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◆佐高信『徹底抗戦』(旬報社、2020年)より
(1) 関西電力と原発推進の異常識
(2) 関西電力の「二・二六事件」
(3) 関西電力の反原発町長暗殺指令
(4) 電力総連の責任も重い
(5) 新“原発文化人”佐藤優
高木仁三郎さんが語る「少なからぬ誘惑」の一つ
(6) 札つきでない不良
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(1) 関西電力と原発推進の異常識(p.74)
- 関電美浜原発2号機、蒸気発生器伝熱管の破断→緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した事故(1991年2月9日)に関連して、飯田孝三・副社長の言動……資源エネルギー庁に呼ばれて指示を受けたときは神妙であったが、直後の記者会見では反発して居直った。それを知ったエネ庁が態度を硬化させると、あわてて謝罪し釈明した。佐高は「反発」がホンネで、「釈明」がタテマエであるとして「電力会社は役所と会社の悪い点を併せ持っている。」と書く。
- 佐高信『佐高信の辛口100社事典』(七つ森書館)
- 関電美浜原発2号機の事故について→ 関西電力 闇歴史◆002◆
(2) 関西電力の「二・二六事件」(p.76)
- 芦原義重・代表取締役相談役名誉会長と腹心の内藤千百里[ちもり]・副社長らの取締役退任決議(1987年2月26日)。「小林(庄一郎・会長)によるクーデターと言われたが、起爆剤は『朝日ジャーナル』の奥村レポートだった。」
- 奥村宏『関西電力 暗黒大陸』(朝日ジャーナル、1986年9月12日号)
- 清水一行『小説財界』(集英社文庫)。内藤は藤井、芦原は芦塚として登場。
- 関電のカネと社内権力抗争→ 関西電力 闇歴史◆036◆
(3) 関西電力の反原発町長暗殺指令(p.78)
- 原発を積極的に推進しなかった今井理一・高浜町長(当時)の暗殺計画。「関電と警察がつるんで臭いものにフタをしようとしたのだろう。」
- 斎藤真『関西電力反原発町長暗殺指令』(宝島社)
- 関電のKという首脳の依頼→ 関西電力 闇歴史◆005◆
(4) 電力総連の責任も重い(p.156)
- 2019年に森山栄治・高浜町元助役と関電幹部との間の原発マネー不正還流(→◆018◆)が発覚した。「関西電力のとてつもない腐敗について、それを知った監査役が公表しなかったことが問題になった。しかし、チェックできなかった責任は労働組合の方が大きいだろう。……関電労組を含む電力総連の幹部たちは果たして恥を知っているだろうか。」
- 田中稔『忖度と腐敗』(第三書館)
- 電力総連について→ 関西電力 闇歴史◆076◆
(5) 新 “原発文化人” 佐藤優(p.162)
- 内藤千百里[ちもり]元関西電力副社長が朝日新聞の取材に対し、少なくとも1972年から18年間、歴代現職内閣総理大臣7人(田中角栄・三木武夫・福田赳夫・大平正芳・鈴木善幸・中曽根康弘・竹下登)に「盆暮れのあいさつ」として年2回1000万円ずつ政治献金する慣行があったと証言した。
- これに対し佐高信は「私はこれは表の額に過ぎないだろうと思う。なぜなら、…… 選挙応援の額でさえケタ違いだからである」と書いている。札びらで頬をたたくやり方は「高木仁三郎のような筋金入りの反対派にさえ試みられた。」として、その額は3億円とのことで、高木はその著書で「現在だったら100億円くらいに相当しようか」と注釈をつけている。
- 佐高信『原発文化人50人斬り』(光文社智恵の森文庫)
- 高木仁三郎『市民科学者として生きる』(岩波新書)
- 朝日新聞(2014年7月28日)の紙面→ 関西電力 闇歴史◆036◆
【参考】『原発文化人50人斬り』佐高信 著、毎日新聞社(2013/6)で簡単に紹介して書かれていた内容を、元の『市民科学者として生きる』高木仁三郎 著、岩波新書(1999/9)で探してみた。
高木仁三郎さんが語る「少なからぬ誘惑」の一つ
第8章 わが人生にとっての反原発(p.211~212)
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その一方で、少なからぬ誘惑もあった。ひとつだけ、エピソードを書いておこう。スリーマイル島の原発事故があり、原子力資料情報室の活動が多少世間的に注目され始めた頃のことだろうか。ある原子力の業界誌の編集長兼発行人にあたる人がひょっこり訪ねて来た。産業界寄りとはいえ、一応ジャーナリストだから取材だろうと思って気軽に会った。
ところが彼は思いがけないことを切り出した。「あなたの活動はすばらしい。日本のエネルギーの未来を切り開く作業だ。私はあなたに惚れた。ついては、一席設けるからゆっくり話をしたい。具体的な構想もある」。
もう十年後だったらともかく、当時は私はこういうことにまったく慣れていなかったし、酒を飲まないから「一席」はいつも苦手である。 むげに断わる話でもないと思ったので、忙しさを口実にして、後日、昼間の喫茶店で彼にもう一度会った。
彼は単刀直入に切り出した。「将来の日本のエネルギー政策を検討する政策研究会をやりたい。今の原子力べったりのエネルギー政策では駄目だ。電力会社や通産省の内部の若手にもそう思っている人がいる。そういう人を集めるから、あなたが研究会を主宰してくれないか。私はX社のY会長と親しいから、とりあえず三億円をすぐにでも使える金として用意してもらった。彼もあなたの活動に惚れこんでいる。これは、あなたが自由に使える金だ。どうだろう、Y氏に会ってくれないか」。
当時の資料室は火の車で、三〇万円ですらとびつきたい状況だったから、「三億円あったら、一生資料室は金の苦労をしないで済むのではないか。Y氏も財界のリベラル派として知られる人だし」などと一分くらいのうちは頭を働かせた。しかし、その編集長氏の言う、研究会の性格とか「通産省や電力会社の若手」にリアリティーが感じられなかった。これは、彼らの側の私をとりこむための誘惑に違いなかった。それにしても、「一時金」が三億円とは! しばらく考えさせてくれと言って別れ、それ以上はもう会わずに、電話で断った。誰にも相談しなかった。
三億円(現在だったら一〇〇億円くらいに相当しようか)という話は、後にも先にもこの時限りだが、もう少し少額の金にまつわる話はいくつかあった。幸か不幸か、私はお金にはまるで鈍感な方だったので、その種の話に心をそそられることはついぞなかった。しかし、もう少し私がひっかかりやすい、巧妙な手口(私の嘘をつくような誘い方)だったら、私は本当に大丈夫だったろうか。後でそんな思いも残った。いずれにしても、これも一つの学習にはなった。
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(7) 札つきでない不良(p.176)
- 佐高信は、東京電力元会長勝俣恒久や関西電力前会長の八木誠の方が「札のついていないもっとも危険な不良」としている。「森山栄治を極悪人にし、八木や前社長の岩根茂樹は自分たちを被害者のように装ったこともあったが、恐るべき、あるいはコッケイな倒錯である。」
- 原発マネー不正還流→ 関西電力 闇歴史◆018◆
【◆117◆←←関西電力 闇歴史→→◆119◆(未)】