┌─────────────────────────────────
◆関電は、破綻した「使用済み燃料対策ロードマップ(工程表)」を見直したが
「新ロードマップ」は、またしても老朽原発の運転を継続するための詭弁!
六ヶ所再処理工場にも中間貯蔵施設にも「実効性」はない!
関電は、使用済み燃料を乾式貯蔵施設に保管して原発延命を企む!
【付 六ヶ所再処理工場–アクティブ試験と新規制基準】
└─────────────────────────────────
┌─────────────
▼2023年10月、関電が「使用済み燃料対策ロードマップ」を示す
└─────────────
関電は、「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と何度も福井県と約束しながら、すべてを反故にしてきた(◆012◆)。最近では、2023年10月、いかにも近々、青森県の六ヵ所再処理工場への搬出が可能であるかのように見せかけた「使用済み燃料対策ロードマップ」を福井県に示した。
┌─────────────
▼2024年8月、関電のロードマップは早くも破綻(◆114◆)
└─────────────
ところが、関電がロードマップで示した願望は、2024年8月、日本原燃が27回目の六ヵ所再処理工場の完成延期(約2年半)を表明した(◆003◆ 付(2))ことによって破綻。ロードマップは、老朽原発の運転を継続するための詭弁で、実現性が全くない「絵に描いた餅」であった。
┌─────────────
▼2024年9月、関電は2025年3月末までにロードマップを見直すと大見得を切る
└─────────────
それでも、関電は開き直って、またもや「ロードマップを本年度末(2025年3月31日)までに見直す。実効性のある見直しができなければ、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と大見得を切った。
┌─────────────
▼2025年2月、関電は福井県に「新ロードマップ」を提出(◆119◆)
└─────────────
関電は、2月13日、「実効性のある見直しができた」とする「新ロードマップ」を福井県に提出した。しかし、その内容は「使用済み核燃料のフランスへの搬出量を倍増させる(合計:ウラン使用済み燃料380トン、MOX使用済み燃料20トン)」とか、稼働延期を繰り返し稼働の見込みが極めて薄い再処理工場(青森県)への2028年度からの搬出(198トン)などであった。今回も、小手先の奇策、詭弁を弄して、誤魔化す内容であった。福井県外に、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を見つける、という約束は以前として無視されている。
【参考】2023年10月のロードマップ、2025年2月の新ロードマップの図解→◆119◆
┌─────────────
▼2025年3月24日、福井県も老朽原発の稼働継続を容認
└─────────────
使用済み核燃料の県外搬出を求めていたはずの杉本達治・福井県知事は、3月24日、関電が再提出した「新ロードマップ」を、「実効性があるものと判断する。」と容認した。老朽原発に対する不安が広がっている県民の意見は聞いていない。またもや、老朽原発の稼働継続のための「出来レース」をやってのけたわけである。何度、福井県民をないがしろにすれば気が済むのか。
┌─────────────
▼期限の2025年3月31日、やはり実効性のある見直しはなされず
└─────────────
関電の森望社長は、2024年9月5日、杉本福井県知事と面談し、使用済み核燃料の県外搬出に向けた「ロードマップ」を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べている。しかるに、3月31日になっても、実効性ある見直しはできていない。実効性がまるでない「新ロードマップ」で誤魔化そうとしている。関電の「新ロードマップ」は、またもやその場しのぎの空約束と約束反古を繰り返すものである。
┌─────────────
▼2025年3月31日、約束反故の関電糾弾、老朽原発を運転するな!の集会とデモ
└─────────────
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、ロードマップ見直し提出期限である3月31日、美浜町の関電原子力事業本部前において「3・31使用済み核燃料の行き場はないぞ 関電は約束まもれ!美浜集会」を開き、町内デモを行った。原子力事業本部に対しては、「関電は老朽原発、高浜1、2号機、美浜3号機を運転するな!」「嘘と欺瞞の関電を許さない!」の抗議と警告を表明した文書を手渡した。右翼の集会妨害は、シュプレヒコールで反撃、約200人が参加。
┌─────────────
▼関電の「新ロードマップ」が既に破綻している理由
└─────────────
(1) 六ヶ所再処理工場にも中間貯蔵施設にも「実効性」はない。六ヵ所再処理工場の2026年度内での竣工はきわめて困難。六ヶ所再処理工場の設計工事認可審査で耐震補強工事が必要になっても、アクティブ試験に伴う「レッドセル問題(◆003◆ 付(2))」(主工程が極度に汚染され立入不可)で補強できず、不合格になる可能性がある。
(2) 仮に竣工できたとしても、高々10%操業にとどまらざるをえない。「余剰プルトニウムを持たない」との国際公約から、原子力委員会の「プルサーマルに必要な量だけ再処理認可」方針があるため。したがって使用済み燃料を再処理工場にどんどん搬出することはほぼ不可能。
(3) 関電の原発で約4分の1をしめる高燃焼度使用済み燃料は、六ヶ所再処理工場での再処理も、中間貯蔵施設への搬出もできない。使用済みMOX燃料も同様。
(4) 関電は「使用済MOX燃料の再処理実証研究」として、2027年度から使用済MOX燃料を含む400トンをフランスに搬出する計画。しかし、再処理後に生まれる高レベル廃液ガラス固化体について、関電や電事連は「高レベル廃棄物は日本に返還される」ことを認め、返還先は「今後検討する」とのみ答えている。そして青森県は、六ヶ所村では受け入れない旨を表明している(3月8日東奥日報、4月1日共同通信)。青森県が受け入れないのであれば、福井県で受け入れるのか。
【参考】森重晴雄さんのFB投稿によれば、
┌─────────────
・青森県民の癌患者や小児がん患者は再処理試験開始以来20年間全国ワースト1位。
・再処理施設の430トン試験処理以来、青森県の癌死亡率や小児がん発病率は何れも日本ワースト第1位。
・青森県の小児がん発生率が全国平均のなんと約27倍。
・フランスで再処理し返還された残骸にはプルトニウムなどの放射性物質が残っている。その残骸を収納した保管容器は完全に閉じ込め出来ないので僅かずつ漏れる。しかも10年に1回、保管容器の蓋と本体のあいだにあるパッキンを交換しなければならない。パッキンは10年で劣化する。保管容器は開放せざるを得ない。その時にいくらフィルターを通しても環境中に放射性物質が放出される。
└─────────────
六ヶ所再処理工場の本格操業では、年間800トンの処理量が予定されている。これまでのアクティブ試験の430トンから倍増に近い。がん発病率がどうなるのか、青森県はこれ以上放射性廃棄物を受け入れた場合のリスクを考えざるを得ないのでは。
【付 六ヶ所再処理工場–アクティブ試験と新規制基準】
- アクティブ試験とは…使用済み核燃料430トンを溶解、その高レベル廃液を用いたガラス固化体の製造試験、ガラス溶融炉の安定運転性能の確認および処理能力の確認のためのテスト運転。2006年3月31日に開始。
- 2006~08年にかけて、使用済燃料を用いたせん断、溶解処理が実施され、これに伴って、環境中にトリチウム、炭素14、クリプトン85、ヨウ素129などの放射性物質が大量に放出された。
→原子力資料情報室…六ヶ所再処理工場の放出放射能に関する情報『アクティブ試験計画書』 - 2007年11月、2008年10月にガラス固化設備の試験が行われた。
・白金族元素が炉底部に堆積して流下不調
・東海村に設置している実規模のモックアップ試験施設で原因究明、対策の構築
・モックアップ試験にて白金族元素の炉底部への堆積を防ぐことができた - 2012年12月~2013年5月に改善したガラス固化試験を実施
・安定運転の確認、2013年5月にガラス固化試験を終了
・事業者としての検査は終了
・今後、新規制基準への適合が必要。事業者自らが行う使用前事業者検査としてガラス固化試
験を実施する必要がある。(規制当局は、事業者の活動を確認する立場)
・ガラス固化試験(2013年度)から六ヶ所再処理工場のガラス溶融炉は、10年以上運転していない。2013年度以降の若手社員は、使用前事業者検査で、初めてガラス固化の運転操作を行うことになる。
・高レベル放射性廃棄物の現在量(はんげんぱつ新聞、2023年3月末現在、【付(2) 核燃料サイクルと、核のごみ】)によれば、六ヶ所再処理工場には、ガラス固化体346本のほかに、244立方m(約460本相当)の高レベル廃液が残っている。 - 新規制基準への適合
・2014年に新規制基準への適合性審査を申請
・2020年7月に事業変更の許可を取得
(つまり新規制基準に沿ったさまざまな対策を反映する許可を得る)
・2022年12月に第1回の設計及び工事計画の認可(設工認)を取得
・2022年内に主要な安全対策工事をおおむね終了したとされ、2022年12月に第2回設工認、すなわち竣工に必要な「安全対策工事を進めるための設計および工事計画の認可」を申請。しかし、建物などの耐震設計に必要な「地盤モデル」の全面的な見直しなどにより、この審査が想定より大幅に遅れ、長期化している
・2024年8月29日、日本原燃は再処理工場の完成時期を約2年半延期し、2026年度末にすると発表。延期は27回目 - 上記は、以下の資料ほかによる
六ヶ所再処理工場のガラス固化試験について(2022年8月23日、日本原燃株式会社)
再処理工場のしゅん工に向けた進捗状況(2025年3月24日時点、日本原燃株式会社)
┌─────────────
【参考(1)】
◆003◆ MOX燃料、核燃料サイクルなど
【付(2) ◆核燃料サイクルとその破綻–六ヶ所再処理工場の完成延期】…六ヶ所再処理工場は完成延期を重ねている。レッドセル問題とは。処理できない使用済み核燃料(使用済みMOX燃料、高燃焼度燃料の使用済みウラン燃料)。
└─────────────
┌─────────────
【参考(2)】
◆082◆ 核燃料サイクル5施設(青森県六ヶ所村)…日本原燃株式会社の①再処理工場、②低レベル放射性廃棄物埋設センター、③ウラン濃縮工場、④高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、⑤MOX燃料工場
【付(1) 電事連の核燃料サイクル、新聞広告】
【付(2) 核燃料サイクルと、核のごみ】…ガラス固化体、核のごみ、最終処分場、高レベル放射性廃棄物の現在量(はんげんぱつ新聞、2023年3月末現在)、人工バリアなどについて。
└─────────────
┌─────────────
▼乾式貯蔵施設の建設へ
└─────────────
六ヶ所再処理工場も中間貯蔵施設も、もはや満杯に近い関電の使用済み核燃料の解決策にはならない。結局、関電の使用済み燃料は、乾式貯蔵施設に保管され続けることになるのでは。福井県の原発サイトに建設されようとしている乾式貯蔵施設を、今後、長期にわたる使用済み核燃料の保管場所にしようというのが、関電の狙い。乾式貯蔵施設が「円滑な搬出のために必要」という関電の説明は、虚言。乾式貯蔵施設が、原発延命のために使われることがいよいよ明らかになっている。
2025年3月26日、高浜原発の乾式貯蔵施設について、原子力規制委員会は計画に問題はないとして、審査に事実上、合格したことを示す審査書案をとりまとめた。
杉本福井県知事はこれまで、「新ロードマップ」の実効性が確認できなければ、老朽原発の運転は認められず、乾式貯蔵施設建設の事前了解はあり得ないと発言してきた。しかし、「新ロードマップ」を容認した現在、規制委の審査合格後には、乾式貯蔵施設建設の事前了解に踏み込む可能性が高まってきた。