関西電力 闇歴史」カテゴリーアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆094◆

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◆関電大阪本店から高浜原発まで、老朽原発うごかすな!リレーデモ、
 関電京都で、関電と関電送配電に
 申入書を手渡しで提出(2023年3月24日)

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2023年3月24日

関西電力株式会社 取締役代表執行役社長 森 望 様
関西電力送配電株式会社 代表取締役社長 土井 義宏 様

老朽原発うごかすな!実行委員会(*別紙注1)

申 入 書

 私たちは、3月21日から、貴社関西電力の老朽原発、高浜1、2号機の再稼働に反対し、大阪の本店前から高浜原発まで230kmのリレーデモを行っています。本日、京都を通過するに当たり、下記の2点を申し入れます。

一.私たちは、すべての原発について、運転を取りやめるよう求めます。原発ではトラブルが多発しています(*別紙注2)。過酷事故の危険性があって被害が甚大になること、使用済み核燃料の処分方法がまったくないことなどから、原発の稼働は許されるものではありません。

一.とりわけ、40年超えの老朽原発(美浜3号機、高浜1、2号機)については、事故のリスクが高く、市民に被ばくを強要することになります。再稼動はもってのほかであり、直ちに廃炉にすることを求めます。

 最近、関西電力、関西電力送配電について、マスコミに報道されるニュースが目立っています。

・2019年に発覚した「原発マネー不正還流」は、最悪の幹部腐敗です。役員など20名余が、福井県高浜町の森山栄治元助役やその関連会社から計約3億6千万円の金品を受領していたとのこと。1億円を超える金品をもらっていた原発事業の幹部もいます。平然と受け取り、しかも隠そうとしてきました。その上、減額された役員報酬の闇補填、追徴課税分の闇補填など、きわめて悪質です。会社幹部としてすべきことではありません。株主訴訟では当然の追及が行われていますが、現経営陣も原告となっている会社訴訟では、腐敗した元幹部にきちんと責任をとらせるべきです。

・2021年には、公正取引委員会が、関西電力のほか、中部電力と販売子会社の中部電力ミライズ、中国電力、九州電力の5社に対し、独占禁止法違反のカルテル(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を行いました。その後の報道では、このカルテルを主導したのは、関西電力とのことですが、課徴金は免除されるようです。電力システム改革がめざす自由で公正な競争を否定するのみならず、資本主義経済の基本原則を犯すような経営は許されません。課徴金を免除されるからと言って、責任をとらなくてよいはずはありません。

・2022年には、関西電力の小売部門が、子会社の関西電力送配電の情報に不正アクセスしていたという報道がありました。その後、不正閲覧は、広範に行われていたことが判明しています。経産省サイトの新電力情報の不正閲覧も指摘されています。電力システム改革の根本を否定する違法行為によって得た情報を、自社営業活動に利用することについて、何の疑問も抱かなかったのでしょうか。

・2022年から報道されている自治体の街灯電気料金過払い。京都市は、照明灯の電気料金約1億100万円を関西電力に過払いしていて、関西電力側に約1億円を返還させることで合意しました。これについて、京都市建設企画部長は「過払いや漏れ生じている立証責任を顧客側に全部投げてきている。関電さんの姿勢というのは我々的には受け入れがたい」とのこと。関西電力は「一度に大量に届くLEDへの契約変更や、撤去による契約廃止が起きた場合にも、適切に対応して記録も残るようにしていきたい」としているが、届けがいくら大量でも「適切に対応して記録も残る」ようにすることは、当然の業務であり、今さら、何を言っているのか。同様の問題は、大阪府、大阪市との間でも起こっています。

・2022年には施工管理技士の国家資格の不正取得、2023年には関西電力送配電が法律で義務付けられた電圧の測定を怠り記録を捏造した件が、報道されています。

 法令順守、コンプライアンスの精神が著しく欠けた会社には、原発をさわる資格はありません。原発は、ひとたび過酷事故が起これば、国土を喪失させるほどの甚大な災害をもたらすからです。

 関西電力は不祥事が多すぎてコンプライアンスが崩壊しています。そんな企業が原発を動かすのだから、恐ろしいこと、この上ありません。関西電力には原発を動かす資格はありません!

以 上

別紙注1、注2[525 KB]

◆093◆←←関西電力 闇歴史→→◆095◆

◆関西電力 闇歴史◆093◆

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◆関西電力送配電、電圧測定怠り記録を捏造、虚偽報告
 経産省が詳細報告求める(2023年3月)

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◆怠慢、捏造、虚偽報告
「使い方がわからなかった」として、虚偽データを報告
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・経産省は2023/3/14、関西電力送配電株式会社が法律で義務付けられた電圧の測定を怠り、記録を捏造していたと発表。問題があったのは、関西電力送配電の一部営業所。経産省は電気事業法に基づき報告を求め、ほかの送配電会社などでも同様の事案がないか、確認を始めた。

・電気の安定供給を確保するため、電気事業法では送配電会社に対し、電圧と周波数を測定し、記録を保管することを義務付けている。違反した場合は30万円以下の罰金が科される。作業は年1回行う必要があるが、関電送配電の営業所の一つが2020年度から3年間、約120か所の家庭を対象に測定していなかった。本店には虚偽の結果を報告していた。問題の営業所では、毎年1回、120程度の家庭を抽出し、その電圧を測定すべきところ、実際は行わずに虚偽の数値を本店に報告していた。不正は確認できる限りでは2020年度から始まっていた。

・関電送配電によると、測定を担当していた社員は「報告書を作成するシステムの使い方がわからず、上司に聞くこともできなかった」と話しているという。関電送配電は「定期電圧測定に対する知識の付与や、業務の進捗状況の管理方法が不十分だった」「報告書の様式が不適切に作成できる仕様になっていた」としていて、これらの調査結果と再発防止策を3/22、経済産業省に報告した。この報告内容は、信じられないレベル。

・関電は不祥事が多すぎてコンプライアンスが崩壊している。そんな企業が原発を動かすのだから、恐ろしいこと、この上ない。

◆092◆←←関西電力 闇歴史→→◆094◆

◆関西電力 闇歴史◆092◆

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◆際立つ関西電力の悪質な経営姿勢!
 原発を含めた基幹インフラをになう公益企業として
 目に余るルール無視、欠如する倫理や規律(2019~22年噴出)
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(1) 原発マネー不正還流…2019年発覚。総額3億7000万円もの金品受領、減額した役員報酬の闇補填、追徴課税分の闇補填、水増し高値発注、利益供与を目的とした発注など、最悪の幹部腐敗。株主による訴訟(◆018◆)では、関電現経営陣も及び腰ながら旧幹部を訴えざるを得なくなった。市民による刑事告発(◆072◆)では、大阪地検が露骨に関電を擁護して不起訴処分を連発しているため、検察審査会が舞台になっている。

(2) 不正資格取得…2021年発覚。グループ全体で社員180人と退職者17人が、国家資格の施工管理技士を不正取得。不正取得者は原発工事15件にも関係。(◆022◆

(3) カルテル…2021年発覚。関電が主導で大手電力のカルテル。自主申告をした関電は課徴金なしになった。自主申告がコンプライアンス(法令遵守)意識によるものか、単なる打算、経済的なインセンティブ(動機)にすぎないのか、地域独占と総括原価方式で培われた唯我独尊の企業体質が問われている。電力システム改革ばかりでなく、資本主義経済の競争原則を真っ向から否定する違法行為の責任は重大。電力業界のリーダー格とされる関電は、罰金を免れたからといって、責任をとらなくてよいはずはない。(◆024◆

(4) 不正閲覧…2022年発覚。関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセスし、競争相手の新電力の顧客情報を盗み見ていた。22年4~12月分では計1013人の社員らが計4万806件分もの情報を閲覧し、営業活動にも利用。関電の社内調査によると、閲覧した社員の4割は「電気事業法上問題になり得る」と認識していた。送配電分離という電力システム改革を真っ向から否認する違法行為。(◆087◆

(5) 使用済み核燃料の中間貯蔵施設を県外に確保…2023年末までに福井県に提示することになっている。過去何回も、約束を破り、前言を翻してきた。その場しのぎ、口先だけで騙しているともみえ、倫理観がまったく欠如している。森本前社長は「2023年末の期限までに計画地点を確定できない場合には、その後確定できるまでの間、美浜3号機、高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたいと考えております」と発言している。森現社長も、「23年末までに計画地点を確定できない場合、運転開始から40年を超えた美浜原発3号機、高浜原発1、2号機は計画地点確定まで運転しないとする方針を引き継ぐ」と福井県知事に約束している。この約束を守ることができるのか。(◆012◆

……使用済み核燃料を何処に置くかを問題にしているわけではない。置き場所を早く決めるべきだと言うことでもない。使用済み核燃料についていえば、増やさないようにしなければならない。これまで何回も約束を守らなかった関電の口先の出任せが倫理観欠如。平気で空約束をする体質が問題。仮に今年はようやく守ったとしても、過去の不履行の非行は消えてなくなったりしない!

◆091◆←←関西電力 闇歴史→→◆093◆

◆関西電力 闇歴史◆091◆

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◆[1]◆福井地裁では、2023年1月現在、
 2件の仮処分裁判が進行中

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(1) 一つは、高浜原発1~4号機の運転差止を求めるもの。中嶌哲演さんと田内雄司さんが2022年に本人訴訟として始めたが、現在は代理人弁護士がついている。2023/1/30に第4回審尋。

(2) もう一つは、老朽美浜原発3号機の運転差止を求めるもの。大阪地裁での美浜3号機仮処分が2022/12/20に却下されたのを受けて(大阪高裁に即時抗告しているが)、それとは別に、福井県民10名が2023/1/13に申立。

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◆[2]◆高浜1~4号機の差止を求める仮処分について……上記[1]-(1)について
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 申立人のおもな主張。
・関電は原発を稼働しうる最大の根拠として「原子力規制委員会が新基準に適合の判断をしたこと」を掲げているが、地元住民としては根本的に疑義がある。規制委は、安全だとは言っていない。
・老朽原発の1・2号機が稼働すれば、危険はつねに緊急、重大である。
・若狭への15基もの集中化こそ、「危険性」を根源的に実証している。
・関西電力は、設置前後から企業倫理を逸脱!
・「あとからくる者のために」原発のない社会を!

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◆設置前後から企業倫理を逸脱していた関西電力!
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 第5準備書面(2022/9/30付)では、申立人が、「設置前後から企業倫理を逸脱していた関西電力!」などの主張のもとに、下記の資料を書証として裁判所に提出。

  • 『父と子の原発ノート――それは若狭に灯をともしたか』~~ゆきのした文化協会・日本科学者会議、1978年。高浜1・2号機反対の運動について。
  • 「脱原発のための小浜市民からの提言」~~『環境と公害』2016年1月号(岩波書店)より
     →本項◆091◆、以下に掲載。小浜市民の半世紀に及ぶ活動を簡約した論考。
  • 「インタビュー 関西電力との50年闘争」~~『世界』2020年4月号(岩波書店)より。高浜3・4号機増設の顛末について。
     →前項◆090◆

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◆[3]◆脱原発のための小浜市民からの提言
 中嶌哲演

 ~~『環境と公害』2016年1月号(岩波書店)より
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1.5次にわたる小浜市民のたたかい
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 15基もの原発群が集中した若狭において、小浜市民がこの40数年間、原発および関連施設を拒否し続けてきたたたかいは、要約すれば以下の通りである。

①小浜原発誘致の第一次阻止運動(1968~72年)
②同第二次阻止運動(1975~76年)
③同第三次阻止運動(1984~87年)
④使用済み核燃料中間貯蔵施設誘致の第一次阻止運動(1999~2004年)
⑤同第二次阻止運動(2008年)

 また、70年代の大飯原発1・2号機の建設、80年代の3・4号機の増設に対しても、実質上の地元住民(同原発から10 km以内の住民分布で、小浜市民は75%を占めていた)として、強力な反対運動に取り組んだ。だが、関西電力や国・県などの理不尽な原子力行政(「地元」は大飯原発の立地自治体の大飯町のみ)によって、阻止に至らなかったことは痛恨の極みである。

 関西電力の小浜原発誘致問題が浮上した頃、小浜市はすでに敦賀市、美浜町、高浜町で建設や計画が進む7基の原発によって包囲されていた。当時の小浜市長や市議会の多数会派も誘致に意欲満々であった。そのような四面楚歌の状況の中で、上記の小浜市民のたたかいは展開されたのである。

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2.美しい若狭を守ろう―共同と協働
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 これまでの運動を支えてぎた小浜市民の理念には、以下の3点があったように思う。

(1) 全運動を通じて、「美しい若狭を守ろう!」のメインスローガンが貫かれた

 上記①では、青・緑・赤の同心円のシンボルマークが大きな役割を果たした。美しく青い小浜・若狭の海を抱きこむ緑の半島や岬、それらを取り巻く原発群の危険な赤。最外円の赤は、その危険を美しい故郷を守る団結の輪に変えようという両義性をもっていた。また①の運動で、6回にわたって全戸配布されたビラの中でも、小浜を訪ねた観光客たちのことばも紹介しながら、次のような一節も含まれていた。

 「水がきれい/新鮮な魚/景色がすばらしい/古い文化財が多いのに感心/素朴、土地の人がとても親切/文化財と自然環境を破壊しないように/自然との調和を図りながら観光都市としての発展を。
…公害列島化しつつあるわが国において、美しい若狭は、いまや私たちだけのふるさとというものにとどまらず、国民的なオアシスになっています。また、こうした条件を生かす地域開発こそ、若狭・小浜の真の発展をもたらすものといえましょう」と。

 若狭の原発群から関西広域圏へ送電されてきた40余年の経緯を振り返るにつけ、小浜市民のこの初心を忘れてはなるまい。

(2) 共同と協働

 これがわが市民運動を支えてきた伝統でもあった。上記①~③の運動を担ったのは、1971年末に結成された原発設置反対市民の会である。60~70年代にすでに分裂していた原水禁運動や反原発運動のはざまで、小浜市民の会を構成した6加盟団体と3オブザーバー加盟団体は、先のシンボルマークの精神にそって、小浜に原発や中間貯蔵施設の設置を許さないという共同目的のもとに団結し、有権者(2万4000人)の過半数を達成する署名運動などで協働した。④の運動では、小浜市民の会だけでなく、若狭小浜の自然と文化を守る会などの広範な共同と協働によって、中間貯蔵施設誘致と引き換えに50年間で約1300億円の交付金をという誘惑を乗り越えて阻止したのである。

(3)「あとからくる:者のために」–注1)

 たとえば、④の運動の渦中で、小浜市民の会は全市民対象のビラの末尾で訴えた。「1970年代に、市民の声に耳傾けられた鳥居・浦谷両市長は、『原発による財源よりも、市民の豊かな心を選ぶ』と、小浜市への原発誘致を断られました。小浜の自然や歴史・文化をふまえた『食中心の町つくり』を高唱されている現在の村上市政にも、『核のゴミ施設』の誘致は決定的なイメージダウンを招くでしょう。何よりも、私たちの『後からくる可愛い者たちのために』再び小浜からの良識の声を上げていきましょう」と。数千世代後の後世代にまでそのツケを残す放射性廃棄物(死の灰)を、新たに生成・蓄積するという一事だけでも、原発の再稼働は許容されないだろう。

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3.3つの「地元」
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 「フクシマ」の惨禍にもかかわらず、原子力ムラと原子力行政は原発の再稼働と延命へ向けて暴走している。その背景をなす過去のプロセスと現在の問題点を、以下のような視座からとらえ直してみたい。

 原発の「地元」概念で、「立地地元」と「被害地元」の2つは定着したが、私は「消費地元」も加えて検討したい。日本列島の原発「地元」は、例外なく過疎・辺境の地域にある。敦賀・美浜・大飯・高浜の若狭の原発群もしかり。しかし、それらの地域が最初から原発を歓迎したわけでは決してない。道路やトンネル、橋などのインフラ整備、巨額の固定資産税や交付金などとの交換条件によって、当初の疑惑や反対運動が押さえ込まれていったのである。ここでは詳論できないが、その過程を「原発マネー・ファシズム」の支配あるいは「国内植民地化」と私は表現している。

 原発が真に「安全」で「必要」であるならば、火力発電所と同じように大都市圏の「消費地元」の海岸部になぜ建設できなかったのか。原発の「安全神話」と「必要神話」は、福島や若狭に1基目の原発が建設された時、すでに原理的にも客観的にも崩壊していたのではないだろうか。

 2014年5月の福井地裁の判決で明らかなように、大事故時の「被害地元」は、いまや250 km圏に及ぶ。それが、立地地元と消費地元を結びつけつつある。と同時に、「立地地元」住民は、目先のメリットのために自然や地域社会を破壊し、後世代に巨大なツケを残す倫理的責任を問われるだろうし、「消費地元」住民も、これまで弱小の地域・住民に危険施設を押し付けてきた倫理的責任を問われるのではないだろうか。原子力ムラや原子力行政の根本的な責任を糾明するとともに、3つの「地元」住民の各当事者性の内実をも反省する必要があろう。

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4.小浜市民からの6つの提言
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 若狭・小浜は、明治時代の一時期、滋賀県に属したことがある。ことほどさように、琵琶湖を介して、若狭と関西圏のつながりは地理的にも歴史的にも深い。小浜から奈良へのお水送りとお水取りの行事でも象徴されている通り、美しい若狭の海の塩や魚介類を畿内に送ってきた食の伝統は、全国の自治体に先駆けて2001年に制定された「小浜市食のまちづくり条例」に継承されている。それに基づく身土不二や地産地消の産業、環境、福祉、教育、観光などへの具体化は、原発関連産業とは両立せず、前記の中間貯蔵施設阻止運動を力強く支えた。

 若狭の原発群の廃炉や後始末へ向けて、私たちは小浜市民の会の隔月刊紙で2012年に次のような提言をおこなった(「若狭の原発を考える一はとぽっぽ通信」第190号より)。

①過酷な被災の後だったとはいえ、福島県は「原子力に依存しない安全・安心で持続的な発展可能な社会つくり」を決断し、国も法的・財政的な支援をすでに始めている。
②福井県も自ら原発震災を被る前に、福島県をモデルにするべきだろう。再稼働・延命存続のための巨額な予算と、脱原発に資する諸事業への予算の配分を逆転させよう。
③かつての国の基幹エネルギーとして石炭から石油へ転換した際に、「産炭地域振興臨時措置法」(1961~2001年)を制定・施行したことも再検討しよう。
④原発の後始末や原発に依存しない地域つくりを試みている海外の先行事例も参照してみよう。
⑤地元の草の根から原発にたよらない方途を模索している若い世代を支援しよう。
⑥原発電力の「消費地元」たる関西大都市圏なども、原発の永久停止を条件に、合理的な電気料金値上げも含めて、脱原発への具体的で速やかな方策にとりかかろう。

 この提言が反映されたのかは不明だが、2013年10月、福井県庁内に、原発依存の地域経済・社会をどう転換していくかという研究テーマも含む「廃炉・新電源対策室」が立ち上げられた。まだ緒についたばかりだが、若狭の住民・福井県民はこれに注目し、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富」(2014年5月21日「大飯原発3、4号機運転差止請求事件」の福井地裁の判決文より)という精神を吹き込んでいかなければならない。

 そのことはまた、関西広域圏の水がめを守るための上記⑥の実践ともつながらなければならない。
(なかじま てつえん・明通寺住職〉


1) 坂村真民(1974)「あとからくる者のために」『詩国』13巻12月号(通巻150号)([1986]『坂村真民全詩集』第3巻(大東出版社)等に収録)。

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◆関西電力 闇歴史◆090◆

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◆「インタビュー 関西電力との50年闘争」(中嶌哲演さん)
 ~~『世界』2020年4月号(岩波書店)より
・関西電力と若狭の原発……反対派を黙らせようとした工作の数々
・反対運動に対する嫌がらせ……原発マネー・ファシズム
・地域から見た森山助役……反対運動をおさえる政治工作に関与
・原発がはらむ差別構造……若狭に突き刺さる差別の逆ピラミッド
・関西電力は今後変わるか?……カギを握るのは市民

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◆送られてきた内部告発文書
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・略
中嶌 関西電力側は、当初、問題を甘く見ていたようですが、ついにトップは辞任に追い込まれ、多くの市民から刑事告発を受けるに至っています。あの不誠実で傲慢無礼きわまる関電幹部達が辞任に追い込まれたことは、かつてない快挙といえるでしょう。内部告発者の勇気ある行動と、報道機関のジャーナリズム、そして市民の広範な運動が、この快挙をもたらしたのです。

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◆断食闘争と裁判
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・略

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◆関西電力と若狭の原発
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――福井県南部の嶺南地区、若狭湾の沿岸には、一五基もの原発がひしめき、文字通り世界一の原発集積地域となっています。

中嶌 関西電力の美浜原発は三基、高浜原発が四基、大飯原発四基、それに日本原電の敦賀原発に二基のほか、高速増殖炉もんじゅ、新型転換炉ふげんもあり、まさに「原発銀座」です。

 私が原発問題にかかわり始めたのは一九六八年で、私の住むここ小浜市で原発建設計画が表面化してからです。そのときすでに若狭では七基の原発が計画決定、建設中だったのです。一九六六年には関西電力が小浜市の内外海(うちとみ)半島の奈胡崎(なござき)に地質調査に入っていました。

 関西電力は小浜に四基の原発計画を持っていました。.私は被爆者の支援に関わっていたのですが、そこから原発誘致に反対する市民運動に関わることとなって、現在に至っています。

 かつてこの若狭は、自然はあくまで美しく、澄みきった海は夏になれば多くの海水浴客を集めて繁盛し、歴史と調和した景観は「海のある奈良」とも呼ばれたものでした。しかし、悲しいことに、この地を原発建設の適地と見た関西電力にとってみれば、そのような自然も景観も人々の営みも無に等しいものでありました。

 この五〇年間にわたって、若狭の人々は、あらゆる抵抗を押しつぶされ、脅され、懐柔され、侮辱され、事実を隠され、不和の種を地域に撒かれ、自由を奪われ、まさに国内における植民地としての位置を押し付けられてきたのでした。市民の抵抗なく原発が立地されてきたのではありません。

 そして、抵抗は現在も続いているのです。そして、その私たちの抵抗を押しつぶそうとする動きの末端に、森山元助役は存在しておりました。

 反対派を黙らせようとして行われてきた工作の数々は、まさに枚挙に暇がありません。私自身も、盗聴や尾行をはじめ、多くの妨害を経験してきました。中には直接的に命を狙われるようなこともあります。大飯原発の建設の際、用地買収には地主に土地を手放させる必要がありますが、,最後まで反対した二人のうちの一人は「住みよい町造りの会」のメンバーでした。彼が会の会議で夜遅く帰宅する際、国道二七号線から路地に入ったところで、後ろから猛スピードで車が突っ込んできて、もし側溝をまたいで民家の塀にしがみつけなかったら、そのまま轢き殺されていたでしょう。これは殺し屋を雇っての仕業ではないかと話題になりました。

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◆反対運動に対する嫌がらせ
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中嶌 小浜では請願署名その他の長年にわたる住民運動の積み重ねの上にどうにか原発建設は阻止できましたが、その過程での嫌がらせといえば、それはもう、いろいろありました。

 小浜市の対岸に位置する大飯原発3・4号機の増設をめぐって、向かいの内外海(うちとみ)半島の集落で若いお母さんに集まってもらい勉強会を開きました。私はただ話をし、数枚の資料を配ったにすぎないのですが、後日、その地区の区長のもとに警察官がやってきて、何人が集まり何を話し何を配ったか事細かに聞いたそうです。その区長から私に対し、「警察沙汰は困る。もう来ないでくれ」と電話がきたのです。せっかく勉強会を継続する話ができていたのに、それで絶たれてしまいました。

 私はすぐ小浜警察署に抗議に行ったのですが、部屋に入ろうとしたら、両側から署員に抱えられ、追い出されました。抗議の内容すら聞かない。後日、知事との交渉の際、こういうことがあったと訴えたら、「民主主義の時代にありえないことだ」と否定して、これも話をろくに聞こうとしない。

 小浜原発反対署名を市議会に提出し、ついに議会で建設断念の決着がついたあと、夜中に私のもとに電話がかかってきて、「月夜の晩ばかりあると思うなよ!」と時代がかった文句の脅迫がありました。

 しかし、高浜や敦賀など、原発現地の住民が受けた嫌がらせは、そんな生やさしいものではありません。生活の根底が脅かされるのです。高浜の老舗旅館の館主は、関西電力や町当局と穏やかな関係をもっていたのですが、批判というほどでもないちょっとした一言が関電関係者の気に障り、半年間その旅館に客を寄りつかなくさせられました。この一例だけで地域の商工業者全体への「示し」となるわけです。

 子どもを楯にとった嫌がらせは本当にたまらないものですが、親が原発に反対していると、その子どもにいじめがいく。巨大な原発を小さな町に押し付けているのですから、ことはいくらでも起きます。

 大飯原発の地元の漁村で、住民投票条例を求める署名に応じてくれた女性が、あとで娘さんの運転する車で血相を変えて事務所に飛び込んできて、「あの署名はなかったことにしてくれ」と抹消を求めたこともありました。近所の人に、「あなたのところは関電の下請けで働いている人がいるよね」と言われたのです。あとでわかったことですが、私たちが署名活動をすることが二、三日前にもれていて、関電が下請け企業に指示を出し、企業の管理職が、その地域の社員に、署名運動に応じないよう地域住民に働きかけろという業務命令を出していたのです。また別の家庭では、署名に応じてくれた妻に対して、漁業補償を得るつもりだった夫の暴力事件も起きました。

 私はこれらを、「原発マネーの支配と、それによる原発マネー・ファシズム」と言っています。札束によって言論の自由、集会の自由、署名の自由をことごとく束縛していくのです。

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◆地域から見た森山助役
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――今回、森山栄治元助役の存在が注目を浴びていますが、地域から見た場合にはどのような存在だったのでしょうか。

中嶌 関電が発注する工事の割り振りなどに介入していたとのことですが、先ほども申し上げたように、森山元助役の存在は、地域では反対運動をおさえ、反対派の町長などが当選しないよう政治的に工作することにも携わっていたと私たちは認識しています。

 反対運動の初期、一九七〇年後半、高浜3・4号機増設に反対する福井県知事あての署名に取り組んだことがあります。高浜町民からも二千数百筆ほど集まったのですが、あろうことか高浜町の職員が県に署名の閲覧を請求し、町民提出分を全部カメラに収め、署名者のうちの有力な人に圧力を加えていったのです。これは森山氏が高浜町の収入役から助役になった時代のことで、彼の指示ないし関与があったでしょう。

 この時の最大の山場は、一九七八年の高浜町長選挙でした。それまで「高浜の海と子どもたちを守る母の会」の反対署名や議会傍聴の取り組み、請願活動もあって関電から当時の浜田倫三町長・森山助役に流れた「黒い九億円」、実際には十数億円とも言われていますが、黒い霧を追及する町内の宣伝行動も行なっていました。そうした町民の声を背景として、慎重派の元小学校長が出馬し、一騎打ちとなりました。この方は保守ではあっても良識派で、3・4号機増設については、「まず町民の声を聞く」という態度で臨んでいました。私どもからみれば生ぬるい公約ではありますが、それでも、森山元助役たち推進派にとってみれば脅威だったでしょう。握り飯に一万円札が入っているといったうわさが飛び交う熾烈な選挙となりました。結果は、四〇〇〇票対三六〇〇票で浜田氏が五選を果たしたのですが、後日談があり、町長選の三ヵ月前に、新しく六〇〇人が高浜町民として住民票を移していたのです。関西電力や下請け企業の従業員、それに3・4号機建設が決まればそれを請け負うゼネコンの従業員たちで、それが町長選の結果を変えたわけです。森山氏はリアリストで、住民感情をリアルに認識していた。このまま町長選に突入したら危ない、負ける、と思ったのでしょう。関電に進言し、推進派の「住民」が送り込まれ、その結果、3・4号機建設に至ったのです。最近の報道で、この時期に関電トップと森山氏が会っていたということが出ていましたが、さもありなんと思います。森山氏はこうしたこともメモとして残していたようで、それを関電経営陣への脅迫にも利用していたようですから、その点もジャーナリズムには引き続き追及してほしいと思います。

 高浜町で森山氏のことを知らない人はおらず、「天皇」とも呼ばれる力をもっていました。原子力という閉鎖的で巨額のカネが飛び交う世界には、多くの「天皇」が必要となるようで、関電にも「天皇」はいたようですし、福井県の政財界に君臨する熊谷組の二代目社長・熊谷太三郎氏は「熊谷天皇」と呼ばれ、のちに参議院議員、原子力委員会の委員長も務めました。長く北陸三県の長者番付のダントツ一位。今回、森山氏の介入の中でも名前が出てきましたが、熊谷組は若狭の原発建設を支配していました。

 森山氏が関電に資金を還流させていた問題は、原発立地の現地と、それを押しつけてきた関西電力の「両極」に歪みを生んだと思っています。現地では森山氏や彼がかかわる吉田開発などの存在が現れ、もう一方では、ばらまいたカネを自分の懐に還流させる、関西電力のモラル崩壊を生じさせた。

 3・11を経て、もはや原子力産業自体が末期症状を呈しているのです。

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◆原発がはらむ差別構造
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――関西電力に対して今、言いたいことはありますか。

中嶌 モラルが地に堕ちた関西電力ですが、私は必ずしも絶対悪という全面否定はしたくないと思っています。電力会社は、形態としては私企業ではあっても、私たちの生活に必要な電力を供給する、公共的性絡を帯びている事業体です。この公共性に沿った企業運営があってしかるべきです。

 原発は負の部分が重くて大きい。若狭は、その原発を受け入れたことにより、それまで放置されつづけてきたインフラ整備は進みました。出稼ぎに出ずとも働ける場所ができました。しかしそれは麻薬的なメリットであり、地域は分断されました。

 他地域の原発も基本的には同じ構造で、自分たちが受け入れたものが何だったかを思い知らされたのが、福島の原発事故でした。

 なぜ若狭に原発が集中したのか、そこには、幾重にも重なる差別構造があります。若狭の中でも原発立地場所となったのは、半島の先端で、もともと不便をかこっていた地域でした。しかし、その若狭は、福井県にとってはどういう土地か。福井県は木ノ芽峠を境に、旧越前の嶺北地域と、主に旧若狭の嶺南とに分けられますが、一九七〇年代当蒔、福井県の人口約八〇万のうち嶺北に六五万人、嶺南は一五万人です。インフラ整備などは福井市など嶺北が優先され、嶺南は後回し。そこに一五基の原発ができたのです。明治維新で福井県が誕生して以来の「南北問題」で、若狭は本来関西とのつながりの方が強いのです。

 日本列島の中の福井県という位置、さらに、アメリカに従属的な位置に置かれている日本という構造もあります。膨大な体積の差別的な逆ピラミッドが、この小さな若狭地域に突き刺さっているといえます。

 被ばく労働者の数は、ヒロシマ・ナガサキの被爆者の数を最近、上回りました。被ばく労働者を犠牲にしながら、現代都市文明の「繁栄」はあるのです。そして何より不都合な事実は、大型原発一基でも広島に投下された原爆の一〇〇〇発分の死の灰が一年間に生まれ、長崎原爆の三〇発分のプルトニウムが生成されていることです。非常に危険な施設だからこそ、日本列島の不便をかこっていた地域に押し付けてきたのです。その構造の末端部分の不正だけが問題なのではありません。そのような不正がなければ、再稼動が、原発という存在が、許されるのでしょうか。若狭の一住民、一仏教者として声を大にして言いたいのは、このことです。

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◆関西電力は今後変わるか?
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 今回の不祥事を契機として、関西電力には変わってもらわないと困るのです。関西電力の新経営陣、いや、すべての電力会社は、真の公共的な企業として生まれ変わり、住民の声に謙虚に耳を傾け、未来のない危険な原発から脱却していかなくてはなりません。

 まず、新経営陣は、原発再稼働について、いかなる方針で臨むのか。もはや時代の趨勢は明らかであり、今回の事態を奇貨として、原発ゼロの方向へ転換すべきです。

 関電内部で内部告発があったのですから、良心的な社員もいるのです。電力会社の労働組合は原発推進の役割を果たしていますが、労組員のみなさん、こんな電力会社のままでいいんですか。

 引き続き電力会社の自浄作用にも期待をかけたいと思いますが、関西電力内部を変えること、原子力ムラを変えること、立法・行政・司法の三権を変えること、差別構造を転換していくこと、これらすべては、やはり私たち市民がどれだけ学習を深め、運動を広げて、脱原発への転換をはかっていけるかにかかっています。至難の業ですが、そうでない限り状況が自動的に変化することはありえません。

 若狭の原発が生み出す電力は、ほぼすべて、若狭の山々を切り刻むグロテスクな送電線に乗って、関西の都市部に送電されておりました。都市部の住民の方々にこそ、この若狭の問題を自分の問題として考えていただきたい。関西電力の株式の十数パーセントをもっているのは、大阪市、神戸市、京都市などの都市部の自治体です。カギを握るのは市民なのです。

◆089◆←←関西電力 闇歴史→→◆091◆

◆関西電力 闇歴史◆089◆

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◆神戸製鋼所の巨大石炭火力発電所は膨大なCO2を排出!
 その電気をほぼすべて買い取り、販売する関電は、
 石炭火力発電所の廃止に向けた行程表を作成せよ!
 神戸製鋼所を相手にした神戸石炭訴訟の判決は3月20日

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 神戸市灘区では神戸製鋼所が、2基の大型石炭火力発電所を運転中。これに加えて、新たに2基の巨大な石炭火力発電所の建設が計画され、4基になろうとしている。2022年2月から3号機が運転開始、4月から4号機が試運転を開始した。これで、神戸発電所1~4号機から年間最大1,372万t-CO2が排出されることになる。これは日本における温室効果ガス排出量(年間)の約1.3%に相当する膨大な量。大量のCO2だけでなく、PM2.5などの大気汚染物質も排出される。

 これら4基の石炭火力発電所でつくられた電気は、関西電力がほぼすべて買い取る契約になっている。

 「神戸の石炭火力発電を考える会」は、かつての大気汚染公害裁判の被告企業である神戸製鋼所、関西電力が、再び神戸の大気を汚すことは、公害地域の再生の取り組みに逆行する暴挙と批判している。大気汚染、気候変動への影響をかえりみず、新たな石炭火力発電所を稼働させようとしている神戸製鋼所、ならびに発電された電力を買取り、販売する関電に対して抗議するとともに、2030年までのできるかぎり早期に石炭火力事業から撤退することを強く求めている。

 京都市は株主提案として石炭火力の新設禁止を求めている。しかし、神戸市は名を連ねていない。関西電力の株主として、神戸市は関西電力に対し、経営方針の転換を求め、神戸発電所との受給契約の早期解消を求めるべき。また、CO2を削減し温暖化目標(世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える1.5℃目標)を実現するには、京都市提案のように石炭火力の新設禁止を求めるだけでは不十分。関電に対して、受給契約先の発電所を含む石炭火力発電所の廃止に向けた行程表の作成を求めることも必要となっている。

 以上、「神戸の石炭火力発電を考える会」→こちらより

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 神戸石炭訴訟…民事判決は 3/20
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 神戸石炭訴訟は、2つの訴訟からなる。→こちら

(1) 一つは、神戸地裁において、石炭火力発電所の建設・稼働をすすめている神戸製鋼所に対して、建設と稼働の差し止めを求める民事訴訟。大気を汚し、地球温暖化を加速させる石炭火力発電所の建設計画に反対。2022年10月に結審、2023年3月20日(月)に判決期日を迎える。

(2) もう一つは、気候危機が深刻化するなかで、石炭火力発電所の建設を認めた国の判断・責任を問う行政訴訟。こちらは神戸地裁の敗訴判決(2021年3月15日)、大阪高裁の敗訴判決(2022年4月26日)をうけ、現在は最高裁へ上告し、審理するか否かについて検討中となっている。

 原告は、大阪高裁の控訴審判決について、CO2の大量排出という重大な人権侵害行為を、現時点では行政訴訟では一切争えないとする憲法上保障されている「裁判を受ける権利」をも侵害するものであり、PM2.5 について本件アセスで評価していない点は、環境アセスの制度の根本的欠陥を示すものと批判。

 こちらの訴訟については、この裁判で何が争われているかについて、初めて触れる方にもわかりやすく伝える必要があると考え、行政訴訟をテーマとした法廷ドラマが制作されている。

 YouTubeドラマ「温暖化で争えない?発電所稼働をめぐる国との裁判」(本編)| Kobe Climate Case, Legal Drama, No Coal Kobe → こちら

◆088◆←←関西電力 闇歴史→→◆090◆

◆関西電力 闇歴史◆088◆

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◆関電の電源構成は、原子力、石炭、石油で50%近い!
 環境汚染など汚れた電源→汚れた電気で、
 二酸化炭素も出しまくり
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原子力、石炭、石油で50%近い
被ばく、大気汚染などをまねく汚れた電源→汚れた電気
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 関電の電源構成(2021年度実績→こちら)の上位をみると、以下の通り。
1位…原子力、27.9%
2位…LNG火力、23.0%
3位…石炭火力、17.0%

・汚れた電源の原子力と石炭火力で、約45%をしめる。石油火力2.8%を加えると、50%近くになる。
・原子力は、事故を起こさなくても、トリチウムなどの放射性物質を環境に拡散させる。過酷事故を起こせば更に悲惨な結果をまねく。
・原発を運転するには、被ばく労働が必須となり、生命と健康をむしばむ。
・石炭、石油は、硫黄酸化物、窒素酸化物、PM2.5など大気汚染の元凶として、問題が大きい。

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二酸化炭素も出しまくり
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 発電方法別、二酸化炭素排出係数(kg – CO2 / kWh)…1kWhの電気をつくるために排出する二酸化炭素kgは、以下の通り。
(資源エネルギー庁、「発電燃料の燃焼直接排出」+「設備の建設など間接排出」)
・石炭火力…直接0.887+間接0.088
・石油火力…0.704+0.038
・LNG火力…0.478+0.130
・LNG火力(コンバインド)…0.408+0.111(コンバインドサイクル発電→ ◆074◆
・太陽光…0+0.053
・風力…0+0.030
・原子力…0+0.022(←核燃料製造、使用済み核燃料の処理などのCO2は??)
・地熱…0+0.015
・水力…0+0.011

 中国電力のWebサイト(→こちら 「かけはし」397号4ページ)では、『原子力・エネルギー図面集』から作成として以下の図を掲載。数字は少し異なるが、傾向は同じ。(単位が「g – CO2 / kWh」になっている)
 

◆087◆←←関西電力 闇歴史→→◆089◆

◆関西電力 闇歴史◆番外編 003◆

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◆「関西電力 闇歴史」へのご招待
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◆万が一にも重大事故を起こしてはならない原発企業、関西電力をめぐる闇歴史の数々!を掲載しているのが、「関西電力 闇歴史」です。ことの始まりは、「老朽原発うごかすな!実行委員会」において、あまりに不祥事や非常識なことが多い関電について、悪口集をつくってはどうか、という提案があったことです。タイトルは、「黒歴史」という案もありましたが、議論の結果、「黒」の文字を避けて「闇」になりました。

◆2021年8月に、30項目あまりで公開、スタートし、2021年9月頃、紙のパンフレット形式で少部数配布したこともありました。しかし、印刷も大変ですし、在庫を管理する手間もかかります。紙に固定化しないほうが、内容の訂正、追記、新規追加などに臨機応変に対応できることから、現在はWebサイトでの掲載のみにしています。

◆闇歴史の項目数は、開始以来1年以上たち、2023年1月で、90に拡大しています。各項目、用語ごとにリンクを貼っていますが、項目が増えてきて、何処に何が書いてあるのか、編集者自身も分からなくなってきました。そこで、2022年12月に、目次ページのほかに索引ページをつくり、300程度の用語を整理しました。この索引のお陰で、訂正、追記などが抜群に楽になり、編集者自身がいちばん恩恵を被っています。

◆サイトは、[ 京都脱原発原告団>市民運動の紹介>関西電力 闇歴史>目次または索引>各項目 ]とたどっていくほか、「関西電力 闇歴史」の検索ですぐにヒットします。Googleアナリティクスでみると、京都脱原発原告団のWebサイトの中で、いつもトップページに次いで第2位の閲覧数があります。闇歴史のネタは、新聞報道のほか、過去の出来事を丁寧に調査した材料を一括提供していただいたこともあります。昔の新聞記事など、お気づきの闇歴史がありましたら、ご教示ください。

◆関西電力 闇歴史◆番外編 002◆

大規模発電は高リスク–実例とともに

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【大規模発電はリスクが多い】
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 大規模な原発や火力発電は、トラブルで停止すると、供給力が大幅に低下し、需給ひっ迫ブッラクアウト(大規模停電)をまねくリスクが大きい。大規模発電への依存は、災害により安定供給が脅かされること、燃料費高騰の影響を受けやすいこと、などのリスクもある。需給ひっ迫への対応は、再生可能エネルギーの拡大と、需要の削減、エネルギー効率化=省エネが重要。

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【大規模発電のリスク、実例】
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(1) 2022年3月22日の「電力需給ひっ迫警報」……3月16日の福島県沖の地震により、東北、東京エリアの火力発電所6基(計約330万kW)が停止。まったく別のトラブルによる磯子石炭火力発電所の停止(3/17に新1号機、3/20に新2号機が停止。各60万kW)。そこに寒波の到来が重なったことが原因。→東電管内で初めて「電力需給ひっ迫警報」。ただし、停電には至らず。

(2) 2022年6月26日の「電力需給ひっ迫注意報」……2022年5月、警報(予備率3%をきる)のほかに注意報発令(予備率5%をきる)の仕組みが導入された(「警報」の前に「注意報」を出すことになった)。そして、6月26日初めて「電力需給ひっ迫注意報」を発令。3月に発生した福島沖地震によって(上記(1)のこと)大きな被害を受けた複数の火力発電所の再稼働、修理が年内には終了しないという状況で、各地で記録上最速の「梅雨明け」となり、連日、猛暑日が発生したことが原因。ただし、停電には至らず。

【注意】初めて「電力需給ひっ迫注意報」を発令…「史上初めて」ではない。「5月に制度ができて以来初めて」という意味。前月にできた制度に基づいて発令したということ。

(3) 2021年1月の電力市場価格の異常高騰……大手電力の燃料制約(LNG・石油燃料在庫の減少により燃料を節約するために発電量を低下)。関電の原発は、高浜3、4のトラブル、大飯3、4のトラブルや定期検査で、12~1月にはすべて停止していた(美浜は再稼働前)。

(4) 2018年9月6日北海道でのブラックアウト……北海道胆振(いぶり)地方東部地震は厚真(あつま)町で最大震度7を記録。北海道で最大の石炭火力発電所である苫東(とまとう)厚真火力発電所が、震源に近いことから機器の一部が壊れ、発電を停止(1、2、4号機。計165万kW)。それが原因で、発電所の停止から、全道295万戸の停電に至った。

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【「新しい」原発の虚構】
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 政府がかかげる夢のような核融合炉、高温ガス炉、高速炉、小型モジュール炉など「新しい原発」は、極論であり、まったく論外。これらはさておいて、すでにヨーロッパで建設中とされる改良型軽水炉でも、目の前の需給ひっ迫には間に合わない。原発の建設には、20年とか長期間が必要。

 その上、建設費は、これまでの原発が多くて5000億円とされる中、ヨーロッパでは1兆円とか2兆円といわれる。電力システム改革(◆087◆)によって、総括原価方式(◆036◆)という「打ち出の小槌」のような錬金術が使えなくなった今、投資が回収できる見通しがない。原発と石炭火力にしがみつくばかりで、小売自由化による競争激化に四苦八苦している大手電力には、そんな大規模投資の余力も資金力もない。

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【再エネ中心の電力システムへ】
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 さらに言えば、わが国では電力需要は一貫して減少しているし、人口も減少していくので、危機をあおり立てるのは、政府と大手電力、原子力ムラのヒステリックな宣伝だけ。自然災害を除けば、需給ひっ迫そのものの現実性は、小さくなるばかり。

 仮に電力需給が厳しくなったとしても、これからは、供給側ではなくて、需要側の調整が重要となる。衰退産業の原発を建設している間に、再生可能エネルギーのコスト低下はすすみ、再エネ中心の電力システムが求められるようになる。広域的な電力融通、蓄電池などの技術開発、揚水式発電所の活用など、新しい方向はいっそう明らかになるだろう。

 関電の老朽原発再稼動によって「西日本壊滅」といった過酷事故が起こらない限りは、という条件付きですが(2023年1月4日)。

◆関西電力 闇歴史◆番外編 001◆

関西電力 この11年(2022年末)

————————————————<福島事故後、原発依存体質の関電は経営悪化>
2011年~…福島第一原発事故後、原発停止期間が長引き、関電は経営悪化
————————————————
2012年…5月5日、泊原発3号機が定期検査で運転停止→初めて全国の原発がすべて停止(同年7月5日に大飯3号機が再稼働されるまでの2か月間、日本は原発ゼロであった
————————————————<脱原発運動のもりあがり>
同年…7月5日、大飯3号機が、新規制基準ができていない中で再稼働→この前後から、全国各地で原発差止裁判、関電前抗議行動などがもりあがる。
【京都では】関電京都支店前では、2012年4月18日にリレー式ハンストがあり、6月29日(金)から毎週、金曜日スタンディング(キンカン)が行われるようになり、今日にいたる。なお2022年1月21日に500週目となり、2022年末の12月30日に549回目。2012年11月29日には、1107名の原告が京都地裁に大飯原発差止訴訟を提訴した
————————————————<脱原発運動に対して警察権力を使った弾圧>
同年…関電本店ビル前行動などに一連の弾圧(関西脱原発弾圧事件)◆069◆
————————————————
同年…関電東海支社ビル前行動に対する弾圧(関電東海支社事件)◆068◆
————————————————<ついに2年近く日本は原発ゼロとなる>
2013~2015年大飯4号機が2013年9月15日定期点検のため運転停止。そして、2015年8月11日に川内1号機が再稼働(新規制基準による最初の稼働)されるまで、1年11か月、日本は原発ゼロであった
————————————————<原発が動かず経営悪化、2回の電気料金の値上げへ>
2013年2015年…関電が電気料金値上げ。関電幹部、電気料金値上げ審査会合でユーザー目線欠落を露呈 ◆044◆
————————————————
2014年5/21…福井地裁で大飯3、4号機運転差止の判決(樋口英明裁判長)

————————————————
2015年4/14~2015年12/24…福井地裁の仮処分決定で高浜3、4号機がとまる(樋口英明裁判長)
————————————————<電力自由化で競争が激化し、苦境へ>
2016年…電力システム改革の第二段階。低圧までふくめた電力全面自由化が始まり、新電力や他の大手電力との競争が激化 ◆087◆
————————————————
2016年3/9~2017年3/28…大津地裁の仮処分決定で高浜3、4号機がとまる
————————————————<原発再稼動をすすめ「安価な」電気にめどをつける>
201718年…原発再稼動。高浜3、4号機が2017年7月、6月。大飯3、4号機が2018年3月、5月。
————————————————<極端な安値、値引き攻勢の営業を大展開>
2017年…安値、値引き攻勢の「取り戻し営業 ◆087◆」。その手段として、送配電部門の顧客情報を不正利用か
————————————————
2018年…電力業界は、関電の極端な安値、値引き攻勢の話題で持ちきり→不当廉売の声も
————————————————
同年…京阪電気鉄道は、2018年5月、大阪府や京都府を走る「京阪本線」の動力用の電気について、購入先を新電力のエネット(東京)から関電に切り替えた。関電の取り戻し営業が成功した例とされる ◆087◆
————————————————<極端な安値、値引き営業を沈静化するためカルテルへ>
2018年2020年カルテル(関電主導で、中部電力、中国電力、九州電力)によって極端な安値、値引き競争(原価を無視した価格競争になっていた?)の抑制に転換か ◆024◆
————————————————<コンプライアンス問題が噴出>
2019年…森山元助役との関係、原発マネー不正還流発覚 ◆072◆
————————————————
2020年…関西電力送配電株式会社が分離。関電による顧客情報への不正アクセスは継続か
————————————————
同年…原発マネー不正還流で、会社訴訟と株主訴訟が開始 ◆018◆
————————————————
同年12/4…大阪地裁で大飯3、4号機運転差止の判決(行政訴訟)
————————————————<約束違反を何度も繰り返して平気な倫理観欠如>
2021年…使用済み核燃料の県外搬出2020年末の約束を守れず。関電社長は「2023年末の期限までに計画地点を確定できない場合には、その後確定できるまでの間、美浜3号機高浜1、2号機の運転は実施しないという不退転の覚悟で臨みたいと考えております」◆012◆
————————————————
同年…送電線保安業務で架空発注のコンプライアンス違反6件が発覚 ◆032◆
————————————————<電力システム改革に敵対する違法行為–その1>
同年カルテル事件(関電主導で、中部電力、中国電力、九州電力)が発覚。関電は課徴金を免れる(2022年)◆024◆
————————————————
同年老朽美浜3号機、6月再稼働するも4か月で停止。2022年8月再稼動 ◆071-1◆
————————————————
2022年…違法な資格取得(施工管理技士)発覚、少なくとも197人 ◆022◆
————————————————<電力システム改革に敵対する違法行為–その2>
同年不正アクセス事件発覚(関電の小売部門が送配電子会社の情報に不正アクセス)◆087◆
————————————————<相変わらずの原発依存、いっそう深まる>
同年…化石燃料の費用増大で、大手電力5社(東北、北陸、中国、四国、沖縄)が次々と規制料金の値上げを申請。関電も、2023年3月期に8期ぶりに最終赤字に転落する見通し。しかし、関電は値上げを申請しないとのこと。年末現在で、関電の原発は、大飯3、4号機高浜3、4号機、老朽美浜3号機と5機がフル運転。2023年には老朽高浜1、2号機の再稼動も予定。こうした原発依存で、価格競争を乗りきる構えか。確かに、燃料費高騰で、新電力も値上げや新規契約停止などで苦しく、関電からの顧客流出は著しく少なくなっている(低圧、関電離れデータ[9]こちら)。しかし、過度の原発依存は、事故の危険性をますます大きくするのではと、ここがいちばん危惧される。(2022年12月30日)
————————————————