投稿者「meisei」のアーカイブ

◆関西電力 闇歴史◆071–7◆高浜原発2号機

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◆高浜原発2号機–トラブルまとめ
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[1] 高浜原発2号機「2018~22年度のトラブル」
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(以下、詳しくは → Ver5_kanden_trouble_2018-22[151 KB]
【高浜2】
・2021/8/18…高浜2、安全対策工事における協力会社作業員の負傷(入院1か月)、足場開口部から転落→◆009◆(6)
【高浜1、2】
・高浜1、2号機の2019~22年のトラブル→高浜1(◆071–6◆
・高浜1、2号機の再稼動…別記項目へのリンク→高浜1(◆071–6◆

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[2] 関西電力「高浜発電所2号炉 高経年化技術評価書(40年目)
 2014年11月」
(→こちら)からみた高浜原発2号機 事故・故障等一覧
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・高浜2号機のトラブルはひじょうに多い。「原子炉自動停止」や「蒸気発生器伝熱管の損傷」が目立つ。それぞれの内容は調査が必要。
・「高経年化対策に関する報告書」の一覧 →こちら

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原発再稼働に猛進する関電、トラブル続出
「2018~22年度のトラブル 一覧表」、「関電の原発の稼働状況 一覧表」 → ◆071◆

・美浜原発3号機のトラブル → ◆071-1◆
・高浜原発1号機のトラブル → ◆071-6◆
・高浜原発2号機のトラブル → ◆071-7◆(このページ)
・高浜原発3号機のトラブル → ◆071-2◆
・高浜原発4号機のトラブル → ◆071-3◆
・大飯原発3号機のトラブル → ◆071-4◆
・大飯原発4号機のトラブル → ◆071-5◆
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◆070◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆072◆

◆関西電力 闇歴史◆071–6◆高浜原発1号機

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◆高浜原発1号機–トラブルまとめ
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▲高浜原発。手前が1、2号機。奥が3、4号機。

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[7] 蒸気漏れで出力を40%に抑制
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・2024年1月22日、高浜原発1号機で配管(原子炉格納容器外のタービン建屋「給水ブースターポンプ」付近)から蒸気が漏れる不具合が見つかったと発表した。ポンプは3台あり通常は2台を稼働し、蒸気発生器への給水ポンプを補助する役割。配管は放射性物質を含まない冷却水などが循環する「2次系」の施設にあり、環境への影響はないという。当面、配管への負荷を減らすため、通常の40%の出力で発電する。
・関電によると、最初に蒸気漏れが発見されたのは、発電用の蒸気発生器に高温の水を送る補助的な配管3本のうち1本。21日午後11時25分頃に点検中の職員が発見した。さらに22日午前5時ごろ、別のポンプで、冷却水が通常よりも多く漏れていることが新たに確認された。ポンプは残り1つあるが、2つのポンプを止めて点検するため冷却水の供給が減ることから、22日午前9時すぎから出力を通常の40%まで下げた。
・高浜原発1号機は、2024年で運転開始から50年となり、廃炉になっていないものとしては国内で最も古い原発で、東京電力・福島第一原発の事故のあとおよそ12年にわたり運転を停止していたが、2023年7月に再稼働した。
・2/6の関電のプレスリリースによると、原因が分かったとして、出力を100%に戻すとのこと。→こちら。新聞報道では、2/8に100%復帰。

▼関電のプレスリリースより

▼福井県の原子力安全対策課 …高浜発電所1号機の出力降下について(給水ブースタポンプの調査状況)(2024年1月31日)。図解が詳しい→ こちら

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[6] 50年超え60年運転へ、保安規程の変更を申請
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・関電は、2023年11月2日、50年超え運転にむけて、運用体制などを定めた保安規程の変更を、規制委に申請した。運転開始から60年時点でも問題なく運転できるとしている。50年超え運転に向けた申請は、初めて。
・高浜1号機は国内で最も古い原発。2023年7月に再稼働。2024年11月に運転開始から50年を迎える。
・原発の運転期間は、福島第一原発事故をうけて「原則40年、最長60年」となっていたが、岸田政権は2023年5月に、60年運転を可能とする法律「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」を作っていて、2025年6月に全面施行される予定。

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[5] 運転上の制限逸脱
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・2023/7/28に再稼働した老朽原発・高浜1号機で、8/15、「格納容器内高レンジエリアモニタ(高レンジ)CH4故障」警報、保安規定の運転上の制限逸脱が発生。格納容器内高レンジエリアモニタ※1は、事故時の格納容器の放射線量率を確認するために設置されている。
 以下、関電のプレスリリース。
・格納容器内高レンジエリアモニタ(高レンジ)の関連機器を調査した結果、当該モニタから中央制御室に指示値を伝送する回路に瞬時的な電圧の変動を確認しました。この電圧変動は、回路の構成部品の一部に一時的な不具合が発生したことによるものと推定し、それらを予備品に取り替え、健全性に問題がないことを確認したことから、8/22、15時00分に保安規定の運転上の制限を満足する状態に復帰しました。
※1:事故時の格納容器の放射線量率を確認するために設置しているモニタ。高浜発電所1号機の高レンジエリアモニタ(高レンジ)は、CH3とCH4の2台があり、そのうち1台(CH4)で指示値の低下を確認したもの。

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[4] 火災報知器の場所が工事計画と異なる位置に
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・高浜1、2号機をめぐっては、規制委が2023年3月、火災防護対策が不十分だと指摘。関電が追加工事を終え、5月15日から規制委の使用前検査を受けたところ、火災感知機が工事計画と異なる4か所に設置されていたことが新たにわかった。
・6/1の報道では、火災検知器4基が工事計画と異なる位置に設置されていることが分かった。その後、関電が調べたところ、この4か所を含めて約90か所で、再び追加工事が必要であることが分かった。
・関電は6/1、高浜原発1、2号機の再稼働時期が「未定」と発表した。「火災防護対策に係る対応のため」としている。当初は1号機を6月3日、2号機を7月15日から再稼働させる予定だったが、原子力規制委員会の指摘を受けて5月に「遅れる見通し」に変更していた。

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[3] 2018~22年度のトラブル
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(以下、詳しくは→ Ver5_kanden_trouble_2018-22[151 KB]
【高浜1】
・2018/10/6…高浜1、格納容器上部遮蔽設置工事における協力会社作業員の負傷、鉄材が落下し作業員に
・2020/4/11…高浜1、安全対策工事で協力会社作業員が脚立から転落→◆009◆(4)
・2021/12/1…高浜1、事故対応訓練中の協力会社作業員の負傷(入院2か月)、移動したホースが当たった
【高浜1、2】
・2019/9/19…高浜1、2、安全対策工事で協力会社作業員のCO中毒、9人が搬送、換気が不十分→◆009◆(1)
・2020/3/13…高浜1、2、安全対策工事で協力会社作業員がトラックにひかれて死亡、トラックが誘導なくバック→◆009◆(3)
・2021/10/19…高浜1、2、深夜のタワークレーン解体作業で重傷→◆009◆(7)
・2022/1/31…高浜1、2、アスファルト固化建屋で火災、溶接補修で養生シート発火
・2022/12/9…高浜1、2、海水電解装置建屋で火災。分電盤の母線に取り付けられた接地器具に過電流が流れ、接地器具の被覆から発火

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[2] 関西電力「高浜発電所1号炉 高経年化技術評価書(40年目)
 2013年11月」
(→こちら)からみた高浜原発1号機 事故・故障等一覧
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・高浜1号機のトラブルはひじょうに多い。初期には「原子炉自動停止」が目立つ。それぞれの内容は調査が必要。
・「高経年化対策に関する報告書」の一覧 →こちら

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[1] 老朽高浜1、2号機の再稼動…別記項目へのリンク
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・高浜1、2号機…2021年再稼働できず ◆013◆
・高浜1、2号機運転延長審査 ◆047◆
・高浜1、2号機…火災が発生 ◆058◆
・高浜1、2号機再稼働のデタラメ-その1~3 ◆058◆
・高浜1、2号機再稼働のデタラメ-その1 ◆014◆
・高浜1、2号機再稼働のデタラメ-その2 ◆013◆

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原発再稼働に猛進する関電、トラブル続出
「2018~22年度のトラブル 一覧表」、「関電の原発の稼働状況 一覧表」 → ◆071◆

・美浜原発3号機のトラブル → ◆071-1◆
・高浜原発1号機のトラブル → ◆071-6◆(このページ)
・高浜原発2号機のトラブル → ◆071-7◆
・高浜原発3号機のトラブル → ◆071-2◆
・高浜原発4号機のトラブル → ◆071-3◆
・大飯原発3号機のトラブル → ◆071-4◆
・大飯原発4号機のトラブル → ◆071-5◆
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◆070◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆072◆

◆安倍晋三氏の国葬に反対する!

【2022年8月19日,京都キンカンで配付】

福島原発事故を招き、それでも事故被害者の
切り捨てを謀り、原発推進に奔走し、米国との
核共有を主張した安倍晋三氏の国葬に反対する!

若狭の原発を考える会・木原壯林

 つい10年前までは、節約を否定して消費をあおる、物価高を招いてインフレを進める、格差を広げる、嘘をつく、捏造する、公文書を改ざん・破棄する、歴史認識を歪曲する、市民の権利を制限する、戦争を準備する、政治的立場を利用して私利私欲を誘導することは、悪であった。しかし、長期に亘って政権に居座った安倍晋三氏は、これらを全て推進し、浪費をあおり、物価高を招き、格差を拡大させ、嘘で固めた政治を重ね、かつての悪を当たり前のこととした。大仰に言えば、有史以来の倫理観を逆転させ、改ざんしようとしたのである。その安倍晋三氏が、殺害され、国葬が行われようとしている。理不尽この上ない。

安倍氏は、原発に関しても、以下の例のような大罪を犯している。

●原発全電源喪失に関わる警鐘を無視して、福島原発事故を招いた

 例えば、2006年12月、共産党の吉井英勝衆議院議員は「質問主意書」を第一次安倍政権に提出し、「原発からの高圧送電鉄塔が倒壊すると、原発の負荷電力がゼロになって原子炉が停止するだけでなく、停止した原発の機器冷却系を作動させるための外部電源が得られなくなるのではないか」と質したが、安倍首相は「外部電源から電力の供給を受けられなくなった場合でも、非常用所内電源(バックアップ電源)からの電力により、原子炉の冷却は可能」と答弁している。吉井議員はさらに、スウェーデンのフォルスマルク原発では、4系列あったバックアップ電源のうち2系列が事故で機能しなくなった事実を示し、日本の原発の約6割はバックアップ電源を2系列しか持たないが、2系列で同時に事故が発生すると、冷却不能になる」と指摘し、非常用電源喪失に関する調査や対策強化を求めたが、安倍首相は「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所とは異なるから、同様の事態が発生するとは考えられない」とこれを一蹴している。

 福島原発が重大事故を起こした最大の原因は、バックアップ電源の喪失である。もし、安倍首相がバックアップ電源を検証し、海外並みに4系列などに増やしていたら、福島原発事故は避けえたかもしれない。安倍首相がバックアップ電源対策を拒否し、事故を未然に防ぐ最大のチャンスを失したことは、明らかに犯罪行為である。

●嘘で固めて、オリンピックを招致

 2013年9月、安倍首相は、ブエノスアイレスでのIOC総会で、福島原発の汚染水問題に関して、「状況は完全に制御されている」「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」という大嘘をつき、世界の人々を騙して、オリンピックを東京に招致した。

 福島原発事故から11年を経た今でも、事故を起こした原発の内部は、高放射線のため、ごく一部しか分からず、溶け落ちた核燃料の取り出しの目途も立っていない。大量の放射性物質汚染水が溜り続け、太平洋に投棄されようとしてる。「コントロール不能」であることは明白である。

●首相を辞めた後も、原発と核兵器の拡大に奔走

 安倍元首相は、首相辞任後の2021年4月、自民党の「最新型原子力リプレース推進議員連盟」の最高顧問に就任し、原発と核兵器の拡大を画策している。

 安倍元首相は、2月に始まったウクライナ紛争に因るエネルギー逼迫に乗じて、「原発再稼働」を進めるだけでなく、「リプレイスも考えなければならない」とし、小型モジュール炉への建て替え、高温ガス炉などの推進を画策している。また、戦争の危機をあおって、米国との「核共有」を主張している。火事場泥棒のような行為としか言いようがない。

 以上のように、安倍元首相は、福島原発事故を回避する方策をとらなかったのみならず、圧倒的な脱原発の民意を蹂躙して、福島事故後も原発推進に奔走している。また、福島原発事故避難者の支援の打ち切りをほのめかし、まだまだ放射線レベルの高い福島原発被害地への避難者の帰還を強要する棄民政策を実行している。

 その大罪人・安倍晋三氏の国葬は、許されるものではない。

◆9/6 第34回口頭弁論のお知らせ

・電話、FAX、葉書による連絡で原告席参加を希望される場合は、まもなく郵便を発送しますので、その案内にしたがって申込ください。
・メールによる参加申込は、8月24日のメーリングリストによる案内を受信されてから申込ください。
・今回の重要な変更点は、以下の通りです。
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・開廷前の裁判所周辺デモは、行いません。
・原告席の募集は、先着順です。
・模擬法廷、閉廷後の報告集会は、鴨沂会館2Fホールとなります。
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◆特別のお願い
傍聴席の制限は解除されています。可能な範囲で多くの皆さまの傍聴ご参加をお待ちしていますが、無理をされないようにお願いします。
発熱や風邪のような症状のある方、体調不良の方は、参加をお控えください。マスク着用をお願いします。咳エチケットの励行をお願いします。また、消毒液が用意されていますので、お使いください。
・模擬法廷&報告集会の会場入口では、念のための連絡用として、氏名と電話番号をご記入ください。2週間程度で廃棄します。

◆タイムテーブル
【コロナ禍の現状にかんがみ、開廷前の裁判所周辺デモは、行いません。】
・13:25(見込み)…傍聴券の抽選リストバンド配布開始。地裁北玄関前。傍聴は誰でも参加可能
・13:40(見込み)…裁判所による傍聴席の抽選リストバンド配付終了。直ちに抽選→傍聴券の配布。抽選にもれた方、入廷を希望されず模擬法廷に参加される方は14:30までに鴨沂会館ホールの模擬法廷へどうぞ
・14:30…開廷、弁論開始。同時刻に鴨沂会館2Fホールで模擬法廷も開始
・15:45頃から…閉廷後、鴨沂会館2Fホールで報告集会。30~60分程度

裁判に参加する方法…以下、三つの方法があります。
原告の皆さまは下記、[1] 原告席か、[2] 傍聴席か、[3] 模擬法廷のいずれかでご参加ください。
原告でない方は、[2]か[3]でご参加ください。

[1] 原告席…法廷の中で柵の内側に、原告として入ります。
被告「関電、国」の正面に座ります。
・原告団が氏名を裁判所に通知します。希望される場合は、郵送の案内またはメーリングリストにしたがって、事務局宛ご連絡ください。
・コロナ以前は合計35名ほどの原告が参加できましたが、今回は、10名程度となります。
・定員に達するまで、先着順で受け付けます。

[2] 傍聴席…法廷の中で柵の外側。88席あります。
傍聴席に座るには、裁判所が抽選を行います。
・13:25~13:40(見込み)の間に、京都地裁正面玄関前で、抽選リストバンドが配布されます。
・傍聴席は、原告でない方も、誰でも抽選によって参加することができます。
・傍聴席に入ることができなかった場合、または、最初から法廷に入ることを希望されない場合は、次項に記載の模擬法廷にご参加ください。

[3] 模擬法廷…弁護団が用意します(法廷と同じ14:30開始)。そこに参加するには
・鴨沂会館2Fホールへ、直接おこしください。
・法廷よりもわかりやすく、弁護団が解説します。
・事前に提出されている被告(国や関電)側の書面があれば、その解説も行います。

◆報告集会の開催
・法廷の終了後、鴨沂会館2Fにて報告集会を開催します(15:45頃から16:30頃まで)。
・裁判の進行などを、弁護団から説明いたします。裁判に関するご質問などもどうぞ。
・コロナ禍の状況によっては、報告集会自体を取りやめる可能性もあります。その場合は、あらかじめ原告団Webサイト(「京都脱原発原告団」で検索可)に掲載します。
・電話でのお問い合わせは、090-5660-2416(吉田あて)。

◆報告とお礼~8.10「老朽原発・美浜3号再稼働阻止現地緊急行動」に80人

【2022年8月12日,京都キンカンで配付】

猛暑にもコロナにも負けず
8.10「老朽原発・美浜3号再稼働阻止現地緊急行動」に80人

 電力会社、政府、財界などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争によるエネルギー逼迫や炭酸ガス削減を口実にして、原発の稼働に躍起です。また、岸田首相は、冬向け電力の逼迫を喧伝し、9基の原発を稼働させる方針を発表しています。

 しかし、電気は足りています。一時的な電力逼迫はあっても、節電によって回避できます。このことは今年3月の、地震と寒波に起因する東北、東京エリヤでの電力不足、6月末から7月にかけての猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

 したがって、人々に放射線被ばくを強いる原発を稼働させる必要は全くありません。とくに、圧力容器の脆化が進み、配管トラブル多発の蒸気発生器を持ち、原子炉空焚き過酷事故の危険性が高い、老朽原発・美浜3号機、高浜1,2号機の再稼働などもっての外です。

 それでも、関電は、原発に前のめりな政府に乗じて、10月に予定していた美浜3号機の運転再開(並列)を8月12日(10日再稼働)に前倒しすると発表していましたが、8月1日に水漏れ(後述)が発覚し、再稼働は延期されています(8月11日現在)。

 再稼働予定の美浜3号機は、昨年6月に一旦再稼働したものの、特定重大事故等対処施設の設置が間に合わず、わずか3ヶ月間の営業運転で停止を余儀なくされていたものです。しかも、この短い運転中に二度もトラブルを発生させています。一つは、蒸気発生器中の2次冷却水が喪失したとき、緊急給水するポンプに大きな圧力がかかるトラブルです。関電は、「ポンプ入り口にある金属製のフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かそうとして準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と原子力規制委員会のいい加減さは許されるものではありません。

 さらに、美浜3号機では、再稼働を目前にした去る8月1日、放射性物質を含む水7トンが漏洩していることが発覚しています。漏れ出た放射性物質量は、220万ベクレルと発表されていますが、国が法令上のトラブルとする370万ベクレルに近い量です。

 なお、関電の原発では、再稼働の直前、直後にトラブルが頻発しています。トラブル頻発は、配管腐食、機器の損傷、機器の点検や保守・交換時の施工ミス(ボルトに閉め忘れや溶接ミス等)は防ぎきれないことを示唆するとともに、関電の弛緩しきり、傲慢な体質のためだとも考えられます。トラブル頻発の原発再稼働を許してはなりません!

8.10「老朽原発・美浜3号再稼働阻止
現地緊急行動」に決起!

 「老朽原発うごかすな!実行委員会」は「老朽原発完全廃炉を勝ち取るまで、粘り強く、何度でも決起する」の決意の下に、再稼働延期に関わらず、8月10日に予定していた「老朽原発・美浜3号再稼働阻止現地緊急行動」を予定どおり決行し、美浜3号機再稼働を画策する関電に抗議し、美浜町の皆さんに老朽原発再稼働阻止の行動への参加を呼びかけました。

 8月10日、美浜原発近辺(美浜原発に通じる丹生大橋前を北に約300mの道路脇)に、京都、大阪、滋賀などの関西、福井市方面、若狭各地、美浜町内からマイクロバス、自家用車などで結集した約80人は、原発前をデモ行進(13時出発)して、「美浜3号このまま廃炉!」「原発全廃!」を力一杯訴えました。後、関電原子力事業本部前に移動して、14時30分から抗議・申し入れ行動を展開しました。抗議集会は、「京都脱原発原告団」の吉田明生さんの司会で進行し、「老朽原発うごかすな!実行委員会」の中嶌哲演さん、美浜町議の松下照幸さん、「オール福井反原発連絡会」の林広員さん、滋賀、大阪、京都の代表が、トラブル多発の原発の稼働を画策する関電を糾弾し、各地での脱原発・反原発の闘いを報告され、「原発全廃」に向けての強い決意を延べられました。途中、代表が、関電の経営陣への「危険極まりない老朽原発・美浜3号機の再稼働準備の即時中止と廃炉」「関電の原発の全廃」を求める申し入れ行いました(申し入れ文は後に掲載)。

 抗議行動後は、猛暑の中の町内デモ(約2km)に移り、炎天にも届くシュプレヒコール、ショートコールによって「老朽原発・美浜3号廃炉」「原発全廃」「トラブル続き、銭金まみれの関電糾弾」を訴えました。町内デモの途中、各所で美浜町の皆さんのご声援を得ました。「美浜町民です」と名乗ってデモに参加された若い女性もおられました。なお、8.10行動の宣伝途中にも、「老朽原発うごかすな!」の鉢巻きをまいた街宣車をご覧になった若い女性から「思いは一緒です」との激励とともに、多量の冷たいお茶の差し入れていただきました。

8.10行動にご参加、ご支援いただきました
皆様、ありがとうございました。
老朽原発・美浜3号機廃炉に向けて
さらに前進しましょう!


2022年8月11日

老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先・木原(090-1965-7102)


▼毎日新聞 2022年8月11日

▼美浜原発前デモ行進

▼関電原子力事業本部前集会

▼美浜町内デモ行進

▼美浜町内デモ行進

原子炉空焚き過酷事故の危険性が
高い、老朽原発・美浜3号機の
運転を許してはなりません!

老朽原発・美浜3号機完全廃炉を
目指して、現地、関西および全国での
行動に総決起を!

老朽原発完全廃炉を突破口に
原発のない、人の命と尊厳が
大切にされる社会を実現しましょう!

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◆関電への申し入れ
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関西電力株式会社 取締役会長 榊原 定征 様、
取締役社長 森 望 様、
原子力事業本部長 松村 孝夫 様、
美浜発電所長 高畠 勇人 様

申し入れ

 原発は現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生から11年を経た福島原発事故が、大きな犠牲の上に教えています。

 その原発が老朽化すれば、原子炉圧力容器の脆化や配管の損傷などが進み、過酷事故の危険度が急増することは多くが指摘するところです。

 また、原発を動かせば、何万年もの保管を要する使用済み核燃料がたまりますが、その永久保管はおろか、中間貯蔵すら引き受ける所もないことは、貴関西電力(関電)がよくご存じのことです。

 さらに、2月に始まったウクライナ紛争では、欧州最大の原発・ザポリージャ原発やチョルノービリ原発が攻撃され、戦争になれば、原発は格好の攻撃目標になることが実証されました。原発はあってはならない施設なのです。

 それでも、財界や政府などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争によるエネルギー逼迫や炭酸ガス削減を口実にして、原発の稼働に前のめりです。また、岸田首相は、冬向け電力の逼迫を喧伝し、9基の原発を稼働させる方針を発表しています。

 しかし、電気は足りています。一時的な電力逼迫はあっても、節電によって回避できます。このことは今年3月の地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、6月末から7月にかけての猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。したがって、放射線被ばくを強い、子々孫々にまで負の遺産・使用済み核燃料を残す原発を稼働させる必要は全くありません。

 ところで、貴関電は、原発推進の機運に乗じて、10月に予定していた美浜3号機の運転再開を8月12日に前倒しすると発表していましたが、後述のように、8月1日に水漏れが発覚し、再稼働は延期されています。

 再稼働予定の美浜3号機は、昨年6月に一旦再稼働したものの、特定重大事故等対処施設の設置が間に合わず、わずか3ヶ月間の営業運転で停止を余儀なくされています。しかも、この短い運転中に二度もトラブルを発生させています。一つは、蒸気発生器中の2次冷却水が喪失したとき、緊急給水するポンプに大きな圧力がかかるトラブルです。関電は「ポンプ入り口にある金属製のフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かそうとして準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と原子力規制委員会のいい加減さは許されるものではありません。さらに、美浜3号機では、再稼働を目前にした去る8月1日、放射性物質を含む水7トンが漏洩していることが発覚しています。漏れ出た放射性物質量は、220万ベクレルと発表されていますが、国が法令上のトラブルとする370万ベクレルに近い量です。

 一方、美浜3号機と同じ加圧水型原発・高浜3、4号機、大飯3、4号機でも、これらの原発は運転開始後40年に至っていないにも拘らず、たびたびトラブルが発生しています。例えば、高浜3号機では、定期点検中の本年3月、蒸気発生器の伝熱管3本の外側が削れて管厚が大幅に減肉・損傷していることが発覚しています。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊がはがれて、伝熱管を削ったためとしています。この配管損傷によって、5月に予定していた再稼動は2ヶ月以上遅れました。同様な伝熱管損傷は、2020年11月および去る7月9日、高浜4号機でも発覚しています。これらの原発の蒸気発生器3基の中には、腐食等によって、2トン以上もの鉄さびや鉄イオンが発生しているとも報道されています。

 頻発するトラブルの中でも、320℃、160気圧近くの高温・高圧水が流れる蒸気発生器伝熱管などの1次冷却系配管の損傷は、とくに深刻です。これらの配管が完全破断すれば、1次冷却水が噴出して、原子炉が空焚きになり、メルトダウンに至る可能性があるからです。そのため、蒸気発生器は「加圧水型原発のアキレス腱」といわれていますが、美浜3号機の蒸気発生器は、取り替え後約26年を経た老朽装置で、配管の完全破断を起こしかねません。

 原子炉空焚き過酷事故の危険性が高い、老朽原発・美浜3号機の運転はもってのほかです。

 ところで、政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は過酷事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。ただし、政府や自治体が考えている避難訓練は、原発立地自治体住民のごく一部のみが参加する日帰り訓練です。政府や自治体は、原発過酷事故では、住民の多くが、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視して、「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているに過ぎません。

 なお、美浜原発から100 kmの圏内には、福井県、京都府、滋賀県のほぼ全域、大阪府、兵庫県、岐阜県、奈良県の多くの部分が含まれます。福島事故では、事故炉から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、美浜原発で過酷事故が起こったとき、数百万人が避難対象となりかねません。避難は不可能です。30~80 km圏内にある琵琶湖が放射性物質で汚染されれば、関西1450万人が安全な飲料水を失います。

 以上のように、原発は、トラブルが多発し、何万年もの未来にまで負の遺産となる使用済み核燃料を残し、一旦過酷事故を起こせば、事故終息は絶望的に困難で、多くの人々の故郷と生活基盤を奪い去り、戦争になれば、格好の攻撃目標になります。原発は、人類の手に負える装置ではありません。

 このような視点に立って、私たちは、貴関西電力に、以下を申し入れます。
【1】危険極まりない老朽原発・美浜3号機の再稼働準備を即時中止し、廃炉を決定してください。
【2】原発を動かせば、行き場がなく、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料が増加します。貴社の有する全ての原発を停止し、安全な廃炉を進めてください。

 なお、7月13日の東京地裁「東京電力株主代表訴訟]判決では、福島原発事故前の東電幹部の対応には「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と述べ、東電旧経営陣に、原発事故によって東電に与えた損害・13兆円の賠償を命じています。

 貴職らが、多くの危険性指摘を無視して老朽原発を稼働しようとしていることは「安全意識や責任感が根本的に欠如している」との批判を受けて当然であり、圧倒的な「老朽原発うごかすな!」の民意を蹂躙して老朽原発を稼働させ、重大事故が起こった場合、それは貴職らの故意による犯罪であり、許されるものではないことを申し添えます。

 貴関西電力は、昨日・8月9日を「安全の誓いの日」として、2004年8月9日に発生したような重大事故を二度と繰り返さない決意を新たにされていますが、「安全を誓う」のであれば、「原発全廃」を宣言すべきだと考えます。
2022年8月10日

8.10「老朽原発・美浜3号再稼働阻止現地緊急行動」
参加者一同

◆関西電力 闇歴史◆075◆

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◆ビーチが素晴らしい高浜町、「ブルーフラッグ」の認証をうける
 地元の喜びは当然ですが、
 将来とも美しい自然環境を生かしていくには、原発廃炉が必須では?
★何故かここで場違いに自慢してはしゃぐ関電、
 「安全な」原発のそばで遊んでね、と言いたいのか?
★高浜原発沖合の海水からはトリチウムが検出され、
 そのトリチウム濃度は全国平均よりはるかに高い。
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◆高浜町の若狭和田ビーチが「ブルーフラッグ」の認証
 地元の喜びは当然ですが
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・国際環境教育基金 FEE Japan は、水質、環境マネジメント、 環境教育、安全とサービスについての基準を達成したビーチに対し「ブルーフラッグ」の認証を行っています。そして、高浜町の若狭和田ビーチがそれらを達成したビーチとして、日本(アジア)で初めて認証されました。白い砂浜と、遠浅で海の底まで透き通るほどキレイな海水!

・2018年8月18日、「原発うごかすな!実行委員会@関西・福井」が、公開質問状の回答受け取りに高浜町役場に行ったときも、担当者がとても嬉しそうに話していました。ビーチクリーンや環境教育などをすすめている町としては、当然だと思います。原発立地の高浜町、おおい町、美浜町の3町の回答の中で、原発なきあとの町の産業振興について、水産業の六次産業化、UターンやIターンなどについて、いちばん具体的な回答をしたのは、高浜町だと思いました。

・しかし、「ブルーフラッグ」はちょっと待ってください。認定のための33の基準の中に、原発との隣接、事故の危険性、放射能汚染の恐れなどの項目はありません。そして、原発事故はいつおこるか分かりません。高浜のビーチで遊んでいたら突如、避難が必要といったことになるかもしれないのです。認証には「半径250km以内に原発がないこと」といった基準が必要ではないでしょうか。大腸菌の心配はなくても、放射能汚染の危険性があるところを認証することは、問題があります。「ブルーフラッグ」の権威を損なうものではないでしょうか。
(2018年8/18には、FEE Japan に基準を検討するようにという意見をメール送信済み)

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◆高浜原発から排出されるトリチウム
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・トリチウムは、原子が小さいので、除去設備をすり抜ける。ステンレスの管からも漏れていく(水素は鉄をすり抜ける)ので、排出量が多い。加圧水型の高浜原発などからは、年間18兆~83兆ベクレルを放出している。
(東京新聞2021年4月14日→こちら

【参考】青森県の日本原燃六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)(→◆003◆◆082◆)は、2006年から2008年にかけてトリチウムを海洋放出していた。放出量の合計は約2150兆ベクレルだが、2007年10月には、1ヶ月で約523兆ベクレルを放出した(福島第一原発のタンク内の処理水総量約860兆ベクレルの約2.5倍)。
 国立がん研究センターが発表した2014年の都道府県別のがん死亡率は、青森県が2004年から11年連続1位で、2位は3年連続で北海道。2021年の調査では、また北海道が2年連続2位。(最近では青森県が順位を下げ、秋田県が1位に浮上)

『原発は事故がなくても危険 知られざる“トリチウムの健康被害” 安全の保障もないのに再稼働』(京都・市民放射能測定所、2018年)より、「原発・核燃料再処理施設と白血病との関連」(森永 徹)
 
・原発からは、さまざまな経路で放射性物質が外に出ている。とりわけ、通常運転でもトリチウムは大量に放出されている。玄海原発がもっとも多く、白血病との関連が強く疑われている。大飯原発も放出が多い。高浜原発沖合の海水からはトリチウムが検出され、そのトリチウム濃度は全国平均よりはるかに高い。
・安全審査によるトリチウムの排出基準は、規制値ではなく、単なる指標なので、薄めればどれだけ放出しても良い。事実上垂れ流し放題。

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◆何故かここで場違いに自慢してはしゃぐ関電、
 「安全な」原発のそばで遊んでね、と言いたいのか?
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若狭高浜町のビーチがブルーフラッグ認証を受けたことを自慢して、はしゃいでいるのが関電。
関電、関係ないでしょ。
関西電力グループの公式Facebookページ(2016年7月11日)→こちら
 
・「美しい海に魅せられて移住者が増えるほどの若狭和田ビーチ。今年の夏は、この美しい海でゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。」

・「美しい海」は、別に関電に作ってもらったものではありません。
それどころか、「美しい海」を台無しにする可能性を有しているのが、関電です。
・高浜町の人口は、以下の通り。移住者が増えているのは、「若狭和田ビーチ」??
 2000年…12,119人
 2005年…11,630人
 2010年…11,062人
 2015年…10,596人
 2020年…10,326人

・「ゆったりとした時間」を過ごしていて、突然、原発事故が起こったらどう避難するの??
「高浜町原子力災害住民避難計画について」→こちら

和田地区(下図中の赤い )は、高浜原発、大飯原発のUPZ圏内だが、両方のPAZ圏にも近い。

・海水浴客の避難は、どうなっているのだろうか。若狭高浜観光協会が、(1) 観光客への広報協力、(2) 旅館及び観光業者への周知協力を行うことになっているようだが。そして、「観光客など一時的に滞在する者については、動揺や混乱を招かぬよう、広報車、同報系の防災行政無線、携帯端末の緊急速報メール機能等を活用して、迅速かつ的確に情報を提供できるよう、情報伝達手段の確立を図る。」となっています。が、情報を伝達すれば、避難の必要性はありませんと言っても、通用するかどうか。とりわけ7~8月の海水浴シーズンなら、我先に県外に避難、脱出しようとする自家用車で、道路の大混乱が目に見えるようだ。直ちに避難すべきPAZ圏内の住民にも悪影響を与えるに相違ない。

・原発を廃炉にして、安心して遊べるビーチを提供することこそ、高浜町の進むべき道ではないでしょうか。

▲高浜原発と大飯原発のPAZ圏外の中央地点あたりにある赤い が 和田地区。両原発が同時にトラブルに見舞われた場合は、逃げ場がない。

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◆美浜原発に隣接する美浜町の水晶浜は、
 樋口健二さんの写真で紹介されたことも
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▲amazonサイトより『増補新版 樋口健二報道写真集成 日本列島1966-2012』。 2012/5/31発行。表紙写真は、美浜原発に隣接する水晶浜海水浴場。美浜原発のうち、手前の1、2号機は廃炉になったが、奥の老朽原発 3号機は現役。この写真のような風景は、2022年にも見られた。

◆074◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆076◆

◆関西電力 闇歴史◆074◆

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◆原発温廃水が海を壊す
 原発温廃水は、熱、化学物質、放射能の三位一体の毒物
 高浜原発近くで、温廃水によりソラスズメダイなどの熱帯魚が定着
 原発の停止で、周辺の海洋環境は劇的に改善したが…
 【付 火力発電と原子力発電の比較】
 【付 コンバインドサイクル発電】
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◆[1] 原発温廃水が海を壊す
  原発からは温かい大河が流れている
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小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)、2010年3月26日
情報・知識&オピニオン imidas(集英社)→こちら(図解あり)

上記サイトから、その要点をピックアップし、他のサイトの情報もあわせてまとめると、温廃水に関わる問題点は、以下の4点になる。

(1) 原発のエネルギー効率は33%しかなく、66%は温廃水として廃棄される

・現在の原発では、タービンの入口での蒸気の温度は約280℃で、実際の熱効率は0.33、すなわち33%しかない。つまり、利用したエネルギーの2倍となる67%のエネルギーを無駄に捨てている。100万kWの原発の場合、約200万kW分のエネルギーを海に捨てることになる。

・海の取水口から毎秒70tの冷却水を取り入れ、2次系の水蒸気を冷やして水に戻すが、その結果、水温が7℃ほど上昇した温廃水を海に放出する。つまり、1秒間に70 tの海水の温度を7℃上昇させる。

・1秒間に70tの流量を超える川は、日本には30筋もないので、原発温廃水は「大河」といえる。

(2) 原発温廃水は、熱、化学物質、放射能の三位一体の毒物

・海から冷却水を取り入れるときには、配管を清掃するための化学物質、貝類の幼生などを殺す薬剤なども投入される。吸排水パイプにフジツボなどが付かないよう殺生物剤(次亜塩素酸ソーダなど)が使用されるので、海に流す温廃水には、当然、それらの物質が含まれている。

・さらに、作業員の汚染した衣服を洗濯したりする場合に発生する洗濯廃水などの放射性廃水も混入されて、排出されている。定期検査中には、近海の放射線量はさらに高くなるという。大量の温廃水の中に混入して、放射性物質の濃度を下げてしまえば、敷地外に捨てても濃度規制に引っかからないので、垂れ流し放題。温廃水は放射能の希釈水ともなっている。

・核燃料再処理工場は、原発以上に膨大な放射性物質を環境に捨てるが、再処理工場には原子力発電所のような「大河」はない。そこで、再処理工場の廃水は法律の濃度規制から除外されている。

(3) 温められた海水からはCO2が大量に放出される

・福島第一原発事故前の日本には54基の原発(電気出力で約4900万kW)があり、それが流す温廃水の総量は年間1000億t。日本のすべての川の水の温度を約2℃温かくすることになる。

・さらに、温められた海水からは、溶け込んでいた二酸化炭素(CO2)が大量に放出されるので、大気中の二酸化炭素を増やすことになる。原発が温暖化対策に役立つなどとはとうてい言えない。

【参考】原発の運転でも、炭酸ガスは増加
・2022年4月12日付けのチラシより。老朽原発うごかすな!実行委員会 →こちら
・原発では、原子核に閉じ込められた膨大なエネルギーを解放し、最終的には環境に放出するのですから、原発運転は、海洋を含む地球表面の温度を上昇させます。水への炭酸ガスの溶解度は水の温度が上昇すれば減少しますから、海洋の温度が上昇すれば、海洋に溶解していた大量の炭酸ガスの一部が大気中に放出され、大気中の炭酸ガス濃度が増加します。一方、原発の建設、核燃料の製造、使用済み燃料の保管、重大事故時の対策にも多量のエネルギーを要し、その過程で、炭酸ガスが発生します。また、これらの過程で使用されるセメントの製造工程で多量の炭酸ガスが発生します。

(4) 火力発電に比べて、原発には将来的に発展していく形がない

・最近の火力発電所(コンバインドサイクル発電)では500℃を超える高温の蒸気を利用でき、熱効率は50%を超える。つまり、100万kWの火力発電所の場合、無駄に捨てるエネルギーは100万kW以下で済む。

・もし、原子力発電から最新の火力発電に転換することができれば、それだけで海に捨てる熱を半分以下に減らせる。

・さらに、火力発電所を都会に建てて、熱を熱源として活用するコージェネレーション(co-generation)にすれば、エネルギー効率を80%にすることも可能。結局、原発には発展形がない。

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◆[2] 原発停止で温廃水も止まって
  周辺の海洋環境が劇的に改善
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中村隆市ブログ「風の便り」2014/03/06→こちら

・京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾教授は、2004年から若狭湾、高浜原発からおよそ2キロの地点(放水口から北東約2kmの音海[おとみ]という海域)で潜水による定点観測を続けている。この地点では、温廃水により周辺海域と比べ水温がおよそ2度高い。この2度が冬場、生き物の生死を分ける。

・原発停止直後(2011~12年の直後)の海の劇的な変化に、目を見張ったという。「予想よりはるかに急激でしたね。南方系の生き物がたちどころにいなくなって、それで本来の若狭湾の生き物が戻ってきたということですね」

【参考】高浜原発の運転状況
・高浜原発の1号機は1974年、2号機は1975年に運転開始。3、4号機は、1985年に運転開始。
・2011年から12年にかけて、1~4号機が定期点検で次々に運転停止。
・2015年4/14~12/24、高浜発電所の3号機と4号機について、福井地裁が、再稼働を認めない仮処分の決定を出した。
・2016年、3~4号機が再稼働。
・2016年3/9、高浜発電所の3号機と4号機について、大津地裁の仮処分の決定で運転停止。その後、2017年3/28に仮処分が覆されて、運転再開。
・現在、高浜原発は、3、4号機が再稼働されている。さらに、2023年には老朽原発1、2号機の再稼働も画策されている。万一こうなれば、海水温のさらなる上昇は必至。

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◆[3] 高浜原発の温廃水で日本海に熱帯魚が定着していた
  高浜原発周辺、2012年稼働停止でいなくなる
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産経フォト、2020年6月29日→こちら
福井新聞ONLINE、2020年6月30日

・関西電力高浜原発からの排水で海が温められることで、周辺に熱帯魚が定着していたとの研究結果を、京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾教授が6月29日までにオンライン科学誌プロスワンに発表した。海流で南から運ばれてきた幼魚が越冬に成功したとみられるが、東日本大震災後に稼働停止するといなくなった。

・原発稼働中、周辺の海水温は2度高く、地球温暖化が進んだ2050年ごろの状態に相当する。益田さんは「生息域が拡大して良かったという話ではない。狭い日本海で多くの原発が稼働すると、元々いた魚や海藻が減少するなど、環境が大きく変わる」と指摘。原発の温廃水による局所的な温暖化の影響に注意を促した。

・益田さんは04~17年、冬に若狭湾内の高浜原発近くの海で潜水調査を実施。運転中は通常の海水温より7度高い排水が出るため魚の数や種類が増え、本来は越冬できないソラスズメダイやカミナリベラなどの熱帯性の魚も生息していた。12年に高浜原発が止まると、水温は低下して元に戻り、熱帯魚は死滅したり見られなくなったりしたという。

【参考:ソラスズメダイ】
 以下の写真は、Wiki の記事より。産経フォトのWebサイトには、益田玲爾教授によるソラスズメダイの写真が掲載されている。ブルーの綺麗な小魚(体長7~8センチ)。水温が18℃以下になると生きていけなくなる熱帯魚で、日本海も11月を過ぎると水温が下がるので、ここで最後を迎えるのが普通。

▲ソラスズメダイ。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より。ニック・ホブグッド、東ティモール(インドネシアに近い島国)にて

【参考:ハナイカ】
 全長7cm程の小型のイカ。2023年6月下旬には、紀伊半島より南の暖かい海に生息する「ハナイカ」が、高浜町でみつかった。地元の漁師が定置網に引っかかっていたところを見つけたとのこと。坂井市の水族館で展示されているが、水族館によると、福井県内で見つかるのはとても珍しいという。(→こちら

▲ハナイカ。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より。

【参考:ガンガゼ】高浜町沖の若狭湾では、冬でも南方の生物が見られる。長いトゲが特徴のウニの仲間「ガンガゼ」も、1年を通してよくみられる。2023年2月、京都大舞鶴水産実験所(京都府舞鶴市)の調査で確認された。同年7月、同じ場所に潜ってみた。水温は28度まで上がっていた。海底の岩場では、冬よりも多くのガンガゼ類を確認できた。約2キロ南には、関西電力高浜原子力発電所の放水口がある。2004年からこの海域を調査している同実験所所長の益田玲爾教授によると、原発の運転中は、他の場所に比べて水温が2度ほど高いとのこと。(→こちら

▲ガンガゼ。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より。

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◆[4] 京都・舞鶴湾から見える異変「南の魚が増えている」
  忍び寄る温暖化の影
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京都新聞、2022年5月7日
京都・舞鶴湾から見える異変「南の魚が増えている」 忍び寄る温暖化の影
 
・京都大学舞鶴水産実験所の益田玲爾教授の研究成果が報道された。原発稼働中、周辺の海水温は2度高く、地球温暖化が進んだ2050年ごろの状態に相当する。潜水調査を実施したところ、高浜原発稼動中には熱帯性の魚が生息していたが、2012 年に高浜原発が止まると熱帯性の魚はいなくなったとのこと。

[参考]伊方原発を早期に停止せよ、温廃水が瀬戸内海を温暖化
・長周新聞、2020年6月30日 →こちら
・山口県内の瀬戸内海側の漁業者のなかで、海の異変が深刻な問題になっている。・・・周防灘、伊予灘に面した海域では、火力発電820万kWと伊方原発202万kWから温廃水が大量に放出されており、「温暖化」しないわけがない。この上に中国電力の上関原発1、2号機(それぞれ国内最大出力の137万kW)を建設したときの惨状は明らかである。

【付 火力発電と原子力発電の比較】
・原子力発電って本当にハイテクなの?
 火力に比べ、原子力は筋の悪い技術!
・『電気のしくみ 発電・送電・電力システム』(佐藤 義久 著、丸善出版、2013年発行)より

(1) 蒸気温度…蒸気タービン入口の蒸気温度はハイテク度を端的に示す指標
・火力発電……1950年に450℃→2010年に620℃と、各段に進歩
・原子力発電…1950年代の285℃(BWR)、270℃(PWR)のまま、進歩せず

(2) 蒸気圧力
・火力発電……41気圧→310気圧
・原子力発電…BWRは70気圧、PWRは55気圧のまま

(3) 容量
・原子力発電…ローテクのまま、出力だけ恐竜のごとく肥大化した腕力機器

(4) 熱効率
・火力発電……22%(1882年)→53%(ガスコンバインドサイクル発電)。飛躍的に向上。100万kWの電気をつくったときに100万kWの廃熱を出す。
・原子力発電…33%程度のまま。100万kWの電気をつくったときに200万kWの廃熱を出す

(5) 発電機の回転数
・火力発電……3600rpm(60Hz)、3000rpm(50Hz)
・原子力発電…1800rpm(60Hz)、1500rpm(50Hz)

(6) 100万kWの電気をつくるとき
・火力発電……100万kWの廃熱。3657トン/hのCO2を排出する。
・原子力発電…200万kWの廃熱。運転時以外にはさまざまな段階でCO2を排出。処理困難な大量の高レベル放射性廃棄物、低レベル放射性廃棄物を排出する。

【参考】原発の発熱と崩壊熱
 出力100万kWの原発の場合、原子炉の中では、ウランが核分裂して3倍の300万kW分の発熱をしている。大地震の際は制御棒を入れて核分裂反応を止めるが、実は300万kWのうちの21万kW分の発熱は、ウランの核分裂で出ているわけではない。それまでに生成された「核分裂生成物」が原子炉の中に膨大にたまっており、「崩壊熱」を出している。
 制御棒でウランの核分裂反応を止めても、21万kW分の崩壊熱は止められない。膨大な発熱だ。福島第一原発の場合でも核分裂反応は止まったが、崩壊熱を止めることができないまま、電源が何もなくなり、冷やせないために炉心が溶けて、放射性物質が大量に出てしまった。
 
【参考】最新のコンバインドサイクル発電
 蒸気を使ってタービンを回転させ電気を発生させる際、熱効率を上げるにはタービン入口蒸気圧力と温度の両方を上げる必要があるとのこと。熱力学的には圧力・温度どちらか一方を上げれば効率は向上するが、圧力だけを高く設定するとタービン内で仕事をした蒸気が湿りやすくなり、湿った蒸気はタービン翼に悪影響(湿り蒸気によって引き起こされる最も顕著な現象は動翼の浸食)を与えるので、蒸気温度も高くする必要がある。火力発電はこうした点で技術開発が着々と進展していて、最新のコンバインドサイクル発電では、熱効率は60%にも達している。原子力発電では、1950年代の水準にとどまっていて、33%しかない。

【参考】「出力だけ恐竜のごとく肥大化した腕力機器」という記述は、『原発は滅びゆく恐竜である水戸巌 著(緑風出版)を思い出させる。

【付 コンバインドサイクル発電】
・コンバインドサイクル発電とは
 火力発電には、大きく2つの方式がある。
①燃料を燃やして水を沸騰させ、発生した蒸気により発電機(スチームタービン)を回す方式と、
②燃料を燃やして発生させた高温・高圧の燃焼ガスにより発電機(ガスタービン)を回す方式。
これらの方式の弱点は、いずれもタービンを回した後の蒸気や燃焼ガスが持つ熱が捨てられてしまうこと。

・この捨てられる熱を減らす技術が「コンバインドサイクル発電」。この方式は、ガスタービンによる発電とスチームタービンによる発電を組み合わせた発電方式で、ガスタービンコンバインドサイクル発電ともいう。

▲コンバインドサイクル発電とは…国立環境研究所 > 研究・技術 > 環境技術解説 > 地球環境 >「コンバインドサイクル発電」より(→こちら)。この図では、熱効率が59%になっている。

◆073◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆075◆

◆関西電力 闇歴史◆073◆

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◆関電の原発建設に反対し阻止した4府県9か所の闘い
 どの立地候補地でも女性たちの素晴らしい結束があった
 「比較ジェンダー史研究会」のWebサイトより
 【付 和歌山県白浜町、使用済み核燃料中間貯蔵施設も撃退】

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【Webサイト】

比較ジェンダー史研究会こちら
【年表 4 】原子力発電所との闘い-立地反対運動と原発訴訟(富永智津子、2015年)→こちら

・このサイトでは、全国の原発について、立地を阻止した闘いをまとめているが、その中から関西電力をピックアップすると、下記の通り。それぞれに経過や【解説】が付いているので、分かりやすい。
・電力会社の原発推進と地域社会の分断については、以下のように述べている。「反対運動は、志を同じくする人々をつなげたが、一方で、推進派と反対派に分断されることによる人間関係の破壊も見られた。この破壊は家族や親族、あるいは漁協内部に及び、原発問題が終息した後も続き、容易にその溝は埋まることがない。」
・運動の中で、女性の活躍、女性が果たした役割をとりあげて、赤字で強調している。
・そして、最後の【まとめ】として、以下のように強調されている。
どの立地候補地でも、一番「命」に近いところで日々格闘している女性たちの結束には瞑目すべきものがあった。
(本項編集者注…「瞑目」というより「刮目」のほうが適切だと思いました(^o^)

【関電に関係する4府県9か所の闘い】…( ) 番号は上記Webサイトの連番

(2)兵庫県御津(みつ)市(現たつの市)…1958~60年
(6)兵庫県香住町(現香美町)…1967~70年
(7)和歌山県日高町阿尾(あお)・小浦(おうら)地区…1967~2005年
(8)和歌山県古座町(現串本町)…1968~90年
(9)福井県小浜市(若狭湾)…1968~76年。内外海(うちとみ)半島の入り江にある田鳥に建設計画。1971年「原発設置反対小浜市民の会」結成で大同団結、有権者の半数を超える署名などの運動で、市長が誘致拒否
(11)和歌山県那智勝浦…1969~81年
(15)京都府舞鶴市(若狭湾)…1971~82年
(20)京都府久美浜町(現京丹後市)…1975~2006年
(22)和歌山県日高町日置川(ひきがわ)町(現白浜町)…1976~2005年。

【付  和歌山県白浜町、使用済み核燃料の中間貯蔵施設も撃退】

・以下、Webサイトには記載していないが、和歌山県白浜町では、2018年以来、関電が使用済み核燃料の中間貯蔵施設を作るのではないかという懸念が浮上。

・町民の反対運動もあり、白浜町は2019年12月、原子力発電所から出る放射性廃棄物の受け入れを拒否する条例を制定する方針を明らかにした。条例案「白浜町安心・安全なまちづくり推進条例」は町議会12月定例会に提出され、議会は全会一致で可決。町内での原子力関連施設の立地は事実上、不可能になった。
・関電は、2020年6月末に日置川の原発立地事務所を閉鎖した。

・「関電の中間貯蔵計画はどうなるのか?」:日本消費者連盟関西グループ発行「草の根だより」連載記事に加筆 →こちら
・「資料 核関連施設・廃棄物拒否条例(背景と解説)」→こちら

◆072◆ ←← 関西電力 闇歴史 →→ ◆074◆

◆老朽原発・美浜3号機を廃炉に~過酷事故が起こる前に

【2022年8月,若狭で配付】

老朽原発・美浜3号機を廃炉に
過酷事故が起こる前に

 原発は現在科学技術で制御できる装置でないことを、発生後11年を経た福島原発事故が大きな犠牲の上に教えています。

 一方、去る2月に始まったウクライナ紛争では、欧州最大の原発・ザポリージャ原発やチョルノービリ原発が占領され、戦争になれば、原発は格好の攻撃目標になることが実証されました。

 このように、原発は、人類の手に負える装置でなく、人の命と尊厳を脅かします。

 それでも、電力会社、政府、原発立地自治体などの原発推進勢力は、ウクライナ紛争によるエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして、原発の稼働に躍起です。岸田首相は、冬向け電力のひっ迫を喧伝し、9基の原発を稼働させる方針を発表しています。

 また、関電は、10月20日に予定していた美浜3号機の運転再開(並列)を8月12日に前倒しすると発表しました(6月10日)。「再稼働(原子炉起動)」は、8月10日と報道されています。

しかし、電力需給がひっ迫するから
「供給を増やす」は古い考え方です。

 かつての電力会社は、電力の無限供給(需要側が使いたい時に必ず供給する)義務を負っていて、その代わりに、地域独占と総括原価方式によって優遇されていました。

 総括原価方式とは、発電費、送電費、電力販売費、人件費などの全ての費用を「総括原価」とし、それに一定の報酬を上乗せして電気料金を決める方式で、電気供給は公共性が高いのでこの方式をとります。この方式だと、電力会社の経営は常に安定しています。

 しかし、地球環境保全(温暖化抑制)の視点からは、電力供給を拡大し続けることは、もう許されません。電力会社の無限供給「義務」、地域独占、総括原価方式は、不合理になっています。

「需要抑制、節電」が
現在的、先見的な考えです。

 供給力を増やすばかりが需給ひっ迫対策ではありません。

 日常的には、電気は足りています(余っています)。一時的に電力不足が発生しても、節電によって回避できます。このことは今年3月の、地震と寒波に起因する東北、東京エリアでの電力不足、6月末から7月にかけての猛暑による電力不足を、節電で乗り越えた実績が証明しています。

【節電協力で電力需給ひっ迫を乗り切った例】
 去る3月22日、東京および東北エリアで、地震による発電所の停止と急激な寒波到来が重なって、電力需給ひっ迫が発生しました。この需給ひっ迫を乗り切れたのは、揚水発電と広域での電力融通に加え、次のような節電が行われたからです。

 当日8〜23時の時間帯で約4000万kWh、また、需要の大きな17時台の1時間に、約500万kWを需要側が節電しています(東電パワーグリッドKKの資料)。原発5基分(約500万kW)もの節電が可能であることを示しています。

 この例は、要請に応えた節電の例ですが、「節電すればそれに応じて対価が得られる需要抑制」の制度化も進んでいます。「ネガワット(負の消費電力)取引」はその例です。「ネガワット取引」とは、仲介業者などとの事前の契約に基づいて、電気の需要がピークに達したタイミングで節電を行うと対価が得られる制度です。

 「節電で生じる余剰電力は発電所を新しく建設することと同じ価値がある」という考えから「発電所ではなくて節電所を」の提案もあります。国民(約1億2500万人一人ひとりが100W(ワット)節電すれば、1250万kW(原発10基分以上)の電力需要を抑制できます。

 電力需給ひっ迫時だけでなく、日常からの節電も重要です。電気機器やシステムのエネルギー効率のよいものへの更新、断熱などの「省エネルギー化」も節電です。

電力需要量と供給量を正しく把握し、
適度な節電に心がければ、
大規模停電=ブラックアウトになることもありません。

 大規模停電は、地震などによって一気・多量の電力供給不足が生じたときに起こります。通常の需要増加で大停電に至った例はありません。原発が重大事故を起こせば、電力の大規模供給不足になり、大規模停電に至る可能性があります。

【大規模停電の例】
 2018年9月6日早朝、北海道胆振(いぶり)東部を最大震度7の地震が襲いました。この地震によって、日本で初めて、電力会社の管轄エリア(北海道)全域で295万戸が大規模停電(ブラックアウト)しました。電力に関しては、供給と需要のバランスが保たれていることが重要で、バランスが崩れると周波数に異常が生じ、安全装置が働いて、発電所が停止します。この北海道大停電では、苫東厚真(とまとうあつま)発電所の大型火力発電機2機の機器が地震により破損し、大型水力発電所からの送電線が切断されて、電力供給が減少し、周波数が下がったため、連鎖的に発電所が停止し、大規模停電に至りました。

 電力需給ひっ迫を口実に、人々や環境に放射線被ばくを強い、子々孫々にまで負の遺産となる使用済み核燃料を残す原発の推進を許してはなりません!とりわけ危険な老朽原発の再稼働など、もってのほかです。

「老朽原発依存社会」を招く
政府、電力会社

 原発の運転期間について、2012年6月の原子炉等規制法の改正で「原発の運転期間は40年とし、例外中の例外として20年の延長を認める」と規定しています。

 したがって、運転延長後40年を超えた全原発の運転延長を認める原子力規制委員会の姿勢は、明らかに法令違反です。なお、「40年」の根拠について、細野原発事故担当相(当時)は、「電力会社が、ほとんどの原子炉の運転年数を40年と想定して認可申請している」からと答弁しています。「40年」は、電力会社が求めたものです。

 それでも、政府、経団連、電力会社は「40年超え運転」を「例外」から「原則」に変えようとし、さらに、福島原発後の原発運転停止期間を運転年数から除外し、停止期間分を追加運転しようとする企みもあります。

 もし、「40年超え運転」を認めず、原発の新設を阻止すれば、2033年に若狭から、2049年に全国から稼働可能な原発が無くなります。

 一方、「40年超え運転」が「原則」となり、建設中の3基の原発(大間原発、島根原発3号機、東電東通原発)の運転が強行されれば、今から
 8年後(2030年)には、稼働可能な原発36基のうちの15基が老朽原発となり、
18年後(2040年)には、稼働可能な原発32基のうちの24基が老朽原発となり、
28年後(2050年)には、稼働可能な原発23基のうちの20基が老朽原発となります。

 さらに、停止期間分の追加運転が許されれば、
2030年には、稼働可能な原発36基のうちの15基が老朽原発となり、
2040年には、稼働可能な原発36基のうちの28基が老朽原発となり、
2050年には、稼働可能な原発30基のうちの27基が老朽原発となります。

政府や電力会社は「老朽原発依存社会」を
作ろうとしているのです。
「原発過酷運転(酷使)」を画策する
政府、電力会社

 岸田政権は、昨年10月22日に、第6次エネルギー基本計画を閣議決定しましたが、この計画では、2030年に原子力を20〜22%にしようとしています。

 政府は、この計画を達成するために、2030年には15基となる老朽原発の再稼働と建設中の3原発の稼働を画策するだけでなく、以下のように、原発の過酷運転を行い、原発利用率を引き上げようとしています。危険極まりない老朽原発運転と原発過酷運転を許してはなりません。

●定期検査間の運転期間の長期化

 現在は13ヶ月ごとに定期検査していますが、18ヶ月〜24ヶ月に変えようとしています。

●検査内容の変更による定期検査の効率的実施と原発酷使

 現在の定期検査では、原子炉を停止し、平均90日をかけて一斉分解点検していますが、これを、米国の30日に倣(なら)って短縮しようとしています。短縮のために、
①「状態監視保全」方式(早めの部品交換をせず、機器ごとに劣化状況に合わせて保守する方式)を導入し、機器を限界まで酷使しようとしています。
②原子炉を止めないでおこなう検査「運転中保全」を導入しようとしています。

 以上の検査内容の変更は2009年に行われていましたが、変更の実行は福島原発事故で中断されていました。

 なお、上記は政府の計画ですが、電気事業連合会(電事連;電力10社で構成)は、さらにスザマシイ目標を掲げています。電事連は、2030年の原発比率29%を目標とし、そのために、原発36基全ての早期稼働と稼働率90%を目指しています。原発60年運転の推進、定期検査の効果的な実施、運転サイクルの長期化をかかげ、原発80年運転への法改正も画策しています。

老朽原発を酷使すれば、
重大事故の危険度が急増します。
原発重大事故時、避難は不可能

 政府や自治体は、原発過酷事故を想定した避難訓練を行っています。それは、原発は重大事故を起こしかねないことを、政府や自治体が認めているからです。しかし、政府や自治体で考えている「原発災害時の避難計画」では、わずかの期間だけ避難することになっていて、原発事故では住民全員が、何年も、何十年も、あるいは永遠に故郷を奪われることをあえて無視しています。「避難訓練を行った」とするアリバイ作りをしているのです。このことは、昨年3月「避難計画やそれを実行する体制が整えられているというにはほど遠い状態」として、老朽・東海第2原発の運転差止を命じた水戸地裁判決にも反映しています。

 ところで、美浜原発で過酷事故が起こったとき、美浜町の皆さんの避難先は、おおい町または大野市になっています。しかし、人口約8100人のおおい町が、9600人を超える美浜町の皆さんを一週間以上の長期にわたって受け入れることは不可能です。人口約33600人の大野市でも不可能です。

 なお、美浜原発で過酷事故が起こったとき、原発から5kmの圏内の皆さんは即時避難となっていますが、それ以外の美浜町民は、屋内退避となっていて、放射能汚染レベルが自然放射能の1万倍の500マイクロシーベルトになって、初めて避難を始めることになっています。一斉避難は不可能であるから、美浜町民のほとんどは、大量被ばくするまで待ちなさいと定めているのです。

 過酷事故を起こしかねず、事故が起これば大量被ばくを強いる老朽原発再稼働を許してはなりません。原発廃炉こそが、最大の安全対策です。美浜3号機即時廃炉を求めましょう!

処理法も行き場もない使用済み核燃料
それでも老朽原発再稼働まで画策

 関電は、2017年、「2018年末までに、使用済み核燃料の中間貯蔵候補地を福井県外に探す」と明言しました。西川前福井県知事が、大飯原発の再稼働に同意したのは、この約束を前提としていました。しかし、関電は、この約束を反古(ホゴ)にし、「候補地提示期限を2020年末まで」と再約束して、原発の運転を継続し、使用済み核燃料を増やし続けました。さらに関電は、再約束の期限も反古にし、昨年2月12日には、候補地提示期限を「2023年末まで」と先送りし、「この期限が守られなければ老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を停止する」として、福井県に老朽原発再稼働への同意を求めました。これを受けて、杉本知事は、それまでの「中間貯蔵地を示すことが再稼働議論の前提」とした発言を一転させ、再稼働同意へと変節しました。なお、関電が「2023年末を期限」とした拠り所は、青森県むつ市の中間貯蔵施設の共同利用の可能性ですが、宮下むつ市長は、これを否定し、猛反発しています。

 関電は、何の成算も無く繰り返し「空約束」をし、平気でそれを反古にした、倫理のかけらも持ち合わせない企業です。こんな関電に原発を安全に運転できるはずがありません。

老朽原発・美浜3号機の再稼働を許さず、
即時廃炉を!

 関電が、8月10日に再稼働しようとしている美浜3号機は、運転開始後45年を超えた老朽原発で、昨年6月23日に一旦再稼働したものの、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置が間に合わず、わずか3ヶ月の営業運転で停止を余儀なくされていたものです。

 しかも、この短い運転中に二度もトラブルを発生させています。一つは、電源が断たれて蒸気発生器中の2次冷却水が喪失したとき、緊急給水するポンプに大きな圧力がかかるトラブルです。関電は、「ポンプ入り口にある金属製のフィルターに鉄さびが詰まったことが原因」としています。老朽原発を全国に先駆けて動かそうとして、10年近く準備してきたにも拘らず、鉄さびによる目詰まりにも気づかなかった関電と原子力規制委員会のいい加減さは許されるものではありません。

 一方、美浜3号機と同じ加圧水型原発・高浜3、4号機、大飯3、4号機でも、これらの原発は運転開始後40年に到っていないにも拘らず、たびたびトラブルが発生しています。とくに、320℃、160気圧近くの高温・高圧水が流れる1次冷却系配管(蒸気発生器伝熱管など)の損傷は深刻です。これらの配管が完全破断すれば、1次冷却水が噴出して、原子炉が空焚きになり、メルトダウンに至る可能性があるからです。

 例えば、本年3月、定期点検中の高浜原発3号機では、蒸気発生器伝熱管3本の外側が削れて管厚が大幅に減肉・損傷していることが発覚しています。関電は、伝熱管外側に自然発生した鉄さびの塊がはがれて、伝熱管を削ったためとしていますが、蒸気発生器の中には、腐食等によって、2トン以上もの鉄さびや鉄イオンが発生しているともいわれています。同様な伝熱管損傷は、一昨年11月、高浜4号機でも起こっています。

 このようにトラブル多発の蒸気発生器ですが、美浜3号機の蒸気発生器は、取り替え後25年を経た老朽機器です。配管の完全破断を起こしかねません。

企業倫理と責任感が欠如した電力会社は
原発過酷事故を起こしかねません。

 7月13日、東京地裁は「東電株主代表訴訟]判決で、福島原発事故前の東電幹部の対応には「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と述べ、東電旧経営陣に、原発事故による損害・13兆円の賠償を命じています。

 今、関電経営陣が、多くの危険性指摘を無視して老朽原発を稼働するのは「安全意識や責任感の根本的欠如」のためとしか言いようがありません、圧倒的な「老朽原発うごかすな!」の民意を蹂躙して老朽原発を稼働させ、重大事故に至った場合、それは関電経営陣の故意による犯罪です。

原子炉空焚き過酷事故の危険性が高い、
老朽原発・美浜3号機の運転を許してはなりません!
再稼働阻止の行動に起ちましょう!

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8.10 老朽原発・美浜 3 号再稼働阻止現地緊急行動

にご参集ください!
行動概要

●8 月 10 日(水)13 時に美浜原発周辺に結集→原発前を デモ行進→関電原子力事業本部前に移動して抗議・申し入れ行動→町内デモ行進(16 時解散予定)
●主催;老朽原発うごかすな!実行委員会
(詳細は下記連絡先まで)
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老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先・木原(090-1965-7102)

◆関西電力 闇歴史◆072◆

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◆関電の原発マネー不正還流は、最悪の幹部腐敗!(2019年発覚)
 その追及は、株主代表訴訟刑事告発
 ①株主代表訴訟は、会社訴訟と株主訴訟へ(→◆018◆
 ②刑事告発は、大阪地検が相次いで不起訴処分へ(~2022年12月)
 ・市民が大阪地検に告発→不起訴→検察審査会へ[4][6]
  →9名全員が再捜査へ(2022年8月)[8]
  →大阪地検は再度、不起訴処分(2022年12月)[9]
 ・地検はさらに追加の告発3件も、不起訴(2022年9~12月)[7]
 ・検察審査会へ申し立てるも、すべて却下(2023年3~10月)[7]
 【付 関電の四つの調査報告書へのリンク】
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▲告発の経緯(井戸謙一弁護士のまとめ、~2022年)

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◆[11] 検察審査会、2度目の審査で「起訴議決に至らず」[2023年3月30日付、4/29報道]
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・関電の金品受領問題に関連して、役員報酬減額分追加納税分の補填問題で刑事告発され、検察が再度、不起訴にした八木誠 前会長(73)、岩根茂樹 元社長(69)、森詳介 元相談役(82)の3人について、検察審査会は2回目の審査で、「起訴すべきという議決には至らなかった」という結論を出した。今回の告発内容で、強制的に起訴されることはなくなり、前会長らの刑事責任は問われないことになった。大阪第2検察審査会は、「特別背任などにはあたらない。説明責任は民事裁判の場で明らかにされるべきであり、刑事責任を問うことまでは困難だという結論に至った」としている。
・しかし、関西電力の企業体質は厳しく批判した。議決の最後に「真実を隠して説明責任を逃れようとする関電の隠ぺい体質や、庶民にとっては相当高額な報酬が一部の幹部職員によって決定されるなど公益性の高い企業に求められている公開性(手続きの透明性)の欠如を許せないという市民感覚は、当審査会においても原議決と変わるところはない。」「説明責任や義務は関電の提起した民事訴訟の場において明らかにされるべき」とある。
【弁護団の批判】
・告発した市民らの弁護団は、4/28、声明を発表。検察審査会の議決について、「起訴議決としなかったことは大変残念である。個人で納付すべき所得税を、なぜ会社が市民から支払われた電気料金から補填してもよいのかについて何ら説明がない」と批判。その上で、「このような事件を検察庁が不起訴にし続けたことが、関西電力を中心とする大手電力会社の闇カルテル問題、大手電力会社に相次ぐ不正閲覧、新電力の顧客情報を盗み見て営業、という不正問題などを次々と発生させる背景になっているのではないだろうか」としている。
・弁護団声明(2023/4/28)→こちら

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◆[10] 刑事責任、容疑ごとの今後の追及[2022年12月]
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・金品受領問題……検察審査会で「不起訴不当」とされていたため、再捜査で検察が再び不起訴としたことによって、刑事責任の追及はこれ以上不可。

・不正・不適切発注問題……不明朗なお金を生み出して地元工作に充てるという、事件の本丸である不正・不適切発注問題も、検察審査会で「不起訴不当」とされていたため、再び不起訴とされて当初告発による刑事責任追及は終了。

・役員報酬減額分、追加納税分の補填問題……検察審査会が「起訴相当」としたこれらの事件まで、検察は再び不起訴にした。「起訴相当」としている検察審査会が再び審議し、もう一度「起訴相当」と議決されれば、強制起訴される。

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◆[9] 大阪地検は再度、不起訴処分[2022年12月]
└─────────────
・大阪地検特捜部は12/1、会社法の特別背任などの疑いで告発された元役員9人を再び不起訴処分(嫌疑不十分)とした。12/8、不起訴処分にあたって強制捜査をしたかどうか質問された検事は、強制捜査をしたか、しなかったかも、明らかにしなかった。

・今後、検察審査会は「起訴相当」と議決していた容疑(役員報酬の減額分を補塡したとする会社法の特別背任容疑や、金品受領に関する追加納税分を補塡したとする業務上横領などの容疑)について、2度目の審査を行う。
・「不起訴不当」と議決していた容疑(金品受領などをめぐるその他の容疑)については捜査終結。
・結局、森詳介、八木誠、岩根茂樹の3名が、再度、検察審査会の審査にかけられる。以下の図は、朝日新聞2022/12/2より

【参考】検察審査会の議決
11人の審査員のうち、8人以上が起訴を求めると「起訴相当」。
 起訴相当が2度議決されると強制起訴される。
②過半数(6人か7人)が再捜査を促すと「不起訴不当」。
③過半数(6人以上)が不起訴を妥当とすると「不起訴相当」。

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◆[8] 大阪地検の再捜査
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・検索審査会の指摘を受けて、大阪地検は再捜査に着手。
・2022年10月25日、弁護団に大阪地検から「起訴相当の議決を受けた告発の再捜査の期間を1か月延長する」との連絡。
・12月1日までに起訴相当とされた報酬等の闇補填を起訴するかどうかの決定が行われる。はて、どうなるか。

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◆[7] 地検はさらに追加の告発3件も、不起訴[2022年9~12月]
 検察審査会へ申し立てるも、すべて却下[2023年3~10月]

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(1) 2022年9月6日、土砂処分土地賃借の不正で新たな告発状を提出。関電コンプライアンス委員会報告書が、原発に絡んでの土砂処分と土地賃借で高値発注を行っていたことを具体的に明らかにしたこと(新聞では既に報道済み)から、これらの行為は特別背任、背任にあたると、関与した豊松元副社長ら3人を新たに告発。
(→◆062◆  1.土砂処分問題2.土地賃借問題

・ただし、この告発状は、当初告発とダブっているという理由で、2022年11月10日付にて、不受理になった。それならば、当初告発が「不起訴不当」と検察審査会から指弾されていることを受けて、検察自らが起訴すべきではないか。2023年2月3日、検察審査会申立。同年3月20日、検察審査会が申立却下。

(2) 2022年10月12日、同委員会が指摘した倉庫貸借の不正は贈収賄等にあたると新たな告発状を提出。原発推進派の高浜町会議員の事業失敗を救済するため、相場のおよそ倍の価格で倉庫を貸借し、相応の価格に戻す時に見返りとして土砂処分を高値発注したこと(新しく指摘された不正)は、贈収賄や特別背任等にあたるとして新たな告発状を、告発人1040人で提出。2022年12月27日、地検が不起訴の決定。2023年4月24日、検察審査会へ申立。2023年10月27日、検察審査会が不起訴相当の決定。
(→◆062◆  3.倉庫貸借問題

・その後、大阪地検特捜部は2022年12月27日、森元会長や元高浜町議ら7人をいずれも嫌疑不十分で不起訴処分とした。贈収賄の容疑については「職務との関連性や賄賂の受け渡しが認められなかった」、また特別背任の容疑については「財産上の損害や職務に背く行為などは認められなかった」としている。
・検察審査会への申立へ。

コンプライアンス委員会調査報告書(概要)こちら
コンプライアンス委員会調査報告書こちら

(3) 土砂処分、土地賃借、倉庫賃借で関電が高値発注を行い、高浜町元助役の関係会社や原発推進派町会議員に不当な利益を与え、会社に損害を出していたことが明らかになった。提訴時に分かっていた不正発注の損害額は3億2千万円だが、土砂処分だけで最大22億円の高値発注があった可能性がある。この間の非公開の「書面による準備手続き 」等で損害額が大きくなるので、請求の拡張を考えていると主張したところ、裁判所から請求拡張は株主代表訴訟では会社に対する提訴請求が必要とされた。そこで関電に提訴請求を行うことにし、関電宛に送付した(2022年10月26日)。

・その回答が、12月26日にあったが、関電は提訴請求を拒否。関電は、自らのコンプライアンス委員会報告書を否定して、あくまで高値発注はなかったと主張したいのか。そのため、関電に替わって株主が損害賠償請求を提訴する。

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◆[6] 2022年8月発表の検察審査会の詳細
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すべての容疑について不起訴が正当でなかったと判断
議決書「強制捜査や関係者から再度の事情聴取などを行って事実を明らかにしてほしい」

(1) 役員報酬の減額分の補填。退任した森元会長を含む18人に、退任後に補填することを決定。「公共性の高い企業のトップの地位にあったのに、みずからや身内だけにひそかに利益を図っており強い非難に値する。会社に損害が生じたことは明白だ」「内々に報酬額を決定しており、会長らに委託された権限の範囲を逸脱する」「自らの立場を利用して秘密裏に補填を行い、口止めまでしていた」
…会社法違反(特別背任)
★起訴相当→→森詳介元会長、八木誠前会長
●不起訴不当→八嶋康博元監査役

(2) 豊松秀己元副社長が納めた追加納税分の補填。豊松元副社長が国税局に納めた税金を補填。「会長、社長に委託された権限を逸脱」
…会社法違反(特別背任)、業務上横領
★起訴相当→→森詳介元会長、八木誠前会長、岩根茂樹元社長

(3) 福井県高浜町の森本元助役の関連会社に対する不適切な工事発注
…会社法違反(特別背任、背任)
●不起訴不当→八木誠前会長、岩根茂樹元社長、豊松秀己元副社長、白井良平元取締役、鈴木聡元常務執行役員、大塚茂樹元常務執行役員、八嶋康博元監査役の計7人

(4) 元助役側からの金品受領。「一部の役職員が不適切な工事発注に関与し利益の一部の還流を受けていたことは電気利用者などへの裏切り行為であり強い非難に値する。検察は強制捜査を行っておらず旧経営幹部らへの事情聴取も十分だったか疑問だ」「利用者からの電気料金を懐に入れていたに等しい」「悪しき慣行を正さなければ任務違背に当たりうる」
…会社法違反(収賄)
●不起訴不当→岩根茂樹元社長、豊松秀己元副社長

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[5] 検察審査会は大阪地検の全面的な誤りを指摘するも
 関電は「我 関せず」で、素知らぬ態度[2022年8月]

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・2022年8月1日…大阪第2検察審査会が3人を「起訴相当」と議決。経営不振を理由に電気利用者に料金の値上げを求めながら、その陰で元役員らの利益を図ったことについては、「電気利用者への裏切り行為」ととりわけ強く非難している。
・検察審査会は、会社法の特別背任容疑などで告発され、大阪地検特捜部が不起訴にした八木誠前会長(72)、森詳介元会長(81)、岩根茂樹元社長(69)の計3人を「起訴相当」とした。八木、森、岩根以外の6人は「不起訴不当」と議決した。
・「起訴相当」の場合、特捜部が再捜査し、原則3か月以内に刑事責任の有無を改めて判断する。再び不起訴としても、検察審査会が2度目の「起訴相当」の議決を出せば、検察官役に指定された弁護士が強制起訴することになる
・「不起訴不当」の場合は、検察が再捜査の上で不起訴とすれば、捜査が終結する
検察審査会の全面的な検察庁の誤りの指摘に関する弁護団声明こちら
・「原発マネー不正還流を告発する会」からの報告→こちら
・なお、関電は「当事者ではなく、お答えする立場にない」とのコメントを発表した。「原発マネー不正還流を告発する会」の加納雄二弁護士は「長年の癒着があったにもかかわらず、全く信じられない発言だ」と関電の姿勢を批判した。

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◆[4] 市民による刑事告発はすべて不起訴、検察審査会へ[2021年~]
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・2021年11月9日…大阪地検特捜部が不起訴処分。「関電の原発マネー不正還流を告発する会」は9人を刑事告発していたが、特捜部は、いずれも関電に損害を与える故意性などは認定できないとして、9人全員を容疑不十分で不起訴にした。強制捜査等は行われず、嫌疑不十分で全員を不起訴処分にしてしまった。地検OBが多数関電役員に就任した経過からみて、不都合な真実の隠ぺいに検察も加担したのか?
・2022年1月7日…1,194人で検察審査会へ申立

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◆[3] その後、株主代表訴訟と刑事告発で追及[2020年]
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・3月14日…金品受取り問題に関する第三者委員会からの調査報告書が関電に提出される。金品受領は75人、総額約3億6000万円と公表
【第三者委員会の調査報告書こちら
・【投稿】関西電力金品受領問題・原発の深い「闇」を隠す第三者委員会調査報告書
 Assert Web、投稿日:2020年3月31日 作成者:杉本 達也 →こちら

・6月8日…取締役責任調査委員会が旧経営陣の善管注意義務違反を認めた調査報告書を公表
【取締役責任調査委員会の調査報告書こちら

・6月9日…市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が役員報酬補填問題などに絡み、業務上横領などの疑いで八木氏らについて告発状を大阪地検に提出(→◆18◆
・6月16日…関電が八木氏ら旧経営陣5人に約19億円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴
・6月23日…脱原発個人株主5人が現旧経営陣ら22人に約92億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を提起
・裁判は、関電会社訴訟株主提訴併合)と関電株主代表訴訟の二本立てで進行されている(→◆018◆)。
・8月17日…コンプライアンス委員会が役員報酬補填問題で八木氏ら3人の善管注意義務があったと認定
・10月5日…大阪地検が告発状を受理

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◆[2] 新聞報道後の経過[2019年9月~]
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・9月27日…岩根氏や八木前会長ら23人が計約3億円相当の金品を受け取ったと報道
・10月2日…2018年9月にできていたが非公表にされていた社内報告書を公表
【社内調査委員会の調査報告書こちら
・10月9日…八木氏が辞任。第三者委員会を設置
・12月13日…市民団体「関電の原発マネー不正還流を告発する会」が特別背任などの疑いで八木氏らを大阪地検に告発

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◆[1] 2019年6月、内部告発文書の送付までの経過
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・1977~1987年…森山栄治氏が高浜町の助役を務める
・2018年1月…金沢国税局が高浜町の建設会社を税務調査
・2018年7月…関電が社内調査委員会を設置。社外委員3名、社内委員3名(人事担当役員、コンプライアンス担当役員、経営企画担当役員)により構成
・2018年9月…社内調査委員会の調査報告書ができる。岩根茂樹社長ら6人を社内処分としたが、報告書は公表せず。岩根茂樹社長(当時)は、報告書を受領したが、同月中に八木誠会長(同)とともに、森詳介相談役(同)に相談し、「コンプライアンス上不適切な点はあったが、違法性は認められない」などとして公表見送りを決めていた(注-1-)。その後の第三者委員会は、このときの3人の対応を「ガバナンス(企業統治)の機能不全を示すものであったと言わざるを得ない」と厳しく批判
・2019年3月…森山氏が死去
・2019年3~6月…「関西電力良くし隊」から、岩根社長や監査役宛に通告などの手紙4通(→◆041◆、(1)~(4))
・2019年6月…「関西電力良くし隊」から、最終的な内部告発文書が広く各方面に送付(注-2-)(→◆041◆、(5))
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(注-1-)〔会計不正調査報告書を読む〕【第91回】関西電力株式会社「調査委員会報告書(平成30(2018)年9月11日付)」→こちら
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(注-2-)底が深い原発マネー
関西電力という会社はコーポレートガバナンスが全く機能しない会社、こんな会社は原発を持つ資格なし、全機運転を止めて廃炉にする以外ない
……高浜町の東山幸弘さん( 2019年9月29日記す、原発なくす蔵)→こちら
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◆[0] 関西検察のOBと関西電力の密接な関係
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(1) 2021年11月9日、大阪地検特捜部が刑事告発を不起訴処分にしたときは、「関西検察のドン」とよばれた土肥孝治元検事総長が元監査役、佐々木茂夫元大阪高検検事長が現取締役、小林敬元大阪地検検事正が今回の事件の社内調査委員会委員長を務めるなど、大阪地検と関電の深いつながりが、起訴の決定を阻んだのではないかと疑われる。

土肥孝治…大阪高等検察庁検事長などをへて、関西電力社外監査役など。「関西検察のドン」とよばれた。→Wiki
佐々木茂夫…大阪高等検察庁検事長などをへて、関西電力監査役、取締役など。2022/12/8の株主訴訟で明らかにされた内部告発によれば、検察官退任後は、原発マネー不正還流の問題は隠しとおすよう助言し、しかしマスコミに明らかにされそうになったら先んじて公表するようになどと、対応を指南していた。ばれなければ隠せという助言は、元検察官としての見識を疑わせる。「関西検察マフィアの親玉」「関電検察癒着共同体の親玉」と言われる所以。→Wiki
小林敬…大阪地方検察庁検事正のとき、「大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件」の責任を問われて辞職。関西電力コンプライアンス委員会社外委員、関西電力調査委員会委員長など。→Wiki

 → 郷原信郎:関電経営トップ「居座り」と「関西検察OB」との深い関係こちら
 (2019.10.7 Yahooニュース)

(2) 2022年8月1日
以下は『検察審査会の全面的な検察庁の誤りの指摘に関する弁護団声明』
(→こちら)の一節。
(関電不正マネー還流事件刑事告発弁護団 団長 河合 弘之、事務局長 加納 雄二)
「…・・ 検察は、自らの判断が市民感覚と甚だしくずれていることを猛省すべきである。まして、今回の事件については、関西検察のOBと関西電力の密接な関係が取りざたされている。大阪地検は、市民の合理的な疑念を晴らすためにも、直ちに再捜査に着手して、起訴相当とされた被疑事実のみならず、不起訴不当とされた被疑事実についても速やかに起訴すべきである。・・…」

(3)【参考図書】
『日本を滅ぼす 電力腐敗 政・官・司法と電力会社との癒着・天下りの実態』

三宅勝久 著
新人物往来社文庫
2011/11/8発行(なので、内容は少し古くなるが、腐敗の構造は今に継続)
関西電力についても、二人の経産官僚の天下りについて記載

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