関西電力 闇歴史」カテゴリーアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆033◆

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◆老朽美浜3号機、内部告発やトラブルが続く(2021年)
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 運転開始から40年を超えて2021年6月23日に再稼働した関電の美浜原発3号機で、内部告発やトラブルが続いている。やろうと思えばできたバックフィットも先送りして、再稼働を優先している。安全より経済性優先の関電の経営方針は、何も変わらず一貫している。10月25日が特重施設設置期限で、それが未完成のため10月23日に「定期点検」入りと称して停止せざるを得なかった。特重施設が間に合わなかったので止まるのではなくて、定期点検のために止まるだけですと、空々しい(>_<)

(1) 杜撰な安全工事に対して内部告発

 美浜原発3号機では、杜撰な安全工事に対する内部告発があるにも関わらず、関電は問題ないとして無視し、規制委もこれに同調している。

 以下は、『はとぽっぽ通信』2021年8月第242号「老朽原発の再稼働阻止・・その危険性と知事同意後の取り組み(その①)」山本雅彦さん(敦賀市)の記事を掲載。
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美浜3号機の、燃料取替用水タンクの竜巻対策溶接工事の杜撰さを内部告発

 3月28日付け(2021年)滋賀民報に、美浜原発3号機の燃料取替用水タンクの竜巻対策のための鉄骨建屋の柱と梁(はり)の溶接工事に携わった吉本選(えらぶ)氏の「あまりにもずさんな工事だった」との告発記事が掲載された。その記事によれば、吉本氏は「鉄骨建屋の設計が悪く、柱と梁の溶接ができません。さらに、母材(部材)は長い間、野ざらしでひどく錆びていた」と。同氏は、工事を請け負った若狭町の建設会社の社長に、「見た目だけ溶接することはできるが強度が出ない。根本的にやり直すべき」と忠告しても「くっついていさえすればいい」と無視されたという。

 関電は、関係工事資料を確認した上で、目視点検の結果、問題は無かったと規制委員会に報告。規制委はこれを了承し、使用前検査に合格証を出そうとしている。

 しかし、これは安全対策工事に関する重要な告発である。事実とすれば、安全対策工事全体の信頼性が揺らぐ問題である。規制委は、関電の行った内部調査の報告をう呑みにするのではなく、関電に全ての情報を公開させ、第三者に該当箇所の強度確認試験を行わせるなど、規制当局としての責任を果たすべきである。
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 なお、福井県議会議員・さとう正雄さん(共産党)が、4月19日の議会全員協議会で取り上げて、関電にただしたところ、関電側は、発注した熊谷組を信頼している、などと答えたが、実際の調査は行っていないことが明らかになった。

 オール福井反原発連絡会(原子力発電に反対する福井県民会議、福井から原発を止める裁判の会、サヨナラ原発福井ネットワーク、原発住民運動福井・嶺南センター、原発問題住民運動福井連絡会)は、5月14日に、関電の森本孝社長と福井県の杉本達治知事に対して「全ての情報公開」を申し入れている。

(2) タービン動補助給水ポンプ「フィルター目詰まり」の重大な意味

 調整運転中の7月2日、蒸気発生器に給水するためのタービン動補助給水ポンプ周辺のトラブルが起きているが、運転を継続してきた。◆025◆

(3) 非常用ディーゼル発電機が動作テスト中に自動停止

 10月6日には、非常用ディーゼル発電機が動作テスト中に自動停止するトラブルがあったと報道されている。回転数が規定よりも高く示されたために警報が作動して停止したとみられ、関電が原因を調べているが、外部への放射能の影響はないとして、運転を続けている。
 非常用発電機が故障すると、全電源喪失につながるのではないか。もう1台の同発電機が正常に作動することが確認できたため、運転を続けているというが、2台の非常用発電機が存在していることに意味があるのではないか。

 その後、関電は、停止した非常用ディーゼル発電機は調速装置(ディーゼル機関の回転数を一定に保つ装置)に不具合のある可能性があることがわかったため、予備の調速装置に取り替え、正常に動作することを確認し、10月9日、保安規定を満足する状態に復帰したと発表。

(4) バックフィット無視など相変わらず安全より経済性優先

 以下、「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」のメンバーからのメールを転載。
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 関電が2021/10/23からの美浜3号機の定期検査について発表しました。
今後の予定として、
原子炉起動、臨界:2022年10月中旬
調整運転開始:2022年10月中旬
本格運転再開:2022年11月中旬
としています。
 美浜3号機は火山噴出規模引き上げのバックフィットが未だなされておらず基準不適合状態ですが、実は同じくバックフィットが求められている非常用ディーゼル発電機に接続される電気盤の高エネルギーアーク損傷対策もされないまま稼働しています。今回の定期検査で対策工事をするそうです。
 火山と違い、こちらは経過措置の期限が定められているのですが、今年の8/1以降の定期検査が終了するまでとなっています(規則改正は2017年)。これについては、再稼働前に福井県の原子力安全対策課に確認したところ、「電気系統はいろんなところにつながっていて、1箇所で設定値を変えても、他の箇所の設定が伴わないと問題が起きるので、全体としてやらなくてはいけないので大変さがある。」ということでしたが、すでに「(今年5月時点で)高浜3、4は対策工事が終了し、大飯3号機は対策工事中、大飯4号機は未実施」だそうですから、やろうと思えばできたものを再稼働を優先したのではないかと疑わざるを得ません。
 関電の安全より経済性優先の経営方針は何も変わらず一貫していて恐ろしいです。
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◆関西電力 闇歴史◆032◆

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◆送電線保安業務で架空発注のコンプライアンス違反  6件(2021年)
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 関電の100%子会社、関西電力送配電(株)でコンプライアンス違反。「送電線に近接する樹木の保安伐採業務における不適切な処理」。2021年9月14日発表。

 送電線に近接する樹木の保安伐採業務で、社内基準の補償額では承諾を得られなかった地権者に対し、伐採していない樹木も含めた補償額を払っていた。委託先の関電子会社(株式会社かんでんエンジニアリング)には伐採していない樹木を伐採したとの虚偽報告をするよう指示し過大な委託費を払っていた。架空発注となる不適切処理金額は、補償費が630万円、委託費が371万円、合計約1000万円。

 過去10年分を調査したところ、6件の同様の不適切な処理があったとのこと。アスベストの不適正処理(◆023◆)や不正資格取得(◆022◆)は10年も遡って調べていないが、なぜか今回は10年間を調査。今後、関西電力コンプライアンス委員会による調査が行われる。その委員長は、中村直人弁護士(中村・角田・松本法律事務所)他となっている。

この件に関する関電と関電送配電の報告(2021年9月14日)は→こちら

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◆コンプライアンス委員会の調査で、さらに20件の指摘 (2022年)
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 その後、コンプライアンス委員会が140件の調査を行い、20件について担当者らが上限を超える支払を行ったと認定した(2022年6月14日報道)。その20件は、2011年6月から2018年4月まで、補償料計6200万円超にあたるが、その中に含まれる不適切な支出の総額は算定できないとしている。「構造的な問題」と説明されているが、電気料金で経営される公的企業とは思えない。(>_<)

→関電のプレスリリース「送電線に近接する樹木の保安伐採業務等に関する調査結果」
 2022年6月13日(こちら
→朝日「関電子会社、内規超す補償料 電線周辺の伐採20件、地権者に」(こちら
→日経「関西電力、電線周辺の伐採業務で違反 20件の不適切処理」(こちら

【付 コンプライアンス委員会と関西電力グループ行動憲章】
・関電社内のコンプライアンス委員会は、2020年4月設立。取締役会直下の委員会として組織され、委員長を含め過半数が社外委員で構成される(こちら)。中期経営計画(2021~25年)のなかで「関西電力グループ行動憲章こちら)」が確認され、第一に「1.コンプライアンスの実践・徹底」が掲げられている。下記、注あり。

  • (注)2019年に発覚した当社の役職員が福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた件や、退任役員への報酬を巡る問題により、お客さまや社会のみなさまをはじめとした様々なステークホルダーのみなさまからの信頼を裏切り、多大なご迷惑をおかけしました。本項目は、それを踏まえたものです。

・同行動憲章ではまた「3.適正な情報開示・管理と対話」で、「社会のみなさまとのコミュニケーションを一層推進し、社会に対する説明責任を誠実に果たすことを通じて、透明性の高い開かれた事業活動を行います。」として、「(一人ひとりの行動規範)社会のみなさまとのコミュニケーションを積極的に行います」としている。
(参考 → ◆048◆◆064◆

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◆関西電力 闇歴史◆031◆

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◆関電は美浜3号機の使用済み燃料の交換可能年数を2倍に水増し(2021年)
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サヨナラ原発福井ネットワーク、若狭連帯行動ネットワークは、 2021年7月2日、福井県の杉本達治知事に対して、「-終局迫る原発、原発依存県政からの脱却を急げ!- 関電は、美浜3号機の使用済み燃料の交換可能年数を2倍に水増ししている!!」との申し入れを行った。

 再稼働された老朽原発の美浜3号機について、「実際には、3号プールは3.6回、4.8年で満杯になるところ、廃炉になった1・2号機のプールの空きを3号機用に使い、緊急時に炉心燃料をプールへ移せない恐ろしい状態にしている。いずれも、禁じ手を使うことを前提にした水増しで、許せない!」
「耐震性のない1・2号プールで使用済み燃料の長期保管は危険!!。3号プールに入れて保管すべき!」

【参考サイト】
(1)関電は、美浜3号機の使用済み燃料の交換可能年数を2倍に水増ししている!(2021.7.2 福井県との交渉、サヨナラ原発福井ネットワーク、若狭連帯行動ネットワーク)
こちら

(2)再稼働に備えて、美浜 3 号機のプールを空けるため、保管していた 1・2 号機分の使用済み燃料を急いで 1・2 号のプールに移動(戻)していた!
こちら

【申入書の要約と全文】
申入れの要約
「実際には、3号プールは3.6回、4.8年で満杯になるところ、廃炉になった1・2号機のプールの空きを3号機用に使い、緊急時に炉心燃料をプールへ移せない恐ろしい状態。 いずれも、禁じ手を使うことを前提にした水増しで、許せない!」 「耐震性のない1・2号プールで使用済み燃料の長期保管は危険!!。3号プールに入れて保管すべき!」
******* (以下、申入れ文)
福井県知事 杉本達治様

2021年7月2日

-終局迫る原発、原発依存県政からの脱却を急げ!-
関電は、美浜3号機の使用済み燃料の交換可能年数を2倍に水増ししている!!

サヨナラ原発福井ネットワーク
連絡先:若泉政人

 4月13日の交渉で網本課長は「美浜3号機には1・2号機の使用済み燃料は入っていないので、交換年数は9年と理解している」と答えました。福井県の「発電所の運転・建設年報(令和2年10月)」によれば、たしかに、使用済燃料貯蔵設備増強工事 (平成13年8月完成) を実施し、貯蔵容量が424体から1,118体となっています。

 しかし実際には、美浜3号では、床固定ラックでは基準地震動Ssを満たさないため、補助建屋基礎補強工事とラック取り換えが必要となり、国内初のフリースタンディングラックを導入した2020年4月竣工後は、貯蔵容量は1,118体から809体に減少しています。 関電は、美浜3号プールに貯蔵されていた1・2号の使用済み燃料150体を2016年度内に廃止予定の(耐震基準を満たしていない)1・2号プールへ戻すという本来やってはならない禁じ手を用いたのです。それでも、貯蔵容量から1炉心(157体)+1交換分(52体)を引いた管理容量は600体。すでに2019年度末の貯蔵本数は412体で、余裕容量は600―412=188体しかありません。つまり、あと3.6回で管理容量に達し、燃料交換は4回しかできません。にもかかわらず、関電は交換可能年数を9年と2倍も水増ししているのです。

 また、高浜1・2号機を稼働させ、高浜3・4号機とあわせて4機が稼働すれば、1~4号機のプールが供用されるため、貯蔵容量4,386体から管理容量3,550体を引いた余裕は715体で、1~4号の平均燃料交換回数は3.4回すなわち4,2年で満杯となります。 関電は、2023年末に中間貯蔵施設の建設候補地が決まらなければ、稼働している老朽原発(美浜3号機、高浜1,2号機)を停止させると杉本知事に「約束」しましたが、「この3機を稼働させても4回しか燃料交換できないが、2023年末までならあと2回は交換できてその間は稼げる」との打算で「約束」したのでしょう。使用済み燃料の行き場がない状況に何らの打開策もみえないまま稼働を認めた福井県は、さらに多くの行き場のない使用済み燃料を生み出させる手助けをすることになりました。末代にまでわたる県民へのこの罪はかぎりなく深く重いものです。

次に、具体的に質問します。

① 県が「9年分の燃料交換が可能と理解している」、その算定根拠を示してください。1・2号プールにはまだ102本の空き容量がありますが、これは使えないはずです。なぜなら福島みずほ事務所からの質問に対して規制庁は「2016年度内に1・2号プールへ150体を戻したことは廃止措置中のことだから問題ない」と回答しましたが、その際にわざわざ「原子力規制庁としては、廃止措置計画認可後に、御指摘のような使用済燃料の号機間輸送は実施されていないと承知しています。」と付け加えざるをえませんでした。 関電には、仮に1・2号プール102本分の空き容量を使えたとしても、それでも不足する空き容量を調達できるウルトラF級の隠し玉でもあるのでしょうか。

② 県も令和2年の「運転・建設年報」に1,118体と記載していますが、フリースタンディングラック導入により貯蔵容量が1,118体から809体に減少している事実をご存じなかったのでしょうか。であれば、県民の生命と財産を守るべき県の責務を果たせていないことになります。

③ 5月26日、「美浜1・2号機プールは、基準地震動変更に伴う補強工事を受けておらず、使用済み燃料の長期間保管は認められないと考えるが」の問いに県は「発電所の安全規制は、国が一元的な責任を有しており、国が責任をもって県民、国民の懸念に答える必要がある」とまるで他人事のようにFAX回答されました。耐震基準を満たさぬ脆弱な1・2号プールにあえて使用済み燃料を戻して保管しているなどというゆゆしき事実を知れば、ほとんどの県民が大きな懸念を抱くはずです。国のみならず県の責任も問われていると考えますが如何か。

④ MOX使用済み燃料の再処理を2030年代後半の実現を目標に進めると経産省は〈大本営〉発表をしていますが、余剰プルトニウムの削減問題が足かせとなり、規制庁は六ケ所村の再処理工場の稼働に制限をかけている状況です。その上さらに余剰プルトニウムを上乗せするだけの第二再処理工場など建設運転される見込みなどありえないことは誰の目にも明白です。しかも、予定地すら決まっていません。また、MOX使用済み燃料はプールで90年以上冷却しなければ、乾式容器に入れることができません。このまま高浜が最終処分地になることを承知で県は高浜3・4号機の稼働を認めておられるのでしょうか。

以上

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◆関西電力 闇歴史◆030◆

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◆関電とゾンビ企業・日本原電との腐った関係
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【日本原電というゾンビ企業】
 日本原子力発電株式会社(日本原電、原電)は、東京電力、関西電力など電力9社が中心に出資・設立した企業。原発の運転を行うことによって発電した電力を電力会社に販売する卸電気事業者。敦賀原発2号機の再稼働をめざしているが、規制委に提出したデータに改ざんがあり、審査が中断された(2021年8月18日)。老朽原発の東海第二原発の方は、規制委の審査は通ったが、避難計画ができていないことから、2021年3月18日、水戸地裁が再稼働を認めない判決を出した。保有する原発はともに2011年以来止まったままで、再稼働への道筋が見えていない。原発専業で発電ゼロの会社が、ゾンビのごとく徘徊している。

【関電が北陸電力を切る】
 関西電力と中部電力は、北陸電力志賀(しか)原発の電力を買い受ける契約(北陸電力志賀原発2号機から、関電が電気を受給する契約)を2021年3月末に打ち切っていた。関電の株主総会で稲田浩二副社長が「2021年3月をもって終了しております」と話した。理由は説明されなかったとのこと。
 これまで規模の大きい関電、中部電が北陸電の原発を支えてきたが、今回の打ち切りはこうした「原発互助会」体制に大きな亀裂が入ったといわれる。その影響は北陸電のみならず、電力各社からの不明朗な収入に頼る日本原電にも大きく及びかねない。互助会システムは崩壊するのか、注目されている。

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◆【参考】志賀原発2号機の受電契約期間の15年が2021年の3月で終了……1996年3月15日付にて、北陸電力、関西電力および中部電力の間で、以下の内容を締結した。
・北陸電力が広域運営の本旨に則り、志賀2号機の建設およびこれに関連する系統の整備を行いその供給余力を中部電力および関西電力に融通送電することにより、北陸電力の設備の有効活用を図るとともに、中部電力および関西電力の需給安定に資することを目的とする。
・中部電力および関西電力は、志賀2号機より発生する電力のうち、運転開始以降10年間、さらに運転開始後11年目以降の5年間についても、中部電力、関西電力合わせて最大60万kWを受給し、中部電力4、関西電力5の比率により配分する。
・定めのない事項もしくはより難い事項が生じたときは、誠意をもって3社協議する。
・予期せぬ事由により、電力の受給が相当期間中断された場合や受給開始後に原価の大幅な変動が生じた場合の融通料金の取扱いについては、相応の負担を原則としてその都度3社協議のうえ決定する。
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【関電が切れない日本原電との関係】
 電力自由化のもとで経営の余裕がなくなり北陸電力との関係を切った関電も、日本原電との関係は切れないと見られる。元経産省官僚の古賀茂明氏は、「関電は今や東電に代わり原発政策を推進する盟主。原子力ムラ内の主要プレイヤーとは言えない北陸電は切れても、原発専業の日本原子力発電(原電)は切れない。関電の使用済み核燃料の搬出先の候補地に、東電と原電が出資して青森県むつ市に建設している中間貯蔵施設が挙がったことも絡み、関電が契約を切って原電の息が絶えれば、その道も閉ざされることになる」とみる。(東京新聞2021年7月15日)
 なお、日本原電の副社長は、関電出身の木村仁(1955年6月生)。高浜原発の副所長、大飯原発の所長を経て、2011年6月に原子力事業本部副本部長兼原子燃料部門統括まで登り詰めた。2012年の株主総会で日本原電に放り出されて(出向)、取締役・企画室担任、2014年6月より常務取締役を経て、2019年6月より取締役副社長(二人の副社長のうちの一人)となった。

【日本原電と関電が敦賀市に市道整備を寄付】
 日本原電と関西電力は、2018~21年度、原電敦賀原発がある福井県敦賀市に市道整備費として15億円を提供する(2021年3月報道)。原電の全原発は稼働しておらず、自身の売電収入がゼロの中での資金提供となる。原電に「購入費」を払う東電、関電など大手電力の料金に影響する可能性が大きい。

【関電などが日本原電を不明朗支援】
 日本原電は、東海第二原発と敦賀原発を保有するが、2011年以来ともに稼働していない。発電量はゼロだが、電力5社(東京、関西、中部、北陸、東北)は契約に基づいて、年間1000億円を超える「基本料金」を払い続けている。5社は原電の大株主でもあり、取締役には各社の社長が名を連ねる。電力会社は電気料金の原価にこの「購入費」を算入しており、結局、国民の負担増となっている。「使い捨て時代を考える会」が、関電京都支社にて2021年7月28日に行った話し合いでは「基本料金」として払っていると回答している。
Q 日本原電に電気料金として、最近も毎年ほぼ190億円を支払っておられますが、購入電力はゼロです。購買電気がゼロなのに毎年190億円もなぜ払っているのか。
A 基本料金と使用料金のようなもので、基本料金だ。
Q 190億円が基本料金か。
A そうだ。
(↑上記面談は、こちら

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◆【参考】日本原電が経営情報を隠ぺい……日本原電は、1957年の設立以来初めて有価証券報告書の開示をやめ、会社概況書にかえた。その結果、経営の根幹にかかわる情報が隠されるようになった(2021年9月8日報道)。
・会社概況書では、電力各社に電気をどれだけ販売したかをまとめた一覧表や、各社との関係を示す図がなくなった。有価証券報告書の一覧表を見れば、東電の子会社から369億3000円、関電から188億8500万円などの数字や、原電が発電するすべての電力を大手電力計6社で受電する契約内容が分かったが、それらがごっそり消えている(原電の収入の柱は電力各社が払う金で、電気を供給していなくても支払われる基本料金があると記されていた)。電気を売らなくても、各社から基本料金の名目で入る金の総額は、年計1000億円程度、2011~2020年の10年間の累計で1兆1777億円に上るが、その数字が確認できなくなった。
・都合の悪い情報を伏せるという、日本原電の歴史は古い。1981年、敦賀1号機の冷却水漏れを隠していたことが発覚。1998年には、子会社が使用済み核燃料の運搬容器関連の試験データを改ざんしていたことが明るみに出た。2007年には、原子炉格納容器の気密性を確認する試験で空気漏れを不正にふさいで合格させたことが判明。
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◆029◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆031◆

◆関西電力 闇歴史◆029◆

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◆関西電力労働組合はどうか、労組の役割はどこに? 
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(1) 役員による原発マネー不正還流について

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関西電力労働組合は「役員等による金品受取問題(業務改善計画)の受け止めと対応について」という内容を、労組のWebサイトで公表している。
↓ ↓
会社は、原子力事業に関して、
(2) 原子力事業本部に対する実効的なガバナンス体制の構築
① 原子力事業本部に対する牽制と支援の強化
② 風通しの良い組織の創生に向けた取り組み
と方針をあげているが、
労働組合は、それに対する「受け止めと対応」として
原子力事業運営について、より透明性があるものとなるよう
実効性ある対策でなければならない。」としている(2020年3月30日)。
こちら
そして、
その後、音沙汰ナシ(2021年8月19日現在)。
あれっ、これだけ??
本部定期大会も開かれているだろうに、
さつまいも収穫と森林保全活動の報告だけで良いのか。
→関西電力労働組合のWebサイトは、こちら

▼関西電力労働組合「私たちの考え」はこの三本のみ(2021年8月19日現在)

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(2) 衆院選で必死の関電労組

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2021年10月13日朝日新聞デジタルより →こちら
原発への姿勢で「A~D」のランク付け 必死の関電労組、衆院選で

 原発に逆風が吹く中、電力業界が衆院選を前に活発に動いている。原発が集中する福井2区では、電力労組の関係者が自民候補に接近。関西電力労組は他の選挙区の自民候補も陰で支える一方、野党系候補を原発への姿勢でランク付けし、支援に差を付けている。
 「原子力のことをどう考えるのか」。電力会社の労組関係者は衆院選候補者に迫ります。自民候補に「裏推薦」を出したり、野党候補を原発への姿勢ごとにランク付けしたり。衆院選を前に必死な電力労組の動きを明かします。
 Aは国民、無所属のほか、エネルギー系の議員集団に属する候補で、「推薦し積極的に支援を行う」。Bは立憲候補らで「最低限の対応を行い、組合員への支援依頼は原則行わない」。Cは「形式だけ推薦または支持」。Dは「推薦しない」。原発への姿勢でランク付けした形だ。文書には立憲や国民の具体的な候補者名がある。どのランクに位置するかや、「D→C」などの変更も記されている。
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(3) 組織内国会議員

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関西電力労働組合のWebサイトには、組織内議員紹介のページがあり、
組織内国会議員として、二人があげられている。(2021年)
所属政党名は書いてないが、ともに国民民主党。野党側から原発を推進。
小林 正夫 参議院議員
浜野 喜史 参議院議員
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電力総連の組織内議員が原発推進◆076◆

(4) 関西電力労働組合政治活動委員会

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政治活動のために関西電力労働組合政治活動員会があって、2万人の会員がいる。

大阪府選挙管理委員会に提出した関西電力労働組合政治活動委員会
(大阪市北区南扇町1番14号関労会館内)の収支状況
(平成23年3月10日受付)を見ると、
(→こちら。PDFファイルは「kanden-sikin」[2 MB]
収入総額:180,344,672円
支出総額:121,680,357円

収入項目では、個人の負担する党費または会費が大きい。
員数20,224、金額56,956,800円

支出項目には、寄付があって、電力総連政治活動委員会のほか、
「岩崎たつお後援会」(西宮市)に1000万円、
「小幡のりひと後援会」(高浜町)に100万円、などなど。
大阪府、京都府、兵庫県、和歌山県、滋賀県などの政治家の後援会が並んでいる。
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◆028◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆030◆

◆関西電力 闇歴史◆028◆

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◆コロナクラスター発生でも原発は運転(2021年)
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 各地の原発で、作業員のコロナ感染が増加しているにも拘らず、電力会社は原発運転を続け、政府や原子力規制委員会は、それを制止しようともしません。

 関電の美浜、高浜、大飯の3原発では、これまでに、70人の感染者が確認されています。そのうち38人は8月(2021年8月22日現在)の感染者です。福井県は、美浜原発で4日、高浜原発で7日にそれぞれクラスターが発生したと発表しています。10人のクラスターが発生した高浜原発について、福井県は、関連作業員ら674人を自宅待機としています。高浜3号機で進めていた追加の安全対策工事は一時中断し、再開時期は未定としていますが、稼働中の高浜3、4号機と美浜3号機の営業運転に影響はないと強弁しています。

 美浜原発では3000人、高浜原発では3500人、大飯原発では2500人の作業員が働いていますが、作業の場所や内容によっては、「3蜜」職場になりかねません。また、複数の作業員が狭い空間で、配管の溶接にあたることもあり、暑さと息苦しさのためにマスクを外したくなる場合もあると言われています。原発作業員の多くは、全国各地の原発に赴いて働き、原発近くの民宿やホテル等に長期宿泊し、バスで通勤する等、団体行動もともないます。コロナ感染の確率は高いと思われます。原発は万が一にも重大事故を起こしてはならない装置です。その装置の安全維持を担い、専門技術を持つ作業員の間にコロナクラスターが拡大して、安全維持に手抜きや遺漏が生じてはならないことは自明です。コロナのクラスターが発生した場合、関髪を容れず原発の稼働を停止するのは、最低限の企業倫理です。それでも、関電は、原発運転を継続し、老朽原発の稼動まで行っています。危険きわまりない事態です。

◆027◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆029◆

◆関西電力 闇歴史◆027◆

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◆配管に4cmの穴でも運転継続(2021年、大飯3)
 循環水管ベント弁付近からの海水漏れ

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 2021年8月4日、大飯原発3号機で、タービンを回した蒸気を冷やすために海水を復水器に送る配管からの水漏れが見つかった。8/5に規制委に報告。2系統ある配管の1系統の空気抜き弁枝管の付け根付近に直径4 cm 程度の穴が開いていた。漏れた海水は約20トンとされる。この配管が大きく破損すれば、十分に原子炉を冷やせなくなる恐れがある。
(詳しい位置は→目次ページの図解)

 それでも関電は、原子炉を停止せず、この系統のポンプを止め、出力を65%に下げて運転を続けた。8月10日、雨水による腐食が原因とみられると発表して、8月11日に出力を100%に戻した。しかし、8月13日、補正報告書で雨水原因説を撤回した。原因は何か、安全軽視としか言いようがない。8月9日には、社長が美浜町で「安全の誓い」を読み上げた(◆004◆)ばかりなのに。

「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)」のWebサイト(→こちら)では、次のように追求している。
 関電は8月13 日付補正報告書で、10 日付報告書に書いていた、雨水が該当箇所に達していたという雨水原因説の具体的根拠となる唯一の記述を削除している。10 日付報告書で嘘をついて、原因調査できたとして 100%出力運転に戻し、その後でその具体的根拠の記述を削除したのだ。このようなやり方は許しがたい。報告書は撤回し、大飯3号の運転を直ちに停止し、原因調査をやり直すべきだ。

 関電は、9月3日付の広報「原子力発電所の運営状況について」において、原因は「降雨時に雨水がダクトの外側をつたい、垂れ落ちる状況が長年続いていたこと」などとして、図解を掲示している(→こちら)。ただし、その後、雨水説は撤回。

▼右下が4cmの穴。錆止め塗装はしないのか。(写真は関電による)

◆026◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆028◆

◆関西電力 闇歴史◆026◆

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◆裁判(名古屋地裁)では老朽化の原データ提出を拒否(2020年)
◆ようやく出したデータをみると、ひどい手抜き検査が歴然(2022年)
【付 中性子照射脆化(ぜいか)】
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▲関電の原子力事業本部(美浜町、賄賂の舞台)
「安全を守る。それは私の使命。我が社の使命」

【老朽原発40年廃炉名古屋訴訟(高浜1、2号機、美浜3号機が対象)にて】

 重要な争点の一つが、取り替え困難な原子炉容器の中性子照射脆化(ぜいか。金属が中性子を浴び続けるとねばり強さを失いもろくなること)の問題。関電の評価結果では、脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど。金属は一定の温度以下になるとねばり強さを失いもろくなる、その境界となる温度のこと。中性子を浴び続けると脆性遷移温度は上昇 )が全国の原発の中でももっとも高い温度99℃(60年予測時点)と評価されている高浜1号機 のデータ数が異様に少ない

 そこで、これまで原告は、参加人・関電に対して監視試験片(原子炉容器に同じ鋼材の試験片を入れておいて、中性子を浴びてどのくらいもろくなったかを定期的に取り出して試験をする)の原データを提出するよう求めてきたが、一向に提出されない 。被告・国の方はといえば、関電から受け取っていない、認可に当たって原データを確認しなくても問題ないと開き直っている。 仕方がないので、原告側は、裁判所が提出を命令する手続きを使うこととし、高浜事件の方で手続き(2020年7月13日付)をしている。

【老朽原発40年廃炉訴訟市民の会 8/4 午後の美浜の口頭弁論より】
 露木洋司弁護士が、当訴訟で最も重要な問題の一つとして主張している中性子照射脆化問題のうち、破壊靭性(じんせい)遷移曲線(グラフの左から右に上昇する曲線。緊急時に原子炉容器が冷却水で一気に冷やされ収縮した時に、外面との温度差で強い引っ張り応力がかかる<加圧熱衝撃(PTS)>。この時に内面にひび割れがあると、ひびを広げようとする力を受けるが、原子炉容器の鋼材がこの力に耐えられる靭性=粘り強さを評価した曲線。長年、中性子を浴び続けると粘り強さは低下します)の評価式自体の不合理性などについて、被告・国の反論への反論を行いました。

【上の解説、以下のデッドクロス の図解は 老朽原発40年廃炉名古屋訴訟市民の会Facebook、またはその「デンジャラス君通信 No.17」による】

【破壊靭性遷移曲線(左上)と加圧熱衝撃状態遷移曲線(右下)のデッドクロス】

【中性子照射脆化の著しい(=とくに危険な)原発】
廃炉原発6基を除けば、関電の原発ばかり4基!
その4基のうち3基が40年超えの老朽原発!

【ワーストテンの原発】
(1) 高浜1…脆性遷移温度99℃(試験時期:2009)。
緊急炉心冷却装置の作動などで、99℃より低温になると,割れる可能性。
(2)~(5)廃炉(玄海1,美浜2,美浜1,大飯2)
(6) 高浜4…脆性遷移温度59℃(試験時期:2010)。現在,稼働中
(7) 美浜3…脆性遷移温度57℃(試験時期:2011)。現在,稼働中
(8)~(9)廃炉(敦賀1,福島1)
(10) 高浜2…脆性遷移温度40℃(試験時期:2010)
(『原発はどのように壊れるか 金属の基本から考える』 小岩昌宏・井野博満 著)

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◆「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」より(2022/4/7)
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老朽原発40年廃炉訴訟でようやく関電が提出した監視試験片原データでわかったこと

関電のずさんな試験を見逃した規制委のずさんな審査
老朽原発の評価で重要な直近の試験で、原子炉容器本体である母材の試験をやっていない

・参加人(関電のこと)準備書面(13)の提出により、本件原発においては、破壊靭性試験が各回とも「母材」か「溶接金属」のどちらかしか行われていないこと、最も重要となる直近(第4回)の試験については、「溶接金属」の測定しか行われておらず、原子炉圧力容器本体の状態を把握するための「母材」の測定が行われていなかったことが判明した。これは破壊靱性値(試験データ)の致命的不足というべきもの。

・40年廃炉訴訟の重要な争点の一つである原子炉容器の中性子照射脆化。

原子炉容器は鋼鉄でできていますが、長年、強烈な放射線を浴び続けるともろくなります。
そうすると、配管破断等によって緊急に炉心に冷却水を入れた際に持ちこたえられない恐れが高まります。
そこで、どのくらいもろさの度合いが進んでいるのかを調べる必要があるのですが、関電の評価でも、高浜原発1号機は脆性遷移温度(金属が一定の温度以下になると粘り強さを失って脆くなる境界の温度)が99℃と全国の原発で最も高く、緊急冷却時の破損が心配されていました。

わたしたちは裁判の中で、国と関電に対し、この中性子照射脆化を調べる監視試験片(原子炉容器に同じ鋼材の試験片を入れておいて、中性子を浴びてどのくらい脆くなったかを定期的に取り出して試験をする)の原データの提出を求めてきましたが、一向に提出されないため文書提出命令の申し立ても行いました(裁判所に提出を命じてもらうための手続き)。そこまでしてようやく、裁判所の働きかけにより、命令ではなく任意の形で、前々回2月4日の口頭弁論までに関電から一通りのデータが出されました。

このデータを井野博満さん(東大名誉教授、工学博士、専門は金属材料学)に見ていただいたところ、破壊靭性試験※が非常にずさんでびっくりしたとのこと!
(※試験片にき裂を作り、さまざまな温度下で引っ張ってどこまで耐えられるかを調べる試験)

監視試験片の取り出しは10年ごとで、これまでに4回。試験片には、原子炉容器の母材と溶接金属があり、毎回、両方のデータを取っているものと思っていたのに、1回目と3回目が母材、2回目と4回目が溶接金属という、どちらかしかやっていない手抜きの試験だったのです。しかも、老朽原発の評価で重要な直近の4回目に、原子炉容器本体である母材の試験をやっていないのです。

データ数も、高浜1号機が9個、2号機が10個と極めて少なく、そもそも破壊靭性試験は測定値が大きくばらつくことが知られているので(「倍・半分」と言われるほど)、少ないデータではとても適正な評価はできません。他の原発では、各試験回次ごとに母材と溶接金属の両方を複数個以上試験しています(九州電力玄海1号機、四国電力伊方2号機)。

関電が監視試験片原データの提出をずっと拒んでいた理由には、手抜き試験がばれてしまうということもあったのかもしれません。

原子力規制委員会が審査において監視試験片の原データを確認していないことは、法廷で国の代理人がはっきりと述べています。関電も規制委もずさんすぎます。

どちらも原発を扱う資格はありません。老朽原発はこのまま廃炉に。

【20220407 準備書面(84)破壊靭性値データの不足 →こちら

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◆「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」からの報告(2022年8月)
 手抜き検査で、杉本知事と福井県議会に再稼働の再考を要請
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 老朽原発40年廃炉訴訟市民の会は、関電から監視試験片原データが提出されて判明しました破壊靭性試験の驚くべき手抜きと、規制委がこれを見逃していた事実について、8/2付要請書で福井県の杉本知事と福井県議会にご報告し、老朽原発の運転再開同意について再考を求めました。
 議会閉会中につき、各議員に郵送でもお送りしました。

 昨年、当会は、老朽原発運転再開に同意しないよう求める請願書を福井県議会に提出し、原子炉容器の中性子照射脆化の評価において監視試験片の原データが確認されていない問題についても訴えたところ、県議会では3名の議員が取り上げ、原子力規制庁に対し、関電に同データを提出させ確認するよう求めてくださいました。これを踏まえて、杉本知事にも、この重大な問題をお伝えして、原データの確認を規制委に求めること、運転再開に同意しないことを要請しましたが、残念ながらご対応いただけませんでした。
今度こそ、慎重なご対応・ご判断を!

↓ 要請書はこちらからご覧ください。
2022.8.2 福井県知事・福井県議会あて要請書

<添付資料> 関西電力提出書面より、監視試験片の破壊靭性試験データの内訳の表を抜粋
高浜原子力発電所1・2号機
参加人・関西電力 準備書面(13)p.4

美浜原子力発電所3号機
参加人・関西電力 準備書面(10)p.23

*書面は、当訴訟ホームページに掲載しております。右上の項目の「訴訟資料」よりご覧ください。
高浜事件の原告準備書面(84)「破壊靭性値データの不足」もご参照ください。


◆025◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆027◆

◆関西電力 闇歴史◆025◆

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◆老朽美浜3号機の「フィルター目詰まり」の重大な意味(2021年)
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2021年6月23日に関電が再稼働を強行した美浜原発3号機は、6月29日に送電を開始し、7月3日にフル稼働の試験を行う予定だったが、2日に不具合が発生、フル稼働が1日延期された。問題が起こったのは、非常時に蒸気発生器に注水するための「タービン動補助給水ポンプ」の配管の圧力が低下したとここと。ポンプのフィルター(ストレーナー)に鉄くずが詰まっていた「フィルター目詰まり」という。掃除だけして、7月27日から営業運転に入っている。

しかし、今回の事態は、美浜3号機配管破断事故(2004年)の悲惨な経験(5名が死亡、6名が重傷)(◆004◆)や、その際のタービン動補助給水ポンプの重大な不具合を踏まえ、いざとなった時に、それがきちんと動くのかどうかを確認するための試験で、不具合を起こしたもの。このポンプの作動に不具合があるということは、非常事態を想定しての試験に合格できていないことを示している。 電源の喪失という非常時を想定した試験に不合格のままで、この原発を動かし続けて良いのか。いざとなった時にきちんと動かなければ、炉心冷却ができないままメルトダウンに至る危険が現実となる。タービン動の補助給水ポンプは電源喪失の場合に蒸気発生器に給水する手段として、大変重要な機器である。
(詳しい位置は→目次ページの図解)

【参考】蒸気発生器に水(二次系)を補給する給水ポンプには、主給水ポンプと補助給水ポンプとがあり、「電動」と「タービン動」との両方がある。「タービン動」の補助給水ポンプは、電源が喪失してもタービンの動きで稼働するようになっている。
(この項は、おもに守田敏也さん「明日に向けて 2058」→こちら、による)

◆024◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆026◆

◆関西電力 闇歴史◆024◆

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◆カルテル(不当な取引制限)の疑いで二度の立ち入り検査(2021年)
 関電主導のカルテルなのに、関電は課徴金なし(2022年)
 「主犯」が真っ先に「自首」して罰を免れる

 【付 課徴金減免制度(リーニエンシー)】
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【この項目は以下の順に記述】
◆電力カルテルとは
◆課徴金の金額の相違はどこから?
◆電力カルテル~これまでの経過(降順)

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◆電力カルテルとは
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▼2018年10月から2020年10月まで
▼大規模な工場やビル向けの「特別高圧」や
▼中小の工場や事業所向けの「高圧」の電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせたり、
▼官公庁への電力供給の入札をめぐり、競争にならないよう参加を制限したりしていたこと。
 
「自由化の精神」を無にした大手電力の重大な責任
橘川武郎(きっかわ・たけお)国際大副学長に聞く「カルテル問題」の本質
(東洋経済オンライン)によると
 
大手電力会社は安定供給の責任を果たしているという意識が強すぎるあまり、小売全面自由化後も市場は自分たちのものだというゆがんだ意識を持ち続けてきたのではないか。市場がオープンなものになったことの意味を理解せず、長年にわたる総括原価方式、地域独占時代の企業風土から抜け出すことができないでいる。(→こちら
 

▲電力カルテルの悪質性がよく分かる公正取引委員会の報道発表資料(2023/3/30)こちら
(出所:公正取引委員会)
(旧一般電気事業者=旧一電とは、大手電力10社のこと)

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◆課徴金の金額の相違はどこから?
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電力カルテルの各社への課徴金の違いは、どこから?

カルテル課徴金の算出はおおまかに言って「カルテル締結事業規模と締結期間中の売上げ額×算定率10%」となる。

・九州電力…民間企業向けではカルテルは認定されず、公共入札向けに限られ、約27億円の課徴金にとどまった。また、調査開始後に協力して30%減額されている…関電と同じく課徴金減免制度(リーニエンシー)の適用=調査開始後の協力で、減額された。

・中国電力…高圧・特別高圧の事業が対象とされたため、約700億円の課徴金。中国電は「製造業等」に分類され、課徴金はカルテル対象事業の売上高の10%だったことから、4社の中で最大となった。
(業種による課徴金の算定率の違いは2020年12月の法律改正で廃止された)
(今回の電力カルテルは、2020年10月29日以降に関電が申告した)

・中部電力…事業規模では中国電をはるかに上回るが、約275億円の課徴金にとどまった。中部電(中部電力ミライズ)は、JERA(ジェラ、東京電力FP=フュエル&パワーと中部電力との合弁会社)から電力を仕入れて小売りしていることから、「卸売業」に該当し、課徴金が2%になったため。発販分離していたことで、課徴金が5分の1で済んだ。

┌─────────────
◆電力カルテル~これまでの経過(降順)
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[16]カルテル関係の訴訟(2023年10月12日)

[15]関西電力が経産大臣に業務改善計画を提出(2023年8月10日)

「地域独占の意識からぬけず、自由化の趣旨を理解していなかった。
他人任せ、上意下達の組織風土に問題があった」
 ◆105◆

[14]経産省が業務改善命令

2023/7/14、経済産業省は、電気事業法に基づき、電気事業者に対して業務改善命令などを行った。
(1)「業務改善命令」…関西電力以下5社は、長期にわたって相互のエリアにおける小売りの営業情報の交換を行ってきた。電力の自由化を通じた競争促進は極めて重要であり、今回のカルテルは「電力システム改革」の趣旨に反している。
 ↓(5社)
・関西電力株式会社…2020年3月の原発マネー不正還流(◆018◆)による金品受領問題、2023年2月の情報不正閲覧(◆087◆[6])に続く3例目の業務改善命令。

今回のカルテルは、外部からの通報により発覚した事案である点で、関西電力における法令等遵守、内部監査、コンプライアンス、リスク管理に係る社内体制がなお不十分であったことを示して余りあるものと言える。業務改善命令(→こちら)の内容は「事案の内容及び発生原因を社会に対して公表するとともに、関係者の厳正な処分を行うこと」など。
 以下、業務改善命令の中で、とくに注目される部分。
*****
2017年10月に行った経営層が参加する会議に配布された資料において、「各社が(ベースも含めた)供給力の絞込みを行い、需給構造の適正化、ひいては市場価格の適正化を実現することが重要。」との文言が記載されており、この資料に基づく方針が承認された。このような電力自由化の趣旨に反し、適正な競争を阻害しようとするものであって、電気事業の健全な発達に支障を及ぼすおそれのあるものといえる行為を行った。
*****

・中部電力ミライズ株式会社
・中国電力株式会社
・九州電力株式会社
・九電みらいエナジー株式会社

(2)「電気事業の健全な発達を実現するための対応についての指示」
1.各社が保有する電源の内外無差別な卸取引の強化及びこれを通じた短期から長期まで多様な期間・相手方との安定的な電力取引関係の構築。
2.各社における魅力的で安定的な料金・サービスの更なる選択肢の拡大。
 ↓(13社)
・北海道電力株式会社
・東北電力株式会社
・東京電力ホールディングス株式会社
・東京電力エナジーパートナー株式会社
・中部電力株式会社
・中部電力ミライズ株式会社
・北陸電力株式会社
・関西電力株式会社
・中国電力株式会社
・四国電力株式会社
・九州電力株式会社
・沖縄電力株式会社
・株式会社JERA

(3)「電気事業の健全な発達に向けた電事連活動の在り方についての指導」…電事連の活動の在り方について自ら検証を進め、電気事業の健全な発達に対する懸念を生じさせないよう、法令等遵守を徹底するための具体的な取組及び組織運営の透明性向上に向けて必要な取組を進めること。
 
・電気事業連合会

[13]発覚のきっかけは外部からの指摘

・全大阪消費者団体連絡会(大阪消団連)の機関誌(CYCLE、2023年6月25日、第1184号)によれば、カルテル発覚は、外部からの指摘とのこと。
・2023/6/8、関電による関西消費者団体連絡懇談会(関消懇、大阪消団連など5団体)への説明会では「2020年秋頃に、外部から独占禁止法上、問題ある行為をしているのではとの情報がもたらされ、社外法律事務所による調査を実施。問題ある行為を確認して、2020年10月29日以降に公正取引委員会に課徴金減免申請を行った。」(公取委の最初の立ち入り検査は2021年4月13日)。なお、「“外部”については公表しない」という。
・これまでの不祥事発覚は、関西電力良くし隊(◆041◆)、コンプライアンス委員会(◆032◆)を含めて内部からの指摘、告発によっていたが、カルテルの件は、外部からの指摘という。外部とは、どんなところだろう。

・中国電力では、カルテルの課徴金の責任をとって滝本夏彦社長と清水希茂会長が取締役を辞任(6/28)。関電はどうなんだ。課徴金を免れたからといって、責任がないはずがない。カルテル発覚のきっかけも、社外からの指摘となると、自浄能力の欠如を示しているわけで、より責任は大きいはず。

[12] 中国電力は、島根県、鳥取県にお詫び

「関西電力に損害賠償を請求すべき」
島根県知事、電力カルテル問題で中国電力に要求
(2023年4月14日)

・中国電力は、島根県関連で3件の不適切な入札があったと報告して謝罪した。島根県庁舎、島根県原子力防災センター、島根県中央病院で関西電力と電力カルテルを結んでいた。
・島根県の丸山達也 知事は「中国電力として生じる損害、課徴金の納付という損害、それが関西電力の不法行為として認定できるのであれば、そういう損害賠償請求を中国電力として、関西電力に求めていく、民法まで駆使してちゃんとやってもらうということを強く求めます」と発言。
・さらに、「民法上の損害賠償の請求を検討をされないっていうことであれば、理解しがたいです。検討されるんですか」と中国電力社長に問いただした。
・中国電力の瀧本夏彦 社長は「この場ではちょっと即答できません」と回答。
(全国市民オンブズマン連絡会議が情報公開請求→こちら

中国電力 芦谷茂 副社長が鳥取県にお詫び(2023年4月13日)

・鳥取県庁を訪問した際の面談時の記録
中国電力 副社長……今回の公正取引委員会の独禁法に基づく対応については、我々、今まで競争の中で会社運営をやっていなかったということもあって、その辺の取組をあまり重視することなく、どちらかと言えば、今までどおり安定供給ということに重きを置いてやっておって、お客様目線の取組が欠けたということを今回の事案で学んだところであります。今後、そういうお客さん目線ということも大きな会社運営の柱として、今回の反省事項を取り入れ再発防止をやりながら、また、地域の皆さんに選んでいただく電力会社を目指して取り組んでいきたいという具合に思います……
(全国市民オンブズマン連絡会議が情報公開請求→こちら
  
「競争環境の未経験、安定供給に重き、お客様目線の欠如」など問題点は把握しているか。供給重視で、需要側(お客様)からの視点が欠落しているのは、地域独占と総括原価方式で巨大化してきた電力大手に共通する病となっている。

[11] 関電に対する経産省からの指示など(2023年2月~)

カルテルなどに関して
・3/30、電力・ガス取引監視等委員会が「小売電気事業の運営状況に係る報告徴収」。
 →4/12に報告。
・4/28、経済産業省が「小売電気事業の健全な競争を実現するための対応」に関する指示。
 (1)関西電力が保有する電源の内外無差別な卸取引を強化し、
  これを通じた、短期から長期まで多様な期間・相手方との安定的な電力取引関係の構築
 (2)魅力的で安定的な料金、サービスの更なる選択肢の拡大
について、速やかに、その具体化について検討を行うとともに、併せて、これを実現するための発電事業・小売電気事業の在り方も具体的に検討し、報告するよう指示。期限はなし。

不正閲覧◆087◆)に関して
・2/21、経済産業省が、緊急指示。
・4/17、経済産業大臣が、業務改善命令。

[10] 関電はカルテルを認め、社長ら13人に減給処分

・現経営陣における責任の所在…森望(社長)、稲田浩二(副社長)。
・カルテル行為に係る責任の所在…森本孝(前社長、特別顧問)、弥園(みその)豊一(当時副社長)、岩根茂樹(当時社長)ら。2013/4/12、関電プレスリリースはこちら
・なお、中国電力の清水希茂会長と滝本夏彦社長は、辞任した。

[9] 経産省、補助金交付や契約の指名を停止

 2023/04/03。カルテルのほか、不正閲覧◆087◆)による。
(下記「」の5社は電力・ガス取引監視等委員会が不正閲覧に関して業務改善命令を経産省に勧告していて、両方で処分)
補助金の交付の停止や発注する事業からの指名停止の措置を受けたのは、9社。
・中部電力と子会社の「中部電力ミライズ」
・関西電力と子会社の「関西電力送配電
・中国電力と子会社の「中国電力ネットワーク
・九州電力と子会社の「九電みらいエナジー」と「九州電力送配電
各社への措置の期間は4/3から、親会社については、
・関西電力と中国電力…1年
・中部電力…9か月
・九州電力…7か月

【カルテルで地方自治体も指名停止など】
・大阪府は4/3、関西電力や中国電力など4社に対して入札参加資格の停止措置を取った。
・福岡県は4/10、県が発注する事業について、10/6までの6か月間、九州電力を指名停止にした。
・福岡市も4/10、9/29までの6か月間、九電の入札への参加を停止した。
・鳥取県は4/14、中国電力を6か月の指名停止処分とした。
・広島県は、4/21、関電を2か月の指名除外、中国電力も4か月。
・広島市は市の規定に基づき、中国電力を広島市が発注する事業の入札に参加できない指名停止処分とした。処分の期間は4/24から6か月間。また関西電力も3か月の指名停止とした。
山口県は、中国電力が関西電力とカルテルを結んでいたとして、中国電力を指名停止とした。期間は4/21から1年間。
・島根県は中国電力と関西電力を、28日から指名停止とした。指名停止期間は、共に、県が4/28から6か月、県病院局は12か月間。

【島根県の丸山達也知事の発言】
「中国電力として生じる損害、そういう損害賠償請求を中国電力として関西電力に求めて行くということを強く求めます」
「働きかけてきた側が、何の損害も負わずに、のうのうとしている状況は、中国電力の利用者が理解できる内容ではない」
「損害賠償の請求をされないってことであれば理解しがたいです」

[8] 公取委、巨額の課徴金を命じる

 公正取引委員会は2023/3/30、独占禁止法違反にあたるとして、中部電力や中国電力、九州電力などに対し、合計1010億3399万円の課徴金の納付(10月末までに)と再発防止策を講じるよう命じた。
中国電力に、707億1586万円…旧法で製造業、課徴金は売上の10%
中部電力中部電力ミライズに、275億5590万円…旧法で卸売業、売上の2%
九州電力に、27億6223万円…対象が官公庁との契約のみであったこと、調査開始後に協力して30%減額されたことで、少額にとどまった。
・関西電力、課徴金減免制度で、課徴金はゼロ。

[7] 関電幹部が主導

 関電によると、2020年に外部からの指摘を受けて社内調査を行ったところ、「独占禁止法違反の行為があった」と認識し、公正取引委員会に報告したという。当時社長の岩根茂樹氏ら首脳陣が関西外での営業活動の縮小方針を決め、前社長で当時副社長の森本孝氏が他社に持ちかけたと明らかにした。当時の社長の岩根氏や前社長の森本氏、副社長だった弥園(みその)豊一氏らが営業縮小の方針を決定し、森本氏自ら中国、九州電力に伝達。中部電には川崎幸男常務執行役員=当時=が伝えたと、報道されている。

[6] 関電…安値、値引き攻勢の「取り戻し営業」、不正アクセス、カルテル

 2018年から2020年にかけてのカルテル事件(2021年発覚)は、「不正アクセス事件」(2022年発覚)(◆087◆)とともに、関電の「電力システム改革」無視、法令無視、倫理観欠如の姿を明らかにしている。このカルテルは、関電の極端な安値、値引き攻勢「取り戻し営業」、「不正アクセス事件」ともつながっているのではないか。

【参考】安値、値引き攻勢の「取り戻し営業」(◆087◆)からカルテルへ

日経エネルギーNext「電力カルテルはなぜ起きた? 関電が安値攻勢をかけた2017年からひも解く」(→こちら)によれば、
(1) 原発依存の高かった関電は、2011年福島第一原発事故後、原発停止期間が長引いて、2013年と2015年に電気料金値上げを実施。その後、2016年には、低圧までふくめた電力全面自由化が始まり、新電力や他の大手電力との競争が激しくなった。既存顧客を奪われる状況が続いた関電が反転攻勢に出たのは、原発が再稼働した、2017年後半から。
(高浜原発の再稼働が2017年6~7月、大飯原発の再稼働が2018年3月、5月)
(2)
電力自由化で競争環境が厳しくなった関電は、2017年から「取り戻し営業」としてすさまじい安値、値引き攻勢をかけるようになった。2018年の電力業界は、関電の極端な安値、値引き攻勢の話題で持ちきりであった。関電の小売部門は、送配電会社の情報を不正アクセスで入手し、新電力へ移行した顧客に攻勢をかけたのであろう。
・「関電の電力とガスのセット販売は、関西最大の都市ガス事業者の大阪ガスですら太刀打ちできないほどの低価格だった」
・ライバルの大ガスが出資する地域新電力「いこま市民パワー」に対して、奈良県生駒市の一部の住民が住民監査請求を提起したのも2018年。その理由は、関電が周辺自治体の公共施設の電力入札を軒並み極めて低い価格で落札しており、生駒市が周辺市より割高な電力を購入しているというものだった。
・関電の安値は、当時の日本卸電力取引所(JEPX)スポット市場価格を下回ることもあり、発電所を一定保有しているガス会社も含めて、新電力には、到底、提供できない水準であった。
(3) 新電力は、関電の値引き攻勢が不当廉売なのではないかと疑念。
・新電力の中には、「卸市場価格よりも安価な料金は不当廉売ではないか」「独占時代に建設した設備を利用した安値攻勢は私的独占に当たるのではないか」と、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)や公取委に申告したところもあった。
(4) 極端な安値、値引き攻勢が続いた結果、料金設定が限界費用を無視したレベルに達し、内部で問題になり、その結果、2018年から2020年にかけてカルテルに走って競争を鎮静化する方向になったのでは?との推測。カルテルは、関電からの働きかけと言われている。
・関電をはじめ、大手電力各社は限界費用を正確には把握できていなかった可能性が高い。
・大手電力の場合、発電に関わる費用のすべてを発電部門が負担しているわけではなく、部分的に小売部門が負担しているケースなどもあるもようだ。
・安値、値引き攻勢をやめる必要が生じた際に、腰を据えて限界費用を管理するのではなく、より簡単な手段としてカルテルに走ったのではないか。

[5] ずるいぞ!関電

 関電は他社を誘ってカルテルを主導したのに、減免の申告は他社を誘っていない。自分だけ申告、だから、余計にずるい。「金だけ、今だけ、自分だけ」が明らか。
・読売新聞では、下記の報道あり。九州電力、中国電力、中部電力が、関電が提案したカルテルに応じたのは問題だが、そのこと以外に、一人抜け駆けして、はしごを外した関電に対して怒るのは当然ともいえる。
 
中国電の関係者は「関電主導なのに、課徴金がないのは納得ができない」と話し、九電の関係者も「うちは関電から持ちかけられ、カルテルに応じた。関電がおとがめなしなのはおかしい」と怒りをあらわにした。
・産経新聞
 
(関電は)電力自由化の趣旨をないがしろにし、利用者の信頼を裏切ったとの批判は避けられそうにない。

[4] 関電だけは課徴金免除

 関電が主導したカルテルで、関電だけが課徴金を免除され、九州電力、中国電力、中部電力が多額の課徴金(2022/12/1報道)。九州電力に約27億円、中部電力とグループ会社に約275億円、中国電力には700億円を超える課徴金の納付を命じる見込み。九州、中国、中部の大手電力3社は2018年秋ごろから2020年10月頃まで、企業向けの特別高圧、高圧の電力供給をめぐり、従来の営業エリア以外では積極的な営業をしないよう、関西電力とそれぞれ合意を結んでいた。関電が各社に提案したとのこと。なお、特別高圧は2000年に自由化、高圧は2004~05年に自由化されていた。大手電力各社は、競争による価格の引き下げを避けようとして、ライバルと裏で手を握って一部顧客を欺いていたわけだ。
 また、今回、公取委がカルテルを摘発したということは、電力・ガス取引監視等委員会(電取委)はその不法行為を見逃していたことになる。どうして電取委はカルテルに気づかなかったのか、その点も指摘されている。

【参考:課徴金の金額】
 課徴金は、九州電力に約27億円、中部電力とグループ会社に約275億円、中国電力には700億円を超える額と報道されている。この金額はそれぞれ、どのようにして計算されているかというと、公正取引委員会のWebサイト→こちらに計算方法が明示されている。
 それによると、課徴金の算出はおおまかに言って「カルテル締結期間中の売上げ額×算定率10%」ということらしい。それにしても、中国電力が九州電力に比べて、金額がかなり多いのは何故か。
 今回のカルテルの課徴金対象は、高圧及び特別高圧の各社の売上げと考えられるが、九州電力エリアでは自由化以降、新日鐵等の新電力のシェアが伸びているのに対して、中国電力エリアでは新電力のシェアが限定的。その分、中国電力は高圧、特別高圧の売上額が多くて、その結果、課徴金も多額になったとの見方も。エリア(以前の独占地域、現在の送配電地域)ごとの大手電力と新電力の力関係が、課徴金の金額に影響を与えたという見方だ。
 また、日経エネルギーNext「電力カルテルはなぜ起きた? 関電が安値攻勢をかけた2017年からひも解く」(→こちら)によれば、
・九電…民間企業向けではカルテルは認定されず、公共入札向けに限られ、約27億円の課徴金にとどまった。
・中国電…高圧・特別高圧の事業が対象とされたため、約700億円の課徴金。中国電は「製造業等」に分類され、課徴金はカルテル対象事業の売上高の10%だったことから、4社の中で最大となった。(業種による課徴金の算定率の違いは2020年12月の法律改正で廃止された)
・中部電…事業規模では中国電をはるかに上回るが、約275億円の課徴金にとどまった。中部電(中部電力ミライズ)は、JERA(ジェラ、東京電力FPフュエル&パワーと中部電力との合弁会社)から電力を仕入れて小売りしていることから、「卸売業」に該当し、課徴金が2%になったため。発販分離していたことで、課徴金が5分の1で済んだ。

[3] 課徴金を課すか

 2022年11月25日、公正取引委員会がカルテルを結んだ中部電力中国電力九州電力に、少なくとも計数百億円の課徴金納付命令を出す方針を固めたとの報道。最初に違反を申告した関西電力は課徴金減免制度リーニエンシー)で課徴金は免れる見通しともいわれる。しかし、このカルテルは関電の役員がもちかけたとの報道もある。

【付 課徴金減免制度(リーニエンシー)】
 事業者自らが関与しているまたは過去に関与したカルテルや談合などについて公正取引委員会に対して自主的に申告した場合に、当該事業者の違反行為に対する課徴金がその申告した時期・順位に応じて免除(100%減額)または減額(30%もしくは50%の範囲)される制度。公取委の調査開始前なら100%か50%の減額、調査後なら30%の減額となる。ただし、減免は5社まで。公取委が立ち入り検査を行った段階なら、立ち入り検査を受けた事業者は一斉に社内調査を開始し、課徴金減免制度の利用を検討することになるので、速やかに社内調査を実施し、申請の可否を判断することになる。
 2006年に制度がスタートした当初は運用企業数は3社だったが、2010年の制度見直しで5社に拡大された。申請件数は2016年3月までの約10年間で938件、課徴金が減免されたのは計264社。申し出があった場合だけ申請企業を公表しているが、2015年6月の申請分からは全企業名を公表しており、公取委幹部は「順調に定着してきた」としている。
 なお、リーニエンシーとは、寛大、哀れみ深さ、慈悲、寛容といった意味。つまりは、カルテルの仲間割れを促す制度。

[2] 二度目の立ち入り検査

 公正取引委員会は2021年7月13日、電力販売で互いに顧客の獲得を控えるカルテルを結んでいた疑いが強まったとして、九州電力とそのグループ会社、関西電力中国電力の4社を立ち入り検査した。公取委は4月にも、電力や都市ガス販売でカルテルを結んだ疑いで、関電や中部電力、東邦ガスなどに立ち入り検査を実施した。容疑が事実なら、電力やガス市場の競争を不当に損ない、消費者を裏切る許されない行為である。

[1] 最初の立ち入り検査

 事業者向けの電力供給をめぐり、互いの営業活動を制限するカルテルを結んでいる疑いがあるとして、公正取引委員会は2021年4月13日、中部電力と販売子会社の中部電力ミライズ(いずれも名古屋市)、関西電力(大阪市)、中国電力(広島市)の4社に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査をした。公取委がカルテル容疑で電力会社に立ち入り検査に入るのは初めて。「特別高圧」の電力供給をめぐるもの。各社が従来、電力を供給してきた区域外では積極的な営業活動をせず、顧客を奪い合わないようにしていた疑いがある。合意は2018年から2020年にかけて、関電と中部電、関電と中国電それぞれの間で交わされていたとみられる。

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