が本当に発生しないかどうかは全く分からず,発生した後になって「実は地盤が軟弱だった」と180度主張を反転させたても,もはや取り返しのつかない深刻な被害が発生してしまっているのである。

仮に地盤が軟弱であると仮定しても想定しうる最大級の揺れに十分に耐えられるような耐震性を備えていることこそ,社会通念が最低限求める原発のあるべき姿といわなければならない。

 2 耐震性について科学的な検証がなされていないこと

もう一つ,上記の一般建築物との比較から明らかなことは,上記一般建築物は繰り返し繰り返し耐震テストを行って導かれた耐震性の数値であり,よってそのような数値の地震動に耐えうることが科学的に実証されているのに対し,大飯原発の耐震性はあくまでも計算上のものにすぎず,科学的に実証もされていないということである。実際に856ガルの地震動が到来したとして,それに現に耐えられるかどうかはそのときになってみないと分からないという,その意味で正に机上の空論でしかない。

そのような,科学的に検証されておらず,実際には蓋を開けてみなければ分からないという実態からしても,やはり社会通念上許容されないというべきである。

◆ 原告第62準備書面
第1 司法の役割は人権救済にあること

原告第62準備書面
-いわゆる「社会通念論」批判-

2019年(平成31年)4月26日

目 次(←第62準備書面の目次に戻ります)

第1 司法の役割は人権救済にあること
1 はじめに―人権とは
2 原発事故が多大な人権侵害をもたらすこと
3 司法は人権問題の判断を回避してはならないこと
4 この間の司法判断は人権を尊重すべき司法の役割を放棄したものであること


本書面は、この間の原発差し止めをめぐる司法判断において、いわゆる社会通念や、あるいは立法の判断を過度に重視し、原発の危険性やそれと表裏の関係にある住民の人権を軽視する判断が続いていることを批判するものである。

第1 司法の役割は人権救済にあること

 1 はじめに―人権とは

原告ら訴訟代理人弁護士出口治男は、昨年6月胆管ガンの告知を受け、膵臓・胆のう・十二指腸の切除手術を受けた。手術中不整脈を繰り返し、大量の輸血が行われ、生死の境をさまよい、13時間にわたる複雑な手術を耐えて、ようやく生還できた。その後も血栓の発生、血栓が脳へと及ぶのを防ぐ為の電気ショック、ショック療法の影響によると思われる動脈の出血、体内に毒性の体液が貯まり、それを排出する5本にのぼるドレーンの付設等様々な危険な状態が続いた。そうした状態に対し、医師・看護師・看護助手・リハビリ療法士らの昼夜を問わぬ献身的な治療・看護によってようやく3ケ月後に退院でき、幸いにして今本法廷に立ち弁論を行うことができるに至った。

この度の経験で、人権というものについて考えさせられた。生きること、生きてあること。それが人権の中核にあることを実感できた。生きること、生きてあること、はしかし自分一人でできることではない。医療関係者・家族・友人知人達全ての人達が生きようともがいている自分と友愛の絆で結ばれてあることこそが人権の中核にあると実感させられた。人権は孤立してあるのではなく、自分を取り巻く多くの人達との友愛の絆の中に存在するのである。

自由で平等な人達が友愛の絆で結ばれた社会において、人権は初めて十分なものとなることを確信させられた。

 2 原発事故が多大な人権侵害をもたらすこと

既に述べたとおり、原発事故は巨大かつ取り返しのつかない人権侵害をもたらす。このことは、チェルノブイリ原発、福島第一原発事故を経験したいま、それを否定することは誰もできない。

原発事故は、友愛の絆で結ばれた社会を不可逆的に破壊し、人権の中核を根こそぎ奪い尽くす。我々は原発事故の実相をまざまざと見てしまった。我々は福島第一原発事故による被害の実態から目をそむけてはならない。生死の境をさまよった一人として、そのことはどれだけ強調しても強調しすぎることはない。

 3 司法は人権問題の判断を回避してはならないこと

原告らは第46準備書面において、合衆国最高裁長官ウォレンについて触れたが、再度触れておきたい。

アール・ウォレンは、1953年、アイゼンハワー大統領によって、カリフォルニア州知事から米国連邦最高裁長官に任命された。そして、この任にある時期、ウォレン・コートは、白人と黒人の分離教育は違憲と断じたブラウン対教育委員会事件、貧困者は、全ての重罪事件で、公費により弁護人を付されなければならないとされる契機となったギデオン事件、それを嚆矢とする一連の刑事司法改革判決等を生み出した。平等主義への強い志向、少数者保護についての積極的態度、米国社会の最も困難な問題である人種問題の解決に、行政部や立法部ではなく、司法部がまずイニシアティブをとったのであった。ウォレン長官は、退任直後、「ウォレン・コートは余りに早く進みすぎはしなかっただろうか」との問いに次のように答えた。「われわれは、われわれがいかに早く進むべきかについては何もいうことはない。われわれはわれわれのところへくるケースとともに進むのである。そしてケースが人間の自由の問題を持って、われわれのところにくるときには、われわれは弁論を聞き判決をするか、あるいはこれを放置して、社会の底にうずもれさせ将来の世代が解決するのにまかせるか、どちらかである。わが国においては、概していえば後者は余りに長くなされすぎたのである。」

このウォレン長官の見解は、原発をめぐるわが国の司法において深く心に止めるべきものと考える。原発について、わが国の司法は、実質的に司法判断を回避して放置し、社会の底にうずもれさせ将来の世代が解決するのにまかせてきた。福島第一原発は巨大かつ悲惨な事故を起こした。これは、司法が原発についての司法判断を実質的に回避して放置し、社会の底にうずもれさせ将来の世代にそのつけを回してきたからではないか。司法にも責任はないのか。これがこの訴訟に関係する全ての者に対して問いかけられていることと思われるのである。

 4 この間の司法判断は人権を尊重すべき司法の役割を放棄したものであること

原発再稼働を容認した諸判決の特徴は、原発に一定の危険性を認めながら「社会通念」という法概念として極めて曖昧な文言を使って再稼働を容認するという論理構造を有している。しかし、それはさきに述べた人権をないがしろにし、全くかえり見ようとしないものである。人権を尊重すべき司法の役割を放棄したものと言うほかはないのである。司法は本当にそれでよいのであろうか。死地を通りぬけた人間の一人として、人権を改めて直感的に体験した原告ら訴訟代理人として、本法廷関係者全てにそのことを訴えたいのである。

◆ 原告第62準備書面
-いわゆる「社会通念論」批判-
目次

原告第62準備書面
-いわゆる「社会通念論」批判-

2019年(平成31年)4月26日

原告提出の第62準備書面[227 KB]

目次

第1 司法の役割は人権救済にあること
1 はじめに―人権とは
2 原発事故が多大な人権侵害をもたらすこと
3 司法は人権問題の判断を回避してはならないこと
4 この間の司法判断は人権を尊重すべき司法の役割を放棄したものであること

第2 一般建築物に求められる耐震性との比較でも原発の安全性は社会通念にすら達していないこと
1 原発の耐震性を遙かに上回る耐震性を一般建築物でさえ具備していること
2 耐震性について科学的な検証がなされていないこと

第3 我が国の行政でも原発以外の分野では「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波」を想定するようになっていること
1 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成25年)に至る経過
2 政府の調査部会が地震が予測不可能であることを認めたこと
3 まとめ

◆公開質問状に おおい町長から回答

【2019年5月3日,京都キンカンで配付】

おおい町長から、「老朽原発運転延長、使用済み核燃料の処理・保管などに関する公開質問状」への回答を得ました

「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」は、「老朽原発運転延長、使用済み核燃料の処理・保管などについて」、高浜町長、おおい町長、美浜町長に公開で質問していましたが、おおい町長より回答を得ましたので、報告します。

国、原子力規制委員会(規制委)、関電任せで、
町の自主性は感じられない回答

◆この公開質問状は2月20日に提出し、おおい町長からは4月10日に回答を得ました(高浜町長、美浜町長の回答は5月の予定)。以下に、おおい町長の回答と回答に対する質疑応答を報告します。なお、回答は、町長自身でなく、担当課長、課長補佐など6人によって伝達されました。したがって、質疑応答は回答伝達者との間のものです。また、質疑応答の一部は、紙面の都合で、割愛しました。

公開質問事項、回答、質疑応答

質問1 老朽原発の運転延長について

質問1-1

◆老朽原発再稼働について、賛否のご意見をお聞かせ下さい。また、老朽原発でも再稼働は止むなしとお考えの場合、住民の安全を守るために特別の施策をされますか。施策があれば、お示しください。

回答

◆規制委の認可を受け、40年を超えて運転することについては、法律で認められており、安全対策工事が完了し、立地地元の理解が得られることを前提に、否定するものではありません。住民の安全を守るためには、特別あるいは普通の区別なく、事業者(関電)にたゆまぬ安全性向上に向けての取り組みを厳しく指導することをはじめ、国などの関係機関に、監視、指導のさらなる強化を求めていく必要があると考えています。

質問1-2

◆老朽原発の運転延長によって、その不安は飛躍的に大きくなります。住民にとって増大する事故のリスクへの不安を、どのように評価していますか。また、老朽化によるトラブルの要因の一つ一つについて、立地町はどのように検討されていますか。

回答

◆40年超え運転に関しては、皆さんをはじめ不安を抱く国民の方々がいらっしゃることは承知しています。町は老朽化によるトラブルの要因と考えられる一つ一つについて、独自に、科学的、技術的観点から検討する機関を持っていませんが、事業者から説明を受けるなど情報の収集を図っていきます。また、国や事業者に対して、科学的、技術的検討と対策に万全を期すること、国民に丁寧に分りやすく説明し、広報することを求め、町としても地域住民の声にしっかりと耳を傾けていきたいと考えています。

質問1-3

◆老朽原発の規制委審査は、高浜1、2号機の審査に典型的なように、他の原発の審査に比べ異例の短期間で行い、運転延長認可限度期日に間に合わせることを優先し、また、審査の手抜きも各所にありました。このような規制委の審査で、40年を超えた原発の安全性は本当に確保されているとお考えでしょうか。

回答

◆規制委の田中前委員長は、福島のような事故が起こるなら許可しないと発言しており、規制委の審査報告をもって、一定の安全性の確保がされているとの認識を持っています。しかし、安全性に絶対ということはなく、事業者は緊張感をもって、保守・運営に臨み、今後もたゆまぬ新しい知見を取り入れるなど、更なる安全性向上に向けた取り組みを続ける必要があります。規制委においても、事業者を厳しく指導、監視するとともに、終わりなき安全性の追求をしていかなければならないと考えます。

質問1-4

◆規制委は審査結果について、「新規制基準に適合したのであって、安全を保証するものではない」という姿勢です。このことは、安全に関する責任は、原発を動かす関電、それを容認する町や県の議員、首長にあることを示唆しています。したがって、それぞれの首長、議員には、町民、県民の命と財産を守り、安全を図るために、問題点を検討し、自主的に判断できる能力が求められています。
首長、議員各自が、老朽原発の再稼働について、どのような見解なのか明らかにすべきであると考え、また、首長、議員がその見解を住民に明らかにする場と機会を準備すべきと考えますが、いかがですか。

回答

◆当町議会には、原子力発電対策特別委員会が設置されており、定例または必要に応じて委員会を開催し、原則公開で議論を重ねられています。また、議会報告会などを通して町民と直接対話をする機会も設けられています。平成29年の大飯3、4号機の再稼働判断時の例を申しますと、議会の判断時については、議会独自で規制委や事業者から説明を受け、町主催の住民説明会の傍聴などを経て、全員協議会という公開の場で、その見解を明らかにされています。議会は独立した機関でもあり、町長が、そういう場と機会を準備する立場にないと考えています。

質疑応答

質疑

質問1-1について、事業者のデータを信用すると言われますが、例えば、最近の火山灰の評価でも、2.5倍以上違っています。「警報なき津波」についても、深刻ですが関電は考えていません。規制委の田中前委員長は、「審査結果は、安全を保障するものではない。新規制基準に適合しているということだ」とたびたび言っていました。新規制基準は、福島事故からわずか2年位で、事故に関する調査も進んでいない時期にできたのです。それを信用するようでは、町民のみならず、もっと広範囲の人たちが影響を受ける事態に対して、責任を持っているとは言えません。

◆おおい町に責任を取れというのは酷かもしれませんが、立地自治体としての責任はあると思います。それでも関電や規制委を信用し、彼らのデータに頼るのですか?

町の答弁

◆関電の出すデータについて、科学的、専門的に検査・確認する町の機関を持っていないので、国や事業者の行った確認を信用するというスタンスでやっています。

質疑

◆信用できればよいが、信用できないことが次々に起こっていることが、報道でも指摘されています。したがって、判断する機関を持っていないおおい町は、どこかに委嘱してでも正確な判断をすべきです。それもなく、おおい町が関電や政府に同意しても、関電は「一歩進んだ」と言っています。県も「おおい町がそう言っているから。」と町の意見を拠り所にします。私は町民ではないけれど、おおい町の判断が、大飯原発稼働の是非を決めるから、多いに不安を感じる。「誰かが言っているから、それに頼るんです。」という言い方はやめていただきたい。

◆先日、町議会を傍聴しましたが、議員の多くが「規制委が言っているから大丈夫。関電の資料が良かったから大丈夫」と、規制委任せ、関電任せの発言をしていました。信頼に足る判断をできるシステムを考えてください。

質問2 老朽原発の延長運転についての立地自治体および周辺自治体住民の意見聴取の必要性について

質問2-1

◆40年超え老朽原発の再稼働は、これまでの原発再稼働とは比較にならないほど大きな問題を包含しています。その再稼働にあたっては、自治体として改めて広く住民の声を聞く必要があります。町として、住民の不安に応える場、住民が意思表明できる機会を作ることが求められているのではないでしょうか。そのような場や機会を設ける計画はありますか。

回答

◆現時点において、大飯発電所の延長運転については、方針等は決まっていませんし、高浜発電所につきましても、住民を対象とした説明会や投票など、機会を設ける計画はありませんが、適宜、広報、周知を図る必要があると考えています。なお、原子力に関する不安等の相談については、常時対応させていただいています。

質問2-2

◆日本初であり、「例外中の例外」であるはずの老朽原発の再稼働については、原発重大事故で影響を受ける可能性が高い周辺自治体の意見も聞く必要があると考えますが、どうお考えですか。なお、老朽原発である東海第2原発の再稼働について、日本原電や茨城県は周辺自治体の意見を聞く機会を設けようとしています。

回答

◆高浜、美浜に関することなので省きます。

質疑応答

質疑

質問2-2については、そのうち大飯も老朽になりますから、その時はよろしくお願いします。

質疑

◆大飯1、2号機は、廃炉になったので時間的余裕はありますが、来年、高浜1号機、美浜3号機、高浜2号機が動き出せば、自動的に大飯3、4号機も40年を超えて動いてしまうのではないかと思うので、のんきに構えているのではなくて、高浜と一緒に考えていただきたい。高浜で事故が起きれば、大飯でも影響は出るので、そういう回答をしていただきたい。

町の答弁

◆隣りだからといって、まったく無関心だというようなことはあり得ないし、同じ関電ですし、万が一の時は当然影響を受けるので、しっかりと情報収集をしていくし、高浜町の動き、国の動き、事業者の動きはしっかり注視していきます。

質疑

◆おおい町の職員、町長として、老朽原発は、普通の原発とどう違うと理解しておられるのか。全く同じものだと考えていらっしゃるのか?

町の答弁

質問1-2にあるように、老朽化による容器や配管の脆化だとか、腐食だとか、こういったことは当然、年月が過ぎれば進むという認識はしています。

質疑

◆そうであれば、昔の美浜の事故だとか、最近の川内、玄海、伊方などでの老朽化による細管破損や減肉について深刻に考えなければなりません。40年まで安心なのではなく、20何年でも穴が開いています。それも高放射線で修理できないから栓をして、何万本もあるから何十本くらいやられても支障がないとしています。大飯原発も30何年も経っているので、配管は相当老朽化しています。老朽原発の廃炉を今から検討すべきです。それを、関電が言っているから、規制委が言っているからと逃げるべきではありません。規制委がOKを出した原発、川内、玄海、伊方、高浜原発は、みんなトラブルを起こしています。それでもなおかつ、規制委が正しいと信用したり、大事故にならなかったから大丈夫では済まない話で、もう少し質問2-1についても考えていただきたい。もっともっと、みんなで勉強をして欲しい。いろんな立場の人、関電,規制委などの賛成派だけでなく。反対の人も呼んで、話を聞いた方が良い。

質疑

◆高浜1、2号機の工事現場は外から見られましたか?感想は?

町の答弁

◆ドームの部分をやりかえるほど、大掛かりな工事をされているな、というイメージを持っています。

質疑

◆外の部分は、蓋をしたり、丸いものを乗せたり、事故が起きた時、外に出ないようにする形のものはやっています。加圧水型の蒸気発生器の細管が詰まっていても取り換えるのは大変。絆創膏を貼ったのでは安心できません。

◆それと今40年から60年と言っていますが、経団連の中西会長は、「アメリカは60年を超えての運転を考えている。」と言っていて、80年運転の可能性がでてきました。大飯はどうなのか。住民の安全を考えるなら、来年の一年で再稼働となる前に、しっかりと賛否両論を聞いて、自分なりの考えを確立する責任があります。

町の答弁

◆大飯の場合はまだ一年あるから、事業者から来年はどうするとかは聞いていません。高浜や美浜は延長運転に動いているようですが、情報を常に得ながら、大飯が仮にそういうことになったときに、あわてなくていいように、しっかりとしていく必要があると思っています。現在は、原子力に関する相談については、意見を聞く公の会などは設けていませんが、常に意見を聞く機会は設けていますので、その中で対応していきます。

質疑

◆住民の不安には、常時対応しているというお答えでしたが、それは例えば、私が総務課に提出した避難の関係の情報を受け取っているということが、「対応させていただいている」ということにあたるのですか。それとも、年二度ほど行っている住民説明会などのことですか。この説明会は、原発不安窓口のようなものではなく、結論誘導型の進行形式になっていて、公正な内容ではありません。そういう現状の中で、住民の不安に対して、どのように常時対応し、体制をとっていると言われるのか教えてほしい。問題についての専門家がいるのか、それなりに不安に応える力を持っている方でなくてはいけないのですが、町民としては、そのような方はいないし、そのような窓口はないのではないかと思います。

◆もう少し詳しく、不安があるときは、どこそこに来てくださいとか具体的に教えてほしい。

町の答弁

◆今までの公開説明会が思うようなものではなかったとおっしゃるわけですが、疑問、不安に思っておられる部分について、項目によっては町で回答できる部分もあれば、専門的なことで、科学的な部分が必要な場合は、町で直接答えられないこともあります。そのあたりについては、町を通じて確認することもあれば、そちらでそのような機関をご存知であれば、そちらで確認していただくこともあります。町に対して質問していただいた場合は、できる限りの範囲で回答させていただきます。

質問3 使用済み核燃料の保管と処理・処分について

質問3-1

◆使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、関電は、福井県知事に昨年内に県外に移すと約束しながら、昨年末12月26日になって、候補地提示を断念したことを知事に伝え、謝罪しました。

◆原発立地町は、この約束違反を県民を愚弄するものとして、厳重に抗議すべきではないですか。また、県および原発立地町は、この約束を前提とした原発稼働への同意を取り消し、使用済み燃料を生み出す原発の全廃を、関電に求めるべきではないですか。

回答

◆町長は、「事業者自らが設定した期限に公表できなかったことは、いかなる理由があるにせよ、発電所と最も身近に生活する立地町との信頼関係を揺るがしかねず、非常に遺憾である」というコメントを出し、事業者に厳しい姿勢で伝えています。なお、公表できなかったことが、即刻発電所の安全を脅かす事にはならず、全廃すべき理由には当たらないと考えています。

質問3-2

◆今後の使用済み核燃料の保管について、中間貯蔵候補地が県外に見出せない現状の中でも、使用済み核燃料の福井県外搬出先を近い将来に見出せるとお考えですか。また、見出せる見通しが暗いとすれば、どうすればよいとお考えですか。

回答

◆国はエネルギー基本計画において、使用済燃料の貯蔵能力の拡大を進める事としており、使用済燃料対策に関するアクションプランを策定しています。それに基づき事業者が使用済燃料対策推進計画に基づき取り組みを進め、また、2020年を念頭に候補地を公表するとしており、その状況を注視していきたいと考えています。あわせて六ヶ所再処理工場の稼働により搬出が可能となるので、その審査状況も注視をしています。

質問3-3

◆中塚おおい町長は、昨年8月、「原発構内で金属製の容器に保管する乾式貯蔵も一つの選択肢」と述べています。また、野瀬高浜町長は、昨年11月、「原発の使用済み燃料を一定期間保管する中間貯蔵施設について、県内も含めて検討する必要がある」との考えを示しています。

◆両町長のこの考えは、関電が約束を反故(ほご)にした現在も変わっていないのですか。

回答

◆住民の安全安心の観点から、乾式貯蔵は一つの選択肢であるとの考えに変わりはありません。

質問3-4

◆使用済み核燃料を乾式で中間貯蔵する場合、その期間は50年を限度にするといわれていますが、その50年間に最終処分地が見つかる可能性は低く、原発敷地内での「中間貯蔵」を容認した場合、原発立地自治体は「核のゴミ(使用済み核燃料)捨て場」を引き受けることになりかねません。したがって、「中間貯蔵」を容認することは、超長期にわたる厳重な管理と広大な敷地が必要な「核のゴミ」の管理を、未来の住民に押しつけることになりますが、どう考えますか。

回答

◆事業者が使用済燃料対策推進計画に基づき取り組みを進め、また、2020年を念頭に候補地を公表するとしているので、その状況を注視しています。あわせて、六ヶ所再処理工場の稼働により搬出が可能となるので、その審査状況も注視をしています。町としては、今後も住民の安全安心を第一に原子力行政に取り組んでいきたいと考えます。

質問3-5

◆炉心に隣接する燃料プールが、地震などの時にきわめて危険な状態に陥りかねないことは福島第一原発事故でも明らかです。したがって、燃料プールは一刻も早く空にしなければなりません。一刻も早く燃料プールを空にするためにも、使用済み燃料を増やす原発を廃止しなければならないという視点はありませんか。

回答

◆地震などの災害時においても、使用済燃料プールが危険な状態にならないよう対策が施されていることが、規制委により確認されているし、事業者からも説明を受けています。さらに、たゆまず安全性向上に向けた取り組みを続けることを事業者および国に求めており、町としても、今後も住民の安全安心を第一に原子力行政に取り組んでいきます。

質疑応答

質疑

◆乾式貯蔵は一つの選択肢と言われたので、質問にはそう書きましたが、ほかにどういう選択肢を検討していますか。どういう貯蔵方法があると考えますか?

町の答弁

◆実際には貯蔵方法を検討しているようなことはありません。何度かお答えをしましたが、計画に基づいて県外への搬出を前提としています。

質疑

◆その前提となるのは、六ヶ所の稼働ではないのですか。おおい町としてはいつごろと考えていますか。政策を考える上で、推定しておかなければならないと思います。

町の答弁

◆公式には、日本原電が2021年上期の稼働を目指して審査が行われていると言っているので、その状況を注視しています。

質疑

◆動かなかったらどうするのですか。そのまま使用済燃料プールに置いておくのか、置くことも仕方がないと思っておられるのか。あるいは乾式にすぐ移れると思っておられるのですか。

町の答弁

◆一つ駄目なら次はこうということでは、答えられないが、六ケ所の稼働が搬出可能になる一つの要件であるし、関電が進めている推進計画で、県外の中間貯蔵施設が実現できれば、そちらに搬出するということがもう一つの方法になります。

質疑

◆乾式貯蔵は当たり前で、乾式貯蔵しかないと思いますが、乾式にしてプールを空けて、また新しいのを入れるというのが、おそらく今の関電の計画です。それなら、使用済燃料プールに、どんどん新しい高放射線・高発熱量の燃料が入ることになり、危険度が格段に増えます。今までは幸いにも原発の稼働が進まず、新しい使用済燃料を生み出さなかったから、ほとんどの使用済み燃料がプール内で冷却され、乾式に移せるまでに放射線量が減っています。

◆原子炉の圧力容器は鋼鉄製で十分な閉じ込め機能を持っていますが、使用済燃料プールは、上から燃料が見え、放射線が水にあたって発するきれいな光(チェレンコフ光)が見えるように、むき出しです。もし倒壊したり、穴が開いたりしたら、大惨事になります。

◆福島4号機の燃料プールでは、高放射線の中で燃料の取り出し作業が必死で行われました。プールの支柱が折れ、倒壊の危機に瀕していたからです。

◆燃料プールはこのように危険極まりないが、原発をうごかす限り生まれる使用済み燃料を乾式貯蔵に移すには、プールで5年くらい冷却しなければなりません。

◆燃料プールを空けて、新しい使用済み燃料を入れることについて、原発推進という国策だから仕方がないと思っているおおい町であっても、反対とは言えないまでも、もっともっと関心を持つべきだと思います。40年も経ち、ラックの容量を増やしたプールが、長持ちするとは思えないし、大地震が起こったら終わりだと思います。

質疑

◆六ヶ所の稼働を見越している、注視しているということだが、六ヶ所は過去何年くらい計画を続けてきて、何回くらい期限を延長してきたのですか。

町の答弁

◆正確にはわかりませんが、何十回と延長していると思います。

質疑

◆大飯3号機を再稼働するときに、その説明会をしましたが、その前に(町民対策だが)関電を見学しました。その時の所長が、「六ヶ所がもうすぐ動くから大丈夫だ」と言いました。ところが、また延長しました。約束を信用する方がおかしいのではないですか。

町の答弁

◆あくまでも審査状況を注視していくということで、「できる」と私たちが約束できるものではありませんし、現状として計画されているので・・・・。

感想

◆じゃ、それが動き出したら稼働を考えましょう。それまでは原発をストップして、廃棄したらどうですか。そうしたら使用済核燃料も増えないし。

意見

◆六ケ所村が完成しても、プルトニウムが47トンもあると運転できません。したがって、それに頼っても駄目だと思います。5年も冷やして人肌の温度にならなければキャスクが壊れる。そういう技術的な問題を踏まえて発言していかないと、おおい町の安全は守れません。大飯1、2号の廃炉は頭越しに決まった(もんじゅの時も同様)、そういうことを経験しながら、他人ごとみたいなことを言ってよいのか? 私がおおい町民なら黙っていません。

質問4 原発の稼働に関する自治体の姿勢と責任について

質問4-1

◆福井県や原発立地町は、原発の再稼働に同意し原発を推進しています。「日本の原発は過酷事故を起こさない」とした安全神話を福島原発事故を経験した今も信じているとしか考えられません。

◆立地町は、どんな根拠があって若狭の原発は過酷事故を起こさないと考え、原発の稼働を容認しているのですか。国策や経済のためなら、過酷事故のリスクは容認されると考えているのですか。

回答

◆町は新規制基準に適合した大飯3、4号機の再稼働への理解、判断過程において、町民の意見集約、発電所の安全対策の視察、たゆまぬ安全性向上に向けた事業者の姿勢、国の姿勢等を確認し、総合的に判断しました。過酷事故は決して起こしてはならず、引き続き終わりなき安全性の追求、および、災害制圧能力の向上を事業者および国等の関係機関に強く要請したい。

質問4-2

◆原発稼働の可否は、住民の安全・安心にとって避けて通れない課題であるので、首長や議会議員の選挙では原発の問題が重要な争点になってしかるべきです。しかし、実際の選挙では、原発に関する議論を避けている候補者もいます。住民の意見を汲むこともなく、ほとんどの議員が原発再稼働を容認しています。また、町長は議会の容認を基に再稼働に同意し、県知事は立地町の意向を踏まえて再稼働を認めています。住民の安全・安心を軽視する無責任な自治体運営ではないですか。

回答

◆町は再稼働理解判断過程において、町民の意見集約、発電所の安全対策の視察、たゆまぬ安全性向上に向けた事業者の姿勢、国の姿勢等を確認し、総合的に判断をしました。住民の安全安心は最も優先すべき町の責務であり、引き続き終わりなき安全性の追求、災害制圧能力の向上を事業者および国等の関係機関に強く要請します。

質問4-3

◆1昨年12月、関電は、福井県やおおい町に相談することなく、突然かつ勝手に大飯原発1、2号機の廃炉を決めました。このような事態が生じるのであれば、原発立地自治体は、その将来設計が描けなくなります。原発立地町は、突然の原発廃止のように、相互信頼を顧みない関電や国を今後も信頼して、原発政策を続けるのですか。

回答

◆大飯1、2号機の廃炉は、事業者が技術面から安全を最優先に検討した結果、有効な対策が取れないとして決定されたもので、これまで設置変更許可申請が提出される予定と聞いていた中で突然でしたが、住民の安全安心が第一であり、町は理解しました。しかし、100万KWを超える巨大炉の廃炉は、町財政、地域経済に大きな影響を及ぼすことは事実であり、昨年11月には町、県と事業者との間で、事業者が安全対策をはじめ、地域振興対策を継続的に実施する旨を記載した「廃止措置等に関する協定」を締結しました。今後この協定に基づき、住民の安全安心を第一として信頼関係を崩すことなく、原子力行政に取り組んでいきます。

質問4-4

◆万一、若狭の原発で過酷事故が発生した場合,原発の危険性を指摘する多くの声を無視して、原発の再稼働を容認した立地自治体の首長には責任があると考えますが、どう責任をとるのですか。

回答

◆原子力政策の一元的責任は国にあり、エネルギー基本計画に、万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき責任をもって対処すると明記されています。町としては、万が一を起こさせないために、終わりなき安全性の追求を事業者および国等の関係機関に強く要請したい。

質問5 脱原発に向かう最近の動きと
原発に頼らない地域づくりについて

質問5-1

◆いま、原発を稼働させようとするとき、多額の費用を要する安全対策を施さざるを得なくなり、安全対策費がとくにかさむ老朽原発の廃炉を決意せざるを得なくなっています。原発は、経済的にも成り立たなくなっています。安全対策費は世界的にも高騰し、トルコ、英国の原発建設から日本企業が撤退し、日本の原発輸出の全てが破綻しています。一方で、原発に固執する電力会社からの顧客離れも進んでいます。関電からの顧客離れは、昨年11月で200万件(約1100万件中の約18%)を超えました。

◆これらの状況は、原発はいつまでも存続するものではないことを示しています。したがって、自治体には、住民と地域の発展のために、原発に依存しない町づくりを考える場を早急に設置する責任があると考えられます。

◆若狭の発展を担う原発立地町には、「原発に依存しない町づくり」について考え始める計画はありますか。あれば、取り組みを示して下さい。もし、原発を存続させるので、そのような取り組みは不要と考えられるのなら、どのようにして原発依存社会を継続させ、発展させていくのかを示して下さい。これに関連して、「原発ゼロ法案」に関するご意見を伺います。

回答

◆町には原発が既に立地しており、現状を踏まえたおおい町総合計画に基づき、町の持続的な振興発展に向けた様々な取り組みを進めていく必要があると考えています。

◆原発ゼロ基本法案について省エネの徹底や再エネの拡大に異論はありません。しかし、資源の乏しい我が国において原発ゼロでエネルギーを将来にわたってどのように安定的に確保していくのか、具体的な道筋は示されていません。国民の生活や経済に直結するエネルギー政策は、実現可能性を具体的に示す必要があると考えています。

質問5-2

◆原発立地自治体の行政機関として、原発に関する住民の生の声を聞き、原発事故の不安がない町づくりについて話し合う必要があると考えられますが、そのような場を設置する考えはありますか。

回答

◆行政としては町長と語る会、行政相談などの意見を聞く場があります。再稼働理解判断の際には町民説明会を開催し、出席者の公募をしました。本日のように意見を聞いて懇談する場を持つこともあります。原子力に関する不安等の相談に関しては常時対応しています。

質問6 その他

質問6-1

◆昨年12月12日、大山の大噴火時の若狭への火山灰降下量について、規制委は関電による評価は過小であると認めました。しかし、当面は稼働中の4基の停止は求めないとしました。大量の火山灰降下は、原発過酷事故に繋がりかねません。原発を止めて、審査のやり直しを求めるのが住民の安全を守るべき自治体の姿勢だと考えますが、いかがですか。

回答

◆事業者は3月29日に評価報告書を規制委に提出しました。今後規制委において議論し、規制上の対応等について判断するものと思っています。住民の安全安心の観点から適切に対応される必要があり、その動向を注視しています。

質問6-2

◆[福井県と高浜町への質問なので、回答なし。]

質問6-3

◆福井県議会は昨年11月26日、若狭湾沿岸の地域に自衛隊の配備を求める意見書を可決しました。「原発への弾道ミサイル攻撃やテロの抑止力となり、地域住民の安心を確保するため」としています。原発立地町は、自衛隊を配備しなければ安全を確保できない原発は廃炉にすべきであると考えませんか。

回答

◆当町はエネルギー政策において原子力は必要であるとする国の方針を理解し、原子力行政に取り組んでいます。そのうえで、国に対しては原子力にかかる様々な課題やリスクの解決、住民の安心確保に向けた取り組みを要請しており、自衛隊配備はその一つです。また緊張が続く日本海側の防衛力強化につながり、さらに自然災害への対応強化にもつながることから、町として今後とも県、嶺南市町と一体となって要請したいと考えています。

質問6-4

◆現在、原発ではサイバー空間の安全性確保が課題になっています。米国とイスラエルが、サイバー空間でイランの核施設に侵入して破壊したように、サイバー空間の安全対策に重要な課題があると思われます。関電の原発に関わるサイバー・セキュリティを、原発立地自治体はどのように確認し,評価していますか。

回答

◆関電に確認したところによると、原子力発電所ではサイバーテロを未然に防止するため、原子炉施設および特定核燃料物質の防護のために必要な設備または装置の操作にかかる情報システムが電気通信回線を通じた妨害行為または破壊行為を受けることがないように外部からのアクセスを遮断している、とのことでした。なお、具体的な対策については、セキュリティーレベルが公表されることになるので、我々も知ることができないと考えています。町としては現状の対策に加え、新たな知見があれば更なる対策を講じるよう指導したい。

全体に関する質疑応答

質疑

◆老朽原発の運転は「例外中の例外」とずっと言ってきたのに、これが反故にされつつあります。それを立地町として認めるのですか。

町の答弁

質問1-1への回答と同じになりますが、規制委が認めれば、地元の理解を得て・・・・。

質疑

◆新規制基準ができた後にも「例外中の例外」と言っていました。その規制基準が変更されてもいないのに「例外中の例外」が踏みにじられるのはおかしい。大飯原発再稼働への県の同意を取り付けるために行った使用済み燃料貯蔵地を県外で見出すという約束も、反故にされています。原発で重大事故が起こったら、若狭だけでなく、関西をはじめ、広域が大きな被害を受けますから、原発の稼働に大きな発言力を持つ立地町(おおい町)に、国や事業者の意向を聞くだけでなく、住民の立場に立って毅然たる態度をとることを期待しています。だからこそ、今日は関西一円からこの場に来ています。

質疑

◆おおい町を舞台にした映画「彼らが原発」を見ました。「物言えば唇寒し秋の風」という雰囲気がこの町全体を覆っているから言えない、反対の旗色を出せないという、鬱積したものを、その映画から肌で感じました。ウーマンラッシュアワー村本さんという若い人(おおい町の出身)が、原発について一生懸命しゃべっています。すごく覚悟してやっていると思います。若い人たちに、おおい町の人たちに、原発に物申したらあっという間に潰される、村八分になるという雰囲気がないところで賛否両論をたたかわせて欲しい。そういう機会を作っていただきたい。

質疑

◆回答を聞いて、老朽原発の再稼働について非常にリスクが大きいという危機感が伝わってきませんでした。立地町の町民の不安はすごく大きいというのが実情だと思います。それでも、国、規制委、関電に期待する、注視するという回答が非常に多かった。町民の不安にもっと真剣に応えることを考えていただきたい。原発の問題は町民だけでなく、私たち関西に住んでいるものにも密接に関係しています。とくに、賛否双方の専門家の意見を聞くことは大事で、賛否両論を町民に披露してもらうくらいのことを町として考えた方がよいと思います。それが、町民の安心につながると思います。いろんな意見を聞きながら、方向を決めていく、こういう姿勢を持っていただきたい。今回の回答にはそういうトーンが聞こえず、残念でした。

質疑

◆若狭でチラシを各戸配布しながら、住民の声を聴いていますが、ほぼ全ての人が「老朽原発はやめてほしい」とおっしゃる。町の意見は、町民の意見とはズレていると思います。

質疑

◆この回答を聞くと、町民は怒ると思います。今日も、何人もの人から声を聴きました。「40年を超えて運転なんて、僕ら許してないで!」という方がいらっしゃった。「絶対やめてほしい」という声も。

◆この他、原発事故に関する責任は、国か事業者かについての質疑応答もあった。


2019年5月

発行;「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」
取りまとめ;若狭の原発を考える会(連絡先;木原090-1965-7102)


◆5/9(木)第23回口頭弁論です

【傍聴席抽選の時間について】
◆裁判所による傍聴席抽選の時間は,これまでの私ども原告団のチラシなどでは,13:10~13:25としてきましたが,最近,裁判所のホームページに公表されたところによると「13:30~13:45の間に集合場所に来られた方を対象に,リストバンド型整理券を交付,抽選の上,傍聴券を交付」となりました。13:30には裁判所におこしください。
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●裁判に参加するには●以下の三つの方法があります。

[1]原告席で参加

・法廷の中(柵の内側)の原告席に入る原告は,「原告団が」決めます。その名簿を事前に裁判所に届けています。そこで,原告席参加ご希望の方は,★4月30日(火)★を締切日としますので,◆事務局宛のメール★↓に「原告席希望」と書きお名前をご連絡ください。
kyotodatsugenpatsubengodanアットgmail.com(アット→半角@)

・合計35名ほどの原告が参加できます。
・先着順で定員になるまで募集します。

・裁判当日は,京都地裁1Fの101号法廷前に待機しています原告団世話人より,原告席の券を受け取っていただき,法廷に入ってください。

[2]傍聴席で参加

・法廷の傍聴席は88席ほどですが,こちらは「裁判所が」抽選で決めます。
・原告の方,原告でない方も,資格を問わず,誰でも応募できます。
・13:10~13:25(見込)の間に,京都地裁正面玄関前で,抽選リストバンドが配付されます。配付終了後すぐに抽選結果が発表されます。
(傍聴者が少ない場合は,抽選はありません。)

[3]模擬法廷で参加

・入廷を希望されない方,原告席や傍聴席の抽選にもれた方は,弁護団による模擬法廷にご参加ください。
・14:30開廷。京都弁護士会館(地裁構内の南東隅)地階大ホールへ。
・実際の法廷よりもわかりやすく,弁護団が解説します。
・事前に提出されている被告側書面があれば,その解説も行います。

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◆原発にかかわる最近の出来事(2018年12月~2019年3月)

過去4カ月間の原発に関わる出来事を振り返ってみました

◆原発事故から8年経った福島では、原発事故被害者の人権がますます蹂躙され、不完全処理の汚染水がたまり続けるなど事故収束の目途はたっていません。安倍政権が経済政策の柱の一つとしていた原発輸出計画が完全に頓挫しました。使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理・保管の困難さはますます明らかになり、中間貯蔵すら引き受けるところがありません。去年の夏は酷暑でしたが、停電にはならず、原発は不要であることが再確認されました。

◆それでも、安倍政権の「大資本に奉仕する国づくり」、「戦争できる国づくり」のためのエネルギー政策に迎合するように、関電や日本原電は老朽原発・高浜1,2号機、美浜3号機、東海第2原発の再稼働に躍起です。

◆老朽原発の再稼働を阻止し、それを突破口にして原発全廃を実現し、人の命と尊厳が大切にされる社会を展望しましょう!

以下に、出来事を列挙します。

経産省が小型原発の開発を画策(12月1日報道)

◆この方針は、11月14日に経産省内で開かれた非公開国際会議で、経産省資源エネルギー庁の武田原子力国際推進室長が表明。地球温暖化対策を名目に、2040年頃までの実用化を目指すという。国内の多くの原発が40年頃に寿命を迎えることを受け、地球温暖化防止のためには、天候で変わる太陽光などの不安定出力をならす必要があり、既存の大型原発より出力を調整しやすい小型原発が必要とした。(この室長は、節電、省エネの流れを理解せず、蓄電法や再生可能エネルギーなどの発電法の進歩を全く考えていない、原子力ムラの不見識、自己利益優先の立場を代弁している。)一方で、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムが国内外で蓄積しており、核不拡散の視点からはプルトニウムを大量に燃やす原発が必要とし、大都市での電力需要を満たすためには大型の原発も必要とし、従来の軽水炉の改良も目指すと述べている。(原発を廃炉にし、核燃料再処理を止めれば、プルトニウムは増えないし、核拡散への各国の懸念も払拭できることは、素人でも理解できるはずである。)

日本政府と三菱重工がトルコの原発建設計画断念へ(12月6日報道)

◆この原発計画は、2013年、安倍首相とエルドアン大統領(当時)の首脳会談を機に実現へと動き出した。トルコの黒海沿岸のシノップ地区に三菱重工と仏企業が共同開発した新型炉を建設し、2023年に稼働させようというもの。事業費は、4基で2兆円程度と見込まれていたが、日本側による調査で総額4兆円以上に膨らむ見通しが判明。福島原発事故後、安全基準が厳しくなったためであるが、トルコ側は、当初想定に近い条件での事業化を望み、交渉が難航していた。

原子力規制委員会(規制委)が核燃料乾式貯蔵に関する全国共通の新基準を了承(12月6日報道)

◆規制委は、使用済み核燃料の「乾式貯蔵」に使う金属製容器(キャスク)について、耐震性や強度の新基準に関する規則改正案を了承した。現状では、各原発で乾式貯蔵を行う際には、規制委の個別の審査が必要であったが、新基準は全国共通であるため、一度認証された形式のキャスクは、何処の原発でも、導入時の審査を省略できる。各原発の使用済み燃料プールが満杯になりつつあり、乾式貯蔵に移してプールを空けて、原発の運転を容易にしようとする意図も見える。なお、更田規制委員長は、「地面に半分埋まった形で転がしておくというのが最も安全」と、無造作な扱いを許容するような発言をし、「原発の敷地境界から離しておけば、放射線の遮蔽能力を建物に持たせる必要はない」と、屋外保管でも問題ないとの認識も示している。

規制委、関電3原発への火山噴火降灰量の見直しを指示:運転停止は求めず(12月13日報道)

◆規制委は、鳥取県の大山が噴火した際の若狭の原発への降灰量を再評価するよう関電に指示した。火山灰は非常用発電機のフィルターを詰まらせる恐れなどがある。関電は、これまで降灰量を約10 cmと想定していた。しかし、大山からの距離が若狭と同程度の京都市内の約8万年前の地層に約30 cmの火山灰層があるとの研究が発表され、規制委が調査したところ、約25 cmの火山灰層が確認された。そのため、若狭の原発での降灰量を再検討する必要があると判断したが、間違った事実を基に「規制委審査」に合格し、運転中の大飯3、4号機、高浜3、4号機の運転停止は求めなかった。

大飯原発、鍵貸し出し違反(12月17日報道)

◆原子力規制委員会は、関電が大飯原発で、核物質防護区域などの出入り口の鍵計14本を、管理者以外の関電社員と下請け会社社員の2人に貸し出していたことを明らかにした。たるみ切った核物質管理体制で、核物質防護規定の遵守義務違反。

日立、英原発計画凍結へ(12月18日報道)

◆日立は英国中部アングルシー島で英原発子会社「ホライズン・ニューウクレア・パワー」を通じて計画している原発新設(2基)を凍結する方針を英政府に非公式に伝えた。安全対策費などでコストが膨らみ、当初計画の2倍近くの3兆円規模になった事業への出資企業の確保が困難になり(とくに日本での出資者集めが難航)、一方で、英政府は電力買取価格の引き上げに消極的で(再生可能エネルギー発電コストの低下などのため)、採算確保の見通しも立たないため。安倍政権は、原発建設を「インフラ輸出の柱」としていたが、その全てが頓挫したことになる。

東海第2原発で作業員死亡(12月18日報道)

◆日本原電東海第2原発の放射線管理区域外にある屋内開閉所の設備機器の定期点検中であった作業員(43歳)が倒れ、死亡した。感電死とみられる。

使用済み核燃料中間貯蔵施設の立地、県外候補地明示できず(12月27日報道)

◆使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、関電の岩根社長は、2017年11月、「2018年内に、福井県外で具体的な計画地点を見出す」と西川福井県知事に、記者団の前で約束した。しかし、12月26日になって、候補地提示を断念したことを知事に伝え、謝罪した。この約束は、大飯原発3、4号機の再稼働への知事の同意を取り付けるための、何の成算もない空約束であったことは明らか。また、西川知事は2017年11月27日、岩根社長の約束発言を受けて、その発言の信憑性も検証せずに、大飯原発3、4号機の再稼働に同意した。「空約束を承知の上での出来レースであり、県民の安心・安全など念頭にない」との誹りを受けて当然。県内には、廃炉となった4基を含めて11基の商用原発があり、使用済み燃料プールの全貯蔵容量は1万1309体であり、2018年11月末で全体の67%にあたる7616体を保管しており、6~9年でそれぞれ満杯になる見込み。

原子力機構の79施設廃止に1.9兆円、70年を要する:原子力開発の負の側面を浮き彫り(12月27日報道)

◆日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、青森、茨城、福井、岡山に保有する79施設を廃止した場合、70年の期間と約1兆9千億円を要すると公表。東海再処理施設が約7700億円と最大で、「もんじゅ」は約1500億円。費用の中には廃止までの維持費や老朽化対策費は含まれず、さらに大幅に膨らむことは必定。機構は国の交付金で運営されているので、この費用は国民負担(税金)となる。

国内の商業用原子力施設(民間73施設)の廃止費12兆円:原資は電気料金(12月31日報道)

◆国内にある原発や核燃料サイクル工場など主な商業用原子力関連の全73民間施設を廃止した場合、費用が少なくとも計12兆8千億円以上に上ることが分かった(共同通信が発表)。電力11社を含む民間事業者計19社が公表した「廃止措置実施方針」での69施設の廃止費用見積額の累計4兆8千億円に福島第1原発1~4号機の廃炉費8兆円(政府試算)を加えた。原発1基の廃止費用は323~885億円。この費用に含まれるのは、施設の解体費、放射性廃棄物をドラム缶に詰めるなどの「処理費」、処分場に埋設する「処分費」だけで、公表費用は氷山の一角に過ぎない。「廃止措置実施方針」では大半の原発の廃止完了年数を30~40年と見込むが、今回は施設の維持管理費や老朽化対策費を含んでおらず、費用がさらに膨らむことは確実。この費用は、電気料金として国民が負担することになる。政府は、原発は「発電コストが安価」として推進してきたが、全くの偽り。

政府、トルコ原発計画撤退、輸出白紙に(1月4日報道)

◆政府は、三菱重工とトルコで進める新型原発建設計画について、トルコ政府に大幅な負担増を求める最終条件を提示する方針を固めた。安全対策費などの高騰などから採算性が悪化したためであるが、トルコが受け入れる可能性は低く、事実上の撤退となる見通し。

経団連会長「原発、国民反対なら無理」と発言(1月5日報道)

◆中西経団連会長(日立製作所会長)は今後の原発政策について、年頭の記者会見(1月1日)で「国民が反対するものは作れない。エネルギー業者や日立のような設備納入業者が無理に作ることは民主国家ではない」と指摘した。ただし、中西会長は、1月15日にはこの発言を撤回し、一転、原発推進を訴えている。原発の輸出戦略がコスト高や安全不安で相次いで頓挫している中での右往左往の発言である。なお、原発を推進する安倍政権に対して、従来、経団連は「原子力は最も重要な基幹エネルギー」として同調していた。

原電社長、東海第2原発再稼働について周辺6市村に「事前同意を得る」と発言(1月8日報道)

◆日本原子力発電(原電)の東海第2原発(1978年11月運転開始の老朽原発:110万KW)の再稼働に関する周辺6市村の事前同意権について、原電村松社長が各首長との会合(運転延長の申請期限が2017年秋に迫った2017年3月の会合)で「自治体の合意が得られるまでは再稼働できないという覚悟を持っている」と発言していたことが分かった。那珂市が、会合の内容に関する公文書を開示。一方、事前同意権を巡っては昨2018年、原電幹部が否定的な見解を示して6市村が反発している。また、原電と6市村は昨年3月、「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」との協定を締結したが、原電はその後に「それぞれが納得するまでとことん協議する」と述べるにとどめ、6市村の事前同意権の有無を曖昧にした。さらに、昨年11月には、和智副社長が「拒否権という言葉は協定にない」と発言し、6市村が反発。和智副社長は謝罪し、発言を撤回した。同意権の拡大は、関電の老朽原発運転にも大きな影響を与える。

西川福井県知事、関電の老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機に関する国の説明不足を指摘(1月8日報道)

◆知事は、政府が2030年度の電源構成比率で原発を20~22%とする目標を掲げていることに触れ、「日本のそれぞれの地域でどう実現できるのか。40年を超える運転の必要性や安全性について、国の説明がもっと必要」と指摘し、説明不足の現時点は、再稼働への同意を議論する状況にないとした。

台湾、「2025年までに原発全廃」を決定:アジア初(1月12日報道)

◆台湾の立法院(国会、一院制)は、3原発6基の原子炉を事実上、全て廃炉にすることを盛り込んだ電気事業法の改正案を可決した。代替の再生エネルギー拡大を進める内容。福島原発事故後、欧州ではドイツなどが脱原発に舵を切ったが、アジアでは初めて。

原発和解、次々に打ち切り(1月15日報道)

◆福島原発事故の損害賠償を巡り、昨年以降、集団申し立てを受けた原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)の和解案を東電が拒否し、センターが手続きを打ち切り始めている。少なくとも昨年19件、今年1件(1月10日)あり、打ち切られた住民は1万7千人に上る。住民側は、時間や費用がかかる裁判に訴えるしかなく、反発を強めている。東電は、個人レベルでは多くの和解に応じているが、昨年以降の打ち切りは主に100人以上の住民による申し立てで、国の原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償指針を上回る和解案が示されたケース。最も規模が大きいのは、全町避難となった浪江町の町民約1万6千人の申し立てで、東電が拒否。指針を上回る賠償を認めると、別の地域でも増額を求められる恐れがあるためであろう。

経団連中西会長、原発で「大ブレ発言」(1月15日報道)

◆中西会長は年頭のあいさつで「原発ノー」であるかのような発言をしたが、15日の定例記者会見では、一転して「原発の再稼働はどんどんやるべき」と発言し、原発推進の安倍首相に怒られたのでは?などの憶測を呼び、日本財団の笹川会長からは「今や軽団連?」と揶揄(やゆ)されている。なお、同会長は、日立の会長兼執行役員でもあるが、日立の内部からも英国の原発新設事業からの撤退によって3000億円の損失を出した責任を問われている。会長はこの会見で、「原発再稼働を積極的に進めるべきだ。安全性の議論は尽くされていても、地元の理解が得られない。その説得は電力会社だけでできるものではなく、広く議論することが必要だ」と述べているが、一方、後に中西会長は、「エモーショナル(感情的)な反対運動について議論してもしょうがない」、「絶対にダメという方と議論しても始まらない」と述べ、立場を超えた対話は拒否している(3月11日報道)。なお、この右往左往の会長発言は、原子力業界が廃炉ビジネスへ方向転換するための布石ではないかとの見方もある。

規制委、高浜原発に「警報のない津波の影響評価」を要求(1月16日報道)

◆昨年12月インドネシア・スンダ海峡で火山島の噴火に伴う山体崩壊が原因とみられる津波が発生し、その際に警報が発表されなかったことを受けて、規制委は、関電に高浜原発が警報が発表されない津波に襲われた場合の施設への影響を評価し、報告するように求めることを決定した。高浜原発の敷地は標高3.5 mの低地にあり、警報によって防潮ゲートを閉めなければ、津波による過酷事故が起こりかねない。しかし、更田委員長は、「多くの原発の場合は防潮堤の高さが十分であり、施設が深刻な状態になるとは考えられず、直ちに危険ではない」として、稼働中の原発を止めることは要求しなかった。なお、若狭湾の海底にも土砂崩れの跡があるともいわれている。

日立、英原発計画凍結を正式に決定(1月18日報道)

◆日立が英国での原発新設(2基)計画を凍結することを正式に決定し、日本が官民で手掛ける原発輸出計画の全てが頓挫した。福島原発事故後も、成長戦略に原発輸出を掲げ。官邸主導で民間を後押ししてきた安倍政権の責任が問われる。

青森の原野、相次ぐ高額入札(1月24日報道)

◆青森県むつ市のリサイクル燃料備蓄センター(使用済み燃料を最長50年間保管する中間貯蔵施設)の隣の原野(接する道路もない)約4万平方メートルをめぐり、青森地裁で高額入札の競売が繰り返されている。評価額は715万円に過ぎないが、15億円(1回目)、5億1千万円(2回目)、6億1千万円(3回目)、2億4千万円(4回目)で落札した。しかし、いずれも期限内に落札額が払われず、売却に至らなかった(評価額と同額の保証金は裁判所に没収された)。中間貯蔵施設の用地買いへの期待感から高値がついていると考えられる。なお、関電も中間貯蔵地としてむつ市に食指を動かしているが、むつ市長は「許されない」と反発している。

関電、40年超原発再稼働時期を延期(2月5日報道)

◆関電は、2月4日、40年越え老朽原発高浜1、2号機、美浜3号機の再稼働に関わる安全対策工事の完了時期を高浜で約9カ月、美浜で6カ月遅らせると発表。3基の再稼働時期も同様に遅れる。(関電は、それまで再稼働時期を、高浜1号機で早ければ2019年9月、2号機で20年4月、美浜3号機で20年2月としていた。)関電の収支への影響は計約1080憶円になる見通し。高浜原発での工事の遅れは1昨年1月のクレーン倒壊事故などのトラブルと資機材を置くスペースや輸送ルートなどの見直しが必要になったため、美浜原発では、使用済み燃料プールの耐震補強で地盤をより深く掘削する必要があることが判明したためとしている。工事計画もまともに立てられない関電が老朽原発を安全に運転できるとは考えられない。

玄海原発2号機を廃炉(2月13日報道)

◆九電は、2月13日、老朽化が進んで巨額の安全対策費がかかる玄海原発2号機(1981年3月運転開始、55.9万kW)の廃炉を決定した。再稼働する場合には、「新規制基準」に基づき、テロ対策施設の建設も必要とされるが、そのための土地を確保できないことも廃炉に踏み切る一因。玄海原発1号機(1975年10月運転開始、55.9万kW)の廃炉も2015年に決まっているが、出力が2倍近くの3、4号機(1994年3月、1997年7月運転開始、118.0万kW)は2018年に再稼働している。

原電と8市町が協定(2月20日報道)

◆2038年までの運転延長が認められた日本原電の東海第2原発に関して、30 km 圏内にある8市町と原電が、再稼働などの重要事項について8市町は意見を述べる権利があるとする協定を結んだ。東海村と周辺の5市は昨年3月、再稼働に際して「実質的に事前了解を得る」とする協定を結んでいる。今回協定を結んだのはその周囲で30 km 圏内にある8市町。30 km 圏外ながら原電との交渉に参加してきた小美玉市についても8市町と同等の権利が担保された。

除染土再利用反対61%、処理水海洋放出反対65%:福島県民世論調査(2月28日報道)

◆政府は、福島原発事故の除染作業で出た土のうち、放射性物質濃度の低いものを公共工事で利用する計画を進めている。この土地利用について、福島県民への世論調査を行ったところ、「反対」が61%で、「賛成」27%を大きく上回った。男女差が大きく、男性は「反対」49%、「賛成」40%、女性は「反対」73%、「賛成」14%であった。女性の中でも、40歳代以下で反対が多かった。福島原発では、除去困難なトリチウムを含む汚染水がたまり続けている。この処理水を海に流すことにも「反対」65%、「賛成」19%であった。また、9割が処理水の海洋放出による風評被害に不安を感じると答えた。原発再稼働については、「反対」68%、「賛成」13%と、全国世論調査の「反対」56%、「賛成」32%に比べて、福島県民の方が反対が多かった。国の原子力政策に、原発事故の教訓が生かされているかについて、65%が生かされていない、16%が生かされていると答えた。この調査は、政府の原子力政策が福島の民意を蹂躙していることを示している。

東電、東海第2支援1900億円:安全対策3000億円に膨張(3月2日報道)

◆日本原電が再稼働を目指す老朽原発・東海第2原発の安全対策工事費は、従来想定の2倍近い約3千億円に膨らんでいる。この原発の電気を受け取る東電は、その3分の2にあたる約1900億円を支援することが明らかとなった。中部電、関電、北陸電の3社も支援する。再稼働時期は2023年を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどはたっていない。自治体の同意が得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化されたにもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至。

関電、原発安全対策費1兆円超:大飯テロ対策に1300億円(3月9日報道)

◆関電は、大飯原発3、4号機の敷地内につくるテロ対策施設の計画をまとめ、規制委に許可申請を出した。施設建設費は1308億円の見込み。関電が原発に投じる安全対策費は、総額1兆円を超えた。

東電、再建厳しさ増す(3月12日報道)

◆福島原発事故で経営危機に陥り、事実上国有化された東電の経営再建への道は、電気の小売り全面自由化で顧客の流出が続く[2019年3月末で、契約先を切り替えた顧客数は558.9万件(小口需要の24.6%):ちなみに関電は229.7万件(約21%)]など、厳しさを増している。東電が2017年5月に公表した経営再建計画では、柏崎刈羽原発の再稼働や火力発電、送配電の再編を進めるとし、2027年度以降に廃炉と賠償に年5000億円を確保し、これとは別に年4500億円の経常利益を上げるとしていた。2017年度の実績は、廃炉と賠償に2867億円を使い、経常利益が2548億円であった。目標達成には合わせて4千億円の積み上げが求められる。2027年度の株価は1株1500円を想定するが、現在は600円。再編統合で、火力は進んでいるが、原発と送配電事業には進展がない。柏崎刈羽6、7号機に必要な審査には合格したが、立地自治体の同意が得られる見通しはない。東海第2原発の電気を購入して販売する方針であるが、安全対策費は当初の1740億円から3千億円規模に膨らみ、東電が支援する資金も1900億円と大幅に増やす案が協議されているが、立地自治体の同意取り付けが難航すると予想される中、新たな負担が増えることが懸念されている。

民間シンクタンク、福島原発処理に最大81兆円試算:経産省の約4倍(3月23日報道)

◆「日本経済研究センター」は、福島原発の事故処理費用は総額35~81兆円になるとの試算をまとめた。溶け落ちた核燃料(デブリ)や汚染水の扱いによって3通りの金額を算出したが、いずれも経産省が2016年12月に発表した22兆円を上回った。最大の81兆円は、汚染水から全ての放射性物質を除去できると仮定し、海など環境に放出しない場合、デブリ取り出しも含めた廃炉・汚染水処理費に51兆円、賠償に10兆円、除染に20兆円が必要とした。デブリを取り出し、取り除くことが困難なトリチウムの残った水は希釈して海洋放出するという国と東電の方針に近い想定では、廃炉・汚染水処理を11兆円として総額は41兆円と見積もった。

原発支援へ補助制度案:売電価格アップを容認:実現なら電気料金増も(3月23日報道)

◆経産省が、原発で発電する電力会社への補助制度の創設を検討している。原発で発電した電気については、発電事業者と小売事業者との間で取り引きする際の市場価格に一定の価格を上乗せすることを認めるというもの。発電事業者は、原発の電気をより高い価格で買ってもらえるため収入が増えるので、事実上の補助金になるとの想定。原発を温室効果ガスを排出しない「ゼロエミッション電源」と位置づけ、「環境への貢献で付加価値をもたらしている」との理屈による。(福島事故など、放射性物質は垂れ流しても「ゼロエミッション電源」???)経産省がこの制度の検討を進める背景には、福島原発事故後、安全対策費用が高騰し、原発で作った電気の価格競争力が低下しているにもかかわらず、原発を推進しようとする意図がある。安倍政権の「エネルギー基本計画」下では、小売事業者は、補助制度で原発の電気が割高になっても、一定程度買わざるを得なくなる可能性がある。その負担は基本的には消費者や企業が引き受けざるを得ず、「原発の電気は安い」としてきた政府の説明とは矛盾する。

大熊町避難指示、4月10日に一部解除:立地自治体で初(3月26日報道)

◆福島原発事故で全町避難が続いていた大熊町について、一部地域の避難指示を4月10日に解除することを政府の原子力災害現地対策本部が提案し、町も同意した。政府は放射線量の低下、生活インフラの復旧、復興公営住宅や仮設商業施設西部が進んでいることなどを踏まえたとしているが、いずれも全く不十分であることは明らかであり、住民帰還の動きは鈍い。人間性無視の政策である。対象区域は、大熊町の人口約1万人のうち374人が住民登録している区域に過ぎない。

関電、計画のない第2再処理工場費用(総額12兆円)も電気料金に転嫁:説明なく消費者負担(3月26日報道)

◆関電は、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場の事業費に加え、具体的な計画がないウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料再処理工場(「第2再処理工場」)の費用も2017年、18年の料金値下げの際に電気料金に盛り込んでいた。九電をはじめ、他の大手電力も追随する見込み。未計画の「第2再処理工場」の総事業費は過去の試算で12兆円に上り、六ケ所分の計約16兆円と併せて各電力の消費者が負担することとなる。関電は、料金転嫁の事実や負担額を消費者に説明していない。

関電3原発への火山噴火降灰量想定を引き上げ(3月30日報道)

◆関電は、鳥取県の大山が噴火した際の若狭の原発への降灰量を再評価するように規制から求められていたが(昨年12月12日)、降灰量の想定を10 cm から最大で2倍超の21.9 cm(高浜)、19.3 cm(大飯)、13.5 cm(美浜)とする報告書を規制委へ提出した。これについて関電は「現在の建物や設備で耐えられることを確認しており、安全上問題はない」としている。いい加減な想定で審査に合格した原発は即時停止して、再稼働を再検討すべきであろう。なお、このような想定に3桁の数値を出せるほど現在科学は進歩していず、3桁の数値を報告すること自体が科学・技術者の資質を疑わせる。


「5.19老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」で、
関電と政府に若狭の原発全廃を決断させましょう!

【5月19日(日)13時より、集会後御堂筋デモ
「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」主催】
集会へのご賛同、ご参加をお願いします。連絡は下記へ。


2019年4月発行
若狭の原発を考える会 連絡先;木原壯林
電話:090-1965-7102
FAX:075-501-7102
E-メール:kiharas-chemアットzeus.eonet.ne.jp


◆関電が老朽原発推進チラシを福井で配布

【2019年3月29日,京都キンカンで配付】

関電は、老朽原発推進のチラシ(下の緑色枠内)を、
福井で新聞折込み配布しています。

【かんでんトピックス(第54号、2019年3月16日発刊)
「40年を超える原子力発電所ってどうして必要なの?」】
→ こちら
【注意】上記「こちら」のリンク先「かんでんトピックス第54号」は
元サイトから削除された模様で、
エラーになり、リンクは削除済みです。
同様の内容は「同 第58号」→こちらに、掲載されています。

関電は、何の根拠もない理由を並べ立てて、
老朽原発再稼働を正当化しようとしています。
住民を愚弄するものです。

以下、関電の主張の欺瞞性を指摘します。

①関電は、高浜原発1、2号機、美浜原発3号機の60年までの運転期間延長について、「原子力規制委員会(規制委)から認可を得た」としています。(チラシの前文)

しかし、規制委の審査は、単に「新規制基準」へ適合するか否かの審査であり、規制委員長も繰り返すように「原子炉の安全を保証するもの」ではありません。

「新規制基準」について、政府や電力会社は「福島原発事故から学んで作成された」としていますが、この基準は、事故から2年余りで、事故収束の目途も立たず、事故炉の内部もほとんど分からず、事故原因も確証されていなかった(今でも事故原因については異論が多数ある)、2013年7月に施行されたものです。こんな短期間で、事故の原因。経過、事故防止対策などを検討し尽くせるはずがなく、「科学的に安全を保証するもの」とはほど遠いものです。

原発の再稼働にお墨付きを与えた「新規制基準」が極めていい加減な基準であり、規制委の審査が無責任極まりないことは、下記のように、規制委が適合とした原発の多くがが再稼働前後にトラブルを起こした事実からも明らかです。

◆2015年8月に再稼働した川内原発1号機は、再稼働10日後に復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機は、2016年2月の再稼働準備中に1次冷却系・脱塩塔周辺で水漏れを起こし、発電機と送電設備を接続した途端に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止しました。さらに、伊方原発3号機は、再稼働準備中の2016年7月、1次冷却水系ポンプで水漏れを起こしました。昨年3月に再稼働した玄海原発3号機は、再稼働1週間後に脱気装置からの蒸気漏れを起こしました(配管に穴が開いたため)。昨年8月末に再々稼働した高浜原発4号機は、8月19日に、事故時に原子炉に冷却水を補給するポンプの油漏れを起こし、20日には、温度計差込部から噴出した放射性物質を含む蒸気が原子炉上蓋から放出されるという、深刻なトラブルを起こしました。

しかも、老朽原発再稼働審査の杜撰(ずさん)さは目に余るものでした。高浜1、2号機審査を例に紹介します。

  • 関電は、高浜1、2号機の新規制基準への適合審査を申請したのは2015年3月ですが、2016年4月に設置許可、6月10日に工事計画認可、6月20日に運転延長認可と、他の原発の審査に比べて、異例の短期間で審査を終えています。審査会合も27回と川内、高浜(3、4号機)、伊方原発審査時の約半分です。しかも、先に申請し、終盤を迎えていた他原発の審査を止めての拙速審査です。規制委からの認可取得期限が2016年7月7日に設定されていたために、規制委が審査を早めて、この期限に間に合わせたのです。
  • 審査の手抜きも目立ちます。例えば、蒸気発生器の耐震性は美浜3号機の実証データで代用し、通常なら審査段階で行う耐震安全性の詳細評価を審査後で可とし、実証試験を使用前検査時に先延ばしにしました。

②関電は、「2030年に原子力発電の比率を20~22%としようとする安倍政権のエネルギー基本計画を実現するために原発を進める」としています。(チラシのQ1)

しかし、今、節電・省エネは世界の潮流です。再生可能エネルギーなど、様々な発電法がますます発展し、安価になっています。蓄電法も急ピッチで改良、開発されています。一方、福島原発事故を機に、過剰なエネルギーに依存する生き方を見直そうという流れも大きくなっています。今、原発に依存しようとすることこそ、時代に逆行しているのです。

◆なお、エネルギー基本計画では「脱炭素化」といいながら、CO2排出の多い石炭火力を26%(2030年)にしようとしています。この基本計画が環境に配慮したものでないことは明らかです。

③関電は、「安定的、低炭素の電気を造るためには、将来にわたって、安定供給性・経済性・環境性に優れた原発を一定程度活用することが必要」としています。(チラシのQ1)

しかし、原発はトラブル続きで、長期間かかる定期点検も必要です。何万年もの保管を要する使用済み核燃料や放射性廃棄物を生み出します。運転すれば、事故がなくても、トリチウムなどの放射性物質を環境に放出します。どの点からも、安定供給性・経済性・環境性に優れているとは言えません。

原発では、原子核に閉じ込められていたエネルギーを解放するのですから、地球を温暖化させます。海洋を温暖化させれば、溶解していたCO2 が大気中に放出され、さらに温暖化を加速します。温排水によっても、海の温度は上昇します。核燃料の製造過程でもCO2 が大気中に放出されます。

しかも、原発はなくても電力不足にならないことは、福島事故以降の経験から明らかなのです。

これらのことは、多くの人々が認めるところであり、そのため、脱原発・反原発は民意となり、原発を進める電力会社からの顧客離れが進んでいます。関電からは、すでに小口顧客の約2割が離れています。

④関電は、「関電の責任と判断において安全対策工事を進めている」と述べています。(チラシの前文とQ3)

しかし、前述のように、再稼働を進める全ての電力会社がトラブルを起こしています。これは、原発の点検・保守や安全維持の困難さを示唆し、配管の腐食や減肉、部品の摩耗などが進んでいることを示しています。また、傲慢で安全性を軽視することに慣れ切り、緊張感に欠けた電力会社が原発を運転する能力・資格を有していないことを実証しています。

④-1 関電は、「大型機器やポンプ、配管など取り換えられるものは積極的に取り替え、老朽原発の安全性を確保している」としています。(チラシのQ2)

しかし、取り替えられないもの(原子炉容器、原子炉格納容器、一次系の伝熱細管など)こそ、高放射線にさらされている部分で、最も老朽化が進んでいる部分です。これらの部分は、高放射線ですから、点検も困難です。

④-2 関電は、「老朽原発の交換が難しい部分について、特別点検を行い、規制委から運転延長の認を得たから、安全性は確保できている」としています。

しかし、先述のように、規制委のお墨付を得て再稼働した原発の多くが、再稼働の前後にトラブルを起こしています。電力会社が最も緊張するはずであり、世間も注目している原発再稼働時にトラブルが頻発している事実は、原発の細部にわたる点検は極めて困難であり、見落とし箇所が多数あり、規制委の認可が極めていい加減であることを実証しています。しかも、規制委の審査の多くは、電力会社の自己申告のデータに基づいて行われ、規制委自身が確認したものではありません。

一方、1昨年1月の高浜原発でのクレーン倒壊、度重なる関連会社のヘリコプターからの資材の落下のように、関電の事故・トラブルの原因は、通常では考えられないほどお粗末です。傲慢さに慣れ切った関電は、すでにトラブルを防止する体制を喪失しているとしか考えられません。

◆なお、関電は、老朽原発を今年9月から来年にかけて再稼働させようとしていましたが、2月4日、半年から9カ月遅れると発表しました。1昨年のクレーン倒壊事故などのトラブルによる工事の遅延のためとしています。高浜原発1号機では、去る3月6日にも火災を発生させています。まともに工事予定を立てることもできず、トラブル続きの関電が老朽原発を安全に運転できるとは考えられません。

④-3 関電は、安全対策工事として、「高浜1、2号機では。重大事故時に格納容器からの放射線量を低減するため、格納容器上部外側にドーム状の遮蔽を設置する工事を実施しています」としています。

しかし、福島原発事故では、原子炉建屋が破壊され、膨大な量の放射性物質が建屋外に放出されたのですから、この遮蔽が、重大事故の防止に役立つとは考えられません。(事故後作業の被曝低減には役立つかもしれませんが。)

◆なお、今までの40数年間もこのドーム状の遮蔽がないままだったことが問題です。隣にある1985年に運転を開始した3、4号機はこの遮蔽をつけているのですから、関電は、必要性を認識しながら少なくとも30年以上放置していたことになります。

④-4 関電は、安全対策工事として、「美浜3号機では、使用済み燃料を保管しているラックの耐震性向上のための工事を実施しています」としています。

しかし、使用済み燃料のラックを取り替えたところで、「むき出しの原子炉」ともいわれる使用済み燃料プールの危険性は若干軽減されるだけで、プール本体の倒壊など、重大事故の危険性があることには変わりはありません。

プールに使用済み核燃料を保管しないこと(原発を運転しないこと、使用済み燃料をつくらないこと)以外に、危険を避ける方法はありません。


◆電力会社や原発を推進する政府は、チェルノブイリ原発の事故の後にも「日本の原発は、厳重な安全管理をしているから、事故を起こすはずがない」という「安全神話」で人々を欺いていました。スリーマイル島、チェルノブイリ、福島の原発事故は、それぞれ事故原因や事故の経緯が異なります。原発事故の原因は多様で、福島の事故も、その原因が確定されているとは言えません。事故炉の内部が分かっていないのですから、確定しようがないのです。現在科学技術は、原発の事故原因の全てに対応できるほど進歩していないのです。次の原発重大事故は別の原因で起こる可能性が高く、事故が起これば、原発推進派は「想定外」であったと開き直るでしょう。

◆原発は、万が一にも重大事故を起こしてはならないのですから、人類の手に負えない原発は即時全廃しなければならないと考えます。

◆原発重大事故は、職場を奪い、農地を奪い、漁場を奪い、生活の基盤を奪い去ります。人の命と尊厳を蹂躙(じゅうりん)します。

若狭を第2の福島にしてはなりません!

「5.19老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」で、
関電と政府に若狭の原発全廃を決断させましょう!

【5月19日(日)13時より、「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」主催】


2019年3月発行
若狭の原発を考える会 連絡先;木原壯林(090-1965-7102)


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◆「原発の電気は買いません」の声を広げたい~はんげんぱつ新聞

『はんげんぱつ新聞』(反原発運動全国連絡会)第492号(2019.3.27)「各地からの便り」に掲載の記事。
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「原発の電気は買いません」の声を広げたい。
関西電力社長宛に要請署名

私たち『原発の電気はいらない署名@関西』のグループは,2017年3月より関西電力社長宛に「原子力発電は,止めてください。原発でつくった電気は,使いたくありません」という要請署名を集めています。昨年末までに1万1千筆近くに達し,Web(→ https://syomeiweb.wordpress.com/)にて報告しています。オンライン署名もできます(→ https://goo.gl/eSMkLp)。

電気を選択することは,私たちの未来を選択することであり,原発のない社会を実現して行くために,一人一人が意思表明をしようというのが署名の趣旨です。また,「バイバイ関電」というチラシを作成し,その中で,関西での安心安全の新電力を例示して原発に固執する関西電力からの切り替えを訴えています。

2/1付け朝日新聞は「関電,純利益38%減。家庭向け電力9%減」(2018年4~12月期決算)と報道しています。電力広域運営推進機関の調査(スイッチング支援システムの利用状況)でも,小口電力自由化(2016年4月~)以来,関電の顧客離れは加速しており,2018年11月末には新電力への契約切り替えが200万件を突破,自由化直前の小口契約件数の18.5%となりました。本年1月末には214.2万となり,これは20.0%にもなります。2016年は毎月平均5.8万件が関電を離れ,高浜原発が再稼働された2017年には同6.3万件,大飯原発が再稼働された2018年には同6.6万件と,原発再稼働のたびに顧客離れが進んでいます。私たちは,さらに「原発の電気は買いません」の声を広げたいと思っています。署名は全国どこにお住まいの方でも可能ですので,よろしくお願い申し上げます。