投稿者「meisei」のアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆104◆

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◆被ばく労働に頼らないと動かない原発の非人間性、非倫理性を告発
 『原発ジプシー』『原子炉被曝日記』
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 「原発を動かしてはいけない 10のわけ」◆101◆)の中に、
【事故が起こらなくても】
(4) 定期点検などで労働者の被ばくが不可避。非正規労働者が多く、健康管理は不十分。
(5) 日常的に放射性物質の希ガス、トリチウム、その他の汚染物質を放出し、環境を汚染。
が挙げられていますが、これらを明らかにするルポルタージュを、2編。

 日々の被ばくという恐怖にかられながら、隠された被ばく労働の実態を告発している。労働者の健康と生命を引き換えになりたつ発電装置。結局は人海戦術、被ばく労働に頼らないと動かない原発の非人間性、非倫理性を鋭く指摘。

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◆原発ジプシー…美浜原発での二次系、一次系作業
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『原発ジプシー[増補改訂版]――被曝下請け労働者の記録』堀江邦夫 著。現代書館2011/05/31。四六判 上製、 352ページ(なお、旧単行本1979/10/26、講談社文庫1984/10/01あり)
美浜原発、福島原発、敦賀原発で原発下請労働者として働いた告発ルポルタージュ。放射能に肉体を蝕まれ「被曝者」となって吐き出される棄民労働の全て。

【目 次】(◇図解はとくに興味深いもののみ)
Ⅰ 美浜原子力発電所(1978/09/28~12/02、1~3号機が稼働)
 二次系での作業の日々

採用決定
原発労働者の過去
貝の腐臭の中で
粉塵まみれの”ネッコー”作業[p.033…高圧給水加熱器内のピン・ホール検査 ]
健康を守るために
鉄板の上をイモ虫のように[◇p.051…湿分分離加熱器での作業 ]
元漁師の青年たち
「ケガした者は、電力さんにあやまれ!」
“完全装備”
白血球が下がった“鬼軍曹”
定検を“無視”した原発の設計[◇p.075…科学技術庁のポスター「エネルギー・アレルギー」(1978年)。セミ・ヌードの女性
「わしらを差別するのか」

 いよいよ一次系へ

管理ナンバー21851639
ピンハネの実体
マンジュウの味
全面マスクの労働者
「死の影」
スイッチ押し作業
防護服やマスクは自己流で…
「計画線量」の無計画性
“出向”という名の使い捨て
“救いの神”と“死神”
赤ランプ――汚染
「早く出なければ!」
エア・マスク
破壊される海
“休職勧告”された老人
減少する発汗量
美浜原発との分かれ

Ⅱ 福島第一原子力発電所
(略)
Ⅲ 敦賀発電所
(略)

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◆原発被曝日記
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『原発被曝日記』森江信 著。技術と人間1979/11/20 。四六判 上製、252ページ(講談社文庫1989/01、樋口健二さんが解説)

 福島原発、敦賀原発、島根原発、玄海原発、東海村、大阪に事業所をおく原発関連サービス会社で、原子炉の清掃などに従事した労働者の体験ルポ。福島原発、浜岡原発、伊方原発など六つの現場で、約三年間にわたり放射能洗浄などの仕事をした日々をつづる。

興味深い図…床除染作業p.21、洗浄装備p.24、復水器断面p.28、スミヤろ紙とスミヤの取り方p.30、フィルターエレメント取り外しp.34、給水スパージャー交換工事p.201

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◆関西電力 闇歴史◆103◆

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◆大飯1、2号機の廃炉によるクリアランス金属を
 弁に加工して、大飯3、4号機で使用と発表
 放射性廃棄物で循環型社会を形成?!
(2023年7月)
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 2023/7/13の関電の発表によると、関電は今後の大飯3、4号機の定期検査において取り替える弁を、クリアランス金属にするとのこと。大飯1、2号機の燃料取替用水タンクの解体工事に伴い発生した金属を利用。大飯4号機は2023年8月、大飯3号機は2024年2月から定期検査の予定。
(→ こちら
(→ 放射性廃棄物の「クリアランス制度」◆057◆

 関電は「当社は、引き続き、原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物の低減に向けて取り組むとともに、クリアランス制度を活用し、循環型社会の形成に貢献してまいります」としている。

 しかし、「放射性廃棄物の低減」なら原発を止めるべき。一方で老朽原発まで再稼働し、放射性廃棄物を増大させているではないか。本来なら手間と費用をかけて処理すべき放射性廃棄物を、手間と費用を惜しんで簡便に済まそうというだけの話。基準を変えて放射性廃棄物の量を減らしているだけなのに、よく言うよ。

 また、「循環型社会の形成」は、放射性廃棄物を循環させることではない。再利用が進めば、基準以下とはいえ、クリアランス金属加工品が市中に出てくる。次世代にそのような生活環境を押し付けていいのか。まず、放射性廃棄物、クリアランス金属の発生を止めよ。

 このように、関電の主張する「放射性廃棄物の低減」「循環型社会の形成」って、唖然とする内容。ホント、詭弁、出まかせ、居直り、ごまかしだよね。


▲「はんげんぱつ新聞」(第546号、2023.9)

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◆関西電力 闇歴史◆102◆

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◆大手電力における「送配電の所有権分離」や「発販分離」は
 独占・寡占の問題を根本的に解決する手段…公正取引委員会が指摘

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◆その(2)◆ 公正取引委員会が「発販分離」を提言(2024年1月)
 経産省は受け入れず

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 公正取引委員会は2024/1/17、大手電力に対し発電部門と小売部門を切り離す「発販分離」を提言する報告書「電力分野における実態調査報告書~卸分野について~」を発表した。公取委は、電力小売り自由化を実施する際の2012年にも、発販分離を提言しており、今回は2回目。
こちら

 報告書では、新電力各社が、大手電力との契約において、転売禁止、供給エリア制限、供給量上限などの不利な取引条項を設定されるといった問題があると指摘。一方で、大手電力は自らの販売部門には、格安で電力を供給する「内部補助」を実施しているなど、競争市場が歪められている恐れがあると指摘した。

 また「電力大手が、正当な理由なく供給に必要な費用を著しく下回る料金で電気を自らの販売部門に小売供給して、他の新電力の事業活動を困難にさせる」事例が複数あったとして、独占禁止法上問題となるとしている。

 これらの問題について今後、是正措置をとってもなお、小売市場における公正な競争環境が確保されない場合には「発販分離」(発電と小売を切り離すこと)を行うことが考えられる、としている。

 大手電力における「送配電の所有権分離」や「発販分離」といった課題は、電力自由化の推進に弊害となる独占・寡占の問題を根本的に解決する手段として、各方面(内閣府の規制改革案など)で指摘されている。しかし、経産省や電取委(電力・ガス取引監視等委員会)は、大手電力に配慮する姿勢に終始している。


(2022年3月、公正取引委員会)(旧一電…大手電力のこと)

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◆その(1)◆ 大手電力が新電力つぶしの深刻な不正行為!
 公正取引委員会が、電取委に、差別対価と市場操作の情報を提供(2023年3月)

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【注意】この不正行為は、カルテルに関連した関西電力中部電力中国電力九州電力
いずれか、又は複数社によるもので、どの社に該当するのかは、現状(2023年6月)では不明。

 新電力の競争力を低下させる目的で大手電力が違法な策を弄している。小売部門が、見てはいけない子会社、送配電会社の顧客情報や資源エネルギー庁サイトの再エネ新電力業者情報を不正閲覧していた(◆087◆)。また、違法なカルテルを結んで、大手電力だけの利益を図っていた(◆024◆)。しかし、問題は、これだけにはとどまらない。

 カルテルの調査の中で、公取委は、さらに深刻な不正行為を指摘している。公取委の「(2023年3月30日)旧一般電気事業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について」の中で →「第3 電力・ガス取引監視等委員会に対する情報提供」→こちら

 本格的な解明はこれからだが、電力システム改革、自由化と公正な競争を真っ向から否定、阻害し、敵対する動きである。弱小新電力は、大きな打撃を受ける。発電、小売、送配電一体で行われている重大な不正行為であり、今後、巨大な大手電力の発電、小売、送配電の完全な分離が課題となるだろう。電力・ガス取引監視等委員会が、きちんと調査して、問題点を明らかにできれば良いのだが。
(東洋経済オンライン、2023/4/6配信 → こちら )

(1) 差別対価…公取委によれば、大手電力は自社の販売部門や販売子会社に、新電力会社に対してよりも安い価格で電力を販売していた。これは、安値販売は独禁法で禁止されている「差別対価」に該当する可能性がある。差別対価とは、独占禁止法第2条第9項第2号において「不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と規定されている。
 2023年には、北海道電力や東北電力が、内外無差別(自社小売部門向けと、他社=新電力向けとの価格差をなくすこと)のシステムを構築している(→◆087◆【付 電力システム改革】内外無差別と常時BU)。

【注意】「取引先によって価格差が存在すること」自体によって、直ちに違法となるわけではない。意図的な自己の「競争者の事業活動を困難にさせる行為」や「取引先の相手方を競争上著しく有利又は不利にさせる」おそれがあるなどの手段として用いられる場合には、「不公正な取引方法」に該当し違法となる可能性がある。

(2) 市場操作…大手電力の中には、卸電力市場への電力の供給量を絞り込むことで価格を引き上げ、外部からの調達に依存する新電力の競争力低下を企てていた例があったという。発電部門と小売部門が一体の大手電力では、こうしたことが起こる可能性が高い。

【市場操作】電力カルテルをめぐって、関西電力に出された業務改善命令(→◆024◆[14])の中で、とくに注目される以下の部分は「市場操作」を示すのではないか。
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2017年10月に行った経営層が参加する会議に配布された資料において、「各社が(ベースも含めた)供給力の絞込みを行い、需給構造の適正化、ひいては市場価格の適正化を実現することが重要。」との文言が記載されており、この資料に基づく方針が承認された。
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◆関西電力 闇歴史◆101◆

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◆40年超え老朽原発の高浜原発1、2号機は、とっても危険!
 もうすぐ40年の高浜原発3、4号機でもトラブル続き!
 老朽原発うごかすな!
(2023年7月)
 【付 原発を動かしてはいけない 10のわけ】
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▲関電京都ビル前にて。2023年7月7日

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 40年超え老朽原発の高浜原発1、2号機は、
 とっても危険!

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・関西電力は、岸田内閣の原発依存社会への暴走の先陣を切って、運転開始後48年の高浜原発1号機を7/28に、47年の高浜原発2号機を9/15に運転させるとして準備をすすめています。最近、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになりましたが、お構いなしです。

◆関電の全原発で、火災防護対象ケーブルの対策がなされず!

・認可された設計工事計画(設工認)に従わずに運転継続!
・数年かかる見通しの工事を怠って、規制委も関電も事態を軽視!

・火災防護対策が必要なケーブルの長さは、高浜1号機では約2200m、高浜2号機では約2300mもあります。しかも、高所や狭隘な場所に敷設されており、認可を受けた工事計画通りにすべての電線管に「耐火シート」を施すには、数年を要するとされています。

・岸田政権の原発政策で前提とされている「厳格な原子力規制」とは、工事計画認可違反にすぐに気づけず再稼働を許し、違反に気づいても、かつ、事業者がずさんな管理運営を繰り返していても、原発を運転し続けてよいとするレベルのものでしかありません。工事計画認可通りに火災防護対策工事をしていなければ合格にはならず、稼働できないはずなのに、後から未施工がわかった場合でも原発を止めなくてもいいという、これが「世界最高水準の厳しい原子力規制」の実態です。

◆原子炉容器がもろくなる現象(中性子照射脆化=ぜいか)で、
ワーストワンは高浜1号機!

・脆化の著しい(=とくに危険な)原発は、廃炉原発6基以外では関電の原発ばかり4基!
・その4基のうち3基が40年超えの老朽原発!
・しかも、高浜1号機、2号機とも、関電による監視試験片の検査は手抜き!
・規制委は、データも受け取らず、点検もせず、まったく関電任せ!

【ワーストテンの原発】
(1) 高浜1…脆性(ぜいせい)遷移温度99℃。
(試験時期:2009)。緊急炉心冷却装置の作動などで水が注入され99℃より低温になると、鋼鉄の炉心が割れる可能性がでてくる。
(2)~(5)廃炉(玄海1、美浜2、美浜1、大飯2)
(6) 高浜4…脆性遷移温度59℃。
(試験時期:2010)。現在、稼働中。
(7) 美浜3…脆性遷移温度57℃。
(試験時期:2011)。現在、稼働中。
(8)~(9)廃炉(敦賀1、福島1)
(10) 高浜2…脆性遷移温度40℃。
(試験時期:2010)
(『原発はどのように壊れるか 金属の基本から考える』小岩昌宏・井野博満 著)

◆高浜原発の30キロ圏には、高浜町、おおい町、小浜市などのほか、京都府の舞鶴市、綾部市、宮津市なども含まれ、事故時には広範な地域の被ばくが心配されます。

・放射能汚染は、同心円状に広がるわけではないので、30キロ圏以遠も油断できません。
福島事故の場合、50キロの飯舘村が全村避難になっています。
・高浜原発1基で重大事故が起こった場合でも、国や関電では、放出される放射能をひじょうに少なく計算して、被害を小さく見せている。被ばくについては、少なくとも福島事故なみで評価し直す必要があります。
・関電や国の被ばく評価が、福島事故を無視し、あまりにも過小となっているのは、原発事故が起こっても、住民を避難させずに被ばくを強要する政策のためと思われます。

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 もうすぐ40年の高浜原発3、4号機でも
 トラブル続き!

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 現在稼働中の高浜原発3号機は38年、4号機は37年で、危険なMOX燃料を使っていますが、関電は40年超え運転を画策しています。しかし、トラブルが続発しているのが現状です。とくに不安なのが、蒸気発生器伝熱管の損傷です。破断すれば、大事故です。危険な状態は一刻も早く改善すべきです。
・4号機では、制御棒の落下で原子炉が自動停止するという重大な事故(2023/1/30)も発生しています。

▼高浜原発3、4号機のトラブル(関電プレスリリースによる)
原子力規制委員会は2023/4/25の定例会合で、高浜原発3号機の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいるとして、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求めました。

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 関西電力では
 コンプライアンス が崩壊!

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 関電は不正が多すぎてコンプライアンス(法令を守る意識や企業倫理)が崩壊しています。そんな企業が万が一にも事故を起こしてはならない原発を動かすのだから、恐ろしいこと、この上ありません。

(1) 原発マネー不正還流…2019年発覚。元高浜町助役から総額4億円近くの金品受領、減額した役員報酬の闇補填、追徴課税分の闇補填、水増し高値発注、利益供与目的の特命発注◆011◆)など最悪の幹部腐敗。

(2) 不正資格取得…2021年発覚。グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(3) カルテル…2021年発覚。2018年秋頃~関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)のカルテル(独占禁止法違反)。自首した関電は課徴金を免れたが、責任はどうなっているのでしょうか?

(4) 不正閲覧…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動にも使っていました。社内調査では、閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識。送配電分離という電力システム改革を否定する違法行為です。さらに、資源エネルギー庁の再エネ新電力情報も、不正閲覧していました。

(5) 子会社の関西電力送配電が記録捏造し虚偽報告…2023年発覚。定期電圧測定を行わず。

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【付】原発を動かしてはいけない 10のわけ
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【過酷事故が起こったら】
(1) 原発は人が制御できない。広い範囲の人々に深刻な被ばくを強いる。甲状腺がん、心臓疾患なども。
(2) 人々の生活を根底から破壊する。地域社会の崩壊、故郷喪失。
(3) 被ばくせずに避難することは困難。避難訓練は形だけのアリバイづくりで、実効性のない机上の空論。

【事故が起こらなくても】
(4) 定期点検などで労働者の被ばくが不可避。非正規労働者が多く、健康管理は不十分。
(5) 日常的に放射性物質の希ガス、トリチウム、その他の汚染物質を放出し、環境を汚染。
(6) 現在の世代が電力を消費し、使用済み核燃料、廃炉などによる廃棄物(核のゴミ)の処理を未来世代に付け回し。その期間は10万年もの、超長期。

【差別構造、民主主義、経済性】
(7) 危険な原発は交付金などの札束によって過疎地に押しつけられ、発電された莫大な電力は遠く離れた大都市に送電される。
(8) 既存の立地地域には、新規原発とか使用済み核燃料の中間貯蔵地、最終処分場などの核施設がさらに累積されやすい。
(9) コンプライアンス(法令を守る意識や企業倫理)の欠如した大企業が技術や情報を独占し、市民はそれらにアクセスできない。運転の同意は、立地自治体が優遇され、周辺自治体は排除される。
(10) 原発は太陽光など再生可能な自然エネルギーにくらべて発電単価が高い。原発がなくても、電気は足りている。多少のひっ迫は、節電、地域間電力融通、需要側の対応などで回避が可能。

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◆関西電力 闇歴史◆100◆

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◆エネ庁サイトの再エネ業者情報が大手電力から不正閲覧されていた件で
 個人情報保護委員会がエネ庁を含めて行政指導!(2023/6/29)
(送配電会社への不正閲覧→◆087◆
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▼二つの不正閲覧

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[2] 個人情報保護委員会が、エネ庁や大手電力19社を行政指導
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・政府の個人情報保護委員会(個情委)は、個人情報の不適切な取り扱いがあったとして、大手電力全10グループと送配電子会社など19社と、資源エネルギー庁を行政指導した。

・個人情報保護法に基づく対応で、個人情報の取得や安全管理措置の不備を指摘し改善を促した。「不正の手段により個人情報を取得してはならない」とする個人情報護法の規定に違反すると認定した。この規定に基づく行政指導は初めて。

・エネ庁が管理していた再エネ業者情報は、送配電関係者だけが見ることを許されているが、エネ庁の管理も不適切であった。大手電力の小売部門は、経産省サイトからは、再エネ業者の代表者の氏名や住所、電話番号、再エネ電気の買い取り価格などを不正閲覧していた。

【行政指導を受けた19社】こちらによる)
「一般送配電事業者」10社
    北海道電力ネットワーク株式会社
    東北電力ネットワーク株式会社
    東京電力パワーグリッド株式会社
    中部電力パワーグリッド株式会社
    北陸電力送配電株式会社
    関西電力送配電株式会社
    中国電力ネットワーク株式会社
    四国電力送配電株式会社
    九州電力送配電株式会社
    沖縄電力株式会社(送配電部門)
「小売電気事業者」10社
    北海道電力株式会社
    東北電力株式会社
    東京電力エナジーパートナー株式会社
    中部電力ミライズ株式会社
    北陸電力株式会社
    関西電力株式会社
    中国電力株式会社
    四国電力株式会社
    九州電力株式会社
    沖縄電力株式会社(小売部門)

・個人情報保護委員会(個情委)は、エネ庁サイトへの不正閲覧のほか、大手電力の小売部門が送配電部門への不正閲覧(→◆087◆)をくりかえしていた件でも、行政指導を行った。

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[1] エネ庁サイトの再エネ業者情報を不正閲覧
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・大手電力では、子会社の送配電会社への不正閲覧(◆087◆)のほか、資源エネルギー庁の管理する再生可能エネルギー事業者の情報を不正に閲覧していたとの報道もある(2023/2/17)。送配電会社の社員は閲覧できるが、親会社の社員は不可のところ、大手電力全10社にわたり不正閲覧があったという。再エネ発電業者の氏名や住所、電話番号、電気の買い取り価格などの情報が漏れていた。関西電力では、社員2人が関電の子会社・関西電力送配電が持つIDとパスワードを使って、資源エネルギー庁が管理・運営する「再エネ業務管理システム」のサイトにアクセスし、情報を閲覧していたという。

・関電の場合、資源エネルギー庁サイトの不正閲覧問題は、分社化前に社員からIDとパスワードを不正入手していた。閲覧していたのは2人だけだったものの、他にも20人の関電社員・委託先社員が閲覧の事実を把握していて、そのうち13人の関電社員は当該の社員2人に閲覧を依頼していた。「再エネ業務管理システム」は、本来は送配電事業者しかアカウントが付与されず閲覧できない。今回は当該社員2人のうち1人が、関西電力から関西電力送配電が分社化される前に、送配電部門の社員からIDとパスワードを教えてもらっていた。不正な閲覧が大規模かつ長期にわたり続けられていた実態が次々と明らかになっている。

◆099◆←←関西電力 闇歴史→→◆101◆

◆報告とお礼~6/7、6/16に高浜町と舞鶴市に申し入れ

【2023年6月23日。京都キンカンほかで配付】
【PDF(チラシ)→tirasi2023-06-22[2 MB]

報告とお礼

高浜町長に「老朽原発再稼働同意」の撤回を、
舞鶴市長に「老朽原発再稼働容認」の撤回を求めました

 岸田政権は、先の通常国会で、原発運転期間に関する法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました(5月31日)。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。

 岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。岸田政権の「原発依存社会」への暴走を許してはなりません。

 一方、岸田政権の尖兵として、老朽原発の再稼働を目論む関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが判明し、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。

 その関電は、運転開始後38年になり、MOX 燃料を使用し、トラブルが続出している高浜3、4号機の60年運転まで目論み、4月25日、原子力規制委員会に20年の運転延長を申請しています。

 傲慢この上ない関電は約束違反と欺瞞も繰り返しています。例えば、関電は、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言しながら、約束を全て反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。1昨年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発を停止する」としていますが、未だに候補地を見出していません。関電は苦肉の策として、使用済みMOX燃料の一部を、電気事業連合会が行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出すから「約束は果たした」としていますが(6月12日)、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料のわずか6%で、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。「小手先」の策を弄した詭弁としか言いようがありません。

 現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブル、不祥事、約束違反が頻発し、人々を欺かなければならなくなり、そこに闇の部分が発生するのです。

6月7日、16日、高浜町長に「老朽原発再稼働同意」の撤回、
舞鶴市長に 「老朽原発再稼働容認」の撤回を求め、
町内、市内デモ、チラシの各戸配布を実施。
両日とも約50人参加

 関電が画策する老朽原発・高浜1、2号機の再稼働について、立地自治体・高浜町の野瀬豊町長は、2021年2月、再稼働同意を表明しました、また、高浜原発に隣接し、同原発から5 kmの圏内に一部が含まれ、全域が30 km圏内に含まれる舞鶴市の多々見良三前市長は、2021年4月に、老朽原発の再稼働容認を経産省に伝えています。

 しかし、これらの再稼働同意、再稼働容認の後にも、老朽原発再稼働を目論む関電は、原発トラブル、不祥事、約束違反を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを考えあわせたとき、高浜町長、舞鶴市長は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意や再稼働容認を取り消し、原発との決別を宣言すべきです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発稼働に同意権を持つ原発立地自治体の首長や議会の動向は、立地自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 このような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とする高浜町長、舞鶴市長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意や再稼働容認を取り消し、原発との決別を宣言し、「原発に依存しない新しいまちづくり」を進めるよう申し入れました。また、高浜町内、舞鶴市内でデモ行進を行い「老朽原発うごかすな!」を訴えました。さらに、高浜町で約2500枚、舞鶴市東部(高浜原発に近い地域)で約4000枚の「運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・高浜1、2号機の再稼働は超危険!」と題するチラシを各戸配布しました。なお、高浜町での行動は、6月7日に、舞鶴市での行動は6月16日に行いましたが、各々約50人のご参加を頂きました。

これらの行動にご参加、ご支援 いただきました皆様、
有難うございました

2023年6月22日

老朽原発うごかすな!実行委員会 連絡先090-1965-7102(木原)

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 反原発団体が高浜原発1・2号機再稼働反対を高浜町に申し入れ

 6月7日
 関西電力が再稼働に向けた準備を進めている高浜原子力発電所の1号機と2号機について、反原発の活動を行っているグループは、7日、高浜町に対し、再稼働へ反対する申し入れをおこないました。
 申し入れをおこなったのは、主に京都府などの関西圏や、福井県の住民でつくる団体です。
 7日午後、高浜町役場前に約50人が集まり、「老朽原発動かすな」などと書かれたのぼりや横断幕を掲げ、シュプレヒコールをあげました。
 このあとメンバーの代表が役場に向かい、美浜原発3号機に次いで40年を超えた運転を目指す高浜原発1、2号機について、町が行った再稼働への同意の取り消しなどを求める申し入れ書を、町の職員に手渡しました。
 申し入れをおこなった団体の木原壯林さんは「高浜町長が再稼働に同意して以降も、関西電力では施設のトラブルや不祥事が多発している。高浜町を含め全国で、原発に頼らない再生可能エネルギーを活用していって欲しい」と話していました。

▼2023年6月8日 中日新聞

▼2023年6月8日 毎日新聞(京都丹後版)

▼2023年6月9日 毎日新聞(福井版)

▼2023年6月17日 京都新聞

▼2023年6月17日 しんぶん赤旗

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「老朽原発うごかすな!」運動を起死回生させる
12.3「とめよう! 原発依存社会への暴走1万人集会」を
成功させよう!

 老朽原発うごかすな!実行委員は、下記の [1][4] の理由により、1万人の結集を目指す大集会を12月3日に大阪で開催することを決定しました。

 皆様のご賛同、ご支援、ご参加をお願いします。

[1] 5月8日に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類から5類に変更され、今まで、集会への参加を組織として呼びかけることを躊躇していた団体などが、その制約から解放された。したがって、「老朽原発うごかすな!実行委員会」の当初の目標「関西で、関電や政府を震え上がらせるほどの大結集を得る」行動を、時間をかけて準備する好機である。

[2] 関電は、1昨年2月に福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を本年末までに探す」と約束していた。しかし、未だに候補地のあてはないから、老朽原発の停止を実行させる。ただし、関電6月12日に、フランスにほんの一部の使用済み核燃料を移送するから約束を果たしたとしたが、全くの欺瞞である。何としても「全ての使用済み核燃料の貯蔵地を探せなければ、約束違反である」ことを認めさせ、老朽原発廃炉を実現しなければならない。

[3] 原発推進関連法案は、5月31日、第211回通常国会で成立したが、実行するには、関連の法体系の整備が必要である。また、法をどのように解釈・運用するかは反原発の行動との攻防によって決まる。「原発推進法案」が成立しても、実行させない、目に見え、耳に聞こえる闘いを前進させなければならない。

[4] 近いうちに衆院選の可能性がある。大きな運動を提起して、「原発全廃」を衆院選の争点にしなくてはならない。

 今秋から今冬にかけての「老朽原発うごかすな!」の闘いは、岸田政権の「原発依存社会」への暴走を許すか、「原発のない社会」を実現するかのカギを握ります。
 「原発推進法案」が成立しても、実行させない、目に見え、耳に聞こえる闘いを前進させましょう!

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◆6.16 舞鶴現地行動、市内配布チラシ

【2023年6月16日。舞鶴市内で配付】
【PDF→ tirasi2023-06-16[911 KB]

運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・
高浜1、2号機の再稼働は超危険!
舞鶴市長に「再稼働容認」の撤回を求めましょう!

稼働中の高浜3、4号機では、運転開始後
40年未満にも拘わらず、トラブル多発!

 現在稼働中の高浜原発3、4号機は、運転開始後38年を超えた原発です。かつて(5月31日まで)の法律では「原発の運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の運転延長を1回だけ認める」としていましたから、これに従えば、もうすぐ運転可能期間が終了します。そこで関西電力(関電)は、4月25日、これらの原発の20年運転延長を原子力規制委員会(規制委)に申請しました。

 しかし、高浜3、4号機では、トラブルが多発しています。下の表には、高浜原発3、4号機で過去3年半の間に報道されたトラブルの代表例がまとめてあります。規制委は、本年4月25日開催の定例会合で、「高浜原発3号機の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいる」として、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求めています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷が頻発していることです。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。

 また、1月30日に高浜4号機で発生したトラブルも深刻です。原子炉内の中性子が急減する信号が出て自動停止したのです。原因は「過去に経験したことのない制御棒関係の異常」と発表されましたが、制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。高浜4号機は稼働から38年になる原発ですが、関電は、同じく38年になる高浜3号機と共に、40年を超える運転の認可を規制委に申請するために、「特別点検」を実施しましたが、その直後に、このトラブルです。「特別点検」を実施したからと言って、トラブルは避けることはできません。

 なお、髙浜3、4号機の核燃料の一部は、事故を起こしやすいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)です。MOX燃料は破損しやすく、使用済み核燃料になったとき、放射線量や発熱量が多く、通常の使用済みウラン燃料に比べて、4倍以上もの長期保管を要します。

不祥事、約束違反を頻発させ、企業倫理が欠落した関電が原発を運転

 若狭で原発を運転し、老朽原発の運転まで目論む関電では、不正が次から次へと発覚しています。「法令を守る意識や企業倫理を大切にする精神(コンプライアンス)」が崩壊しています。

 そんな企業が万が一にも重大事故を起こしてはならない原発を動かし、重大事故に至りかねないトラブルを多発させています。

関電の法令違反、不祥事

(1)関電役員が金品を不正受領、減額していた役員報酬や所得税追徴分の不正還流

…2019年発覚。関西電力の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していました。また、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた役員報酬について、退任した元役員18人に、嘱託報酬として計2億5900万円を不正還流していました。さらに、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填も発覚しています。

(2)関電、原発推進の高浜町議に、不当に高額な土砂処分発注や土地、倉庫賃貸料支払い

…関電のコンプライアンス委員会が4月に3件の不正取引を公表。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注したり、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払ったりして、合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(3)不正資格取得

…2021年発覚。関電グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していました。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(4)電力販売でカルテル締結

…2021年発覚。2018年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、カルテル(独占禁止法違反)を結んでいたとして、公正取引委員会が中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じました。ところが、主導者である関電は、調査が始まる前に違反行為を自主申告したため、課徴金を免れています。

(5)顧客名簿不正閲覧

…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていました。閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していました。送配電分離という電力システム改革を否定する違法行為です。

(6)関西電力送配電の社員が記録捏造し虚偽報告

…2023年発覚。関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定について、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(7)使用済み核燃料の中間貯蔵地探しに関わる約束違反

…関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束を反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰返してきたのです(後述参照)。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、人々を欺かなければならなくなり、このよう
な事態が発生するのです。

関電が再稼働を画策する高浜1、2号機はさらに危険

高浜1、2号機、火災防護対策不備で再稼働延期

 関電は、原発依存社会へ暴走を始めた岸田内閣の尖兵として、運転開始後48年超えの高浜原発1号機、47年超えの高浜原発2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。火災防護対策が必要なケーブルの長さは、高浜1号機では約2200m、高浜2号機では約2300mです。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰(ずさん)なのか?今回の不備は氷山の一角かもしれません。

 なお、6月1日には、高浜1号機で、火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していたことも発覚しています。

関電の全原発で、ケーブルの火災防護対策が不備!

 ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。対策工事に数年かかるから、関電は対策をせず、規制委もこれを黙認しています。これが岸田政権の宣伝する「世界最高水準の厳しい原子力規制」の実態です。

原発圧力容器の脆化(ぜいか)が最も深刻な原発は高浜1号機

 原発の圧力容器は鋼鉄でできていますが、鋼鉄は常温ではある程度の柔らかさを持っています。しかし、温度を下げていくと、ある温度[脆化温度と呼ぶ:脆化とは「脆く(もろく)なること」]以下で、ガラスのように硬く脆くなります。新しい圧力容器の脆化温度はマイナス16℃程度ですから、水で冷やしても脆化しません。しかし、原子炉の運転によって、圧力容器が中性子にさらされ続けますと、脆化温度が上昇します。例えば、原発を40年以上運転し続けると、脆化温度がプラス100℃になることがあります。このような原発で運転中(約320℃)にトラブルが発生し、炉内温度が上昇した場合、原子炉を急冷しなければなりません。このとき、圧力容器が脆化温度(+100℃)以下に急冷されると、ょうど温めておいたグラスを氷水で急冷したときのように、圧力容器は破壊されます。そうなると、原発は過酷事故に至ります。

 今、日本で脆化温度が最も高くなっている原発は、高浜1号機(運転開始後48年超え)で、99℃と言われています。99℃以下に急冷されると圧力容器(原子炉本体)が割れてしまう可能性があります。この他の原発の脆化温度は、高浜2号機(運転開始後47年超え)で40℃、高浜4号機(運転開始後37年超え:稼働中)で59℃、美浜3号機(運転開始後46年超え:稼働中)で57℃です。

原発過酷事故が起こったとき、被曝なしの避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、現行の「避難訓練」では、原発事故では住民全員が、何年も何十年もあるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。

 「避難計画」は、住民の大量被ばくを前提にしています。例えば、原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、やっと避難を始めることになっています。

 一斉避難は不可能であるから、原発周辺住民の大半は「大量被ばくするまで待て」としているのです。

使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらない

 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。

 2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、未だに候補地を見出すことはできていません。

 関電は、苦肉の策として、去る6月12日に、使用済みMOX燃料の一部を、電気事業連合会がフランスと行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出すから「約束は果たした」としていますが、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料のわずか6%以下に過ぎず、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。「小手先」の策を弄して、人々をあざむいているとしか言いようがありません。

電気は足りています

 政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。

 一時的に電力がひっ迫しても、節電によって乗り切れます。このことは昨年3月の地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、昨夏の猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

 昨年3月22日、東北、東京エリアで、地震による発電所の停止と寒波の到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。このひっ迫を乗り切れたのは、当日8〜23時の時間帯で約4000万kW時、また、需要の大きな17時台の1時間に約500万kWの節電が実行されたためです。原発5基分(1基100万kWとして)ものの節電が可能であることが実証されたのです。。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、負の遺産・使用済み核燃料を残す原発の推進にNOを!

失政のつけが、「原発依存社会」への暴走、老朽原発運転

 岸田政権は、今、老朽原発運転をはじめとする原発の推進に躍起です、この「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。「失政のつけ」が回ってきたのです。もし、原発に費やされた税金や電気料金が、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回されていれば、原発不要の社会ができたはずです。

 このことを福島原発事故直後に認識したドイツは、脱原発を進め、再生可能エネルギーの割合を2割から5割に増加させ、去る4月15日に脱原発を達成しています。一方、福島原発事故の当事国・日本は、原発維持に固執したため、再生可能エネルギーの割合は1割から2割に増加させたに過ぎません。福島事故後のエネルギー政策の失敗の結果、脱原発の流れに乗り遅れたのです。岸田政権や関電はその失敗を取り繕うために、さらに大きな過ち「原発依存社会」に向かって暴走しています。「原発過酷事故」に突き進んでいるのかも知れません。

 日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。先見の明がある政権であったなら、今頃、核燃料、化石燃料の必要のない社会を実現し、世界をリードできたでしょう。

 若狭でいち早く脱原発にかじを切っていたら、若狭や舞鶴市に新しい産業や雇用が生まれていたかもしれません。原発からの脱却を進めて新しい社会を目指しましょう!

舞鶴市長、舞鶴市議会に「老朽原発再稼働容認」の撤回を求めましょう!

 舞鶴市議会は2020年12月に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を決議し、2021年4月には、当時の多々見良三市長がこれらの原発の再稼働容認を経産省に伝えています。

 しかし、これらの容認表明後にも、老朽原発の再稼働を目論(もくろ)む関電は、本チラシで述べたような原発トラブル、不祥事を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを鑑みるとき、舞鶴市長および舞鶴市議会は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を撤回し、原発との決別を宣言すべきです。

 舞鶴市長、舞鶴市議会に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を取り消し、政府および関電に原発との決別を要請し、「原発過酷事故の不安のない社会」を目指した市政を求めましょう!

2023年6月16日
老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先:090-1965-7102木原)

◆6.16 舞鶴現地行動で市長へ申し入れ

【2023年6月16日。舞鶴市への申し入れ】
【PDF→ mousiire2023-06-16[258 KB] 】

2023年6月16日

舞鶴市長 鴨田 秋津 様

老朽原発うごかすな!実行委員会*別紙注1

申し入れ書

 原発は、現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後12年を超えた福島原発事故が、大きな犠牲の上に教えています。一方、ウクライナ紛争では、戦争になれば、原発は攻撃目標となることが実証されました。このように、原発は人の命と尊厳を脅かします。

 その原発が、運転開始後40年を超え、老朽化すれば、過酷事故の危険度が急増することは、多くが指摘するところです。それは、高温、高圧の下で高放射線(とくに中性子)にさらされた原子炉本体・圧力容器の脆化や配管の腐食、減肉などが進むからです。また、老朽原発には、建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当な部分が多数あるからです。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた圧力容器などです。

 それでも、政府や電力会社は、ウクライナ紛争に因るエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、老朽原発の運転に躍起です。

 岸田政権は、本年の第211回通常国会で、福島原発事故の教訓から「原発運転期間は原則40年、最長でも60年」とした法律を改悪し、原発の60年超え運転を可能にしました。しかし、世界にも、60年を超えて運転した原発はありません。最も老朽な原発でも、運転期間は53年です。地震、火山噴火、津波の多発する日本での原発60年超え運転は、過酷事故を招きかねません。
なお、岸田首相がどう願望し、法律をどう変えようとも、経済的利益や政治的思惑で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。

 そもそも、岸田政権の「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。もし、先見の明がある政権であったなら、原発に費やされた膨大な税金や電気料金を、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回し、今頃、核燃料、化石燃料など必要のない社会を実現し、世界をリードしていたでしょう。

 ところで、舞鶴市議会は2020年12月に、運転開始後48年、47年を超えた(2023年6月現在)老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を決議し、2021年4月には、当時の多々見良三市長がこれらの原発の再稼働容認を経産省資源エネルギー庁に伝えています

 しかし、老朽原発の再稼働を目論む関電は、これらの再稼働容認表明後にも、稼働中の高浜原発3、4号機で、別紙(注2)の表に示したようなトラブルを続発させています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷の頻発です。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。また、1月30日に高浜4号機で制御棒が急挿入され、自動停止したトラブルも深刻です。制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。

 一方、関電は、高浜原発1、2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。6月1日には、高浜1号機で火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していた不備も発覚しています。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰なのか? 不備はこれ以外にも、多数あると思われます。発表された不備は氷山の一角かもしれません。なお、ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。

 さらに、関電は、以下のように、不祥事を繰り返しています。

(1) 2019 年に、関電の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していたこと、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた元役員18人の報酬について、退任後に計2億5900万円を不正還流していたこと、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填をしていたことが発覚しました。この不祥事を調査した関電のコンプライアンス委員会は、本年4月に3件の不正取引を公表しました。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注し、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払っていました。合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(2) 2021 年には、関電グループ全体で社員180 人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していたことが発覚しています。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(3) 2021 年には、電力販売でカルテルを締結していたことも発覚しています。2018 年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、独占禁止法違反のカルテルを結んでいました。公正取引委員会は、中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じましたが、主導者である関電は、調査前に違反行為を自主申告し、課徴金を免れています。

(4) 昨2022 年には、関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていたことが発覚しました。電力システム改革を否定する違法行為です。

(5) 今年になって、関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定に関して、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(6) 関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束をたびたび反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰り返してきたのです。2021年2月にも、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」としていますが、未だに候補地の見通しは示されていません。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、トラブルが頻発し、人々を欺かなければならなくなるのです。

 原発は、絶対に過酷事故を起こさないと言い切ることは誰にもできません。もし、過酷事故が起これば、立地自治体だけでなく、広域の周辺自治体の多くの住民が長期の避難を強いられることは、福島原発事故が実証しています。とくに、舞鶴市は高浜原発から 5 km 圏の予防防護措置地域(PAZ)を含み、約8万人が生活する市全域が 30 km 圏の緊急防護措置地域(UPZ)ですから、高浜町以上の深刻な被害を被る可能性があります。一方、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらありません。したがって、原発立地自治体や原発に近接する自治体の首長や議会の動向は、当該自治体の現在の住民だけでなく、多くの周辺自治体や未来の人々の「命と尊厳」とも深く関わります。

 以上のような視点に立って、「老朽原発うごかすな!実行委員会」に結集する私たちは、「現在および未来の人々の安心・安全を守ること」を責務とされる舞鶴市長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働容認を取り消し、政府および関電に原発との決別を要請し、「原発過酷事故の不安のない社会」に向かって市政を進められるよう申し入れます。

別紙

注1 「老朽原発うごかすな!実行委員会」について
(連絡先;事務担当・木原壯林 住所;〒607-8466 京都市山科区上花山桜谷40-5
電話 090-1965-7102 E-メール kiharas-chem@zeus.eonet.ne.jp)
「老朽原発うごかすな!実行委員会」は、全国の団体231と個人854名の賛同を得て、2020年1月18日に結成された「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」を、2020年9月20日に改称して結成された団体です。以来、関西、若狭を中心に、各地で「老朽原発うごかすな!」を訴える活動を行っています。現在までに、下記のような集会(集会後にデモ行進)を実行しています。また、若狭の集落から集落をめぐって「原発うごかすな!」を訴えながらチラシを各戸配布する行動(通称アメーバデモ)、一人ひとりが数十メートルの間隔をとって、旗指物、拡声器で「原発反対」を訴えて歩く行動(通称ヒトリデモ:関西各地、若狭で実施)、自動車による街宣、「老朽原発うごかすな!ニュース」の発行などを行っています。

●「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.9.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1600人参加
●「老朽原発うごかすな!実行委員会」が開催した集会・デモ
2020.11.23~12.9 関電本店~美浜原発200 kmリレーデモ 延べ約1000人参加
2021.1.24 「関電よ 老朽原発うごかすな!大集会」関電本店前 350人参加
2021.3.20 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 400人参加
2021.6.6 「老朽原発うごかすな!大集会inおおさか」 うつぼ公園 1300人参加
2021.6.23 「美浜3号再稼働阻止現地集会」 美浜原発前、原子力事業本部前 350人参加
2022.5.29 「原発のない明日を-老朽原発このまま廃炉!大集会inおおさか」うつぼ公園 2100人参加
2022.7.24 「老朽原発・美浜3号うごかすな!現地全国集会」 美浜町弁天崎、
原子力事業本部前 300人参加
2022.12.4 「老朽原発うごかすな!関電包囲全国集会」 関電本店前 900人参加
2023.3.21~4.2 関電本店~高浜原発230 kmリレーデモ 延べ約900人参加
2023.4.29 「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」 高浜文化会館 320人参加

注2 高浜町長が、高浜原発1、2号機の再稼働に同意した後(2021年2月1日~)に
高浜原発3、4号機で発生したトラブル


◆6.7 高浜現地行動、町内配布チラシ

【2023年6月7日。舞鶴市内で配付】
【PDF→ tirasi2023-06-07[906 KB]

運転開始後48年、47年を超えた老朽原発・
高浜1、2号機の再稼働は超危険!
高浜町長に「再稼働同意」の取り消しを求めましょう!

稼働中の高浜3、4号機では、運転開始後
40年未満にも拘わらず、トラブル多発!

 現在稼働中の高浜原発3、4号機は、運転開始後38年を超えた原発です。かつて(5月31日まで)の法律では「原発の運転期間は原則40年とし、例外中の例外として20年の運転延長を1回だけ認める」としていましたから、これに従えば、もうすぐ運転可能期間が終了します。そこで関西電力(関電)は、4月25日、これらの原発の20年運転延長を原子力規制委員会(規制委)に申請しました。

 しかし、高浜3、4号機では、トラブルが多発しています。下の表には、高浜原発3、4号機で過去3年半の間に報道されたトラブルの代表例がまとめてあります。規制委は、本年4月25日開催の定例会合で、「高浜原発3号機の重大事故に対処する設備でトラブルが相次いでいる」として、関電に対し、再発防止に向けた改善計画の提出を求めています。

 トラブルの中でとくに深刻なのは、約320℃、約160気圧の高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷が頻発していることです。1次冷却系配管が完全破断すれば、原子炉を冷やす機能が失われ、原子炉溶融(メルトダウン)に至る可能性があるからです。

 また、1月30日に高浜4号機で発生したトラブルも深刻です。原子炉内の中性子が急減する信号が出て自動停止したのです。原因は「過去に経験したことのない制御棒関係の異常」と発表されましたが、制御棒は原子炉のブレーキです。ブレーキの故障は、重大事故につながります。高浜4号機は稼働から38年になる原発ですが、関電は、同じく38年になる高浜3号機と共に、40年を超える運転の認可を規制委に申請するために、「特別点検」を実施しましたが、その直後に、このトラブルです。「特別点検」を実施したからと言って、トラブルは避けることはできません。

 なお、髙浜3、4号機の核燃料の一部は、事故を起こしやすいウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)です。MOX燃料は破損しやすく、使用済み核燃料になったとき、放射線量や発熱量が多く、通常の使用済みウラン燃料に比べて、4倍以上もの長期保管を要します。

不祥事、約束違反を頻発させ、企業倫理が欠落した関電が原発を運転

 若狭で原発を運転し、老朽原発の運転まで目論む関電では、不正が次から次へと発覚しています。「法令を守る意識や企業倫理を大切にする精神(コンプライアンス)」が崩壊しています。

 そんな企業が万が一にも重大事故を起こしてはならない原発を動かし、重大事故に至りかねないトラブルを多発させています。

関電の法令違反、不祥事

(1)関電役員が金品を不正受領、減額していた役員報酬や所得税追徴分の不正還流

…2019年発覚。関西電力の役員らが元高浜町助役から総額約3億7千万円相当の金品を受領していました。また、福島原発事故以降の電気料金値上げに伴い、経営悪化の責任をとって減額していた役員報酬について、退任した元役員18人に、嘱託報酬として計2億5900万円を不正還流していました。さらに、役員が税務調査を受けて払った追徴課税の不正補填も発覚しています。

(2)関電、原発推進の高浜町議に、不当に高額な土砂処分発注や土地、倉庫賃貸料支払い

…関電のコンプライアンス委員会が4月に3件の不正取引を公表。関電が元助役や町議の関連会社に対し、原発の安全対策工事で出た土砂の処分を高額で発注したり、土地や倉庫を借りる際に不当に高額な対価を支払ったりして、合わせて87億円以上の損害を関電に与えたとされています。

(3)不正資格取得

…2021年発覚。関電グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得していました。不正取得者は、原発工事15件にも関係していました。

(4)電力販売でカルテル締結

…2021年発覚。2018年秋頃から、関電主導で大手電力(中部電力、中国電力、九州電力)が、事業者向けの電力の販売をめぐり、カルテル(独占禁止法違反)を結んでいたとして、公正取引委員会が中部電力、中国電力、九州電力に総額で1000億円余りの課徴金を命じました。ところが、主導者である関電は、調査が始まる前に違反行為を自主申告したため、課徴金を免れています。

(5)顧客名簿不正閲覧

…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見て、営業活動に使っていました。閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していました。送配電分離という電力システム改革を否定する違法行為です。

(6)関西電力送配電の社員が記録捏造し虚偽報告

…2023年発覚。関電の子会社「関西電力送配電」は、法律で義務づけられた電圧の測定について、社員が、5年間にわたり捏造した虚偽のデータを報告していたことを明らかにしました。

(7)使用済み核燃料の中間貯蔵地探しに関わる約束違反

…関電は2017年以来、何度も「使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言したにも拘らず、その約束を反故にしています。関電は、福井県知事の原発再稼働への同意を取り付けるために、何の成算も無く「空約束」を繰返してきたのです(後述参照)。

 このように、関電は、トラブル、不祥事、約束違反を多発させています。現在科学技術で制御できない原発を、無理矢理稼働させようとするから、人々を欺かなければならなくなり、このよう
な事態が発生するのです。

関電が再稼働を画策する高浜1、2号機はさらに危険

高浜1、2号機、火災防護対策不備で再稼働延期

 関電は、原発依存社会へ暴走を始めた岸田内閣の尖兵として、運転開始後48年超えの高浜原発1号機、47年超えの高浜原発2号機を6月から順次再稼働させるとして準備を進めていましたが、ケーブルの火災防護対策が不十分であることが明らかになり、5月2日、再稼働の延期を発表しています。火災防護対策が必要なケーブルの長さは、高浜1号機では約2200m、高浜2号機では約2300mです。再稼動を目指して、10年以上も準備してきたにも拘らず、再稼動直前になっての不備の発覚です。不備に関する自覚が足りないのか、検査・点検の仕方が杜撰(ずさん)なのか?今回の不備は氷山の一角かもしれません。

 なお、6月1日には、高浜1号機で、火災検知器4基を工事計画とは異なる位置に設置していたことも発覚しています。

関電の全原発で、ケーブルの火災防護対策が不備!

 ケーブルの火災防護対策の不備は、高浜1、2号機だけではありません。関電は、設計工事計画を無視して、ケーブルの火災防護対策をしないまま高浜3、4号機、大飯3、4号機、美浜3号機を運転しています。対策工事に数年かかるから、関電は対策をせず、規制委もこれを黙認しています。これが岸田政権の宣伝する「世界最高水準の厳しい原子力規制」の実態です。

原発圧力容器の脆化(ぜいか)が最も深刻な原発は高浜1号機

 原発の圧力容器は鋼鉄でできていますが、鋼鉄は常温ではある程度の柔らかさを持っています。しかし、温度を下げていくと、ある温度[脆化温度と呼ぶ:脆化とは「脆く(もろく)なること」]以下で、ガラスのように硬く脆くなります。新しい圧力容器の脆化温度はマイナス16℃程度ですから、水で冷やしても脆化しません。しかし、原子炉の運転によって、圧力容器が中性子にさらされ続けますと、脆化温度が上昇します。例えば、原発を40年以上運転し続けると、脆化温度がプラス100℃になることがあります。このような原発で運転中(約320℃)にトラブルが発生し、炉内温度が上昇した場合、原子炉を急冷しなければなりません。このとき、圧力容器が脆化温度(+100℃)以下に急冷されると、ょうど温めておいたグラスを氷水で急冷したときのように、圧力容器は破壊されます。そうなると、原発は過酷事故に至ります。

 今、日本で脆化温度が最も高くなっている原発は、高浜1号機(運転開始後48年超え)で、99℃と言われています。99℃以下に急冷されると圧力容器(原子炉本体)が割れてしまう可能性があります。この他の原発の脆化温度は、高浜2号機(運転開始後47年超え)で40℃、高浜4号機(運転開始後37年超え:稼働中)で59℃、美浜3号機(運転開始後46年超え:稼働中)で57℃です。

原発過酷事故が起こったとき、被曝なしの避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、現行の「避難訓練」では、原発事故では住民全員が、何年も何十年もあるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。

 「避難計画」は、住民の大量被ばくを前提にしています。例えば、原発で過酷事故が起こったとき、原発から5km圏内の住民は即時避難となっていますが、それ以外の住民は屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、やっと避難を始めることになっています。

 一斉避難は不可能であるから、原発周辺住民の大半は「大量被ばくするまで待て」としているのです。

使用済み核燃料の処分法はなく、中間貯蔵を引き受ける所すらない

 原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまります。

 関電は2017年、「若狭の原発でできた使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を、2018年末までに福井県外に探す」と明言しました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束をホゴにし、「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束して原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。さらに関電は、再約束の期限もホゴにし、一昨年2月12日には、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発を停止する」として、福井県に老朽原発再稼働への同意を求めました。これを受けて、杉本知事は、それまでの「中間貯蔵地を示すことが再稼働議論の前提」とした発言を一転させ、再稼働同意を表明しました。なお、関電が「2023年末を期限」とした拠
り所は、青森県むつ市の中間貯蔵施設の利用の可能性ですが、宮下むつ市長(当時)はこれを否定し、猛反発しています。

電気は足りています

 政府は電力需給のひっ迫を喧伝し、原発の推進に躍起です。しかし、日常的には、電気は足りています(余っています)。

 一時的に電力がひっ迫しても、節電によって乗り切れます。このことは昨年3月の地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、昨夏の猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

 昨年3月22日、東北、東京エリアで、地震による発電所の停止と寒波の到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。このひっ迫を乗り切れたのは、当日8〜23時の時間帯で約4000万kW時、また、需要の大きな17時台の1時間に約500万kWの節電が実行されたためです。原発5基分(1基100万kWとして)ものの節電が可能であることが実証されたのです。。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、負の遺産・使用済み核燃料を残す原発の推進にNOを!

失政のつけが、「原発依存社会」への暴走、老朽原発運転

 岸田政権は、今、老朽原発運転をはじめとする原発の推進に躍起です、この「原発依存社会」への暴走は、福島原発事故以降の政権が、事故の教訓を生かさず、原発維持にこだわり、自然エネルギーへの全面切り替えを怠った結末です。「失政のつけ」が回ってきたのです。もし、原発に費やされた税金や電気料金が、自然エネルギーを利用する電源、大容量の蓄電法、省エネ機器の開発と普及に回されていれば、原発不要の社会ができたはずです。

 このことを福島原発事故直後に認識したドイツは、脱原発を進め、再生可能エネルギーの割合を2割から5割に増加させ、去る4月15日に脱原発を達成しています。一方、福島原発事故の当事国・日本は、原発維持に固執したため、再生可能エネルギーの割合は1割から2割に増加させたに過ぎません。福島事故後のエネルギー政策の失敗の結果、脱原発の流れに乗り遅れたのです。岸田政権や関電はその失敗を取り繕うために、さらに大きな過ち「原発依存社会」に向かって暴走しています。「原発過酷事故」に突き進んでいるのかも知れません。

 日本は、太陽光にも、水にも、風にも、地熱にも恵まれています。先見の明がある政権であったなら、今頃、核燃料、化石燃料の必要のない社会を実現し、世界をリードできたでしょう。

 高浜町でもいち早く脱原発にかじを切っていたら、原発以外の産業や雇用が生まれていたかもしれません。原発からの脱却を進めて新しい若狭を目指しましょう!

高浜町長に「老朽原発再稼働」同意の撤回を求めましょう!

 高浜町の野瀬豊町長は、2021年2月1日、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働に同意しました。

 しかし、この同意後にも、これらの老朽原発の再稼働を目論(もくろ)む関電は、本チラシで述べたような原発トラブル、不祥事を続発させています。高浜1、2号機では、火災防護施設などの不備が発覚しています。このような関電は、原発過酷事故を起こしかねません。老朽原発の稼働などもっての外です。

 地方自治の根幹は「住民の安心安全を守ること」であることを鑑みるとき、高浜町長は、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意を取り消し、原発との決別を宣言すべきです。

 高浜町長に、老朽原発・高浜1、2号機の再稼働への同意の撤回と、「原発のない安心・安全なまちづくり」を求めましょう!

2023年6月7日
老朽原発うごかすな!実行委員会(連絡先:090-1965-7102木原)