投稿者「meisei」のアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆100◆

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◆エネ庁サイトの再エネ業者情報が大手電力から不正閲覧されていた件で
 個人情報保護委員会がエネ庁を含めて行政指導!(2023/6/29)
(送配電会社への不正閲覧→◆087◆
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▼二つの不正閲覧

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[2] 個人情報保護委員会が、エネ庁や大手電力19社を行政指導
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・政府の個人情報保護委員会(個情委)は、個人情報の不適切な取り扱いがあったとして、大手電力全10グループと送配電子会社など19社と、資源エネルギー庁を行政指導した。

・個人情報保護法に基づく対応で、個人情報の取得や安全管理措置の不備を指摘し改善を促した。「不正の手段により個人情報を取得してはならない」とする個人情報護法の規定に違反すると認定した。この規定に基づく行政指導は初めて。

・エネ庁が管理していた再エネ業者情報は、送配電関係者だけが見ることを許されているが、エネ庁の管理も不適切であった。大手電力の小売部門は、経産省サイトからは、再エネ業者の代表者の氏名や住所、電話番号、再エネ電気の買い取り価格などを不正閲覧していた。

【行政指導を受けた19社】こちらによる)
「一般送配電事業者」10社
    北海道電力ネットワーク株式会社
    東北電力ネットワーク株式会社
    東京電力パワーグリッド株式会社
    中部電力パワーグリッド株式会社
    北陸電力送配電株式会社
    関西電力送配電株式会社
    中国電力ネットワーク株式会社
    四国電力送配電株式会社
    九州電力送配電株式会社
    沖縄電力株式会社(送配電部門)
「小売電気事業者」10社
    北海道電力株式会社
    東北電力株式会社
    東京電力エナジーパートナー株式会社
    中部電力ミライズ株式会社
    北陸電力株式会社
    関西電力株式会社
    中国電力株式会社
    四国電力株式会社
    九州電力株式会社
    沖縄電力株式会社(小売部門)

・個人情報保護委員会(個情委)は、エネ庁サイトへの不正閲覧のほか、大手電力の小売部門が送配電部門への不正閲覧(→◆087◆)をくりかえしていた件でも、行政指導を行った。

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[1] エネ庁サイトの再エネ業者情報を不正閲覧
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・大手電力では、子会社の送配電会社への不正閲覧(◆087◆)のほか、資源エネルギー庁の管理する再生可能エネルギー事業者の情報を不正に閲覧していたとの報道もある(2023/2/17)。送配電会社の社員は閲覧できるが、親会社の社員は不可のところ、大手電力全10社にわたり不正閲覧があったという。再エネ発電業者の氏名や住所、電話番号、電気の買い取り価格などの情報が漏れていた。関西電力では、社員2人が関電の子会社・関西電力送配電が持つIDとパスワードを使って、資源エネルギー庁が管理・運営する「再エネ業務管理システム」のサイトにアクセスし、情報を閲覧していたという。

・関電の場合、資源エネルギー庁サイトの不正閲覧問題は、分社化前に社員からIDとパスワードを不正入手していた。閲覧していたのは2人だけだったものの、他にも20人の関電社員・委託先社員が閲覧の事実を把握していて、そのうち13人の関電社員は当該の社員2人に閲覧を依頼していた。「再エネ業務管理システム」は、本来は送配電事業者しかアカウントが付与されず閲覧できない。今回は当該社員2人のうち1人が、関西電力から関西電力送配電が分社化される前に、送配電部門の社員からIDとパスワードを教えてもらっていた。不正な閲覧が大規模かつ長期にわたり続けられていた実態が次々と明らかになっている。

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◆報告とお礼~6/7、6/16に高浜町と舞鶴市に申し入れ

【2023年6月23日。京都キンカンほかで配付】
【PDF(チラシ)→tirasi2023-06-22[2 MB]

報告とお礼

高浜町長に「老朽原発再稼働同意」の撤回を、
舞鶴市長に「老朽原発再稼働容認」の撤回を求めました

 岸田政権は、先の通常国会で、原発運転期間に関する法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました(5月31日)。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。

 岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。岸田政権の「原発依存社会」への暴走を許してはなりません。

 一方、岸田政権の尖兵として、老朽原発の再稼働を目論む関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが判明し、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。

 その関電は、運転開始後38年になり、MOX 燃料を使用し、トラブルが続出している高浜3、4号機の60年運転まで目論み、4月25日、原子力規制委員会に20年の運転延長を申請しています。

 傲慢この上ない関電は約束違反と欺瞞も繰り返しています。例えば、関電は、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言しながら、約束を全て反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。1昨年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発を停止する」としていますが、未だに候補地を見出していません。関電は苦肉の策として、使用済みMOX燃料の一部を、電気事業連合会が行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出すから「約束は果たした」としていますが(6月12日)、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料のわずか6%で、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。「小手先」の策を弄した詭弁としか言いようがありません。

 現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブル、不祥事、約束違反が頻発し、人々を欺かなければならなくなり、そこに闇の部分が発生するのです。

6月7日、16日、高浜町長に「老朽原発再稼働同意」の撤回、
舞鶴市長に 「老朽原発再稼働容認」の撤回を求め、
町内、市内デモ、チラシの各戸配布を実施。
両日とも約50人参加

 関電が画策する老朽原発・高浜1、2号機の再稼働について、立地自治体・高浜町の野瀬豊町長は、2021年2月、再稼働同意を表明しました、また、高浜原発に隣接し、同原発から5 kmの圏内に一部が含まれ、全域が30 km圏内に含まれる舞鶴市の多々見良三前市長は、2021年4月に、老朽原発の再稼働容認を経産省に伝えています。

 しかし、これらの再稼働同意、再稼働容認の後にも、老朽原発再稼働を目論む関電は、原発トラブル、不祥事、約束違反を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを考えあわせたとき、高浜町長、舞鶴市長は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意や再稼働容認を取り消し、原発との決別を宣言すべきです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発稼働に同意権を持つ原発立地自治体の首長や議会の動向は、立地自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 このような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とする高浜町長、舞鶴市長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意や再稼働容認を取り消し、原発との決別を宣言し、「原発に依存しない新しいまちづくり」を進めるよう申し入れました。また、高浜町内、舞鶴市内でデモ行進を行い「老朽原発うごかすな!」を訴えました。さらに、高浜町で約2500枚、舞鶴市東部(高浜原発に近い地域)で約4000枚の「運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・高浜1、2号機の再稼働は超危険!」と題するチラシを各戸配布しました。なお、高浜町での行動は、6月7日に、舞鶴市での行動は6月16日に行いましたが、各々約50人のご参加を頂きました。

これらの行動にご参加、ご支援 いただきました皆様、
有難うございました

2023年6月22日

老朽原発うごかすな!実行委員会 連絡先090-1965-7102(木原)

▼福井 NEWS WEB NHK 福井放送局 トップ 福井の深掘り記事
 反原発団体が高浜原発1・2号機再稼働反対を高浜町に申し入れ

 6月7日
 関西電力が再稼働に向けた準備を進めている高浜原子力発電所の1号機と2号機について、反原発の活動を行っているグループは、7日、高浜町に対し、再稼働へ反対する申し入れをおこないました。
 申し入れをおこなったのは、主に京都府などの関西圏や、福井県の住民でつくる団体です。
 7日午後、高浜町役場前に約50人が集まり、「老朽原発動かすな」などと書かれたのぼりや横断幕を掲げ、シュプレヒコールをあげました。
 このあとメンバーの代表が役場に向かい、美浜原発3号機に次いで40年を超えた運転を目指す高浜原発1、2号機について、町が行った再稼働への同意の取り消しなどを求める申し入れ書を、町の職員に手渡しました。
 申し入れをおこなった団体の木原壯林さんは「高浜町長が再稼働に同意して以降も、関西電力では施設のトラブルや不祥事が多発している。高浜町を含め全国で、原発に頼らない再生可能エネルギーを活用していって欲しい」と話していました。

▼2023年6月8日 中日新聞

▼2023年6月8日 毎日新聞(京都丹後版)

▼2023年6月9日 毎日新聞(福井版)

▼2023年6月17日 京都新聞

▼2023年6月17日 しんぶん赤旗

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「老朽原発うごかすな!」運動を起死回生させる
12.3「とめよう! 原発依存社会への暴走1万人集会」を
成功させよう!

 老朽原発うごかすな!実行委員は、下記の [1][4] の理由により、1万人の結集を目指す大集会を12月3日に大阪で開催することを決定しました。

 皆様のご賛同、ご支援、ご参加をお願いします。

[1] 5月8日に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類から5類に変更され、今まで、集会への参加を組織として呼びかけることを躊躇していた団体などが、その制約から解放された。したがって、「老朽原発うごかすな!実行委員会」の当初の目標「関西で、関電や政府を震え上がらせるほどの大結集を得る」行動を、時間をかけて準備する好機である。

[2] 関電は、1昨年2月に福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を本年末までに探す」と約束していた。しかし、未だに候補地のあてはないから、老朽原発の停止を実行させる。ただし、関電6月12日に、フランスにほんの一部の使用済み核燃料を移送するから約束を果たしたとしたが、全くの欺瞞である。何としても「全ての使用済み核燃料の貯蔵地を探せなければ、約束違反である」ことを認めさせ、老朽原発廃炉を実現しなければならない。

[3] 原発推進関連法案は、5月31日、第211回通常国会で成立したが、実行するには、関連の法体系の整備が必要である。また、法をどのように解釈・運用するかは反原発の行動との攻防によって決まる。「原発推進法案」が成立しても、実行させない、目に見え、耳に聞こえる闘いを前進させなければならない。

[4] 近いうちに衆院選の可能性がある。大きな運動を提起して、「原発全廃」を衆院選の争点にしなくてはならない。

 今秋から今冬にかけての「老朽原発うごかすな!」の闘いは、岸田政権の「原発依存社会」への暴走を許すか、「原発のない社会」を実現するかのカギを握ります。
 「原発推進法案」が成立しても、実行させない、目に見え、耳に聞こえる闘いを前進させましょう!

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◆6.16 舞鶴現地行動、市内配布チラシ

【2023年6月16日。舞鶴市内で配付】
【PDF→ tirasi2023-06-16[911 KB]

運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・
高浜1、2号機の再稼働は超危険!
舞鶴市長に「再稼働容認」の撤回を求めましょう!

稼働中の高浜3、4号機では、運転開始後
40年未満にも拘わらず、トラブル多発!

 現在稼働中の高浜原発3、4号機は、運転開始後38年を超えた原発です。かつて(5月31日まで)の法律では「原発の運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の運転延長を1回だけ認める」としていましたから、これに従えば、もうすぐ運転可能期間が終了します。そこで関西電力(関電)は、4月25日、これらの原発の20年運転延長を原子力規制委員会(規制委)に申請しました。

 しかし、高浜3、4号機では、トラブルが多発しています。下の表には、高浜原発3、4号機で過去3年半の間に報道されたトラブルの代表例がまとめてあります。規制委は、本年4月25日開催の定例会合で、「高浜原発3号機の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいる」として、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求めています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷が頻発していることです。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。

 また、1月30日に高浜4号機で発生したトラブルも深刻です。原子炉内の中性子が急減する信号が出て自動停止したのです。原因は「過去に経験したことのない制御棒関係の異常」と発表されましたが、制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。高浜4号機は稼働から38年になる原発ですが、関電は、同じく38年になる高浜3号機と共に、40年を超える運転の認可を規制委に申請するために、「特別点検」を実施しましたが、その直後に、このトラブルです。「特別点検」を実施したからと言って、トラブルは避けることはできません。

 なお、髙浜3、4号機の核燃料の一部は、事故を起こしやすいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)です。MOX燃料は破損しやすく、使用済み核燃料になったとき、放射線量や発熱量が多く、通常の使用済みウラン燃料に比べて、4倍以上もの長期保管を要します。

不祥事、約束違反を頻発させ、企業倫理が欠落した関電が原発を運転

 若狭で原発を運転し、老朽原発の運転まで目論む関電では、不正が次から次へと発覚しています。「法令を守る意識や企業倫理を大切にする精神(コンプライアンス)」が崩壊しています。

 そんな企業が万が一にも重大事故を起こしてはならない原発を動かし、重大事故に至りかねないトラブルを多発させています。

関電の法令違反、不祥事

(1)関電役員が金品を不正受領、減額していた役員報酬や所得税追徴分の不正還流

…2019年発覚。関西電力の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していました。また、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた役員報酬について、退任した元役員18人に、嘱託報酬として計2億5900万円を不正還流していました。さらに、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填も発覚しています。

(2)関電、原発推進の高浜町議に、不当に高額な土砂処分発注や土地、倉庫賃貸料支払い

…関電のコンプライアンス委員会が4月に3件の不正取引を公表。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注したり、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払ったりして、合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(3)不正資格取得

…2021年発覚。関電グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していました。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(4)電力販売でカルテル締結

…2021年発覚。2018年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、カルテル(独占禁止法違反)を結んでいたとして、公正取引委員会が中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じました。ところが、主導者である関電は、調査が始まる前に違反行為を自主申告したため、課徴金を免れています。

(5)顧客名簿不正閲覧

…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていました。閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していました。送配電分離という電力システム改革を否定する違法行為です。

(6)関西電力送配電の社員が記録捏造し虚偽報告

…2023年発覚。関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定について、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(7)使用済み核燃料の中間貯蔵地探しに関わる約束違反

…関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束を反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰返してきたのです(後述参照)。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、人々を欺かなければならなくなり、このよう
な事態が発生するのです。

関電が再稼働を画策する高浜1、2号機はさらに危険

高浜1、2号機、火災防護対策不備で再稼働延期

 関電は、原発依存社会へ暴走を始めた岸田内閣の尖兵として、運転開始後48年超えの高浜原発1号機、47年超えの高浜原発2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。火災防護対策が必要なケーブルの長さは、高浜1号機では約2200m、高浜2号機では約2300mです。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰(ずさん)なのか?今回の不備は氷山の一角かもしれません。

 なお、6月1日には、高浜1号機で、火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していたことも発覚しています。

関電の全原発で、ケーブルの火災防護対策が不備!

 ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。対策工事に数年かかるから、関電は対策をせず、規制委もこれを黙認しています。これが岸田政権の宣伝する「世界最高水準の厳しい原子力規制」の実態です。

原発圧力容器の脆化(ぜいか)が最も深刻な原発は高浜1号機

 原発の圧力容器は鋼鉄でできていますが、鋼鉄は常温ではある程度の柔らかさを持っています。しかし、温度を下げていくと、ある温度[脆化温度と呼ぶ:脆化とは「脆く(もろく)なること」]以下で、ガラスのように硬く脆くなります。新しい圧力容器の脆化温度はマイナス16℃程度ですから、水で冷やしても脆化しません。しかし、原子炉の運転によって、圧力容器が中性子にさらされ続けますと、脆化温度が上昇します。例えば、原発を40年以上運転し続けると、脆化温度がプラス100℃になることがあります。このような原発で運転中(約320℃)にトラブルが発生し、炉内温度が上昇した場合、原子炉を急冷しなければなりません。このとき、圧力容器が脆化温度(+100℃)以下に急冷されると、ょうど温めておいたグラスを氷水で急冷したときのように、圧力容器は破壊されます。そうなると、原発は過酷事故に至ります。

 今、日本で脆化温度が最も高くなっている原発は、高浜1号機(運転開始後48年超え)で、99℃と言われています。99℃以下に急冷されると圧力容器(原子炉本体)が割れてしまう可能性があります。この他の原発の脆化温度は、高浜2号機(運転開始後47年超え)で40℃、高浜4号機(運転開始後37年超え:稼働中)で59℃、美浜3号機(運転開始後46年超え:稼働中)で57℃です。

原発過酷事故が起こったとき、被曝なしの避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、現行の「避難訓練」では、原発事故では住民全員が、何年も何十年もあるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。

 「避難計画」は、住民の大量被ばくを前提にしています。例えば、原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、やっと避難を始めることになっています。

 一斉避難は不可能であるから、原発周辺住民の大半は「大量被ばくするまで待て」としているのです。

使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらない

 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。

 2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、未だに候補地を見出すことはできていません。

 関電は、苦肉の策として、去る6月12日に、使用済みMOX燃料の一部を、電気事業連合会がフランスと行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出すから「約束は果たした」としていますが、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料のわずか6%以下に過ぎず、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。「小手先」の策を弄して、人々をあざむいているとしか言いようがありません。

電気は足りています

 政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。

 一時的に電力がひっ迫しても、節電によって乗り切れます。このことは昨年3月の地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、昨夏の猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

 昨年3月22日、東北、東京エリアで、地震による発電所の停止と寒波の到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。このひっ迫を乗り切れたのは、当日8〜23時の時間帯で約4000万kW時、また、需要の大きな17時台の1時間に約500万kWの節電が実行されたためです。原発5基分(1基100万kWとして)ものの節電が可能であることが実証されたのです。。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、負の遺産・使用済み核燃料を残す原発の推進にNOを!

失政のつけが、「原発依存社会」への暴走、老朽原発運転

 岸田政権は、今、老朽原発運転をはじめとする原発の推進に躍起です、この「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。「失政のつけ」が回ってきたのです。もし、原発に費やされた税金や電気料金が、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回されていれば、原発不要の社会ができたはずです。

 このことを福島原発事故直後に認識したドイツは、脱原発を進め、再生可能エネルギーの割合を2割から5割に増加させ、去る4月15日に脱原発を達成しています。一方、福島原発事故の当事国・日本は、原発維持に固執したため、再生可能エネルギーの割合は1割から2割に増加させたに過ぎません。福島事故後のエネルギー政策の失敗の結果、脱原発の流れに乗り遅れたのです。岸田政権や関電はその失敗を取り繕うために、さらに大きな過ち「原発依存社会」に向かって暴走しています。「原発過酷事故」に突き進んでいるのかも知れません。

 日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。先見の明がある政権であったなら、今頃、核燃料、化石燃料の必要のない社会を実現し、世界をリードできたでしょう。

 若狭でいち早く脱原発にかじを切っていたら、若狭や舞鶴市に新しい産業や雇用が生まれていたかもしれません。原発からの脱却を進めて新しい社会を目指しましょう!

舞鶴市長、舞鶴市議会に「老朽原発再稼働容認」の撤回を求めましょう!

 舞鶴市議会は2020年12月に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を決議し、2021年4月には、当時の多々見良三市長がこれらの原発の再稼働容認を経産省に伝えています。

 しかし、これらの容認表明後にも、老朽原発の再稼働を目論(もくろ)む関電は、本チラシで述べたような原発トラブル、不祥事を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを鑑みるとき、舞鶴市長および舞鶴市議会は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を撤回し、原発との決別を宣言すべきです。

 舞鶴市長、舞鶴市議会に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を取り消し、政府および関電に原発との決別を要請し、「原発過酷事故の不安のない社会」を目指した市政を求めましょう!

2023年6月16日
老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先:090-1965-7102木原)

◆6.16 舞鶴現地行動で市長へ申し入れ

【2023年6月16日。舞鶴市への申し入れ】
【PDF→ mousiire2023-06-16[258 KB] 】

2023年6月16日

舞鶴市長 鴨田 秋津 様

老朽原発うごかすな!実行委員会*別紙注1

申し入れ書

 原発は、現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後12年を超えた福島原発事故が、大きな犠牲の上に教えています。一方、ウクライナ紛争では、戦争になれば、原発は攻撃目標となることが実証されました。このように、原発は人の命と尊厳を脅かします。

 その原発が、運転開始後40年を超え、老朽化すれば、過酷事故の危険度が急増することは、多くが指摘するところです。それは、高温、高圧の下で高放射線(とくに中性子)にさらされた原子炉本体・圧力容器の脆化や配管の腐食、減肉などが進むからです。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた圧力容器などです。

 それでも、政府や電力会社は、ウクライナ紛争に因るエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、老朽原発の運転に躍起です。

 岸田政権は、本年の第211回通常国会で、福島原発事故の教訓から「原発運転期間は原則40年、最長でも60年」とした法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません。最も老朽な原発でも、運転期間は53年です。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。
なお、岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。

 そもそも、岸田政権の「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。もし、先見の明がある政権であったなら、原発に費やされた膨大な税金や電気料金を、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回し、今頃、核燃料、化石燃料など必要のない社会を実現し、世界をリードしていたでしょう。

 ところで、舞鶴市議会は2020年12月に、運転開始後48年、47年を超えた(2023年6月現在)老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を決議し、2021年4月には、当時の多々見良三市長がこれらの原発の再稼働容認を経産省資源エネルギー庁に伝えています

 しかし、老朽原発の再稼働を目論む関電は、これらの再稼働容認表明後にも、稼働中の高浜原発3、4号機で、別紙(注2)の表に示したようなトラブルを続発させています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷の頻発です。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。また、1月30日に高浜4号機で制御棒が急挿入され、自動停止したトラブルも深刻です。制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。

 一方、関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰なのか? 不備はこれ以外にも、多数あると思われます。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。

 さらに、関電は、以下のように、不祥事を繰り返しています。

(1) 2019 年に、関電の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していたこと、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた元役員18人の報酬について、退任後に計2億5900万円を不正還流していたこと、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填をしていたことが発覚しました。この不祥事を調査した関電のコンプライアンス委員会は、本年4月に3件の不正取引を公表しました。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注し、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払っていました。合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(2) 2021 年には、関電グループ全体で社員180 人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していたことが発覚しています。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(3) 2021 年には、電力販売でカルテルを締結していたことも発覚しています。2018 年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、独占禁止法違反のカルテルを結んでいました。公正取引委員会は、中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じましたが、主導者である関電は、調査前に違反行為を自主申告し、課徴金を免れています。

(4) 昨2022 年には、関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていたことが発覚しました。電力システム改革を否定する違法行為です。

(5) 今年になって、関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定に関して、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(6) 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、未だに候補地の見通しは示されていません。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブルが頻発し、人々を欺かなければならなくなるのです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。とくに、舞鶴市は高浜原発から 5 km 圏の予防防護措置地域(PAZ)を含み、約8万人が生活する市全域が 30 km 圏の緊急防護措置地域(UPZ)ですから、高浜町以上の深刻な被害を被る可能性があります。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発立地自治体や原発に近接する自治体の首長や議会の動向は、当該自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 以上のような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」に結集する私たちは、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とされる舞鶴市長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を取り消し、政府および関電に原発との決別を要請し、「原発過酷事故の不安のない社会」に向かって市政を進められるよう申し入れます。

別紙

注1 「老朽原発うごかすな!実行委員会」について
(連絡先;事務担当・木原壯林 住所;〒607-8466 京都市山科区上花山桜谷40-5
電話 090-1965-7102 E-メール kiharas-chem@zeus.eonet.ne.jp)
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、全国の団体231と個人854名の賛同を得て、2020年1月18日に結成された「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」を、2020年9月20日に改称して結成された団体です。以来、関西、若狭を中心に、各地で「老朽原発うごかすな!」を訴える活動を行っています。現在までに、下記のような集会(集会後にデモ行進)を実行しています。また、若狭の集落から集落をめぐって「原発うごかすな!」を訴えながらチラシを各戸配布する行動(通称アメーバデモ)、一人ひとりが数十メートルの間隔をとって、旗指物、拡声器で「原発反対」を訴えて歩く行動(通称ヒトリデモ:関西各地、若狭で実施)、自動車による街宣、「老朽原発うごかすな!ニュース」の発行などを行っています。

●「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.9.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1600人参加
●「老朽原発うごかすな!実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.11.23~12.9 関電本店~美浜原発200 kmリレーデモ 延べ約1000人参加
2021.1.24 「関電よ 老朽原発うごかすな!大集会」関電本店前 350人参加
2021.3.20 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 400人参加
2021.6.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1300人参加
2021.6.23 「美浜3号再稼働阻止現地集会」 美浜原発前、原子力事業本部前 350人参加
2022.5.29 「原発のない明日を-老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」うつぼ公園 2100人参加
2022.7.24 「老朽原発・美浜3号うごかすな!現地全国集会」 美浜町弁天崎、
原子力事業本部前 300人参加
2022.12.4 「老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」 関電本店前 900人参加
2023.3.21~4.2 関電本店~高浜原発230 kmリレーデモ 延べ約900人参加
2023.4.29 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 320人参加

注2 高浜町長が、高浜原発1、2号機の再稼働に同意した後(2021年2月1日~)に
高浜原発3、4号機で発生したトラブル


◆6.7 高浜現地行動、町内配布チラシ

【2023年6月7日。舞鶴市内で配付】
【PDF→ tirasi2023-06-07[906 KB]

運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・
高浜1、2号機の再稼働は超危険!
高浜町長に「再稼働同意」の取り消しを求めましょう!

稼働中の高浜3、4号機では、運転開始後
40年未満にも拘わらず、トラブル多発!

 現在稼働中の高浜原発3、4号機は、運転開始後38年を超えた原発です。かつて(5月31日まで)の法律では「原発の運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の運転延長を1回だけ認める」としていましたから、これに従えば、もうすぐ運転可能期間が終了します。そこで関西電力(関電)は、4月25日、これらの原発の20年運転延長を原子力規制委員会(規制委)に申請しました。

 しかし、高浜3、4号機では、トラブルが多発しています。下の表には、高浜原発3、4号機で過去3年半の間に報道されたトラブルの代表例がまとめてあります。規制委は、本年4月25日開催の定例会合で、「高浜原発3号機の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいる」として、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求めています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷が頻発していることです。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。

 また、1月30日に高浜4号機で発生したトラブルも深刻です。原子炉内の中性子が急減する信号が出て自動停止したのです。原因は「過去に経験したことのない制御棒関係の異常」と発表されましたが、制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。高浜4号機は稼働から38年になる原発ですが、関電は、同じく38年になる高浜3号機と共に、40年を超える運転の認可を規制委に申請するために、「特別点検」を実施しましたが、その直後に、このトラブルです。「特別点検」を実施したからと言って、トラブルは避けることはできません。

 なお、髙浜3、4号機の核燃料の一部は、事故を起こしやすいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)です。MOX燃料は破損しやすく、使用済み核燃料になったとき、放射線量や発熱量が多く、通常の使用済みウラン燃料に比べて、4倍以上もの長期保管を要します。

不祥事、約束違反を頻発させ、企業倫理が欠落した関電が原発を運転

 若狭で原発を運転し、老朽原発の運転まで目論む関電では、不正が次から次へと発覚しています。「法令を守る意識や企業倫理を大切にする精神(コンプライアンス)」が崩壊しています。

 そんな企業が万が一にも重大事故を起こしてはならない原発を動かし、重大事故に至りかねないトラブルを多発させています。

関電の法令違反、不祥事

(1)関電役員が金品を不正受領、減額していた役員報酬や所得税追徴分の不正還流

…2019年発覚。関西電力の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していました。また、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた役員報酬について、退任した元役員18人に、嘱託報酬として計2億5900万円を不正還流していました。さらに、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填も発覚しています。

(2)関電、原発推進の高浜町議に、不当に高額な土砂処分発注や土地、倉庫賃貸料支払い

…関電のコンプライアンス委員会が4月に3件の不正取引を公表。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注したり、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払ったりして、合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(3)不正資格取得

…2021年発覚。関電グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していました。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(4)電力販売でカルテル締結

…2021年発覚。2018年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、カルテル(独占禁止法違反)を結んでいたとして、公正取引委員会が中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じました。ところが、主導者である関電は、調査が始まる前に違反行為を自主申告したため、課徴金を免れています。

(5)顧客名簿不正閲覧

…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていました。閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していました。送配電分離という電力システム改革を否定する違法行為です。

(6)関西電力送配電の社員が記録捏造し虚偽報告

…2023年発覚。関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定について、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(7)使用済み核燃料の中間貯蔵地探しに関わる約束違反

…関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束を反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰返してきたのです(後述参照)。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、人々を欺かなければならなくなり、このよう
な事態が発生するのです。

関電が再稼働を画策する高浜1、2号機はさらに危険

高浜1、2号機、火災防護対策不備で再稼働延期

 関電は、原発依存社会へ暴走を始めた岸田内閣の尖兵として、運転開始後48年超えの高浜原発1号機、47年超えの高浜原発2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。火災防護対策が必要なケーブルの長さは、高浜1号機では約2200m、高浜2号機では約2300mです。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰(ずさん)なのか?今回の不備は氷山の一角かもしれません。

 なお、6月1日には、高浜1号機で、火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していたことも発覚しています。

関電の全原発で、ケーブルの火災防護対策が不備!

 ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。対策工事に数年かかるから、関電は対策をせず、規制委もこれを黙認しています。これが岸田政権の宣伝する「世界最高水準の厳しい原子力規制」の実態です。

原発圧力容器の脆化(ぜいか)が最も深刻な原発は高浜1号機

 原発の圧力容器は鋼鉄でできていますが、鋼鉄は常温ではある程度の柔らかさを持っています。しかし、温度を下げていくと、ある温度[脆化温度と呼ぶ:脆化とは「脆く(もろく)なること」]以下で、ガラスのように硬く脆くなります。新しい圧力容器の脆化温度はマイナス16℃程度ですから、水で冷やしても脆化しません。しかし、原子炉の運転によって、圧力容器が中性子にさらされ続けますと、脆化温度が上昇します。例えば、原発を40年以上運転し続けると、脆化温度がプラス100℃になることがあります。このような原発で運転中(約320℃)にトラブルが発生し、炉内温度が上昇した場合、原子炉を急冷しなければなりません。このとき、圧力容器が脆化温度(+100℃)以下に急冷されると、ょうど温めておいたグラスを氷水で急冷したときのように、圧力容器は破壊されます。そうなると、原発は過酷事故に至ります。

 今、日本で脆化温度が最も高くなっている原発は、高浜1号機(運転開始後48年超え)で、99℃と言われています。99℃以下に急冷されると圧力容器(原子炉本体)が割れてしまう可能性があります。この他の原発の脆化温度は、高浜2号機(運転開始後47年超え)で40℃、高浜4号機(運転開始後37年超え:稼働中)で59℃、美浜3号機(運転開始後46年超え:稼働中)で57℃です。

原発過酷事故が起こったとき、被曝なしの避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、現行の「避難訓練」では、原発事故では住民全員が、何年も何十年もあるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。

 「避難計画」は、住民の大量被ばくを前提にしています。例えば、原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、やっと避難を始めることになっています。

 一斉避難は不可能であるから、原発周辺住民の大半は「大量被ばくするまで待て」としているのです。

使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらない

 原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまります。

 関電は2017年、「若狭の原発でできた使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を、2018年末までに福井県外に探す」と明言しました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束して原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。さらに関電は、再約束の期限もホゴにし、一昨年2月12日には、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発を停止する」として、福井県に老朽原発再稼働への同意を求めました。これを受けて、杉本知事は、それまでの「中間貯蔵地を示すことが再稼働議論の前提」とした発言を一転させ、再稼働同意を表明しました。なお、関電が「2023年末を期限」とした拠
り所は、青森県むつ市の中間貯蔵施設の利用の可能性ですが、宮下むつ市長(当時)はこれを否定し、猛反発しています。

電気は足りています

 政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。

 一時的に電力がひっ迫しても、節電によって乗り切れます。このことは昨年3月の地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、昨夏の猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

 昨年3月22日、東北、東京エリアで、地震による発電所の停止と寒波の到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。このひっ迫を乗り切れたのは、当日8〜23時の時間帯で約4000万kW時、また、需要の大きな17時台の1時間に約500万kWの節電が実行されたためです。原発5基分(1基100万kWとして)ものの節電が可能であることが実証されたのです。。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、負の遺産・使用済み核燃料を残す原発の推進にNOを!

失政のつけが、「原発依存社会」への暴走、老朽原発運転

 岸田政権は、今、老朽原発運転をはじめとする原発の推進に躍起です、この「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。「失政のつけ」が回ってきたのです。もし、原発に費やされた税金や電気料金が、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回されていれば、原発不要の社会ができたはずです。

 このことを福島原発事故直後に認識したドイツは、脱原発を進め、再生可能エネルギーの割合を2割から5割に増加させ、去る4月15日に脱原発を達成しています。一方、福島原発事故の当事国・日本は、原発維持に固執したため、再生可能エネルギーの割合は1割から2割に増加させたに過ぎません。福島事故後のエネルギー政策の失敗の結果、脱原発の流れに乗り遅れたのです。岸田政権や関電はその失敗を取り繕うために、さらに大きな過ち「原発依存社会」に向かって暴走しています。「原発過酷事故」に突き進んでいるのかも知れません。

 日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。先見の明がある政権であったなら、今頃、核燃料、化石燃料の必要のない社会を実現し、世界をリードできたでしょう。

 高浜町でもいち早く脱原発にかじを切っていたら、原発以外の産業や雇用が生まれていたかもしれません。原発からの脱却を進めて新しい若狭を目指しましょう!

高浜町長に「老朽原発再稼働」同意の撤回を求めましょう!

 高浜町の野瀬豊町長は、2021年2月1日、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働に同意しました。

 しかし、この同意後にも、これらの老朽原発の再稼働を目論(もくろ)む関電は、本チラシで述べたような原発トラブル、不祥事を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを鑑みるとき、高浜町長は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意を取り消し、原発との決別を宣言すべきです。

 高浜町長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意の撤回と、「原発のない安心・安全なまちづくり」を求めましょう!

2023年6月7日
老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先:090-1965-7102木原)

◆6.7 高浜現地行動で町長へ申し入れ

【2023年6月7日。高浜町への申し入れ】
【PDF→ mousiire2023-06-07[248 KB]

2023年6月7日

高浜町長 野瀬 豊 様

老朽原発うごかすな!実行委員会*別紙注1

申し入れ書

 原発は、現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後12年を超えた福島原発事故が、大きな犠牲の上に教えています。一方、ウクライナ紛争では、戦争になれば、原発は攻撃目標となることが実証されました。このように、原発は人の命と尊厳を脅かします。

 その原発が、運転開始後40年を超え、老朽化すれば、過酷事故の危険度が急増することは、多くが指摘するところです。それは、高温、高圧の下で高放射線(とくに中性子)にさらされた原子炉本体・圧力容器の脆化や配管の腐食、減肉などが進むからです。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた圧力容器などです。

 それでも、政府や電力会社などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争に因るエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、老朽原発の運転に躍起です。

 岸田政権は、第211回通常国会で、福島原発事故の教訓から「原発運転期間は原則40年、最長でも60年」とした法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません、最も老朽な原発でも、運転期間は53年です。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。

 なお、岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。

 そもそも、岸田政権の「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。もし、先見の明がある政権であったなら、原発に費やされた膨大な税金や電気料金を、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回し、今頃、核燃料、化石燃料など必要のない社会を実現し、世界をリードしていたでしょう。

 高浜町でも、いち早く脱原発に舵を切っていたら、原発以外の産業や雇用が生まれていたかも知れません。

 ところで、貴殿は2021年2月1日、高浜町長として、運転開始後48年、47年を超えた(2023年6月現在)老朽原発・高浜1、2号機の再稼働に同意しました。

 しかし、これらの原発の再稼働を目論む関電は、この同意後にも、稼働中の高浜原発3、4号機で、別紙(注2)の表に示したようなトラブルを続発させています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷が頻発していることです。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。また、1月30日に高浜4号機で制御棒が急挿入され、自動停止したトラブルも深刻です。制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。

 一方、関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰なのか? 不備はこれ以外にも、多数あると思われます。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。対策工事に数年かかるから、関電は対策をせず、規制委もこれを黙認しています。これが岸田政権の宣伝する「世界最高水準に厳しい原子力規制」の実態です。

 さらに、関電は、以下のように、不祥事を繰り返しています。

(1) 2019年に、関電の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していたこと、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた役員報酬について、退任した元役員18人に、嘱託報酬として計2億5900万円を不正還流していたこと、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填をしていたことが発覚しました。この不祥事を調査した関電のコンプライアンス委員会は、本年4月に3件の不正取引を公表しました。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注し、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払っていました。合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(2) 2021 年には、関電グループ全体で社員180 人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していたことが発覚しています。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(3) 2021 年には、電力販売でカルテルを締結していたことも発覚しています。2018 年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、独占禁止法違反のカルテルを結んでいました。公正取引委員会は、中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じましたが、主導者である関電は、調査が始まる前に違反行為を自主申告し、課徴金を免れています。

(4) 昨2022 年には、関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていたことが発覚しました。閲覧した社員の 4 割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していました。電力システム改革を否定する違法行為です。

(5) 今年になって、関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定に関して、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(6) 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰返してきたのです。2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、いまだに候補地の見通しは示されていません。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブルが頻発し、人々を欺かなければならなくなるのです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発稼働に同意権を持つ原発立地自治体の首長や議会の動向は、立地自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 以上のような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」に結集する私たちは、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とされる高浜町長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意を取り消し、原発との決別を宣言し、「原発に依存しない新しいまちづくり」を進められるよう申し入れます。

別紙

注1 「老朽原発うごかすな!実行委員会」について
(連絡先;事務担当・木原壯林 住所;〒607-8466 京都市山科区上花山桜谷40-5
電話 090-1965-7102 E-メール kiharas-chem@zeus.eonet.ne.jp)
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、全国の団体231と個人854名の賛同を得て、2020年1月18日に結成された「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」を、2020年9月20日に改称して結成された団体です。以来、関西、若狭を中心に、各地で「老朽原発うごかすな!」を訴える活動を行っています。現在までに、下記のような集会(集会後にデモ行進)を実行しています。また、若狭の集落から集落をめぐって「原発うごかすな!」を訴えながらチラシを各戸配布する行動(通称アメーバデモ)、一人ひとりが数十メートルの間隔をとって、旗指物、拡声器で「原発反対」を訴えて歩く行動(通称ヒトリデモ:関西各地、若狭で実施)、自動車による街宣、「老朽原発うごかすな!ニュース」の発行などを行っています。

●「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.9.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1600人参加
●「老朽原発うごかすな!実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.11.23~12.9 関電本店~美浜原発200 kmリレーデモ 延べ約1000人参加
2021.1.24 「関電よ 老朽原発うごかすな!大集会」関電本店前 350人参加
2021.3.20 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 400人参加
2021.6.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1300人参加
2021.6.23 「美浜3号再稼働阻止現地集会」 美浜原発前、原子力事業本部前 350人参加
2022.5.29 「原発のない明日を-老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」うつぼ公園 2100人参加
2022.7.24 「老朽原発・美浜3号うごかすな!現地全国集会」 美浜町弁天崎、
原子力事業本部前 300人参加
2022.12.4 「老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」 関電本店前 900人参加
2023.3.21~4.2 関電本店~高浜原発230 kmリレーデモ 延べ約900人参加
2023.4.29 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 320人参加

注2 高浜町長が、高浜原発1、2号機の再稼働に同意した後(2021年2月1日~)に
高浜原発3、4号機で発生したトラブル

◆関西電力 闇歴史◆099◆

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◆関電は使用済み核燃料のごく一部をフランスに搬出すると発表!(2023/6/12)
 フランスでの実証研究は、中間貯蔵施設の県外設置と「同等」と主張!
 フランスと技術協定を結んだ経産省も、関電を支援!
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 詭弁、出まかせ、居直り、ごまかし、その場しのぎ
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【関電のこれまで約束、再確認】

関電が、福井県に2023年末と期限を切った使用済み核燃料の中間貯蔵地の県外確保の約束。
関電は、これまで
【1998年の約束】2000年までに
【2017年の約束】2018年中に
【2018年の約束】2020年末に。大飯3、4号機再稼働への西川知事の同意を取り付け
【2021年の約束】2023年末に。老朽、美浜3号機、高浜1、2号機再稼働への杉本知事の同意を取り付け。
・さらに詳しくは → ◆012◆
・期限の先送りは、むつ市の中間貯蔵施設(東電と日本原電がむつ市との協定の下に建設、23年度受け入れ開始目標)の共同利用の可能性を拠り所にしたものと考えられるが、当時の宮下むつ市長はこれを否定し、猛反発。宮下前むつ市長は、6/4に青森県知事に当選、関電の共同利用については「むつ市長時代に対応している通り」との公約。

・関電の森 現社長は、「期限の2023年末までに確定できるよう不退転の覚悟で取り組む」「23年末までに計画地点を確定できない場合、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機、高浜原発1、2号機は計画地点確定まで運転しないとする方針を引き継ぐ」と言明(2022年7月)。

【2023/6/12、関電の表明】

・関電の森望社長は、2023/6/12、福井県庁に杉本知事を訪ね、「使用済MOX燃料の再処理実証研究のために高浜原発から使用済MOX燃料(約10トン、20体)と使用済ウラン燃料(約190トン、400体)をフランスへ搬出する」と説明。「中間貯蔵と同等の意義がある」「ひとまず約束は果たされた」とした。

・杉本知事の「国内の搬出先が見つけられなかったのか」との質問に「引き続きあらゆる可能性を追求し続けることに変わりはない」と回答。

・福井県の杉本知事は2023/6/12、「内容を精査したい。立地市町や県議会などの意見も聞いて判断したい」と、回答を保留した。

・関電の公表の翌日に西村康稔経済産業相が「関電が福井県にしてきた約束を実現する上で重要な意義がある。姿勢は評価できる。」として「中間貯蔵と同等の意義がある」と関電と同じ表現のコメントを発するなどから、今回の動きには国が大きく関与していたと推定される。

【フランスへの搬出】

・今回のフランスへの搬出は実証研究のためであり、中間貯蔵地の確保とは無関係ではないか。

・この先、使用済み核燃料はどんどんフランスに送り込み続けるのか。
→今後も追加で海外搬出できる保証はない。

・関電社長の発言は「日本の使用済み核燃料の中間貯蔵地をフランスにする」と言っているようなもの、フランス国民の反発があるのでは。
→Kolin Kobayashiさん(在仏)「フランスとは、オラノOrano社のこと。フランスでは今のところ、この件に関しては、情報が出てきていません。隠したいのかもしれません。」「オラノは、アレバが再編して作られたものです。再編されるたびに社名を変えて、過去のドジを隠蔽しようとするのでしょう。」

・フランス政府、フランスの引受先、オラノ社は、引き受け続けるのか。
→2023/5/3、フランスのアニエス・パニエ=リュナシェ・エネルギー移行大臣と日本の西村康稔経済産業大臣との会談の機会に、原子力エネルギーの分野で特に日仏間の協力を深めるための共同宣言が署名された。その中で「フランスと日本はまた、核燃料サイクルに関する技術協力を加速し、共通の価値観を共有する国々の間で強固な原子力サプライチェーンを構築することの重要性を強調したい。」

・オラノ社は、MOX燃料も含めてどんどん再処理を進める能力があるのか。今回は「実証研究」ということだが、どうなることか。
→オラノ社ではラ・アーグ再処理工場に特殊燃料処理施設の建設を進めているが、稼働しているとか、実用化されたとの情報はない。

【フランスからの返還】

・フランスに搬出して処理された廃棄物やプルトニウムは、すべて、日本に戻されるのか。一部にとどまるのか。

・日本に戻ってくるとき、福井県には戻らないことになっているのか。福井県が今後そのように(福井県に戻さない約束を)主張する可能性もあり、それならば「県外に中間貯蔵地」の約束に沿った内容と言えるかもしれない。杉本知事がここまで要求するのかどうか。

・戻ってきたとき、国内での中間貯蔵地が決まっているかどうか。

・2020年代後半(2025~2029年)に搬出し、再処理は30年代初頭とのことだから、その計画通りに行ったとしても、日本に戻るのは、2030~2040年という先になる。先延ばしもいいところ。

・2030~40年頃、責任を問われるのは、自分(森 関電現社長)じゃないことは確か。

【使用済み核燃料プールは満杯まぢか】

・国内で、使用済み核燃料の中間貯蔵地探しはどうなるのか。関電は続けると言っているが、見通しはあるのか。

・関電の原発では、今後5~9年で(2028~2032年)使用済み核燃料プールが満杯になる(関電の原発プールでの使用済み燃料の貯蔵量は3680トン。管理容量に占める貯蔵率は約8割)。今回、少しだけ(5%か6%、200トン)フランスに送っても、満杯になる可能性がある。関電の原発では、今後、7基で年約130トンの使用済み核燃料が発生し、増えていく。国内に2000トンクラスの中間貯蔵施設を構想しているとされるが?

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【参考】
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(1) 使用済み核燃料プールが満杯になるのは、あと何年後?
 美浜原発…9.3年
 高浜原発…4.7年
 大飯原発…6.2年
 市川 章人 さん(京都自治体問題研究所 原子力災害研究会)による、
 2023年3月31日現在

(2) Webサイト関電のあまりにひどい詭弁を福井県は認めるな!」末田一秀さん →こちら

(3) 松本修さんから

(4) アレバ社とオラノ社~~BIG ISSUE ONLINE から(→こちら
 フランスの原子力産業アレバ社は、福島原発事故の影響から経営危機に陥り、核燃料サイクル部門をオラノ社として再編した。厳しい経営環境にあると伝えられているオラノ社を救済するための契約ではとの疑念が湧く。そのような事情が背景にあることから、関電が支払う再処理費用とMOX燃料加工費用は莫大な金額に跳ね上がるのではないか。さらに、JAEAは廃炉となった「もんじゅ」や「ふげん」の燃料をオラノ社で再処理する救済計画も進行中だ。(伴 英幸)
(2023年8月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 460号より)

◆098◆←←関西電力 闇歴史→→◆100◆

◆6/10 第11回原告団総会の報告

◆京都脱原発原告団は,「原発の再稼働を許さず,すべての原発を廃炉に」と、6月10日(土)ハートピア京都(京都市中京区)と、オンラインZoomの併用で、第11回原告団総会を開きました。Zoom併用の総会は、昨年に続いて3回目でしたが、世話人や、Zoomに明るい原告らに全面的に支援してもらい、無事に終了しました。

◆石橋克彦先生のご講演は、熱のこもったもので、90分の予定が110分ほどになりました。
正式のタイトル……日本は「原発震災」を再びまねく

節度の欠落、大自然の神様、大余震、科学者の社会的責任、自立した地域社会、脱成長などのキーワードが、今日の日本社会を厳しく批判する内容になっていたと思います。石橋先生の講演は、録画しそこないました。すみませんでした。

原告団Webサイトに、当日の配付資料、石橋先生の講演レジメなどをアップしています。講演レジメは、当日に配布したのは暫定版でしたので、翌日、先生から送っていただきました完全版を公開しています。

◆参加者数…会場に63名、Zoomで30名。計 93名。昨年とほぼ同規模。

◆カンパ額…41,599円。
多額のカンパ、ありがとうございました。

▼石橋克彦先生(左手奥)のご講演

▼弁護団からの報告。渡辺輝人弁護士

◆大飯原発差止訴訟 第37回口頭弁論
 ~循環経済より

  • 循環経済 第156号 2023年6月15日
    原 強(京都循環経済研究所)

 6月1日、京都地裁で、大飯原発の運転差止を求め、3477名の市民が原告になって訴えている訴訟(2012年11月提訴)の第37回口頭弁論がありました。傍聴席がほぼいっぱいになる、多くの原告、市民が参加しました。原告団事務局によれば、準備した資料の数からいうと99名の参加があったとのことです。私も原告席で傍聴する機会をえました。

 今回は、担当裁判官の交代という事情のもとで、これまでの原告側の主張をまとめて弁論する「弁論更新」ということで、傍聴者にとってはわかりやすいものであったといえます。

 最初に、福島県南相馬市からの避難者である原告・福島敦子さんが陳述。

 福島さんは福島原発事故で避難を余儀なくされた事情、避難所での体験、京都に避難することになった経過などをのべたうえ、最後に、つぎのように訴えました。

「裁判長、こどもを守ることに必死な、懸命な母親たちをどうか救ってください。
こどもたちに少しでも明るい未来をどうか託してあげてください。
私たち国民一人ひとりの切実な声に、どうか耳を傾けてください。
大飯原発の再稼働は、現在の日本では必要ないと断罪してください。
もう、私たち避難者のような体験をする人が万が一にも出してはいけないからです。」

 つづいて弁護団の弁護士が以下のとおり原告側の主張のおもな論点について弁論。
・地震国ニッポンで原発稼働は無理(弁護士・谷文彰)
・関電の基準地震動の問題点―地域特性について(弁護士・井関佳法)
・深層防護総論(弁護士・大島麻子)
・避難計画の問題点(弁護士・大河原壽貴)
・避難計画の非現実性・各論(弁護士・岩橋多恵)

 以上のような原告側の弁論終了後、これからの訴訟の進め方を協議。次回は、9月21日(木)午後2時30分から、被告側の関電、国が「弁論更新」を行うことになりました。
今の時期に関電、国がどんな主張を行うのか、とても注目されます。

 このあと、京都弁護士会館に移動して「報告集会」がもたれました。

 原告陳述者であった福島敦子さんがあらためて訴え。

 つづいて、原告団事務局、弁護団事務局からの報告、「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会(名古屋地裁)」からのアピールが行われました。

 国段階では原発への回帰政策がすすむなかで、脱原発にむけて、地域から市民が声を上げていくことがとても重要だと思いました。

(原 強)

◆関西電力 闇歴史◆098◆

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◆原発最優先で再エネは後回しの関電!
 関電エリアで初めての再エネ出力制御(2023/6/4)
 【付 需給バランス制約による出力制御】
 【付 関電の供給力能力は約3000万kW】

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「安い規制料金」で
 関西は関電一強
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・関電はこれから大幅黒字経営を展望している。今夏に高浜1、2号機の再稼働を予定するなど、廃炉を決めたものを除く原発7基の全稼働を見込み、LNG価格も昨年秋から下落に転じている。規制料金の値上げをしなかったことで、低圧契約では顧客を増やしている。新電力から関電に移る数が増加している。(→ こちら

・「安い規制料金」に苦々しい思いでいるのは関西の新電力。自由料金が規制料金より高い逆転現象が続いており、新規契約を中止し、撤退を余儀なくされる新電力が続出している。新電力と連携して電気料金の削減を提案する日本電気保安協会(大阪市)の平井一二三(ひふみ)社長は「関西は “関電一強” で消費者が選べなくなっている。これで自由化といえるのか。原発の電気を市場にもっと供給するなど、競争を働かせる取り組みが必要だ」という。
(産経新聞、2023/5/30)

・公正取引委員会が2024/1/17に示した報告書「電力分野における実態調査報告書~卸分野について~」(→◆102◆)では、燃料費の上昇や電力需要の急増で市場価格が暴騰した場合、大手電力の規制料金が新電力の「自由料金」より安くなっていることから、規制料金が市場にあたえる影響を分析するよう、経産省に求めた。

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 原発はフル稼働で、再エネ電気はストップ !!!(> <)!!!
 関電は大儲けで、再エネ新電力は苦境に
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・関西電力は、「ベースロード電源」とされる原発をフル運転しつつ(原発は元々、出力調整ができない)、2023/6/4には、関西電力送配電が太陽光や風力などの再生可能エネルギーの受け入れを一時的に止める「出力制御」を実施した。

【付 需給バランス制約による出力制御】
・電気の発電量がエリアの需要量を上回る場合には、
①火力発電の出力の抑制、
②揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、
③地域間連系線を活用した他エリアへの送電
を行う。
・次に、太陽光発電、風力発電の出力制御を行う。
・水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力を短時間で小刻みに調整することが技術的に難しく、一度出力を低下させるとすぐに元に戻すことができないため、最後に抑制することとされている。

・3日から休日で工場の稼働が少なく電力需要が少ない上、好天の予想で太陽光発電が伸びるとみられることによる。関西電力送配電は3日正午~午後4時、最大60万kWを他のエリアに送電した。太陽光と風力の関西の電力系統への接続済み設備量は、2023年4月末で718万kWになる。

・4日午前9時~午後1時30分に実施した出力制御は、太陽光(500kW以上)と風力の計42万~52万kW。再エネの出力制御は、関西で初めて。

・原発稼働は利益が大きい。その有無は電力会社の経営に直結する。関電の2023年3月期の実績によると、原発が1基動くことによる経常増益は大飯原発で月120億円、美浜原発と高浜原発で月85億円に上るという。

【付 関電の供給力能力は約3000万kW】
・原発…美浜3号、高浜3、4号、大飯3、4号の5基で、約500万KW稼働中。
 さらに高浜1、2号が稼働すれば、原発7基となり、650万kWになる。
・火力発電所…姫路1、2、赤穂、御坊、舞鶴、南港、堺港で約1300万KW(停止、点検中あり)
・他社融通電力…電源開発の橘湾火力140万、神鋼火力270KW、約410万kW(ロスがあり受電は多少減少する)
・再エネ発電…太陽光19万、風力6万、水力340.8万、バイオマス0.3万KWなど、約383万KW。今回の出力制御で、この関電の再エネ(太陽光、風力)25万kWについて出力制御が行われたかどうかは、不明。
・受け入れ自然エネ…400万KW
・関電の2023年のピーク時の需要は、2600万KWと推定されるが、供給能力は老朽原発再稼働が進めば、3000万kW以上となる。
・原発の割合が高まっていくので、今後、さらに再エネの出力制御の可能性がある。

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 出力制御とその課題
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・出力制御は、大手電力の地域間送電網の整備など再エネを生かす対策が進んでいないことによる。

・また、出力制御をオンライン化することによって、制御量を減らすことができる。オンライン制御なら、使用量に応じたきめ細かい対応が可能となる。しかし、オフラインでは、前日に決まった制御量を、発電業者が当日に発電所に行って人力で対応する–大雑把(>_<)
大手電力のエリアごとのオンライン化は(2022年8月末現在、太陽光)、
・九州電力…8割を超える
・北海道電力…約7割
・中部電力…4割弱
・東京電力…システムを開発中。オンライン化率すら示せていない。
・関西電力…システムを開発中で、オンライン化率すら示せていない。オンライン制御は、10月から実施予定。関電の6/4の出力制御は、オフラインで実施。

実は、6/3にも、当日になって供給過多の可能性がでてきたが、オフライン体制であるため当日の出力制御はできず、電力広域的運営推進機関による指示を得て、午後0~4時に、最大60万kW分の電力を、北陸電力送配電と東京電力パワーグリッドの両エリアに送電し、関電エリアの需給バランスを保った(広域機関の指示による「下げ代不足融通」、国内初の要請)。

出力制御などの順番は、「優先給電ルール」として決まっていて、自然変動電源(太陽光、風力)の出力制御を行ってもなお供給過多になる場合に、その後に広域機関の指示が行われることになっているが、6/3は、オンライン化の遅れのために、本来の順序を飛ばしてしまった。再エネの拡大についていけていない関電!
(朝日新聞2023/5/10、電氣新聞2023/6/6)

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 九州電力の出力制御は
 2018年度から

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・日本で最も再生可能エネルギーの普及が進む九州電力は2023年度、出力制御という形で、電力需要がない時間に作り過ぎて送電網で受け入れられない電力が最大で 7億4000万kWh に達する見込みを発表。仮に、これだけの電気を石油火力で発電すると、約200億円かかる。

・再生可能エネルギーの出力制御は、需要と供給のバランスを取りながら電力を供給することに貢献しているわけで、変動可能な電力供給として意義があり、電力網の安定化に寄与していると言える。しかし、太陽光など再生可能エネルギーが、出力変動が不可能な原発を補完する位置づけになっていて良いのか、という疑問が大きい。

・また、発電能力を一方的に制約するわけで、より経済性の高い電気(原発より安価な電気)を無駄にしていることになり、経済合理性を欠く。発電業者は、発電量が制約されることで収益が減少する可能性がある。

▼山崎久隆さん(たんぽぽ舎)の講演資料から

◆097◆←←関西電力 闇歴史→→◆099◆